| ジョヴァンニ・グヮルベルト・ ブルネッティ(1706-1787): スターバト・マーテル(全曲) + 導入唱、昇階唱、聖体拝領唱、アレルヤ |
アンサンブル・トゥリクム エレナ・モシュク(S) ルイス・アルベス・ ダ・シルバ(CT) | |
| ピリオド楽器使用。名曲相次ぐ18世紀の「スターバト・マーテル」にさらなる素晴しい作品が!初期古典派らしい無比の美しさを、気鋭名歌手ふたり&ピリオド楽器で。 モーツァルトの知人として知られるA.ブルネッティとは別人、後年スペインで活躍したG.ブルネッティではない、南イタリアやトスカーナ地方で活躍したG.G.ブルネッティ。チューリヒの古楽集団と新時代の実力派歌手ふたりが甦らせるこの未知の「スターバト・マーテル」、ペルゴレージの傑作の後に数多書かれた追従作のひとつ・と切って捨てるにはあまりに惜しい絶美の傑作だった! このブルネッティは1706年におそらくナポリで生まれ、同地の名高いカペッラ・デ・トゥルキーニ音楽院で研鑚をつんだ作曲家。本作はバロック・オペラ調の華麗な声楽様式を反映しながらも、決して俗っぽくはならず、清らかで天上的な雰囲気が全体にただよう。ソプラノとアルト(CT)が交互に独唱をつとめ、一部に二重唱を交えるあたりはペルゴレージ作品と一緒ながら、各曲の冒頭にはグレゴリオ聖歌が配されて、これがまた気分を盛り上げてくれる。独唱ソプラノのエレナ・モシュクは、Arte Novaでフランスやルーマニアの近代歌曲、あるいはモーツァルトのアリア集など3作のみごとなアルバムを発表しているので、その表現力の豊かさと典雅な美声をよくご存知の方もおられるのでは? | ||
| ハイドン:ヴァイオリン協奏曲集 [第1番 ハ長調 Hob.VIIa-1/ 第3番 イ長調 Hob.VIIa-3「メルク僧院協奏曲」/ 第4番 ト長調 Hob.VIIa-4] |
イザベル・ファウスト(Vn) クリストフ・ポッペン指揮 ミュンヘン室内o. | |
| 録音:1997年4月、エルマウ城大広間。録音技師:服部光一郎&Musica Numeris。編集:クレメント・シュピース。監修:トーマス・プファイファー。 躍進めざましいイザベル・ファウスト、HMFとならんでPAN CLASSICSからも登場! 現代的センスで磨きぬかれた、清々しく確固たる名演!絶妙のバランス感覚と磨きぬかれた輝かしい音、苦労を感じさせないテクニックを武器に、さまざまなコンクールを破竹の勢いで制しつづけ世にあらわれたイザベル・ファウスト(Vn)。harmonia mundi franceではフォーレやシマノフスキらの名演につづいてドヴォルザークの協奏曲を録音、そんな折も折、彼女が20世紀末に録音した名演ディスクがデジパック仕様の“新生”PAN CLASSICSから登場。 19世紀ロマン派以降の作品での堂々たる演奏もすばらしいが、こうしてハイドンなど聴いていると、イザベル・ファウストという人の音楽性がいかに「ごまかしのない、真正・真摯な芸術」であるかを思い知るのではないだろうか?音符ひとつひとつおろそかにせず、すきっと爽快なアーティキュレーションやフレージングは惚れ惚れするほど。ノーブルで「カッコイイ」ハイドンなのである。 伴奏はクリストフ・ポッペン指揮のミュンヘン室内管弦楽団。いうまでもなく、ECMでのグバイドゥーリナやバッハ「フーガの技法」、独自の編曲によるシューベルト「死と乙女」などきわめて先鋭的なディスクで知られた顔合わせである。このようにポッペンのもとで先進的な現代音楽のセンスをますます磨いてさらなる成長をみせているミュンヘン室内管だが、前任の指揮者シュタットルマイアのもとでは数限りなく古典派の名演を聴かせてきた団体。「じつは現代的で芸の細かい」ハイドンを演奏するのにはもってこいの面子なのである。じっさい、この録音でも隅々まで神経の行き届いたサウンド作りがじつに心地よい。「ハイドンのヴァイオリン協奏曲のリトルネッロがこんなに素晴らしかったとは!」と耳を疑うに違いない。 | ||
| ヨーゼフ・トリーベンゼー(1772-1846)、 管楽作品の達人〜管楽合奏のための作品集 管楽合奏のためのパルティータ 変ホ長調/ 管楽合奏のための葬送行進曲/ フォルテピアノと管楽六重奏のための小協奏曲/ 管楽合奏のためのパルティータ第1番 変ロ長調 |
アンフィオン管楽八重奏団 ミヒャエル・ビール(Fp;*) | |
| ピリオド楽器使用。使用楽器:N.シュトライヒャー1819年製ウィーン・モデル(*)。知名度は劣れど、作品内容はさらに深い!クロンマーと同時代のウィーンを生きた、もう一人の人気作曲家。フォルテピアノも交えた豪華録音! クロンマーと同じ頃の、つまりベートーヴェン時代のウィーンで、さまざまな劇場オーケストラで腕を磨いたのち上流階級の寵児となった人気作曲家、トリーベンゼーにも注目したい!古楽都市バーゼルの気鋭ピリオド楽器集団、アンフィオン管楽八重奏団の Pan Classicsデビュー盤でもあった(PAN-510125という番号で2002年に輸入盤を御紹介したことがあるが、廃盤となっていた)が、このたび堂々 Digipack 美麗ジャケットで生まれ変わった。 トリーベンゼーの音楽は、クロンマーの音楽から辛辣さを取り除き、モーツァルト流儀の優しい切なさ(1800年頃、あらためて大流行した忘れがたいスタイルである)と、がっちりした構成感覚を伸張したような作風。つまりベートーヴェンの初期のようでもある。時折のぞく短調の陰翳がこれまた繊細で、初期ロマン派というか19世紀的な新機軸が感じられるかも、ピリオド管楽器でこそ映える瞬間もしばしばで、特にナチュラルホルンのメゾピアノやら、鄙びたクラリネットの音色などは晩秋にぴったりな風采が。 本盤にはピリオド楽器のコントラファゴット(!)も入るし、小協奏曲ではフォルテピアノの瑞々しいサウンドが意趣を添えて、4曲それぞれに異なった楽しみ方が出来るのも嬉しい。ピリオド楽器ファンには絶対に見過ごしてほしくないし、ベートーヴェン・マニアにもお薦めできる充実盤だ。 | ||
