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CAvi−MUSIC
〔旧:AVI−MUSIC〕

特記以外 1枚あたり¥3300(税抜¥3000)



 30年近くEMIで敏腕プロデューサーとして名を轟かせてきたアンドレアス・フォン・イムホフが立ち上げたドイツのレーベル。彼はアーティストからの信頼も厚く、ザビーネ・マイヤー、ラルス・フォークトらも録音を依頼していた。今後も質の高い音楽を提供していくにちがいない注目のレーベルだ。公式サイト:http://www.avi-music.de/
 2008年3月に、レーベルの意向により名称がCAvi-MUSICに変更されました。

4260085-535019
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カタログ付
限定盤
ユリアン・ステッケル〜20世紀のチェロ協奏曲集
 コルンゴルト:チェロ協奏曲 ハ長調 Op.37(*)
 ブロッホ:ヘブライ狂詩曲「シェロモ」(#)
 ゴルトシュミット:チェロ協奏曲 Op.23(+)
ユリアン・ステッケル(Vc)
ダニエル・ライスキン指揮
ライン州立po.
 録音:2009年10月(*)/2009年11月(#)/2009年6月(+)、以上 ライン・モーゼル・ホール。 通常盤: 4260085-532230 。同レーベル2015年カタログ付限定盤。
ラメント
 J.S.バッハ:ピアノ協奏曲〔第1番 ニ短調 BWV.1052 /第5番 ヘ短調 BWV.1056 〕
 オラシオ・サルガン編曲:5つのタンゴ
  〔オスバルド・プグリエーセ:レクエルド / フリオ・デ・カロ:ティエラ・ケリーダ/ボエド
   オラシオ・サルガン:ア・フエゴ・レント / エドゥアルド・アローラス:エル・マルネ〕)
 オスバルド・プグリエーセ編曲:5つのタンゴ
  〔フリオ・カラスコ:ミ・ラメント/デ・フロレオ / ホルヘ・カルダーラ:パテティコ
   エステバン・ジラルディ:ア・ロベルト・ペッペ / フリオ・デ・カロ:ラ・ラユエラ〕

 マーティン・クレット(P) ヨニアン・イリアス・カデシャ、トマス・レイフ(Vn)
 ノーラ・ロマノフ=シュヴァルツベルク(Va) カレル・ブレデンホルスト(Vc)
 ラルス・オラフ・シャーパー(Cb) アンドレアス・ロクセス、
 クリスティアン・ガーバー、ヴィッレ・ヒルトゥラ(バンドネオン)
 録音:2018年2月、イエス・キリスト教会、ベルリン。ピアニストのマーティン・クレットはクラシックのみならず「クアルテート・ソロ・タンゴ」のメンバーとしてもタンゴ・アルバムを発表している俊英。今作はアンサンブルを拡大し、弦楽器一人ずつの室内楽編成によるバッハの協奏曲と、バンドネオンを含む編成のタンゴを組み合わせた1枚となっており、多彩な音楽性に魅せられる。例えばヴィヴァルディとピアソラの「四季」を組み合わせることがあるように、バロックとタンゴを並べることは既に試みられている、またバッハの音楽は色々な時代・様々なスタイルの音楽と自然に響き合うものだ、というのがクレットの考え方。「ラメント(嘆き)」というバロック特有の用語も、「ミ・ラメント」というタンゴと響き合っている。
レナード・バーンスタイン:ピアノ&室内楽作品集
 4つの記念日(1954) P1 /4つの記念日(1948) P1 /7つの記念日(1943) P1 /13の記念日(1989) P1 /
 ピアノ・ソナタ(1938) P1 /タッチズ(1981) P1 /レナード・バーンスタインのヴィジョンCl/P2 /
 クラリネット・ソナタCl/P2 /ヴァイオリン・ソナタVn1/P2 /ピアノ三重奏曲(1937) Vn2/Va/P1 /
 ミサ曲からの3つの瞑想(1971) Vc/P2 /ミッピー1世のためのワルツ(1948) Hr/P2 /
 ミッピー2世のためのワルツ(1948) Tb /ミッピー3世のためのワルツ(1948) Tu/P2 /
 ライフィのためのロンド(1948) Tp1/P2 /舞踏組曲(1990) Hr/Tp1/Tp2 /
 バイマのためのファンファーレ(1948) Hr/Tp1/Tp2 /8音音階による変奏曲(1988) Re/Vc /
 ブライダル組曲(1960) P2/P3 /2台ピアノのための音楽(1937) P2/P3 /4人のサブラ(1950?) P1

 ベンヤミン・ヌス(PP1) ウェイン・マーシャル(PP2
 ジェニファー・ミカレフ(PP3) エニー・ミレス(ClCl
 チャド・フープス(VnVn1) リサ・シューマン(VnVn2
 フェルナンド・ニーナ(VaVa) マリア・クリーゲル(VcVc
 ポール・バン・ゼルム(HrHr) ジェフリー・カント(TbTb
 ハンス・ニッケル(TuTu) ピーター・メンケディーク(TpTp1
 ピーター・ロス(TpTp2) モーリス・シュテーガー(リコーダーRe
 録音:2017-2018年。2018年に生誕100年を迎えたバーンスタインを祝福する記念アルバム。作曲家としては、交響曲やミュージカルといったオーケストラもののイメージが強いバーンスタインだが、ピアノ曲や室内楽も多く残している。CD3枚分、最新録音で愉しめる注目セットの登場。
フランス万歳!〜ルール・ピアノ・フェスティヴァル Vol.37
 ド-ビュッシー:
-   映像〔第1集/第2集〕[セルゲイ・レドキン(P)/喜びの島[ヤミナ・ガール(P)]/
  版画/ピアノのために[藤田真央(P)]/2つのアラベスク[イグナ・フィオリア(P)]/
  歌曲集(9曲)[サラ・フォックス(S) フランソワ・ル・ルー(Br) グレアム・ジョンソン(P)]/
  ピアノ三重奏曲[テオ・フシュヌレ(P) 梁 美沙(Vn) ビクター・ジュリアン・ラフェリア(Vc)]
 サン=サーンス:6つのバガテル Op.3 /カナリアのワルツ Op.88 /物憂げなワルツ Op.120 /
         愉快なワルツ Op.139[ジュアン・カルロス・フェルナンデス・ニエト(P)]/
         アルバム Op.72[ヤミナ・ガール(P)]/ガヴォット Op.23[藤田真央(P)/
         アルバムのページ[セルゲイ・レドキン(P)]/歌曲集(13曲)
          [ソラヤ・マフィ(S) フランソワ・ル・ルー(Br) グレアム・ジョンソン(P)]
 ショーソン:ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲
  [ベンジャミン・モーザー(P) リザ・フェルシュトマン(Vn) デリアンSQ ]
 録音:2018年、ライヴ。ルール地方で毎年行われるこのピアノ・フェスティヴァルはドイツでも最大級の音楽祭。世界各国からピアニストが集結、若手の逸材も参加し豊かな音楽が奏でられる。シリーズ37集となる今作にはドビュッシー没後100年に沸いた2018年の演奏会を収録。ドビュッシーにサン=サーンスやショーソンを組み合わせフランス音楽の粋を楽しむアルバムとなっている。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディション Vol.36 〜アメリカ
 ヒナステラ:3つのアルゼンチンの踊り Op.2 / モイセス・モレイロ:ホローポ / ピアソラ:フーガと神秘
 ヴィラ=ロボス:赤ちゃんの一族 より
   〔色白の娘(陶器の人形)/小麦色の娘(張りぼての人形)/貧乏な娘(ぼろ切れの人形)/道化人形〕
 ヒナステラ:マランボ Op.7 / ピアソラ:天使の死
  [セルジオ・ティエンポ(P)/録音:2017年7月4日、イバッハ・ハウス、シュヴェルム、ライヴ]
 ホセ・アントニオ・レセンデ・デ・アルメイダ・プラド:ノトゥルノ第4番
 ホセ・ビエイラ・ブランデオ:エストゥド第1番 / フランシスコ・ミニョーネ:街角のワルツ第1番
 カルロス・ロペス・ブチャルド:バイレシィト / クラウジオ・サントロ:前奏曲/ブラジルのダンス第1番
 ピアソラ:アルフレッド・ゴビの肖像/ピグマリオン/タンゴ・エチュード第3番(山本京子編曲)
  [アンナ・ザッシモワ(P)/録音:2017年5月21日、メールス、ドイツ、ライヴ]
 ヒナステラ:3つの小品 Op.6 [チャン・ツォ(P)/録音:2017年5月29日、ツェッヘ・ホラント、
                 アルテ・ローンハレ、ボーフム=ヴァッテンシャイト、ライヴ]
 バーバー:思い出Op.28 〜ためらいのタンゴ / ガーシュウィン:3つの前奏曲
  [プラメナ・マンゴヴァ(P)/録音:2017年7月11日、グスタフ・リュプケ美術館、ハム、ライヴ]
 エドワード・マクダウェル:ソナタ第2番 Op.50 「エロイカ」
  [ヨゼフ・モーク(P)/録音:2017年7月17日、 LWL 芸術文化美術館、ミュンスター、ライヴ]
 ヘンリー・カウエル:2台のピアノのためのケルティック・セット
 ウィリアム・ボルコム:2台のピアノのためのソナタ
 ジョン・アダムズ:2台のピアノのためハレルヤ・ジャンクション[滑川真希、デニス・ラッセル・デイヴィス(P)/
   録音:2017年7月11日ツェッヘ・ツォルフェライン、ハレ12、エッセン、ライヴ]
 ミヒャエル・クリューガー: VerpassteGelegenheiten[ミヒャエル・クリューガー(朗読)] マンフレート・トロヤーン/ミヒャエル・クリューガー:Verpasste Gelegenheiten(語り手とピアノのための)
  [ハンニ・リャン(P) マンフレート・トロヤーン(朗読)/
   録音:2017年7月16日、レーンブルック美術館、デュースブルク、ライヴ]
ドイツのルール地方で毎年行われる「ルール・ピアノ・フェスティヴァル」。このピアノフェスティヴァルはドイツでも最大級の音楽祭で、世界のピアニストが定期的に集まる出会いの場。また豊かな才能を持った若手の登竜門にもなっている。これまで名前や評判だけを耳にして演奏を聴く機会のなかったピアニストなどピアノ好き必聴の音楽祭。2017年のテーマは「アメリカ大陸の音楽」。CD1には南米の作曲家たちの色鮮やかで華やかな音楽が収録されている。ヒナステラ、ヴィラ=ロボス、ピアソラと言った南米を代表する作曲家から、モイセス・モレイロやクラウジオ・サントロ、カルロス・ロペス・ブチャルドなどあまり知られていない作曲家の魅力的な作品も収録されている。演奏するのは、ベネズエラ出身のピアニスト、セルジオ・ティエンポ。圧巻のテクニックをもち、特にアルゼンチンの民族舞曲を用いたヒナステラの「マランボ」は、独特のリズムや響きもお手の物。CD2には北米の作曲家。ニューヨーク生まれのエドワード・マクダウェルは、ヨーロッパの後期ロマン派の様式をアメリカに広め、さらには音楽教育にも力を注ぎ、アメリカの音楽発展に大きく貢献した人物。抒情的で素朴な美しさをたたえた音楽が魅力。一方、20世紀前衛音楽、実験音楽にも影響を与えたヘンリー・カウエル。ここでは、滑川真希とデニス・ラッセル・デイヴィスがパーシー・グレインジャーのために作曲された「2台ピアノのためのケルティック・セット」を演奏している。CD3は、作家ミヒャエル・クリューガーによる「メロドラマ」。19世紀欧米で流行した語りと音楽で構成された「メロドラマ」。ドイツの現代作曲家マンフレート・トロヤーンによる音楽でこの音楽祭で初演された。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル Vol.34 〜2015年ライヴ
 シベリウス:6つの即興曲 Op.5 /5つの小品(樹の組曲)Op.75
  [ヘンリ・ジークフリートソン(P)/2015年5月10日]/
       5つの小品(草花の組曲)Op.85[アンドレイ・ググニン(P)/2015年6月6日]/
       2つのロンディーノ Op.68 /ソナチネ第1番 嬰ヘ短調 Op.67 /小ワルツ Op.40 No.1 /
       6つのバガテル Op.97 より〔ユモレスク I Op.97 No.1 /ユモレスク II Op.97 No.6 〕/
       村の教会 Op.103 No.1 /2つの小品 Op.111b /5つのスケッチ Op.114
  [ルディ・シュプリング(P)/2015年5月14日]
 グリーグ:ノルウェー舞曲 Op.35 (*) /人びとの生活の情景 Op.19
  [ヤ=フェイ・チャン(P) ロバート・レヴィン(P;*)/2015年5月26日]/
       ピアノ・ソナタ ホ短調 Op.7 /抒情小曲集より〔ワルツ Op.38 No.7 /ノクターン Op.54 No.4 /
        スケルツォ Op.54 No.5 /家路 Op.62 No.6 〕[ヨアキム・カール(P)/2015年6月5日]/
       抒情小曲集より〔小人の行進 Op.54 No.3 /郷愁 Op.57 No.1 /蝶々 Op.43 No.1 /
        トロルドハウゲンの婚礼の日 Op.65 No.6 ][ベンジャミン・モーザー(P)/2015年6月29日]
 スクリャービン:ピアノ・ソナタ第3番 嬰ヘ短調 Op.23[チホ・ハン(P)/2015年6月4日]/
         ピアノ・ソナタ第4番 嬰ヘ長調 Op.30 /詩曲「炎に向かって」 Op.72
          [パヴェル・コレスニコフ(P)/2015年5月31日]/幻想曲 ロ短調 Op.28 /
         練習曲 嬰ニ短調 Op.8 No.12[ベンジャミン・モーザー(P)/2015年6月29日]/
         練習曲 嬰ハ短調 Op.2 No.1 /練習曲 嬰ト短調 Op.8 No.9
          [ドゥダナ・マツマニシュヴィリ(P)/2015年4月22日]/
         3つの小品 Op.45 /5つの前奏曲 Op.74 [アンドレイ・ググニン(P)/2015年6月6日]
 ドイツ屈指の工業地帯として知られている、ルール地方で毎年行われるこのピアノ・フェスティヴァル。世界のピアニストが定期的に集まる出会いの場。第1回の開催セレモニーではマウリツィオ・ポリーニが登場、すでに有名になった音楽家だけでなく、コンクール入賞者など豊かな才能を持った若手の登竜門にもなっている。34弾となる本アルバムは、2015年アニヴァーサリー・イヤーだったシベリウスとスクリャービンに焦点を当てたプログラムだった。才能あふれる10人の若きピアニストが参加しており、フィンランド出身のヘンリ・ジークフリートソン。ロシアの若手アンドレイ・ググニン。歌曲の伴奏者や教育者としても活躍するドイツのルディ・シュプリング。台湾出身でアメリカで活動しボストン音楽院でも教えているヤ=フェイ・チャン。グリーグ国際ピアノ・コンクールの覇者俊英ピアニスト、ヨアキム・カール。ミュンヘン音楽一家に生まれ数々のコンクールで入賞しているベンジャミン・モーザー。1992年韓国出身で同世代のピアニストの中でも最も実力を評価されているチホ・ハン。ジョージア州出身の女性ピアニスト、ドゥダナ・マツマニシュヴィリ。とこれからのピアノ界を担っていく注目の奏者の演奏をまとめて聴くことのできるピアノ・ファン必聴のアルバム。
セクエンツァ
 ビーバー:ロザリオのソナタ〜パッサカリア / シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ短調 Op.121 (*)
 シャリーノ:6つのカプリス より〔第2番 アンダンテ/第5番 プレスト〕 / ベリオ:セクエンツァ VIII

 フランツィスカ・ヘルシャー(Vn) セヴェリン・フォン・エッカートシュタイン(P;*)
 録音:2018年5月-6月、ドイツ放送カンマームジークザール、ケルン。バッハの無伴奏ヴァイオリン以前の作品のなかでは群を抜いて人気があり重要な作品であるビーバーのパッサカリアに、現代イタリアの技巧的な無伴奏を絡め、最後はシューマンの重厚なソナタで締めくくる、生半可な覚悟では挑めないカップリングの1枚。シャリーノのカプリスはフラジオレットを駆使したもので、複雑かつ幻想的な音が風となって吹き乱れます。また様々な楽器の特殊奏法を開拓するために書かれたベリオのセクエンツァ・シリーズからのヴァイオリン曲も微妙な音程と音色を追求した先鋭的な作品。
モーツァルト:弦楽四重奏曲集 Vol.2
 〔第1番 ト長調「ローディ」 K.80 /第17番 変ロ長調「狩」 K.458 /第20番 ニ長調「ホフマイスター」 K.499 〕

 アルミーダSQ
 録音:2018年7月。アルミーダ四重奏団は2006年にベルリンで設立されたカルテットで、「弦楽四重奏の父」ハイドンのオペラ作品を名に冠している。2021年までに完結予定のモーツァルトの弦楽四重奏曲全曲録音の第2弾。若々しくも天才的な手際の良さを感じさせる第1番、完成度の高い「ハイドン・セット」の中の1曲で「狩」の名で知られる第17番、ハイドン的愉悦のフィナーレが楽しい第20番を収録。軽やかな演奏で瑞々しく奏でられる。
バガテル
 リゲティ:ムジカ・リチェルカータ&ベートーヴェン:11のバガテル Op.119
 ベートーヴェン:6つのバガテル Op.126
  ヘルベルト・シュフ(P)
 録音:2017年12月、バイエルン放送スタジオ2。リゲティとベートーヴェンを組み合わせたバガテル・アルバム。リゲティの「ムジカ・リチェルカータ」は11曲からなるが、そのうち6曲は作曲家本人の手によって木管五重奏のために編作され「6つのバガテル」というタイトルが付けられているので、もともとバガテルの性格を持った曲集と見ても良いだろう。このCDは独特な手法がとられ、同じ11曲入りのベートーヴェンの Op.119とセットにして、1曲ずつリゲティ、ベートーヴェン、リゲティ、ベートーヴェン…と交互に収録している。ひとつの音高や限られた響きを使って様々なリズムを探求し、だんだんと語法を豊かにしていくリゲティと、これまた最低限の素材でさまざまなミニアチュールを描いてみせるベートーヴェン。この組み合わせの妙がなかなか刺激的で面白く、両曲集の新たな魅力に気付かされる。シュフはこの手法を実際のコンサートでも試しており、手ごたえを感じた上でのCD化となったようだ。そして最後にベートーヴェン後期の書法がシンプルな形で結晶化された名品 Op.126が続き、幕を閉じるプログラムとなっている。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディション Vol.33 (2014) 〜左手のための作品集&ジャズ
 * CD 1【ベンヤミン・モーザー】
 スクリャービン:2つの左手のための小品 Op.9
 ゴドフスキ:左手のためのショパンのエチュードによる練習曲 Op.10 より 〔第13番 変ホ短調/第5番 変ホ長調〕
 アムラン:練習曲第7番「チャイコフスキーによる左手のための練習曲」
 ブラームス/モーザー編曲:左手のための「子守歌」[録音:2014年5月18日、ライヴ]
    【ヨーゼフ・モーグ】
 パウル・ウィトゲンシュタイン(1887-1961):左手のためのピアノ編曲集 / グリーグ:抒情小品集〜メランコリー
 シューベルト/リスト:君は安らぎ
 メンデルスゾーン:無言歌集 Op.67 No.3 /真夏の夜の夢〜第7曲「夜想曲」[録音:2014年7月5日、ライヴ]
 モーグ:練習曲第4番「チェロキー」(トリビュート・トゥ・アート・テイタム)
  [録音:2011年、ロンドン、キングス・プレイス]

    【マルク=アンドレ・アムラン】
 ゴドフスキ:左手のためのショパンのエチュードによる練習曲 Op.10 より
  〔第2番 変ニ長調/第12番 変ト長調/第44番 ヘ短調/第22番/嬰ハ短調][原盤: hyperion ]

 * CD 2 コルンゴルト:2つのヴァイオリン、チェロと左手ピアノのための組曲 Op.23
  [ヘルベルト・シュフ(P) ミリヤム・コンツェン、ジョヴァンニ・グッツォ(Vn)
   ベアーテ・アルテンブルク(Vc)/録音:2014年6月4日、ライヴ]
     【講演】左手のためのピアノ作品について[ロバート・レヴィン/収録:2014年7月5日]
 * CD 3 ジャズ 「 Deep Impressions 」
  Little Red Ribbon (Ludwig Nuss, Posaune) / Ruby My Dear (John Marshall, Flügelhorn) /
  My Church (Johan Hörlen, Altsaxophon) / Happiness (Johan Hörlen, Altsaxophon) /
  Smile (Andy Hunter, Posaune | Paul Heller, Tenorsaxophon) / Baby Plum (Paul Heller, Tenorsaxophon) /
  Mother (Andy Haderer, Flügelhorn) / Gouache (Shannon Barnett, Posaune |
   Rob Bruynen, Trompete | Hans Dekker, Drums)[ジャッキー・テラソン(P)
    ケルンWDRビッグバンド マイケル・アベン(編曲)/録音:2014年6月24日]
 ドイツ屈指の工業地帯として知られている、ルール地方で毎年行われるこのピアノ・フェスティヴァル。世界のピアニストが定期的に集まり、豊かな才能を持った若手の登竜門にもなっている。2014年の音楽祭を収録した本アルバムは、「左手のための作品」を集めた内容。超絶技巧で知られるマルク=アンドレ・アムラン。高い技術と繊細なタッチを持つドイツ期待のピアニスト、ヨーゼフ・モーグ。2007年のチャイコフスキー国際コンクール入賞を果たすなど目覚しい活躍を見せるベンヤミン・モーザー。さらに現代ジャズを代表するピアニスト、ジャッキー・テラソンも参加し、卓越した技術をもつピアニストたちが難曲揃いの「左手のための作品」を聴かせてくれる。「左手のための作品」というのは、左手強化のための練習曲や、様々な理由で両手での演奏が出来なくなったピアニストたちのために作曲されたものがある。スクリャービンの2つの左手のための小品は、スクリャービンが同級生と難曲演奏を競い合って右手を壊してしまい、その時左手の訓練のために書かれた作品。モーザーが叙情的で美しい旋律を見事に描き出している。ヨーゼフ・モーグが弾く、パウル・ウィトゲンシュタインは、第一次世界大戦で右腕を失ったピアニスト。ラヴェル、ブリテン、R.シュトラウス、ヒンデミット、プロコフィエフら20世紀の錚錚たる 面々が彼のために作曲している。ここではウィトゲンシュタインが、ショパン、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、リストらの作品を編曲した練習曲集から選曲され収録している。そしてアムランといえばゴドフスキ(既存の音源からの収録)。ショパンのエチュードを左手だけで弾かせるという何とも高度なピアノ技巧が展開されているが、アムランは難なく弾いている。ディスク2に収められているのは、コルンゴルトの「2つのヴァイオリンとチェロと左手ピアノのための組曲」。この作品もあのウィトゲンシュタインの委嘱作品。コルンゴルトはこの組曲の前に「左手のためのピアノ協奏曲」もウィトゲンシュタインのために作曲している。そのあとに収録されているのが、ロバート・レヴィンによる「左手のための作品」についての講演。様々な角度から作品を分析した内容が30分間収められている。最後にディスク3には、ジャズ・ピアニスト、ジャッキー・テラソンとWDRビッグバンド、そして作曲/編曲を務めるマイケル・アベンのタッグによる演奏が収録されている。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディション Vol.32
 シューベルト:4つの即興曲 Op.142, D.935 より Nos.3-4 / ラヴェル:夜のガスパール
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 Op.57「熱情」[フェデリコ・コッリ(P)/2013年6月1日]
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op.109 / ヘンデル:組曲第4番 ニ短調 HWV.437
 シューマン:クライスレリアーナ Op.16[ワルワラ・ネポムニャシチャヤ(P)/2013年5月30日]
 モーツァルト:幻想曲 ニ短調 KV397 / シューベルト:ピアノ・ソナタ イ長調 Op.120, D.664
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 Op.111 / リスト:イゾルデの愛の死 S447
  [イスマエル・マルゲン(P)/2013年5月31日]
 ベートーヴェン/リスト編曲:遙かなる恋人に寄す Op.98 / シューマン:幻想曲 ハ長調 Op.17
 ドビュッシー:12の練習曲〜第1部 / シューベルト/リスト編曲:水の上で歌う
 シューマン/リスト編曲:ミルテの花 / ヴェルディ/リスト編曲:「リゴレット」による演奏会用パラフレーズ
  [エイヴァン・ユー(P)/2013年5月13日]
 ハイドン:ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob.XVI: 24 / モーツァルト:幻想曲第2番 ニ短調 KV397
 ワーグナー:黒鳥館への到着(アルバムの綴り)WWV95 / ワーグナー/モシュコフスキ編曲:イゾルデの愛の死
 ワーグナー/タウジヒ編曲:ワルキューレの騎行 / ドビュッシー:3つの「忘れられた映像」
 ヴェルディ/リスト編曲:「リゴレット」による演奏会用パラフレーズ/
            「トロヴァトーレ」による演奏会用パラフレーズ/「エルナーニ」による演奏会用パラフレーズ
  [ヨーゼフ・モーグ(P)/2013年5月13日]
 毎年ドイツのライン、ルール川周辺の主力産業都市で行われているルール・ピアノ・フェスティヴァル。毎年豪華な出演者に注目が集まり、2014年は、アンドラーシュ・シフ、アルフレード・ブレンデル、マリア・ジョアン・ピリス、そしてマルタ・アルゲリッチと錚々たる面々が参加している。そしてもう一つの音楽祭の魅力は、各国際コンクールなどで優秀な成績を残した有望な若手ピアニストが多数登場する点。このアルバムは2013年のハイライトを収録した内容で、ヨーゼフ・モーグ、フェデリコ・コッリ、ワルワラ・ネポムニャシチャヤ、イスマエル・マルゲン、エイヴァン・ユーといった若手ピアニストの演奏が収録されている。ヨーゼフ・モーグは、1987年ドイツのルートヴィヒスハーフェン生まれ。音楽家の両親を持ち4歳からピアノをはじめる。カールスルーエ音楽大学を経て、ヴュルツブルクでグレムザーに、ハノーファーでヴァルディに師事。2012年にはクラシックの権威ある賞ICMAで“2014年の若手アーティスト "に選出、2014年には“2014年のソロ・アーティスト "にエリザベート・レオンスカヤと共に選ばれるなど、世界で注目されているピアニスト。エイヴァン・ユーは1987年香港生まれ。9歳のときにヴァンクーヴァーへ移住し、ケンス・ブロードウェイ、ラルフ・マークハムに師事。その後ドイツのベルリン芸術大学のクラウス・ヘルビヒのもとで学ぶ。現在はベルリン在住。カナダ・ショパンコンクールで優勝、スペイン・サンタンデール国際ピアノコンクールで2位と聴衆賞を獲得、高く評価されていった。イスマエル・マルゲンは1992年生まれ。ジャック・ルヴィエやロジェ・ムラロらに師事。2012年12月のロン=ティボー国際音楽コクールで第3位および聴衆賞を受賞している。ワルワラ・ネポムニャシチャヤは1983年モスクワ生まれ。モスクワにあるグネーシン音楽大学で学び、その後モスクワ音楽院でミハイル・ヴォスクレセンスキー教授に師事。そして2011年からハンブルク音楽演劇大学でエフゲニー・コロリオフの下で研鑽を積んでいる。コンクール入賞経験も豊富で、2012年ゲザ・アンダ国際コンクールで第1位、聴衆賞、モーツァルト賞を獲得し注目を集めたピアニスト。フェデリコ・コッリは1988年イタリア、ブレシア生まれ。ミラノ音楽院で学ぶ。2011年モーツァルト国際コンクール、2012年リーズ国際コンクールと相次いで優勝した新時代を代表するであろうピアニストの一人。
Violin Sonatas of the early 20th century
 シマノフスキ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ニ短調 Op.9
 ヒンデミット:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 変ホ長調 Op.11 No.1
 レスピーギ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ P.110
  デュオ・ビリンガー[レア・ビリンガー(Vn) エスター・ビリンガー(P)]
 ドイツの姉妹デュオ、レア・ビリンガーとエスター・ビリンガーによる20世紀初頭のヴァイオリン・ソナタ集。シマノフスキの初期の作品であるヴァイオリン・ソナタ。表現主義の影響が色濃く表れたヒンデミットのヴァイオリン・ソナタ Op.11 No.1。そして自身もヴァイオリン、ヴィオラ奏者として活動していたレスピーギのロマンティックなヴァイオリン・ソナタ。技巧的にも音楽的にも難しい3曲を多彩な表現力と輝くような音色で見事に聴かせてくれる。ヴァイオリンのレアは、3歳でヴァイオリンをはじめ、モーツァルトテウム音楽大学でイゴール・オジム氏、ウィーン・コンセルヴァトリウム音楽大学でパヴェル・ヴェルニコフ氏に師事している。幼少の頃から才能を開花させ、14歳のときにはパヴェル・バレフ指揮ベルリンso. と共演し、その後各地の音楽祭に招待される。クロスター・シェーンタール国際ヴァイオリン・コンクール、ロドルフォ・リピツァー賞ヴァイオリン・コンクール、ルートヴィヒ・シュポア国際ヴァイオリン・コンクールなど数々の国際コンクールで入賞。使用楽器はドイツ音楽財団から貸与されたジョバンニ・バッティスタ・チェルーティ(1800年頃/クレモナ)。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディション Vol.31
 ワーグナー&ヴェルディ〜パラフレーズ、トランスクリプション&現代音楽集

 ・ワーグナー:パラフレーズ&トランスクリプション
  ワルキューレの騎行(カール・タウジヒ編曲)/イゾルデの愛の死 (モシュコフスキ編曲)
   [ヨーゼフ・モーグ(P)/2013年5月13日]/
  「ニーベルングの指輪」より〔ジークムントの愛の歌/魔の炎の音楽〕(ルイ・ブラッサン編曲)/
  「トリスタンとイゾルデ」前奏曲 (ゾルターン・コチシュ編曲)
   [セヴェリン・フォン・エッカートシュタイン(P)/2013年6月19日]/
  「神々の黄昏」〜葬送行進曲(ブゾーニ編曲)[フェデリコ・コッリ(P)/2013年6月1日]/
  「タンホイザー」 より〔序曲/おお、優しい夕星よ〕(リスト編曲)[チャン・ヤ=フェイ(P)/2013年7月13日]
 ・ヴェルディ&ワーグナー:パラフレーズ&トランスクリプション
  「リゴレット」パラフレーズ/「トロヴァトーレ」 のミゼレーレ/「エルナーニ」パラフレーズ (リスト編曲)
   [ヨーゼフ・モーグ(P)/2013年5月13日]/
  「アイーダ」より〔賛歌/行進曲/舞曲〕(2台のピアノのための/ガブリエル・ピエルネ編曲)/
  「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲(2台のピアノのための/レーガー編曲)/
  「ニーベルングの指輪」〜バイロイトの思い出(4手ピアノのための/フォーレ&メサジェ編曲)/
  「トリスタンとイゾルデ」〜ミュンヘンの思い出(4手ピアノのための/シャブリエ編曲)
   [チャン・ヤ=フェイ、ロバート・レヴィン(P)/2013年7月13日]
 ・現代音楽集
  リスト:不吉な星、不吉な災難 S.208 / ペーター・ルジツカ(1948-):凶星について(#)
   [ソフィー・マユコ=フェッター(P)/2013年7月17日、2013年5月30日(#) ]
  シドニー・コルベット(1960-):クントリーの碑[S.フォン・エッカートシュタイン(P)/2013年6月19日]
  フランク・アムサレム(1961-): Brooding (+) / ヴァソス・ニコラウ(1971-):練習曲 Nos.6-8
  ヨルク・ヘラー(1944-):タマラのために[タマラ・ステファノヴィチ(P)/2013年5月12日(+)、2013年5月23日]
  マルク・アンドレ=アムラン(1961-):舟歌[マルク・アンドレ=アムラン(P)/2013年6月29日]
 録音:[/内]、全てライヴ。ドイツ屈指の工業地帯として知られている、ルール地方で毎年行われるこのピアノフェスティヴァル。世界のピアニストが定期的に集まる出会いの場。第1回の開催セレモニーではポリーニが登場、すでに有名になった音楽家だけでなく、豊かな才能を持った若手の登竜門にもなっている。2013年は音楽祭25年周年という節目の年だった。第31弾目となる本アルバムは、2013年アニヴァーサリー・イヤーだったワーグナーとヴェルディに焦点を当てたプログラム構成となっている。リスト、ルイ・ブラッサン、カール・タウジヒ、ブゾーニ、コチシュ、モシュコフスキらが編曲したワーグナーとヴェルディの作品と現代音楽家がワーグナー、ヴェルディの音楽に影響されて書いた作品を収録した3枚組仕様。これらの作品は、技巧はもちろんのこと、ワーグナーとヴェルディの壮大な舞台芸術の世界を描く表現力が必要とされる。このアルバムに登場する若き実力者たちは、そのような難曲も自分のものにし、卓越したテクニックと優れた音楽性で聴かせてくれる。注目はドイツの若手ヨーゼフ・モーグ。1987年ドイツ、ルートヴィヒスハーフェンの音楽一家に生まれ。幼少のころから才能を開花させ、数々のコンクールで入賞。最近では、ヨーロッパ各国の音楽専門誌や放送局の批評家により選出される名誉あるICMA (International Classical Music Awards)で2012年に「Young Artist of the Year」を受賞、2014年には「Solo Instrumentalist of the Year」を受賞に今最も注目されているピアニストの一人。2014年日本で行われるラ・フォル・ジュルネにも出演予定で今後の活躍に目が離せない。このアルバムに収録されているモシュコフスキ編曲の「イゾルデの愛と死」は、ヨーゼフ・モーグの美しいピアノの音、透徹した歌心で説得力のある演奏を聴くことが出来る。その他にも「ワルキューレの騎行」やヴェルディ/リスト編曲の演奏会パラフレーズなど力強くも繊細な響きの演奏を披露している。また、2003年エリーザベト王妃国際コンクール優勝したセヴェリン・フォン・エッカートシュタイン。リーズ国際コンクール優勝のフェデリコ・コッリ。台湾で神童として注目され18歳でケルン国際ピアノ・コンクール優勝したチャン・ヤ=フェイ。シュトックハウゼンの弟子であったミヒャエル・フェッターを祖父に持ち、自身も現代曲もレパートリーとして持つ札幌生まれのソフィー・マユコ=フェッター。エマールの弟子で現代音楽を得意とし、自身に捧げられた作品を本アルバムでは演奏しているタマラ・ステファノヴィチ。そしてベテラン、ロバート・レヴィン、マルク・アンドレ=アムランらの演奏が収録され、ピアノ・ファンの祭典らしい音楽祭の魅力が詰まっている。
SIN PALABRAS - Without Words
 3つのタンゴ(アニバル・トロイロのスタイルによる)/コルティナ( Karel Bredenhorst: サンバによる)
 3つのミロンガ/コルティナ(J.S.バッハ:パルティータ第3番 ホ長調 BWV.1006 のジーグによる)
 3つのタンゴ(オスバルド・プグリエーセのスタイルによる)
 コルティナ(J.S.バッハ:シンフォニア ト長調 BWV.796 による)
 3つのタンゴ(ルシオ・デマーレのスタイルによる)
 コルティナ( Julie Rokseth, Andreas Rokseth: Noctilucas による)
 3つのタンゴ・ワルツコルティナ(ショパン:前奏曲 嬰ハ短調 Op.28 No.10 による)
 3つのタンゴ(オラシオ・サルガンのスタイルによる)

 クアルテート・ソルタンゴ[アンドレアス・ロクセス(バンドネオン) マルティン・クレット(P)
                カレル・ブレデンホルスト(Vc) トマス・レイフ(Vn)]
 2008年に結成されたタンゴ四重奏団、クアルテート・ソロ・タンゴ。使用楽器はヴァイオリン、チェロ、バンドネオン、ピアノ。現代の室内楽を土台として伝統的なタンゴを奏でるスタイルが刺激に満ちた空間を作る。1stアルバム(4260085-533312)に続く2作目のタンゴ・アルバム。アルゼンチン・タンゴを踊る場のことを指す「ミロンガ」(単に踊りの形式を指すこともある)では、数曲セットになった「タンダ」と、ダンスに一区切りつけ踊り相手を替えるために様々なジャンルの音楽を流す「コルティナ」が交互に演奏される。このアルバムは伝統的なミロンガの雰囲気をそのまま伝える構成になっており、コルティナの部分ではメンバーによるソロや二重奏が繰り広げられる。
ラヴェル:夜のガスパール(*)
P.ヤルナッハ:3つのピアノ曲 Op.17 (#)
バルトーク:野外にて(+)
ルーシー・ヤルナッハ(P)
 録音:2009年6月10日(#)、2010年1月19日(*のオンディーヌのみ)、2011年9月27日(*/+)。ルーシー・ヤルナッハは、1987年ハンブルク生まれのピアニスト。G.グルマン、G.オピッツらに師事し、2002年にスタインウェイ国際ピアノコンクールで優勝したことで一躍注目を集めた。スカルラッティから現代作品まで幅広いレパートリーを持つヤルナッハが今回取り上げたのは、ラヴェル、バルトーク、P.ヤルナッハの3人。いずれも19世紀後半から20世紀現代を代表する作曲家たちであり、非常に高度な表現力と技術が求められる難曲ぞろいのプログラム。フィリップ・ヤルナッハ(1892-1982)はフランスを中心に活動していた20世紀を代表する作曲家の一人。ルーシーと同姓なのは偶然ではなく、彼女はフィリップの孫にあたる。「3つのピアノ曲」は1924年に作曲された作品であり、それぞれの楽章にバロック・ダンスのタイトルが付けられている。ブゾーニの影響も色濃く感じられる作風で、調性の狭間をおぼろげにさ迷うような旋律の数々が印象的。「サラバンド」がゆっくりとポリフォニックな響きをひとつひとつかみしめる曲調である一方で、「ブルレスカ」では音の跳躍と軽快なリズム感によって、どこかおどろおどろしくもある滑稽さが魅力的。ヤルナッハの指運びは非常に力強く、重々しい低音域の打音でもリズム感が失われることがないのが見事。バルトークの「野外にて」でも、タッチの明瞭さと力強さの魅力が存分に引き出されている。表現力も素晴らしく、ラヴェルで響かせる透明感あふれる音色とヤルナッハやバルトークで魅せるほの暗い深さを持った重々しい音色の使い分けは見事。今後のさらなる飛躍にも大いに期待が持てる、注目必至の若手。
鱒たち
 シューベルト:ピアノ五重奏曲「鱒」 D.667
 フェラント・クルイセント(1976-):シューベルトの「鱒」五重奏に基づく「サイバー変奏曲」
 ジェラルド・レッシュ(1975-): Teich und Quelle [Pond and Spring]
 ヨハネス・X.シャハトナー(1985-):シューベルトの「鱒」五重奏への補遺(2017/18)
 デヤン・ラツィック(1977-):シューベルトの歌曲「鱒」の主題による変奏曲「鱒の池」 Op.23 (2018)
 オスモ・タピオ・ライハラ(1964-):Kirkasvetinen (Brightwater – Lichtwasser) (2018)

 レーナ・ノイダウアー(Vn) ウェン=シャオ・チェン(Va)
 石坂団十郎(Vc) リック・ストテイン(Cb) ジルケ・アヴェンハウス(P)
 録音:2018年5月、 SWR ステュディオ、カイザースラウテルン。シューベルトのピアノ五重奏曲「鱒」を中心にすべて同曲の編成を取り、歌曲の同名曲からも発想を得た現代作曲家たちとのコラボレーション・アルバム。 シューベルトの「鱒」五重奏に、現代作曲家による「鱒」を基にしたさらなる変奏曲をカップリング。ピアノストのジルケ・アヴェンハウスは「鱒」五重奏をずっと録音したかったそうだが、それが珍しいアルバムとして結実した。5人の作曲家がそれぞれ特定の楽器を主役として作曲しており、すべて「鱒」のテーマに基づくものの、まったく性格の異なる性格の作品となっている。ピアニストとして有名なデヤン・ラツィックの作品も収録。
マーラー:交響曲「大地の歌」
 アンナ・ラーソン(A) ステュアート・スケルトン(T)
 アダム・フィッシャー指揮デュッセルドルフso.
 録音:2018年1月11日-15日、ライヴ。デュッセルドルフso. 首席指揮者のアダム・フィッシャー、2020年の契約満了までに全集を録音する計画でスタートしたマーラー交響曲全曲録音プロジェクトの第6弾。これまでに第7番、第4番、第1番、第5番、第3番が発売されており、くっきり緻密に描き分けつつも常に瑞々しい演奏が話題を呼んでいる。次なる新譜はマーラーの「第九」である「大地の歌」。アダム・フィッシャーの音造りは相変わらず丁寧で、紡がれる音楽は流麗その物。素朴な場面でもドラマティックな瞬間でも、しっかり鳴らしているのに見通し良く、常に気品のある響きが保たれている。第3番の録音でも名唱を聴かせたアンナ・ラーソンによる「告別」は大変な美しさ。冬の星空のように儚いラストが感動的マイケル・ティルソン・トーマス盤やラトル盤にも参加している「大地の歌」のスペシャリスト、スチュアート・スケルトンの透明かつ張りのある歌声も素晴らしく、実に完成度の高い録音となっている。
DIALOGUES MOZART · DEBUSSY · ZIMMERMANN
 モーツァルト:4手のためのソナタ ハ長調 K.521 / ドビュッシー:白と黒で L.134
 B.A.ツィンマーマン:2台ピアノのための「モノローグ」
  ギュルル・エンサリ、ヘルベルト・シュフ(P)
 録音:2018年4月、 SWR フンクステュディオ、シュトゥットガルト。 ドイツを代表する現代音楽作曲家、ベルント・アロイス・ツィンマーマンは2018年で生誕100周年。それを記念してギュルル・エンサリとヘルベルト・シュフの夫婦ピアノ・デュオがアルバムを発表する。他の作曲家のメロディを大胆に引用する手法をたびたび用いたB. A. ツィンマーマン、「モノローグ」でもモーツァルトやドビュッシーらの音楽が使われている。カップリングされた作品が引用元、という訳ではないが、4手作品で並べてみるとひとつの統一された世界観が生まれる。時代を超えたデュオの系譜をお楽しみ頂きたい。
ガーシュウィン:サックスとピアノのための前奏曲集Sax/P1
プーランク:ホルン、トランペットとトロンボーンのためのソナタ FP33a Hr/Tp/Tb
マルク・アイシェンヌ(1933-):
 ヴァイオリン、サックスとピアノのためのカンティレーヌとダンスVn1/Sax/P2
ルトスワフスキ:ヴァイオリンとピアノのためのパルティータVn2/P1
プーランク:ピアノ、オーボエとファゴットのための三重奏曲 FP43 P2/Ob/Fg
 アーシャ・ファチェーエヴァ(SaxSax) ラルス・フォークト(PP1
 シビル・マーニ(HrHr) ペーター・ドゥルピングハウス(TpTp
 エミリー・ホワイト(TbTb) フロリアン・ドンダラー(VnVn1
 キヴェリ・デルケン(PP2) アンナ・レズニアク(VnVn2
 スティーヴン・ハドソン(ObOb テオ・プラート(FgFg
 録音:2017年6月20日-25日、ハイムバッハ、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。 管楽器のための近現代作品を主軸に構成したアルバムで、フォークト自身の演奏も収録されている。ルトスワフスキなどフォークトらしい選曲が魅力。
ドヴォルジャーク:ピアノ三重奏曲第2番 ト短調 Op.26 (*)
スク:ピアノ四重奏曲 イ短調 Op.1 (#)
 クリスティアン・テツラフ(Vn;*) マキシミリアン・ホルヌング(Vc;*/#)
 キヴェリ・デルケン(P;*) マルティン・ヘルムヒェン(P;#)
 アンティエ・ヴァイトハース(Vn;#) ヴィッキ・パウエル(Va;#)
 録音:2017年6月、ハイムバッハ、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。名ピアニスト、ラルス・フォークトが1998年に創設した室内楽の音楽祭、「シュパヌンゲン音楽祭」での2017年ライヴ。音楽祭常連のテツラフら名手達が参加したドヴォルジャークとスークを収録している。美しい旋律と力強いアンサンブルが混然一体となった名演。
Pictures & Songs
 ムソルグスキー:展覧会の絵 / ガーシュウィン:3つの前奏曲
 アール・ワイルド:ガーシュウィンの歌曲による7つの超絶技巧練習曲集より
  〔第3曲 The Man I Love /第4曲 Embraceable You /第7曲 Fascinatin' Rhythm 〕/

          ラフマニノフの歌曲からのピアノ編曲
  〔夜の静けさ Op.4 No.3 /夢 Op.38 No.5 /小さな島 Op.14 No.2 /
   春の水 Op.14 No.11 /此処は素晴らしい場所 Op.21 No.7 〕

 ベンジャミン・モーザー(P)
 録音:2018年1月、イエス・キリスト教会、ダーレム、ベルリン。1981年にミュンヘンの音楽一家に生まれたベンジャミン・モーザーは、2003年アルトゥール・シュナーベル・コンクール第1位、2007年チャイコフスキー国際コンクール5位入賞および聴衆賞など華々しい経歴を持つ若き名手。ベートーヴェンとシューベルトの最後のソナタを収録したアルバム(4260085-533190)に続く2枚目のアルバムが登場。大曲「展覧会の絵」やアール・ワイルドが編曲した歌曲などを収録しており興味深い内容となっている。ラフマニノフの歌曲の編曲版はめっぽう美しい逸品。
シューベルト:白鳥の歌 D.957 より〔アトラス/君の肖像/漁師の娘/街/海辺にて/影法師〕
ブラームス:4つの厳粛な歌 Op.121 / バーバー:3つの歌曲 Op.45 (*) / バーンスタイン:アリアと舟歌(#)

 クリスティアン・イムラー(Br) アンナ・ステファニー(Ms;#)
 クリストフ・ベルナー(P) ダニー・ドライヴァー(P;*/#) シルビア・フレイザー(P;#)
 録音:2016年6月、2017年4月、バイエルン放送スタジオ2。 2001年パリのナディア&リリー・ブーランジェコンクールで優勝した経歴を持つクリスティアン・イムラー。バッハ・コレギウム・ジャパン、ヘレヴェッヘ、ミンコフスキなど古楽系指揮者との共演も多いが、このアルバムではドイツ・ロマンとアメリカを組み合わせて新たな一面を見せている。バーンスタインの「アリアと舟歌」は4手ピアノとメゾ・ソプラノ、バリトンという編成でファンタジーが大いに飛翔する。
パウル・ユオン:詩曲
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調
 「偉大な芸術家の思い出に」 Op.50
ブーランジェ・トリオ
 録音:2017年10月、ケルン。2006年にハンブルクで結成された女性3人によるブーランジェ・トリオ。CAVI MUSICやPROFILから既にいくつもリリースがある。今作は50分近い大作で長大な変奏曲が印象的なチャイコフスキーの名作「偉大な芸術家の思い出に」を録音した。堂々たる演奏が楽しめる。パウル・ユオン(1872-1940)はドイツで活躍したスイス系ロシア人の作曲家。
ベートーヴェン
 エロイカ変奏曲 Op.35 /2つのロンド Op.51
リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調
タマール・ベラヤ(P)
 グルジアの音楽一家で生まれ育った女性ピアニスト、タマール・バラヤによるベートーヴェンとリスト。高い技術を持ち開放的な演奏を聴かせるタイプで、自身お気に入りの作曲家だと言う2人の作品を豪快に奏でる。
マーラー:交響曲第3番 ニ短調
 アンナ・ラーション(S) アダム・フィッシャー指揮デュッセルドルフso.、
 クララ・シューマン・ユースcho.、デュッセルドルフ楽友協会cho.
 録音:2017年11月9日-13日、トーンハレ、デュッセルドルフ。 デュッセルドルフso. 首席指揮者のアダム・フィッシャー、2020年の契約満了までに全集を録音する計画でスタートしたマーラー交響曲全曲録音プロジェクトの第5弾。長大な第3番の登場。これまでに第7番、第4番、第1番、第5番が発売されており、くっきり緻密に描き分けつつも常に瑞々しい演奏が話題を呼んでいる。第1楽章、おおきなスケールで歌われるホルンの斉唱と続く金管コラールのニュアンスに富んだ繊細な音色からして、これはと思わせる名演。指揮者とオーケストラの呼吸がぴたりと合っている。素朴な旋律、震えるような音型、さまざまなテンポが目まぐるしく交錯する展開部の完璧な音響化も聴き物。終楽章の麗しさは本当に見事。ゆったりと奏でられるシンプルなメロディが、必要なものをすべて含んだ天上の音楽として立ち上る。シャイーのマーラー8番録音にも参加していた歌手、ラーソンのソロも美しく気品があり、フィッシャーの音造りとマッチした歌を聴かせる。
カーラ・カラーエフ(1918-1982):
 24の前奏曲/6つの子供のための小品/
 「ドン・キホーテ」より
エルナラ・イズマイロヴァ(P)
 2018年に生誕100年を迎えるカラーエフはアゼルバイジャンの作曲家。祖国の民族音楽ムガムなどをバクー音楽院で学んだ後にモスクワ音楽院でショスタコーヴィチに作曲を学んだ。そのためか現代的な和声に支えられ歌われる表情豊かな旋律が特徴。カラッとした響きの中から複雑な魅力がたちのぼる。バクー生まれのピアニスト、イズマイロヴァによる共感たっぷりの演奏でお楽しみ頂きたい。
カルロス・グァスタビノ(1912-2000):
 Bailecito Cantos Populares より Nos.1-3, 5-6, 8, 10 / Tres Romances Nuevos より Nos.1-2 / Las ninas
ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.36

 マーティン・クレット(P)
  1987年生まれの若きピアニスト、マーティン・クレットによる1枚。グァスタビーノはアルゼンチンの作曲家で、20世紀にしてその書法は完全なるロマン派。ラフマニノフのソナタがカップリングされているが全部同じ作曲家と言われれば騙されてしまいそうなくらい自然につながる。演奏も上々。ピアノ好き注目の美しいメロディと和声、心地よい技巧に満ちたアルバム。
クラリネット・デュオとオーケストラの饗宴
 サン=サーンス/ファイゲルソン編曲:序奏とロンド・カプリツィオーソ Op.28
 ベールマン:協奏的二重奏曲 Op.33 / ポンキエッリ:つどい Op.76
 ビゼー/レヴィタス編曲:カルメン幻想曲 / プロコフィエフ/レヴィタス編曲:「ロメオとジュリエット」組曲
 ガーシュウィン/ポヴォロツキー編曲:ラプソディ・イン・ブルー

 アレクサンダーガーフィンケル、ダニエル・ガーフィンケル(Cl)
 エヴェン・アレクシス・クリスト指揮コトブス市立o.
 アレクサンダー&ダニエル・ガーフィンケルは2本のクラリネットによる新星。何と双子で、見分けがつかないほどソックリな容姿。1992年生まれで、一家は3代にわたるクラリネット奏者の家系で、彼らも12歳でメータ指揮イスラエル・フィルと共演したという天才。基本は編曲だが、サン=サーンスの「序奏とロンド・カプリツィオーソ」など、こちらがオリジナルかと錯覚させられるほど音色もテクニックもピッタリ。
マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調 アダム・フィッシャー指揮
デュッセルドルフso.
 2015/2016シーズンよりデュッセルドルフso. の首席指揮者を務めているアダム・フィッシャー、2020年の契約満了までに全集を録音する計画でスタートしたマーラー交響曲全曲録音プロジェクト第4弾。これまでに第7番 (4260085-533497) 、第4番 (4260085-533787) 、第1番 (4260085-533909) が発売されている。どっしり構えたテンポ設定にして緻密で見通しの良いサウンドが特徴。オーケストラの技量も素晴らしく、明るい音色でくっきりと、すべての楽器が手に取るように聴こえてくる。第2楽章は激しく荒れ狂う音楽というよりも計算し尽くされたカオスという感じで、フレーズも強弱もテンポも、舌を巻くほど細やかなコントロール。一つの声部が他の声部をかき消すことなく、常に複数の要素に鮮明な意識が向けられており、マーラーならではの異様なポリフォニーが目の醒める精度で音楽化されている。アダージェットの弦楽の羽毛のような軽やかさと柔らかさも感動的。
ブラームス:2つのクラリネット・ソナタ Op.120
       〔第1番 ヘ短調/第2番 変ホ長調〕/
      4つの小品 Op.119 (*)
ニコライ・
 プフェファー(Cl;*以外)
フェリクス・ヴァール(P)
 ニコライ・プフェファーはドイツの若手クラリネット奏者。ザビーネ・マイヤー、カール・ライスターの弟子で、ドイツ派クラリネットの伝統継承者。相方のピアニスト、フェリクス・ヴァールは1986年ボン生まれ。パヴェル・ギリロフ、ジャック・ルヴィエ、レオンスカヤに師事した実力派。ともに若手に似合わぬ深いブラームスを聴かせてくれる。
チャイコフスキー
 ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35 /
 弦楽四重奏曲第3番 変ホ短調 Op.30
  (アンティエ・ヴァイトハース
   &ケーティ・シュトイリ編曲/弦楽オーケストラ版)
アンティエ・ヴァイトハース(Vn)
カメラータ・ベルン
 録音:2017年10月、ベルン、イッティゲン、スイス。 ヴァイトハース率いるカメラータ・ベルンによるチャイコフスキー。アルカント・カルテットの第1ヴァイオリンを務めるヴァイトハース。現在、1962年に設立された伝統ある弦楽アンサンブルグループ、カメラータ・ベルンのリーダー兼ソリストも務めている。両コンビの録音は、ベートーヴェンの弦楽編曲版 (4260085-532261) 、ブラームスのヴァイオリン協奏曲 (4260085-533435) に続く3作目。ヴァイオリンが華やかに活躍するチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。聴く者をあっという間に音楽に引き込み、哀愁に満ちた旋律、躍動感あふれるリズム、そして華麗なテクニックなどヴァイオリンの魅力を余すところなく堪能できる作品。安定感と豊かな音量でカルテットやアンサンブルの起点となるヴァイトハースだが、ここでは端正で凛とした佇まいのなかに円熟した深みのある演奏を聴かせる。特に第2楽章ではロシア風のエレジーを感じさせる音楽を披露している。カップリングには、弦楽四重奏曲第3番の弦楽オーケストラ版。チャイコフスキーは1876年、チェコのヴァイオリニスト、フェルディナンド・ラウブの死を悼んで弦楽四重奏曲第3番を作曲。ラウヴはチャイコフスキーの弦楽四重奏第1& 2番の初演にも携わった関係で、この3番を彼に献呈している。カメラータ・ベルンでコントラバスを担当するケーティ・シュトイリとヴァイトハースによる編曲は、第1〜3楽章までの悲哀に満ちた音楽を引き立て、希望を感じさせるフィナーレに向かって厚みのある豊かな響きが魅力的。
マーラー・エディション Vol.3
 マーラー:交響曲第1番 ニ長調
アダム・フィッシャー指揮
デュッセルドルフso.
 録音:2017年2月10日-12日、トーンハレ、デュッセルドルフ、ライヴ。 2015/2016シーズンよりデュッセルドルフso. の首席指揮者を務めているアダム・フィッシャー。2020年の契約満了までに全集を録音する計画でスタートしたマーラー交響曲全曲録音プロジェクト第3弾。マーラーを得意とするアダム・フィッシャーのチクルスということで、第1弾のマーラー交響曲第7番、第2弾の第4番ともに高い評価を得た注目のチクルスとなっている。フィッシャーは、躍動感あふれる、瑞々しいエネルギーに満ち溢れた音楽作りを行っている。さらには弱音の緊張感は特筆すべきものがあり、デュッセルドルフ響から新鮮な響きを引き出している。
ハンス・ゾマー(1837-1922):バリトンとピアノのための歌曲集
 Ballads & Romances Ops.8 & 11(抜粋)/ Loreley Op.7 /
 Jung Douglas und schon Rosabell Op.24 /Die junge Konigin Op.25 / Junge Anne Op.18 No.1

 セバスティアン・ノアック(Br) マヌエル・ランゲ(P)
 ドイツの作曲家ハンス・ゾマーの歌曲集。数学を学び、物理学の教授となり、さらに工科大学の学長も務めるなど音楽家としては異例の経歴を持つゾマー。作曲家としてもリヒャルト・シュトラウスとドイツ作曲家共同組合を創設するなど積極的に活動、歌劇や歌曲といった声楽作品を多く発表し成功を収めた。
グリンカ
 「母よ祝福されてあれ」の主題による変奏曲 ホ長調/ケルビーニ「ファシスカ」からの主題による変奏曲 変ロ長調/
 ドニゼッティ「アンナ・ボレーナ」からの主題による華麗な変奏曲 イ長調/
 バレエ「キア・キング」からの2つの主題による変奏曲 ニ長調
 アリャビエフの歌曲「ナイチンゲール」の主題による変奏曲
バラキレフ:グリンカ「ひばり」によるパラフレーズ / リャードフ:グリンカの主題による変奏曲

 ウラディーミル・ストウペル(P)
 録音:2016年6月、ケルン。 「近代ロシア音楽の父」と呼ばれるグリンカ。彼の代表作歌劇「ルスランとリュドミラ」は、ロシア国民主義のオペラの礎となった。ロシアの裕福な家系に生まれたグリンカは、作曲はほぼ独学で学び、ピアノはプライベート・レッスンとしてジョン・フィールドから教えを受けていた。グリンカは50曲ほどのピアノ曲を残しており、その作風はフィールドを思わせるロマンティックな物。美しい旋律に彩られた表情に富んだ作品ばかり。ここに収録されているのは、当時流行していた歌劇の旋律をもとにした変奏曲。グリンカは主題を多種多様に変化させながら発展させる方法で、バラキレフ、リャードフの2つの変奏曲も収録し、グリンカの変奏曲が後の作曲家に与えた影響のを順に追って行けるプログラム構成。ロシア生まれで現在ドイツで活躍するピアニスト、ウラディーミル・ストウペルの絶妙な選曲が光る。
プレスラー〜モーツァルト:ピアノ協奏曲集
 〔第23番 イ長調 K.488 (*) /
  第27番 変ロ長調 K.595 (#) 〕
メナヘム・プレスラー(P)
キンボー・イシイ指揮
マグデブルクpo.
 録音:2016年5月15日(*)、20日(*)、2016年12月15日-16日(#)、ライヴ。 1923年ドイツ・マグデブルクのユダヤ人家庭に生まれたメナヘム・プレスラー。ボザール・トリオのピアニストとして長年キャリアを積み、2008年に解散するまで、その全歴史を通じてピアニストを務め続けた。彼のソリストとしてのキャリアは、解散後彼が80代半ばから始まった。この録音は、2016年にプレスラーの出身地であるマグデブルクで行われたコンサートのライヴ。演目は、ソリスト、プレスラーの代名詞ともなっているモーツァルトのピアノ協奏曲。共演は、ドイツ・マグデブルク劇場音楽総監督のキンボー・イシイ指揮。プレスラーは作為的なものがまるで感じられない穏やかな演奏で、モーツァルト特有の天衣無縫な美しさを十二分に表現している。
オーボエとピアノ
 クレメント・スラヴィツキー(1910-1999):オーボエとピアノのための組曲
 ヤナーチェク:歌劇「イェヌーファ」〜サルヴェ・レジナ
 ハンス・ガル(1890-1987):オーボエとピアノのためのソナタ Op.85
 マルティヌー:モルダヴィア民謡
 パヴェル・ハース(1899-1944):オーボエとピアノのための組曲 Op.17
  ヴィオラ・ヴィルムゼン(Ob) 今仁 喜美子(P)
 録音:2015年12月、ベルリン。 ベルリン・ドイツso. の首席オーボエ奏者ヴィオラ・ヴィルムゼンと、ドイツと日本で活躍する日本人ピアニスト今仁 喜美子によるチェコの作曲家によるオーボエとピアノのための作品集。ヴィオラ・ヴィルムゼンは第9回国際オーボエコンクール・軽井沢で1位を獲得しており、さらに今仁 喜美子は同コンクールで第8〜10回で公式伴奏ピアニストを務めていた経緯もあり、旧知の仲。さらに今仁 喜美子は、名オーボエ奏者モーリス・ブルグが結成したトリオでもピアニストを務めており、現在オーボエと組んだら右に出るもののいないピアニストの一人。ヤナーチェクの影響を大きく受けたクレメント・スラヴィツキーの民族色豊かな組曲からはじまり、ヴィルムゼンがオーボエ用に編曲したヤナーチェクの歌劇「イェヌーファ」の美しいアリアが続く。そしてウィーン近郊で生まれナチスから逃れてイギリスに渡ったハンス・ガルのソナタ。ドイツ・オーストリアのロマン派音楽の伝統を継承する作風。モルダヴィア地方の民謡がもとになっているマルティヌーの作品をヴィルムゼンと今仁の二人がアレンジしている。最後にはナチスの迫害にありテレジン強制収容所に送られたパヴェル・ハースの「オーボエとピアノのための組曲」。1939年、第ニ次大戦が勃発した年の秋に書かれ、強烈なオーボエの響き、そして印象的なピアノ・パートで近年評価が高まっている楽曲。
シュパヌンゲン音楽祭ライヴ
 ニルセン:木管五重奏曲 Op.43
  [ジュリエット・ボウザー(Fl) スティーヴン・ハドソン(Ob)
   ジェーン・ジョンソン(Cl) テオ・プラース(Fg)
   クリスティアン・カッツェンベルガー(Hr)/2016年6月26日]
 プロコフィエフ:五重奏曲 ト短調 Op.39
  [スティーヴン・ハドソン(Ob) シャロン・カム(Cl)
   エリーザベト・クッフェラート(Vn) マヤ・メロン(Va)
   エディクソン・ルイス(Cb)/2016年6月25日]
 録音:[/内]、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。 ニルセンとプロコフィエフの木管五重奏曲2曲を収録したアルバム。ニルセン晩年の作品木管五重奏曲は、コペンハーゲン木管五重奏団の委嘱で作曲された。同じ頃に書かれた交響曲第5番は、戦時下の影響を色濃く受けたシリアスな作風であるのに対し、木管五重奏曲は晩年の充実した技法に牧歌的な明るさを有した楽曲。ロンドン・フィルの首席フルート奏者であるジュリエット・ボウザーの伸びやかな音が印象的。プロコフィエフの五重奏曲は、オーボエ、クラリネット、ヴァイオリン、ヴィオラ、コントラバスという珍しい編成。プロコフェフは1924年振付師ボリス・ロマノフ率いる小さなバレエ団のために作曲した。バレエ「空中ブランコ」の場面を描いた音楽で、巡業サーカスさながら様々な場所や状況で演奏できるように考慮されている。しかしプロコフィエフ自身の「いくつか難しいリズムがある」と言っているようにテクニック面でとても野心的に書かれている。この演奏では、クラリネットにシャロン・カム、ヴァイオリンにはテツラフカルテットのエリーザベト・クッフェラート、そしてコントラバスにはBPOのエディクソン・ルイスと名手が揃い圧巻の演奏を聴かせてくれる。
シュパヌンゲン音楽祭ライヴ
 メンデルスゾーン:ピアノ六重奏曲 ニ長調 Op.110
  [アーロン・ピルザン(P) アンナ・レシニャク、エリーザベト・クッフェラート、
   マヤ・メロン(Va) グスタフ・リヴィニウス(Vc)
   エディクソン・ルイス(Cb)/2016年6月22日]
 ペンデレツキ:六重奏曲
  [ジェーン・ジョンソン(Cl) マリー・ルイーゼ・ノイネッカー(Hr)
   ビョル・カン(Vn) マヤ・メロン(Va) ガブリエル・シュワーベ(Vc)
   ダナエ・デルケン(P)/2016年6月20日]
 録音:[/内]、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。 メンデルスゾーンが15歳の時に書いた作品ピアノ六重奏曲。作品番号が110となっているのは、メンデルスゾーンの死後に出版されたため。早熟の天 才メンデルスゾーンならではの高い完成度を示す内容。ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラが2本、チェロ、コントラバスという変わった編成だが、今回はヴァイオリンのエリーザベト・クッフェラートがヴィオラに持ちかえて演奏に参加している。またこの曲で終始活躍するピアノには、1994年生まれのウィーンの若手アーロン・ピルザンが抜擢。ECHOから「ライジング・スター」に選出され、アムステルダム・コンセルトヘボウをはじめヨーロッパの一流ホールでリサイタルを開催した実力派。そしてクラリネット、ホルン、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ピアノという編成によるペンデレツキの六 重奏曲。2000年にウィーンで初演された演奏時間35分という力作。ホルンにはフランクフルト放送so. の首席を務めたこともある名手マリー・ルイーゼ・ノイネッカー、ザルツブルク出身の韓国人ヴァイオリン奏者ビョル・カン、ソリストとして世界的オケと共演を重ねるベルリン出身チェロ奏者ガブリエル・シュワーベ、1991年ドイツ=ギリシャ系の両親の間にドイツのヴッパータールで生まれたピアニスト、ダナエ・デルケン、そして、ヨーロッパのオーケストラの客演首席を務めるなど、イギリスを拠点に活躍中でピアニストのスティーヴン・オズボーンの妻であるクラリネット奏者のジェーン・ジョンソンと確かな実力をもつ6人が、新鮮な響きを作り上げている。
Metamorphosis, Horn & Piano
 ベートーヴェン:ホルン・ソナタ ヘ長調 Op.17[使用楽器:A.クルトワ、パリ、1833年製(ナチュラルHr)/
                         C.グラーフ、ウィーン、 No.654 、1821-22年製(Fp)]
 シューマン:アダージョとアレグロ Op.70 (*) /
       幻想小曲集 Op.73 (ヴォイタ編曲)/3つのロマンス Op.94(ヴォイタ編曲)
        [使用楽器:ダニエル・フックス、ウィーン、19世紀末製(F管Hr)(*) /
              アレクザンダーホルン、マインツ、2012年製(F/B ダブルHr)/
              ピエール・エラール、パリ、 No.14845 、1839年製(Fp)]
 ギーゼルヘル・クレーベ(1925-2009):ベートーヴェンの月光ソナタによる変容 Op.95
  [使用楽器:アレクザンダーホルン、マインツ、2012年製(F/B ダブルHr)/
        スタインウェイ、ハンブルク、 No.D-521670、1992年製(コンサート・グランドP)]

 プジェミスル・ヴォイタ(Hr) トビアス・コッホ(Fp/P)
 録音:2015年1月、クラウス・フォン・ビスマルク・ザール、ケルン、WDR 。 プジェミスル・ヴォイタは、2010年ミュンヘン国際コンクールにて第一位、聴衆賞、新作演奏賞、オーケストラからの特別賞を総なめにした実力派のホルン奏者。伴奏は時代楽器の名手としてこだわりのプログラムを毎回聴かせてくれるピアニスト、トビアス・コッホ。今回も、ピアノ、ホルンともに曲ごとに楽器を持ち替えたこだわりの演奏で収録されている。まずはベートーヴェンのホルン・ソナタ。当時の名手プント(シュティッヒ)のために書かれた作品。ホルンはバルブのついていないナチュラルホルンが使われていた時代。この録音でも1833年製のフランス、A. クルトワの楽器を使用している。続いてシューマン。「アダージョとアレグロ」は、当時まだ普及していなかったバルブホルンのために書かれた作品。19世紀末、ウィーンのダニエル・フックスのF管ホルンを使用しても録音。バルブがないと難しかった半音を用い、楽器の音域を目一杯に使う高い技巧が要求される楽曲で、現代でもホルン奏者にとって重要なレパートリーのひとつとなっている。またヴォイタ自身がホルン用に編曲したシューマン2作品は、ホルンは現代楽器を用いて、ピアノはエラールを使っての録音。最後にはベートーヴェンからはじまったホルンの旅を締めくくるに相応しい楽曲、ドイツの作曲家ギーゼルヘル・クレーベの「ベートーヴェンの月光ソナタによる変容」を収録。各楽器を巧みに使いこなし、深い作曲家への理解、当時の奏法、そしてそれを現代へと継承するヴォイタの見事な演奏に脱帽。さらにトビアス・コッホの好サポートにより、作品の理解が一層深まる1枚となっている。
エネスク:ヴァイオリン・ソナタ第3番
ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ ト長調/ツィガーヌ
スカルコッタス:小組曲〔第1番第2番〕
ヨニアン・
 イリアス・カデシャ(Vn)
ノコラス・リムメル(P)
 『カデシャ、稀な才能だ』(サルヴァトーレ・アッカルド)。 1992年アテネ生まれのヴァイオリニスト、ヨニアン・イリアス・カデシャのデビュー・アルバム。アッカルドの弟子で、師から激賞される将来有望な若手。当アルバムは彼の母国ギリシャを代表する作曲家スカルコッタスの2篇と、バルカン色豊かなエネスコの3番というカデシャ得意の民族色豊かな作品が収められている。カップリングはラヴェル。ヴァイオリン・ソナタは1927年5月にエネスコの独奏、ラヴェルのピアノで世界初演されており、こだわりの絆を感じさせる。
バッハ&イザイ Vol.3
 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 ハ長調 BWV.1005
 イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ集 Op.27 より
  〔第6番(マヌエル・キロガに献呈)/第4番(クライスラーに献呈)〕
 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番 ロ短調 BWV.1002
  アンティエ・ヴァイトハース(Vn|使用楽器:シュテファン=ペーター・グライナー製
 録音:2016年3月、ケルン。 現代最高の弦楽四重奏団といわれるアルカント・カルテットの第1ヴァイオリンを務めるアンティエ・ヴァイトハース。抜群の安定感と表現力、そして豊かな音量と音色でカルテットの起点となっている。CAviレーベルからはソロやアンサンブルなどを含めてこれまで20枚ほどのCD を発売している。どのアルバムも冷静な曲作りと、ここ一番では大胆にも聴かせ、聴くものを魅了させてきた。本作は一挺のヴァイオリンによる和声や対位法の可能性 を追求した名作J.S.バッハとイザイの無伴奏を組み合わせたアルバム三部作の第3弾となる。バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番は、全6曲中3曲を占めるソナタの中で最もスケールの大きい音楽。特に聖霊降臨祭の古いコラール「来たれ、聖霊よ、主なる神よ」の旋律が使われている第2楽章フーガは、バッハが残したフーガの中で最大級の長さだと言われている。ヴァイトハースの研ぎ澄まされた集中力で見事に壮大な音楽を作り上げている。そしてアルバムの最後に収録されているバッハのパルティータ1番。ヴァイトハースの格調高い演奏で、4つの舞曲がうまくまとめあげられている。バッハに挟まれている2つのイザイのソナタ。6曲はすべて、それぞれ異なるヴァイオリニストに献呈され、この第6番はスペイン出身のマヌエル・キロガに捧げられている。そのためハバネラ風のリズムが用いられ、輝かしく華やかな楽曲となっている。そして古典的な形式の端正な作品第4番はイザイの親友クライスラーに献呈されている。ヴァイトハースの愛用する現代の名器シュテファン=ペーター・グライナー製のヴァイオリンで、しなやかに、一音一音厳選した密度の高い演奏を聴かせてくれる。
FUGA MAGNA
 ヴァレンティン・ハウスマン(1560頃-1614):フーガ〔第1/第2〕 / A.スカルラッティ:四重奏ソナタ第4番
 J.S.バッハ:フーガの技法 BWV.1080 より コントラプンクトゥス〔1/4/11〕
 ヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルク:ソナタ ハ短調(*) / モーツァルト:アダージョとフーガ ハ短調 K.546
 ベートーヴェン:大フーガ 変ロ長調 Op.133

 アルミーダSQ ラファエル・アルパーマン(Cemb;*)
 録音:2016年11月。 2006年アルテミス・カルテットの下で学んだ4人によって結成されたアルミーダ・カルテット。第61回ミュンヘン(ARD)国際音楽コンクールで優勝。2011年には第66回ジュネーヴ国際コンクールでリゲティの弦楽四重奏曲第1番「夜の変容」を演奏し聴衆賞を獲得している。カルテット名は、弦楽四重奏の父ハイドンの最も成功したオペラの一つ「アルミーダ」から。若手の登竜門 BBCのニュー・ジェネレーション・アーティスト2014/16にも選ばれ、今後の活躍が一層期待される。今回のアルバムは、弦楽のためのフーガをテーマに選曲。ドイツ・ルネサンス期の作曲家ヴァレンティン・ハウスマンの2つのフーガに始まり、バッハが最晩年に取り組んだ人間業とは思えぬ作曲技法を取り入れた巨大な音楽「フーガの技法」、実力派チェンバンロ奏者ラファエル・アルパーマンが参加したヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルクのソナタ。モーツァルトの「アダージョとフーガ」、そして最後にはベートーヴェンの「大フーガ」と、アルミーダ・カルテットの優れた解釈を介して、知るフーガの深い世界に踏み入れる一枚となった。
ドビュッシー:映像〔第1集/第2集〕/仮面
シマノフスキ:マスク(仮面劇) Op.34
キャシー・クリエ(P)
 録音:2016年11月、室内楽ホール、フィルハーモニー、ルクセンブルク。 ヨーロッパ・コンサート・ホール協会(ECHO)2015/2016シーズンのライジング・スターに選出されヨーロッパ各地の主要ホールで公演を行うルクセンブルク出身のピアニスト、キャシー・クリエ。これまでにCAvi musicからは4枚のディスクが発売されており、ヤナーチェク:ピアノ作品集(KKC-5388)は、レコード芸術で特選盤という好評を得ている。彼女のここ最近のアルバムは、ラモーとリゲティ(4260085-533084)、リストとベルク(4260085-533398)といった異なるスタイルをもった作曲家を1枚のアルバムに収録し、それぞれの対比を鮮やかに描き出していた。今回のアルバムは、ドビュッシーとシマノフスキというほぼ同時代の作曲家でまとめている。シマノフスキは、ポーランドの印象派とも言われることや、一見ドビュッシーと音楽的共通点があるように思うが、シマノフスキ自身は若い頃は、印象主義やドビュッシーの音楽にはあまり共感を抱いていなかったようだ。しかしシマノフスキ中期の作品にあたる「マスク(仮面)」は、シマノフスキらしい神秘的なハーモニーは健在だが、印象派の手法で書かれており、ドビュッシーの影響も少なからず感じる作品。一方、ドビュッシーの「仮面」は、調性やリズムなどで仮面のもつ二面性を表現した作品。作曲家、作品、そして自身の表と裏を卓越した表現力と音楽性で見事に描いたアルバム。
マーラー・エディション Vol.2 〜
 マーラー
:交響曲第4番 ト長調
ハンナ=エリーザベト・
 ミュラー(S)
アダム・フィッシャー指揮
デュッセルドルフso.
 録音:2016年11月17日-21日、トーンハレ、ドュッセルドルフ、ライヴ。 2015/2016シーズンよりデュッセルドルフso. の首席指揮者を務めているアダム・フィッシャー。その新しい手兵とマーラー交響曲全曲録音プロジェクト第2弾。マーラーを得意とするアダム・フィッシャーのチクルスということで、第1弾のマーラー交響曲第7番も注目を集めたが、この第4番も期待できる内容となっている。マーラーにしては比較的小編成のオーケストラを用いた、珍しく明るい雰囲気を湛えた広く親しまれている交響曲第4番。終楽章ではソプラノのソロが天国での生活の楽しさを謳い上げるが、ここでは期待のドイツ人ソプラノ、ハンナ=エリーザベト・ミュラーが務めている。デュッセルドルフso.との相性の良さは抜群であり、爽快さと美しさに溢れた極上のマーラーを聴かせてくれる。デュッセルドルフso. は、1818年創立の市音楽協会をルーツとするオーケストラで、メンデルスゾーンとシューマンがかつて音楽総監督を務めていたドイツの名門。デュッセルドルフso. は、コンサートo. としてはトーンハレを、劇場オーケストラとしてはライン・ドイツ・オペラを本拠としている。
ベートーヴェン
 アデライーデ Op.46 /連作歌曲集「遥かなる恋人に寄す」 Op.98 この暗き墓に WoO.133 /
 25のスコットランドの歌 Op.108 から (#) Nos.2-3, 5, 16, 20, 13 /
 20のアイルランドの歌 WoO.152 から (#) Nos.9-10, 5, 15, 21 /
 ポリー・ステュアート WoO.156 No.7 /アイルランドっ子の血潮 WoO.154 No.4 /古老が教えてくれたから WoO.153 No.4

  アンドレ・シュエン(Br) ブーランジェ・トリオ[P/Vn;#/Vc;#]
 録音:2016年5月、ケルン。 2006年にハンブルクで結成された女性3人によるブーランジェ・トリオとバリトン歌手のアンドレ・シュエンによるベートーヴェンの歌曲。伸びやかで濁りのないアンドレ・シュエンの美しい声によく合う選曲。ベートーヴェンの最も美しい歌曲の一つ「アデライーデ」。そして不滅の恋人との破局後、彼女を追憶して書かれたという連作歌曲集「遥かなる恋人に寄す」。ベートーヴェンの心情が吐露されている内的な曲で、アンドレ・シュエンの心に響く歌声が印象的。最後にはイギリスの楽譜商・民謡収集家のジョージ・トムソンからの依頼でベートーヴェンがイギリス周辺国の民謡を編曲して書いた「25のスコットランドの歌」と「20のアイルランドの歌」が収録されている。これらの編曲は後のベートーヴェンの作曲活動に大きな影響を与えたが、今日演奏される機会は多くはない。親しみやすい旋律のせて、ブーランジェ・トリオの軽快な伴奏そしてアンドレ・シュエンの柔らかく明るい声が心地よく響く。
ピアノ4 手のための作品集〜東へ !
 ブラームス:4 手のためのワルツ集 Op.39 / ヒンデミット:4手のための8つのワルツ集 Op.6
 オズカン・マノフ(1967-):アナトリア民謡による2つの歌 / ストラヴィンスキー:春の祭典(4手版)

 ギュルル・エンサリ、ヘルベルト・シュフ(P)
 録音:2016年4月、シュトゥットガルト。イスラエル出身のピアニスト、ギュルル・エンサリとルーマニア系ドイツ人のヘルベルト・シュフによる夫婦ピアノ・デュオ。同じ音楽観、卓越したテクニックを持つ夫婦による息の合った演奏を披露している。ヒンデミットの「4手のための8つのワルツ」を練習している時に、ブラームスの「4手のためのワルツ集」との類似点に気が付き、このアルバムの構想が生まれたと言う。そして2人の友人であるトルコ人作曲家オズカン・マノフに依頼して作曲されたアナトリア民謡による連弾作品。さらに難曲ストラヴィンスキー「春の祭典」の4手版を収録している。これはロシア・バレエのために作曲された管弦楽曲の連弾編成版。大編成のオーケストラによって展開される原曲の魅力を凝縮し、独特のリズムや躍動感が4手ピアノによって鮮やかに表現されている。
ゲオルギー・スヴィリドフ(1915-1998):
 ピアノ三重奏曲 イ短調(1945/55) /ピアノ五重奏曲 ロ短調(1945) (*) /
 「吹雪」〜ロマンス(ピアノ三重奏曲版)(#)
 ベートーヴェン・トリオ・ボン
  [ジンサン・リー(P) ミハイル・オヴルツキ(Vn) グレゴリー・アルミャン(Vc)]

 アルトゥール・チェルモノフ(Vn;*) ウラディミール・バベシュコ(Va;*)
 録音:2016年6月ミュンヘン。(*)は世界初録音、(#)は当版による世界初録音。 20世紀後半のロシアを代表する作曲家の一人、スヴィリドフは、ショスタコーヴィチ門下のソ連作曲家で、「時よ前進」の景気良いマーチが長年モスクワ放送のニュース番組のテーマ曲としても使われている、現在も国民的作曲家として人気がある。また指揮者のフェドセーエフが、スヴィリドフの音楽の普及のため、積極的に演奏・録音を行っている。今回、ドイツの若手トリオ、ベートーヴェン・トリオ・ボンにより、珍しいピアノ三重奏曲、そして世界初録音となるピアノ五重奏曲と「吹雪」から有名なロマンスのピアノ三重奏版を収録している。ピアノ五重奏曲は、作曲家のユーリー・コチュロフに献呈されたスヴィリドフの最初期の楽曲。ショスタコーヴィチを思わせるような音楽とスヴィリドフらしい旋 律の美しさをもつ作品。スヴィリドフはのちにこのピアノ五重奏を管弦楽用に編曲した「室内オーケストラのための音楽」(1964)をルドルフ・バルシャイに献呈している。そしてスヴィリドフの代表作「吹雪」。プーシュキンの物語による同名の映画音楽として広く知られているが、そのなかでも哀愁を帯びた美しい旋律で人気の「ロマンス」を、ベートーヴェン・トリオ・ボンのヴァイオリニスト、ミハイル・オヴルツキがピアノ三重奏用に編曲している。
ブラームス:わが恋は緑 Op.63 No.5 /あなたが時折ほほえむのなら Op.57 No.2 /
      ああ、この眼差しをそらして Op.57 No.4 /谷の底では WoO.33 No.6 /マニフィカト Op.43 No.2 /
      私は夢を見た Op.57 No.3 /愛のまこと Op.3 No.1 /まことの愛 Op.7 No.1 /落胆 Op.72 No.4
シューベルト:乙女の嘆き Op.58 No.3, D191 /最初の喪失 Op.5 No.4, D226 /
       あなたは私を愛していない Op.59 No.1, D756 /小人 Op.22 No.1, D.771
シベリウス:あれは夢 Op.37 No.4 /葦よ、葦よ、そよげ Op.36 No.4
グリーグ:君を愛す Op.37 No.4 /ソルヴェイグの歌 Op.23 No.19
レベッカ・クラーク(1886-1979):ザ・シール・マン/ア・ドリーム
ロジャー・クィルター(1877-1953):深紅の花びらは眠りにつく Op.3 No.2 / ブリッジ:夢に会いに来て H.71
R.シュトラウス:万霊節 Op.10 No.2 /あなたの眼差しが私を見た時から Op.17 No.1 /夜から Op.68 No.1

 サラ・ウェゲナー(S) ゲッツ・ペイヤー(P)
 録音:2015年12月、2016年12月、SWR 、シュツゥットガルト、ドイツ。 今や世界各地のオーケストラと共演しているソプラノ歌手サラ・ウェゲナー初のソロ・アルバム。サラ・ウェゲナーは、2016/17シーズンにはケント・ナガノ指揮モントリオールso. とモーツァルトのレクイエム、ベートーヴェンの第9、バッハのマタイ受難曲、ブラームスのドイツ・レクイエムなどのコンサートにソリストとして出演。また2018年のザルツブルク音楽祭にもペンデレツキのルカ受難曲(ケント・ナガノ指揮)でデビューすることが決まっているなど今もっとも輝いているソプラノ歌手のひとり。このアルバムでは、シューベルト、ブラームス、シベリウス、クラーク、クィルター、ブリッジ、R.シュトラウスの歌曲を収録。彼女は録音に際してこのように語っている。「自然な音楽へのアプローチ、テキストに真摯に向き合う姿勢、様々な作曲家が収録されているにも関わらず、一つの糸で繋がっているような流れを一つのアルバムに作りたかったのです」
さすらい人〜シューベルト:歌曲集
 さすらい人 D.493 /墓掘り人の郷愁 D.842 /月に寄せる旅人の歌 D.870 /夕映えの中で D.799 /冥府への旅 D.526 /
 夕べの星 D.806 /舟人 D.536 /さすらい人 D.649 /月に寄せて D.259 /春に D.882 /漁夫の愛の幸せ D.933 /
 ドナウ河の上で D.553 /ミューズの子 D.764 /出会いと別れ D.767 /ブルックの丘にて D.853

 アンドレ・シュエン(Br) ダニエル・ハイデ(P)
 さすらい、旅、といったシューベルト独特の世界観に彩られた歌曲集。シューマン、ヴォルフ、マルタン(4260085-533305)、ベートーヴェン(4260085-533770)に続く、アンドレ・シュエンのCAVIレーベル第3弾アルバム。1984年イタリア生まれの歌手アンドレ・シュエンはザルツブルクやウィーンなどヨーロッパの音楽祭に参加し注目を集める新星。ピアノを弾くダニエル・ハイデは彼にとって重要な共演者。シューマンのアルバムでも共演しており、お互いに高い信頼感で結ばれている。
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集
 〔第30番 ニ長調 K.306 /第37番 イ長調 K.402 /第32番 ヘ長調 K.376 /第34番 変ロ長調 K.378 〕/
 6つの変奏曲「ああ、私は恋人をなくした」(泉のほとりで)K.360

 ウルフ・シュナイダー(Vn) シュテファン・イモルデ(P)
 トリオ・ジャン・ポールのヴァイオリン奏者(1991-92)として数々の室内楽コンクールで賞を獲得し、現在はハノーヴァー音楽演劇大学の教授であり、ソロのコンサート活動も積極的に行っているウルフ・シュナイダーによるモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ集。ピアノはシュナイダーとデュオを組んでいるドイツの室内楽ピアニスト、シュテファン・イモルデ。彼はデトモルト音楽大学で学んだ後、ノヴァリス・ピアノ三重奏団を結成し活発な演奏活動を展開、現在はロストック音楽大学教授を務めている。シュナイダーの多彩で豊富な音色の魅力が存分に楽しめる1枚。
シューベルト:白鳥の歌 D.957(ヴィオラ編曲版)
ショスタコーヴィチ:ヴィオラ・ソナタ Op.147
パウリーネ・ザクセ(Va)
ラウマ・スクリデ(P)
 録音:2016年6月、ベルリン。 シューベルト最後の歌曲集「白鳥の歌」。この歌曲集はシューベルトが最晩年に書いたルートヴィヒ・レルシュタープとハインリッヒ・ハイネの詩による13の歌曲集に、絶筆であった「鳩の便り」を加えて出版された物。“白鳥が死の間際に美しい歌を歌う"というヨーロッパの言い伝えから、最後の作品を「白鳥の歌」ということがある。このシューベルトの「白鳥の歌」は、比類なき美しさゆえ、さまざまな楽器に編曲されている。今回はベルリン放送交響楽団首席ヴィオラ奏者パウリーネ・ザクセとラトヴィア出身のヴァイオリニスト、バイバ・スクリデの妹であるピアニストのラウマ・スクリデによるアルバム。音域的にも音色的にも、ヴィオラは人間の声に近いと言われており、包み込むような温かみのある音色は、歌詞はなくとも詩のメッセージを音楽と共に語りかけているような、ザクセの演奏は、深く心に訴えかける。またカップリングには、ショスタコーヴィチの遺作(=白鳥の歌)となったヴィオラ・ソナタが収録されている。
マーチャーシュ・シェイベル(1905-1960):
 クラリネット室内楽曲集とナンセンスソング集
  クラリネットと弦楽四重奏によるディヴェルティメント/アンダンテ・パストラーレ/3つのモルゲンシュテルンの歌/
  クラリネット、チェロとピアノのためのイントロダクションとアレグロ/
  ソプラノと管楽器のためのモア・ナンセンス/管楽七重奏のためのセレナーデ

 キリアン・ヘロルド(Cl) サラ・マリア・ズン(S) アンサンブル
 ハンガリー出身でコダーイに作曲を学び、後にイギリスに移住した作曲家マーチャーシュ・シェイベル。フランクフルトのホーホ音楽院のジャズ科の教授を務めていたこともあり、ジャズの要素も取り入れた作品を残している。このアルバムでは彼のクラリネットのための室内楽作品とナンセンスソングを収録している。演奏するのは、バーデンバーデン&フライブルクSWRso. の首席クラリネット奏者を務めるドイツの中堅、キリアン・へロルドとベルリン・フィル、ゲヴァントハウス管やアルディッティ・カルテットなど一流の演奏者らと共演を重ねている現代ものを得意とするソプラノ、サラ・マリア・ズンの二人。1905年に出版されたドイツの詩人クリスティアン・モルゲンシュテルンの「Gallows Songs」の詩からとられた3つのナンセンスソングなど。幅広い作風をもつマーチャーシュ・シェイベルの音楽性を知ることのできるアルバム。
ハイドン:ピアノ・ソナタ集
 〔第33番 ハ短調 Hob.XVI: 20 /第34番 ホ短調 Hob.XVI: 34 /第43番 変ホ長調 Hob.XVI: 28 /
  第31番 変イ長調 Hob.XVI: 46 /第23番 ヘ長調 Hob.XVI: 23

 マルクス・ベッカー(P)
 心地よく爽快なテンポと粒が揃った美しく磨き抜かれた音色で高音部と低音部の陰影を付け、推進力を持った、高い品格がある演奏。特に名曲ソナタ第34番では右手と左手の対比が見事。マルクス・ベッカーは1963年生まれ。名教師カール=ハインツ・ケマーリング、およびアルフレッド・ブレンデルに師事。1987年、ブラームス国際コンクール(ハンブルク)で第1位を獲得。1993年、ハノーヴァー音楽演劇大学の教授に就任。CD はハイペリオン、CPO などから数十枚リリースされている。
アルミーダSQ
 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番 ヘ長調 Op.59 No.1「ラズモフスキー第1番
 ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第10番 変イ長調 Op.118
  アルミーダSQ
 共にアルテミス・カルテットの下で学んだ4人によって2006年に結成されたアルミーダ・カルテット。第61回ミュンヘン(ARD)国際音楽コンクールで優勝。2011年には第66回ジュネーヴ国際コンクールでリゲティの弦楽四重奏曲第1番「夜の変容」を演奏し聴衆賞を獲得している。カルテット名は、弦楽四重奏の父ハイドンの最も成功したオペラの一つ「アルミーダ」から付けられた。
OBERON TRIO
 メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第2番 Op.66 ハ短調
 シャルレロッテ・ブレイ:ピアノ三重奏のための幻想曲「狂気の笑顔」
 ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 ニ長調 Op.70 No.1「幽霊」
 メンデルスゾーン/マンソール・ホセイニ編曲:真夏の夜の夢〜スケルツォ
 オベロン・トリオ
  [ヘーニャ・ゼムラー(Vn) ロウフェン・シルマー(Vc) ヨナタン・アネル(P)]
 2006年結成の若いピアノ三重奏団、オベロン・トリオ。ドイツを中心にヨーロッパで活躍する期待の若手。アルバン・ベルク四重奏団、アルテミス四 重奏団に師事。ベンジャミン・ユスポフやイェルク・ヴィトマンら現代作曲家と協力して作品に取り組むことを積極的に行っている。C.P.E.バッハやハイドンの初期の作品などピアノ・トリオの名作はもちろん、あまり知られていないような秘曲にも注目し演奏している。彼らは楽曲を深く読み込み、フレージング、ヴィヴラートなどピリオド奏法を取り入れた、意欲的な演奏を聴かせてくれる。今回のアルバムは、オベロン・トリオ結成10周年およびシェイクスピア没後 400年を祝して企画され、メンデルスゾーン、ベートーヴェン、そして若手現代作曲家シャルレロッテ・ブレイの作品を収録。トリオ結成のきっかけはメンデルスゾーンの楽曲を演奏するためだった。それにちなみ、トリオ名は「真夏の夜の夢」の妖精の王オベロンから取り、いつまでの柔軟な姿勢で音楽に取り組むことを信条としている。今回の選曲も彼ら原点を表すかのような意 欲的な内容となっている。ピアノ三重奏のための幻想曲「狂気の笑顔」を作曲したのは、イギリスの女流作曲家シャルロッテ・ブレイ(1982-)。4年前にトリオのピアニスト、ヨナタン・アネルがコンサート会場で出会ったのが交流のはじまり。この楽曲は「真夏の夜の夢」の物語を軸に、独特の色彩感で描かれている。
シューマン:3つの幻想小曲集 Op.111 /
      幻想小曲集 Op.12 /幻想曲 ハ長調 Op.17
セヴェリン・フォン・
 エッカードシュタイン(P)
 録音:2016年1月、ブレーメン。 2003年エリザベート王妃国際コンクールの覇者セヴェリン・フォン・エッカードシュタインによるシューマンの幻想曲集。アルバムは晩年の作品「3つの幻想的小曲集Op.111」からはじまる。そしてシューマンが若かりし頃の作品「幻想小曲集Op.12」は、E.T.A/ホフマンの小説集「カロ風幻想作品集」にヒントを得た物。そして最後は「幻想曲Op.17」。3楽章からなるソナタ風幻想曲で初期の傑作として知られている。エッカードシュタインは柔らかく綺麗な音色、作品に寄り添うような力みのない自然な音楽で、シューマンの繊細さを丁寧に描いている。
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21
シューベルト:交響曲第8番(第7番) D.759 「未完成」
 マリウシュ・クリムシャク(Fp|使用楽器:1830年製プレイエルの複製
 ヤン・トマシュ・アダムス指揮カペラ・クラコヴィエンシス
 録音:2015年3月、ポーランド。ピリオド楽器使用。 1970年に設立したポーランドのピリオドo. 、カペラ・クラコヴィエンシス。2008年からヤン・トマシュ・アダムスが音楽監督を務め、中世から現代作品の初演まで幅広いレパートリーを手がけている。このアルバムは、ショパンがこよなく愛したプレイエル社製のフォルテピアノ(1830年/複製)を使っての録音されたショパンのピアノ協奏曲第2番。ピアニストはカペラ・クラコヴィエンシスとも度々共演しているポーランドのピアニスト、マリウシュ・クリムシャク。時代楽器を使ったショパンのピアノ協奏曲の録音も少なくはないが、このプレイエルの繊細で美しい音をここまで活かした演奏は一聴の価値がある。またカップリングのシューベルト:未完成も、指揮者のヤン・トマシュ・アダムスが「シューベルトが意図したと思われる形で演奏することができた」と語るように木管楽器と弦楽器の絶妙なバランス、楽器の特性を熟知した演奏で聴かせてくれる。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル Vol.35 〜2016年ライヴ集
 ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ 変ロ長調 Op.24
  [クリストファー・パーク(P)/2016年5月22日、ボトロップ、室内楽ホール]
 レーガー:テレマンの主題による変奏曲とフーガ Op.134 /暖炉のそばの夢
 J.S.バッハ/ブゾーニ編曲:来たれ、異教徒の救い主よ BWV.659
  [ヨーゼフ・モーグ(P)/2016年6月14日、ヒュンクセ、シュロス・ガルトロプ、アルテ・レンタイ]
 レーガー:5つの水彩画 Op.25 / ブラームス:7つの幻想曲 Op.116
  [アンナ・ツィブラエワ(P)/2016年5月26日、ボーフム美術館]
 ブゾーニ:ソナティナ第2番 / ブラームス:6つの小品 Op.118
  [ファビアン・ミュラー(P)/2016年6月9日、ホルツヴィッケーデ、ハウス・オフェルディック]
 J.S.バッハ/ブゾーニ編曲:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ BWV.1004 〜シャコンヌ
 ブラームス:4つのバラード集 Op.10 [ジーナ・アリス(P)/
   2016年5月10日、ツェヒェ=ホーラント、アルテ・ローンハレ、ボーフム=ヴァッテンシャイト]
 ブラームス:ラプソディ第1番 ロ短調 Op.79
  [ルイ・シュヴィッツゲーベル(P)/2016年7月1日、メールス、室内楽ホール]
 録音:[/内]、全てライヴ。 ドイツ屈指の工業地帯として知られている、ルール地方で毎年行われるこのピアノ・フェスティヴァル。世界のピアニストが定期的に集まる出会いの場。第1回の開催セレモニーではマウリツィオ・ポリーニが登場、すでに有名になった音楽家だけでなく、コンクール入賞者など豊かな才能を持った若手の登竜門にもなっている。2016年のルール・ピアノ・フェスティヴァルのメイン・テーマは、ブラームスのピアノ全作品を取り上げるということだった。そしてこのボックス・セットには、 ブラームスのピアノ作品の一部と、2016年のアニヴァーサリー・イヤーであったマッス・レーガー(没後100年)とフェルッチョ・ブゾーニ(没後 150年)2 人の作曲家の作品を収録している。CD1 には、ブラームスのレーガーの主題に基づく変奏曲を収録。ブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」を弾いたのは韓国系ドイツ人 のクリストファー・パーク(1987年生まれ)。エッシェンバッハやパーヴォ・ヤルヴィ、イオン・マリンなど世界有数の指揮者たちとヨーロッパ各地の音 楽祭で共演しその実力を認められ、溌剌としたピアニズムと成熟した音楽性の両方を兼ね備えた注目の若手。そして2015年のグラモフォン・アワードで「Young Artist of the Year」に選出されたヨーゼフ・モーグは、レーガーの「テレマンの主題による変奏曲とフーガ」を演奏。複雑な構造をもつ作品を繊細なタッチ、そしてメリハリのある明晰な解釈で聴かせる。CD2 では、ロシアのアンナ・ツィブラエワ(1990年生まれ)、ファビアン・ミュラー(1990年生まれ)、ジーナ・アリス(1994年生まれ)ら同フェスティヴァル・デビューのピアニストが登場。2013年ブゾーニ国際ピアノコンクールで優勝したファビアン・ミュラーは、ソナティナ第2番を演奏。拍子記号もなく、リズムも不定形、調性も曖昧、不安を感じさせる曲調だが、ファビアン・ミュラーは幻想的で先進的な響きを引き出している。CD3 には幼少期から様々なコンクールで注目されていたドイツのジーナ・アリスがブラームスの初期のピアノ独奏曲の中でも、人気の高い「4つのバラード」、そして仏 APARTE レーベルにも録音がありジュネーヴ国際音楽コンクール第2位(1位なし)、ヤング・コンサート・アーティスト国際オーディション第1位の若手気鋭のピアニスト、ルイ・シュヴィッツゲーベルがブラームスのラプソディ第1番を美しいタッチの流麗な演奏を披露している。
Variations Serieuses
 グリーグ:ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラード Op.24
 メンデルスゾーン:厳格な変奏曲 Op.54
 ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ Op.24
グニッラ・ススマン(P)
 スウェーデン出身のピアニストによる、技巧を要する大変奏曲集。
2015 シュパヌンゲン音楽祭ライヴ〜室内楽作品集
 ウェーバー:フルート三重奏曲 ト短調 Op.63 (1818-19)[アンドレア・リーバークネヒト(Fl)
   マクシミリアン・ホルヌング(Vc) ディーナ・ウゴルスカヤ(P)/2015年6月8日]
 サン=サーンス:デンマークとロシアの旋律による奇想曲 Op.79 (1887)
  [アンドレア・リーバークネヒト(Fl) クリスティアン・ヴェッツェル(Ob)
   シャロン・カム(Cl) ジェミー・バーギン(P)/2015年6月9日]
 アウグスト・クルークハルト(1847-1902):ニコラウス・レーナウの詩による
  オーボエ、ヴィオラとピアノのための5つの幻想小曲集「葦の歌」 Op.28 (1872)
  [クリスティアン・ヴェッツェル(Ob) ハルトムート・ローデ(Va)
   ジェミー・バーギン(P)/2015年6月11日]
 アレクサンドル・クレイン(1883-1951):クラリネット五重奏曲「ユダヤのスケッチ」Op.12 No.1 (1909)
  [ジョナサン・ハダス(Cl) フローリアン・ドンダラー(Vn)
   アンナ・レシニャク(Vn) パウリーネ・ザクセ(Va) ターニャ・テツラフ(Vc)/2015年6月8日]
 録音:[/内]、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。 知られざる4つの室内楽作品を収録。サン=サーンス作品は、1887年ロシアに招かれた際に作曲されたもので、デンマークの王女であったロシア皇后マリア・フョードロヴナに献呈されたため、ロシアとデンマークの旋律が引用されている。クルークハルトの「葦の歌」は詩人ニコラウス・レーナウの詩にインスパイアされて書いた作品。20世紀前半のロシア・ソヴィエトのユダヤ系作曲家クレイン一族で最も様々な分野の作品を残したのがアレクサンドル。モスクワの「ユダヤ民俗音楽協会」に加わり、ユダヤ系民族音楽の伝統にのっとる作曲家として活動しており、ユダヤの旋律を用いたクラリネット五重奏曲「ユダヤのスケッチ」は、ユダヤ文化を紹介して、振興させることを目的とした楽曲の一つ。シャロン・カム、クリスティアン・ヴェッツェルといった名手たちによる演奏で、知られざる作品に新たな光をあてている。
2015 シュパヌンゲン音楽祭ライヴ〜ヴェルディ&ドヴォルジャーク:弦楽四重奏曲集
 ヴェルディ:弦楽四重奏曲 ホ短調(*)
 ドヴォルジャーク:弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 Op.51 (#)
  クリスティアン・テツラフ(Vn;*)、フローリアン・ドンダラー(Vn;*/Va;#)
  ユラ・リー(Vn;#) キャサリン・ゴワーズ(Vn;#)
  ハルトムート・ローデ(Va;*) マクシミリアン・ホルヌング(Vc;*)
  フランス・ヘルマーソン(Vc;#)
 録音:2015年6月11日(*)、2015年6月14日(#)、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。ケルン近郊の丘陵地帯の街ハイムバッハで毎夏開かれているシュパヌンゲン音楽祭。成熟した音楽祭ならではの意欲的なプログラムをベテランと若手がともに演奏し、ファンを楽しませている。2015年のライヴを収録した本アルバム、演奏は楽曲の魅力を存分に引き出したもので、ヴェルディでは、クリスティアン・テツラフの美しい弱音が、儚げな世界を見事作り上げ、ドヴォルジャークは第1ヴァイオリンを務める韓国出身のユラ・リーの哀愁漂うヴァイオリンの音色が心に響く。
ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ(1919-2006):ピアノ・ソナタ全集
 〔第1番(1947) /第2番(1949) /第3番(1952) /第4番(1957) /第5番(1986) /第6番(1988) 〕