| アントニオ・カルダーラ(1670-1736): 二重唱カンタータと器楽曲 カンタータ「ダリーゾとクローリ」 (ソプラノ、アルト、 2つのヴァイオリンと通奏低音のための)/ トリオ・ソナタ ハ短調 Op.1-6/ カンタータ 「引き裂かれた恋人たちクローリとティルシ」 (ソプラノ、アルト、 2つのヴァイオリンと通奏低音のための)/ チャッコーナ 変ロ長調 (二つのヴァイオリンと通奏低音のための) |
フォンス・ムジケ [モニーク・ザネッティ(S) パスカル・ベルタン(CT) フランソワ・フェルナンデス(Vn) サラ・クイケン(Vn) ライナー・ツィパーリング(Vc) 北谷直樹(Cemb) 今村泰典(テオルボ/バロックG)] | |
| ピリオド楽器使用。カンタータ2曲は世界初録音。 邦人芸術家2人を含む、錚々たる実力派面子でおくる盛期バロック豪華盤。幅広い活躍で知られる名リュート奏者、今村泰典が率いる古楽アンサンブル「フォンス・ムジケ」は、1996年結成とはいえ、リチェルカール・コンソートのフランソワ・フェルナンデス(Vn)とライナー・ツィパーリング(Vc)、スイス在住の北谷直樹、さらにはHMFの忘れ難い異色アルバム「3大カウンター・テナー」でヴィスやショルと共演したパスカル・ベルタンといった大物が集う実力派ソリスト集団。彼らの技量を、親しみやすい後期イタリア・バロックの作品であますところなく堪能できるのがこのアルバム。 ウィーン少年合唱団やイル・セミナリオ・ムジカーレ(ジェラール・レーヌ主宰)の名盤をはじめとするさまざまな名録音で古楽ファンには親しみ深い存在となっているイタリアの大家カルダーラ。ヴィヴァルディとヘンデルとコレッリの間をゆくような作風といえばわかりやすいだろうか? ここで聴ける室内二重唱カンタータは声楽パートの扱いにたけた彼の真骨頂が凝縮されたような作品。どちらも30分近い、聴き応えのある名作だ。しかもどちらも世界初録音である。二大作の間に、うまく室内楽曲が組み込まれているのも嬉しい。カルダーラは器楽曲の録音も少なくないとはいえ、こうして声楽曲とあわせて楽しめるとなると魅力倍増。ましてや演奏陣が演奏陣だ。隅々まで「うっかり見過ごせない」要素でいっぱいの一作。 | ||
| フランツ・フィンツェンツ・ クロンマー(1759-1831) (フランティシェク・ヴィンツェンツ・クラマーシュ): 管楽八重奏のためのパルティア集 管楽八重奏のためのパルティータ ヘ長調Op.57/ 管楽八重奏のための ハルモニー(パルティータ) ハ長調Op.76/ 管楽八重奏のためのパルティータ 変ホ長調Op.69 |
アンフィオン 管楽八重奏団 | |
| ピリオド楽器使用。見過ごしちゃいけない傑作盤!クロンマーの十八番・管楽合奏の面白みを縦横無尽のピリオド演奏で味わいつくせる超名演! かつて名手H.ホリガーやP=L.グラーフらがClavesに続々と名盤を作ってくれたおかげで日本でも名が知られるクロンマーは、ベートーヴェンと同時代のウィーンで活躍した名匠だ。とくに当時アマチュア演奏家たちを中心におどろくばかりの人気を誇ったのが、愉悦と皮相のいりまじる管楽合奏のための作品群。録音もS.マイヤーの合奏団やコンソルティウム・クラシクムのものをはじめ名盤もちらほらあるが、このご時世にもかかわらず何故かピリオド楽器録音が意外に少ない!そこにこの録音、たんに「待望のピリオド楽器録音」というだけにとどまらず、ひたすら闊達、自由自在の音楽性を縦横無尽に味あわせてくれる傑作盤なのだ(PAN-510142という番号で2003年に輸入盤を御紹介したことがあるが、廃盤となっていた)! このたび Digipack 美麗ジャケットで再発売。 収録曲3作は盛期の名作ばかり、ナチュラルホルンを勇壮に(あるいは優美に)ヴイヴイと鳴らし、クラリネットやオーボエが滑らかな吹き口で饒舌に語る、楽器の入れ替わるタイミングもお手の物、時に独特のユーモアをちらつかせ…といったクロンマーならではの作風が存分に発揮されている。録音多数の「作品57」など、調子の良いテンポにひるむどころか益々活気づくピリオド楽器奏者達の実力派ぶりに驚くばかり、既存の名演群を悠々追い抜く、確たる音楽作りだ。ピリオド・コントラファゴットや、知る人ぞ知る野趣あふれる野外楽器セルパン(!)を低音に配しているのも魅力だ。 「いかにもクロンマー!」といったオーストリア=スラヴ系の諧謔を、ピリオド楽器でここまで本格的に満喫できる機会は滅多にない。20世紀末のモダーン楽器名演群の向こうを張るにふさわしい、新時代の本格的代表盤! | ||
| シュトラウス一族のワルツ&ポルカ集 ヨハン・シュトラウスII: ワルツ「芸術家の生涯」Op.316/ ポルカ「ハンガリー万歳」Op.332/ ワルツ「レモンの花咲くところ」Op.364 ヨゼフ・シュトラウス&ヨハン・シュトラウスII: ピツィカート・ポルカ ヨーゼフ・シュトラウス: ワルツ「ディナミーデン」Op.173 ヨーゼフ・シュトラウス: ポルカ・マズルカ「女心」Op.166 ヨハン・シュトラウスII(ヴェーベルン編): 宝石のワルツOp.418 ヨハン・シュトラウスII(ベルク編): ワルツ「酒・女・歌」Op.333 |
ルドルフ・レオポルド (ハルモニウム) テレサ・ ターナー=ジョーンズ(P) ウィーン弦楽六重奏団 | |
| 室内楽編成によるウィンナ・ワルツとポルカ集。2曲以外の編曲者は不詳。 | ||
| アレクサンダー・ ツェムリンスキー(1871-1942):歌曲集 7つの歌曲(1889-90)/マーテルランクの詩による七つの歌Op.13/ 5つの歌曲(1895-96)/ 2つのブレットル=リート(1901)(=キャバレー・ソング) |
ヘルミーネ・ハーゼルベック(Ms) フローリアン・ヘンシェル(P) | |
| 旧品番:PAN-510162。ヴォルフとシュレーカーのはざま、マーラーの同時代。知られざるツェムリンスキー歌曲、生前未出版作品を中心に、本場の名歌手による魅惑の26トラック。 世紀末ウィーンに花咲いた徒花、知れば知るほど奥深いツェムリンスキーの、いわば心情告白ともとれる親密にして多彩な歌曲群を、本場の歌い手が鮮やかに、細やかに、宝玉のような知られざる小宇宙の魅力をひとつひとつ解き明かしてゆく。録音シーンでは意外に優遇されているこの作曲家、「叙情交響曲」をはじめ管弦楽曲・管弦楽伴奏付つき歌曲にくらべピアノ伴奏の歌曲はリリースが少なく(既発売は2タイトルくらい?)、しかもドイツ語圏、それも本場オーストリアの歌い手によるものとなると類例がなかったのでは?そこへこのハーゼルベック(ウィーンで忘れがたき往年の名花リタ・シュトライヒに師事したうえ、アルノンクールとの共演で名高いアルノルト・シェーンベルク室内合唱団にも長く所属していたという)。つまり、古きウィーンと先鋭的ウィーンの双方をよく知る生粋の歌い手というわけだ。あくまでロマン的な情緒がうっすらと綺麗な温もりを添える初期作品(シューベルトのようなナイーヴさもある)から、諦念と退廃のなかで爽快な突き抜け方をみせるキャバレー・ソングまで、シーレやクリムトの情念や肉感というより、ヨーゼフ・ホフマンの版画やシュニッツラーの小説のように“瀟洒で洗練された世紀転換期”を感じさせる充実作の数々をみごとに歌い分け、各作品にふさわしい雰囲気をたちどころに作り上げてしまう! 伴奏はARTE NOVAでのグリーグ・アルバムでディスク・ファンにはおなじみのベルリンっ子F.ヘンシェル。手際よく歌を支えつつ、欲しい所で自己主張してくれる好サポートぶりもこれまた傾聴に値する。 | ||
| モーツァルト、最後の日々〜晩年のピアノ作品、 オルガンや自動オルガンのための作品集 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-91): ピアノ・ソナタ第17番 ニ長調 K.576 シャック(またはゲルル?)のアリア 「女ほどすてきなものはない」の主題による変奏曲 K.613/ 自動オルガンのための音楽 ヘ短調 K.593/ 自動オルガンのためのアンダンテ ヘ長調 K.616/ 自動オルガンのための音楽 ヘ長調 K.608/ |
ミヒャエル・ガイリート(P/Org) | |
| 使用楽器 ピアノ:スタインウェイC、オルガン:パッサウのアイゼンバルト工房、2002年製(ウィーン、聖アウグスティン教会)。見過ごされがちな晩年の隠れ名作群を、現代楽器で歴史的考証をふまえたユニークな奏法で弾く!自動オルガン曲は「原譜どおり」の貴重な解釈。 モーツァルト晩年の鍵盤独奏曲のなかでも、とくに見過ごされがちな作品を集めた一作、ウィーンの俊英奏者ガイリートが、なんとオルガンとピアノを弾き分けて1人で完成させてしまったアルバムだ。 ガイリートはウィーンを中心に世界をまたにかけて活躍中の名手で、しばしば一夜のうちにピアノとオルガンを両方弾き分ける演奏会を催しているとのこと。リストの弟子で「ピアノ・ソナタ」と「オルガンのための詩編94番」によって今に名を残しているロイプケについて著書があるというのも何となく納得だ。本盤での彼はフォルテピアノや歴史的オルガンにこだわることなく、ピアノのための作品には現代ピアノを、自動オルガン作品には4段手鍵盤ペダルなしの現代オルガンを用いて普遍的に仕上げて・・・と思いきや、それぞれの楽器でユニークな奏法を展開。「18世紀の楽器は、音域ごとに音色が不均質で、それがまたいい」との見方から、スタインウェイを使っているにもかかわらず音域ごとに微妙にタッチを変え、フォルテピアノ風な味わいをかもし出そうとしている。オルガンの方でも足鍵盤なしの現代楽器を使っているものの、現場的判断から修正されてしまうことの多い二度音程の不協和音なども含め逐一すべて原譜の音符どおりに弾いてみることで、モーツァルトがひそかに狙っていた意外な演奏効果をそのまま提示してみせる(自動オルガン作品の演奏にまで注目している熟練リスナーは必聴!)。 | ||
| ヴァイオリンのための近代音楽傑作集 レオシュ・ヤナーチェク(1854-1928):ヴァイオリンと ピアノのためのソナタ ベーラ・バルトーク(1881-1945):ヴァイオリンと ピアノのためのソナタ第2番 モーリス・ラヴェル(1875-1937):ツィガーヌ 〜ヴァイオリンとピアノのための演奏会用狂詩曲 オリヴィエ・メシアン(1908-92): ヴァイオリンとピアノのための主題と変奏 |
ブリギッテ・ラング(Vn) イヴォンヌ・ラング(P) | |