  アントニー・バリシェフスキー(P)
 録音:2016年2月、テルデックス・スタジオ、ベルリン。 ガリーナ・ウストヴォリスカヤはショスタコーヴィチ門下の女性作曲家。旧ソ連にありながら、調性も小節線も持たない前衛的な作風を 展開させた異色の存在だった。ウストヴォリスカヤは生涯に6篇のピアノ・ソナタを作曲したが、いずれも個性的。第1番はショスタコーヴィチに師 事している時期の作。師の影響を感じさせる。第5番と6番は後期の作で、どちらも狭い音程のトーンクラスターに終始し、鐘の音を思わせる。「20世紀末のムソルグスキー」ともいうべき作風が興味津々。アントニー・バリシェフスキーは1988年生まれのウクライナのピアニスト。生地で学んだ後、パリのエコール・ノルマルで研鑽を重ねた。2014年に行われたアルトゥール・ルービンシュタイン国際コンクールで優勝、直後に来日公演も行っている。CAviレーベルではムソルグスキー&スクリャービンのアルバムに次ぐ第2弾。ウストヴォリスカヤのピアノ・ソナタはこれまでもいくつか録音があるが、フレッシュな感性が光り、作品の魅力に肉薄するものが現れた。
マーラー・エディション Vol.1 〜
 マーラー
:交響曲第7番 ホ短調「夜の歌」
アダム・フィッシャー指揮
デュッセルドルフso.
 録音:2015年11月19日-23日、トーンハレ、デュッセルドルフ、ライヴ。2015/2016 シーズンよりデュッセルドルフso.の首席指揮者を務めているアダム・フィッシャー。その新しい手兵とマーラー交響曲全曲録音プロジェクトがスタート。第1弾は、2015年11月に行われたデュッセルドルフso.首席指揮者就任記念演奏会のライヴ録音。コンサートの演目は、前半にアダム・フィッシャー得意のレパートリー、ハイドンの交響曲第88番、そして後半にマーラーの交響曲第7番「夜の歌」が演奏された。マーラーの交響曲第7番は、一般的には演奏される機会は他の曲と比べると少ない楽曲だが、オーケストラとの第1シーズン、そして録音プロジェクトの初回に持ってきたのは、このマーラー・プロジェクトに対するアダム・フィッシャーの並々ならぬ意気込みが感じられる。全体的に速めのテンポをとっているが、マーラーの意図に明確な道筋を与える丁寧で推進力のある演奏。特に終楽章では、オーケストラの特性を生かした情緒を美しく描いている。今後のシリーズが楽しみになる充実の演奏を聴くことが出来る。デュッセルドルフso.は、1818年創立の市音楽協会をルーツとするオーケストラで、メンデルスゾーンとシューマンがかつて音楽総監督を務めていたドイツの名門。デュッセルドルフso.は、コンサートo.としてはトーンハレを、劇場オーケストラとしてはライン・ドイツ・オペラを本拠としている。
ツェムリンスキー:弦楽五重奏曲 ニ短調(1896)
ブルックナー:弦楽五重奏曲 ヘ長調 WAB 112 (1879) /
       弦楽五重奏のための間奏曲 ニ短調 WAB 113 (1879)
 バルトルディ弦楽五重奏団
  [アンケ・ディル、ウルフ・シュナイダー(Vn) バーバラ・ウェストファル、
   フォルカー・ヤコブセン(Va) グスタフ・リヴィニウス(Vc)]
 録音:2013年11月、ケルン。
フリードリヒ・チェルハ(1926-):
 ピアノ三重奏のための5つの楽章(2006/7) /
 ヴァイオリンとピアノのためのラプソディ(2001) /
 チェロとピアノのための3つの小品(2013) /
 ヴァイオリンとチェロのための6つのインヴェンション(2005/6) /
 ヴァイオリン、チェロとピアノのための「夜の歌」(2005)
  ブーランジェ・トリオ
 録音:2015年11月、ベルリン。2016年に90歳を迎えるオーストリアの作曲家フリードリヒ・チェルハの世界初録音を含む室内楽作品集。ベルクの未完成オペラ「ルル」を補追完成させた ことで知られている、現代オーストリアを代表する人物。チェルハは2005年にはじめてピアノ三重奏を作曲。ピアノ中心になりがちなこの分野の音楽に一石を投じるために作曲したという。3つの楽器が対等に音楽を構成するように作られている。2006年にハンブルクで結成された女性3人によるブーランジェ・トリオによる演奏。
バッハ&イザイ Vol.2
 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番 イ短調 BWV 1003
 イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ
  〔第3番 ニ短調 Op.27「バラード」(エネスクに献呈)/
   第5番 ト長調 Op.27(クリックボームに献呈)〕
 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 BWV 1006
 アンティエ・ヴァイトハース(Vn|使用楽器:シュテファン=ペーター・グライナー製
 録音:2015年3月、ケルン。アルカント・カルテットの第1ヴァイオリンを務めるアンティエ・ヴァイトハース。抜群の安定感と表現力、そして豊かな音量と音色はカルテットの起点となっ ている。本作は無伴奏ヴァイオリン作品の最高峰、J.S.バッハとイザイの無伴奏を組み合わせたアルバム三部作の第2弾。アンティエ・ヴァイトハースのヴァイオリンは、伸びやかな表現と輝きのある音色、繊細なニュアンスが魅力。バッハは求心力のある明快な解釈、見事な重音バランスで弾きこなす確かなテクニックに驚かされる。エネスコに献呈されたイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番は単一楽章。ヴァイトハースは流麗な旋律を多彩に聴かせ、スケールの大きな音楽を作 り上げている。また6曲のソナタの中で作風が異なっている第5番は、一音一音入念に考え抜かれた緻密で洗練された演奏を聴かせる。また現代の名器シュテファン=ペーター・グライナー製のヴァイオリンのしなやかな音色も聴きどころ。
ソリティア〜ピアノ・トリオ
 メル・ボニス:夕べと朝 Op.76 / グリーグ:ピアノ三重奏曲〜アンダンテ・コン・モート ハ短調
 ブロッホ:3つの夜想曲 / エネスコ:ピアノ三重奏曲「遠くのセレナーデ」
 ブーランジェ:ピアノ三重奏曲のための「ある春の朝に」 / スク:悲歌 Op.23(ピアノ三重奏版)
 ぺルト:モーツァルト=アダージョ(ヴァイオリン、チェロとピアノのための)
 シューベルト:ピアノ三重奏曲 変ホ長調「ノットゥルノ」 / ヘンツェ:アダージョ・アダージョ

  ブーランジェ・トリオ
 録音:2014年5月、カンマームジークザール、ケルン。2006年にハンブルクで結成された女性3人によるブーランジェ・トリオ。ドイツの新聞ディ・ヴェルトでは「得がたい体験」と評され、ヴォルフガング・リームからは「このように解釈されるのは全ての作曲家の夢だ」と絶賛、結成当初からこれまで安定した高い評価をえている。パリ出身の女性作曲家メル・ボニスや彼女たちのアンサンブル名にもなっているブーランジェの作品など希少なプログラムを彼女たちの魅力的な演奏で。
ヴァイトハース〜ブラームス
 ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77 (*) / F. A. E. ソナタ〜スケルツォ WoO.2 (#)
 アンティエ・ヴァイトハース(Vn)
 カメラータ・ベルン(*) ジルケ・アヴェンハウス(P;#)
 録音:2014年12月、カジノ、ベルン(*) /2006年12月、ケルン(#)。
20世紀のピアノ作品集
 ベルク:ピアノ・ソナタ Op.1 / ツィンマーマン:ささやかな小品 I & II
 シェーンベルク:3つのピアノ曲 Op.11 /ピアノ小品集 Op.33a/b
  キャシー・クリエ(P)
 録音:2015年5月、室内楽ホール、ルクセンブルク・フィルハーモニー。
ルトスワフスキ:ピアノ作品全集
 牧歌集(全5曲)(1952) /2つの練習曲(1941) /民族のメロディ(全12曲)(1945) /若者のための3つの小品 (1953) /
 インヴェンション(1968) /思い出のメロディ(連弾)(1957) 〔多重録音〕/ピアノ・ソナタ(1934)

  コリンナ・ジモン(P)
 録音:2013年6月、イエス・キリスト教会、ベルリン。ありそうでなかったルトスワフスキのピアノ曲全集が登場。ルトスワフスキのピアノ曲といえば、華麗な演奏効果を示す2台のピアノのための「パガニーニの主題による変奏曲」が有名だが、あとは聴く機会がない。彼自身ピアノの名手で、第2次世界大戦中は友人の作曲家パヌフニクとピアノ・デュオを組み、演奏を禁じられたポーランド音楽を地下のコンサートで披露していた。当アルバムのメインは、ワルシャワ音楽院の学生時代の作「ピアノ・ソナタ」。30分に及ぶ大曲で、非常な難曲。作風は前衛的でなく、ドビュッシーや シマノフスキを思わすキラキラした音響が興味津々。また、12曲からなる「民族のメロディ」はポーランド民謡をバルトークの様式でピアノ曲化した作品。シンプルながら一筋縄ではいかぬ難物。ベルリン出身の女性ピアニスト、コリンナ・ジモンはジェルジ・シェベク、チェルニー=ステファンスカ、マルコム・フレージャーに学び、84年にベルリン・フィルとデビュー。グリエールやフランセなど珍しいピアノのアルバムで注目されている。このアルバムでも連弾曲「思い出のメロディ」を両パート多重録音、こだわりを見せている。
ブラームス/テオドール・キルヒナー編曲:ピアノ三重奏版 弦楽六重奏曲
 〔第1番 変ロ長調 Op.18 /第2番 ト長調 Op.36 〕
 トリオ・ジャン・パウル
  [エックハルト・ハイリガース(P) ウルフ・シュナイダー(Vn) マルティン・レール(Vc)]
 録音:2014年10月、ドイツ放送室内楽ザール、ケルン。ピアノ三重奏版を編曲したキルヒナーには浪費癖や賭博癖があり音楽家として成功することはできなかったが、シューマン夫妻やブラームスとも親交があり、ことに当編曲はブラームス自身も高く評価していたという。深みのあるハーモニーで音楽を追求するトリオ・ジャン・パウルの演奏は、作品に新たな輝きを与えている。
20世紀のピアノ作品集
 ベルク:ピアノ・ソナタ Op.1 / シェーンベルク:3つのピアノ曲 Op.11 /ピアノ小品集 Op.33a, 33b
 ツィンマーマン:ささやかな小品I&II / リスト:暗い雲/災厄の星

 キャシー・クリエ(P)
 録音:2015年5月、室内楽ホール、フィルハーモニー、ルクセンブルク。ヨーロッパ・コンサート・ホール協会(ECHO)2015/2016 シーズンのライジング・スターに選出されヨーロッパ各地の主要ホールで公演を行うルクセンブルク出身のピアニスト、キャシー・クリエ。これまでにCAvi musicからは3枚のディスクが発売されており、ヤナーチェク:ピアノ作品集は、レコード芸術誌特選盤となった。当盤は幅広いレパートリーを持つ彼女ならではの選曲で、豊かな叙情とヴァリエーション豊富な色彩的な響きで、それぞれの難曲を弾ききっている。
アレクサンドル・アリャビエフ(1787-1851):
 ピアノ三重奏曲 変ホ長調 1楽章(未完)/ヴァイオリン・ソナタ ホ短調/
 ピアノ五重奏曲 変ホ長調(*) /ピアノ三重奏曲 イ短調
  ベートーヴェン・トリオ・ボン
   [濱倫子(P) ミハイル・オヴルツキ(Vn) グレゴリー・アルミャン(Vc)]
  アルトゥール・チェルモノフ(Vn;*) ウラディミール・バベシュコ(Va;*)
 録音:2015年3月、ドイツ放送室内楽ザール、ケルン。19世紀前半に活躍したロシアの作曲家アレクサンドル・アリャビエフ初期の室内楽曲。ベートーヴェンに憧れを抱いており、ドイツ・ロマン派の影響もみられる。また様式的には、シューベルト初期の古典的な形式も感じさせ、歌曲に重きを置いたという点でも「ロシアのシューベルト」とも言われることがある。演奏はピアニストの濱倫子率いるベートーヴェン・トリオ・ボン。五重奏曲では、ロシアの若手奏者2人を加わる。
シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44 (1842)
フェルディナント・ヒラー(1811-1885):ピアノ五重奏曲 ト長調 Op.156
 トビアス・コッホ(Fp|使用楽器:ヴィルヘルム・ヴィーク(ドレスデン)、1860年頃製作
 ケルン・プレイエルSQ [インゲボルク・シェーラー、ミレナ・シェーラー(Vn)
               アンドレアス・ゲルハルトゥス(Va) アンドレアス・ミュラー(Vc)]
 録音:2014年10月、ローベルト・シューマン・ハウス(シューマン生家)、ツヴィッカウ。ピリオド楽器使用。2004年にケルンで結成されたケルン・プレイエル四重奏団が、こちらもピリオド楽器演奏で知られるトビアス・コッホと共演したアルバム。シューマン・ハウスにはクララの叔父にあたるヴィルヘルム・ヴィーク製作のピアノが展示され、定期的にコンサートも行われているが、録音にはそのフォルテピアノを使用。カップリングは、シューマンと親交のあった同時代の作曲家フェルディナント・ヒラー(1811-1885)のピアノ五重奏曲。ヒラーは音楽について幅広い知識をもち、19世紀の最も影響力のあった音楽学者F=J.フェティスからも「当代最高のドイツの音楽家」と称され、作曲者としてだけではなく、ピアニスト、指揮者、教育者としても優れた才能を発揮した。15歳の頃にはフンメルの弟子となり、ベートーヴェンの死の際にも立ち会っている。その後パリに渡り華やか社交界で交友関係を広げ、ヨーロッパ各地を巡り、1843-44年ライプツィヒのゲヴァントハウスで指揮者を務め、この頃にシューマンと出会っている。シューマンはヒラーに「ピアノ協奏曲 イ短調」を献呈するなど深い親交があった。2015年は彼の没後130年にあたり、再評価も進んでおり、研究熱心なトビアス・コッホによりこの度、非常にハイ・レベルな演奏者たちによって録音された。ヒラーはピアノの名手であり、ピアノ五重奏曲でもその知識と技巧から生み出される多彩なアイデア、卓越した構築力で作品を作り上げている。
シューベルト
 4つの即興曲集 Op.90, D.899 /
 ピアノ・ソナタ第18番 ト長調「幻想」 Op.78, D.894
シェイラ・アーノルド(P)
 録音:2013年5月、シュタットハレ、マイナーツハーゲン、ドイツ。南インド出身のピアニスト、シェイラ・アーノルドが弾くシューベルト。自然な流れをいかした柔らかいタッチでバランスのとれた演奏を聴かせる。粒立ちの美しい音色が、軽やかなニュアンスを生み出し瑞々しい音楽を作り上げている。
ラフマニノフ:ピアノ三重奏曲第2番 ニ短調 Op.9「悲しみの三重奏曲」
 クリスティアン・テツラフ(Vn)
 ターニャ・テツラフ(Vc) アルトゥール・ピサロ(P)
 録音:2014年6月12日、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。ラフマニノフが初期に作曲した2つのピアノ三重奏曲「悲しみの三重奏曲」は室内楽作品の中でも人気が高く、チャイコフスキーに影響をうけており、第2番はチャイコフスキーの死を悼んで1893年に作られた。チャイコフスキーの「偉大なる芸術家の思い出」へのオマージュのようなモチーフもあり、悲痛な雰囲気の中に美しい抒情を湛え、最後は消え入るように終る。ポルトガル出身、ピサロの雄弁で風格のあるピアノ、クリスティアン&ターニャ・テツラフによる明瞭で繊細な美しさが調和した心惹かれる演奏を聴かせてくれる。
マーラー/エルヴィン・シュタイン編曲:交響曲第4番 ト長調(室内アンサンブル版)
 シュパヌンゲン音楽祭アンサンブル
  [クリスティアーネ・エルツェ(S) クリスティアン・テツラフ、ベンジャミン・ベイルマン(Vn)
   フオルカー・ヤコブセン(Va) ターニャ・テツラフ(Vc) アロイス・ポッシュ(Cb)
   マリー=クリスティーヌ・ジュパンチッチ(Fl) ブランカ・グレイスナー(Ob)
   シャロン・カム(Cl) マリオ・ヘリング(P) 諸岡亮子(ハーモニウム)
   ハンス=クリスティアン・ショス・セーアンセン、ディルク・オッフェルダー(Perc)
 録音:2014年6月10日、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。ラルス・フォークトが主催するシュパヌンゲン音楽祭。1998年の開始から毎年趣向を凝らした演目で聴衆を沸かせている。エルヴィン・シュタインによって編曲された交響曲第4番の室内楽版は、シェーンベルクと弟子たちによって運営されていた「私的演奏協会」のために編曲された。保守的なウィーン楽壇への挑戦として1918年に設立された「私的演奏協会」は、ブルックナーやヨハン・シュトラウスなどの興味深い作品の編曲が演奏されており、その中にはマーラーの作品も含まれていた。交響曲第4番は、マーラーの11曲の交響曲の中でも人気の高い曲の1つ。マーラーの音世界を見事に表現している。
ルートヴィヒ・ベルガー:室内遊びに基づく連作歌曲「美しき水車小屋の娘」 Op.11 (1818)
シューベルト:歌曲集「美しき水車小屋の娘」 D795
 マルクス・シェーファー(T)
 トビアス・コッホ(Fp|ヨハン・フリッツ〔ウィーン〕、1830年製
 ベルガー作品は世界初録音。 18世紀末頃パイジェッロのオペラ「水車小屋の娘への恋」がドイツ各地で大ヒットし、同テーマで様々な作品が作られるほど流行した。原詩を書いたヴィルヘルム・ミュラーが親しかったシュテーゲマン家では歌芝居が催され、メンデルスゾーンも教えていたサロンの一員であったルートヴィッヒ・ベルガーが作曲を担当。一方シューベルトは友人宅でミュラーの詩集を手にし、すぐに創作にかかったということ。修業の旅に出た若い粉職人が,美しい水車小屋の娘に恋する場面が広がるような、マルクス・シェーファーのよどみない美しい声が印象的。ここでは、トビアス・コッホが、作曲者の生きた時代のフォルテピアノを使って共演している。
第14回ルービンシュタイン国際ピアノコンクール優勝、バリシェフスキー
 ムソルグスキー:展覧会の絵
 スクリャービン:前奏曲集 Op.11 より Nos.1, 2, 5, 10, 12, 14, 21, 19 /
         アルバムの綴り Op.45 No.1 /ピアノ・ソナタ第5番 Op.53 /
         2つの小品 Op.59 /詩曲 Op.69 No.2 /前奏曲 Op.67 No.1 /詩曲 Op.71 No.1

 アントニー・バリシェフスキー(P)
 録音:2015年2月。1989年ウクライナ、キーウ〔キエフ〕出身、1974年の開催以来3年毎にイスラエルで開催されているルービンシュタイン国際ピアノコンクール第14回優勝ののアントニー・バリシェフスキーのソロ・アルバム。2014年の第14回は、コンクール40周年という節目の年であり、高い実力をもつピアニストが集結、2位にスティーヴン・リン(台湾/米)、3位にチョ・ソンジン(韓国)が入賞し、激戦が繰り広げられた。アントニー・バリシェフスキーはウクライナ音楽アカデミーでヴァレリイ・コズロフ氏に、パリ・エコール・ノルマル音楽院にてマリアン・リビッキ氏に師事。2011年ブゾーニ国際ピアノコンクール第2位、ハエン国際ピアノコンクール第1位と他の国際コンクールでも高く評価されている。独特の感性と音楽性を持つ新鋭ピアニストとして注目され、今回のコンクールでは現代イスラエル課題曲優秀賞を受賞しており、現代音楽の解釈と音の美しさでも他を圧倒していた。本アルバムでは、ムソルグスキーの展覧会の絵とスクリャービンのピアノ作品を収録。「展覧会の絵」は、管弦楽的色彩、ダイナミズムを追求した力演。スクリャービンはバリシェフスキー独特の色彩感覚が見事。今後にますます注目。
クリスタル〜アルゼンチン・タンゴ作品集
 マリアーノ・モーレス:クリスタル・タンゴ / エドゥアルド・スカリセ:ブスカンドテ・タンゴ
 Raúl Aguirrezabalaga: 傷跡のミロンガ / ホセ・ダメス:フィモス・タンゴ
 アルベルト・スアレス・ビリャヌエバ: Lloran las campanas Tango
 ホセ・マルティネス/アントニオ・ブリオーネ: Olivero Tango / ピアソラ:荒波
 セバスティアン・ピアナ: Paisaje Vals / Elsa Pigrau GuidinI: ラ・エスプエラ・ミロンガ
 オスヴァルド・エミリオ・フレセド:ミ・ビエホ・レロホ / エンリケ・デルフィーノ: Bélgica Tango
 エドゥアルド・ビアンコ/マリオ・メルフィ: Poema Tango / ロベルト・フィルポ: Alma de bohemio Tango
 ピアソラ:プレパレンセ/ブエノスアイレスの夏/マロン・イ・アスル/コルドバに捧ぐ

  クアルテート・ソロ・タンゴ
   [ロッコ・ハインス(バンドネオン) ゾフィー・ハインリッヒ(Vn)
    カレル・ブレデンホルスト(Vc) ルティン・クレット(P)]
 録音:2014年5月-6月。2008年に結成されたタンゴ四重奏団クアルテート・ソロ・タンゴ。世界各地のタンゴ・フェスティヴァルに招待されている新世代のアーティスト。クラシカル・アルゼンチン・タンゴから、ピアソラやプグリエーセのようなヌエーヴォ・タンゴまでピアノのマルティン・クレットを中心に質の高いメンバーが演奏している。
シューマン、ヴォルフ、マルタン:歌曲集
 シューマン:リーダークライス Op.24 /4つの歌〜君の頬をよせて Op.142 No.2 /5つの歌〜君の顔 Op.127 No.2 /
       4つの歌〜ぼくの馬車はゆっくりと Op.142 No.4 /ロマンスとバラード第4集「悲劇」より
         〔ぼくと一緒に逃げて Op.64 No.3a /春の夜に霜が降り Op.64 No.3b 〕/
       ミルテの花〜君は花のように Op.25 No.24
 ヴォルフ:竪琴弾きの歌〔孤独にふける者/私は戸口に忍び寄って/涙とともにパンを食べたことのない人は〕
 フランク・マルタン:「イェーダーマン」より6つのモノローグ(サプライズ・トラック収録)

 アンドレ・シュエン(Br) ダニエル・ハイデ(P)
 録音:2014年12月。その幸せな偶然は2人に同時に訪れた。バリトン歌手のアンドレ・シュエンとピアニストのダニエル・ハイデは、2008年のザルツブルク・モーツァルテウムテウムの夏期アカデミーに参加していた。2人は別々に入賞者記念リサイタルに出場。その時アンドレ・シュエンの声を聞いたダニエル・ハイデが、彼の声を自分が探し求めていた声だと確信し、アプローチした。それから2人は親交を深めこのアルバムを録音するに至った。このアルバムは異なる3つの時代の作曲家の作品を収録。シューマンは満たされた若い恋人を、フランク・マルタンは死の恐怖で絶望の淵にたつ者を、ヴォルフは人生の終わりを迎えた孤独な者を歌う。自身の声の可能性を追求し続けている歌手らしい選曲。
ハンス・ゾマー(1837-1922):
 ピアノ四重奏曲 ト短調(*) /ピアノ三重奏曲 変ホ長調/
 ヴァイオリンとピアノのためのガヴォット Op.41 /
 ヴァイオリンとピアノのためのロマンス 嬰ハ短調/
 ヴァイオリンとピアノのための「消滅の喜び」 ホ短調
  トリオ・イマージュ
    [ゲルガナ・ゴルゴヴァ(Vn) トーマス・カウフマン(Vc) パウリン・ネチェフ(P)]

  ハルトムート・ローデ(Va;*)
 録音:2014年8月、イエス・キリスト教会、ベルリン。世界初録音。近代ドイツの作曲家ハンス・ゾマーの室内楽作品集。現在忘れられているが、ゲッティンゲン大学で数学を学び、後 同大学物理学教授、さらに故郷ブラウンシュヴァイクの工科大学学長も務めたという音楽家としては異例の経歴を持つ。46歳以降音楽に専念し、同時代の作曲家たち、特にリヒャルト・シュトラウスと親交を深め、遅咲きながら主に歌劇や歌曲において作曲家としても大きな成功を収め、85歳で亡くなった。演奏は、若手三重奏団、トリオ・イマージュ。彼らは前作もマウリシオ・カーゲルの作品に取り組むなど、歴史に埋もれた作品や作曲家の発掘を積極的に行っている。
ブラームス
 ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77 (*) /
 弦楽五重奏曲第2番 ト長調 Op.111
  (アンティエ・ヴァイトハース&ケーティ・シュトイリ編曲/弦楽オーケストラ版)(#)
 アンティエ・ヴァイトハース(Vn) カメラータ・ベルン
 録音:2014年12月、カジノ、ベルン(*)、ラジオスタジオ、チューリヒ(#)。ヴァイトハース率いるカメラータ・ベルンによるブラームスの協奏曲の登場。アルカント・カルテットのファースト・ヴァイオリンを務めるヴァイトハース。現在、1962年に設立された伝統ある弦楽アンサンブルグループ、カメラータ・ベルンの芸術監督も務めている。2012年に発売されたベートーヴェン作品編曲版(4260085-532261)に続く同コンビのアルバム。ブラームスのヴァイオリン協奏曲はヴァイオリニストにとって最も重要な協奏曲のひとつ。ヴァイオリニストにとって技巧面はもちろん、音楽的な深い造詣、さらに充実したスタミナが必要となる作品。またソロ・ヴァイオリンと同等以上に存在感をみせるオーケストラも聴きどころのひとつだが、ここでは小規模編成のカメラータ・ベルンが担当し、重厚な大編成とは一味違う演奏を聴かせてくれる。華やかさはないが、細部までじっくりと音楽と向き合い、ブラームスのスコアが透けて見えるような、見通しの良いサウンド、生き生きとした明快なブラームス像を描いている。カップリングには、ヴァイトハースとカメラータ・ベルンのコントラバスケーティ・シュトイリが弦楽オケに編曲した、ブラームスの弦楽五重奏曲第2番が収録されている。流麗な旋律、精緻な構造は、晩年のブラームスの力作。もともと壮大な音楽構造のオーケストラのテクスチャーを感じさせる曲であるため、弦楽オケ版ではよりおおらかな表現と、オケのメンバー同士の音色も合い、より一体感のある音楽を展開している。
マーラー:交響曲第3番 ニ短調
 エヴァ・マルシニク(A) ダニエル・ライスキン指揮ライン州立po.
 マインツ大聖堂少年cho.&女声cho. ペーター・メーンケディーク(ポストHrソロ)
 録音:2013年12月13日、ライン・モーゼル・ハレ、ライヴ。次世代を担う指揮者として注目を集めているダニエル・ライスキンによるマーラーの交響曲第3番。スコアを入念に読み込み、緻密に壮大な世界を作り上げ、マーラーがこの大規模な作品に込めた思いを余すところなく伝えようとする意欲に満ちた演奏。マインツ大聖堂合唱団の美しい声楽部にも注目。ダニエル・ライスキン:1970年サンクトペテルブルク生まれ。指揮者デビューする以前にはヴィオラ奏者として活躍。2005年からライン州立フィルハーモニーの首席指揮者に就任。またアルトゥール・ルービンシュタインpo. の首席指揮者、ヴロツワフpo. の常任指揮者、ウラルpo. 首席客演指揮者、ミッケリ・シティo. 常任指揮者なども務め、若き世代を代表する指揮者として注目を集めている。
ベートーヴェンピアノ小品全集
 [タンジェント・ピアノ、C.P.シュマール、レーゲンスブルク、1790年]
   ロンド ハ長調 WoO.48 /ロンド イ長調 WoO.49 /バガテル「楽しい悲しい」WoO.54 /フーガ ハ長調 Hess.64
 [フォルテピアノ、ミヒャエル・ローゼンベルガー、1805-1810年]
   全長調による2つの前奏曲 Op.39 /2つのロンド Op.51 〔ハ長調/ト長調〕/
   2つのアレグレット〔ハ短調 WoO.53 /ハ短調 Hess.69 〕
 [フォルテピアノ、コンラート・グラーフ Op.1207、1827/28年]
   ロンド・ア・カプリッチョ「失われた小銭への怒り」 ト長調 Op.129 /前奏曲 ヘ短調 WoO.55 /
   アンダンテ・ファヴォリ ヘ長調 WoO.57 /ポロネーズ ハ長調 Op.89 /幻想曲 ト短調 Op.77
 [フォルテピアノ、ナネッテ・シュトライヒャー&ゾーン Op.1977、1827年]
   7つのバガテル Op.33/11の新しいバガテル Op.119 /6つのバガテル Op.126 /バガテル ハ短調 WoO.52 /
   バガテル ハ長調 WoO.56 /バガテル ハ長調 Hess.74 /バガテル イ短調 WoO.59「エリーゼのために」/
   小品(かなり生き生きと) 変ロ長調 WoO.60 /小品(アレグレット) ロ短調 WoO.61 /
   小品(アレグレット・クワジ・アンダンテ) ト短調 WoO.61a /小品 ヘ短調/小品 ハ長調「最後の楽想」
 [オルフィカ、ウィーン、1800年頃]
   2つの小品 WoO.51
 カール・レオポルト・レーリヒ(1745-1804):オルフィカのための3つの短いやさしい小品/読譜練習曲

 トビアス・コッホ(Fp)
 録音:2013年-2014年。メンデルスゾーンやシューマンのピアノ作品をピリオド楽器で録音しているトビアス・コッホによる、楽器5つを弾き分けたベートーヴェンの小品全集。1つ目の「タンジェント・ピアノ」は18世紀半ばに登場、タンジェントと呼ばれる木片で弦を打って音を出す。繊細でキラキラした音色。3つ目のグラーフ製のフォルテピアノは、珍しくトルコ式ペダルが付いた5本ペダルで、ベルと太鼓を奏でることができ「失われた小銭への怒り」で効果的に使われている。最後の携帯用小型ピアノ「オルフィカ」は、1795年にカール・レオポルト・レーリッヒによって考案されたもので、ベートーヴェンは初恋の相手エレオノーレに、この楽器用作品を残している。合せて考案者による作品も収録。
アンティエ・ヴァイトハース〜バッハ&イザイ Vol.1
 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト短調 BWV 1001
 イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ〔第1番 ト短調 Op.27 No.1 /第2番 イ短調 Op.27 No.2 〕
 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 BWV 1004

 アンティエ・ヴァイトハース(Vn)
 録音:2012年10月、ケルン。使用楽器:シュテファン=ペーター・グライナー、2001年製。現代最高の弦楽四重奏団といわれるアルカント・カルテットの第1ヴァイオリンを務めるアンティエ・ヴァイトハース。抜群の安定感と表現力、そして豊かな音量と音色でカルテットの起点となっている。CAviレーベルにはソロやアンサンブルなどを含めてこれまで17枚のCDを発売している。どのアルバムも冷静な曲作りと、ここ一番では大胆にも聴かせ、聴くものを魅了させてきた。そして、この度発売されるのは、無伴奏ヴァイオリン作品の最高峰J.S.バッハとイザイ。本アルバムは、この二人の作曲家の無伴奏を組み合わせたアルバム三部作の第1弾。構成はJ.S.バッハの作品がイザイを挟むように収録。極めて自然なフレージングで開始され、終曲「シャコンヌ」でもヴァイトハースの「シャコンヌ」という主張のある演奏ではなく、静かに音楽が語りかけてくるような深い音楽性を感じる演奏。イザイはJ.S.バッハの6曲からなる無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータに感銘を受け、同じく6曲の無伴奏ヴァイオリン・ソナタ集を完成させた。イザイの6曲は、いずれも名ヴァイオリニストたちに捧げられており、難易度が高く相当な技巧が必要となる。ヴァイトハースは卓越した技巧と豊かな歌心で、楽々と弾きこなしている。20世紀を代表するヴァイオリニスト、ヨゼフ・シゲティに献呈された第1番は、J.S.バッハの第1番と同じ調性 ト短調で書かれ、第2楽章はフーガ形式で書かれるなど、J.S.バッハの音楽を強く意識した構成。第2番はジャック・ティボーに捧げられ、J.S.バッハのパルティータ第3番のフレーズから始まり、「怒りの日」の主題がその後全編に渡って使われている。また注目は、ヴァイトハースが使用している楽器。現代のドイツの製作者シュテファン=ペーター・グライナー製。近年、名器ストラディヴァリウスから乗り換えるプロの演奏者も増え、クリスティアン・テツラフが使っていることでも話題となった楽器。落ち着いた音色と上品で繊細な響きが魅力。ヴァイトハースは、しなやかに美しく弾きこなしている。
ラスト・ソナタ
 ベートーヴェン:
  ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 Op.111
 シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D.960
ベンジャミン・モーザー(P)
 録音:2014年4月、ケルン、ドイツ放送室内楽ホール。ドイツの若手ピアニスト、ベンジャミン・モーザー。1981年ミュンヘンの音楽一家に生まれ、幼い頃からその才能を認められていた。2003年にアルトゥール・シュナーベル・コンクール第1位を皮切りに数々のコンクールに入賞。2007年チャイコフスキー国際コンクールでは5位入賞並びに聴衆賞を獲得した期待のピアニスト。このアルバムで彼は、自身が得意とするベートーヴェンとシューベルトの最後のピアノ・ソナタを収録。彼はこれまでにロシアとフランスの作曲家の作品を録音している。その録音後、ウィーン古典派の作品を新たに学び直す過程で、ベートーヴェンの32番のソナタをリサイタルでも度々演奏していたとのこと。そうした機会のなかで彼は「“最後の作品 "というのは、作曲家の最後の言葉。そこに作曲家の意図が凝縮されていることもある。それをテーマに録音をしてみたい」という気持ちが芽生え今回のアルバムが制作された。緻密な構成力と適切な楽曲への理解、さらに瑞々しい感性と歌心に溢れる演奏。作曲家の最後の言葉を聞き取った彼が次に目指すものが非常に楽しみになるディスク。
モーツァルト弦楽四重奏曲集
 〔第9番 イ長調 K.169 /第18番 イ長調 K.464 /第22番 変ロ長調 K.589 〕
 アルミーダSQ [マルティン・フンダ、ヨハンナ・シュテムラー(Vn)
           テレサ・シュヴァム(Va) ペーター=フィリップ・シュテムラー(Vc)]
 録音:2014年8月、ブレーメン ゼンデザール。
 ドイツの若手弦楽四重奏団アルミーダ・カルテットの2枚目のアルバム。2016年2016年は記念すべき10周年。結成当時から彼らの夢だったモーツァルトの弦楽四重奏曲全23曲をコンサートで披露する予定。それに先立ち、3曲をセレクトして録音した。明るく瑞々しい感性に溢れる第9番、ベートーヴェンが好んだという「ハイドン・セット」に含まれる第18番、フリードリヒからの依頼で作曲された「プロイセン四重奏曲」と呼ばれている、モーツァルト最晩年の第22番。アルミーダ・カルテットの美しいアンサンブルと生き生きとした音楽で、爽やかな余韻を残すような演奏。
 2006年共にアルテミス・カルテットの下で学んだ4人によって結成。第61回ミュンヘン(ARD)国際音楽コンクールで優勝。2011年には第66回ジュネーヴ国際コンクールでリゲティの弦楽四重奏曲第1番『夜の変容』を演奏し、聴衆賞を獲得した、注目の若手カルテット。カルテット名は、弦楽四重奏の父ハイドンの最も成功したオペラの一つ『アルミーダ』から付けられた。
ドビュッシー:ピアノ三重奏曲 ト長調/小組曲(三重奏用編曲)
ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調
 ファイニンガー・トリオ[アドリアン・オーティカー(P)
   クリストフ・シュトロイリ(Vn) ダヴィッド・リニカー(Vc)]
 ドイツの造形学校「バウハウス」の設立者の一人現代画家ライオネル・ファイニンガーから名前を取ったファイニンガー・トリオ。メンバーは、BPOの現役ヴァイオリン奏者クリストフ・シュトロイリ、BPO12人のチェリストにも入っているダヴィッド・リニカー、スイス人ピアニストで室内楽の経験も豊富で、BPOのメンバーとも度々共演しているエイドリアン・オーティカー。前回のアルバムでは、ドヴォルジャーク、スメタナ、スークのチェコの作曲家によるピアノ・トリオを収録していたが、今回はフランス物。3人の奏者に高い技術が求められる内容で、ファイニンガー・トリオの面々も躍動感溢れる力強い演奏を聴かせてくれる。
ペルーのギター音楽集〜メヌエット、ロンド、ファンタンゴ、トッカータ
 ペドロ・ヒメネス(1780-1857):メヌエット
  〔 Nos.1-2, 4, 6, 15, 17, 21, 23, 27, 36-38, 40, 48, 57, 61, 74-76, 95, 98 〕
 カデルノ・デ・マティアス・マエストロ(1766-1835):
  アンダンテ ホ短調/ロンド ト長調/ラルゴ ロ短調/メヌエット ト短調/ファンタンゴ ニ短調/
  メヌエット ト短調/メヌエット イ短調
 カデルノ(作者不詳1830):メヌエット イ短調/メヌエット ニ短調/メヌエット ト短調
 リブロ・デ・シフラ(作者不詳1805):メヌエット ホ短調/トッカータ イ短調/メヌエット ハ短調

  アレクサンダー=セルゲイ・ラミレス(G)
 録音:2013年3月。ほとんどが世界初録音とのこと。作曲者?部分は代理店記載ママ。世界的に認められているギタリスト、アレクサンダー=セルゲイ・ラミレス。ペルーのリマ市で芸術家のドイツ人の父、ペルー人の母のもとに生まれた。ドイツ・デュッセルドルフのローベルト・シューマン音楽大学ギター科、マニタ・ケアスティン教授の下で研鑽を積み、卒業後にスペインでホセ・ルイス・ゴンザレス、アメリカでぺぺ・ロメロに師事。1987年のアルハンブラ国際ギターコンクールに優勝して一躍脚光を浴び、1993年にDENONでCDデビューを果たし、その後はドイツグラモフォンからもCDをリリース。ソロコンサート、また室内楽をルノー・カピュソン、ダニエル・ホッペ、アマティ、ロザムンデといった弦楽四重奏楽団等と共に世界各地で演奏活動を行い、ベルギー国立オーケストラ、キューバ国立シンフォニーso. などとの共演をはじめ、国際的な活躍をしている。現在、ローベルト・シューマン音楽大学で教授として後進の指導にあたっている。このアルバムは、彼の母の、そして自身の生まれ故郷でもあるペルーを含むギター音楽を取り上げ、そのほとんどが世界初録音の作品。ペルーの19世紀音楽を代表する重要な作曲家ペドロ・ヒメネスが、様々な楽器のために作曲した楽譜が8年ほど前に発見された。その中に129のギター作品が含まれ、その中の120曲がメヌエットであった。このアルバムでも22曲が収録されている。また18世紀スペイン植民地時代に記された作者不詳の手書きギター譜集“リブロ・デ・シフラ "からもいくつか演奏している。技巧はもちろんのこと、ラミレス独特の色彩感を放つ音色が輝く、美しい1枚となっている。
タイユフェール、フォンテイン、ラヴェル:ピアノ三重奏曲集
 タイユフェール:ピアノ三重奏曲 / ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調
 ジャクリーヌ・フォンテイン(1930-):ピアノ三重奏曲
  モルゲンシュテルン・トリオ
   [エマニュエル・ヴェーゼ(Vc) シュテファン・ヘンペル(Vn) カトリーヌ・クリップフェール(P)]
 録音:2013年10月、ケルン。ドイツ・エッセンのフォルクヴァング音楽大学で学んだ3人によるトリオ。グループ名は、19世紀ドイツの詩人、クリスティアン・モルゲンシュテルンからとった物。結成からわずか2年余りでドイツ国内の音楽賞をとり、2010年には、アメリカで行われたカリヒシュタイン・ラレード・ロビンソン・トリオ賞を受賞。ケネディ・センターやカーネギー・ホールでコンサートを行い、ワシントン・ポストをはじめ多くのメディアで絶賛された。フランスとベルギーの作曲家の三重奏曲を収録。冒頭は、ラヴェルがその才能を高く評価したというフランス6人組の紅一点タイユフェール。色彩感覚豊かな和声と繊細な響き、美しいメロディが特徴。ラヴェルのピアノ三重奏曲が書かれたのは1914年、その2年後にタイユフェールはこの初稿を書き上げている。そのラヴェルのピアノ三重奏曲は、ピアノと弦楽器の響きの調和が神秘的な雰囲気をもたらす名曲。ベルギー出身のジャクリーヌ・フォンテイン。彼女の初期の作品で、エリザベート王妃音楽大学卒業直後に作曲された。12音技法をベースとした4楽章構成の古典様式で書かれ、明るい響きに満ちた作品。モルゲンシュテルン・トリオの演奏は、透明感がある音色とメリハリをつけた演奏で、音楽を立体的に表現している。
フランスのチェロ・ソナタ集 Vol.2
 フランク:チェロとピアノのためのソナタ イ長調
 フォーレ:ロマンス Op.69 /子守歌 Op.16 /エレジー Op.24 /3つのロマンス Op.17
 サン=サーンス:チェロとピアノのためのソナタ第2番 Op.123
  ユリアン・ステッケル(Vc) パウル・リヴィニウス(P)
 録音:2013年4月、ケルン、ドイツ放送室内楽ザール。1982年生まれのドイツのチェロ奏者ユリアン・ステッケルは、2010年のミュンヘン国際音楽コンクールの優勝者。力強く重量感ある音も、柔らかく透明感ある音も出せ、幅広い表現力をもった奏者。同レーベルからは、メンデルスゾーン:チェロ作品全集(4260085-531394)、20世紀のチェロ協奏曲集(4260085-532230)、フランスのチェロ・ソナタ集 Vol.1(4260085-532308)といずれも高い評価を得ており、期待の若手として注目されている。今回はフランス・チェロ・ソナタ集の第2弾。フランクのチェロ・ソナタは、広くヴァイオリン・ソナタとして親しまれている名曲のチェロ版で、チェロの貴重なレパートリーとしてコンサート、録音ともに取り上げられる機会の多い作品。抒情的かつ情熱的な美しく調和のとれた旋律を、チェロの伸びやかな響きが音楽の流れを一層引き立てている。そしてフォーレらしい透明感ある美しいチェロのための小品もいくつか収録。ロマンス Op.69は、フォーレ特有の洗練されたメロディーが美しい作品。もともとチェロと管弦楽のために書かれたエレジー Op.24。チェロとピアノ版も演奏機会は多く、フォーレの内省的で甘美な世界へ誘われる1曲。サン=サーンスはチェロ・ソナタを2つ作曲しており、本アルバムに収録されているのは、晩年に書かれた第2番。技術的にも音楽的にも高いレベルを要求される傑作だが、ステッケルの申し分ないテクニックと優れた音楽性で鮮やかに弾きこなしている。
世紀末の歌
 シュレーカー:5つの歌 Op.5 / シェーンベルク:4つの歌 Op.2
 ツェムリンスキー:メーテルリンクの詩による6つの歌 Op.13 / ベルク:4つの歌 Op.2
 マーラー:春の朝/無骨な骨折り/もう会えない!/思い出/ラインの伝説/この歌を作ったのは誰/外へ、外へ

 アンケ・フォンドゥング(Ms) クリストフ・ベルナー(P)
 録音:2013年1月、ケルン。マーラー、ベルク、ツェムリンスキー、シェーンベルク、シュレーカーなどのウィーン世紀末の歌曲を収録したアルバム。歌うのはドイツのメゾソプラノ、アンケ・フォンドゥング。1995年にブリテンの「アルバート・ヘリング」のナンシー役でオペラ・デビュー。2002年までインスブルック歌劇場、2003年から2005年までゼンパーオーパーに所属。日本には、2007年ドレスデン歌劇場の「ばらの騎士」でオクタヴィアンを演じ、2010年にN響でマーラーの「復活」を歌い、高い評価を得ていた。今回はじめてのソロ・アルバムをリリース。ピアノのクリストフ・ベルナーとは、長年歌曲の演奏で共にしている仲間。このアルバムは、世紀末ウィーンを生きた作曲家の作品を集めたもので、フランツ・シュレーカーの5つの歌をプログラムの主軸に考え練り上げたアルバム。シュレーカーは「烙印を押された人々」などオペラ作曲家として活躍。「退廃音楽」の作曲家として知られてはいるが、この歌曲は旋律線は美しく、音楽語法を駆使した完成度の高い作品。アルバムの最後にはマーラーの歌曲を配置し、同じ時代を生きた作曲家が互いに触発され、世紀末ウィーンのデカダンスな雰囲気を感じられる1枚。
VIOLA GALANTE
 C.P.E.バッハ:トリオ・ソナタ ト短調 Wq.88 (H.510)
 ウィリアム・フラックトン(1709-1798):ソナタ ハ短調 Op.2 No.8
 ジョルジョ・アントニオット(1692頃?-1776頃):ソナタ 変ホ長調(*)
 フランツ・ベンダ(1709-1786):ソナタ〔ハ短調 Lee B3.137 (*) /ヘ長調 (*) 〕
 クリストリープ・ジークムント・ビンダー(1723?1789):ヴィオラとチェンバロのためのトリオ ニ長調(*)
*
 パウリーネ・ザクセ(Va|使用楽器〔弦〕:マッジーニ、1610年製〔ガット〕
 アンドレアス・ヘッカー(Cemb|ミートケ、1700年製のコピー
 録音:2016年9月、ワイマール。(*)は世界初録音。 ベルリン放送so.首席ヴィオラ奏者パウリーネ・ザクセによるこのアルバムには、世界初録音を含む、18世紀後半のヴィオラのレパートリーが収録されている。1775年以前では、アンサンブルや宮廷o.などでも従属的な役割を果たすことが多く、独奏楽器としてヴィオラの作品はほとんど無かった。1713年ヨハン・マッテゾン(1681-1764)は、著書の中でヴィオラが音楽のハーモニーの均整を保っていると記し、1738年には、ヨハン・フィリップ・アイゼル(1698-1763)が、ヴィオラは「音楽の内なる声」であると、さらにヨハン・サミュエル・ペトリ(1738-1808)も著書の中で「無知な初心者や愚かな老人たちによってヴィオラは虐げられている。音楽の中で大きな効果を発揮する美しい楽器である」と言及し、ヴィオラの重要性を説いてきた。しかしヴィオラの独奏パートが、巧みなヴァイオリン奏者によって演奏されたことは、結果的にはヴィオラのための作品を生み出すことに繋つながった。ちなみに、こにアルバムジャケットでザクセが着用しているドレスは、あのソプラノ歌手のバーバラ・ボニーが作ったものということ。
ハイドンピアノ三重奏曲集
 〔第43番 ハ長調 Hob.XV: 27 /第23番 ニ短調 Hob.XV: 23 /
  第25番 ホ短調 Hob.XV: 12 /第26番 嬰ヘ短調 Hob.XV: 26 〕
 トリオ・ジャン・パウル
  [エックハルト・ハイリガース(P) ウルフ・シュナイダー(Vn) マルティン・レール(Vc)]
 録音:2013年3月、クラウス・フォン・ビスマルク・ザール、WDR ケルン。『ここに収録されている 4 つのピアノ三重奏曲には、中世音楽史において” 悪魔の音程” と言われていた増4度が使われています。18世紀の教養のある聴衆たちを驚かせるハイドンらしい工夫です。』(マルティン・レール) 1991年に結成されたトリオ・ジャン・パウル。1993年の第1回大阪国際室内楽コンクール、1995年のメルボルン室内楽コンクールで優勝した実力派。これまでCAviレーベルでメンデルスゾーン、シューベルトのアルバムをリリースしているが、深みのあるハーモニーで円熟したアンサンブルを聴かせてくれた。今回はハイドン。その機知と独創性を見事に表現している。
子供のために
 トーマス・ラルヒャー(1963-):子供のための12の小品「 Poems 」
 シューマン:子供のためのアルバム Op.68 より Nos.1-2, 4, 7-8, 10-12, 14-17, 19-21, 23, 25, 28-32, 43
 バルトーク:子供のために Sz.42 より Nos.1, 3, 5-8, 10-11, 13-17, 19-21, 26-27, 29-30, 33-35, 40