| 旧品番:PAN-510164。NDRハンブルク響の助席コンサートミストレスら、ルツェルン生まれの姉妹デュオ、緻密な室内楽世界はR.クスマウルやI.クランスキーら直伝の味わい! ルツェルン生まれのラング姉妹デュオは、1990年代からバウムガルトナーに招かれルツェルン音楽祭に出演、その後もスイス内外の音楽祭から招聘を受けつつ、ウィグモア・ホールやベルリン・フィルハーモニー、チューリヒのトーンハレなど名だたる大ホールで活躍、2000年頃から Claves や Gallo などスイス屈指のレーベルで録音を続けている(ブリギッテの方は2002年以来NDRハンブルク響の助席奏者でもある)。Clavesでのスイス人作曲家作品集は早々に仏DIAPASONで5ポイント満点を獲得したそうだが、その実力のほどを「ツィガーヌ」ほか近代の有名作曲家作品でじっくりと味わえるのがこの新譜。レパートリーの拡充に意欲的なだけでなく(そういう姿勢を崩さない若手奏者は往々にして伸びる・・・と代理店は考えているようだ)、多くの巨匠連中にも弾き込まれてきた傑作をこれだけ立派に聴かせられると、期待はなお高まらざるを得ない。何でもヴァイオリンのブリギッテはR.クスマウルやアルバン・ベルク四重奏団のG.シュルツに、ピアノのイヴォンヌはG.シェベックやI.クラーンスキーに師事してきたとのこと・・・玄人リスナーの方々ならご存知のとおり、いずれも室内楽を非常に大事にしてきた名奏者だ。シャープさと玄妙なピアニシモの間でじわりと形成されてゆく音楽、鬼気せまる迫力と阿吽の呼吸のバランスが醸し出す期待感と迫真性――何はともあれ、注目に値する2人だ。先が楽しみ・・・というか、もうすでに圧倒的に面白い気鋭デュオなのだから! | ||
| ジャック・シャンピオン・ シャンボニエール(1601/2-1672以前):クラヴサン小品集 クラヴサンのための組曲 二短調/ クラヴサンのための組曲 ト短調(パリ、1670)/ クラヴサンのための組曲 ハ短調/ クラヴサンのための組曲 二短調/ クラヴサンのための組曲 ト短調 |
フランソワーズ・ランジュレ(Cemb) | |
| 録音:2003年4月、ベニ=シュル=メール荘、フランス北西部カルヴァドース。使用楽器:トゥルーズのV.ティボー作、1681年製。 フランス・バロック・ファン、チェンバロ・ファンが待ちに待ったアイテムの登場。シャンボニエールといえばフローベルガーやL.クープランらが活躍をみせるよりも早く、またゴーティエ父子やブランクロシェといった偉大なリュート奏者たちが幅を利かせていた時代に、フランス・クラヴサン音楽の基礎をきずいた偉大な先達。フランス的クラヴサン独自のイディオムよりも、むしろイギリスのヴァージナル音楽やフランスのリュート芸術を写し取ったような作風には独特の魅力がある。にもかかわらず、そしてランドフスカの時代から重要性は認識されていたにもかかわらず、単独録音はほんとうに稀少なままであった。そこに、このアルバムの登場である。ファンの積年の渇きを癒してあまりあるアイテムだ。 演奏しているのは、以前LYRINXでもシャンボニエールのアルバムを制作したことがあるフランスの名奏者ランジュレ。コア・ファンにとっても嬉しいこちに、重複曲はほとんど皆無にひとしい。そして前作が18世紀ロココ式に仕上げられたリュッケルス=ブランシェの楽器であったのに対し(あれはあれで魅力的な音響の録音になってはいたが)、今回はティボーによるオリジナル楽器を採用、17世紀そのままの響きをあざやかに甦らせている。オーセンティシティの高さではこの新録音が断然上というこちになるだろう。 チェンバロ音楽ファン、フランス・バロック・ファン、ひいてはギター&リュート音楽ファンにもぜひおすすめ。MUSICA NUMERISの敏腕技師A.ガレロンも音響を綺麗にすくいとり、楽器とアーティストの持ち味をありありと伝える良いアルバムになっている。 | ||
| クレメンティ:フォルテピアノのための後期作品集 カプリッチョ第4番 ホ短調 Op.47-1/ カプリッチョ第5番 ハ長調 Op.47-2/ 前奏曲第1番「コジェルフ風に」/ ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Op.41/ 「ピアノのための12のモンフェリーヌ」より(抜粋;5曲)/ 「月の光に」もとづく変奏曲 Op.48 |
エドゥアルド・トルビアネッリ(Fp) | |
| 録音:2003年1月&9月、クレムゼッグ城、クレムスミュンスター、オーストリア。使用楽器:クレメンティ社1812年製。 滅多に聴けない、晩年のクレメンティが到達した境地。しかも、使用楽器は「クレメンティ社」の完璧なオリジナル。フォルテピアノ音楽上半期の白眉ともいえるクレメンティ作品。飛ぶ鳥も落とす勢いでのし上がっていった1770-80年代の整然とした古典派的ソナタは現代ピアノ、フォルテピアノともにすっかり録音も増えて市民権を得た感があるが、ここに収録されているのは後期の作品集。初録音のソナタ1曲をはじめ、他にはそうそう録音もない珍しい曲ばかりだ。初期のクラシックな作品のなかにも個性的な書法をみせるものは少ないないが、それがここでは大きく発展して、ほとんどベートーヴェンにも迫る逸脱した形式とロマンティシズム漂う作品に仕上っているものばかり。冒頭のふたつの「カプリッチョ」もそれぞれ4楽章からなる、いわば自由なソナタといった風な充実作である。小品群も、聴いているうちにどんどん釣り込まれてしまうエキサイティングな作品の連続だ。イタリア出身のフォルテピアノ奏者トルビアネッリの演奏も非常に堂に入ったもので、細かな配慮もゆきとどいていて作品への愛を感じさせる。そして使用楽器にも注目。なんと、作曲者をしこたま儲けさせたあの名高い「クレメンティ&Co.」のオリジナルの銘器が使われているのだ。バックチェック機構のついた、かなりしっかりした響きのサウンドで、当時の最先端を思わせる頼もしい楽器のようである。 クレメンティの後期作品の録音が非常に少ないことをひそかに嘆きつつ、無為にCDショップを巡り歩いていたピアノ音楽・ファン、古楽派ファンは決して少なくないはず。そんな方々に、ぜひおすすめした名録音の登場なのである。 | ||
| アレッサンドロ・ロッラ(1757-1841): ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲集 二重奏曲 変ロ長調Op.13/二重奏曲 ハ短調Op.4-2/ 協奏的二重奏曲 変ホ長調Op.7-2/ 二重奏曲 ハ長調Op.9/ 協奏的二重奏曲Op.7-1〜アダージョ ヘ短調 |
イザベル・ファウスト(Vn) トーマス・ライプル(Va) | |
| 録音:2002年12月12-19日、ボースヴィル芸術館(Kunstlerhaus Boswil)、スイス。録音技師:服部光一郎。編集:イェンス・ヤーミン(MUSICA NUMERIS)。 ついに出た、ロッラ・ファン待望の新録音! イザベル・ファウスト&ウィーンの名手ライプルという豪華演奏陣による、磨き抜かれた初期ロマン派の快作群! ヴィオッティとパガニーニそれぞれと活躍期が重なっている、1800年前後のイタリアに生きたヴィオラとヴァイオリンの名手アレッサンドロ・ロッラ(1757-1841)。イ・ムジチ合奏団による、同合奏団の名ヴィオラ奏者マッシモ・パリス独奏で録音されたPHILIPSの名盤はいわずもがな、イタリアのDYNAMICやSYMPHONIAなどでの名録音も忘れがたい、なにげに名演に恵まれた作曲家でもあり、隠れたファンも少なくないようだ。そんなロッラ・ファンの渇をいやしつつ、一般のクラシック・ファンにも大いにアピールできる新譜がここに登場!ヴァイオリンとヴィオラという低音なしの編成ながら、後期古典派の堂々たる形式美をそなえつつ、イタリア人ならではの美しい旋律や和音の妙味に彩られたロッラの面目躍如たる立派なソナタ3曲に、ソナチネ的な小二重奏曲が1曲とアダージョ楽章1曲を収録している。 ヴァイオリンとヴィオラの二重奏といえば、M.ハイドンの代打ちとしてモーツァルトが書いた2曲が有名だが、ロッラの二重奏曲は数も豊富なうえ(ほかにDYNAMICにアッカルドとビアンキ、TACTUSにロンコとイアネッタの名演などがあるが、本CDの収録作はどれもかぶっていない!という嬉しさ)どれも堅固な形式で書かれており、聴きごたえ充分。シューベルトやベートーヴェンの音楽世界を楽しめる人にもぜひおすすめしたい魅力あふれる作品群なのである。前述のTACTUS盤やDYNAMIC盤とあわせ、ぜひ聴き込んでいただきたい。なにしろ演奏はイザベル・ファウスト、対するヴィオラはウィーン弦楽六重奏団などで活躍をみせているヴェテランのトーマス・ライプル。堅固かつ緻密、雄弁にして繊細な2者のアンサンブルが、スケールゆたかに織りなされてゆく...録音はもちろん精鋭集団MUSICA NUMERIS。彼らの音楽を余すところなく汲み取った優秀録音だ。 | ||
| フランソワ・クープラン(1668-1733): ヴィオールのための作品集 ヴィオールのための第1組曲/ ヴィオールのための第2組曲/ コンセール「ラ・スュルターヌ」/ コンセール第10番「嘆き」/ 2本のヴィオールのための第2コンセール/ 「王宮のコンセール」第3番 |
ロレンツ・ドゥフトシュミット (バス・ド・ヴィオール) ウルリケ・ベッカー(バス・ド・ヴィオール) アンドレアス・ビルガー(Vn) ウルリケ・フィッシャー(Vn) ボブ・ファン・アスペレン(Cemb) | |
| 録音:2003年6月、ヴァルバック、東フランス/2003年9月、クリーグラハ、オーストリア。録音技師:服部光一郎&ジェンス・ジャマン(MUSICA NUMERIS) あまりにも素晴らしい弓さばき。名手ドゥフトシュミットがフランスのエスプリを縦横無尽に弾きこなす。通奏低音にはなんとボブ・ファン・アスペレンが参加。「ドゥフトシュミット」で「クープラン」。もはや何か説明がいるだろうか? ヨーロッパ古楽界に冠たるARCANAレーベルでフックスやテレマンなど数々の傑作アルバムを連発、つい最近ではCPOでマラン・マレの見事なアルバムを製作したドイツ出身の名ヴィオール奏者、ローレンツ・ドゥフトシュミットである。サヴァール、パンドルフォらと並んで現代ヨーロッパを代表する名手である彼が、傑作アルバムも少なくないクープランのヴィオール作品集に乗り出したのである。 収録曲は重要な二つの組曲のほか、初期の2作(2本のヴィオールのためのコンセールと、フランソワ・フェルナンデスやA.ベルナルディーニらによるAlphaのクープラン作品集(Alpha-062)にも収録されていた「ラ・スュルターヌ」)ならびに「王宮のコンセール」まで集めるという豪華さ。つまり、ヴィオールを通じてクープランの室内楽世界をその初期から晩年まで一覧できるという内容だ。 チェンバロは年々腕が冴えつつある実力者ボブ・ファン・アスペレン。ソロ活動では昨今Aeolusでのフローベルガー全集もかなり順調のようだが、こんなところで気鋭奏者たちを立てつつサビの効いた伴奏を聴かせてくれるあたりが心憎い。ドゥフトシュミットの柔軟な音楽づくりに寄り添うように、あたたかく包み込むような綺麗なサポートが快く、作品の魅力が二倍三倍に増すかのよう。 エンジニアリングをつとめるMUSICA NUMERISの仕事ぶりも鮮やか。チェンバロを後退させてドゥフトシュミットの名技をあますところなく愉しませつつも、通奏低音の的確なサポートが要所要所でさりげなく聴こえてくる。音楽内容をよく咀嚼しての好録音といえるのでは。 | ||