 ラルス・フォークト(P)
 録音:2014年3月、室内楽ホール、ケルン放送局。 『私はいつもレパートリーにしている作品のほかに、自分の楽しみのための作品リストを持っています。私はリストのロ短調ソナタのような超人的レパートリーにはあまり惹かれません。ピアノ演奏において、テクニックを競うような側面は音楽的魅力に乏しく、私はそのかわりに音楽に込められた深遠なメッセージを読み取ることを好みます。その視点から考えると子供も弾くことのできる作品は、簡単な技術の世界へ遠足に行くようなワクワク感があります。そして子供だけでなく大人にもこのアルバムを楽しんで欲しいと思っています。それはこれらの作品が決して子供じみた内容ではなく、活気と豊かな表現力を駆使した音楽を本当に愛する人が作った作品だからです。そして子供たちにとっては最高品質の音楽に早くから親しむことができるのです。』 (ラルス・フォークト)
 子供向けのコンサート企画にも積極的に取り組んでいるフォークトならではの選曲。トーマス・ラルヒャーは瞑想的なハーモニーと内部奏法などの演奏技術の融合が魅力の作曲家。ラルヒャーはピアノに新たな光をあて、表現の可能性を広げたいという思いから作曲に着手し、レイフ・オヴェ・アンスネスに触発されて仕上げたのがこの子供のための12の小品「Poems」という。フォークトが幼い時に持っていたぬいぐるみの「テディ」をアルバムのジャケット写真に使っている。
ショパンピアノ作品集
 バラード第4番 ヘ短調 Op.52 /スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31 /幻想即興曲 嬰ハ短調/
 夜想曲〔第2番 変ホ長調 Op.9 No.2 /第1番 変ロ短調 Op.9 No.1 /第8番 変ニ長調 Op.27 No.2 /
     第7番 ハ短調 Op.27 No.1 /第13番 ハ短調 Op.48 No.1 〕/幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61

 ソフィー・パチーニ(P)
 録音:2013年12月、ケルン、ドイッチュラントフンク・カンマームジークザール。
 1991年ミュンヘン出身のピアニスト、ソフィー・パチーニ。アルゲリッチが「まさに若い頃の自分を思い出すようだ。」と絶賛したことで、世界から一躍注目を集め、2012年の来日公演では、その才能を遺憾なく発揮した見事な演奏を聴かせていた。今回はオール・ショパン・アルバム。彼女のわきたつような感性とイマジネーションが、ショパンの作品に見事に投影され、見事なテクニックで聴かせてくれる。特に冒頭のバラードの4番では、圧倒的な推進力と豊かな表現力を兼備した秀演と言えるだろう。また購入者のみのサプライズ・トラックへのURLがブックレットに掲載されている。
ジャン=フィリップ・ラモー
 新クラヴサン組曲集第2番(第5組曲)
 〔トリコテ(ロンドー)/無頓着/メヌエット/第2メヌエット/雌鶏/3連音/未開人/ルナルモニーク/エジプトの女〕/
 クラヴサン合奏曲集からの小品〔リヴリ/軽はずみ/内気(第1ロンドー/第2ロンドー)/
                 おしゃべり〕/
王太子妃
リゲティ:ムジカ・リチェルカータ
 キャシー・クリエ(P)
 録音:2013年11月-12月、カンマームジークザール、ドイチュラントフンク、ケルン。ヤナーチェクのピアノ作品集でも評判が高い、ルクセンブルクの俊英ピアニスト、キャシー・クリエによる、CAvi-music 3枚目のアルバム。今回はフランス・バロックを代表する作曲家で、2014年は没後250年の記念の年にあたるジャン=フィリップ・ラモーのクラヴサン作品と、戦後から現在に至るまで現代音楽をリードし続けているジェルジュ・リゲティの「ムジカ・リチェルカータ」を収録。一見なんの共通点もない作曲家であるが、その時代の先端を行く様式を生み出してきた2人。リゲティの「ムジカ・リチェルカータ」は、11曲からなる作品。リゲティが当時傾倒していたバルトークの民俗主義と12音音列を結びつけた物。第1曲目はほとんど「ラ」だけで構成され、最後に「レ」があらわれ、各曲に使う音を1音ずつ増やし、最後に12音音列に到達する。キャシー・クリエは、リゲティが織り上げた緻密な音世界を見事に再現している。ジャン=フィリップ・ラモーのクラヴサン作品は、典雅な音楽的魅力をたたえながらも、密度の濃い緻密な音楽が繰り広げられている。キャシー・クリエは、近代的な奏法と確かなテクニック、そして斬新な解釈で聴かせてくれる。
カール・レーヴェ(1796-1869):歌曲とバラード集
 エドヴァルト Op.1 No.1(ヘルダー詩)/ひいおじいさんのお友達 Op.56 No.3(フォーグル詩)/
 死の舞踏 Op.44(ゲーテ詩)/さすらい人の夜の歌 Op.9 H.1,3a, b (ゲーテ詩)/
 魔法使いの弟子 Op.20 No.2(ゲーテ詩)/詩人トム Op.135(フォンターネ詩)/時計 Op.123 No.3(ザイドル詩)/
 海を行くオーディン Op.118(シュライバー詩)/魔王 Op.1 No.3(ゲーテ詩)/オールフ殿(ヘルダー詩)/
 やさしい弔い(ウーラント詩)/アーチボルト・ダグラス Op.128(ウーラント詩)

 ローマン・トレーケル(Br) ダニエル・ハイデ(P)
 録音:2013年7月、ベルリン。ベルリン国立歌劇場のソリストとして活躍している現代を代表するバリトン歌手、ローマン・トレーケルが、カール・レーヴェの歌曲とバラード集を録音した。トレーケルは以前レーヴェの歌曲&バラード全集の録音に参加したこともあり、さらに彼はカール・レーヴェ協会の名誉会員として名を連ねている。トレーケルはこのアルバムに際し「当初はレーヴェと同時代であるシューベルト、シューマンの歌曲を含めた内容を考えていた。しかし、最終的にはレーヴェの作品のみを収録することにした。彼の仕事は大変価値のあるものにもかかわらず、過小評価されていた。私はこの録音でこれまでとは全く別のアプローチでレーヴェの音楽を表現することにした。」と語っている。トレーケルは、さすがディースカウの後継者とも言われる圧倒的な表現力と卓越した構築力でドラマティックに聴かせてくれる。レーヴェは、シューベルトやシューマンらと同時代に活躍した作曲家で、500曲にのぼるリートを残し、ドイツ・リートの歴史を語る上で欠かせない存在。まずレーヴェが22歳の時の作品「エドヴァルト」。詩人のJ.G.ヘルダーが採取した古いスコットランドのバラードに基づく 「父親殺し」の物語で、強烈な緊張感が支配する曲。レーヴェはこの作品を皮切りに次々とリート作品を生み出していく。そしてレーヴェの代表作である「魔王」。これはゲーテの詩にシューベルトが曲をつけたことで誰もが知る有名作。若き日のレーヴェも、シューベルトとほぼ同時期にこの作品に触発され作曲している。レーヴェは父と子の心理劇をよりシリアスに描き、シューベルトよりドラマティックに仕上げている。さらに最後の「子供は腕の中で死んでいった(In seinen Armen das Kind war tot)」という部分は劇的な終わり方でかなりショッキング。その他にも「詩人トム」、「海を行くオーディン」、「アーチボルト・ダグラス」など魅力的な作品が収録されており、レーヴェの多彩な作風を楽しむことが出来る。
レーガー
 ピアノ協奏曲 ヘ短調 Op.114 (*) /
 エピソード集 Op.115 より Nos.1-5 /
 綴じていないページ Op.13 〜第7曲「コラール」
マルクス・ベッカー(P)
ジョシュア・
 ウェイラーズテイン指揮(*)
ハノーファー北ドイツ放送po.(*)
 録音:2017年1月、ライヴ(*) /2017年12月、セッション(*以外) 。マルクス・ベッカーは、レーガーを集中的に弾き続けているドイツのピアニスト。若くしてピアノ作品全集を録音、以降も演奏会で頻繁にレーガーを取り上げており、ソロのみならず室内楽、歌曲など多作家レーガーの残したたくさんの楽曲を演奏してきた。いくつかのレーベルからCDもリリースされている。そんな生粋のレーガー弾きである彼が、ついに協奏曲を初録音。ベッカーは協奏曲について「ずっと勉強はしていたものの、作品に対して疑問も多かった」という発言をしており、考え抜いて辿りついたひとつの回答として、この録音が出来上がったとも言えるだろう。ppppやffffといった極端なダイナミクス、非常に多くの音符、凝縮された和音が独奏者に降りかかる大作コンチェルト。レーガーの真骨頂である「晦渋さ」もおおいに炸裂する。レーガーの音楽を極めたベッカーならではの大演奏をお聴き頂きたい。
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61
ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
アンティエ・
 ヴァイトハース(Vn)
スティーヴン・スローン指揮
スタヴァンゲルso.
 録音:2012年3月、スタヴァンゲル・コンサートホール、ノルウェー、ライヴ。今最も注目されているカルテットの一つ、アルカント・カルテットの第1ヴァイオリンを務めるアンティエ・ヴァイトハースによる、ベートーヴェンとベルクのヴァイオリン協奏曲。彼女はこれまでにCAiv musicに幾つか録音しているが、大がかりな協奏曲は初めて。数々の名盤ひしめくベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。なぜ今この作品なのかという問いにヴァイトハースは、「長年この作品と向き合ってきてようやく、自分自身の形を見つけられたから」と答えている。ヴァイオリニストのテクニックよりも、音色、表現力、そして音楽性が問われる、崇高さと高貴な美しさを持つ作品。満を持して挑んだヴァイトハースの録音も、ベートーヴェンの音楽の神髄を奏でる、メリハリと力強さを併せ持った堂々たる演奏を聴かせてくれる。またカップリングのベルクは、「ある天使の思い出に」と副題がつけられ、親交のあったアルマ・マーラの娘マノンの早すぎる死を悼み作曲されたベルク最後の曲。作品に込められた優しさと悲しみを、伸びやかなフレージングと端正な音楽作りで、押し寄せる様々な感情を浄化するような感動的な演奏。スティーヴン・スローンは、オーマンディ、フェラーラそしてベルティーニに師事。2007年から2012年までスタンヴァンゲルso.の首席指揮者として活躍していた。彼の素晴らしい手腕により、オーケストラは大きく発展し、音楽性を一気に高めていった。その結果2008年には、ヨーロッパ文化の中心を担う都市に指定される「欧州文化首都」にスタヴァンゲルが選ばれるなど、地域貢献も果たし、同じくスタヴァンゲルso.の芸術監督を務めているファビオ・ビオンディと共に尽力し、2012年秋に新しいコンサート・ホールを完成させている。スタヴァンゲルso.は、1938年創立のノルウェーの名門オーケストラ。ブリュッヘンやヘレヴェッヘといった巨匠たちの下、着実のそのキャリアを積んで、2006年からファビオ・ビオンディが芸術監督を務め、2013年からはベネズエラのエル・システマ出身のクリスティアン・バスケスが首席指揮者に就任している。
1919年〜ヴィオラ作品集
 レベッカ・クラーク(1886-):ヴィオラとピアノのためのソナタ
 ヒンデミット:ヴィオラ・ソナタ Op.11 No.4 / ブロッホ:ヴィオラとピアノのための組曲
  バーバラ・ブントロック(Va) ダニエル・ハイデ(P)
 ドイツ、ブッパタール出身のヴィオラ奏者バーバラ・ブントロック。2012年の東京国際ヴィオラコンクールで第2位を獲得。ヨーロッパ各地の音楽祭に招待され、自身が主宰するブッパタール3B音楽祭も開催。ベルリン・コンツェルトハウス管とウォルトンのヴィオラ協奏曲で共演、マリアニ・ピアノ四重奏団のメンバーとしてコンサート・ツアーに参加し、リューベック音楽大学で後進の指導にもあたっている、実力派ヴィオラ奏者。このアルバムには1919年第一次世界大戦の混乱の中で作曲された3つのヴィラオの作品を収録している。イギリスのヴィオラ奏者であり作曲家でもあったレベッカ・クラーク。彼女が活躍した20世紀前半のイギリスでは社会進出す女性がまだまだ少なく非常に厳しい時代だった。彼女自身も父親との確執や社会からの疎外に苦しみ、そんな中で作品を生み出していた。ここに収録されているヴィオラ・ソナタは、彼女の転機となった作品。アメリカの富豪の妻で現代芸術の庇護者として知られるエリザベス・クーリッジ夫人が設立した作曲コンクールに応募し、同じくここに収録されているブロッホのヴィオラ組曲と1位を分かち合い、最終的にはブロッホに優勝をもっていかれることになるが、彼女の代表作となった。イギリス民謡を思わせるような親しみのあるメロディーから大胆に展開させる印象的な作品。ブロッホのヴィオラ組曲は、彼がアメリカに渡って間もない頃に作曲された作品で、ブロッホ独特の才気が感じられる。またヒンデミットのヴィオラ・ソナタも混沌とした時代背景を感じさせる部分と、後期ロマン派の美しさとが混ざり合った強烈な作品。バーバラ・ブントロックの卓越した技術と、内面的陰影のある音楽性がただならぬ可能性を感じるヴィオラの弾きの登場。
プロコフィエフピアノ作品集
 10の小品 Op.12 /風刺 Op.17 /ピアノ・ソナタ第4番 ハ短調 Op.29「古い手帳から」/3つの小品 Op.96 /
 「シェヘラザード」による幻想曲(原曲:リムスキー=コルサコフ:交響的組曲 Op.35/エフゲニア・ルビノワ再編曲)

  エフゲニア・ルビノワ(P)
 録音:2012年7月、ヘッセン放送局、フランクフルト。1977年ウクライナのタシュケント出身のピアニスト、エフゲニア・ルビノワによる CAiv-music 第2弾。音楽一家に生まれ育ち、早くから音楽的才能を現し、2003年リーズ国際ピアノ・コンクールで第2位を獲得し、その後ヨーロッパを中心に活動し、2007年には来日も果たしている。 リムスキー=コルサコフの交響的組曲「シェヘラザード」からプロコフィエフがピアノ・ソロ用に編曲した「シェヘラザード」による幻想曲は、エフゲニア・ルビノワがさらにアレンジしカデンツァも編曲した版で収録、プロコフィエフ自身も愛奏していたという「10の小品 Op.12」、プロコフィエフのシニカルさがよく表現された「風刺(サルカズム) Op.17」、1942年にオペラと映画音楽から、プロコフィエフ自身が気に入った3曲をピアノ作品としてまとめた「3つの小品 Op.96」、そしてペテルブルク音楽院時代の習作であるピアノ・ソナタ第4番と、プロコフィエフらしい洒脱な小品が収録されている。高度な技巧と、愉悦に満ちた音楽性が見事に合致したアルバム。
フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒ〜シューベルト、ヴォルフ、シュトラウス歌曲集
 シューベルト:
  ドナウ川の上で D.553 /死と乙女 D531 /死に寄せて D518 /人間の限界 D716 /プロメテウスD674 /
  勝利 D805 /夕映え D627 /ヘリオポリスD754 /タルタルスの群れ D583 /さすらい人 D493
 ヴォルフ:ミケランジェロの詩による3つの歌曲
 R.シュトラウス:谷間 Op.51 No.1 /孤独な男 Op.51 No.2 /夜更けの小舟で Op.56 No.3

  フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒ(B) ゲロルト・フーバー(P)
 録音:2012年2月、4月。世界の主要な歌劇場の舞台に立つバス歌手フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒ初のソロ・アルバム。シューベルト、ヴォルフ、シュトラウスの歌曲を歌っている。伴奏はクリスティアン・ゲルハーヘルの伴奏などで歌曲伴奏の名手としてしられているゲロルト・フーバー。気品ある深い響きのフランツ=ヨゼフ・ゼーリヒの豊かな声で描かれるシューベルトは聴きごたえがある。そしてヴォルフ最後の歌曲となった、イタリア・ルネサンスの偉大な芸術家、ミケランジェロの詩をテーマとした「ミケランジェロの詩による3つの歌曲」。経験豊かなゼーリヒだからこその歌唱を聴かせる。フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒは1962年ドイツ生まれ。ケルン音楽大学でクラウディオ・ニコライの下で学ぶ。エッセンのアールト劇場でキャリアをスタートさせ、その後世界のオペラ・ハウスで活躍。2012年夏には「さまよえるオランダ人」ダーラント役でバイロイト音楽祭デビュー、2013年にも再びバイロイトに登場し「ワルキューレ」のフンディング役で登場し好評を博した。
パッサカリヤ
 ハイドン:ピアノ三重奏曲 ホ長調 Hob.XV: 28
 シューマン:ピアノ三重奏曲 ニ短調 Op.63
 イェルク・ヴィトマン:パッサカリア(*)
オベロン・トリオ
[ヘーニャ・ゼムラー(Vn)
 ロウフェン・シルマー(Vc)
 ヨナタン・アネル(P)]
 録音:2012年。(*)は世界初録音。2006年結成の若いピアノ三重奏団、オベロン・トリオ。ドイツを中心にヨーロッパで活躍する期待の若手。アルバン・ベルク四重奏団、アルテミス四重奏団に師事。ベンジャミン・ユスポフやイェルク・ヴィトマンら現代作曲家と協力して作品に取り組むことを積極的に行っている。C.P.E.バッハやハイドンの初期の作品などピアノ・トリオの名作はもちろん、あまり知られていないような秘曲にも注目し演奏している。彼らは楽曲を深く読み込み、フレージング、ヴィヴラートなどピリオド奏法を取り入れた、意欲的な演奏を聴かせてくれる。今回のデビュー・アルバムもハイドンからシューマン、そしてヴィトマンと幅広い時代の音楽を取り上げ、彼らの音楽的知的度が証明される内容となっている。また、この録音のあとチェロのロウフェン・シルマーが去り、ブルガリア出身のアントアネタ・エマヌイロヴァがメンバーとなった。
フックス:クラリネット五重奏曲 Op.102
ブラームス:クラリネット五重奏曲 Op.115
セバスティアン・マンツ(Cl)
デンマークSQ
 録音:2013年4月-5月、BR ミュンヘン・スタジオ。2008年ミュンヘン国際音楽コンクール・クラリネット部門で40年ぶりとなる第一位に輝いたクラリネット奏者セバスティアン・マンツと、2002年デビューし2004年にはデンマークの室内楽コンクールで優勝、瞬く間に世界の音楽界に踊りでたデンマーク四重奏団によるフックスとブラームス。抒情的なメロディーが印象的なフックスのクラリネット五重奏曲。ローベルト・フックスはウィーン音楽院でブルックナーとともにマーラー、R.シュトラウスらを育てたことでも知られている。フックスの音楽は非常に洗練された響きをもち、熟達した作曲技法で親交のあったブラームスにも称賛されている。情緒豊かで色彩感溢れるマンツのクラリネットが、作品に息吹を与え生き生きと表現されている。そしてブラームスの最高傑作の一つクラリネット五重奏曲。歌心に溢れた第1楽章の主題が作品全体に充溢感をもたらし、心に染みいる名作。当時の名手ミュールフェルトに魅せられて創作し、クラリネットの美点を存分に生かした作品だけに、マンツの至芸が際立つ。デンマーク四重奏団とのアンサンブルも、ロマンティックで美しく、しかも緻密に繰り広げられ、聴き手世界にぐっと引きこみる。新しい風を感じつつ、伝統的な響きに酔う1枚。
ベートーヴェン後期ピアノ・ソナタ集 Vol.2
 〔第27番 ホ短調 Op.90 /第28番 イ長調 Op.101 /
  第30番 ホ長調 Op.109 /第31番 変イ長調 Op.110 〕
ディーナ・ウゴルスカヤ(P)
 奇才アナトール・ウゴルスキの愛娘にして才気溢れるピアニストとして注目されているディーナ・ウゴルスカヤのベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタ集第2弾。前回は「ハンマークラヴィーア・ソナタ」と第32番(4260085-532568)を収録し知的かつ柔軟性に富んだ音楽を聴かせてくれた。今回も理性と感情が混在する後期ピアノ・ソナタ群を見事に表現している。公私ともに深いスランプに陥っていた時期に書かれた第27番、そして中期と後期との間に書かれた第28番は、孤高の世界へ向かうベートーヴェンの心境が静かに表現されている。そして最晩年の深淵なる世界が広がる第30&31番。特有の美しい旋律が繊細なタッチで天上的な音楽を描き出す。
バルトーク:弦楽四重奏曲第4番 / クルターク:弦楽四重奏曲 Op.1
リゲティ:弦楽四重奏曲第1番「夜の変容」
 アルミーダSQ [マルティン・フンダ、ヨハンナ・シュテムラー(Vn)
          テレサ・シュヴァム(Va) ペーター=フィリップ・シュテムラー(Vc)]
 録音:2013年4月、ホール3、放送ビル、ベルリン。ドイツの若手弦楽四重奏団アルミーダ・カルテットによるデビュー盤。2006年共にアルテミス・カルテットの下で学んだ4人によって結成。第61回ミュンヘン(ARD)国際音楽コンクールで優勝。2011年には第66回ジュネーヴ国際コンクールでリゲティの弦楽四重奏曲第1番「夜の変容」を演奏し、聴衆賞を獲得した、注目の若手カルテット。カルテット名は、弦楽四重奏の父ハイドンの最も成功したオペラの一つ「アルミーダ」から付けられた。プログラムはいずれもハンガリーの作曲家の作品。ハイドン、ベートーヴェンと並ぶ弦楽四重奏曲集の傑作バルトークの弦楽四重奏曲第4番は強烈なリズムが印象的な民族色豊かな作品。そして、コンクークでも評判の高かったリゲティは、4つの核となる音が様々に変容して姿を現す8つの楽章からなる作品。クルタークは、彼の尊敬していたバッハの対位法的な構成が垣間見られる曲。デビュー・アルバムとしては大変意欲的な内容で彼らの今後に期待の持てる、挑戦的な演奏を聴かせてくれる。
Born to be schorn 〜無伴奏クラリネット作品集 マティアス・ショルン、コンテンポラリーを吹く
 ヤッコ・リーヒマキ(1974-): Tango CluBb / チェルハ(1926-):無伴奏クラリネットのためのラプソディ
 イングマール・アルデレッテ・アコスタ(1969-):南風 / ゲオルク・ブラインシュミット(1973-):往路/復路
 パウル・エンゲル(1949-):ジークフリート永遠なれ / ラファエル・トラウトワイン(1984-):準備はできたかい?
 リヒャルト・デュンサー(1959-):ソリチューズ / トーマス・ガンシュ(1975-):クラリ・ナイス・ガイ
 バルドゥイン・ズルツァー(1932-):カンツォネッタ / アタナシア・ツァノウ(1971-):長い間
 レナード・エロード(1977-):無伴奏クラリネットのためのカデンツァ「かっこうの卵」

  マティアス・ショルン(Cl)
 録音:2013年5月、ウィーン王宮礼拝堂。VPO の首席クラリネット奏者マティアス・ショルン。2011年ドゥダメル指揮VPOでソロ・デビューを果たした、新時代の奏者。ドイツの新聞では、「ザビーネ・マイヤー以来の最もエキサイティングな新人」、ワシントン・ポスト紙では、「輝かしいテクニックの持ち主」と評され注目を集めている。このアルバムは、現代の作曲家たちがマティス・ショルンのために作曲した11作品を収めている。オーストリアの巨匠現代作曲家フリードリヒ・チェルハ、バルドゥイン・ズルツァー、パウル・エンゲル、リヒャルト・デュンサー、そして世界の音楽シーンで活躍する若手作曲家アタナシア・ツァノウ、イングマール・アルデレッテ・アコスタがショルンのために書き下ろした新作。そしてジャズ・トランペット奏者のトーマス・ガンシュ、フィンランドのタンゴ・ピアノ奏者のヤッコ・リーヒマキ、そしてウィーンの世界的なベーシスト、ゲオルク・ブラインシュミットらがショルンの才能に惚れ込み曲を提供。また、ウィーン放送so.のコントラバスレナード・エロード、オーストリアのマルチ・タレント、ラファエル・トラウトワインの作品も収録されている。
モーツァルト:ピアノ協奏曲集
 〔第21番 ハ長調 K467 (*) /第27番 変ロ長調 K595 〕
ラルス・フォークト(P)
パーヴォ・ヤルヴィ指揮
フランクフルト放送so.
 録音:2007年10月(無印)、2008年10月(*)、アルテ・オーパー、フランクフルト。ラルス・フォークトとパーヴォ・ヤルヴィ率いるフランクフルト放送so.とのモーツァルトのピアノ協奏曲。フォークトは歴史的背景を踏まえた新鮮な解釈と堅固なテクニックで高い評価を受けている。モーツァルトは21番の自作のカデンツァを書いておらず、ソリストの個性が出るのも聴きどころ。ここではフォークト自身によるカデンツァで演奏されている。フォークトはこのカデンツァについて「モーツァルトの傑作と比較すると、私の作曲はあきらかに劣ってしまうので、なるべく主観的にならないように注意した」と言っているが、主張しすぎない程度に細やかに感情の起伏を盛り込んだフォークトらしい自由自在なカデンツァを披露している。第27番でのフォークトは、もの悲しさを内に秘め、明るく振舞うようなモーツァルトの「泣き笑い」の真髄を見せるような、心を震わす演奏を聴かせてくれる。また第3楽章の主題は歌曲「春への憧れ」に用いており、音楽学者アインシュタインは「最後の春を自覚したモーツァルトの締念の明朗さ」と評している。フォークトは、この音楽史上の2つの傑作に込められた情熱は、直接心に訴えかけるものであり、モーツァルトの音楽と対峙することによって、自身の音楽性をより深めることが出来たと語っている。
リリ・ブーランジェ:ピアノ三重奏曲のための2つの小品
 [ワンチェン・リ(Vn) ターニャ・テツラフ(Vc) グニラ・ススマン(P)]/
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調 L 140
 [アリーナ・イブラギモワ(Vn) ラルス・フォークト(P)]/
ナディア・ブーランジェ:チェロとピアノのための3つの小品
ドビュッシー:チェロとピアノのためのスケルツォ ニ長調 L 27
 [グスタフ・リヴィニウス(Vc) アンナ・リタ・ヒタチ(P)]/
ヒンデミット:ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのためのトリオ第2番(1933)
 [クリスティアン・テツラフ(Vn) フオルカー・ヤコブセン(Va)
  バーソロミュー・ラフォレット(Vc)]
 録音:2012年6月、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。このアルバムには、今最も輝いているヴァイオリニストの一人アリーナ・イブラギモワが参加。色彩的なドビュッシーのヴァイオリン・ソナタをラルス・フォークトと共に演奏している。イブラギモワの研ぎ澄まされた感性とフォークトの美音が、ドビュッシーならではの幻想的で情緒的な音楽を見事に表現している。またその他に、夭折のフランスの天才女性作曲家リリ・ブーランジェとその姉のナディア・ブーランジェ、そしてヒンデミットの作品など、多彩なプログラムが収録されている。
クララ・シューマン:ピアノ三重奏曲 ト短調 Op.17(*)
シューベルト:弦楽四重奏曲第13番 イ短調 D804「ロザムンデ」 (#) /
        弦楽三重奏曲第1番 変ホ長調 D471 (+)
  アンティエ・ヴァイトハース(Vn;*/#) ターニャ・テツラフ(Vc;*/#)
  グニラ・ススマン(P;*) クリスティアン・テツラフ(Vn;#) レイチェル・ロバーツ(Va;#)
  ゲルガナ・ゲルゴヴァ(Vn;+) フオルカー・ヤコブセン(Va;+) アルバン・ゲルハルト(Vc;+)
 録音:2012年6月、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。お馴染のアンティエ・ヴァイトハース、テツラフ兄弟らが参加したクララ・シューマンとシューベルトの作品。叙情的な旋律をたっぷり歌い上げるクララ・シューマン「ピアノ三重奏曲 ト短調」。ヴァイオリンの美しい旋律、2本の弦とピアノが、絶妙に溶け合う演奏は冒頭から惹きこまれる。そしてシューベルトの晩年に作曲された弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」。美しいシンプルのメロディーに溢れた、ロマンティックな作品。シューベルトらしい名旋律を名手たちが、至極の演奏を披露している。
スク:ピアノ三重奏曲 ハ短調 Op.2
ドヴォルジャーク:ピアノ三重奏曲第2番 ト短調 Op.26
スメタナ:ピアノ三重奏曲 ト短調 Op.15
ファイニンガー・トリオ
[アドリアン・エーティカー(P)
 クリストフ・シュトロイリ(Vn)
 ダヴィド・リニカー(Vc)]
 19世紀チェコを代表する作曲家の比較的若い時期に書かれたピアノ三重奏曲。演奏はドイツの造形学校「バウハウス」の設立者の一人現代画家ライオネル・ファイニンガーから名前を取ったトリオ。メンバーは、BPOの現役ヴァイオリン奏者クリストフ・シュトロイリ、BPO12人のチェリストにも入っているダヴィッド・リニカー、スイス人ピアニストで室内楽の経験も豊富で、BPOのメンバーとも度々共演しているエイドリアン・オーティカー。彼らはブラームスやドヴォルジャークといったロマン派の作品を中心に演奏活動を行うと同時に、アイヴズ、ツェムリンスキー、コルンゴルドらの作品も積極的に取り上げている。今回のアルバムでは、チェコに偉大なヴァイオリニスト、ヨゼフ・スークへ捧げる意味を含めて、チェコのピアノ三重奏曲の傑作を録音した。
ヤナーチェクピアノ作品集
 草陰の小径にて〔第1集/第2集〕/エイ、ダナイ!/2つのモラヴィア舞曲/ズデンカ変奏曲/
 ピアノ・ソナタ 変ホ短調「1905年10月1日、街角で」/霧の中で、小品(1877-1927) /思い出/
 カミラ・シュテスロヴァーのためのアルバム/モラヴィアの民謡集

  キャシー・クリエ(P)
 録音:2013年2月、3月、フィルハーモニー、ルクセンブルク。ルクセンブルクのピアニスト、キャシー・クリエによるヤナーチェクのピアノ作品集。2007年にCAvi MUSICからデビューし、優れた音楽性と豊かな将来性を感じさせるピアニストとして称賛された。第2弾となる本アルバムは、現チェコ東部のモラヴィア出身のヤナーチェクのピアノ作品。故郷モラヴィアの想い出を描いた「草陰の小径にて」など、母国の民族音音楽の研究から独自の音楽語法を生み出し、民謡や踊りなどをモチーフにした、民族色豊かな作品が数多く含まれている。キャシー・クリエは、ヤナーチェクのピアノ作品を主なレパートリーとして演奏しており、抒情的で色彩豊かな響きに惹かれていると語っている。彼女の演奏は決して民族色を前面に出したものではないが、彼女の持つ煌びやかな音色で叙情性を鮮やかに表現し、まるで彩どり豊かなパレットで絵を描いているかのような演奏。
モーツァルト:ピアノ三重奏曲集〔第4番 ハ長調 K.548 /第2番 変ロ長調 K.502 /第1番 ト長調 K.496〕
 ジョルジョ・タバッコ(Fp;ポール・マクナルティ、2007年製〔アントン・ワルター、1805年モデル〕
 オリヴィア・チェントゥリオーニ(Vn;アエギディウス・クロッツ、1764年製
 マルコ・チェッカート(Vc;ジュセッペ・スガルビ、1850年製
 録音:2013年5月、サンタ・クローチェ・オラトリオ教会、アカデミア・モンティス・レガリス、モンドヴィ、イタリア。モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集(4260085-532445)を録音したフォルテピアノ奏者のタバッコ&数々の古楽アンサンブルで活躍するヴァイオリンのチェントゥリオーニ、チェロのマルコ・チェッカートによるモーツァルト。ピリオド楽器の軽妙な響きと相反して、自由闊達なチェロとヴァイオリン、そして主役のピアノが大胆に演奏する快演を披露している。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディション Vol.30 〜2012年録音集
 ・CD1 ジュアン・ペレス・フロリスタン(*)
 シューベルト:さすらい人幻想曲 ハ長調 D790, Op.15 / ドビュッシー:子供の領分
 ファリャ:ファンタジア・ベティカ / バルトーク:ピアノ・ソナタSz.80
 リスト:ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」〜イゾルデの愛の死 S447
 ヒナステラ:アルゼンチン舞曲集第3番「ガチョウの踊り」
 ・CD2 アレクセイ・ゴルラッチ(#)
 ブラームス:4つのバラード Op.10 / ドビュッシー:前奏曲第2巻〜第12曲「花火」/前奏曲第1巻 より
  〔第4曲「夕べの大気に漂う音と香り」/第7曲「西風の見たもの」/第8曲「亜麻色の髪の乙女」]/
 ショパン:練習曲 Op.10/マズルカ Op.67 No.4 /華麗なる大円舞曲
 ・CD3 チェン・チャン(#)
 J.S.バッハ:フランス風序曲 BWV831 / ベートーヴェン:6つのバガテル Op.126
 ゴドフスキー:J.シュトラウス「こうもり」の主題による交響的変容
 ドビュッシー:ベルガマスク組曲〜月の光 /レントより遅く
 ・CD4 ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ(+)
 リスト:巡礼の年「第2年イタリア」〜ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」
 メシアン:4つのリズム・エチュード〜「火の鳥第1&2」
 ドビュッシー:12の練習曲より〔半音階のために/装飾音のために〕
 ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ / ドビュッシー:前奏曲第2巻〜第8曲「水の精」
 録音:2012年5月9日、アルテ・ロンホール(*) /2012年6月9日、アンフィーザール、HCC ドルトムント(#) /2012年5月23日、カンマームジークザール、メールス(+) 、すべてライヴ。ドイツのライン、ルール川周辺の都市で行われるルール・ピアノ・フェスティヴァル。エッセン、ドルトムントのコンサートホールをメインに世界中からピアニストが集結し、ソロ・リサイタルはもちろんのこと、デュオ、コンチェルト、ジャズまであらゆるピアノ作品を演奏する。
 【ジュアン・ペレス・フロリスタン】:1993年セビリャ生まれ。あのエリザベート・レオンスカヤに見出された若きスペインのピアニスト。今回の出演がルール・ピアノ・フェスティヴァルのデビューとなる。ロマン派の作品から、彼の本領を発揮するスペインものまで、鮮やかに弾きこなしている。ルールの地元紙は、「決してテクニックだけに頼ることがない、彼の小さな手は、聴衆を感動に包みこんだ」と評している。【アレクセイ・ゴルラッチ】:1988年ウクライナ生まれ。ハノーファー音楽大学にてカール・ハインツ・ケマーリンクに師事。2006年浜松国際ピアノコンクール、第60回ARD国際音楽コンクール(ミュンヘン)ピアノ部門で優勝を果たすなど、数々のコンクール受賞歴がある、将来有望な若手ピアニスト。彼も今回の出演がルール・ピアノ・フェスティヴァルのデビューとなり、ドルトムントで行われた演奏会は完売になる程の人気を博した。ブラームス、ドビュッシー、ショパンの作品を大胆な表現と美しい音色で聴かせてくれる。【チェン・チャン】:2011年クララ・ハスキル国際コンクールで中国人として初めて優勝した逸材。デビューとなった今回のルール・ピアノ・フェスティヴァルでは、ゴドフスキーの「こうもりの主題による交響的変容」を弾き聴衆を沸かせた。【ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ】:1986年生まれ。2010/11年シーズンにはヨーロッパ・コンサート協会から“ライジング・スター "の栄誉を与えられ、日本でもラ・フォル・ジュルネ音楽祭に毎年出演し、その高い音楽性で日本のファンの心を掴んでいる。また世界の有名オーケストラ、指揮者との共演も数多く、2013年11月にはパーヴォ・ヤルヴィ率いるパリ管とリストのピアノ協奏曲第2番を演奏する予定。2012年のルール・ピアノ・フェスティヴァルのハイライトともなった彼の演奏会は、完売。ラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」では、音楽の立体的な奥行きと、繊細で美しい音色が素晴らしい演奏を聴かせる。
クラリネット五重奏曲集
 モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K581
 ブラームス:クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op.115
 バルドゥイン・ズルツァー(1932-):クラリネットと弦楽四重奏のためのインヴェンション
  ミネッティSQ [マリア・エーマー、アンナ・クノップ(Vn)
          ミラン・ミロジチク(Va) レオンハルト・ロチェク(Vc)]
  マティアス・ショルン(Cl)
 録音:2012年6月、12月。オーストリアの若手で結成されたミネッティ弦楽四重奏団とVPOの首席クラリネット奏者マティアス・ショルンによるクラリネット五重奏曲集。クラリネット作品の最高峰モーツァルトとブラームスの五重奏曲。クラリネットの柔らかな響きが絶品のモーツァルトと深い悲哀に満ちたメロディーを見事に表現したブラームスとショルンが白眉の演奏を披露。またミネッティ弦楽四重奏団も溌剌とした音楽性と美しいハーモニーで作品をまとめ上げている。カップリングのバルドゥイン・ズルツァーのクラリネット五重奏は世界初録音。ズルツァーはオーストリア出身の作曲家でオペラ、交響曲、宗教曲、ピアノ曲、室内楽と幅広い分野の作品を350以上書いている。
 ミネッティ弦楽四重奏団:2003年に結成されたオーストリアを代表する若手カルテット。ウィーン国立音楽演劇大学でヨハネス・マイスル教授およびアルバン・ベルク四重奏団のメンバーに師事。06年にはグラーツのフランツ・シューベルト国際弦楽四重奏コンクール第1位。07年ウィーンのヨゼフ・ハイドン国際室内楽コンクール第2位。ハイドン賞を受賞。同年フィレンツェのリンボッティ国際弦楽四重奏コンクール第1位。など輝かしい受賞歴を誇る。08年からウィーン学友協会、ザルツブルク・モーツァルテウムを始め、パリ、アムステルダム、ブリュッセル、ルクセンブルク、バーミンガム、アテネ、ケルンなど世界の主要都市でのコンサート活動を行っている。
パルティメンティ〜通奏低音のための即興集
 J.S.バッハ:2つの「幻想曲とフーガ」〔変ロ長調 BWV907 /ニ長調 BWV908 〕
 フランチェスコ・ドゥランテ:パルティメント 変ロ長調 / ベルナルド・パスクィーニ:パルティメント ホ短調
 ジョヴァンニ・アルベルト・リストーリ:ソナタ ト短調/2つの練習曲〔ト長調/変ホ長調〕/ソナタ ト短調
 A.スカルラッティ:2つのパルティメンティ〔ニ長調/ト長調〕
 ヨハン・マッテゾン:中級者のための小品集〔22の小品 嬰ヘ長調/17の小品 イ長調/19の小品 嬰ヘ短調〕

  クリスティアン・リーガー(Cemb)
 録音:2001年2月、センデザール、WDR、ケルン。通奏低音のための作品集。バッハと同時代のイタリアの作曲家ドゥランテ、17世紀後半のローマにおける重要な作曲家としての再評価が高まっているパスクィーニ、ボローニャ生まれで後にザクセン宮廷副楽長とて活躍したリストーリ、ヘンデルの親友で様々な逸話が残っているドイツ後期バロックの作曲家、音楽理論、外交官であったマッテゾンらの作品。クリスティアン・リーガーは、「通奏低音の奏者はソリストではない。バロック期の通奏低音奏者については未開なことが多く、他の演奏者とは異なる点が多々ある。数字のみで書かれた楽譜を解読するには演奏者自身に絶えずゼロから音楽を生み出すことを要求される。」と語っている。クリスティアン・リーガーの類い稀なる演奏技術から生まれる、音楽を十分に堪能することができる1枚。
モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調(1890年改訂版)
マティアス・ショルン(Cl)
ニコラス・ミルトン指揮
インフィアテルso.
 録音:2012年8月31日、9月1日、リート・イム・クライス、オーストリア、ライヴ。2012年3月に群馬so.を指揮し、ドラマティックな表現力に満ちた「幻想交響曲」で絶賛を浴びた注目の若手指揮者、ニコラス・ミルトンが2012年夏にオーストリアで行ったコンサートのライヴ録音が早くもリリース。クラシックの次代を担う若手音楽家たちが中心となった話題の熱演。モーツァルトは堅実に、一方のブルックナーはドラマティックに音楽を作り上げている。決して若手だからと侮るなかれ。その緻密なアンサンブル構築と活気に満ちあふれた表現力には圧倒される。協奏曲では、2007年よりウィーン国立歌劇場o.の首席クラリネット奏者として活躍している若手実力派マティアス・ショルンが白眉のクラリネット・ソロを披露!「S.マイヤー以来の逸材」との声に違わぬ演奏で魅せてくれる。演奏技術はもちろんのこと、芯を失わない弱音の響きと棘のない絶妙なアタックの美しさは絶品。若手音楽家で構成されるインフィアテルso.の力強くも瑞々しい演奏にも注目。メンバーの多くがVPOやウィーン放送so.、ベルリン・ドイツ響といった名門で活躍している実力派集団とあって、安定感抜群のアンサンブルを作り上げている。特にブルックナーでは、明暗のコントラスト鮮やかなミルトンの音作りに食らいつく熱演を見せている。
マウリシオ・カーゲル(1931-2008):ピアノ・トリオ〔 I−III 〕(1984-2007)
 トリオ・イマージュ
 [ゲルガナ・ゴルゴヴァ(Vn) トーマス・カウフマン(Vc) パウリン・ネチェフ(P)]
 録音:2011年11月、2012年4月、ベルリン。アルゼンチンのブエノスアイレス出身の作曲家カーゲルは20代でドイツに渡り、ケルンの放送局でラジオドラマなどの音楽を担当、独特の作風で人気を博した。当盤はエキセントリックなピアノ・トリオ3曲を収録。演奏は若手トリオのトリオ・イマージュ。幼馴染であったヴァイオリンのゲルガナ・ゴルゴヴァとピアノのパウリン・ネチェフの2人に、2008年からチェロのトーマス・カウフマンが加わりヨーロッパを中心に活動している。カーゲルの作品を録音するにあたって彼らはこのように述べている。「このようなスリリングな音楽を演奏、録音することは私たちにとって音楽的にも技術的にも大きな挑戦だった。しかし、この録音を終え私たちは音楽をより深く理解することができたし、演奏者と聴衆との密接な関係も勉強することができた」。
No.1〜ロシアのピアノ三重奏曲集
 アレンスキー:ピアノ三重奏曲第1番 ニ短調 Op.32
 ラフマニノフ:ピアノ三重奏曲第1番 ト短調「悲しみの三重奏曲」
 ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第1番 ハ短調 Op.8
 カプースチン:ピアノ三重奏曲 Op.126
  ベートーヴェン・トリオ・ボン
  [濱倫子(P) ミハイル・オヴルツキ(Vn) グレゴリー・アルミャン(Vc)]
 録音:2012年5月。ドイツで活躍する日本人のピアニスト濱倫子、モスクワ出身でベートーヴェンo.・ボンの首席を務めるヴァイオリンのミハイル・オヴルツキとチェロのグレゴリー・アルミャンによるベートーヴェン・トリオ・ボン。2005年の結成以来高い評価を得ており、ヨーロッパ各地で行われているコンサートは成功を収めている。このアルバムにはロシア系の作曲家たちによるピアノ三重奏曲を録音している。アレンスキーのピアノ三重奏曲第1番は、濃厚なロマンティシズムが漂う、隠れた名曲。ラフマニノフ初期の作品「悲しみの三重奏」曲集、ここに収められているのは音楽院時代の習作でラフマニノフの死後出版された第1番。ショスタコーヴィチ17歳の時、病気療養中に作曲し、当時恋をしていたタチヤーナ・グリヴェンコに献呈されたピアノ三重奏曲第1番。単一楽章の作品で美しい中間部、感動的なフィナーレなど若きショスタコーヴィチの情熱が感じられる。ジャズの要素を取り入れた独創的な作風のカプースチン。技巧的なピアノ曲を多数作曲しているが、このピアノ三重奏曲も独特な響きとリズムでカプースチンの魅力に引き込まれる。自由で華やかな音楽性の濱、抜群のテクニックで聴かせるオヴルツキ、優れた構築力で作品をまとめ上げるアルミャン。ベートーヴェン・トリオ・ボンはお互いの感性が呼応しあい、それぞれの魅力を上手く引き出している。
 ベートーヴェン・トリオ・ボン:ドイツの名門オーケストラ、ベートーヴェンo.・ボン第1コンサートマスターのミハイル・オヴルツキ、同楽団首席チェリストのグレゴリー・アルミャン、A.ウゴルスキの薫陶を受けたドイツ在住のピアニスト、濱倫子により2005年に結成。それぞれソロ活動も活発に行う傍ら、トリオとしては名前の由来であるベートーヴェン作品の他にも、この編成のレパートリーを積極的に取り上げ、ヨーロッパ内外で活動を続けている。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル 2012年ライヴ集
CD1:フランスの作品
 ラヴェル:水の戯れ/ソナチネ[フアン・ペレス・フロリスタン(P)/2012年5月9日]
 ラヴェル:ラ・ヴァルス[ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ(P)/2012年5月23日]/
      鏡[チェン・チャン(P)/2012年6月9日]
 ドビュッシー:ベルガマスク組曲/前奏曲集第2巻〜花火[ベルトラン・シャマユ(P)/2012年6月6日]
CD2:アメリカの作品
 ガーシュウィン:3つの前奏曲 / ワイルド:7つのヴィルトゥオーソ・エチュード
  [チャン・ヤ=フェイ(P)/2012年5月7日]
 ガーシュウィン:ソング・ブックより 〔フー・ケアズ?/ノーバディ・バッドユー/ドゥーイット・アゲイン/
                    ス・ワンダフル/スウィート・アンド・ラウダウン/スワニー〕
  [エヴァ・フォーゲル(Ms) ロバート・レヴィン(P)/2012年5月7日]/
         パリのアメリカ人/創作主題による変奏曲「アイ・ガット・リズム」/私の彼氏
  (いずれもガーシュウィン・ピアノ・カルテットによる4台のピアノのための編曲版)
  [ガーシュウィン・ピアノ・カルテット/2012年5月16日]
CD3:現代作品
 ケージ:ソナタとインタリュード より〔第2のソナタ/ピアノのための音楽〕 / グラス:モダーン・ラヴ・ワルツ
  [シュテフェン・シュライエルマッハー(P)/2012年5月29日]
 Y.ヘラー:ドッペルシュピール より〔ソロ・プレイ/デュオ・プレイ〕
  [タマラ・ステファノヴィッチ、ピエール・ロラン・エマール(P)/2012年6月12日]/
       フィギュラ・リトミカ[ファビアン・ミュラー、タマラ・ステファノヴィッチ(P)]
       ドッペルシュピール より〔モニュメント/パターンズ/オスティナート〕
  [ロレンツォ・サウレス、タマラ・ステファノヴィッチ(P)/2012年7月1日、WDRフンクハウス、ケルン]
 ドイツのルール地方で行われるルール・ピアノ・フェスティヴァルのライヴ・レコーディング・シリーズ第29弾。2012年のテーマは、フランス&アメリカ。特に注目されるのは、原曲に加えて多くの編曲作品を含んだガーシュウィンのプログラム内容。「7つのヴィルトゥオーソ・エチュード」は、2010年に亡くなった往年の名手アール・ワイルドが、ガーシュウィンの歌曲をピアノ独奏用に編曲した物。「ライザ」、「アイ・ガット・リズム」、「私の彼氏」をはじめとする7つの名作がアレンジされている。ガーシュウィンの即興的な魅力をより強く感じられる編曲となっており、鍵盤を縦横無尽に駆け回る超絶技巧の連続は圧巻。また、音楽祭に引っ張りだこのガーシュウィン・ピアノ・カルテットが自ら編曲したピアニスト4人による「パリのアメリカ人」、「アイ・ガット・リズム」も聴きどころ。響きの厚みはオーケストラ・サウンドに敵わぬものの、軽妙洒脱なピアノのアンサンブルが魅力的。ちなみに、「パリのアメリカ人」で印象的な車のクラクションは原曲通りで、その異彩感もとびきり。毎年、現代作品をプログラムに入れていることでも知られるルール・ピアノ・フェスティヴァル。2012年はジョン・ケージの生誕100年と、グラスの生誕75周年ということで両者の作品が取り上げられている。ケージ作品への造詣深い名手シュテフェン・シュライエルマッハーが演奏しているところにも注目される。ヘラー(*1944)の「ドッペルシュピール」は、このフェスティヴァルのための委嘱作品。非常に高度な演奏技術を求めるヘラーの作風からすると驚くほどシンプルな作品で、音楽祭では3曲が発表された。本アルバムではフェスティヴァル後に追加された3曲を後日録音し、“ボーナス・トラック " として収録!音楽祭のときには聴けなかった、全6曲からなる「ドッペルシュピール」を聴くことが出来る。ライヴでは現代音楽界に活躍する往年の名手ピエール・ロラン・エマールと、彼の愛弟子の若手実力派タマラ・ステファノヴィッチが共演。フランス・プログラムの方では、ジャン=フレデリック・ヌーブルジェやベルトラン・シャマユといったラ・フォル・ジュルネでもお馴染みの名手たちも登場、音楽祭ならではの豪華共演も注目。
コダーイ
 チェロとピアノのためのソナティナ Op.4 (CD)
 無伴奏チェロ・ソナタ Op.864 '53 ' '
 ヴァイオリンとチェロのためのデュオ Op.7 (*)
ユリアン・ステッケル(Vc)
アンティエ・
 ヴァイトハース(Vn;*)
パウル・リヴィニウス(P)
 録音:2017年9月(無印)、2018年1月(*)。2010年ミュンヘン国際音楽コンクール優勝の経歴を持つユリアン・ステッケルは1982年生まれのドイツのチェロ奏者。室内楽・協奏曲と若くして既に多くの録音をリリースしている彼が、ついに難曲の無伴奏をはじめとしたコダーイ作品に挑む。無伴奏での強烈にみなぎる力感と息を呑む技巧の応酬は聴いてほれぼれとしてしまう。また他の作品での共演者との息の合った表現も聴きもので、心地よい緊張感に貫かれている。
イン・リズム〜クラリネット作品集
 ガーシュウィン/ジェイムズ・コーン(1928-)編曲:3つの前奏曲(クラリネットとピアノのための編曲版)
 アレック・テンプルトン:クラリネットとピアノのためのポケット・サイズ・ソナタ第1番
 コープランド/作曲者編曲:クラリネット協奏曲(クラリネットとピアノのための編曲版)
 ライヒ:クラリネットとテープのための「ニューヨーク・カウンターポイント」
 レナード・バーンスタイン:クラリネットとピアノのためのソナタ
 ヴィラ=ロボス:ショーロ第5番「ブラジルの魂」(ピアノ独奏のための)
 ピアソラ:クラリネットとピアノのための「レビラド」
 ミヨー:クラリネットとピアノのための「スカラムーシュ」 Op.165d

  デュオ・リウル[セバスティアン・マンツ(Cl) マルティン・クレット(P)]
 録音:2012年7月-8月、ドイツ放送カンマームジーク・ザール、ケルン。アメリカ大陸の作曲家たちによるクラシックとジャズを融合させた作品集。セバスティアン・マンツは2008年にミュンヘン国際音楽コンクール・クラリネット部門で一位を獲得、同年に「デュオ・リウル」としてドイツ音楽コンクール「クラリネットとピアノ」部門で優勝、世界が注目する若手実力派。マンツはビッグバンドで演奏した経験からジャズの響きを身につけており、これらの作品を自由自在に演奏してみせる。アルバムの構想は、ドイツ縦断列車の旅の途中、ジャズ・クラリネット奏者ベニー・グッドマンのために作曲された「コープランドのクラリネット協奏曲のピアノ版を演奏したい」とマンツが思い付いた事がきっかけだった。2分半の長大なカデンツァで披露されるマンツの饒舌なクラリネットは必聴。ガーシュウィンの3つの前奏曲はピアノ原曲だが、ここではアメリカの作曲家ジェイムズ・コーンによるクラリネット編曲版で収録。テンプルトンはイギリス出身で26歳の時にアメリカに渡り活躍した盲目のピアニスト兼作曲家。彼の代表作ポケット・サイズ・ソナタは、ジャズ風クラシックのお洒落な作品で、アルバムタイトルにもなっている第3楽章の「イン・リズム」は、メロディーラインが美しく、マンツの情感豊かな音色がうっとりと聴かせる。ミニマル・ミュージックの旗手ライヒのニューヨーク・カウンターポイントは10本のクラリネットとソロ・クラリネットのための作品で、ここでは事前に録音されたテープを使って収録している。カーティス音楽院を卒業したばかりの若き日の巨匠バーンスタンによるクラリネット・ソナタは、シンコペーションを多用したジャズの影響を受けている。マンツとクレットの生き生きとした演奏が、陽気なラテン音楽の魅力を引き出している。
ブラームス:チェロ・ソナタ集
 〔第2番 ヘ長調 Op.99 /第1番 ホ短調 Op.38 〕
ターニャ・テツラフ(Vc;*)
グニッラ・シュッスマン(P)
 録音:2011年5月。使用楽器:グァダニーニ、1776年製作(*)。室内楽の分野でも活躍著しいターニャ・テツラフ(クリスティアン・テツラフの妹)と、2000年以降デュオを組んでいるノルウェー出身のシュッスマンによるブラームスのチェロ・ソナタ。約5年前にはラフマニノフ、グリーグらのチェロ・ソナタでも素晴しい演奏を聴かせてくれたペア。冒頭から二人の並々ならぬ気迫と集中に、一気にブラームスの世界へと引き込まれる。また、第1番第2楽章でひかるセンス、終楽章のフーガでの絡み合いの美しさなど、二人のアンサンブルの妙を心行くまでたのしみたい1枚。
シューマン:謝肉祭 Op.9 /6つの間奏曲 Op.4
リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調
ソフィー・パチーニ(P)
 かのアルゲリッチが「まさに若い頃の自分を思い出すようだ」と絶賛したことで、世界から一躍注目を集めたドイツの麗しき新星ソフィー・パチーニ。ピアノ協奏曲はこれまでにもいくつかリリースしてきたが、独奏曲はこのCDが記念すべき1stアルバム。リストのピアノ・ソナタ ロ短調は2012年3月の来日リサイタルでも演奏され、絶賛を浴びたばかり。やや大柄な体から繰り出される力強い表現力と、構成力に優れた理知的な演奏もパチーニの大きな魅力。その演奏スタイルはむしろ落ち着きのある正統派寄りといえるかもしれない。とはいえ未だ21歳(2012年現在)、今はまだ大粒の原石ともいえる彼女が、これからどのように磨き抜かれていくのか…今後の活動からも目が離せない、注目必至のアーティスト。ソフィー・パチーニは1991年、ミュンヘン生まれのピアニスト。わずか10歳でザルツブルクのモーツァルテウム音楽院に入学を認められ、ケマーリンクに師事した早熟の若手実力派。2000年よりソリストとして活動を開始し、2004年には最も才ある音楽家に贈られるレオポルト・モーツァルト賞を獲得した。その後も数々の賞に輝いたことに加え、2010年にマルタ・アルゲリッチから称賛されたことで更なる注目を集める。2011年にはルガーノでのアルゲリッチ音楽祭にも出演。2012年3月に武蔵野でソロ・リサイタルを開催。同年4月には東京po.の定期公演でシューマンのピアノ協奏曲を演奏し、日本においても高い注目を浴びる屈指の若手実力派。
アドルフ・ブッシュ(1892-1952):クラリネットと弦楽器のための室内楽曲集
 クラリネットと弦楽四重奏のためのセレナード ト長調 Op.14 /7つのバガテルOp.53a /
 ゲルマン舞曲集 ヘ長調 Op.26c /二重奏曲 変ロ長調 Op.26b /変奏曲 ヘ長調 Op.53c
  ヴォルフガング・マイヤー(Cl) アイスラーSQ
 録音:2012年3月、ドイツ。モーツァルト、ウェーバーらのクラリネット五重奏曲集(4260085-532162)に続く、W.マイヤーとアイスラー四重奏団によるアルバムは往年の巨匠ヴァイオリニスト、アドルフ・ブッシュが作曲した二重奏から五重奏まで多彩な室内楽曲集。ケルン音楽大学に入学後、クナッパーツブッシュも師事した名匠F.シュタインバッハに作曲を学んだブッシュは、早くも10代から幅広い作曲活動を始めている。本アルバムでは、ベルリンから亡命する前に作曲したOp.14、代表的な曲集と言えるOp.26c、1936年のクリスマスに妻フリエダに献呈された三重奏曲集で、1942年に彼女の誕生日に即して発表したOp.53a、その主題に基づくOp.53c等を収録。いずれも20世紀の作品ながら、作風はロマン派からの流れ、さらにシューベルトやブラームスからの影響を強く感じることが出来る。
フォークト〜ショパンピアノ作品集
 バラード第1番 ト短調 Op.23 /夜想曲〔第1番 変ロ短調 Op.9 No.1 /第2番 変ホ長調 Op.9 No.2 〕/
 スケルツォ第1番 ロ短調 Op.20 /夜想曲〔第7番 嬰ハ短調 Op.27 No.1 /第8番 変ニ長調 Op.27 No.2 〕/
 ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35 /夜想曲〔ハ短調 KK IVb8 Op.posth /嬰ハ短調 KK IVb16 Op.posth 遺作〕

 ラルス・フォークト(P)
 録音:2013年3月、ケルン。 『私はバッハ同様にショパンの作品を公の場で長い間演奏していませんでした。しかしノクターン(遺作)は、これまでにアンコールで度々演奏してきましたし、私はいくぶん距離を置いてはいたもののショパンの音楽を愛していました。誰かが、私の人生を総括する作品は何かと尋ねたら、私はこの作品を選ぶでしょう。シンプルな旋律線に、喜び、憂鬱、情熱といった深い要素があり、それに心を打たれます。ショパンは独力でピアノの技術に革命をもたらし、鍵盤楽器の表現力を大きく広げました。私には、ショパンの繊細で美しいメロディーは、他のどの作曲家よりモーツァルトを想像させます。モーツァルトの音楽は“泣き笑い”と評されることがありますが、ショパンにも同じような要素があると思います。こういった事に改めて気づき、私はショパンを録音してみたくなったのです。』(ラルス・フォークト)
 自ら主宰する室内楽音楽祭「シュパヌンゲン音楽祭」も2014年で17年目を迎え、近年ヨーロッパでの活躍も目覚しく、現在のドイツ音楽界を牽引する音楽家の一人ラルス・フォークト。彼はモーツァルト、ベートーヴェン、シューマン、ブラームス、シューベルトなどを主なレパートリーとしていたが、今回これまで彼の核となるレパートリーではなかったショパンに挑戦した。陰影に富んだタッチはショパン独特の詩的で繊細なピアニズムと合致し、作品の叙情性をあますところなく表現している。
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第2番 イ短調 Op.13 / ベルク:抒情組曲
 テツラフSQ [クリスティアン・テツラフ(Vn1) エリーザベト・クッフェラート(Vn2)
         ターニャ・テツラフ(Vc) ハンナ・ヴァインマイスター(Va)]
 録音:2013年3月、ゼンデザール、ブレーメン。世界的ヴァイオリン奏者クリスティアン・テツラフ率いるテツラフ・カルテットは1994年に結成され2014年で20周年。元バンベルクso. のコンミス、クッフェラート。チューリヒ歌劇場o.の首席ヴァインマイスター。ドイツ・カンマーフィルのチェリスト、ターニャ・テツラフと、それぞれ単独で多忙な演奏家生活を送っており、揃って演奏する機会は限られているが、その質の高い音楽で数々の音楽祭からの出演依頼がたえない。このアルバムは、CAviレーベルからは2作目。若きメンデルスゾーンの傑作弦楽四重奏曲第2番。天才メンデルスゾーンの確かな構築力と甘濃厚なロマンティシズムが表現された秀演。ベルクの全6楽章からなる十二音技法を用いた大曲、抒情組曲。愛人であったハンナ・フックス=ロベッティン夫人との関係がテーマ。テツラフ・カルテットの4人は情熱と官能を見事に描き出している。
ドヴォルジャーク
 ピアノ三重奏曲第4番 Op.90「ドゥムキー」(*) /弦楽四重奏のための「糸杉」より(5曲)(#)
  〔あなたに寄せる私の愛は/死は多くの人々の胸に/やさしい瞳が注がれるとき/
   自然はまどろみと夢の中に/お前はなぜ私の歌が激しいのか尋ねる〕
ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第1番 ハ短調 Op.8 (+)

  ラルス・フォークト(P;*) クリスティアン・テツラフ(Vn;*)
  ターニャ・テツラフ(Vc;*) アリッサ・マルグリス(Vn;#/+) ビョル・カン
   (Vn;#) タチアナ・マスレンコ(Va;#) グスタフ・リヴィニウス(Vc;#)
  アーロン・ピルサン(P;+) マリー=エリザベート・へッカー(Vc;+)
 録音:2013年6月5日(+)、2013年6月7日(*/#)、RWE 水力発電プラント、ハイムバッハ、ドイツ、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。ピアニストのラルス・フォークトが主催するシュパヌンゲン音楽祭も2014年で17周年。今回発売されるのは、2013年の音楽祭ライヴから。フォークト、テツラフ兄妹の手に汗握る迫真の「ドゥムキー」、他の2曲では若手ヴァイオリン奏者アリッサ・マルグリスが敏な演奏を聴かせ、ザルツブルク出身の韓国人奏者ビョル・カン、ロストロポーヴィチ・コンクールの優勝者マリー=エリザベート・へッカー、2014/2015シーズンのライジングスターとしても注目されているピアニスト、アーロン・ピルサンなどの新時代の星と、マスレンコ、リヴィニスといった中堅の実力派奏者たちが織りなす、絶妙なアンサンブルを楽しめる。 メロディーメーカーとして知られるドヴォルジャークの才能が最も表現された作品の一つ、ピアノ三重奏曲第4番「ドゥムキー」。ドヴォルジャークと親しく、あのチェロ協奏曲を献呈したチェリスト、ハヌシュ・ヴィハーンに刺激を受けて作曲され、初演の際にもドヴォルジャークと共にヴィハーンが演奏している。冒頭のチェロとピアノではじまる抒情的な旋律は、名手ヴィハーンあってのこの作品一番の聴きどころといっても良い、美しくメランコリックなメロディー。同じくドヴォルジャークの歌曲集のなかの12曲を弦楽四重奏用に編曲した弦楽四重奏のための「糸杉」から、そしてクリミアで病気療中に作曲され、当時恋をしていたタチヤーナ・グリヴェンコに捧げられたショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲第1番。単一楽章でアンダンテとアレグロが交互に演奏され、若きショスタコーヴィチの情熱が感じられるロマンティックな作品。
ハイドン:弦楽四重奏曲第63番 ニ長調
 「ひばり」Op.64 No.5/ Hob III; 63
ブラームス:弦楽四重奏曲第2番 イ短調 Op.51 No.2
デンマークSQ
 録音:2012年3月、スタジオ2、ミュンヘン。「デンマーク青年弦楽四重奏団」の名でも知られるデンマーク弦楽四重奏団は、2002年夏のコペンハーゲン音楽祭にてデビューしたアンサンブル団体。ベートーヴェンからペルトまでいたる幅広いレパートリーを持つ当団だが、意外にも古典派とロマン派の作品を収録するのは本アルバムが初めて。ハイドンでは軽やかかつ溌剌とした演奏で爽やかに聴かせる一方、後半のブラームスでは劇的かつ鮮烈な演奏で圧倒してくれる。ハイドンの「ひばり」では、1stヴァイオリンを務めるオーランドの瑞々しいソロが聴き所。「ひばり」という愛称の由来ともなった第1楽章冒頭の有名な旋律はもちろんのこと、第4楽章で見せる怒涛の掛け合いも見事。ブラームスの弦楽四重奏曲第2番は、対位法的に書かれた堅固なアンサンブルと、シューベルトを思わせる流麗な旋律との兼ね合いが素晴らしい名曲。デンマーク弦楽四重奏団の演奏は厭なべたつきを控えた音運びで、アクセントの表現も鮮やか。エネルギッシュな勢いにあふれる瑞々しい演奏スタイルはそのままに、より円熟したアンサンブルで魅せてくれる。結成当時はデンマークの若手演奏家たちによる新進気鋭の団体として注目を集めていたデンマーク弦楽四重奏団も、今や室内楽界の中堅を担う実力派。今後のさらなる飛躍に期待したい、注目のアンサンブル団体。
ブラームス
 クラリネット・ソナタ第2番 変ホ長調 Op.120 No.2
ライネッケ:序奏とアレグロ・アパッショナートOp.256
ドレーゼケ:クラリネット・ソナタ 変ロ長調 Op.38
キリアン・へロルド(Cl)
アミール・カッツ(P)
 録音:2011年9月、ゼンデザール、ブレーメン。バーデンバーデン&フライブルクSWRso.の首席クラリネット奏者を務めるドイツの中堅、キリアン・へロルドによるクラリネット・ソナタ集。カルル・ライネッケ(1824-1910)とフェリクス・ドレーゼケ(1835-1913)のクラリネット・ソナタは、いずれもブラームスが最晩年に作曲した「クラリネット・ソナタ第2番」と時期を同じくして作曲された物。2人とも現代では中々収録される機会に恵まれぬ作曲家たち。いずれもブラームスの作品を思わせるロマンティックな旋律が美しく、クラリネットの憂愁な響きとピアノの澄んだ音色とのハーモニーは絶品。へロルドの演奏は、明るい曲調の中にもどこか翳りを含むような深い表現が素晴らしく、曲調との相性も抜群。高音域においてもなおふくよかな音色に魅せられる。ピアノ伴奏を担当するのはドイツの中堅、アミール・カッツ。へロルドの明瞭なタンギングに負けず劣らずの溌剌とした演奏で、堅実ながらも流麗なアンサンブルを組み上げている。クラリネット・ファン必携。キリアン・へロルドは、2004年に23歳という若さでドイツ・カンマー・フィルハーモニー・ブレーメンの首席クラリネットに大抜擢された実力派。2007年にはドイツ・カンマー・フィルハーモニー・ブレーメン管楽ゾリステンのメンバーとして来日し、注目を集めた。2011年からはバーデンバーデン&フライブルクSWRso.の首席クラリネット奏者として新たな活躍を見せているヘロルド。今後の活躍にも期待される。
ワーグナー:M.W.夫人のアルバムのためのソナタ 変イ長調/イゾルデの愛の死(リスト編曲)
リスト:ロッシーニの主題による7つの華麗な変奏曲/ウィーンの夜会(シューベルトによるワルツ・カプリス)/
      「音楽の夜会」〜水夫/リヒャルト・ワーグナー―ヴェネツィア/悲しみのゴンドラ(初版)/
      巡礼の年第2年「イタリア」〜ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」
ロッシーニ:「老いのいたずら」より〔わが妻への甘え/憂鬱なワルツ〕

  ジルケ・アーヴェンハウス(P)
 録音:2011年、スタジオ2、ミュンヘン。近年、アルカント・カルテットの1stヴァイオリニスト、A.ヴァイトハースとの共演でも注目を集めているジルケ・アーヴェンハウス待望のソロ盤。T.ツィンマーマン、I.ファウスト、J.ヴィドマンほか多くの世界的名手から信頼厚く、伴奏者としても世界的に活躍している彼女だが、本アルバムではソリスト、アーヴェンハウスとして独自の表現世界を存分に披露してくれている。ロッシーニの声楽曲集を改編した「音楽の夜会」や、シューベルトのワルツの編曲集である「ウィーンの夜会」といったリスト編曲作品も多く収録されている。ワーグナーのピアノ作品の中ではやや収録される機会の少ない、「M.W.夫人のアルバムのためのソナタ」が入っていることにも注目されようだ。M.W.夫人とは、ワーグナーのパトロンであったマティルダ・ヴェーゼンドンク夫人のこと。彼女との激しい恋愛関係から生まれたといわれる『トリスタンとイゾルデ』の濃厚なロマンティシズムを思わせるかのごとき甘美な旋律にあふれた名曲。過度な粘り気を控えたアーヴェンハウスの演奏は、曲全体の大きな流れを損なわない流麗な音の運びが耳に心地よく、作品そのものが持つロマンティックな響きがストレートに感じられるよう。力強くも軽やかなタッチで、流麗に魅せてくれる。
シュポア:大九重奏曲 ヘ長調 Op.31(*) / ヤナーチェク:六重奏曲「青春」(+)
イベール:フルート、ヴィオラ、ハープのための2つの間奏曲(#)
J.ヴィトマン(1973-):ヴィオラとチェロのための11の二重奏曲(**)
 アンドレア・リーバークネヒト(Fl;*, #, +/ピッコロ;**) フランソワ・ルルー(Ob;*/+)
 セバスティアン・マンツ(Cl;*/B-Cl;+) シャーリー・ブリル(Cl;+)
 マリー=ルイーズ・ノイネッカー(Hr;*/+) ダグ・イェンセン(Fg;*/+)
 リザ・バティアシュヴィリ(Vn;*) クリスティアン・テツラフ(Vn;**)
 レイチェル・ロバーツ(Va;*) フローリアン・ドンダラー(Va;#)
 ジュリアン・アルプ(Vc;*) マリー=エリザベート・ヘッカー(Vc;+/**)
 アロイス・ポッシュ(Cb;*) ヤナ・ボウシュコヴァー(Hp;#)
 録音:2011年6月、ハイムバッハ、ドイツ、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。シュパヌンゲン音楽祭ライヴ2011 Vol.3。18世紀から21世紀まで幅広い時代の作品を収録した多彩なプログラムだけでなく、音楽祭ならではの豪華演奏陣による見事なアンサンブルも大きな魅力。古典派の響きを残しつつもロマンティックな旋律が美しいシュポアの大九重奏曲、ハープとフルートの煌びやかな響きとヴィオラの艶やかなハーモニーが絶品なイベールの間奏曲、技巧的な疾走する旋律と抒情的でゆるやかな旋律の対比が愉しいヤナーチェクの「青春」、曲調は違えど、いずれの作品も小編成アンサンブルならではのソリスト達の妙技の掛け合いを堪能出来る。そして、今注目のヴィトマンの「ヴィオラとチェロのための24の二重奏曲」第2巻。ドイツが誇る名手テツラフと期待の若手実力派ヘッカーの二人が織りなす超絶技巧炸裂の掛け合いは圧巻。
スメタナ:ピアノ三重奏曲 ト短調 Op.15 (*)
 [アンティエ・ヴァイトハース(Vn) マリー=エリザベート・ヘッカー(Vc) ヒュー・ワトキンス(P)]
ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調(#)
 [フローリアン・ドンダラー(Vn) ターニャ・テツラフ(Vc) ラルス・フォークト(P)]
ワトキンス(1976-):クラリネット、ヴィオラ、ピアノのためのトリオ(2011) (+)
 [セバスティアン・マンツ(Cl) フローリアン・ドンダラー(Vn) ヒュー・ワトキンス(P)]
 録音:2011年6月10日(+)、11日(*)、12日(#)、ハイムバッハ、ドイツ、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。(+)は世界初録音。シュパヌンゲン音楽祭ライヴ2011 Vol.2。本アルバムで注目なのは、この音楽祭の委嘱&初演作品(+)。20世紀半ばまで活躍したウェールズの詩人ディラン・トマスの詩にあてた作品で、細かな音符が複雑に絡み合って生み出される繊細かつ抒情的な音のうねりが美しい。ワトキンス自身がピアノを担当している他、難関ミュンヘン国際音楽コンクールで40年ぶりの第1位に輝いた注目の若手セバスティアン・マンツがクラリネットを演奏している。また、本アルバムにはスメタナとラヴェルのピアノ三重奏曲も収録。スメタナのピアノ三重奏曲では、ヴァイトハースが奏でる慟哭のような冒頭のヴァイオリン・ソロに冒頭からぐっと惹きこまれる。2012年6月に来日を控えるヘッカーのチェロも必聴。一方、ラヴェルでは繊細かつ流麗なアンサンブルにうっとり。音楽祭の主宰者でもあるフォークトをはじめ、名手たちによる洗練された掛け合いに聴き入る。
ハイドン:ピアノ三重奏曲第34番 変ロ長調 Hob.XV; 20 (*)
 [ヴェロニカ・エーベルレ(Vn) マリー=エリザベート・ヘッカー(Vc) マーティン・ヘルムヘン(P)]
ロッシーニ:チェロとコントラバスのための二重奏曲(#)
 [ターニャ・テツラフ(Vc) アロイス・ポッシュ(Cb)]
シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 イ短調「死と乙女」(+)
 [アンティエ・ヴァイトハース(Vn) クリスティアン・テツラフ(Vn)
  レイチェル・ロバーツ(Va) ターニャ・テツラフ(Vc)]
 録音:2011年6月6日(*)、7日(+)、10日(#)、ハイムバッハ、ドイツ、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。ドイツのハイムバッハで毎夏行われ、毎年出演者の豪華さも話題のシュパヌンゲン音楽祭のライヴ録音をリリースする好評シリーズ。2011年の音楽祭はピアノ・アンサンブルに焦点を当て、ハイドンからヤナーチェクにいたる多彩な室内楽作品を中心とするプログラム。本アルバムもドイツが誇る世界的名手らの豪華共演が大きな魅力。ハイドンのピアノ三重奏曲を演奏するエーベルレとヘルムヘンはチェリストの石坂団十郎と共に2012年4月の来日公演で同曲を披露し、好評を博したばかり。今回チェロを担当しているマリー=エリザベート・ヘッカーは、2005年のロストロポーヴィチ・コンクールで史上初となる第1位と特別賞2つの同時受賞で話題となった注目の若手。2012年6月には初の来日ツアーも予定しており、注目必至。2010年音楽祭ライヴ録音(4260085-532254)に引き続き、テツラフ兄弟、ヴァイトハ-ス、ロバーツは今回も卓越したアンサンブルで魅せてくれる。激しくも気品さを失わない圧巻の「死と乙女」は必聴。
ベートーヴェン/M.G.フィッシャー編曲:
 交響曲第6番「田園」 ヘ長調 Op.68(弦楽六重奏版)
A.ヴァレンテ(1959-):シックス・トゥー・ミッドナイト(1999/2000)
  ケルン六重奏団
 録音:2003年、ドイチュランドフンク室内楽ホール、ケルン。ケルン六重奏団が、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」の弦楽六重奏版を録音。他の弦楽編成版と同じく、M.G.フィッシャーの弦楽六重奏版もまた演奏・収録の機会に恵まれないだけに、ファン必聴。当六重奏版では、1stヴァイオリンがフルートやオーボエ、2ndヴァイオリンがクラリネット、ヴィオラとチェロがホルンやファゴットのパートを担当し、小さなオーケストラ・ハーモニーを作り上げている。原曲に比べて規模が小さくなってしまうのは否めないが、原曲以上に各パートの旋律の魅力や、掛け合いの魅力がクリアに聞こえてくるのも確か。ヴィオラとチェロが2人ずついるため、他の四重奏版や五重奏版などに比べて、中低音域の響きが非常にしっかりとしているのも印象的!ケルン六重奏団の表現力も素晴らしく、多彩な音色と卓越したアンサンブルでオーケストラに劣らぬ厚いハーモニーを聴かせてくれる。弦楽六重奏のはずが、どこからかオーボエやホルンの音色が聞こえてくるような気もして、不思議な聴き心地に満たされようだ。原曲と聴き比べるもよし、オーケストラ・スコア片手に楽しむもよし。この機会にぜひ聴いて頂きたい注目盤。また、本アルバムにはブラジルの現代音楽家ヴァレンテの作品も同時収録。シックス・トゥー・ミッドナイトは6つの短い小曲からなる作品で、断続的な音の連続と、それらを繋ぐように響き続けるフラジオレットやグリッサンドのフラットな音の対比が印象的。弦楽器の多彩な響きを堪能できるとともに、幅広いレパートリーを持つケルン四重奏団の実力にも唸るアルバムと言えるだろう。
ECOUTEZ!
 ドビュッシー:
  映像第1集/前奏曲集第2巻より〔第4曲「妖精は良い踊り子」/第10曲「カノープ」/第12曲「花火」〕/
  前奏曲集第1巻より〔第1曲「デルフィの舞姫」/第2曲「帆」/第3曲「野を渡る風」/第7曲「西風の見たもの」〕
 武満徹:ピアノ・ディスタンス/遮られない休息
 ケージ:「ソナタとインターリュード」より ソナタ Nos.8, 2, 6, 7, 5, インターリュード No.3

 シェイラ・アーノルド(P/プリペアドP)
 録音:2008年10月、2017年9月、2018年1月。ドビュッシー、ケージ、武満のピアノ作品で構成したアルバム。自由な和声を用い新しい音楽の時代を築いたドビュッシーと、音楽そのものの在り方に一石を投じたケージ。武満はこの2人の作曲家それぞれから影響を受けた作曲家でもあり、関連性のあるプログラミングと言える。シェイラ・アーノルドは南インド生まれ、ドイツ育ちのピアニスト。この3人の作曲家を組み合わせただけあって、カラっとした硬質の響きで統一され、過度にロマンに走ることもなく、とは言えほんのりと歌を感じる好演となっている。プリペアド・ピアノを使ったケージ作品が爽やかでポップ。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集
 〔第29番 変ロ長調 Op.106「ハンマークラヴィーア」/第32番 ハ短調 Op.111 〕
 ディーナ・ウゴルスカヤ(P)
 録音:2011年9月、ミュンヘン。アナトール・ウゴルスキの愛娘、ディーナ・ウゴルスカヤによるベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタ2曲。鮮烈な演奏で好評を博したシューマン後期のピアノ作品集(4260085-532179)に続き、今回も持ち味とも言える柔軟で活き活きとした演奏を存分に聴かせてくれる。技術的にも音楽的にも極限的な難曲として知られる「ハンマークラヴィーア・ソナタ」に挑戦している点で、彼女の自信がうかがえる。第32番は、父ウゴルスキも27分に及ぶ長大な第2楽章で話題となった名演を残しているが、娘ウゴルスカヤはそれとはまた異なる、過度な表現を控えたすっきりとした演奏で魅せてくれる。父であり師であるウゴルスキの血を垣間見せつつも、独自の伸びやかな演奏に聴き入る名盤。
シューベルト
 幻想曲 ハ長調「さすらい人」Op.15 D.760 /即興曲集 Op.142 D.935 /即興曲集 Op.90 D.899
  ヴィヴィアナ・ソフロニツキー(Fp)
 録音:2010年7月、ティボール・ヴァルガ・スタジオ、シオン(スイス)。使用楽器:1819年製コンラート・グラーフ・モデル(ポール・マクナルティ復元)。20世紀ソ連の巨匠ヴラディーミル・ソフロニツキーの愛娘にして世界的クラヴィーア奏者であるヴィヴィアナ・ソフロニツキーによるシューベルト。ベートーヴェンやショパン、シューマンら多くの音楽家たちが愛した名器を使用。素朴かつ軽やかな音色が織りなす上品な響きはフォルテピアノならではと言えるだろう。2010年の来日公演でも話題となったピリオド楽器の響きを再び堪能することが出来る。ヴィヴィアナの演奏は全体的に過剰な表現を抑えた清廉な演奏。重厚感のあるフォルテの響きや透明感のある高音の美しさにはどこか亡き巨匠ヴラディーミルの響きも想い起こされる。現在、ロシア・ピアニズムの継承者として世界的に活躍しているヴィヴィアナ。今後さらなる活躍必至。
ラフマニノフ:楽興の時Op.16 /ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調Op.36
クライスラー:愛の悲しみ/愛の喜び
 エフゲニア・ルビノヴァ(P)
 録音:2004年、ドッビアーコ(イタリア)類まれなテクニックとパワフルな表現力を兼ね備えた演奏で「次代のアルゲリッチ」とも謳われる新進気鋭の若手ピアニスト、ルビノヴァによるピアノ小品集。可憐な外見からは想像も出来ないほどのダイナミックかつエネルギッシュな表現力と、力強い低音の響きが印象的な彼女の演奏は、重々しくも流麗な響きに満ち溢れている。本CDにはラフマニノフ、クライスラーの情感あふれる作品の数々が収録されており、ルビノヴァの真骨頂とも言える情感あふれる演奏をたっぷりと堪能出来る。2002年にリーズ国際コンクールで第2位に輝き、若手世代を代表するピアニストとして世界的な注目を集めているルビノヴァ。2007年にはシャンバダール率いるベルリンso.と共に来日し、高い評価を受けた。近年は室内楽の分野でアルブレヒト・マイヤーやガブリエル・シュワーベといった世界的な名手らと共に活動しており、今後のますますの注目が期待されるアーティストと言えるだろう。
アウグスト・クルークハルト(1847-1902)
 弦楽四重奏曲 ヘ長調 Op.42 /
 ピアノ五重奏曲 ト短調 Op.43 (*)
ケルン・プレイエルSQ
トビアス・コッホ(Fp;*)
 録音:2010年、ヨハネス教会、ケルン。ピリオド楽器使用。ケルン・プレイエル四重奏団は2004年にケルンで結成され、19世紀ドイツものをレパートリーの中心とするピリオド楽器演奏団体。現在では殆ど演奏される機会に恵まれない不遇の作曲家クルークハルトだが、ケルン・プレイエル四重奏団にとっては十八番ともいうべきプログラム。ドイツ古典派とロマン派の響きを併せ持つ隠れた名曲を、彼らの極上の演奏で知ることができる。ピアノ五重奏ではフォルテピアノのトビアス・コッホを迎え、ピリオド楽器ならではの暖かみのある極上のアンサンブルを堪能できる1枚となっている。クルークハルトは19世紀後半のドイツに活躍した作曲家。生前は指揮者としての活躍が際立ち、ヴァイマルの宮廷劇場の音楽を務めながらリストやワーグナーと親交を深めるなど、当時のドイツ音楽界の第一線に身を置き続けた音楽家でもある。弦楽四重奏曲Op.42は彼が最初に作曲した四重奏作品。当時最高峰の名門として活躍していたヨアヒム弦楽四重奏団の演奏会で披露され、大成功を収めた。その後クルークハルトはこの団体へ敬意を表し、ピアノ五重奏曲Op.43を献呈している。2曲とも、超絶技巧的なパッセージで圧倒するというよりも、旋律の美しさや重厚なハーモニーに包み込まれるような魅力を持った作品。メンデルスゾーンの劇音楽を思わせる軽やかかつ鮮やかな表現、シューベルトの後期作品やブラームスを思わせる重々しくも流麗な旋律、シューマンの歌曲のような叙情性…どこか素朴でありながらも味わい深いメロディの数々が絶品の希少盤。
A Portrait 〜トルステン・エンケ(1966-):
 アンサンブルのための前奏曲(2012)
  [ラウマ・スクリデ(P) ステファン・ラップ(Perc) シャロン・カム(Cl)
   イサヒ・ラントナー(バスCl)クリスティアン・テツラフ(Vn)
   フォルカー・ヤコブセン(Va) グスタフ・リヴィニウス(Vc)
   エディクソン・ルイス(Cb) トルステン・エンケ指揮/2012年6月9日、シュパヌンゲン音楽祭]
 ワーグナー「ニーベルングの指輪」の主題による幻想曲(2013)
  [エイヴィン・グルベルグ=イェンセン指揮ハノーファー北ドイツ放送po./
   2013年10月20日、ハノーファー北ドイツ放送po.大ホール]/
 14人の演奏家のための「オマージュ」(2014) (*) /室内管弦楽のための「素敵な女の子」(2011) (#) /
  ヴァイオリン、ヴィオラと管弦楽のための「エコーズ」(2016) (+)[イザベル・ファウスト(Vn;+)
   ボリス・ファウスト(Va;+) トルステン・エンケ指揮ムジカ・アッソルータ/
   2014年3月21日(*)、2015年1月16日(#)、2016年9月12日(+)、ゼンデザール、ブレーメン]/
 大管弦楽のためのNyx (2011)[パーヴォ・ヤルヴィ指揮ブレーメン・ドイツ室内po./
               2011年12月17日、ディー・グロッケ、ブレーメン]
 録音:[/内]、すべてライヴ、世界初録音。 作曲家、指揮者、チェリストと多彩な音楽的才能をもつトルステン・エンケ。2005年パブロ・カザルス音楽祭コンクール作曲部門で発表された弦楽四重奏曲第1番で優勝。「退屈しない限り音楽にタブーはない」と語るように、トルステン・エンケの音楽は新しいひらめきに満ちている。またハノーファーでムジカ・アッソルータという若手音楽家を集めたアンサンブルを結成。定期的にコンサートを行い新しい作品が次々と生まれている。この10年間でエンケは、器楽曲、室内楽、声楽、合唱、オーエケストラ、オペラと様々なジャンルの音楽を作り上げている。このアルバムはエンケのそうした幅広いレパートリーを示すような内容となっている。さらにはパーヴォ・ヤルヴィ、イザベル・ファウスト、クリスティアン・テツラフ、シャロン・カムなど現代の名手たちが演奏に参加し、エンケの注目度の高さがうかがえる。
モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 K622 (*) /クラリネット五重奏曲 イ長調 K581 (#)
 マティアス・ショルン(Cl) ニコラス・ミルトン指揮インフィアテルso.(*)、ミネッティSQ (#)
 録音:2012年8月31日-9月1日、リート・イム・クライス、コンツェルトハレ、ライヴ(*)、2012年6月-7月、ホーフブルクカペルレ・ウィーン(#)、共にオーストリア。既出音源からのコンピレーション。VPO の首席クラリネット奏者マティアス・ショルンによるモーツァルト。彼は2011年グスターボ・ドゥダメル指揮VPOでソロ・デビューを果たした、新時代の奏者。ドイツの新聞では「ザビーネ・マイヤー以来の最もエキサイティングな新人」、ワシントン・ポスト紙では「輝かしいテクニックの持ち主」と評され注目を集めている。俊英ニコラス・ミルトン指揮による若手で構成されているインフィアテル・シンフォニーo. とのクラリネット協奏曲では、明瞭なコントラストで奏でるアンサンブルとの絶妙なバランスは、さすが世界一のオケで鍛え上げているショルンの音楽的魅力が満載。さらにミネッティ四重奏団との五重奏曲は、溌剌とした音楽性と美しいハーモニーで作品をまとめ上げている。
シューベルト:アルペジオーネ・ソナタ D 821
ブリテン:ラクリメ、ダウランドの歌曲の投影 Op.48
ショスタコーヴィチ:ヴィオラ・ソナタ Op.147
レイチェル・ロバーツ(Va)
ラルス・フォークト(P)
 録音:2013年6月-7月、ケルン。室内楽を中心に活動している女性ヴィオラ奏者レイチェル・ロバーツとドイツのピアニスト、ラルス・フォークトによるヴィオラ作品集。
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集
 ヴァイオリン伴奏付きクラヴィーア・ソナタOp.2〜第2番 ハ長調 K296/
 ヴァイオリン伴奏付きクラヴサンまたはフォルテピアノのためのソナタOp.1 より
  [第1番 ト長調 K301/第3番 ハ長調 K303/第6番 ニ長調 K306]
 ジョルジョ・タバッコ(P) フランチェスコ・ドラツィオ(Vn)
 使用楽器:ポール・マクナルティ2007年製ヴァルター(1805年)・モデル/1711年製グァルネリ。これまでにJ.S.バッハやヘンデル、ハイドンなどのソナタなど、多くの録音を共にしてきた名コンビがお送りするCAviレーベル第1弾。マンハイムで活躍していた時代に作曲された作品を中心に、全体的に軽やかで明るい雰囲気に満ちた作品の数々を収録。軽やかな掛け合いが美しく、息の合ったアンサンブルに魅せられる。柔らかくも芯の通った音色のハーモニーにも注目。
ルール・ピアノフェスティヴァル・エディション Vol.27
 リスト、タールベルク、ピクシス、ヘルツ、チェルニー、ショパン共作:ヘクサメロン
 リスト:
  ペトラルカのソネット第123番[イゴール・レヴェット(P)/録音:2011年9月1日-2日]
  葬送〜詩的で宗教的な調べ
 ワーグナー/リスト編曲:イゾルデの愛の死[ベニヤミン・モーザー(P)/録音:2011年5月25日]
 リスト:
  3つの演奏会用練習曲〜軽やかさ[ボリス・ギルツブルク(P)/録音:2011年6月25日]/
  詩的で宗教的な調べ〜孤独のなかの神の祝福/タランテラ[デニス・コジューヒン(P)/録音:2011年6月25日]/
  ピアノ・ソナタ ロ短調(サン=サーンス編曲/2台ピアノ版)
   [パラトーレ兄弟〔アントニー&ジョゼフ・パラトーレ(P)〕/録音:2011年5月20日]/
  オーベルマンの谷(リスト編曲/ピアノ三重奏版)[キット・アームストロング(P)
    アンドレイ・ベロフ(Vn) エイドリアン・ブレンデル(Vc)/録音:2011年6月19日]/
  尼僧院の僧房/悲歌/悲しみのゴンドラ
   [マリオ・ブルネロ(Vc) アンドレア・ルケシーニ(P)/録音:2011年5月23日]/
  祈り/漁師の娘/喜びに満ち、悲しみに満ち/3人のジプシー
   [マリーナ・プルデンスカヤ(Ms) イリーナ・プリシンスカヤ(P)/録音:2011年6月2日]
 キット・アームストロング:光陰矢のごとし(*)[キット・アームストロング(P)
    アンドレイ・ベロフ(Vn) エイドリアン・ブレンデル(Vc)/録音:2011年6月19日]
 オラヴ・レルヴィク:アフォリズム1.0 (*) /アフォリズム1.1 (*)
 ヴァソス・ニコラウ:子守歌(*) /小さな星(*) /トランシルヴァニア(*)
 [タマーラ・ステファノヴィチ(P)/録音:2011年5月30日]
 ディーター・シュネーベル: H-Mollソナタ (*) [ジークフリート・マウザー(P)/録音:2011年5月22日]
 (*)は当音楽祭のための新作で、全て世界初録音。ピアノ音楽マニアが毎年心待ちにしているドイツ、ルール地方で毎年行われるピアノフェスティヴァルのライヴ第27弾。2011年は生誕200年だったピアノの神様リストに捧げ、マニアックな作品と興味深い新作が披露されている。いずれもワクワクするものばりだが、「ピアノ・ソナタ ロ短調」をサン=サーンスが2台のピアノ用に編曲したものが貴重。この難曲をさらに複雑化し、両奏者の丁々発止な掛け合いの面白さにも満ちた神業的編曲。2台のピアノの効果を熟知したサン=サーンスならではの魔術が駆使され、物凄く興奮させられる。アメリカの腕ききパラトーレ〔パラトア〕兄弟がライヴならではの熱気に迫力に満ちた演奏を聴かせてくれる。また浜松国際ピアノアカデミー2004年優勝者のイゴール・レヴェット〔イーゴリ・レーヴェト〕や2007年にニューヨークで行われたヤング・コンサート・アーチスト国際コンクール優勝のベニヤミン・モーザーの最新演奏も嬉しい限り。また、1992年生まれの台湾系イギリスの天才青年キット・アームストロングの演奏を聴くことができるのも特筆。7歳にしてカリフォルニア・チャップマン大学に最年少で奨学金入学、数学を専攻したという驚きの頭脳。ピアノの腕前も、かのアルフレッド・ブレンデルに「私が会った最高の才能」と言わしめた凄さ。リスト作品のみならず、ブレンデル80歳の誕生日プレゼントとして作曲した自作も披露。さらにこのフェスティヴァルは、未来の子供たちのために前衛手法の子供用作品の委嘱と出版も行っている。今回はノルウェーのレルヴィクとキプロスのニコラウの曲をステファノヴィチが美しく奏でている。加えて御年81歳だったドイツの長老作曲家ディーター・シュネーベルの新作ソナタも聴き物。フェスティヴァルの委嘱作で、マウザーに捧げられているが、シュネーベルにとって初のピアノ大曲というのも興味津々。ピアノの内部奏法をはじめとする特殊奏法を駆使しつつ、リスト、ショパンの第3番、ベルクらの ロ短調で書かれたピアノ・ソナタをコラージュ風に挿入した一大奇作となっている。
ジョージ・アンタイル(1900-1959):
  ヴァイオリン作品全集 Vol.1
 ヴァイオリン・ソナタ〔第1番−第4番〕
アレッサンドロ・
 ファジュオーリ(Vn)
アレッシア・トッファニン(P)
 2019年に没後70年を迎えるジョージ・アンタイルは「バレエ・メカニック」「飛行機ソナタ」などのアヴァンギャルドな作風で有名だが、後年は伝統的な書法に回帰したり、映画音楽も多く手掛けていたりと様々な表情を持っている。ヴァイオリン・ソナタは4曲残されていて、調性をギリギリのところで保持しつつも新しい表現に果敢に挑んでいく作風が何ともかっこよく刺激的。冷たい機械的な動きとそれを連続させる熱いエネルギー、変拍子でスリルにあふれたスピード感などアンタイルの面白さがぎっしりと詰まっている。打楽器的な第1番(1923年)、ダダイズム・キュビスムの表現を推し進めた第2番(1923年)、そして新古典派に姿を変えた第3番(1924年)はストラヴィンスキーからの影響を思わせる。戦後に書かれた第4番(1948年)は前3曲と約25年の隔たりがあり、プロコフィエフやショスタコーヴィチに近い音楽となっている。それぞれに特色があり、他では聴けない感触を持ったユニークな作品たち。まとめて聴けるのがありがたい、貴重な録音。
シューベルト:ピアノ三重奏曲集
 ソナタ楽章 変ロ長調 D28(*)/
 ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調 D898(*)/
 ピアノ三重奏曲第2番 変ホ長調 D929(#)/
 三重奏曲「ノットゥルノ」 変ホ長調 D897(#)
トリオ・ジャン・パウル
[エックハルト・ハイリガース(P)
 ウルフ・シュナイダー(Vn)
 マルティン・レール(Vc)]
 録音:2011年1月(*)/2011年6月(#)、クラウス・フォン・ビスマルク・ザール、ケルンWDR。ヨーロッパ屈指の三重奏団トリオ・ジャン・パウルのCAviレーベル第2弾。シューベルト最初期の作品である「ソナタ楽章」と、晩年期の傑作といわれる3作品が収録されている。軽やかで若々しい活気にあふれた「ソナタ楽章」の後に晩年の作品を聴くと、シューベルトの円熟した音楽の魅力がより際立って感じられようだ。第1番と第2番はどちらも長大な作品だが、重々しくも流麗な旋律、寂しくも抒情的な美しさにじっくりと浸ることが出来る。トリオ・ジャン・パウルは1991年に設立されて以来、世界各国で活躍しているベテラントリオ。1993年の第1回大阪国際室内楽コンクール、1995年のメルボルン室内楽コンクールで優勝した実力派。詩的音楽への追求に意欲的なアンサンブル団体で、今回も重厚なハーモニーと深みのある演奏を聴かせてくれる。
ショスタコーヴィチ:交響曲第4番 ハ短調 Op.43 ダニエル・ライスキン指揮
ライン州立po.、
マインツ州立po.
 録音:2009年3月19日、フェニックスホール、マインツ/2009年3月20日、ライン・モーゼル・ホール、コブレンツ、共にライヴ。2日分の演奏日&オケも2つが記されているが、この件に関して国内代理店は何もコメントしておらず、商品外装にも明確な記載は無い。合同オケなのか、それともオケが異なる2演奏を一つにまとめているのか? 次世代を担う若手指揮者として注目を集めているダニエル・ライスキンは1970年サンクトペテルブルク生まれ。指揮者デビューする以前にはヴィオラ奏者として活躍。2005年からライン州立フィルハーモニーの首席指揮者に就任。またアルトゥール・ルービンシュタインpo.の首席指揮者、ヴロツワフpo.の常任指揮者、ウラルpo.首席客演指揮者、ミッケリ・シティo.常任指揮者なども務め、若き世代を代表する指揮者として注目を集めている。ライスキンは多数の音楽家が一つの物を作り上げる交響曲は「共通運命」の原理に基づいていると考えている。信頼できるオケとリハーサルと本番で一つの響きを作りだし、新しい感情と発見を導き出すことこそが「共通運命」であると語っている。コンドラシン&モスクワpo.のショスタコーヴィチを不滅の名演と位置付けるライスキン。鋭い切り口と高精度のパフォーマンスに強靭なパワーを感じさせる演奏。しっかりとした構成と強弱の対比が音楽の生命感を生み出している。ライヴ独特の緊張感を維持し、強烈な中にも冷静さを保った秀演を聴かせてくれる。
ハムレット・エコーズ〜メゾ・ソプラノ、ヴィオラとピアノのための歌曲
 チャールズ・マーティン・レフラー(1861-1935):無邪気な歌/夕暮れの諧調/4つの詩 Op.5
 リスト:ヴィオラとピアノのための「忘れられたロマンス」S.132/女の涙
 ブラームス:2つの歌 Op.91 / ショスタコーヴィチ:ブロークの詩による7つの歌 Op.127〜オフィーリアの歌
 クリスティアン・ヨースト(1963-):ハムレット・エコーズ(2009) / ブリッジ:3つの歌

  ステラ・ドゥフェクシス(Ms) ポーリーヌ・ザクセ(Va) ダニエル・ハイデ(P)
 録音:2011年4月、ベルリン。アルバムのタイトルにもなっているヨーストの「ハムレット・エコーズ」は、ベルリンで初演されたシェイクスピアの悲劇「ハムレット」を題材としたオペラからの作品。そしてピアノと歌にヴィオラを伴った豊かな歌謡性を備えたブラームスらしい作品「2つの歌」。ドイツ人の両親を持ちフランス音楽に大きな影響を受け、その後アメリカで活動した作曲家レフラーの歌曲など。コミッシュオーパー専属歌手で数々のオペラにも出演、瑞々しい色彩感が魅力の作品で豊かな歌唱力を持つギリシャ系ドイツ人のメゾ・ソプラノ、ドゥフェクシスが表情豊か&典雅に歌い上げ、アイスラー・カルテットのヴィオラ奏者ザクセと、ザクセと度々共演し歌曲伴奏も数多く務めるピアニストのハイデが、バランス感覚抜群の潤いに満ちた演奏を披露。
フランス・チェロ・ソナタ集
 プーランク:チェロ・ソナタ
 フォーレ:蝶々 Op.77/シシリエンヌOp.78/夢のあとに
 ドビュッシー:チェロ・ソナタ ニ短調
 ナディア・ブーランジェ:チェロ・ソナタ
 サン=サーンス:チェロ・ソナタ第1番 ハ短調 Op.32
ユリアン・ステッケル(Vc)
パウル・リヴィニウス(P)
 録音:2011年2月、ケルン。20世紀のチェロ協奏曲集(4260085-532230)で情熱的な演奏を聴かせたユリアン・ステッケル。今回は20世紀のフランスのチェロ・ソナタを収録。プーランクのチェロ・ソナタでは独自のシニカルなセンスと抒情性を持つ作品を、ステッケルの透明な音色とリヴィニウスの輝かしいピアノで軽快に聴かせてくれる。魅惑的な雰囲気が心地よいドビュッシーのソナタでは、張りのある音色で美しく歌い、気まぐれにピアノに絡みつく様が印象的。そして優美に語らうチェロが絶妙なフォーレの小品がアルバムを優しく包み込む。また教育者としても名高いナディア・ブーランジェ女史のチェロ・ソナタや華麗なサン=サーンス:チェロ・ソナタなどフランス・チェロ作品の美点を十分に組み込んだ1枚。
モダン・タイムズ
 フランツ・シュレーカー(1878-1934):情熱的な小男/どのように愛はあなたのもとにやってきたのか
 ハンス・ガル(1890-1987):5つの歌曲 Op.33
 ベルトルト・ゴルトシュミット(1903-1996):クリスティアン・モルゲンシュテルンの詩による2つの歌曲 Op.27
 ハンス・アイスラー(1898-1962):
  クリスティアン・モルゲンシュテルンの詩による「絞首台の歌」/6つのバラードより Op.18
 コルンゴルト:道化の歌 Op.29 / ツェムリンスキー:12の歌曲より Op.27
 ウィルヘルム・グロス(1894-1939):大道芸のバラードOp.31