| 最後の審判〜M.A.シャルパンティエ:宗教音楽作品集 イエスのいと甘美なる変容 H.251/ 神による最後の審判 H.401/聖ペテロの否認 H.424/ サルヴェ・レジーナ(3重合唱のための) H.24/ 聖母マリアのリタニア (2つの上声とバスのための) H.86/ 死せる者のためのモテ H.311 |
グレアム・オライリー指揮 アンサンブル・エウロぺーン・ ウィリアム・バード | |
| 録音:2003年5月、フォンモリニ修道院、メヌトゥー=クチュール、東フランス。 柔軟な表現力、複雑きわまる音楽をあざやかに歌いこなす一体感。シャルパンティエの魅力が凝縮された一作。物語性がつよく劇的展開に富む「聖ペテロの否認」と「神による最後の審判」を主軸にすえ、大小さまざまな編成の作品をあつめたシャルパンティエの宗教曲集。どれも非常に力の入った作品ばかりで、この繊細にして技巧に富んだ作曲家の芸術性を隅々まで堪能できるアルバムとなっている。演奏は、バードの名を冠しているにもかかわらずフランス系の奏者が多くめだつアンサンブル・エウロぺーン・ウィリアム・バード。合唱は1パート2人程度で、驚くほど引き締まった演奏をきかせてくれる。いずれ劣らぬ複雑な構造をもつ難曲ばかりを揃えながら、ここまで完璧なアンサンブルを聴かされると、さすがに圧巻だ。通奏低音にはテオルボの名手モンテイエの名もみえる。シャルパンティエ・ファンにはたまらない内容の新アルバムといえるだろう。 | ||
| モーツァルト:セレナーデ集 [第11番 ヘ長調 K.375/ 第12番 ハ短調 K.388「ナハトムジーク」/ 第13番 変ロ長調 K.361 「グラン・パルティータ」 (管楽八重奏のための縮小 & 4楽章版)] |
アンフィオン 管楽八重奏団 | |
| ピリオド楽器使用。管楽八重奏のための不朽の名作2作で鮮烈な音楽性を印象づけるだけでなく、「グラン・パルティータ」からの“キモ "まで演奏してしまった嬉しい秀逸アルバム! 古楽復興全盛の当世ながら、ピリオド楽器による管楽合奏団というもの自体は意外に少ない。バーゼルから燦然と現れた冗談ぬきでウマいアンフィオン管楽八重奏団の存在は貴重きわまりない。メンバーはベルリン古楽アカデミー、コンチェルト・ケルン、レザール・フロリサン...といったヨーロッパ最前線の古楽団体でばんばん活躍中の精鋭たち。見事な一体感あるアンサンブルを通じ、オーボエもクラリネットも快活な吹き回しから弱音の憂愁まで思いのまま、ナチュラルホルンは流々、完璧なテクニックとコシの入った音色で音響にスケールをもたらし、粒立ちの揃ったファゴットは逐一細やかに音楽を彩る、さらにピリオド・コントラバスの低音がアクセントを添え、醸し出される音楽は超一級!その魅力をつぶさに味わうには、モーツァルトの名曲による本盤が最適。 あくまで自然なテンポ・音楽展開にもかかわらず、描き出される音楽はなんと精彩に富んでいるのだろう!ドラマティックな ハ短調のK.388 では絶妙の陰翳で冒頭から聴き手をつかみ、心地よい長閑さのなかにモーツァルト独特の“さびしさ "が一筋流れる 変ホ長調K.375 はいつまでも聴いていたくなるような至上の美しさ!そして嬉しいことに、超名作ながらあまりにも長大なうえ本来は13もの楽器が必要な「グラン・パルティータ」を“18世紀の演奏事情にかんがみ "、当時の標準編成である管楽八重奏用に編曲、ソナタ的に中核をなす4楽章を抜粋して演奏するという、なんとも豪華な“おまけ "つき! ・・・ちなみに、ジャケットは「単に奏者たちの好みで」なぜか北斎版画。 | ||
| フランツ・フィンツェンツ・クロンマー(1759-1831) (=フランティシェク・ヴィンツェンツ・クラマーシュ): 二重協奏曲と協奏交響曲 2本のクラリネットと管弦楽のための協奏曲 変ロ長調Op.35/ 協奏交響曲 ニ長調Op.80〜フルート、クラリネット、 ヴァイオリンと管弦楽のための |
クルツィオ・ペトラリオ(Cl) フレデリク・ラパン(Cl) ブリギッテ・ブクストルフ(Fl) ヤクプ・チェルノホルスキー(Vn) ヤークプ・フロシャ指揮 チェスケー・ブデヨヴィツエPO. | |
| “スイスの管”も“チェコの弦”も、いまだ健在!往年のグラーフやスークを髣髴させる若手名手らが古典派の“隠れ名人”クロンマーの旨みを堪能させる。 フルートのA.二コレやP=L.グラーフ、クラリネットのE.ブルンナーやT.フリードリ・・・と、スイス人音楽家に管の名手が多いことはご存知のとおり。スメタナ四重奏団、J.スーク、V.フデチェク・・・と、チェコ人音楽家に弦の名手が多いこともご存知のとおり。それは「あの頃はよかった」的な往年の話ではなく、今でもやはりその通り。本盤でも、特産品のビールで知られるチェコ地方都市の楽団がわくわくするようなサウンドを奏で、若きスイスの管楽器奏者達と30歳そこそこのチェコ人ヴァイオリニストが、実力あらたか、「ごまかしのきかない」古典派の作品で各楽器の音色のうまみをじっくり味あわせてくれる。 