  クリスティアン・イムラー(Br) ヘルムート・ドイチュ(P)
 録音:2011年1月。第一次世界大戦前後に活躍し、ナチス迫害の影に埋もれてしまった物を含むオーストリア・ドイツの歌曲をバッハ・コレギウム・ジャパンにも度々登場する伸びのあるバリトン歌手イムラーと名手ドイチュの伴奏で。
ドヴォルジャーク:詩的な音画 Op.85,B.161(全13曲) クラウディア・シェレンベルガー(P)
 録音:2011年9月。どこか東欧情緒を感じさせるロマンティックな旋律の数々が美しい「詩的な音画」は管弦楽版でも知られているが、原曲はピアノ版。ドイツを中心に世界各国の音楽祭に出演、プラハのドヴォルジャーク・シンフォニーo.と幾度もドイツ・ツアーを行った他、2007年にはチェリストのG.リプキンとアメリカ・ツアーを行い、リサイタルなども含め積極的に活躍しているピアニストでモラヴィア出身の母を持つシェレンベルガーにとって、ドヴォルジャークの響きはことさら造詣深い。18&19世紀ラテン・アメリカ音楽を収録した初のソロ・アルバム(4260085-531998)で聴かせてくれた情熱あふれる鮮烈な演奏とはまた一味違う、繊細かつ流麗なタッチで魅せてくれる。
ベートーヴェン:後期ピアノ・ソナタ集
 〔第30番 ホ長調 Op.109 /第31番 変イ長調 Op.110 /第32番 ハ短調 Op.111 〕
  アンティ・シーララ(P)
 録音:2011年6月。これまでに何度か来日もある若手実力派シーララは、1979年、ヘルシンキの音楽一家に生まれた。7歳でオーケストラと共演し、10歳の時、第10回ウィーン・ベートーヴェン国際コンクールで最年少第1位に輝いただけでなく、その時に弾いたハンマークラヴィーア・ソナタは驚異的名演として絶賛された。2009/2010シーズンは、「BPOハーモニック・ピアノ・リサイタル・シリーズ」のアーティストの1人(全部でわずか4人のシリーズ。同じ時の他出演者は、エマール、ラン・ラン、ヘルムヒェン)に選ばれ、ブラームスとシェーンベルクのプログラムを演奏した。幼いころからすでにベートーヴェンを得意としていたシーララは、清冽な音色と明晰な音楽運びで、後期のこれらの大作を、見通しのよい音楽で見事に聴かせる。暖かさと明晰な解釈による演奏を堪能できる1枚。
ベートーヴェン:弦楽オーケストラのための編曲集
 弦楽四重奏曲第11番 ヘ短調 Op.95
  (アンティエ・ヴァイトハース&ケーティ・シュトイリ編曲/弦楽オーケストラ編曲版)/
 ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」Op.47
  (リチャード・トニェッティ編曲/独奏ヴァイオリンと弦楽オーケストラ伴奏編曲版)
 アンティエ・ヴァイトハース(Vn) カメラータ・ベルン
 録音:2012年4月。アルカント・カルテットのファースト・ヴァイオリンを務めるヴァイトハース。現在、1962年に設立された伝統ある弦楽アンサンブルグループ、カメラータ・ベルンの芸術監督も務めている。彼女が今回取り組んだのは、うち1曲は彼女自身も編曲に携わったベートーヴェンの傑作2曲の弦楽オーケストラ版化。クロイツェルに関して、ヴァイトハースは「この作品は非常にオーケストラ的」と語っており、たしかにまったく違和感なく仕上がっている。さらに、どうしても生じてしまうピアノとヴァイオリンの調和しきれない音色の違いもすべて解消され、ベートーヴェンが描いた音の世界を存分に味わうことができるように感じられよう。第2楽章の心にしみるハーモニー、終楽章のぴちぴちとした感じは弦楽アンサンブルならでは。ヴァイトハースの素晴らしいヴァイオリン・ソロとあいまって、弦の魅力たっぷりの作品となっている。弦楽四重奏曲第11番は、いわずと知れた後期弦楽四重奏の傑作のひとつ。極度に凝縮された世界をより多様な音色で解きほぐして展開することにより、この作品の緻密な声部間のやりとりなどがよりわかりやすくなり、作品理解をより深めることができるような編曲になっている。単なる編曲ものを超えた、ベートーヴェンの偉大性とメンバーのうまさをあらためて実感できる興味深い1枚。
J.S.バッハ:フーガの技法 BWV1080〜コントラプンクトゥス XI (弦楽四重奏版)
ベートーヴェン:弦楽四重奏第15番 イ短調 Op.132/チェロ・ソナタ第1番 ヘ長調 Op.5 No.1
 クリスティアン・テツラフ、アンティエ・ヴァイトハース(Vn)
 レイチェル・ロバーツ、タチアナ・マスレンコ(Va) グスタフ・リヴィニウス、
 ターニャ・テツラフ(Vc) ラルス・フォークト、アーロン・ピルサン(P)
 録音:2010年6月13日、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。ドイツはケルン近郊の丘陵地帯の街ハイムバッハで毎夏開かれているシュパヌンゲン音楽祭2010年のプログラムは、ベートーヴェンとロシアの作曲家たちに焦点を当てた物だった。4260085-532247 はチャイコフスキーの番号付きの弦楽四重奏曲3つのうち、最も室内楽的魅力が感じされる第3番。冒頭のチェロの悲痛な旋律が印象的なショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲第2番。友人であった作家のソレルティンスキー氏の死を悼んで作曲された。音楽祭常連のメンバーたちによる説得力のある演奏は聴衆を惹きつけ、この音楽祭ならではの一体感と強い感情の起伏を感じさせる演奏。4260085-532254)は音楽祭のメインプログラムであるベートーヴェン。シンプルかつ立体的な編成である弦楽四重奏によるフーガの技法(コントラプンクトゥスⅪ)も収録。精緻なアンサンブルと個々のパートの絶妙なバランスにより、理想的な対位法音楽に到達している。エネルギーに満ちた音楽で後期の多楽章構成の作品ベートーヴェン:弦楽四重奏第15番。感情を抑え、気品と透明感に溢れた演奏は、作品の真髄をじっくりとあぶり出していくようだ。またチェロ・ソナタでピアノを演奏する若干16歳のオーストリア出身のピアニスト、アーロン・ピルサンにも注目。シュパヌンゲン音楽祭には2度目の出演。その音楽的才能を主宰者ラルス・フォークトが惚れ込み再度オファーしたそう(カデンツァ注:チェロ奏者がクレジットされている2名の内どちらなのかは、国内代理店の案内に記されていない。ラルス・フォークトの手腕を発揮した毎年意欲的なプログラムと、確かな実力を持った音楽家が集まり、刺激的な演奏を繰り広げるシュパヌンゲン音楽祭。室内楽の最先端をいく彼らの今後の活動にも注目。
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第3番 変ホ短調 Op.30
ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第2番 ホ短調 Op.6
 クリスティアン・テツラフ、アンティエ・ヴァイトハース(Vn)
 タチアナ・マスレンコ(Va) グスタフ・リヴィニウス、
 ターニャ・テツラフ(Vc) ラルス・フォークト(P)
 録音:2010年6月8日、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。
ユリアン・ステッケル〜20世紀のチェロ協奏曲集
 コルンゴルト:チェロ協奏曲 ハ長調 Op.37(*)
 ブロッホ:ヘブライ狂詩曲「シェロモ」(#)
 ゴルトシュミット:チェロ協奏曲 Op.23(+)
ユリアン・ステッケル(Vc)
ダニエル・ライスキン指揮
ライン州立po.
 録音:2009年10月(*)/2009年11月(#)/2009年6月(+)、以上 ライン・モーゼル・ホール。20世紀の傑作コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲の1年後に作曲されたチェロ協奏曲は、女流ピアニストを巡るチェリストと作曲家の三角関係を描いた映画「愛憎の曲」のために作曲された作品。モダーンなハーモニーや洗練された響きの曲で、チェロのソロが緻密に濃厚に表現されている。ブロッホのチェロと管弦楽のための狂詩曲ヘブライ狂詩曲「シェロモ」。「シェロモ」とは旧約聖書におけるソロモン王のことで、独奏チェロがソロモン王として曲が進行していく。ブロッホのユダヤの世界観に根差した音楽性を壮絶な情念を表出させた演奏で聴かせる。ユダヤ系ドイツ人であったゴルトシュミットは、ナチスの台頭により活動の場を奪われイギリスに亡命するが、その後も活躍の場には恵まれず、再び注目を浴びたのは亡命後50年以上過ぎてからの事だった。このチェロ協奏曲はBBCに勤務していた頃の作品。イギリスのチェリスト、ウィリアム・プリースによって1954年に初演されている。この主題はブロッホの「シェロモ」の冒頭に似ているが、中心となるモティーフはバッハ無伴奏チェロ組曲のアルマンドを思わせ、チェロ独特の深みと渋みを味わう事のできる作品。
 チェロのユリアン・ステッケルは1982年生まれ。ウルリヒ・フォス、グスタフ・リビニウス、ボリス・ペルガメンシコフ、アンティエ・ヴァイトハースらに学び、2010年ミュンヘン国際コンクールで優勝した、今最も実力のある若手チェリストの一人。
メンデルスゾーン:初期歌曲集
 鎌で刈る音が鳴り、穂が落ちる/君を想う/泣きながら私は夜を見る/愛と沈黙/酔いの静けさ、緑の屋根/期待/挨拶/
 民謡/Und über dich wohl streut der Wind/Abschied,Es wehen die Wolken/進め、休みなく/ズライカ/
 アヴェ・マリア!優しい聖母様よ!/休め、戦士たちよ、戦いは終わった/艶/捨てられた女/乞食/
 Tanzt dem schonen Maientgegen/Durch Fichten Am Hügel/Sanft wehn im Hausch der Abendluft/友の歌/
 舟歌/記憶/岸で/子守歌/ある日/ Faunen嘆き/泡立つ水が、流れ落ち/Vier trube Moden sind entflohn/
 夜うぐいす/気を付けろ!/Es rauscht der Wald, es springt der Quell/騎士の歌/静かな眠り

  ルート・ツィーザク(S) カーステン・スス(T) ゲロルト・フーバー(P)
 録音:2010年10月。可憐な歌声で聴衆を魅了するソプラノ歌手ツィーザクとドイツを中心にオペラ舞台で活躍するテノール歌手スス、そして数々の歌曲の伴奏を務めるピアニスト、フーバーによるメンデルスゾーンの初期歌曲集。彼らはメンデルスゾーンにゆかりのあるライプツィヒ・ゲヴァントハウスから再発見されたメンデルスゾーンの歌曲を取り上げてみないかという誘いを受け、この企画が実現した。ルート・ツィーザクの透明で気品溢れる歌唱は、メンデルスゾーンの端正で美しい歌曲にぴったり合っていて、流麗な旋律が浮き立つように描き出される。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディション Vol.26
 シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集 Op.6[アダム・ラムール(P)/2010年5月16日]/
       森の情景 Op.82[エリック・シュナイダー(P)/2010年5月17日]
       交響的練習曲Op.13/森の情景Op.82〜予言の鳥/バッハの名による6つのフーガOp.60/予感(アンコール)
       [ソフィー・マユコ・フェッター(P)/2010年6月17日]
 ショパン:2台ピアノのためのロンド ハ長調/4手のための変奏曲 ニ長調
       [滑川真希、デニス=ラッセル・デイヴィス(P)/2010年6月16日]/
      ポロネーズ第7番 変イ長調Op.61「幻想」[ジー・チェン(P)/2010年5月26日]/
      スケルツォ(全4曲)[アベール・テベニヒン(P)/2010年5月14日]/
 ジョージ・ベンジャミン(1960-):2つの「トゥ・オア・フォー」〔2手のための(*)/4手のための(#)〕
 ルーク・ベッドフォード(1978-):2つの「ギブ・ヒズ・ハット」〔2手のための(**)/4手のための(##)〕
 マルコ・ストロッパ(1959-):2つの「ル・マントー・ファントム」〔2手のための(***)/4手のための(###)〕
 オーラヴ・リアルヴィック(1982-):2つの「アンバランシズ」〔2手のための(**)/4手のための(###)〕
 ヨーク・ヘラー(1944-):2つの「ソロ・プレイ」〔2手のための(****)/4手のための(###)〕
 ヴァソス・ニコラウ(1971-):アストロノーツ(2手のための)(****)/シーン(4手のための)(####)
  [ロレンツォ・スレ(P;*/#/####) ファビアン・ミュラー(P;**/##) ピエール・ロラン・エマール
    (P;***/###/####) タマラ・ステファノヴィッチ(P;#/##/###/****)/2010年7月12日]
 ドイツ、ルール地方にある工業地域で毎年行われるピアノ・フェスティヴァルのライヴ・シリーズ第26弾は22年目を迎えた2010年の録音集。生誕200年であったシューマンとショパン、そして現代の作曲家に委嘱した意欲的なプログラム。シューマン&ショパンのプログラムでは、滑川真希とデニス=ラッセル・デイヴィスによるお馴染のコンビはもちろん、2009年のクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクール優勝者として注目を集めているアダム・ラムール、リート伴奏者として歌手から絶大な信頼を得るエリック・シュナイダー。そしてドイツ人の父と日本人の母を持つ、札幌生まれのドイツ育ちの若手ピアニスト、ソフィー・マユコ・フェッターが登場。2010年新発見されたシューマンの「予感」を演奏している。現代プログラムでは、現代音楽のスペシャリスト、ピエール・ロラン・エマールを筆頭に現代音楽を代表する作曲家のソロと4手によるピアノ作品が収録されている。
シューマン
 暁の歌 Op.133/
 フゲッタ形式による7つのピアノ小品 Op.126/
 クライスレリアーナOp.16/
 主題と変奏 変ホ長調
  (最後の楽想による幻覚の変奏曲)Anh F 39
ディーナ・ウゴルスカヤ(P)
 録音:2010年4月。ディーナ・ウゴルスカヤによるCAviレーベル2作目のアルバム。若き日の情熱がたぎるクライスレリアーナを除き、シューマンの後期の作品。「暁の歌」は5曲からなる曲集。ウゴルスカヤは奥深い陰影に満ちた演奏を聴かせる。また「フゲッタ形式の7つのピアノ小品」は内省的な美しさに満ち、「クライスレリアーナ」ではシューマンの内的な感情を音楽との対話によって、想像力豊かに自由奔放に作品を表現している。最後に収録されているのは、病床にあったシューマンが夢の中でシューベルトとメンデルスゾーンの亡霊が歌ったという旋律に基づいて作曲された「主題と変奏(最後の楽想による幻覚の変奏曲)」。これは1854年2月に作曲されたが当時シューマンの精神状態は混乱期にあり、その10日後にライン河へ投身自殺を図っている(未遂)。美しい旋律が絡み合い次第に陰影が濃くなり、物哀しさを漂わせた作品。
モーツァルト/フランツ・バイヤー補筆完成:
 クラリネット五重奏曲
  変ロ長調KV Anh.91, 516c 〜アレグロ
ウェーバー:クラリネット五重奏曲 変ロ長調 Op.34
モーツァルト/ロバート・D.レヴィン補筆完成:
 クラリネット五重奏曲 KV Anh.91, 516c 〜アレグロ
アーサー・ブリス:クラリネット五重奏曲 イ長調 Op.50
ヴォルフガング・マイヤー(Cl)
アイスラーSQ
 録音:2010年3月。名手W.マイヤーと若手カルテットによるクラリネット五重奏曲集。まず聴き物は、断片として残されたモーツァルトの作品 変ロ長調KV Anh.91を、F.バイヤーとR.D.レヴィンの2人がそれぞれに補筆完成させたアレグロ。ウェーバーではマイヤーの軽やかで機知に富んだ奏法で心惹かれる。イギリスの作曲家アーサー・ブリスによる技巧的というよりも、感情表現が胸を打つ作品もカップリング。1916年のソンムの戦いで、戦火に敗れた実弟のオマージュとして作曲された。アイスラー弦楽四重奏団はハンス・アイスラー音楽大学で共に学んだ4人で2006年に結成された。またカルテットの名前は20世紀前半に活躍した作曲家ハンス・アイスラーからとった物。今最も注目を集めている四重奏団のアルカント・カルテットやアルテミス・カルテットから大きな影響を受け、2007年には小澤征爾からスイス国際音楽アカデミーへ直々に招待された。
ブラームス:シューマンの主題による変奏曲集 Op.9(*)
シューマン:子供の情景 Op.15(*)
ブラームス
 ヘンデルの主題による変奏曲とフーガOp.2(#)
シェイラ・アーノルド(P)
 録音:2008年10月(#)/2010年5月。このアルバムに収録されている3つの作品はすべてクララ・シューマンに捧げられている。ブラームスの2作品は変奏曲を得意としたブラームスらしい高度な技術と、心憎いインスピレーションが盛り込まれた曲。子供の情景はシューマンの巧みな表現力と描写力が注入された名作。前作ブラームス&クララ・シューマン(4260085-530489) 同様シューマン、クララ、ブラームス3人のそれぞれに素晴らしい才能と芸術的三角関係を絶妙に封じ込めた1枚。
 シェイラ・アーノルドはインドのティルッチラーッパッリで生まれ、ドイツで育ちのピアニスト。シェイラ・アーノルド。モーツァルトコンクールやクララ・ハスキルコンクールのような国際コンクールでの高い成績をおさめ、ヴィースバーデンのモーツァルト協会からの「モーツァルト賞」などによって、演奏会をアメリカやアジア、ヨーロッパなど多くの国際的に著名な音楽祭から招待され、また著名なオーケストラと共演している。またフォルテピアノ演奏も行い、幅広い音楽性に注目が集まっている。2006年からケルン音楽大学の教授に就任。
シューベルト:八重奏曲 ヘ長調 D.803(*)
イェルク・ヴィトマン:八重奏曲(#)
 イェルク・ヴィトマン(Cl) ダグ・イェンゼン(Fg) ジビレ・マーニ(Hr)
 河原泰則(Cb) イザベル・ファン・クーレン、ヴェロニカ・エーベルレ(Vn;*)
 カロリーネ・ヴィトマン、フロリアン・ドンデレール(Vn;#)
 レイチェル・ロバーツ(Va;*) ターニャ・テツラフ(Vc;*)
 ハンナ・ヴァインマイスター(Va;#) グスタフ・リヴィニウス(Vc;#)
 録音:2009年6月23日、ライヴ。2004年にシュパヌンゲン音楽祭委嘱されて作曲したこともある、クラリネット奏者イェルク・ヴィトマンによる八重奏曲は、シューベルトへのオマージュでもあるとのこと。
ドヴォルザーク:弦楽六重奏曲 イ長調 Op.48
 [クリスティアン・テツラフ、フロリアン・ドンデレール(Vn)
  イザベル・ファン・クーレン、レイチェル・ロバーツ(Va)
  グスタフ・リヴィニウス、クヴェリーヌ・フィエルセン(Vc)]
 シューマン:クラリネットとピアノのための幻想小曲集 Op.73
 [イェルク・ヴィトマン(Cl) ラルス・フォークト(P)]
 シューマン:チェロとピアノのための5つの民謡風の小品集 Op.102
 [グスタフ・リヴィニウス(Vc) スティーヴン・オズボーン(P)]
 シューマン/アリベルト・ライマン編
  幻想小曲集 Op.73(クラリネット、フルート、ハープ、2本のヴィオラのための)
 [イェルク・ヴィトマン(Cl) アンドレア・リーバークネヒト(Fl)
  ヤナ・ボウシュコヴァー(Hp)
  タチアナ・マスレンコ、ハンナ・ヴァインマイスター(Va)]
 アリベルト・ライマン:クラリネットのためのソロ[イェルク・ヴィトマン(Cl)]
 録音:2009年6月23日-25日、ライヴ。ピアニストのラルス・フォークトの主催により毎年ドイツのハイムバッハで行われる室内楽を中心としたシュパヌンゲン音楽祭のライヴ録音シリーズ。
 ドヴォルザークの弦楽六重奏曲は、クリスティアン・テツラフを筆頭に抜群のアンサンブルを披露し、スラヴ音楽の特徴を的確に捉えた秀演。シューマンがクラリネットとピアノのために作曲した幻想小曲集Op.73は、オリジナル版とアリベルト・ライマン編曲による室内楽版で収録。いずれもクラリネットのテクニックと音楽性が試されるが、ヴィトマンは多彩な音色、甘美な表現力、そして楽曲全体を捉える構成力に秀でた演奏を披露している。華やかさと清々しさが程良く加わったフォークトのピアノも印象的。
 イェルク・ヴィトマンは1973年ミュンヘン生まれのクラリネット奏者。ジュリアード音楽院でチャールズ・ナイディックに、ミュンヘン音楽大学でゲルト・シュタルケに学ぶ。ソリストとしても世界中のオーケストラと共演、その一方で室内楽にも熱心に取り組み、定期的にタベア・ツィンマーマン、ハインツ・ホリガー、アンドラーシュ・シフ、キム・カシュカシアン、エレーヌ・グリモーらとコンサートを開いている。現代音楽の作曲家からの信頼も厚く、いくつかの作品を捧げられ、1999年にはヴォルフガング・リームの「クラリネットとオーケストラのための音楽」を初演している。
シベリウス
 弦楽四重奏曲 ニ短調 Op.56「親愛なる声」
シェーンベルク:弦楽四重奏曲第1番 Op.7
テツラフSQ
[クリスティアン・テツラフ、
 エリーザベト・クフェラート(Vn)
 ハンナ・ヴァインマイスター(Va)
 ターニャ・テツラフ(Vc)]
 録音:2009年11月-12月。当盤がCAviデビュー・アルバムとなるクリスティアン・テツラフ率いるテツラフ・カルテットは、1994年スイスのサンクトガレンで行われた室内楽音楽祭で、クリスティアンと妹のターニャが他の2人と出会い結成された。1996年のコンサート・デビュー後、世界的な音楽祭に招かれ活躍し、その実力の高さは実証済み。シベリウスは標題「親愛なる声」を表現するヴァイオリンとチェロの対話が、文字通り親密で美しい。シェーンベルクの弦楽四重奏曲第1番は、まだ調性に基づき作曲され、単一楽章で書かれている。
ドヴォルザーク&スク:ヴァイオリン作品集
 ドヴォルザーク:カプリッチョ ハ長調 B81
 スク:4つの小品 Op.17
 ドヴォルザーク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
 スク:バラーダOp.3b
 ドヴォルザーク:ソナチネ ト長調 Op.100
アンティエ・
 ヴァイトハース(Vn)
ジルケ・アーヴェンハウス(P)
 録音:2010年2月、ケルン。今をときめく四重奏団アルカント・カルテットの第1ヴァイオリンを務めるヴァイトハースと室内楽のキャリアが豊富なピアニスト、アーヴェンハウスによるドヴォルザークとスーク。ボヘミアの民族色が鮮やかに彩られている。ドヴォルザークのカプリッチョは元々管弦楽版として作曲されたが、現在は消失し現存するのはピアノ伴奏版のみ。ボヘミア民族色の豊かな華麗な作品。また息子と娘のために作曲したソナチネは、ドヴォルザークらしい親しみやすい東欧風のメロディーが印象的。ソナタは重厚さ独特の色彩感が漂う秀作。スークのヴァイオリン作品は気品溢れる豊かな音楽が特徴。湧き上がる美しい旋律をヴァイトハースが真摯に語りかけ、アーヴェンハウスが香り豊かなピアノで好サポートしている。
ヘンデル:
 劇的カンタータ「アポロとダフネ」HWV122/
 組曲 変ロ長調 HWV352/
 組曲 ト長調 HWV353(「変容したダフネ」よりHWV4)/
 合奏協奏曲 イ短調 Op.6-4 HWV322
ミルシニ・マルガリティ(S)
ニコライ・ボルチェフ(B)
ヘンデル祝祭o.
ベルンハルト・フォーク指揮
 録音:2009年9月、パウル・ゲルハルト教会、ライプツィヒ。
 ヘンデルの知られざる名作ソプラノとバス用の劇的カンタータ「アポロとダフネ」。ソリスト2人を要する、1幕のオペラと同様の様式で、品がある落ち着いた音楽と美しいアリアはヘンデルの魅力が満載の作品。
 「アポロとダフネ」は、キューピッドの悪戯で、愛の矢をアポロに、愛を拒む矢をダフネに放つ。アポロは夢中になってダフネを追いかけ、ダフネはどこまでも逃げ続ける。遂にアポロに追いつかれたダフネは父、河の神に助けを求め、月桂樹に姿を変え、嘆き悲しむアポロはアリアを歌う。そしてアポロは生涯、月桂樹の葉を自分のシンボルとする。
 カンタータへの序曲として「ダフネ組曲 変ロ長調HWV352」を、そしてダフネが最初のアリアは始まる前に「ダフネ組曲 ト長調HWV353」を、ダフネのテーマとして収録している。
 ギリシャのラリッサ出身のソプラノ、ミルシニ・マルガリティの清らかな歌声とベラルーシ生まれの若手バリトン歌手ニコライ・ボルチェフのしっかりとした安定した歌唱を聴かせてくれる。
19&20世紀ラテン・アメリカ・ピアノ作品集
 レクオーナ:スペイン組曲「アンダルシア」〜
  [コルドバ/アンダルーサ/アルハンブラ/
   ジプシーの歌/グアダルキビル川/マラゲニャ]
 ゴットシャルク:サバンナOp.3/
  バナナの木 Op.5/バンジョーOp.15
 ヒナステラ:アルゼンチン舞曲〜
  [老いた牛飼いの踊り/粋な娘の踊り/
   はぐれ者のガウチョの踊り]/
  ピアノ・ソナタ第1番 Op.22
クラウディア・シェレンベルガー
 (P)
 録音:2009年10月。
 19&20世紀ラテン・アメリカ・ピアノ作品集。クラウディア・シェレンベルガーの初ソロ・アルバム。
 キューバを代表する作曲家、ピアニストであるレクオーナ。スペイン組曲「アンダルシア」は6つのスペイン風の曲からなる作品。レクオーナは「キューバのガーシュウィン」と言われ、親しみやすい旋律とスペイン的な音楽で演奏効果抜群。
 「クレオールのショパン」とよばれたゴットシャルクは民俗的要素が濃い作品を数々作曲。
 ブエノスアイレス生まれのヒナステラ。哀愁漂う艶のある旋律、激しいリズム、躍動感あるラテン特有のテンポ、強烈な印象を残す「アルゼンチン舞曲」。
 クラウディア・シェレンベルガーの情熱溢れる演奏でバリバリ聴かせてくれる。彼女はソロ活動と室内楽活動を世界中で行っており、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭、フランクフルト・フェスティヴァルなどに登場。2007年にはチェリストのガブリエル・リプキンとアメリカ・ツアーを行い、成功をおさめている。また現在マインツ音楽大学でピアノを教えている。
アナトール・ウゴルスキ〜スクリャービン(1872-1915):ピアノ・ソナタ全集
   [第1番 ヘ短調 Op.6/第4番 嬰ヘ長調 Op.30/第6番 Op.62/第9番 Op.68/第10番 Op.70/
  第2番 嬰ト短調 Op.19「幻想」/第5番 Op.53/第7番「白ミサ」Op.64/第8番 Op.66/第3番 嬰ヘ短調 Op.23]

 アナトール・ウゴルスキ(P)
 録音:2007年11月、2008年10月、2009年5月、7月、バイエルン・スタジオ、ミュンヘン。
 ロシアの鬼才、アナトール・ウゴルスキの久々の新譜は、スクリャービンのピアノ・ソナタ全曲。3年かけて録音され、ウゴルスキのスクリャービンに対する思いが結実したアルバム。
 ウゴルスキは1942年シベリア生まれ。現代音楽の積極的な演奏活動により、当局から活動を制限され、1990年ベルリンへ亡命。一時難民キャンプで生活するも、その才能が見出され50歳という遅咲きで1992年ドイツ・グラモフォンと契約。デビュー後ウゴルスキは自在なテンポ設定、自由な表現力を持つ独特の演奏スタイルで注目された。近年ウゴルスキはコンサートや録音を控え教育に専念し、現在はデトモルト音大教授を務めている。
 表舞台から遠ざかっていたウゴルスキを再び引き戻したのはスクリャービンだった。ウゴルスキにとってスクリャービンは特別な作曲家。ピアノ・ソナタは一部録音があるが、このアルバムは2007年から2009年にかけて全曲録音され、ウゴルスキの音楽観がたっぷりと盛り込まれた演奏。第1番では第1楽章の甘い主題を非常に濃厚に歌い、第4楽章の葬送行進曲は悲痛さが重くのしかかるよう、極めて静かに丁寧に作り上げている。またテンポも非常に特徴的で、第10番のソナタは、ホロヴィッツは12分弱で演奏しているが、ウゴルスキはなんと16分。スクリャービンの鬼気迫る神秘性に没入した演奏を聴かせてくれる。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディション Vol.24
 ハイドン/ツェムリンスキー編曲4手ピアノ版:
  オラトリオ「四季」(*)/オラトリオ「天地創造」(#)
 滑川真希、デニス=ラッセル・デイヴィス(P)
 録音:2009年4月4日-5日(*)、6月12日-14日(#)、以上スタジオ。共に世界初録音。
 モーツァルト「魔笛」(4260085-530199)、ベートーヴェン「フィデリオ」(4260085-530854)に続く、滑川真希&デニス=ラッセル・デイヴィスによるツェムリンスキー編曲4手ピアノ版シリーズ、今回はなんとハイドンの「四季」と「天地創造」。ルール・ピアノ・フェスティヴァルにおいて大成功をおさめたプログラムで、この録音は音楽祭のプロデューサーによる熱烈な要請から、改めてスタジオで録音されたもの。ツェムリンスキーは歌手、合唱、オーケストラそれぞれのパートを忠実かつ緻密にピアノ4手へ仕上げている。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディション Vol.23
 メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲第1番 ト短調 Op.25(*)/華麗なカプリッチョ(#)/2台のピアノのための協奏曲(+)
  [チャン・ヤ=フェイ(P;*/+) ロバート・レヴィン(P;#/+) スティーヴン・スローン指揮ボーフムso.(*/+)]
 ヘンデル:組曲第1巻〜第7番 ト短調 HWV.432/組曲 ニ短調 HWV448(デュブリュイユ編曲)
       [パスカル・デュブリュイユ(Cemb)]/
      組曲第3番 ニ短調 HWV428[レオン・ベルベン(Cemb)]
 ヴァソス・ニコラウ(1971-):Once upon a time... (2009)/5つのエチュード(2007/2008)[タマラ・ステファノヴィッチ(P)]
 ルディ・シュプリング(1972-):Faces of the New Moon(ドイツ民謡による)/Neumondgesichte (2008/2009)
  [サロメ・カンマー(Vo) ルディ・シュプリング(P)]
 ヴィルヘルム・キルマイヤー(1927-):ヘルダーリン歌曲集第3集[マルクス・シェーファー(T) ジークフリート・マウザー(P)]
 録音:2009年6月26日(*/#/+)/2009年6月3日(**)/2009年7月13日(##)/2009年10月20日(++)/2009年6月25日(***)/2009年6月7日(###)、以上全て、ルール・ピアノ・フェスティヴァル、ライヴ。
 2009年生誕200年を迎えたメンデルスゾーン、音楽祭初となるチェンバロによる演奏会ではヘンデルを、そして音楽祭のために委嘱された若手音楽家たちの作品によるコンテポラリー・コンサートなど多彩な音楽祭を一気に愉しむことのできるBOX。
J.S.バッハ:フーガの技法 BWV.1080 クリスティアン・
 リーガー(Cemb)
 録音:2008年9月、ドイツ放送カンマームジークザール。使用楽器:クリスティアン・ツェル(ハンブルク1728年)複製/ディヴィット・サザーランド(ミシガン1990年)。
 フーガの技法は演奏解釈、音楽性について問われる難曲。複雑で難解、人間業を超越したこの巨大な音楽作品は謎多き芸術としてそびえ立っている。そして、この壮大なバッハの芸術に果敢に挑む演奏者は次々と現れ、数々の名盤を残している。
 こうした演奏に一石を投じるアルバムをリリースしたクリスティアン・リーガーは、ライナーノーツで次のように語っている。『人々が試行錯誤し行った宗教的解釈、冷静な客観性、論争、学術的見地、感情的表現。発表されて2 世紀以上経過した記念碑的作品にこれ以上手を加えることは全く意味をなしません。ハープシコードで演奏されるべきか、第14 コントラプンクトゥスの完成させる事など、この計り知れない芸術作品を前にしては、編み物の隙間を埋めるような作業です。知識や教養は解釈の助けになりますし、拡大カノンについて理解していれば息つく暇もない程の驚きとともに最終部を向かえることになりますし、もし知らないならば理解する方法はただ一つ精神を集中させることです。それがこの作品への入り口であり、通訳者=演奏者としての私の役割であります』
 クリスティアン・リーガーは、南ドイツの大物女流ピアニストであったマリア・ベルクマンにピアノを師事、後にスコラ・カントルムでオルガンをジャン・クロード・ツェンダー、チェンバロをアンドレアス・シュタイアーに師事。1994年からムジカ・アンティクヮ・ケルンのメンバーとして活動し、また数々の古楽アンサンブルに参加。2008年にはエッセンとベルリンでバッハ鍵盤作品全曲演奏会を行う。2010年には、ベルリン古楽アカデミーの日本ツアーに参加。
ヘンデル:鍵盤楽器のための組曲第1集
 [第2番 ヘ長調 HWV427/第6番 嬰ヘ短調 HWV431/
  第3番 ニ短調 HWV428/第4番 ホ短調 HWV429/
  第5番 ホ長調 HWV430]
ディーナ・ウゴルスカヤ(P)
 録音:2009年7月。
 アナトール・ウゴルスキの愛娘ディーナ・ウゴルスカヤによるヘンデルの組曲は、名曲が揃った第1集より第2〜6番を収録。「調子のよい鍛冶屋」が特に有名だが、その他の作品もヘンデルの遊び心に満ちた親しみやすい旋律と、煌めきに溢れた魅力的な作品ばかり。音楽の喜びを感じる生き生きとしたディーナ・ウゴルスカヤの演奏に引き込まれる。
ショパン
 バラード第1番 ト短調 Op.23/
 バラード第4番 ヘ短調 Op.52/24の前奏曲
シェイラ・アーノルド(P)
 使用楽器:1839年 エラール製、ケルン WDR 放送所有。
 インド生まれドイツ育ちの若手ピアニスト、シェイラ・アーノルドによるショパン・アルバムは、24の前奏曲が作曲された当時に製造された楽器を使用。
ヤナーチェク:霧の中で
ベートーヴェン
 ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 Op.110
シューマン:幻想曲 ハ長調 Op.17
エリック・シュナイダー(P)
 録音:2007年9月、ベルリン。
 マティアス・ゲルネらの伴奏者として知られるエリック・シュナイダーのソロ・アルバム。人生の岐路に立たされた不安な心情を綴ったヤナーチェク晩年の傑作、ベートーヴェン最後期のピアノ・ソナタ、情熱とロマンに満ち溢れたシューマン初期の作品。作品の奥深くに潜む精神性に共感し音楽を描いている。特にヤナーチェクの「霧の中で」は孤独と絶望を痛いほどよく表現した秀演。
ブラームス:2つのヴィオラ・ソナタ Op.120
 〔第1番 ヘ短調/第2番 変ホ長調〕
シューマン:おとぎの絵本Op.113
レイチェル・ロバーツ(Va)
ラルス・フォークト(P)
 録音:2010年5月、カンマームジークザール、ケルン。シュパヌンゲン音楽祭などで度々共演、室内楽を中心に活動しているロバーツとドイツのピアニスト、フォークトによるブラームス&シューマン。ぴったりと合った音楽性が、ヴィオラ特有の重厚感ある渋さ際立つ音色だけではなく表現の幅広さを引き出し、新たなヴィオラの魅力に気付かせてくれる。ブラームス最後の室内楽作品である作品120のソナタ。クラリネット・ソナタとして作曲され、ブラームス自身によってヴィオラ・ソナタへ編曲されている。晩年の作風にみられるような重厚さよりも、軽快で無邪気な音楽で親しみやすい作品。第1番は憂いを感じつつも、牧歌的な明るさを持つ曲。一方第2番は、愛らしい旋律で始まり、激しく活動的な主題を持つ第2楽章を経て、精巧で抒情漂わせる変奏曲で終わる効果的な曲。シューマン晩年の作品「おとぎの絵本」は4つの小品からなり、哀愁に満ちたシューマンらしい曲。
ルール・ピアノフェスティヴァル・エディション Vol.25〜2009年ライヴ
[オルガ・シェプス(P)]
 シューマン:幻想曲 ハ長調 Op.17 / シューベルト:「さすらい人」幻想曲 ハ長調 Op.15/D.760
 モーツァルト:ロンド イ短調 K.511 / メンデルスゾーン:ロンド・カプリツィオーソ ホ長調 Op.14

[フランチェスコ・トリスターノ・シュリメ(P)]
 ストラヴィンスキー:ピアノ・ラグ・ミュージック/ラグタイム
 J.S.バッハ:パルティータ第3番 イ短調 BWV827 / ハイドン:ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XIV-1
 フレスコバルディ:トッカータ Nos.9, 8 / ストラヴィンスキー:タンゴ/「ペトルーシュカ」からの3楽章
 シュリメ:メロディー/グラウンドベース / ブクステフーデ:前奏曲 ト短調 BuxWV153

[コンスタンティン・シャムライ(P)]
 シューマン:謝肉祭 Op.9 / スクリャービン:練習曲 Op.2-1/2つの前奏曲 Op.27 Nos.1, 2
 プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番 イ長調 Op.82
 ワーグナー(リスト編):「さまよえるオランダ人」〜紡ぎ歌/イゾルデの愛の死

[加野瑞夏(P)]
 J.S.バッハ:パルティータ第4番 ニ長調 BWV828 / ベートーヴェン:11のバガテルOp.119
 メンデルスゾーン:無言歌集 ハ長調 Op.67-4「紡ぎ歌」/前奏曲とフーガ ヘ短調 Op.35-5
 シューマン:アラベスクOp.18/フモレスケOp.20/森の情景〜予言の鳥

[ジュエ・ワン(P)]
 ラヴェル:ソナチネ 嬰ヘ短調/鏡 / ブラームス:3つの間奏曲 Op.117/ハンガリー舞曲 WoO.1
 アルベニス(ゴドフスキー編):タンゴ / リスト:半音階的大ギャロップ

[クレメンス・ベルク(P)]
 ハイドン:ソナタ 変ホ長調 Hob.XIV; 49
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ〔第15番 ニ長調 Op.28/第28番 イ長調 Op.101〕
 リスト:演奏会用練習曲第2番「軽やかさ」 シューベルト:即興曲第2番 変イ長調 Op.142
 2009年にルール・ピアノ・フェスティヴァルに参加した注目のピアニストたちのソロ・リサイタルから。ロシア出身で現在ドイツを拠点にしているシェプス。日本でも注目されつつあるルクセンブルクの気鋭ピアニスト、シュリメ。2008年シドニー国際ピアノ・コンクール優勝のロシアの俊英シャムライ。2008年ローベルト・シューマン国際音楽コンクール1位の期待の日本人ピアニスト加野。スペインのパロマ・オシア・コンクール1位に輝いた中国のワン。この音楽祭ではホーヘンリンブルク城で演奏し聴衆を沸かせたドイツのベルク。将来が期待される若手の生き生きとした演奏を楽しむことのできるセット。
イギリスのヴィオラ音楽
 ヨーク・ボウエン(1884-1961):
  ヴィオラ・ソナタ第1番 ハ短調 Op.18
 ベンジャミン・デイル:幻想曲
 フランク・ブリッジ:6つの小品
ゲルノート・アドリオン(Va)
稲川友希(P)
  イギリスはライオネル・ターティスがいたことで、彼に弾いてもらうべく作曲家たちが魅力的なオリジナル作品を残した。ヨーク・ボウエンはピアノの名手として、「イギリスのラフマニノフ」と称されるピアノ曲がたくさんあるが、オーケストラでヴィオラを弾いていといわれ、この楽器の機能を熟知していた。ヴィオラ・ソナタ第1番は美しいメロディにも事欠かない隠れた名作だが、あまりに難曲なため知られていない。フランク・ブリッジはブリテンの作曲の師として知られるが、自身ヴィオラ奏者で、ブリテンに作曲だけでなくヴィオラの趣味も植えつけたといわれる。いずれもイギリス的なメロディにあふれ、BGMにも最適。ゲルノート・アドリオンはドイツのヴィオラ奏者。1996年以来ベルリン放送so. の副首席奏者を務めている。ピアノの稲川友希は桐朋学園で学んだ後、ドイツを拠点に活躍する新鋭。
シュパヌンゲン音楽祭 2008〜J.S.バッハ
 ブランデンブルク協奏曲第6番 変ロ長調BWV1051 (*)
  [レイチェル・ロバーツ、アントワーヌ・タメスティ(Va)
   ライナー・ツィパーリング(ガンバ) キリーヌ・フィールセン(Vc)
   青江宏明(Cb) ラルス・フォークト(P)]
 ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ ト短調 BWV1029 (*)
  [ライナー・ツィパーリング(ガンバ) キリル・ゲルシテイン(Cemb)]
 音楽の捧げもの BWV1079 〜トリオ・ソナタ ハ短調 (#)
  [アンジェラ・ファーキンズ(Fl) ミュリエル・カントレッジ(Vn)
   ターニャ・テツラフ(Vc) ジルケ・アヴェンハウス(Cemb)]
 ヴァイオリン・ソナタ ヘ短調 BWV1018 (#)
  [クリスティアン・テツラフ(Vn) ラルス・フォークト(P)]
 録音:2008年6月10日(*)/2008年6月15日(#)、以上ライヴ。
 ピアニスト、ラルス・フォークトが主宰、ドイツ西部のハイムバッハにある100年前に建てられたユーゲントスティルの美しい水力発電所で行われるシュパヌンゲン音楽祭の2008年ライヴが3タイトル同時発売。1998年からスタートしたこの室内楽フェスティヴァルは非常に人気が高く、ヨーロッパ中から室内楽をこよなく愛する人々や通の音楽愛好家が集まり、出演者もクリスティアン・テツラフをはじめイザベル・ファウスト、ライナー・ツィパーリングなどそうそうたる顔ぶれ。演奏者たちは回を重ねるごとに親密度が増し、名人たちが奏でる音楽に存分に浸ることが出来る。芸術監督ラルス・フォークトの手腕を発揮、抜群の音作りに脱帽!それぞれの名人芸が光る秀演若き日のメンデルスゾーンの代表作、弦楽八重奏曲テツラフ、ファウストらの流麗でのびやかで瑞々しい演奏!ドヴォルザークらしさが溢れた名作、管楽セレナードきらめく美音を操る名手ルルー、シャロン・カムの華麗なる妙技、しなやかでパワフルなノイネッカーメリハリが効いた名手の演奏に陶酔!
シュパヌンゲン音楽祭 2008〜ドヴォルザーク
 管楽セレナード ニ短調 Op.44(*)
  [フランソワ・ルルー、バーバラ・シュテーゲマン(Ob)
   シャロン・カム、ディームート・シュナイダー(Cl)
   シュテファン・シュヴァイゲルト、ダグ・イェンセン(Fg)
   マリー・ルイーズ・ノイネッカー、シビル・マニ、オザン・チカル(Hr)
   ターニャ・テツラフ(Vc) 青江宏明(Cb)]
 弦楽四重奏曲第13番 ト長調 Op.106 (#)
  [アンティエ・ヴァイトハース、クリスティアン・テツラフ(Vn)
   レイチェル・ロバーツ(Va) グスタフ・リヴィニウス(Vc)]
 録音:2008年6月9日(*)/2008年6月13日(#)、以上ライヴ。
シュパヌンゲン音楽祭 2008〜メンデルスゾーン&エネスコ
 メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調 Op.20(*)/エネスコ:弦楽八重奏曲 Op.7(#)
 クリスティアン・テツラフ(*/#)、イザベル・ファウスト(*/#)、
 アンティエ・ヴァイトハース(*/#)、リサ・バティアシュヴィリ(*)、
 キャサリン・ゴワーズ(#)(以上Vn) レイチェル・ロバーツ(*/#)、
 オリ・カム(*)、アントワーヌ・タメスティ(#)(以上Va)
 ターニャ・テツラフ(*)、グスタフ・リヴィニウス(#)、
 キリーヌ・フィールセン(*/#)(以上Vc)
 録音:2008年6月11日(*)/2008年6月12日(#)、以上ライヴ。
トリオ・ディ・クラローネ〜バッハ - モーツァルト
 モーツァルト:アダージョとフーガ第3番 ヘ長調 K404a(*)
 (J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻第13番 BWV882より編曲)
 J.S.バッハ:フランス組曲第5番 BWV816(#)
 モーツァルト:アダージョとフーガ第1番 ニ短調 K404a(*)
        (J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻第8番 BWV853より編曲)/
        グラスハーモニカのためのアダージョ ハ長調 K617a(+)
 J.S.バッハ/ハリソン・バードウィッスル編曲:
  コラール「尊き御神の統べしらすままにまつろい」(**)
 C.P.E.バッハ:二重奏 ハ長調 Wq142(##)
 J.S.バッハ/ハリソン・バードウィッスル編曲:コラール「イエス、私の確信」(*)
 モーツァルト:アダージョ ヘ長調 K410(++)/
  アダージョとフーガ第4番 ニ短調 K404a(*)
  (アダージョ:J.S.バッハ「オルガンのためのトリオ・ソナタ第3番 BWV527」より編曲、
   フーガ:「フーガの技法」〜コントラプンクトゥス BWV1080より編曲)
 J.S.バッハ:フランス組曲[第2番/第3番](*)
 モーツァルト:アダージョとフーガ第6番 ヘ短調 K404a(*)(W.F.バッハ:フーガ第8番より編曲)

  トリオ・ディ・クラローネ
  [ザビーネ・マイヤー(バセットホルン;##以外/Cl;##)
   ヴォルフガング・マイヤー(バセットホルン;#, ## 以外 /Cl;#, ##)
   ライナー・ヴィーレ(バスCl;*/Cl;#, **/バセットホルン;+, ++)]
 録音:2009年3月、ドイツ。
 世界的なクラリネット奏者、ザビーネ・マイヤーが率いる、クラリネット3本の絶妙のアンサンブル、トリオ・ディ・クラローネ。CAviから発売された3本のクラリネットによるオペラ作品集(4260085530014)、シューマン、ブルッフ作品集(4260085530106) の2枚のアルバムでは、クラリネットの可能性を極限まで追求した完成度の高いアンサンブルを聴かせてくれた。
 今回彼らが取り組むのはバッハの音楽とモーツァルトの関わりをテーマに選んだ。バッハとモーツァルトの関係については様々な考察があり、研究されている。モーツァルトとの関係が深かったヴァン・スヴィーテン男爵は膨大なバロック音楽の楽譜のコレクションを持ち、その中にはJ.S.バッハに作品も多く含まれていた。ヴァン・スヴィーテン男爵は毎週日曜日「音楽協会」を開き、そこにモーツァルトも招待され、演奏される音楽に影響を受けたと考えられる。モーツァルトは父レオポルドに興味深い手紙を送っている「僕は毎週日曜日12時にヴァン・スヴィーテン男爵の所へ行く。そこではヘンデルとバッハ以外は演奏されることはない。僕はバッハのフーガを、セバスティアンだけではなくエマニュエルやフリーデマンの作品も集めている。(1782年4月10日付)」。楽譜収集の真意はさだかではないが、バッハの作品への強い関心をもち、特にJ.S.バッハのフーガを模倣したと言われている。
 トリオ・ディ・クラローネの演奏は、モーツァルトがバッハの作品をどのように感じ影響を受けたかを明らかにし、それらの痕跡を新しく提示。まさにモーツァルトの耳でバッハの音楽を聴くような体験ができる1枚。
ピアノ四重奏によるラヴェル、フォーレ、シャンソン
 ラヴェル:マ・メール・ロワ(サカベ・シンタロウ編曲/ピアノ四重奏版)
 「シャンソン・プロジェクト」
  〔ヨハネス・ショールホーン: Plus blanche(クロード・ル・ジュヌの作品に基づく)/
   セバスティアン・コールホーフェン: Au Suivant(ジャック・ブレルの作品に基づく)/
   ゴードン・ウィリアムソン: Chanson Ruee
   ジェラール・ペソン: Rentrez soupirs(M. A. シャルパンティエの作品に基づく)/
   コンスタンティノス・ラプティス: Fambee Montalbanaise(ギュス・ヴィズールの作品に基づく)〕