ベートーヴェンと同時代のウィーンで活躍し、レイハやダンツィらとともに管楽器のための名作を次から次へと書き続けたチェコ出身のヴァイオリニスト=作曲家クロンマーのことは、Clavesの名盤群など膨大な数になる既発売盤でご存知の方も多いだろう(何を書いても創意にあふれ、活力とスリルとコントラストと情感がみっしり詰まった名作に仕上げてしまう、いわば「古典派のテレマン」と目すべきハズレの少ない名人だ)。本盤収録のふたつの多重協奏曲は、モーツァルトの管楽器協奏曲群をもっと聴きたい!といった方にぜひお薦め、クロンマーの面白さを端的に伝える恰好の入門盤となっている。現代音楽シーンでも活躍中の(←まさに往年のスイス人名手らと同じだ)クラリネット奏者2人も、やわらかな音色が魅力のフルートも、そして端正なヴァイオリンも・・・聴き込んで良しBGMに良し、間違いのない1枚なのである。 | ||
| ベラルーシの近代室内楽 ヴァレリー・カニンコフ(1940-): フルートと弦楽四重奏のための フルート五重奏曲(2000) ガリーナ・ゴレロヴァ(1951-): フルート、ギターとチェロのための 「セクストン邸の上にあるスターリン像」(2004) セルゲイ・ベルチュコフ(1956-):弦楽四重奏曲(2003) ドミトリー・リビン(1963-): フルート、ギターと弦楽四重奏のための 「グリンカの主題による 7つの小さなファンシー」(2003) フセヴォロド・グリツケヴィチ(1947-): フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロと ギターのための「詩曲」(2003) |
ミンスクSQ ブルーノ・マイアー(Fl) ハン・ヨンケルス(G) | |
| “フルートのハイフェッツ "と謳われたブルーノ・マイアーも大々的に参加!手堅くも聴きやすいネオ・ロマンティシズムに酔う! バルト三国の南、ポーランドとウクライナの間にまたがる旧ソ連の大国ベラルーシ(白ロシア)は、考えてみればクラシック音楽の世界で見過ごされてきた一国ではないだろうか? 実際のところ、ソ連やロシアのそれから独立した本格的なベラルーシュ楽壇のようなものが確立されてゆくのはソ連崩壊後になってからのようながら、ここに集められた作品群を聴くかぎり、そうした新しい音楽界が余計な新技法や過剰に複雑な不協和音などに冒されることなく、じつに健全なロマンティシズムを羽ばたかせているのがわかる。まさに21世紀のネオ・ロマンティシズムといった感覚が、本盤に横溢しているのだ! モスクワや首都ミンスクの音楽院で鍛え上げられ活躍してきた面々は、時にギターもあしらいながら(ボッケリーニやC=テデスコらの曲のような自然さで弦楽器とからみあう、これがまた素敵な風采を添えている!)、まるで晩期ロマン派のような、あるいはペルトやグバイドゥーリナのような確かな手触りの、耳に心地よい響きを連ねてくれる。1970年代生まれの若い奏者たちによるミンスク四重奏団の手腕はまったく確か(この面子で古典作品も聴いてみたいもの!)だが、そのいっぽう「フルートのハイフェッツ!」と讃えられたドイツの超・実力派ブルーノ・マイアーが参加しているのも、室内楽・管楽器ファンなら見過ごせないところ。自由自在の円やかな吹き口は、ほんとうに美しい! | ||
| モーツァルト: ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 K.219「トルコ風」 バルトーク:第2狂詩曲 イザイ:ヴァイオリンとピアノのための「叙情的詩曲」Op.12 サン=サーンス:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番Op.75 |
矢野玲子(Vn) ウェルナー・エーアハルト指揮 ジュネーヴ室内o. セルゲイ・クドリャコフ(P) | |
| 華々しい受賞歴は伊達じゃない、技巧だけでなく音楽性やアンサンブル力もあってこそ!!節目正しくも溌剌としたモーツァルト、ベテラン並の“+アルファ”がある近代作品解釈。コンチェルト・ケルンのエーアハルトが振る、引き締まった現代楽器オケのサウンドも必聴! 2004年ジュネーヴ国際コンクールで最高位(1位なし2位)に輝いただけでなく、今2006年ベオグラード国際コンクールではみごと優勝&聴衆賞を獲得。そして今秋10月には都響(小泉和裕指揮)とチャイコフスキーの協奏曲での共演が決まっている新世代の名手・矢野玲子(Vn)が、さきのジュネーヴ国際コンの肝煎りによりPan Classicsで素晴らしいアルバムを制作した。 テクニックが素晴らしいとか、勢いがある、とかいうレヴェルではない。溌剌と音楽の喜びをほとばしらせながらも、解釈にはヴェテラン並の冷静な一貫性が!気迫で気疲れしそうなスパルタ系でも、ロマンティックに酔いつぶれた耽溺系でもない、すでに「名演奏プラスアルファ」を感じさせてやまない演奏のクオリティ、20歳そこそこの若手とは思えません。ありがちな新人デビュー盤と明らかに一線を画す“隠れ充実ポイント”として、モーツァルトの協奏曲でコンチェルト・ケルンの首席バロック・ヴァイオリン奏者ウェルナー・エーアハルトが指揮しているのも見逃せません!節目正しい冒頭のリトルネッロ、矢野の演奏に触発されつつもソリスト共々構成感を失わず、豪放なホルンも端正な弦も冷静に白熱してゆくさまは驚くほどハイレヴェル! さらに、現代作品群のプログラムがまた奮っている。プルーストの長大な小説「失われた時を求めて」に出てくるソナタのモデルとなったと言われ、存在は有名なのになぜか演奏は少ないサン=サーンスのソナタやら、イザイの「無伴奏ソナタ」ではない秀逸小品やら...ヴァイオリン好きの玄人リスナーも食指を動かされそうな曲目が、端正かつ香気漂う秀演で聴けるこの嬉しさ! | ||