 フォーレ:ピアノ四重奏曲第1番 ハ短調 Op.15
 フレックス・アンサンブル
  [エンドリ・ニニ(P) 杉村香奈(Vn) アンナ・スルツ=カパラ(Va) マルタ・ビルスマ(Vc)]
 ピアノ四重奏で奏でるフランス音楽。後期ロマン派の伝統を受け継ぎ書かれたフォーレのカルテットはそのまま演奏しているが、他はひとひねりふたひねりあるプログラム。ピアノ連弾と管弦楽で残されているラヴェルの「マ・メール・ロワ」のピアノ四重奏編曲版に、フランスのシャンソンを集めて複数の作曲家が現代的アレンジした「シャンソン・プロジェクト」。ラヴェルは原曲の魅力そのままに楽器を移し替えたアレンジだが、シャンソンはかなり前衛的書法によっていて、完全な現代音楽として再創造されている。
モスクワ
 シマノフスキ:弦楽四重奏曲第2番 Op.56
 プロコフィエフ:弦楽四重奏曲第2番 Op.92
 チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番 Op.11
 ミロスラフ・スコリク:メロディ イ短調
シマノフスキSQ
[アンドレイ・ビエロフ、
 グジェゴシュ・コトフ(Vn)
 ウラジーミル・ミキャトゥカ(Va)
 マルチン・シェニヤフスキ(Vc)]
 録音:2012年4月、SWR カンマームジークスタジオ、シュトゥットガルト。母国の作曲家シマノフスキ(1882-1937)の名を冠した1995年に結成されたポーランドのカルテットが、1900年代初期に音楽の中心都市であったパリ、ウィーンとモスクワの3つの都市を中心に、シマノフスキが影響を受けた作曲家らを取り上げて3枚のCDに収めるプロジェクト、最終巻。シマノフスキの弦楽四重奏曲第2番は、フィラデルフィア音楽財団のコンクール参加作品だが、バルトークとカゼッラが入賞し、当作は落選。この頃祖国ポーランドの戦況は激しくなり、そういった背景もありポーランドへの愛国心が色濃くあらわれた作風。アルバムの最後に収録されているウクライナ出身のミロスラフ・スコリクも歴史に翻弄された作曲家のひとり。最も有名なのが、ウラディミール・デニセンコ監督の映画「高き峠」(1982)のために作曲されたこの「メロディ」。劇中ではフルートとピアノで演奏されているが、ヴァイオリンに編曲された際は、ウクライナで大人気となった。ここでは弦楽四重奏版で演奏されており、哀しくも美しい旋律が聴く者の涙腺を刺激する。
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第2番 ト長調 Op.18-2
シューベルト:弦楽四重奏曲第12番 ハ短調 D.703「四重奏断章」
シマノフスキ:弦楽四重奏曲第1番 ハ長調 Op.37
ヴェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章
 シマノフスキSQ
 録音:2009年7月、2010年1月、シュトゥットガルト。母国の作曲家シマノフスキの名を冠し1995年に結成されたポーランドのシマノフスキ四重奏団が、1900年代初期に音楽の中心都市であったパリ、ウィーンとモスクワの3つの都市を中心に、シマノフスキが影響を受けた作曲家らを取り上げて3枚のCDに収めるプロジェクトの第2弾。シマノフスキは1914年からこれらの都市を含めるヨーロッパ旅行に出かけており、第1弾はパリ(4260085-531585)、そして今回第2弾はウィーン。シマノフスキは1911年-1913年の間ウィーンに滞在しR.シュトラウス、フランツ・シュレーカーと会い、ユニバーサル・エディションと出版契約を交わしている。このアルバムには伝統的なウィーン音楽と20世紀初頭までの流れを感じる4人の作曲家を収録。シマノフスキに最初の弦楽四重奏曲を作曲させたウィーン古典主義から世紀末ウィーンへ時代が動く雰囲気を感じ取ることが出来る。
シマノフスキ(1882-1937)/M.スコリク編:
 夜想曲とタランテラ Op.28(1915)
ラヴェル(1875-1937):
 弦楽四重奏曲 ヘ長調(1902-1903)
シモン・ラクス(1901-1983):
 弦楽四重奏曲第3番
  「ポーランド民謡の主題による」(1945)
シマノフスキSQ
 録音:2008年7月。
 このアルバムは、1900年代初期に音楽の中心都市であったパリ、ウィーンとモスクワの3つの都市を中心に、シマノフスキが影響を受けた作曲家らを取り上げて3枚のCDに収めるプロジェクト。
 シマノフスキは1914年からこれらの都市を含めるヨーロッパ旅行に出かけており、第1弾はシマノフスキがポーランドのザコパネの次に愛した都市でもあるパリ。シマノフスキの「夜想曲とタランテラ」は第一次世界大戦が勃発し、ヨーロッパ旅行を中断しウクライナに戻り作曲活動に没頭していた時期に書かれた作品。ここではM.スコリクによる弦楽四重奏編曲版での演奏。また近年シマノフスキ弦楽四重奏団が母国の作曲家として積極的に演奏しているシモン・ラクス。ラクスはワルシャワ生まれのユダヤ人で、第二次大戦中は、アウシュヴィッツに収容。解放後その後の人生をパリで過ごしている。様々なポーランド民謡を主題とした弦楽四重奏曲第3番を収録。1995年に結成された、シマノフスキの名を冠したポーランドのカルテットによる演奏。
カールローベルト・クライテン〜歴史的録音集
 ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲/間奏曲 変イ長調 Op.76 No.3 [1934年11月]
 ショパン:前奏曲集〔変ロ長調 Op.28 No.21 /変ロ短調 Op.28 No.16 〕/夜想曲 遺作[1934年10月]/
      前奏曲集〔変ロ長調 Op.28 No.21 /変ロ短調 Op.28 No.16 〕[1935年10月]/
 ローベルト・フォルカルト(1896-1953):
  曲名不明作品/ピアノ・ソナタ 嬰ヘ短調 Op.2 /「月は静かに」によるパラフレーズ[1937年-1938年]
 オトマール・シェック(1886-1957):トッカータ Op.29 No.2[1935年10月21日]
 テオ・クライテン(1887-1960):ソナチネ ホ長調[1934年9月25日]
 ヨハン・シュトラウス II /テオ・クライテン編曲:美しく青きドナウ[1938年6月16日]
 ラヴェル:クープランの墓〜トッカータ / ショパン:前奏曲 変ロ短調 Op.28 No.16[1933年]
 *クライテン生誕100周年オマージュ新録音
  トーマス・ブローメンカンプ(1955-):カールローベルト・クライテンの思い出に(*)
  オスカー・ゴットリープ・ブラー(1934-):川沿いの私の町(1987) (*)
  フィリップ・ロジャク(1994-):音〜火〜遺灰(カールローベルト・クライテンへのオマージュ)(**)
  クリスティアン・バナシク(1963-):ピアノとラウドスピーカーのためのベゲーグヌング(出会い)8〜レント(**)

 カールローベルト・クライテン(P;無印)
 トビアス・コッホ(P;*) ウード・ファルクナー(P;#)
 録音:[内](*/#以外)、2016年7月16日(*/#) 。 カールローベルト・クライテン(1916-1943)は、ピアニストとして将来を嘱望されていたが、1943年にナチスの支配下にあったドイツ政府を批判し、27歳の若さで処刑された。2016年はクライテン生誕100周年の記念の年であったため、歴史の研究に熱心なドイツのピアニスト、トビアス・コッホによりこのアルバムが企画され、クライテンの未発表音源、そしてクライテンに捧げられた現代の作曲家の作品を新たに録音し収録したアルバムが制作された。クライテンの音源はドイツのThorofonレーベルに残されていたテープ(同レーベルからLP既出)を使用、新たに録音されたものは、彼の生誕100周年を記念して故郷デュッセルドルフで行われたコンサートからの物。カールローベルト・クライテンは1916年6月26日にボンに生まれ、その後デュッセルドルフで育った。彼のコンサート・デビューは10歳の時、17歳でウィーン国際ピアノ・コンクール第2位、ベルリンのメンデルスゾーン・コンクール優勝と立て続けにコンクールの顔となり、一躍若手ピアニストとして注目を集めることになる。そしてケルン、ウィーンで学んだ後、1937-40年までベルリンでクラウディオ・アラウのもとで研鑽を積んだ。コンサートの出演依頼も多く、BPOとは2度共演している。彼のレパートリーは古典・ロマン派、そしてプロコフィエフ、ストラヴィンスキーを得意としていた。刑務所にいた数カ月間、彼は希望を捨てることなく、木の板に鍵盤を書きその上で練習をしていたと言う。1943年8月には家族に宛こんな手紙を書いている。「外に、もう一度、暖かく美しい天気のもとへ」。クライテンは1943年12月7日、ベルリンのプレッツェンゼー監獄で処刑された。師アラウは彼の死に大きなショックを受け、死後40年経った後にも、最高の弟子のひとりであったと評している。トビアス・コッホはクライテンの演奏についてこのように語っている。「彼の演奏は決して名人芸ではなく、いつもそこに音楽があり、作曲家の意図を明確にする稀有な才能を持っていた。」
シューベルト
 弦楽四重奏曲 ニ短調 D.810「死と乙女」(*)
シュニトケ:弦楽四重奏曲第3番(1983)(#)
アサセッロSQ
 録音:2009年8月、第2ラジオ・スタジオ、ワルシャワ(*)/2009年4月、フィルハーモニー・ホール、ロシア、ライヴ(#)。
 アサセッロ弦楽四重奏団はバーゼルで共に学んでいた学生4人が2000年に結成。数々国際コンクールで優勝している期待のカルテット。既にCAviレーベルからはメンデルスゾーン(4260085-531400)をリリースしており、安定したアンサンブルを聴かせてくれた。ワルシャワでスタジオ録音された「死と乙女」は、第2楽章にシューベルトの同名の歌曲の旋律用いた形式美、旋律美が合わさったドイツ・ロマン派の傑作。アサセッロ弦楽四重奏団は作品の悲劇性を見事に表現した鬼気迫る演奏。また、ロシアでライヴ録音されたシュニトケの弦楽四重奏曲第3番。この作品でシュニトケはベートーヴェンの悲愴ソナタと大フーガの主題を動機として用いている。
ルール・ピアノフェスティヴァル・エディション Vol.20

 CD1-2:シューベルト(1797-1828):ピアノを伴う作品集
  幻想曲 ハ長調Op.15 D.760「さすらい人幻想曲」[ボリス・ブロック(P)]
  ピアノ・ソナタ第15番 ハ長調D.840「レリーク」[マルクス・ベッカー(P)]
  ピアノ・ソナタ第18番 ト長調D.897 Op.78[エレーナ・バシュキーロワ(P)]
  即興曲集Op.90 D.899〜第1番 ハ短調[アンドレアス・シュタイアー(Fp)]
  ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ イ短調Op.137 No.2 D.385
   [ミヒャエル・バレンボイム(Vn) エレーナ・バシュキーロワ(P)]
  ハンガリー風ディヴェルティメント ト短調Op.54 D.818/3つの軍隊行進曲Op.51 D.733
   [デニス・ラッセル・デイヴィス、滑川マキ(P)]
 CD3:現代の室内作品集
  モートン・フェルドマン(1926-1987):ピアノ独奏のための「 Palais de Mari 」
  イェンス・ヨネライト(1968-):ピアノ独奏のための「 In der Höhe / Aloft 」(*)
  ヤン・ミュラー=ヴィーラント(1966-):ピアノ三重奏曲第3番「 Se solen sjunker 」
  マティアス・ピンチャー(1971-):
   声とピアノのための「 Un despertar (Octavio Paz) 」 (*)
    [ジークフリート・マウザー(P/コンセプト) トーマス・バウアー(Br)
     ゴットフリート・シュナイダー(Vn) セバスティアン・ヘス(Vc)]
 録音:2008年、ライヴ。(*)は当音楽祭にて初演された演奏。
 D.バレンボイムとE.バシュキーロワ夫妻の息子で、ヴァイオリニストのミヒャエル・バレンボイムが母と共に参加している。
モーツァルト:大ミサ ハ短調 K.427/レクイエム K.626
 ガブリエーレ・ヒールダイス(S) アリソン・ブラウナー(Ms)
 マークス・ウルマン(T) マルクス・フォルペルト(Br)
  ヨハン・クリスティアン・バッハ・アカデミー(リーダー:インゲボルク・シェーラー)
  フォルカー・ヘンプフリング指揮ケルン聖歌隊
 録音:2006年3月25日、リンブルク大聖堂、ドイツ、ライヴ。
 これまで「詩編」、「ルクス・エテルナ」、「人々の異言、天使たちの異言」といった精選されたプログラム構成で聴衆から高い評判を得、40周年を迎えたドイツの合唱団ケルン聖歌隊によるモーツァルトの2曲。ラーン川沿いの街リンブルクの大聖堂で録音。ロマネスク様式とゴシック様式の過渡期に建設された大聖堂は街のシンボル。素晴らしい音響空間を利用して精妙な美しさ、ハーモニーの豊かさを追求した演奏。
 彼らの次のテーマは「天の光よ」。アルテンベルクの大聖堂の音響の素晴らしさを生かしたプログラムとなっており、彼らの繊細で緻密な声をより一層際立たせている。
ハイドン兄弟:ホルン協奏曲集
 ミヒャエル・ハイドン(?):ホルン協奏曲 ニ長調 MH 53(Hob.VIIB; 4?)
 ミヒャエル・ハイドン:ホルンとトロンボーンのための協奏曲 ニ長調(セレナータ MH 86 より)/
            ホルン小協奏曲 ニ長調 MH 134
 ヨーゼフ・ハイドン:コルノ・ダ・カッチャ協奏曲 ニ長調 Hob.VIId: 3

 プジェミスル・ヴォイタ(Hr) ファブリス・ミリシェル(Tb)
 マルティン・ペトラーク指揮ハイドン・アンサンブル・プラハ
 録音:2017年7月、 Prague Crossroads (St. Anne's Church) 、プラハ。 ヨーゼフ・ハイドンと5つ下の弟ミヒャエル・ハイドン。ヨーゼフは1761年にエステルハージ侯の副楽長となり、ミヒャエルは1763年にザルツブルク大司教の宮廷楽長となり、それぞれオーケストラの腕前を大いに発揮できるさまざまな協奏曲を作曲する。彼らの作品は紛失され、あるいは偽作とみなされ、一体いくつホルン協奏曲を書いたのかも確実なことは分からない。しかしここに残された作品は間違いなく魅力的なものと言って良いだろう。ミュンヘン国際コンクール優勝の経歴を持つプジェミスル・ヴォイタのテクニックにも注目。
J.S.バッハ:ゴルドベルク変奏曲 BWV.988 ステパン・シモニアン(P)
 録音:2017年5月、 NDR ロルフ・リーバーマン・スタジオ。1981年生まれでモスクワのチャイコフスキー音楽院で学び、非常に優れたバッハ弾きとして名を知られているステパン・シモニアン。バッハの最高傑作のひとつ、ゴルトベルクの録音が登場。清楚でくっきりとした響きをベースとした正攻法の演奏ながら、モダーン・ピアノならではの力強いタッチや生き生きとしたアクセントが利いており、安心して楽しみつつ、変奏曲それぞれの新たな魅力も発見できる快演となっている。
ヨセフ・タル(1910-2008):ヴィオラ作品集
 ヴィオラのための組曲(1940) /ヴィオラのためのパースペクティヴ(1996) /
 ヴィオラ・ソナタ(1960) (*) /ヴィオラとピアノのための二重奏曲(1965) (*)
  ハルトムート・ローデ(ヴィオラ) クリスティアン・セイバート(P;*)
 ヨセフ・タルはドイツでヒンデミットに学んだ経歴を持つイスラエルの作曲家。同地における芸術音楽の第一人者とも目されている。
ヘンデル:「アルチーナ」からのアリアと組曲
 [序曲/愛しい人よ、どんなに私が貴方を愛したか話してあげなさい(アルチーナ)/
  組曲/でも足枷をはめられ戻ってきた時には(アルチーナ)/シンフォニア(第3幕)/
  ああ、私の心よ!(アルチーナ)/組曲/ああ!ルッジェーロ、ひどい(アルチーナ)/
  蒼白い亡霊よ(アルチーナ)/組曲/私はもとのままよ(アルチーナ)/
  組曲/私には涙が残されている(アルチーナ)/組曲/私の苦しみを信じて(モルガーナ)]
 クリスティーネ・シェーファー(S)
 ライナー・クスマウル(Vn)音楽監督ベルリン・バロック・ゾリステン
 録音:2008年10月、イエス・キリスト教会、ベルリン。
  知性と気品のソプラノ、クリスティーネ・シェーファーは、ドロットニングホルム宮廷劇場の夏の音楽祭で「アルチーナ」の素晴らしいタイトルロールを歌い、バロック向きの歌手ではないという疑念を払拭した。今回はベルリンの古楽演奏界をリードするベルリン・バロック・ゾリステンと共に、この新録音を作り上げた。ベルンハルト・フォルクは、このプロジェクトに入る前に入念にスコアを研究。そして挑んだ録音は非常に新鮮で刺激的なものであったと、リーダーのライナー・クスマウルは語っている。組曲でもアリア同様多様な楽曲が演奏されるが、なんと言ってもこのCDの聴き所はシェーファーの熱唱だろう。鋭い視点で描き出すアルチーナ像。アルチーナの官能と愛の苦しみを強烈に聴かせる。
 ここに収録されている6つのアリアには人間の感情のすべてが表現されている。アルチーナは、愛した男たちを獣に変えてしまう魔女。恋にうかされて惑わされて、激しく憎しみ、沈思にふけり、脅迫的な怒りを見事表している。またアルチーナの妹のモルガーナのアリア「私の苦しみを信じて」。モルガーナがオロンテに許しを乞い歌うアリアも含まれている。
フランツ・クロンマー(1759-1831):弦楽四重奏曲集
 [ニ短調Op.74-3(*)/イ短調Op.103-3(*)/ヘ長調Op.19-2]
マルコリーニSQ
[イェルク・ブッシュハウス、
 マルクス・ホフマン(Vn)
 シュテファン・シュミット(Va)
 マルティン・フリッツ(Vc)]
 録音:2008年10月(*)、世界初録音。ピリオド楽器使用。
 2009年生誕250周年にあたるフランツ・クロンマーは、ボヘミア生まれ。ウィーンで活躍し、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトと同時代の作曲家。当時高い支持を得ていたクロンマーは数多くの作品を残している。古典派らしい親しみやすく明瞭な音楽ではあるが、美しく愛らしく終始する音楽がクロンマーの特徴。
 モーツァルト:「フィガロの結婚」(弦楽四重奏版)(4260085-530465)でもその鋭い演奏で楽しませてくれたマルコリーニ四重奏団。ドイツ・ケルンを本拠地とするピリオド楽器オーケストラ、コンチェルト・ケルンのメンバーによるカルテット。
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲全集
 [第1番 ニ短調Op.49/第2番 ハ短調Op.66]
トリオ・ジャン・パウル
[エックハルト・ハイリガース(P)
 ウルフ・シュナイダー(Vn)
 マルティン・レール(Vc)]
 録音:2009年1月。
 ヨーロッパ屈指の三重奏団トリオ・ジャン・パウル。1991年設立、1993年第1回大阪国際室内楽コンクール、1995年メルボルン室内楽コンクールで優勝。その後世界各国でコンサートや録音を重ね、大ベテラン・トリオとして活躍している。トリオ名ジャン・パウルは、シューマンへの親近感だけではなく、「詩的な音楽」の追求、作品の神髄を追求する結成当初からの信条を表している。彼らのCAviレーベル第1弾アルバムは、2009年生誕200年を迎えたメンデルスゾーンの2つあるピアノ・トリオを収録。洞察力に溢れた彼らならではの高水準の演奏を聴かせてくれる。
メンデルスゾーン姉弟:弦楽四重奏曲集
 ファニー・ヘンゼル=メンデルスゾーン(1805-1847):
  弦楽四重奏曲 変ホ長調 (1834) (*)
 メンデルスゾーン(1809-1847):弦楽四重奏曲
 [第2番 イ短調Op.13(#)/第1番 変ホ長調Op.12(*)]
アサセッロSQ
 録音:2007年2月(#)/2008年9月(*)、以上改革教会、ブルーメンシュタイン、スイス。
 2000年バーゼルで学んでいた4人がアサセッロQを結成。その後2003年にはアルバン・ベルクQのもとで研鑽を積み、新メンバー、チェロのアンドレアス・ミュラーを迎えスイスで行われた室内楽コンクールで1位を獲得。着実にキャリアを積み、世界各地で行われるコンサートでも高い評価を得ている。ここではメンデルスゾーンと姉ファニー・ヘンゼル=メンデルスゾーンの作品を収録した生誕200年記念アルバムでCAviレーベルから登場。
メンデルスゾーン:チェロとピアノのための作品全集
 チェロ・ソナタ第1番 変ロ長調Op.45/
 チェロとピアノのための協奏的変奏曲 ニ長調Op.17/
 無言歌集
  チェロとピアノのための無言歌 ニ長調Op.109/
 アルバムの綴り/
 チェロ・ソナタ第2番 ニ長調Op.58
ユリアン・シュテッケル(Vc)
パウル・リヴィニウス(P)
録音:2008年10月。
 メンデルスゾーン生誕200年記念を祝してCAviレーベルがチェロとピアノのための作品全集をリリース。
 メンデルスゾーンのチェロ作品は、他の作品に比べると演奏機会は多くはないが、シューマンが賞賛した1番、創作の絶頂期であり豊かな音楽性を持つ2番、生気に満ち、輝くばかりの美しさに溢れた「協奏的変奏曲」、麗しい旋律線がゆるやかに流れる「無言歌」などメンデルスゾーンのメロディアスな音楽がチェロの特性にぴったりと合った美しい曲ばかり。
 演奏はユリアン・シュテッケルとパウル・リヴィニウス。シュテッケルは1982年生まれ。ドイツだけではなく国際的にも中心に注目されている若手チェリストの一人。国際カザルスコンクール、ロストロポーヴィッチ・チェロ国際コンクールなど数々の国際コンクールで賞を獲得。ソリストとして世界的オーケストラと共演する他、シュパヌンゲン音楽祭など室内楽シーンでも活躍中。パウル・リヴィニウスは3 兄弟で結成されたトリオ・リヴィニウスで活動し、室内楽でも定評のあるピアニスト。
メンデルスゾーン(1809-1847):
 ヴァイオリン・ソナタ 全集

 [ヘ長調(1838年; 初稿)/
  ニ短調アダージョ〜アレグロ・モルト
   (1825年頃; フラグメント[断章])/
  ヘ短調Op.4(1825年)/ヘ長調(1820年)]
アンティエ・
 ヴァイトハース(Vn)
ジルケ・アヴェンハウス(P)
 録音:2008年9月、ドイツ放送室内楽ホール、ケルン。
 メンデルスゾーン生誕200年にあたる2009年は、メンデルスゾーンの遺産を発掘、発見、再認識する興味深いアルバムが数多く出てくるだろう。このCDもその一つ。2009年ベーレンライターから出版されたばかりのヴァイオリン・ソナタ ヘ長調初稿版と ニ短調のソナタのフラグメントの世界初録音を含むメンデルスゾーンのヴァイオリン・ソナタ全曲を収録。
 メンデルスゾーンが11歳の時の作品である ヘ長調のソナタ(1838年)は、現在一般的に使われているメニューイン校訂版ではなく、メンデルスゾーン研究の第一人者星野宏美氏が校訂に携わり新たに出版されたベーレンライター版を使用。また ニ短調のソナタのフラグメントを収録。3曲あるソナタとは別に、メンデルスゾーンによる自筆譜の断片が残されていた。それは未完に終わっているが、明るい旋律、創意に満ち、大胆な転調を伴った曲で貴重な作品。
キャシー・クリアー、リサイタル
 ドメニコ・スカルラッティ(1685-1757):
  ソナタ[ト短調 K. 31 /ト長調 K. 124 ]/
 ハイドン(1732-1809):変奏曲 ヘ短調 Hob.XVII: 6
 ショパン(1810-1849):
  夜想曲[第9番 ロ長調 Op.32 No.1 /
      第10番 変イ長調 Op.32 No.2 ]/
  舟歌 嬰へ長調Op.60
 アレクサンデル・ミューレンバッハ(1949-):
  ピアノ独奏のための夜曲
 アンリ・デュティユー(1916-):ピアノ・ソナタ(1948)
キャシー・クリアー(P)
 録音:2007年10月、クララ・ヴィーク講堂、ザントハウゼン、ドイツ。
 小国ルクセンブルク出身の美人ピアニスト、クリアー(1985-/ 公式サイト:http://www.cathykrier.com/)のデビュー盤。1999年にはケルン音楽院へ入学してパーヴェル・ギリロフに学び、同年にはベートーヴェンのト長調協奏曲(第4番?)をカルロ・ヤンス指揮ラトヴィアpo.と録音したという(CDは出ていないようなので、放送用か?)。その後数々の賞を受賞、2005年には生地ルクセンブルクにて、シプリアン・カツァリスとシューマンのピアノ四重奏曲(クララ・シューマンの2台ピアノ用編曲)で共演、2005年にはルール・ピアノ音楽祭にも参加している。今回の演奏曲のうち、聞き慣れない作曲家ミューレンバッハは、彼女と同じルクセンブルクの人。
ピアノの歌〜シルケ・アヴェンハウス
 シューベルト/リスト編:
  愛の使い D.957-1/さすらい人 D.489/
  いらだち D.795-7/セレナード D.889/
  糸を紡ぐグレートヒェン D.118/セレナード D.957-4/
  水の上で歌う D.774/君こそわが憩い D.776
 メンデルスゾーン:無言歌集より(8曲)
  [第3巻 Op.38-3 ホ長調「詩人の竪琴」/第5巻 Op.62-3 ホ短調「葬送行進曲」/
   第3巻 Op.38-5 イ短調「情熱」/第5巻 Op.62-6 イ長調「春の歌」/
   第6巻 Op.67-4 ハ長調「紡ぎ歌」/第6巻 Op.67-2 嬰ヘ短調「失われた幻影」/
   第4巻 Op.53-3 ト短調「胸さわぎ」/第5巻 Op.62-1 ト長調「5月のそよ風」]
シルケ・アヴェンハウス(P)
 録音:2008年12月、2009年3月、バイエルン・スタジオ、ミュンヘン。
 生誕200年を迎えたメンデルスゾーン。シルケ・アヴェンハウスは彼女独自の視点で、この記念の年を祝っている。メンデルスゾーンの代表作の一つ「無言歌集」。「言葉のない歌」であるこの曲集とリスト編曲のシューベルト歌曲集に、描写的音楽や抒情的表現、テンポ、楽想など多くの共通点を見出し、交互に配置することにより、そのコンセプトを強めている。シルケ・アヴェンハウスの力強い表現と流麗な音楽が、個々の曲の美しさを際立たせている。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディション Vol.22
 CD1:マウリシオ・バリーナ(P)[アルゲリッチの秘蔵っ子]
 J.S.バッハ:幻想曲とフーガ BWV542
 シューマン:交響的練習曲 Op.13/アベック変奏曲 Op.1
 リスト:忘れられたワルツ第1番/メフィスト・ワルツ第1番
 リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行
 CD2:サリーム・アブード・アシュカール(P)
 [メータ、バレンボイムに見出されたイスラエルの新星]
 J.S.バッハ:イギリス組曲 BWV807/シューベルト:ピアノ・ソナタ第4番 イ短調D.537
 シェーンベルク:3つのピアノ曲 Op.11/ブラームス:幻想曲集 Op.116
 CD3:ラン・ジア(P)[中国ピアノ界の注目株]
 シューベルト:4つの即興曲 D899/ピアノ・ソナタ第19番 D958/ピアノ・ソナタ第20番 D959
 CD4:モナ=飛鳥・オット(P)[アリス=紗良・オットの妹デビュー?]
 モーツァルト:ロンド K.485/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番 Op.13「悲愴」
 リスト:ヴェネツィアとナポリ/シューベルト:3つの小品 D.946/リスト:スペイン狂詩曲
 CD5:河村尚子(P)[日本が誇る逸材]  シューマン:フモレスケ Op.20/スカルラッテ[代理店記載ママ]:5つのソナタ
 ドビュッシー:ピアノのために/フランク:前奏曲、コラールとフーガ
 CD6:セルゲイ・カスパロフ(P;*) アレクセイ・リュビーモフ(P;#)
    アレクセイ・ゾーエフ(P;+)
 スカルラッティ:5つのソナタ(*)/モーツァルト:ラルゲットとアレグロ(*/#)
 シューマン:カノン形式による3つの練習曲 Op.56(*/#)
 リスト: ハンガリー狂詩曲 Op.15(+)[代理店記載ママ; おそらく第15番]
 ドビュッシー:2つの夜想曲(#/+)
シュパヌンゲン音楽祭 2007〜シャロン・カム
 ヒンデミット:クラリネット四重奏曲(*)
 ドビュッシー:
  クラリネットとピアノのためのラプソディ第1番(#)
 マンフレート・トロヤーン:
  クラリネットとピアノのための舞曲(+)
 プーランク:
  2本のクラリネットのためのソナタ(**)/
  クラリネットとピアノのためのソナタ(##)
シャロン・カム(Cl)
ラルス・フォークト(P;*/#/##)
アンティエ・
 ヴァイトハース(Vn;*)
グスタフ・リヴィニウス(Vc;*)
ポール・リヴィニウス(P;+)
ディームト・
 シュナイダー(Cl;**)
 録音:2007年、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。
 才色兼備のシャロン・カム大活躍!流麗、軽妙かつ芯の強さを感じる美演。指揮者としてお馴染みのマンフレート・トロヤーンの新作を収録。
シュパヌンゲン音楽祭 2007〜ラース・フォークト
 シューマン:ピアノ五重奏曲 Op.44(*)
 エルガー:ピアノ五重奏曲 Op.84(#)
ラルス・フォークト(P)
ラドスラフ・シュルツ(Vn)
タチアナ・マスレンコ(Va)
クリスティアン・
 テツラフ(Vn;*)
グスタフ・
 リヴィニウス(Vc;*)
アンティエ・
 ヴァイトハース(Vn;#)
クラウディオ・ボホルケス(#)
 録音:2007年、シュパヌンゲン音楽祭、ライヴ。
 フォークトが生み出す適度な緊張感。驚異の美音集団が奏でるエルガーの隠れた名曲ピアノ五重奏収録!
ピアノ伴奏版「大地の歌」
 マーラー(1860-1911):大地の歌(ピアノ伴奏版)
ベルンハルト・ベルヒトルト(T)
ヘルミーネ・
 ハーゼルベック(Ms)
マルクス・フォルツェルナー(P)
 録音:2008年7月&9月、グランド・ホテル文化センター、トーブラッハ(ドッビアーコ)、イタリア。2008年 トープラッハ/ドッピアーコ・マーラー音楽祭との共同製作。
 2008年はマーラーが「大地の歌」を作曲してから丁度100周年。当盤は、当曲が作られたマーラーの別荘があったトープラッハ(現・イタリア領ドッピアーコ)で毎年行われるマーラー音楽祭との共同製作。この音楽祭のスケジュール表によれば、2008年7月19日に当曲の演奏があった。9月収録はミス修正用か。「オリジナル・ヴァージョン」と記載されている。
アンティエ・ヴァイトハース
 サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 Op.75
 ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ(遺作)
 フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調Op.13
アンティエ・
 ヴァイトハース(Vn)
ジルケ・アヴェンハウス(P)
 シューベルト(426008-5530052)、ブラームス(426008-5530595)のソナタ・アルバムで、その実力を披露したアンティエ・ヴァイトハース。ジャン=ギアン・ケラス率いる実力派カルテット、アルカント四重奏団のメンバーでもあり、現代ドイツを代表する女流ヴァイオリスニトの一人。今回はフランス・ヴァイオリン・ソナタ集と題し、世界のヴァイオリニスト達が愛好するサン=サーンス、ラヴェル、フォーレを取り上げる。堂々たる姿勢と充実した音楽性で聴かせる秀演。
プロコフィエフ:
 ヴァイオリン・ソナタ
  [第1番 ヘ短調 Op.80/
   第2番 ニ長調 Op.94b]/
 「三つのオレンジの恋」〜行進曲(ハイフェッツ編)/
 「ロメオとジュリエット」〜仮面(ハイフェッツ編)/
 「シンデレラ」〜ワルツ(フィヒテンゴリツ編)
エリック・シューマン(Vn)
ヘンリ・シーグフリードソン(P)
 エリック・シューマンは1982年生まれ、母は日本人でピアニスト、父はデュッセルドルフ・オペラハウスのヴァイオリン奏者という音楽一家で育った新進気鋭のヴァイオリン奏者。4歳よりデュッセルドルフの鈴木メソード、その後、父より手ほどきを受け、9歳よりロシアの大家、ザハール・ブロン教授の下で学ぶ。11歳で全ドイツ学生音楽コンクールにて最年少、最高点で優勝。その後もロシア、ポーランド、ギリシャの国際コンクールで優勝、ロン=ティボー国際コンクール入賞、スイス・シオンの国際ヴァイオリン・コンクールで第2位と輝かしい受賞歴を持っている。12歳でステージ・デビューを飾った時には「天才少年」と評され多くの聴衆を魅了した。その後も世界を舞台に活躍、日本でも度々コンサートを行い高く評価されている。またクリストフ・エッシェンバッハが音楽監督を務めるシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭にソリストとして招かれ大絶賛を受け、以後クリストフ・エッシェンバッハとも度々共演。
 彼の音楽は現代的なさらりとした演奏ではなく、特筆すべき美音と圧倒的な集中力で、若さだけではない真の実力を感じさせるヴァイオリニスト。
アムランのサン=サーンス「協奏曲第5番」&リスト「死の舞踏」!〜
 ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディションVol.18

 ベートーヴェン:序曲「コリオラン」Op.62(*)/合唱幻想曲Op.80(#)
  ヘルベルト・シュッフ(P;#)
  ジョナサン・ダーリントン指揮デュイスブルクpo.(*/#)、
  ドルトムント・コンツェルトハウス・コールアカデミー交響cho.(*/#)
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番 Op.106「ハンマークラヴィーア」(+)
  アレクサンダー・ロンクィッヒ(P;+)
 グルック:精霊の踊り(**)
 サン=サーンス:ピアノ協奏曲第5番 Op.103(##)
 R.シュトラウス:歌劇「サロメ」Op.54〜7枚のヴェールの踊り(**)
 フランツ・リスト:死の舞踏(##)
  マルク=アンドレ・アムラン(P;##) スティーヴン・スローン指揮ボーフムso.(**/##)
 録音:2007年5月12日、デュイスブルク(*/#)/2007年5月25日、ゲルゼンキルヘン(+)/2007年6月30日、デュイスブルク(**/##)。
 2007年に行われたルール・ピアノ・フェスティヴァルからオーケストラとピアノの作品を中心に収録。1979年ルーマニア生まれ、現在ドイツに移住し活躍しているピアニスト、ヘルベルト・シュッフと地元デュイスブルク・フィルハーモニカーによる演奏のベートーヴェンの合唱幻想曲。弱冠16歳でアントニオ・カーサグランデ・ピアノコンクール第1位を獲得し、卓越した技巧と並々ならぬ表現力で各地の音楽祭などに出演しているアレクサンダー・ロンクィッヒによる「ハンマークラヴィーア」。2枚目は言わずと知れたヴィルトゥオーゾピアニスト、マルク=アンドレ・アムランによるサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番とリストの死の舞踏。アムランの華麗な妙技が炸裂している。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディションVol.17
 ベートーヴェン:
  ピアノ・ソナタ第4番 Op.7/
  パウル・ウラニツキーのバレエ「森の娘」のロシア舞踊による12の変奏曲 WoO.71
   [アレクサンダー・ロンクィッヒ(P)/2007年6月25日]/
  ピアノ・ソナタ第10番 Op.14-2[イリーナ・ザッハレンコヴァ(P)/2007年7月8日]/
  ピアノ・ソナタ第25番 Op.79/
  バガテル Op.119より[第3番 ニ長調/第6番 ト長調/第7番 ハ長調/
             第10番 イ長調/第11番 変ロ長調]/
       Op.126〜第6番 変ホ長調
 ハイドン:ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI:49
  [タマラ・ステファノヴィッチ(P)/2007年6月21日]
 シューマン:3つの幻想小曲集 Op.111[ベン・キム(P)/2007年7月7日]
 ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
  [キム・ソンウク(P)/2007年7月8日]
 メトネル:忘れられた調べ第1集〜回想ソナタ Op.38-1
  [オルガ・シェプス(P)/2007年5月24日]
 アルフレッド・カセッラ:スカルラッティアーナ Op.45(2台ピアノのための編曲)
  [ヤアラ・タール、アンドレアス・グロートホイゼン(P)/2007年6月19日]
 チェン・イ(1953-):2台のピアノのための組曲「チャイナ・ウエスト」(世界初演)
  [滑川真希、デニス=ラッセル・デイヴィス(P)/2007年6月4日]
 ヤン・ミューラー=ヴィーラント(1966-):
  ピアノのための6つの変奏「黒から白への離脱」(世界初演)
  [タマラ・ステファノヴィッチ(P)/2007年6月21日]
 カイヤ・サーリアホ(1952-):前奏曲(世界初演)/バラード(ドイツ初演)
  [ローランド・ペンティネン(P)/2007年7月2日]
 ウィルヘルム・キルマイヤー(1927-):エドゥアルト・メーリケの詩による歌曲集
 ヴォルフガング・リーム(1952-):ゲーテ歌曲集(世界初演)
  [クリストフ・プレガルディエン(T) ジークフリート・モーゼル(P)/
   2007年6月3日]
4260085-531004
(14CD)
廃盤
シュパヌンゲン音楽祭10年の歩み(1999年〜2006年、ライヴ録音集)
シュパヌンゲン音楽祭ライヴ
 シューベルト:
  ピアノ・トリオ第1番 変ロ長調 D898(*)/
  「しぼめる花」の主題による
   序奏と変奏曲 D.802(#)
ラルス・フォークト(P;*)
アンティエ・
 ヴァイトハース(Vn;*)
ターニャ・テツラフ(Vc;*)
キアーラ・トネッリ(Fl;#)
ジルケ・
 アヴェンハウス(P;#)
 録音:2006年(*)/2005年(#)。
 ラルス・フォークトの主宰する室内楽音楽祭、シュパヌンゲン音楽祭のライヴ・シリーズ。毎年開催されるこの音楽祭は、2007年で10周年を迎え、出演者同士の親密さも一層増し音楽にもその雰囲気が濃く反映されている。シューベルトのトリオでは深い情感が体中に溢れ出るようなハーモニーを聴かせている。またシューベルト唯一のフルートのオリジナル作品「しぼめる花」の主題による序奏と変奏曲は、『美しき水車小屋の娘』の曲中の「しぼめる花」のモチーフを変奏した作品でフルート奏者には高い技巧を要求される。
シューベルト:
 ピアノ・ソナタ 変ロ長調 D.960/3つの小品 D.946
ラルス・フォークト(P)
 ラルス・フォークトは1970年ドイツ生まれ。1990年リーズ国際コンクールで第2位を獲得。以来、世界各地で演奏活動を行い、各国の名オーケストラと共演。サイモン・ラトルをはじめ多くの指揮者、共演者から高い評価を受けているピアニスト。また彼の主宰する室内楽音楽祭、シュパヌンゲン音楽祭も毎年多くの一流アーティストたちが参加しCDも定期的に発売されている。彼はこれまでEMI専属演奏家として録音してきたが、彼も信頼するアンドレアス・フォン・イムホフ氏が主催するCAvi-musicレーベルへ移籍し、今後録音活動を行なう。第1弾はシューベルト。1音1音丁寧に歌い上げた感情豊かな演奏で、じわじわと心に染み入る感動的な音楽を聴かせてくれる。考え抜かれた音楽に豊かなニュアンス、細部まで磨き込まれた完成度の高い演奏。名演も名録音も多くある作品だが、フォークトの演奏は一聴の価値あり!
4260085-530885
(9CD)
廃盤
ルール・ピアノフェスティヴァル・エディション Vol.19
ルール・ピアノフェスティヴァル・エディション〜
 ベートーヴェン/ツェムリンスキー編曲:
  歌劇「フィデリオ」(ピアノ4手版)

 序曲
 第1幕
  第1曲(二重唱)ようやく、二人きりになったね
  第2曲(アリア)もしあなたと一緒になれて
  第3曲(四重唱)何という不思議な気持ちだろう
  第4曲(アリア)やはりお金がなければ
  第5曲(三重唱)それは結構だ/第6曲行進曲
  第7曲(アリアと合唱)うむ!何とよい機会だ!
  第8曲(二重唱)さあ、急ぐのだ!
  第9曲(レチタティーヴォとアリア)
       非道の者よ!どこへ急いで行くのか?
  第10曲(フィナーレ)ああ、何という嬉しさ
  第10曲(フィナーレ)うまくいったか?)
 第2幕
  第11曲(導入曲とアリア)
       神よ!ここは何という暗さだ!
  第12曲(メロドラマと二重唱)
       地下のあなぐらの何と寒いことよ(*)
  第13曲(三重唱)お前たちの報酬は
  第14曲(四重唱)あいつは死ぬのだ!
  第15曲(二重唱)ああ、えもいわれぬ喜び!
  第16曲(フィナーレ)この日に祝福あれ!
  第16曲(フィナーレ)
       王様の恵み深き思し召しにより
  第16曲(フィナーレ)
       おお、神様、何と言う瞬間だろう
  第16曲(フィナーレ)やさしき妻を持つものは)
滑川真希、
デニス=ラッセル・
 デイヴィス(P)
ヴァルトラウト・マイヤー
(語り手;レオノーレ;*)
クルト・モル
(語り手;ロッコ;*)
 録音:2007年4月。
 「魔笛」(4260085-553019)に続く滑川真希&デニス=ラッセル・デイヴィスのデュオによる「フィデリオ」の4手版。息の合った4手の紡ぎ出す多彩な演奏が際立つ一枚。
 ツェムリンスキーは1902年4月に完成したこの「フィデリオ」の4手ピアノ版を始めとして、1902年夏に「魔笛」、ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」、ロルツィングの「ロシア皇帝と船大工」、そしてハイドンやメンデルスゾーンのオラトリオ、シューマンの「ペリと楽園」までもピアノ4手に編曲。これらの編曲は気軽にオペラの名旋律を楽しむことが出来る。
 滑川真希&デニス=ラッセル・デイヴィスのデュオは2003年に結成、リンツで開催されている世界最大の電子芸術祭「アルス・エレクトロニカ」に参加し大成功を収め、デュオの続行を決心。その後ルールを始め多くのフェスティヴァルに参加し注目を集めている。また世界的な劇場で喝采を浴びてきたワルトラウト・マイヤーとクルト・モルが舞台さながらの語りを披露している。
ターニャ・テツラフ
 シベリウス:メランコリー Op.21
 グリーグ:チェロ・ソナタ
 ラフマニノフ:チェロ・ソナタ Op.19
ターニャ・テツラフ(Vc)
グニッラ・シュスマン(P)
 録音:2005年。クリスティアン・テツラフの妹ターニャ・テツラフとノルウェー人の若手ピアニスト、グニッラ・シュスマンによるチェロ・ソナタ集。
 2007年はグリーグ没後100年、シベリウス没後50年の年で北欧三昧。比較的初期の作品の一つシベリウスのメランコリーは、チフスのため早逝した末娘を悼み作曲され、深い悲しみと行き場のない感情が入り混じった作品。ターニャ・テツラフが心の葛藤を上手く描き出し、悲哀感たっぷりに演奏している。またグリーグ唯一のチェロのための作品ソナタは北欧の独特の空気感を盛り込んだ美しい作品。艶やかな音色が曲にぴったりとフィットしている。2枚目のラフマニノフもチェロの大曲だが、余裕のあるたっぷりとした音でラフマニノフ節を聴かせている。
グレイト・ブリテン、グレイト・ミュージック
 ブリッジ:弦楽六重奏曲 変ホ長調 H.107
 ホルスト:弦楽六重奏のためのスケルツォ(*)
 ホルブルック:
  弦楽六重奏曲 ニ長調「ヘンリー・ヴォーン」 Op.43
ケルン六重奏団
 録音:2018年3月-4月|(*):世界初録音。弦楽六重奏というジャンルはあまりメジャーでなく、イギリスの作品でまとまったアルバムはさらに珍しいと言える。どれも美しいメロディを持ちながら手の込んだ和声が使われ絶妙に複雑な色合いが魅力となっている。ホルストの「スケルツォ」は世界初録音となっており注目に値する。王立音楽院時代の1897年に書かれたもので、手稿譜のみが現存している9分ほどの作品。しっかりした構成を持ち、各パートが絡み合う充実した書法が魅力。
...o sink hernieder, Nacht der Liebe
 シューベルト:ノットゥルノ 変ホ長調 D.897 / ショパン:ピアノ三重奏曲 ト短調 Op.8
 *曲間・楽章間に以下の詩作朗読を挿入
  インゲボルク・バッハマン: Erklar ' mir Liebe / ライナー・マリア・リルケ: Die Liebenden / Liebes-Lied
  エルゼ・ラスカー=シューラー:
   Fortissimo / Die Liebe / Ouverture / Mein Tanzlied / Als ich Tristan kennen lernte /
   An den Gralprinzen / An den Prinzen Tristan / An den Ritter aus Gold / An Tristan /
   Abschied / Was hat die Lieb mit der Saison zu tun
  ゴットフリート・ベン:
   Liebe / Noch einmal / Auf deine Lider senk'ich Schlummer / Rosen / Madonna / Bitte wo
  ウィリアム・シェイクスピア: Sonett 23 / Sonett 43 / Sonett 56 / ベルトルト・ブレヒト: Die Liebenden

 ファイニンガー・トリオ カタリナ・タールバッハ(朗読)
 録音:2016年。「愛と死」をテーマとした詩の朗読に、イメージの近いシューベルトとショパンの作品を絡めたアルバム。ライヴでもこのようなコンサートを行っており、カタリナ・タールバッハはドイツの有名な女優。
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集
 [第25番 ト長調 K301/第26番 変ホ長調 K302/
  第27番 ハ長調 K303/第28番 ホ短調 K304/
  第29番 イ長調 K305/第41番 変ホ長調 K481/
  第24番 ハ長調 K296/第30番 ニ長調 K306/
  第35番 ト長調 K379/変奏曲 K359/
  第34番 変ロ長調 K378/変奏曲 K360/
  第36番 変ホ長調 K380/
  第40番 変ロ長調 K454/第42番 イ長調 K526/
  第37番 イ長調 K402/第38番 ハ短調 K403/
  第43番 ヘ長調 K547/第32番 ヘ長調 K376/
  第33番 ヘ長調 K377]
スザンネ・
 ラーベンシュラーク(Vn)
ハテム・ナディム(P)
 スザンネ・ラーベンシュラークはヴェルディ弦楽四重奏団を設立後、アマデウスQ、メロスQ、ショスタコーヴィチQ、に学び、2001年からエジプト出身のピアニスト、ハテム・ナディムとデュオを組み積極的に活動をしている。ソロ活動とヴェルディ弦楽四重奏団の双方でマスタークラスを開設し、マンマイムの音楽学校で教鞭をとり後進の指導にも力を入れている。またラーベンシュラークとナディムはこのモーツァルトの録音後、ベートーヴェンのソナタ全集やドイツ・ロマン派の作品なども録音予定。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディションVol.14〜
 モーツァルト作品集、変奏曲集、現代ピアノ作品集

 モーツァルト:4手のためのピアノ・ソナタ ハ短調 KV.19d
 [ジークフリート・マウザー、クリスティアン・シャモレル(P)/2006年7月23日]
 モーツァルト:グルック「メッカの巡礼」の「愚かな民が思うには」による10つの変奏曲 ト長調 KV455
 [ジュゼッペ・アンダローロ(P)/2006年5月26日]
 モーツァルト:サルティの「仔羊のように」による8つの変奏曲 イ長調 KV460
 [キム・ソンウク(P)/2006年5月26日]
 モーツァルト:クラリネット三重奏曲 変ホ長調 KV498「ケーゲルシュタット・トリオ」
 [エレーナ・バシュキロワ(P) マティアス・グランダー(Cl)
  フェリクス・シュヴァルツ(Va)/2006年6月3日]
 モーツァルト/フンメル編曲:ピアノ協奏曲「戴冠式」第26番 ニ長調 KV537
 [セヴェリン・フォン・エッカートシュタイン(P) アンドレア・リーバークネヒト(Fl)
  アンドレィ・ビーロウ(Vn) ニコラス・アルシュターツ(Vc)/2006年8月2日]
 ベートーヴェン: 32の変奏曲 ハ短調 WoO.80[ジュゼッペ・アーノルド(P)/2006年5月26日]
 シューマン:アベック変奏曲 Op.1[ヘルベルト・シュフ(P)/2006年5月27日]
 メンデルスゾーン:厳格なる変奏曲 ニ短調 Op.54[ロバート・レヴィン(P)/2006年7月27日]
 フランク:前奏曲、フーガと変奏曲 Op.18[ジュゼッペ・アーノルド(P)/2006年5月26日]
 ラフマノノフ:ショパンの主題による変奏曲 Op.22
 [ウラジミール・フレストフ(P)/2006年8月17日]
 ローゼンブラット:パガニーニの主題による変奏曲[ニコライ・トカレフ(P)/2006年7月15日]
 ハリソン・バートウィッスル:チェロとピアノのための
 [ティル・フェルナー(P) エイドリアン・ブレンデル(Vc)/2006年8月9日]
 J.ハービソン:ソナタ第2番[ロバート・レヴィン(P)/2006年7月27日]
 タチアナ・コマロヴァ:主題と7つの変奏曲[ラルス・フォークト(P)/2006年8月15日]
 クシシトフ・メイエル:自動ピアノのための作品〜サン=スーシの思い出(世界初演)
 シュテッフェン・シュライエルマッヒャー:2つの自動ピアノのための作品(世界初演)
 [以上2曲、ユルゲン・ホッカー(P)/2006年6月5日]
 ヴォルフガング・リーム:トンボー第5番[ベルンハルト・ヴァンバッハ(P)/2006年6月8日]
 エリオット・カータ:断続
 ダウランド/W.バード編:涙のパヴァーヌ[以上2曲、ピーター・ゼルキン(P)/2006年5月25日]
 ドイツの「ルール」地方で毎年行われるルール・ピアノフェスティヴァル・エディション。これまで名前や評判だけを耳にして演奏を聴く機会のなかったピアニストなどピアノ好き必聴。作品もバッハから現代までと幅広く飽きのこない内容。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル
 ・エディションVol.13

 モーツァルト(フンメル編曲室内楽版):
  ピアノ協奏曲第25番(*)/同第24番(*)
 シューベルト:楽興の時 Op94 D.780(#)
 ラヴェル:鏡(#)
 プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第6番(#)
セフェリン・フォン・
 エッカルトシュタイン(P)
アンドレア・
 リーバークネヒト(Fl)
アンドレイ・ビエロフ(Vn)
ニコラス・アルシュターツ(Vc)
 録音:2006年8月2日(*)、2006年9月3-5日(#)。
 エッカルトシュタインは1978年デュッセルドルフ生まれ、2003年のエリーザベト王妃国際コンクールの優勝者。
 フンメル編曲室内楽版は、各楽器の響きを重点に置いた非常にバランスのとれたアンサンブルに、エッカルトシュタインのスタイリッシュな音楽性がプラスされた鮮やかな演奏。エッカルトシュタインは2枚目の独奏曲でも鋭敏な演奏を披露している。
シューマンとドイツ・ロマン派文学、音楽と語り〜シューマン
 アベック変奏曲 Op.1/ダヴィッド同盟舞曲集 Op.6/謝肉祭 Op.9/幻想小曲集 Op.12/
 交響的練習曲 Op.13/子供の情景 Op.15/クライスレリアーナOp.16/ソナタ ト短調 Op.22/
 ウィーンの謝肉祭の道化 Op.26/子どものためのアルバムOp.68/森の情景 Op.82 より(全て抜粋)、
 ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ、ノヴァリス、E.T.A.ホフマン、シューマン、ジャン・パウル、
 ヴィルヘルム・ハインリヒ・ヴァッケンローダー、ルートヴィヒ・ティークによる詩(朗読)

  シェイラ・アーノルド(P) ベルント・ハーン(語り)
 詩の朗読とピアノ作品1曲づつを交互に収録。曲単位での抜粋収録ですのでご注意下さい。
ヴィヴァルディ:
 2つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲 ニ短調 RV565/
 ヴァイオリンと2つのチェロのための協奏曲 ハ長調 RV561/
 4つのヴァイオリンのための協奏曲 変ロ長調 RV553/
 2本のヴァイオリンのための協奏曲 イ短調 RV522/
 チェロ協奏曲 ト長調 RV413/
 4つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲 RV580/
 弦楽のための協奏曲 ト短調 RV156
ベルリン・バロック・ン  ゾリステン
[ライナー・クスマウル
 (Vn/音楽監督)
 リューディガー・
  リーバーマン、
 町田琴和、
 ベルンハルト・フォルック、
 ゼバスティアン・ヘーシュ、
 ライマー・オルロフスキー、
 クリストフ・シュトロイリ、
 ゾルタン・アルマジ(Vn)
 ターニャ・クリスト、
 ヴァルター・キュッスナー、
 エルンスト・マルティン・
  シュミット(Va)
 ゲオルク・ファウスト、
 クリスティン・フォン・
  デル・ゲッツ(Vc)
 クラウス・シュトール(Cb)
 ラファエル・
  アルパーマン(Cemb)
 ビョルン・コレル
 (アーチリュート)]
 録音:2007年1月-2月、イエス・キリスト教会、ベルリン。
 1995年BPOの首席弦楽器奏者たちによって結成された弦楽アンサンブル、ベルリン・バロック・ゾリステン。1993年から1998年までBPOの首席コンサートマスターを務めた、リーダーのライナー・クスマウルなど、BPO最強のソリスト陣が鮮やかな演奏を披露する。彼らは愛用の名器にガット弦を張り、バロック弓を駆使して独自の観点でアプローチしている。メリハリの利いた演奏で、個々の表現力の高さ、完成されたアンサンブルに魅了される。また録音会場はBPOの旧録音会場でいくつもの名演を生んだイエス・キリスト教会で行われ、伝統の響きを堪能出来る。
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 全集
 [第1番/第2番/第3番]/
 スケルツォ WoO.2
アンティエ・
 ヴァイトハース(Vn)
ジルケ・アヴェンハウス(P)
 録音:2006年12月。
 アンティエ・ヴァイトハースとジルケ・アヴェンハウスによるシューベル作品集(4260085-530052)に続くアルバム。
 ブラームスの音楽を愛してやまないこの2人。非常に雄弁で歌心に満ちた演奏で、ブラームスの旋律美を深く温かく弾きあげている。自身の歌曲「雨の歌」の旋律を主題にした第1番の第3楽章。2人の熱いブラームスへの思いが感動的な演奏を生んでいる。また第2番の第1楽章は湧き上がる美しい旋律を、優しく包み込むようにヴァイトハースが奏でると、アヴェンハウスがきゅっと引き締まったピアノで音楽の流れを作り、詩情豊かでありながらも、あくまでも自然な演奏を聴かせる。決して技巧に頼ることなく心で演奏されたブラームスに心を撃たれる1枚。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディションVol.15
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「月光」
 ショパン:ロンド Op.1
 リスト:バッハのカンタータ「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」
      と ロ短調ミサ曲の「十字架につけられ」に通奏低音による変奏曲
 ショスタコーヴィチ:24の前奏曲 Op.34
 ベートーヴェン:ロンド・ア・カプリッチョ(なくした小銭への怒り)Op.129/
          サリエリ「ファルスタッフ」のアリア「まさにその通り」の主題による10の変奏曲 WoO.73
 ショパン:ポロネーズ 嬰ト短調/2つのポロネーズ Op.26-1
 ラフマニノフ:プレリュード第5番/同第7番
  [ドミトリー・バシキーロフ(P) デイヴィッド・カドーシュ(P)]  ヘルムート・ラッヘンマン:シューベルトの主題による5つの変奏
 シューベルト:即興曲第1番/即興曲第3番
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」
 シューマン:ユモレスク Op.20
  [ヘルベルト・シュフ(P)]
 J.S.バッハ:パルティータ BWV828
 ブーレーズ:12のノタシオン(ピアノのための)
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第7番
  [ダヴィド・フレイ(P)]
 モーツァルト/ロバート・レヴィン:レクチャーI、II
  [ロバート・レヴィン(P)]
 H.W.ヘンツェ:
  2台ピアノのための侵略ピアニスチカ/夜のセレナーデ/「ルーシー・エスコット」変奏曲(1963)/
  子供のためのオペラ「ポッリチーノ」(1980)〜若いピアニストのための6つの小品/
  トッカータ・ミスティカ(1994)/トリスタン(2003)/
  ピアノ、ヴァイオリンとチェロのためのソナタ(1948/1963)/アダージョ、アダージョ(1993)/
  [ジークフリート・モーゼル(P) クリスティアン・シャモレル(P)
   ゴットフリート・シュナイダー(Vn) セバスティアン・ヘス(Vn)]
 ショパン:幻想ポロネーズ Op.61/ドン・ジョヴァンニ「お手をどうぞ」の主題による変奏曲 Op.2/
       スケルツォ第2番 Op.31/華麗なる大円舞曲 Op.18
 ラフマニノフ:メロディ Op.3-3/ユモレスク Op.10-5/舟歌 Op.10-3/前奏曲 Op.32-5/ン          前奏曲 Op.32-12 1/練習曲集「音の絵」Op.33-6
 バッハ/ラフマニノフ編:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番より[プレリュード/ガヴォット/ジグ]
  [ウラディミール・ハーリン(P)]
 ドイツの「ルール」地方で毎年行われるルール・ピアノフェスティヴァル・エディション。これまで名前や評判だけを耳にして演奏を聴く機会のなかったピアニストなどピアノ好き必聴。作品もバッハから現代までと幅広く飽きのこない内容。
人々の異言、天使たちの異言(全15曲)
 メンデルスゾーン/フィリップ・ニコライ:栄光の賛歌が、歌われるように
 ズデニェク・ルカーシュ:混声のためのレクイエム〜サンクトゥス
 H.ディストラー:宗教合唱曲集〜目覚めよ、と我等に呼ばわる物見等の声
 エリック・ウィテカー:ルクス・アルムクエ
 クヌート・ニューステット:私はあなたたちに平和を残し/他
  フォルカー・ヘンプフリング指揮ケルン聖歌隊
シュパヌンゲン音楽祭 2005〜ブラームス
 ブラームス(1833-1897):
  ピアノ五重奏曲 ヘ短調Op.34(*)/
  弦楽六重奏曲第2番 ト長調Op.36(#)
ラルス・フォークト(P;*)
クリスティアン・テツラフ(Vn;*/#)
ヴェロニカ・エバール(Vn;*)
ハンナ・ヴァインマイスタ-(Va;*/#)
ユリアン・ステッケル(Vc;*/#)
イザベル・ファウスト(Vn;#)
ステファン・フェーラント(Va;#)
グスタフ・リヴィニウス(Vc;#)
 イザベル・ファウストも参加!豪華メンバーで繰り広げられる華麗なアンサンブル。
ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 Op.5
クララ・シューマン:ロマンス 変ロ短調
ブラームス:4つの小品 Op.119
シェイラ・アーノルド(P)
 録音:2004年9月27-30日。
 このアルバムは、ブラームスとクララ・シューマンの関係を2人の作品を通して描き出している。クララ・シューマンの「ロマンス」は、ブラームスに贈った作品。この作品の主題はブラームスのピアノ・ソナタ第3番の第4楽章からとられている。静かで切ない旋律から始まるこの曲は、力強く、スケールの大きいブラームスのソナタと聴き比べると優しく繊細さに溢れている。ブラームスの4つの小品は、3つの間奏曲と狂詩曲からなる作品で苦悩と憂いに満ちており、クララはこの作品を「灰色の真珠のように貴重な曲」と語っているほど。
 シェイラ・アーノルドは南インドのティルチラパリで生まれドイツ育ち。世界で最も人気のあるピアノ指導者の一人カール=ハインツ・ケマーリングやハイジ・ケーラーに師事。第12回スペイン「ホセ・イトゥルビ」"国際ピアノコンクール入賞など、ドイツを中心に活躍している女流。
レーガー:
 クラリネット五重奏曲 イ長調 Op.146
モーツァルト:
 クラリネット五重奏 イ長調 K.581
ヴォルフガング・マイヤー(Cl)
カルミナSQ
[マティアス・エンデルレ、
 スザンヌ・フランク(Vn)
 ウェンディ・
  チャンプニー(Va)
 シュテファン・
  ゲルナー(Vc)]
 録音:2006年6月。
 1984年スイス、チューリヒにて結成され、現在の室内楽界を牽引する正統派カルテットとして活躍を続けているカルミナQと、ヴォルフガング・マイヤーによるモーツァルトの名作クラリネット五重奏曲。妹のザビーネはモーツァルトの五重奏を3回録音。ヴォルフガング・マイヤーは妹の存在感に隠れがちだが、この演奏はまさに天国的な音楽と言っても良いだろう。音楽への集中力、息の合ったアンサンブル、柔和な音色、自然で自由な流れ。上質なアンサンブルを聴かせてくれる。ブラームスとカップリングされることの多いモーツァルトのクラリネット五重奏だが、このアルバムではレーガーを収録。レーガーはブラームスのクラリネット五重奏に触発されて作曲、2つの偉大な作品に劣らず充実した最晩年の作品。
モーツァルト:
 「フィガロの結婚」弦楽四重奏版

 (編曲者不詳;1799年)
マルコリーニSQ四重奏団
[イェルク・ブッシュハウス、
 マルクス・ホフマン(Vn)
 シュテファン・
  シュミット(Va)
 マルティン・
  フリッツ(Vc)]
 録音:2006年。ピリオド楽器使用。
 古楽オケとして世界的に名高いコンチェルト・ケルンのメンバーによるカルテット、マルコリーニ四重奏団による「フィガロの結婚」弦楽四重奏版。「フィガロの結婚」の中の誰もが知っている序曲やアリアを弦楽四重奏にアレンジされた作品。マルコリーニ四重奏団の自由な発想で聴いて楽しめるオペラを実現している。
シュパヌンゲン音楽祭 2005〜モーツァルト
 モーツァルト(1797-1828):
  弦楽五重奏曲第3番 ハ長調 K.515(*)/
  ホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407(#)/
  フルート四重奏曲第1番 ニ長調 K.285(+)/
  オーボエ四重奏曲 ヘ長調 K.370(**)
クリスティアン・テツラフ(Vn;*)
プリヤ・ミッチェル(Vn;*/**)
ハンナ・ヴァインマイスタ-(Va;*)
ステファン・フェーラント(Va;*/#/+)
ユリアン・ステッケル(Vc;*/#/**)
シュテファン・ドール(Hr;#)
フローリアン・ドンダラー(Vn;#)
クシストフ・ホジェルスキー(Va;#)
キアラ・トネッリ(Fl;+)
エリザベス・クフェラス(Vn;+)
石坂団十郎(Vc;+)
フランソワ・ルルー(Ob;**)
シストフ・ホジェルスキー(Va;**)
 録音:2005年6月6日(*)、2005年6月7日(#)、2005年6月11日(+)、2005年6月12日(+)、以上ハイムバッハ、ライヴ。
 クリスティアン・テツラフ、フランソワ・ルルー、石坂団十郎、多彩なメンバーによるモーツァルト室内楽曲集。
シュパヌンゲン音楽祭 2005〜シューベルト
 シューベルト(1797-1828):
  ピアノ三重奏第2番 変ホ長調 D.929Op.100
ラルス・フォークト(P)
クリスティアン・テツラフ(Vn)
ターニャ・テルラフ(Vc)
 録音:2005年6月7日、ハイムバッハ、ライヴ。
 ラルス・フォークトが芸術監督を務めるシュパヌンゲン音楽祭は、室内楽をこよなく愛する人々によってケルン近郊のハイムバッハで毎年開催される質の高い音楽祭。特に第2楽章が、絶妙なバランスと美妙な音で奏でられ、秀美。
アムランら有名ピアニストが参加、
 ルール・ピアノ・フェスティヴァル・エディション Vol.1-8

 CD1;1997年音楽祭の記録
  マリア・シマノフスカ:ポロネーズ舞曲 ロ短調
    シューベルト:ワルツ ロ短調 Op.18[エルズビエタ・ヴィエドネル・ザヨツ(1978-)]
  シューベルト/リスト編:
   「ウィーンの夜会」S.427〜ヴァルス・カプリース第6番/セレナード/魔王
    [ベルント・グレムザー]
  リスト:巡礼の年「イタリア」〜ペトラルカのソネット第47番&第104番[マルクス・グロー]
  フォーレ:舟歌第3番 変ト長調 Op.42/ショパン:バラード第1番&第2番
    [マルク=アンドレ・アムラン]
  ドビュッシー:映像第2集より[葉ずえを渡る鐘/荒れた寺にかかる月/金色の魚]
    [マリス・ゴトーニ(1979-;ラルフ・ゴトーニの息子)]
 CD2;1998年音楽祭の記録
  J.S.バッハ:フーガの技法〜コントラプンクトゥスIV、IX[ジャンルカ・カシオーリ]
  モーツァルト:アダージョ ロ短調 K.540[ハイドルン・ホルトマン]
  チェルニー:美しいウィーンのワルツによる変奏曲 Op.12
  タウジヒ:新ウィーンの夜会[フランソワ・ジョエル・ティオリエ]
  シューマン:森の情景 Op.82より[森の入口で/待ち伏せる狩人」
   [デルフィン・バーディン]
  リスト:バラード第2番/ラフマニノフ:前奏曲 ト長調 Op.32-5
  ショパン:幻想即興曲/華麗なるワルツ 変イ長調 Op.42[ボリス・ブロッホ]
  ショパン:ノクターン 嬰ヘ短調 Op.48-2/練習曲[Op.10-7, 8, 12「革命」]
   [イーゴリ・チェトゥーエフ]
 CD3;1999年音楽祭の記録
  シューベルト:3つのピアノ曲 D.946第2番 変ホ長調[マルク・ラフォレ]
  ショパン:ワルツ 変イ長調 Op.34-1/スケルツォ第1番 ロ短調 Op.20[マイケル・ポンティ]
  シューマン:幻想的小曲 Op.111-2 変イ長調[クレール=マリ・ル・ゲ]
  リスト:ハンガリー狂詩曲第2番 嬰ハ短調
  J.シュトラウス:アンネン・ポルカ Op.117
   [エドゥアルト&ヨハネス・クトロヴァッツ]
  ステュアート・グッドイヤー:ピアノ・ソナタ第1番 変ホ短調
   [ステュアート・グッドイヤー]
  リスト:2つの演奏会用練習曲〜第2番小人の踊り
   [フェルッチョ・ブゾーニ(P−R/アンピコ・ロール No.51364)]
  ショパン:練習曲 Op.25-6[ローゼンタール(P−R/アンピコ・ロール No.62961)]
  ショパン:練習曲 Op.25-9[ミッシャ・レヴィツキ(P−R/アンピコ・ロール No.57702)]
 CD4;2000年音楽祭の記録
  D.スカルラッティ:ソナタ ヘ短調 K.466/ソナタ 変ロ長調 K.551[フィリッポ・ガンバ]
  ハイドン:ソナタ ハ長調 Hob. XVI:50/ベートーヴェン:エロイカ変奏曲 Op.35
  ドビュッシー:前奏曲第10番「カノープ」[セドリック ティベルギアン]
  ビゼー:組曲「子供の遊び」〜ギャロップ「舞踏会」Op.22-12
   [ヤアラ・タール、アンドレアス・グロートホイゼン]
  ラフマニノフ:前奏曲 嬰ト短調 Op.32-12
  ブラームス:ワルツ 変イ長調 Op.39-15
  ウェーバー:「舞踏への勧誘」Op.65[マティアス・キルシュネライト]
  ヴォルフガング・ダウナー:南回帰線[ヴォルフガング・ダウナー]
 CD5;2001年音楽祭の記録
  ベートーヴェン:幻想曲 ロ長調 Op.77[ゴットリープ・ヴァリッシュ]
  メンデルスゾーン:無言歌集 Op.67-2 嬰ヘ短調/Op.85-4 ニ長調
   [ニコライ・ルガンスキー]
  ブラームス:ラプソディ ロ短調 Op.79-1[ジャスミンカ・スタンチュール]
  ブラームス:4手ピアノのための「愛の歌、ワルツ」 Op.52
   [ブリジット・エンゲラー、ボリス・ベレゾフスキー]
  リスト:ハンガリー狂詩曲第6番 変ロ長調
  スクリャービン:前奏曲[Nos.1, 9, 3, 12, 15]
  バルトーク:舞踏組曲 Sz.77[アレッシオ・バックス]
  エルネスト・レクオーナ:キューバ舞曲/アンダルシア舞曲
   [クリスティーナ・ペゴラーロ]
 CD6;2002年音楽祭の記録
  バーバー:夜想曲 ロ長調 Op.33
  ラモー:クラヴサン曲集〜プレリュード、ガヴォット[ツィモン・バルト]
  クレメンティ:ソナタ第5番 嬰ヘ短調 Op.25[ドレル・ゴラン]
  ベートーヴェン:ソナタ第5番 ハ短調 Op.10-1[ジョナサン・ジラード]
  シューベルト:3つの小品第1番 D.946[ニコラウス・ラフゼン]
  メンデルスゾーン:厳格な変奏曲 Op.54[トーマス・ドゥイス]
  リスト:スペイン狂詩曲[マルティン・ヘルムヘン]
  ジョン・ケージ:One2(1〜4台のピアノのための)
   [マーガレット・レン・タン]
 CD7;2003年音楽祭の記録
  J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971[デニス・プロシャイエフ]
  レーガー:レピソード集[第1番 ニ長調/第3番 ハ長調 Op.115]
   [マルクス・ベッカー]
  ショパン:夜想曲 ロ長調 Op.9-3/華麗なるポロネーズ Op.22
  ラフマニノフ:練習曲集「音の絵」Op.39-9[ウラジミール・ハーリン]
  シューマン:ロマンス 嬰ヘ長調 Op.28-2[ネダ・ナヴェー]
  ショパン:24の前奏曲Op.28〜[Nos.1, 2, 16][アンナ ・ クラフチェンコ]
  プロコフィエフ:
   ソナタ第3番/「ロメオとジュリエット」からの10の小品
            〜モンタギュー家とキャピュレット家
  グリンカ=バラキレフ編:ひばり[アレクサンダー・ギンディン]
  エミール・フォン・ザウアー:音楽時計[オレグ・マルシェフ]
  シューマン=リスト:歌曲集「ミルテの花」〜第1曲「献呈」
   [アンナ・クラフチェンコ]
 CD8;2004年音楽祭の記録
  ハイドン:ソナタ 変イ長調 Hob. XVI:43[タマラ・ステファノヴィチ]
  モーツァルト:ソナタ第8番 KV311[ペテル・ジェーシャ]
  ハイドン:ソナタ 変イ長調 XVI:46[アンナ・ヴァヴィック]
  モーツァルト:ソナタ第14番[コーラ・イルセン]
  ハイドン:「神よ守りたまえ」による変奏曲 Hob. III:77
   [アレクサンダー・ロンクヴィヒ]
  デイブ・ブルーベック: キャスティリアン・ブルース
   [エドワード・クトロヴァッツ、ヨハネス・クトロヴァッツ]
 CD9;2005年音楽祭の記録
  ベアト・フラー:3つのピアノ小品集[マルクス・ヒンターハウザー]
  ベアト・フラー:雪には声がない[クリストファー・ヒンターフーバー]
  オルガ・ノイヴィルト:マーシャス[トーマス・ラルヒャー]
  ヨハネス・マリア・シュタウト:ベヴェーグンゲン(運動)
   [タマラ・ステファノヴィッチ]
  ウィルヘルム・キルマイヤー:こちら側にもあちら側にも〜
                 此方と彼方の物語[ツィモン バルト]
  ペルト:都市への賛歌(2台ピアノのための)
   [エドワード・クトロヴァッツ、ヨハネス・クトロヴァッツ]
 CD10[ボーナスCD];2002年-2004年音楽祭の記録
  シューマン:クライスレリアーナ Op.16[ツィモン・バルト]
  リスト:
   レーベルトとシュタルクの大ピアノ学校のためのアヴェ・マリア
   巡礼の年報(第3年)〜エステ荘の噴水/「シモン・ボッカネグラ」の回想
   クルターク:8つのピアノ小品集 Op.3[ペテル・ジェーシャ]
 録音:1997年-2004年。「ルール」といえば、ドイツ屈指の工業地帯として知られているが, そのルール地方で毎年行われるこのピアノ・フェスティヴァルはドイツでも最大級の音楽祭で、世界のピアニストが定期的に集まる。第1回の開催セレモニーではポリーニが登場、すでに有名になったプロだけでなく、豊かな才能を持った若手の登竜門にもなっている。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・
 エディションVol.12〜シューベルト・チクルス

 美しき水車屋の娘 D.795/
 冬の旅 D.911/白鳥の歌 D.957
ベンハルト・ベルヒトルト(T)
イリーナ・プリシンスカヤ(P)
ルール・ピアノ・フェスティヴァル
 エディションVol.11

 CD1(*):
  ラヴェル:ラ・ヴァルス
  ドビュッシー:
   版画〜第1曲「塔」(パゴダ)/第3曲「雨の庭」
  シューベルト:
   創作主題による8つの変奏曲 変イ長調 D813/
   ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D.960(遺作)
 シューマン:アラベスク Op.18
 CD2(#):
  シューマン:アレグロ ロ短調 Op.8
  シューベルト:ピアノ・ソナタ第14番 D.784
  シェーンベルク:5つのピアノ曲 Op.23
  ラヴェル:鏡
 CD3(+):
  J.S.バッハ/ブゾーニ編:
   前奏曲とフーガ BWV 532
  J.S.バッハ/アレクサンドル・ジロティ編:
   平均律クラヴィーア曲集〜第1巻第10番 BWV 855
  J.S.バッハ/ラフマニノフ編:
   無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番
    〜前奏曲、ガヴォット、ジーグ
  ブラームス:
   ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ Op.24
 CD4(**):
  ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第4番 Op.7
  シューベルト:即興曲 Op.90 D.899
  ラフマニノフ:
   コレッリの主題による変奏曲 Op.42
   幻想的小曲集〜メロディ ホ長調
  ショパン:大円舞曲 変イ長調 Op.42
 CD5[ボーナスCD](##):
  J.S.バッハ:
   イタリア風のアリアと変奏 イ短調
  モーツァルト:
   デュポールのメヌエットの主題による
    9つの変奏曲 ニ長調 KV.573
  ラフマニノフ:
   絵画的練習曲集Ops.33 & 39より
  リゲティ:
   ピアノ練習曲第1集、第2集、第3集より
ホワン・チューファン(P;*)
ベンジャミン・ホックマン(P;*)
クロード・フランク(P;*)
ティム・ホートン(P;#)
ニコライ・トカレフ(P;+)
キリル・ゲルシテイン(P;**)
タマラ・
 ステファノヴィッチ(P;##)
 録音:2004年/2005年。
カルミナSQ〜モーツァルト:弦楽四重奏曲集
 弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K.421(417b)
 弦楽四重奏曲第14番 ト長調 K.387「春」
 弦楽四重奏曲第19番 ハ長調 K.465「不協和音」
カルミナSQ
 録音:2005年10月26日-28日。
 スイスを本拠地とするカルミナ四重奏団のAVIレーベルからのリリース。モーツァルトの弦楽四重奏団の傑作として親しまれている「ハイドン・セット」から3曲を収録。弦楽四重奏とは思えない幅広い表現力と精緻な音楽性、完璧なアンサンブルは必聴。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・
 エディションVol.10

 モーツァルト:「魔笛」全曲
 (ツェムリンスキー編曲4手ピアノ版)
滑川真希、
デニス=ラッセル・
 デイヴィス(P)
 録音:2004年7月24-26日、カールスルーエ・コンツェルトハウス、大ホール。
 ツェムリンスキー編曲によるモーツァルトの「魔笛」! しかも全曲ヴァージョンがピアノ4手で登場。言うまでもなく「魔笛」はモーツァルト最後のオペラ作品で、美しいメロディーの宝庫。モーツァルト・イヤーならではのユニークな選曲で楽しませてくれるアルバム。
 滑川真希は、ヨーロッパを中心に活躍し世界の主要オーケストラと共演し各地の音楽祭にも多数参加。ドイツの国立カールスルーエ音楽大学のピアノ科講師として後身の指導にあたっている。今回共演のデニス=ラッセル・デイヴィスは指揮者として活躍しているが、以前はピアニストとして現代音楽を中心に演奏していた。
ルール・ピアノ・フェスティヴァル・
 エディションVol.9 〜編曲とパラフレーズ集

 CD1(*):
  チャイコフスキー/ニコラス・エコノム編:
   組曲「くるみ割り人形」 Op.71a(2台ピアノ版)
  セルゲイ・クルサノフ(1947-):
   リムスキー・コルサコフ「シェエラザード」による
    9つのパラフレーズ
  シューベルト/リスト編:歌曲集「白鳥の歌」
  クライスラー/ラフマニノフ編:愛の喜び/愛の悲しみ
  ガーシュウィン/アール・ワイルド編:
   7つの超絶技巧練習曲集
 CD2(#):
  ワーグナー/セルゲイ・パヴチンスキ編:
   ニーベルングの指環より(ピアノ編曲版)
    楽劇「ジークフリート」〜森のささやき
    楽劇「神々の黄昏」
      〜ジークフリートの葬送行進曲
    楽劇[ワルキューレ]〜ワルキューレの騎行
  R.シュトラウス:
   交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの
        愉快ないたずら」
    (2台ピアノ編曲版/オットー・シンゲル編)/
   交響詩「ドン・ファン」
    (2台ピアノ編曲版/ルートヴィヒ・テュイレ編)/
   オペラ「ばらの騎士」
    (2台ピアノ編曲版/ヴィクター・バビン編)
 CD3[ボーナスCD](+):
  ヨハネス・マリア・シュタウト(1974-):
   ピアノのための音楽(世界初演)
  マルコ・ストロッパ(1959-):
   アフ・トンガリキ(世界初演)
  ヨーク・ヘラー(1944-):
   モノグラム〜14の性格の小品(世界初演)
A&J.パラトーレ(P;*/#)
ニコライ・トカレフ(P;*/#)
イリーナ・プリシンスカヤ(P;*)
キリル・ゲルシテイン(P;*)
アンナ・ヴァヴィック(P;+)
タマラ・ステファノヴィッチ(P;+)
 録音:2005年、ルール・ピアノ・フェスティヴァル、ライヴ。
ザビーネ・マイヤー
 R.シュトラウス:
  13本の管楽器のためのセレナード Op.7(*)/
  ソナティナ第2番 変ホ長調「楽しい仕事場」(*)
ドヴォルザーク:セレナード Op.44 ニ短調(#)
ザビーネ・マイヤー管楽アンサンブル
[ザビーネ・マイヤー
 ライナー・ヴェーレ
 ヴォルフガング・マイヤー
 アコス・ホフマン
 カイ・フィッシャー
 アルブレヒト・マイヤー
 ディーテルム・ヨナス
 アンドレア・リーバークネヒト
 アンナ・ガルズリー
 ダグ・イェンセン
 シュテファン・シュヴァイゲルト
 セルジオ・アゾリーニ
 ゲオルグ・クルーチ
 クラウス・ローラー
 ブルーノ・シュナイダー
 二クラウス・フリッシュ
 カール・フェスラー
 オリヴァー・アルヴァレス
 マニュエル・フィッシャー=ディースカウ
 クリストフ・シュミット]
 録音:2003年12月(*)、1994年4月(#)。
 ザビーネ・マイヤー管楽アンサンブルは、スイスで10年以上に渡り毎年開催されているリューゲンツ管楽フェスティヴァルの際に結成されたアンサンブル。「13本の管楽器のためのセレナード」は、優雅で上品な雰囲気を持つ作品。R.シュトラウスの初期の頃の作品でオーボエの美しい響き、クラリネットの軽快なリズム、ホルンの明るくゆるやかな音、腕利き揃いのアンサンブルが繰り広げる妙技に酔いしれる。
アドベント〜キリストの降誕を待ち望む/歌と言葉でそれを伝えよう(全20曲)
 ヒッレルード:久しく待ちにし/ブラームス:おお救い主よ、天を切り開け
 シュッツ:おお、愛する神よ/ギュンター・ラファエル:マリアは茨の森を通って行った
 ウォルターズ:マリアは茨の森を通って行った/レーガー:戸を高く上げよ
 モービー:おお、大いなる神秘/アンドレ・J.トーマス:アフリカン・ノエル/他
  アレクサンドラ・ユット、イヴェタ・シェルハース、マイカ・ヴィーヒェルト(S)
  フォルカー・ヘンプフリング指揮ケルン聖歌隊
 録音:2003年12月7日、聖パンタレオン教会(ケルン)。
リスト:ソナタ ロ短調(*)
リスト/レオー・ヴェイネル編:
 ソナタ ロ短調(オーケストラ編曲版;#)
オルガ・コズローヴァ(P;*)
ワイマール・フランツ・リスト
 音楽大学オーケストラ(#)
ニコラス・パスケ指揮(#)
 録音:2007年7月17日(*)、2006年10月22日、第3回リスト・フェスティヴァル/ワイマール、ライヴ、世界初録音(#)。
 独創的な構成と特有の高い技巧性が特徴の大作、リストのピアノ・ソナタ ロ短調がオーケストラ曲に変貌を遂げた。ハンガリーの作曲家レオー・ヴェイネルにより編曲されたオーケストラ・ヴァージョンの世界初録音。ヴェイネルはそれほど多くの作品は残していないが、指導者としてショルティ、クルタークなど数々の優秀な弟子を輩出している。このオーケストラ編曲は、1956年リスト没後70周年を記念し、またヴェイネル自身が70歳を迎えたこともあり作られた。演奏はワイマールで開催されているリスト・フェスティヴァル、ライヴ。フランツ・リストの後押しで1872年に設立されたワイマール・フランツ・リスト音楽大学のオーケストラによる演奏。また、2006年にフランツ・リスト国際ピアノ・コンクールで優勝したロシアの若手ピアニスト、オルガ・コズローヴァのピアノ・ソナタ演奏も収録されている。
ブルーノ・シュナイダー〜ホルン作品集
 サン=サーンス:ロマンス Op.36
 ジャン・フランセ:ディメルティメント
 シャブリエ:ラルゲット
 デュカス:
  ホルンとピアノのためのヴィラネル(田園詩)
 サン=サーンス:ロマンス Op.67
 プーランク:エレジー
 ジェーン・ヴィネリ(1913-1974):ソナタ Op.7
ブルーノ・シュナイダー(Hrn)
エリック・ル・サージュ(P)
 録音:2004年11月。
 元スイス・ロマンド首席で、現在フライブルク音楽大学教授で教鞭をとるブルーノ・シュナイダー。日本のホルン奏者も数多く彼に師事している。ザビーネ・マイヤー管楽アンサンブルに参加し、2003年のルツェルン音楽祭ではアバドと共演するなど、ソロ、室内楽ともに活躍、また共演のエリック・ル・サージュもサロン・ド・プロヴァンス音楽祭を主催し室内楽でも積極的に活動を行っている。ホルンの独奏曲として代表的な「デュカスのヴィラネル」と「プーランクのエレジー」など重要なレパートリーを収録。またデュカスに師事していたベルギー出身の「ヴィネリのソナタ」や、チェロでも演奏される機会の多いサン=サーンスのロマンス2作品を収録。ホルン好きは必聴。
トリオ・ディ・クラローネ
 ブルッフ(1838-1920):
  クラリネット、ヴィオラとピアノのための
   8つの小品Op.83 より
  [ Nos.1, 2, 4, 5, 6, 7 ]
 シューマン(1810-1856):
  3つのロマンス Op.94/おとぎ話 Op.132/
  練習曲(6つのカノン風小品) Op.56/
  幻想小曲集 Op.73
トリオ・ディ・クラローネ
[ザビーネ・マイヤー、
 ヴォルフガング・マイヤー、
 ライナー・ヴェーレ]
カレ・ランダル(P)
 クラリネットのザビーネ・マイヤーが率いるトリオ・ディ・クラローネ。AVIレーベル2枚目のアルバムは、ロマン派のブルッフとシューマン。ブルッフの隠れた名曲「8つの小品」は、思わず感傷的になってしまう悲痛なメロディーが印象に残り、「ヴァイオリン協奏曲だけではない」ブルッフの魅力が溢れる。シューマンではクラリネット三重奏曲「おとぎ話」や「幻想小曲集」など珠玉の作品を収録。クラリネットの魅力をとことん掘り下げた濃い内容。
パーセル:3声のファンタジア(1680)
ギデオン・クライン:弦楽三重奏曲(1944)
ベートーヴェン:弦楽三重奏曲 ト長調 Op.9 No.1
ゴルトベルク・トリオ・ボン
 ファンタジアは英国伝統の対位法的合奏音楽で、パーセルの収録曲はその代表的な作品であると同時に彼の器楽作品中重要な位置にあるもの。ゴルトベルク・トリオのファンタジー豊かな発想が、伝統の形式をより一層引き立たせている。ギデオン・クラインはチェコスロヴァキアのユダヤ系作曲家。1941年にテレジン強制収容所に送致されたが、そこは所内の芸術活動が推奨された数少ない収容所の一つでもあり、収録曲はその当時に書かれた。幅広いレパートリーを常に演奏しているゴルトベルク・トリオならではの選曲といえよう。ベートーヴェンの弦楽三重奏は素朴な親しみやすさが魅力の作品。
J.S.バッハ:ヨハネ受難曲 BWV245
 エヴァ・マリア・レオナルディ(S) ルート・サンドホフ(A)
 ゲルト・テュルク(T) ペーター・ブレヒビュラー、クラウス・メルテンス(B)
 フォルカー・ヘンプフリング指揮ケルン聖歌隊、
 ヨハン・クリスティアン・バッハ・アカデミー
シューベルト:
 ヴァイオリンとピアノのための
  ソナチネ第2番 イ短調 D.385/
 ヴァイオリン・ソナタ イ長調 D.574/
 ヴァイオリンとピアノのための幻想曲 ハ長調 D.934
アンティエ・ヴァイトハース(Vn)
ジルケ・アヴェンハウス(P)
 アンティエ・ヴァイトハースは現代ドイツを代表する女流ヴァイオリニスト。2006年秋には、人気上昇中のジャン=ギアン・ケラスとアンサンブルを組み、アルカント・カルテットとして来日する。シューベルトの明るく楽しい音楽が、ヴァイトハースの冴えた演奏で繰り広げられている。
J.S.バッハ/ドミートリー・シトコヴェツキー編曲:
 ゴルトベルク変奏曲 BWV.988(弦楽三重奏版)
ゴルトベルク・トリオ・ボン
 既に人気作として定着しているシトコヴェツキ編曲版「ゴルトベルク変奏曲」弦楽三重奏版に触発され、1995年に結成されたゴルドベルク・トリオ。この編曲はクラヴィーア演奏とは異なった音域でアンサンブルの面白みを出したもので、1985年の出版以来、弦楽三重奏の重要なレパートリーとなっている。シトコヴェツキがミッシャ・マイスキーらと組んで録音した弦楽三重奏版(ORFEO-138851)がスタンダードな名盤。
J.S.バッハ:カンタータ・アリア集
 第105番「主よ、裁きたもうな」BWV.105、
 第87番「汝らわが名において祈りしことなし」BWV.87、
 第198番「侯妃よ、あとひとすじの光を」BWV198、
 復活祭オラトリオ BWV.249、
 第19番「いさかいは起これリ」BWV.19/
 第95番「わが命なるキリスト」BWV.95/
 第21番「わが心に憂い多かりき」BWV.21/
 農民カンタータ「おいらは新しい領主をいただいた」BWV.211/
 第36番「喜びて舞いあがれ」BWV.36/
 第85番「われは善き羊飼なり」BWV.85 から
 シンフォニア ニ長調 BWV.1045 から
クリストフ・ゲンツ(T)
ライプツィヒ新バッハ合奏団
 録音:2004年9月、パウル・ゲルハルト教会。
 ドイツを代表する男声歌手クリストフ・ゲンツ。彼は、端正で奥行きのある声を持ち楽曲への理解が深く、ガーディナーやヘレヴェッヘを始めとする指揮者による宗教曲の演奏において重要な位置を占めている。ここではライプツィヒ新バッハ合奏団の好サポートを受け伸びやかに歌い上げている。
クラリネット・トリオのための作品集
 モーツァルト/R.ショットスタット編曲:
  「コジ・ファン・トゥッテ」〜それではデスピネッタ
 ロッシーニ/I.ミュラー編曲:「セビリャの理髪師」〜
  ロジーナのカヴァティーナ「ある声が今しがた」
 ベートーヴェン:「ドン・ジョヴァンニ」の
   「お手をどうぞ」の主題による変奏曲 WoO.28
 ヴェルディ/L.バッシ、A.ジャンピエリ編曲:
  「リゴレット」の主題による演奏会用幻想曲
 モーツァルト/R.ショットスタット編曲:
  「ドン・ジョヴァンニ」からの3つのアリア
   [奥様、これが恋のカタログです/
    恋人よ、私を不親切な女と思わないで/他]
 ウェーバー:「ジルヴァーナ」の主題による協奏的変奏曲 Op.33
 ドップラー/R.ショットスタット編曲:リゴレット幻想曲 Op.38
トリオ・ディ・クラローネ
[ザビーネ・マイヤー、
 ウォルフガング・マイヤー、
 ライナー・ヴェーレ]
カレ・ランダル(P)
 録音:2005年1月。
 ソロ奏者としては世界屈指の実力を誇り、1983年に兄のウォルフガング・マイヤー、夫のライナー・ヴェーレとクラリネット三重奏団「トリオ・ディ・クラローネ」を結成するなど室内楽奏者としても活躍しているザビーネ・マイヤー。最近では、MARSYASレーベルから「パリのメカニック」(MAR-1801)という斬新なアルバムをリリースしている。
 ウォルフガング・マイヤーの超絶技巧、元ハノーヴァー放響のソロ・クラリネット奏者でもあったライナー・ヴェーレの確かな音楽性。そして、ふくよかで艶やかな音色、活力溢れる演奏で聴衆を圧倒するザビーネ・マイヤー。この最強のクラリネット・トリオから紡ぎだされる音楽は実に雄弁。オペラの魅力的な編曲作品を中心とした聴き応えのあるアルバムに仕上がっている。
グッバイ・アストル〜モーツァルトの最後のタンゴ
 グリーグ/ラフマニノフ/チャイコフスキー〔グリーグ:ピアノ協奏曲、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、
  チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番〕 / ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」〔春・夏・冬〕/
 チャイコフスキー:交響曲第5&6番 / ショスタコーヴィチ(ジャズ組曲〜ワルツ第2番)
 J.S.バッハ:アンナ・マグダレーナのための小曲集〜メヌエット/平均律クラヴィーア曲集第1巻第1番〜前奏曲/
         トッカータとフーガ ニ短調/チェンバロ協奏曲第5番/管弦楽組曲第3番〜G線上のアリア
 グノー:アヴェ・マリア / グリーグ:ペールギュント より〔朝/オーセの死/山の魔王の宮殿にて/ソルヴェイグの歌〕
 「ベートーヴェン:交響曲第5番、ロッシーニ:セビリャの理髪師 序曲、ビジョルド:エル・チョクロ」
 ウェーバー:大協奏的二重奏曲 / ブラームス:交響曲第3&4番/クラリネット三重奏曲/Clソナタ第1&2番
 ラフマニノフ:ヴォカリーズ / ムソルグスキー:はげ山の一夜 / メンデルスゾーン:交響曲第2&3番/
  フィンガルの洞窟 序曲/ヴァイオリン協奏曲 / モーツァルト:レクイエム より〔怒りの日、ラクリモサ/他〕

 トリオ・ノイクラング
 [ニコライ・アブラムソン(Cl) ヤン・ヤッハマン(アコーディオン) アルトゥール・ホルニッヒ(Vc)]
 ベルリンで結成されたタンゴ・アンサンブル、トリオ・ノイクラング。代表的なタンゴの名曲だけではなく、様々なジャンルの要素を取り入れた演奏で、室内楽のような、ナイトクラブで演奏しているような、絶妙な雰囲気を醸し出した音楽を作り上げている。このアルバムは、モーツァルトの最後の作品がタンゴであったかどうか…という大胆な発想から生まれた内容。グリーグ、ラフマニノフ、チャイコフスキーのピアノ協奏曲のモチーフを使ってタンゴ風に仕上げたり、ムソルグスキーのはげ山の一夜のリズムをベースにした曲、そしてモーツァルトのレクイエムをタンゴ風にしたりと、タンゴの大御所ピアソラに別れを告げるような斬新曲が次々と展開されていく。
CAVI-MUSIC "STAN MUSIC"
Pour le moment
 ボッケリーニ:2つのチェロのためのソナタ ハ長調〜アレグロ・モデラート
 C.V.フローレス/トーマス=ミフネ編曲:ランプの灯影 / G.ケッペン:イディッシュ・ソング
 L.グリエルミ/ツェムリカ編曲:バラ色の人生 / L.テイセイレ/トーマス=ミフネ編曲:カランドリア
 ドッツァウアー:モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」の主題による変奏曲
 アルベニス編/トーマス=ミフネ編曲:セビリャ / ボワモルティエ:ソナタ ハ短調〜ラントマン&ジーグOp.14-3
 J.コスマ/ツェムリカ編曲:枯葉 / グリエール:デュエット〔第9番/第4番〕
 サン=サーンス/G.ケッペン編曲:動物の謝肉祭〜白鳥 / ロドリゲス/K.アルトマン編曲:ラ・クンパルシータ
 ハイドン:二重奏曲 ニ長調Hob.X: 11 / フィリベルト:メンティアス
 F.クープラン:コンセール第13番〜シャコンヌ/新しいコンセール第9番〜私は知らない
 フィリベルト/トーマス=ミフネ編曲:ミロンガの泣くとき / オッフェンバック:二重奏曲 イ短調
 M.モノー編/ツェムリカ編曲:愛の賛歌 / ガーシュウィン/ツェムリカ編曲:サマータイム

  ヴィオロンセロ・ア・ドゥ[ビルギット・ハイネマン、ウタ・シュリヒティヒ(Vc)]
 録音:2011年3月、デュッセルドルフ(ドイツ)。ヴィオロンセロ・ア・ドゥ(Violoncello-a-deux)は、ドイツの名手ハイネマンとシュリヒティヒによって結成されたデュオ。ジャンルを越えて幅広いレパートリーを持ち、多彩なジャンルの音楽を融合したオリジナリティあふれる選曲で注目を集める実力派団体。クラシックとポピュラー、とりわけタンゴやシャンソン、アメリカ・ラテン音楽との融合に積極的な二人。本CDの選曲プログラムも、彼女たちの活動姿勢が強く反映されたものとなっている。収録されている楽曲は、ボッケリーニやハイドン、クープランといったチェロ二重奏の名曲から、タンゴ界の大作曲家フィリベルト、シャンソン界に名を馳せるモノーなど実に多彩。トーマス・ミフネ、ケッペンらによってチェロ二重奏曲用に編曲された作品も多く収録しており、チェロ二台ならではのアンサンブルを堪能することが出来る。ここまで多彩なジャンルを混合した二重奏アルバムは希少、作品によって全く表情を変える二人の音色にも注目。
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 〔Nos.1, 3, 5〕 ヴェルナー・マツケ(Vc)
 ピリオド楽器使用。1962年生まれ。アンナー・ビルスマとゲルハルト・ダルムシュタットにバロック・チェロを学び、コンチェルト・ケルンの首席奏者として活躍していたチェリスト、ヴェルナー・マツケによるバッハ無伴奏。軽やかでありながら深みのある、楽器がより自然に響く流麗な演奏だとのこと。
 長年数々のCD制作に関わってきたアンドレアス・ノヴァーク&ステファン・ガウリックによって2008年9月に設立されたレーベル、"stan music" からの初リリース盤となる物。より自然な録音を信条としたマイク・セッティングに時間を費やし、リアルな音場を捉えているという。
CAVI-MUSIC "WDR ARCHIVES"
9783832-195601
buyボタン
(6CD) 限定盤
ケルン・クラシック・コレクション
 モーツァルト:ミサ曲 ハ長調K.317「戴冠式ミサ」
 シューベルト:スターバト・マーテル ヘ短調D.383   [ギュンター・ヴァント指揮/PROFIL PH-06003/録音:1952年-1953年]

 ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調Op.5/3つの間奏曲 Op.117
 リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調[ゲザ・アンダ(P)/AUDITE AU-23408 のCD2 ]

 シューマン:ケルナーの詩による12の歌曲 Op.35/リーダークライス Op.39
 [ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)/AUDITE AU-95582/録音:1954年-1955年]


 ウェーバー:「オイリアンテ」序曲/モーツァルト:交響曲第33番 変ロ長調K.319
 チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調Op.74
 [エーリヒ・クライバー指揮/MEDICI MASTERS MM-003/録音:1953年-1956年]

 モーツァルト:弦楽四重奏曲第18番 イ長調K.464
 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番 変ホ長調Op.127
 [アマデウスSQ/MEDICI MASTERS MM-007/録音:1956年]

 ヴォルフガング・アンハイサー(Br)アリア集
  (初出/全てドイツ語歌唱/録音:ケルンWDR第1ホール、ステレオ)
 モーツァルト:「にせの女庭師」K.196より
  [第1幕「鎚は火の熱で鉄を打ち延ばし」/第2幕「イタリア式のやりかたでは」]
 ドニゼッティ:「愛の妙薬」〜第1幕「むかしパリスがしたように」
 ヴェルディ:「仮面舞踏会」〜第3幕「お前だったのか、彼女の心を汚した奴は」
 チャイコフスキー:「スペードの女王」〜第2幕「わたしははかり知れないほどあなたを愛している」
 [ラルフ・ヴァイケルト指揮ケルン放送so./録音:1970年2月23日-28日]
 ヨハン・シュトラウス II:「ジプシー男爵」〜第2幕徴兵の歌「さあ、手を差し伸べて、恋人と別れよ」
 フンパーディンク:「ヘンゼルとグレーテル」より第1幕「ああ、わたしたち貧しいものは」(*)
 ガーシュウィン:「ポーギーとベス」第2幕より
 [オレには無いものばかりだ(#)/ベス、お前はオレの女だ(+)/いつもそうとは決まってない(#)]
 [へティ・プリュマッハー(A;*) フェリシア・ウェザーズ(S;+)
  クルト・クレメル指揮ケルン放送o.、ケルン放送cho.、ギュンター・カルマンcho,(#)/
  録音:1968年4月29日、1968年10月14日(*)、1970年6月17日(#/+)]
 驚異の高音質でマニアを狂喜させているWDRアーカイヴの復刻音源リリース。このたび登場するセットは、レーベルを越えて、audite、Profil、medici arts の全面協力で実現したもので、マルクス・シュヴェリング(1956年ケルン生まれ、1990年より「Kölner Stadt-Anzeiger 紙」の文化ジャーナリストを務め、2004年より同紙の専任音楽評論家)のセレクションによる物。
 5枚目までは既出のアルバムと同内容だが、注目はボーナス盤。ケルンに生まれケルンで没した名バリトン、ヴォルフガング・アンハイサー(1934-1974)のアリア集は、初出である上にこれだけはなんとステレオ収録。音質も抜群。アンハイサーはドイツ期待のバリトンだったが、44歳の時に舞台で事故死してしまった非運の歌手。録音も少なく、オペラ全曲はともかく、アリア集としてまとまった録音は、BERLIN CLASSICS から出ていた1枚くらいしかなかったはずで、この放送録音は貴重。
 なにからなにまでケルンづくしの内容となっており、別冊のブックレット(50ページ)もドイツ語表記のみ。
CAVI-MUSIC "preludio"
 CAVI MUSICが配給する、スイスの音楽出版社 PRELUDIO (http://www.preludio.ch/)発売のアイテム。ロゴからは以前あった同名レーベルとの関係も考えられるが、公式サイトには全く記載が無いようだ。
地中海の情熱
 マリオ:遥かなるサンタ・ルチア
 バルベリス:サンタ・キアーラ寺院
 ベッリーニ:光さす窓辺
 ビザーリ:シルヴィアに/ナポリのクリスマス
 カプア:私の太陽
 ボヴィオ:パッショーネ
 トスティ:マレキアーレ
 カンニオ:恋する兵士
 コットラウ:サンタ・ルチア
 デンツァ:フニクリ・フニクラ
 デ・クルティス:声と夜/帰れソレントへ 他(全16曲)
ヴィンチェンツォ・ラ・スコーラ(T)
アンサンブル
 イタリアを代表する名テノール、ヴィンチェンツォ・ラ・スコーラの歌うカンツォーネ集。意外なことに、ラ・スコーラにとって本格的なカンツォーネ集はこれが初。同じイタリア人でも、気位の高いのミラノ人だと味の出ないカンツォーネだが、そこは自他共に認める「典型的シチリア人」のラ・スコーラ、強い日差しと吹き付ける潮風が心地よい南イタリアの気風そのままのスカッとした歌がぴったり合っている。


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