| ドメーニコ・マツォッキ(1592-1665) 聖と俗のあいだ〜マドリガーレと宗教ディアロゴ集 イエス、甘美なる思い出/ 愛神を屈服させるための戦い/ 神よ、怒りをしずめて下さい/ 世の噂話の向こうを張って/富の女神よ、その顔に髪が/ いと麗しき聖処女マリアに/「雅歌」の対話/ 涙にくれるマグダラのマリア/マリアとイエスについて/ 愛神にばかり従ってきたことへの悔恨/ 我らが主イエス・キリストの死に涙せよ/ すぐさま立ち上がれ、愛する人よ/ 我らの人生はなんと短い/ つまらぬ恋で涙してはなりません/ 神よ、我らの苦節はなんと空しい |
モニク・ザネッティ、 ジャン=フランソワ・ ロンバール(歌)他 ジェローム・コレアス (Cemb/Org)総指揮 アンサンブル・レ・パラダン | |
| ピリオド楽器使用。これほど生々しいマツォッキがあっただろうか?!カリッシミ盤でみせた迫真の演劇性そのまま、ことばに躍動感を吹き込むレ・パラダンの鮮やかさ。 ともすれば堅苦しいか高尚すぎるイメージもあるカリッシミのオラトリオ(PC-10182)を、メンバー各人のオペラ的ポテンシャルの高さを生かした劇的な解釈でおそろしく面白い劇音楽として切り取ってみせたレ・パラダン。今度はさらに時代を遡り、さらに堅苦しく“倫理的 "だの“警句 "だのという言葉のちらつく曲集を編んだ知的作曲家マツォッキに光をあてるという、そして易々、またしてもヴィヴィッドな躍動感をもって作品のイメージを一新するというから驚きだ。バロック音楽をよく知るうえで、17世紀初頭の「高尚かつ知的な」ローマ声楽音楽は欠くべからざるジャンルだから、こうして聴きやすくも本質に迫った、そして何よりエキサイティングな録音が登場するとは本当に有難い。 マツォッキはランディやM.ロッシ、L.ロッシらと同時代つまり「初期バロックの末期」のローマで活躍した作曲家。音楽内容の深さでは群を抜くジル・フェルドマン盤(ASM-002)はスタンダードな決定盤だが、こちらは演奏機会の多い形而上的声楽曲とあわせ、なんとマツォッキのマドリガーレまで収録しているのもポイント。初期バロックらしい半音階の入り乱れる表現語法で恋について歌うにせよ、レ・パラダンの面々のような劇音楽に強い面子(メンバーは古楽歌劇上演の最前線で活躍している人ばかり)なくしては心に届かないのでは?「初期バロックは難しい」と思っている方々にも安心して勧められる、興奮必至!の珠玉の1枚だ。 | ||
| フランチェスコ・ガスパリーニ(1661-1727)、 ヴィヴァルディの先達〜ソナタとカンタータ 2声と器楽合奏のためのカンタータ 「せめて、なぜだか解っていれば」/ 独唱と器楽合奏のためのカンタータ 「はなれているということ」/ シンフォニア=トリオ・ソナタ/ 独唱と通奏低音のためのカンタータ 「死とは何かを知らぬ者は」/ 2声と器楽合奏のためのカンタータ 「ねえ、やさしいダリーゾ」 |
アンサンブル・フォンス・ムジケ [今村泰典(テオルボ) フランソワ・フェルナンデス(Vn) ロラン・ステヴァール (Org/Cemb) ロベルト・ジーニ(Vc) モニク・ザネッティ(S) パスカル・ベルタン(CT)] | |
| ピリオド楽器使用。ヴェネツィアの楽団におけるヴィヴァルディの先任者。きわめて貴重な新録音。なんとフェルナンデスやベルタンら超絶名手らによる、この演奏の素晴しさ! どちらも2006年、来日公演を果たしたリュートの今村泰典とヴァイオリンのフランソワ・フェルナンデスを中心とする器楽陣に、フランスのバロック・オペラ上演には欠かせない気鋭歌手ふたりを加えたフォンス・ムジケ。今回お送りする待望の新録音は、意外と知られていない“ヴィヴァルディの先任者 "で、ヴェネツィア・バロックの転換期を担った巨匠ガスパリーニの作品集。10年前のOPUS111でのカンタータ集以来、どうにも恵まれぬガスパリーニのディスコグラフィを潤してあまりある名トラックの連続だ。 ガスパリーニはルッカ近郊に生まれ、ボローニャでの修業時代を経てヴェネツィアでレグレンツィに師事。ヴィヴァルディが来る直前まで、同市の孤児院ピエタの音楽監督だった。後年はローマで活躍、オペラを多数残している。A.スカルラッティと殆ど同じ年代を生きた名匠だ。 本盤が何より嬉しいのは、ただでさえヴァイオリンをフェルナンデスが担当してインテンスな演奏を繰り広げているうえ、さらに通奏低音奏者にチェロのロベルト・ジーニ、鍵盤にローラン・ステヴァールら今もっとも多忙かつ脂の乗った俊英が加わっていること。あざやかな器楽合奏で、壮麗なシャコンヌを含むソナタが聴ける有り難さ! ザネッティとベルタンの、芯の通ったしなやかな歌い口もまた美しい。知られざる巨匠への第一歩として、大いにお勧めしたい一枚だ。 | ||
| アントワーヌ・フォルクレ(1672-1745)& ジャン=バティスト・フォルクレ(1699-1782): 「ヴィオールのための作品集第1巻」 (1747年出版 全5編計31曲) |
ローレンツ・ドゥフトシュミット、 クリストフ・ウルバネツ(Vg) ヨハンネス・ヘーメルレ(Cemb) トーマス・ボイゼン(G/テオルボ) | |
| 天使のように弾くマレと並んで「悪魔のように弾く!」と讃えられた鬼才フォルクレ。ファン待望、初の“全集録音 "が、超・大本命ガンバ奏者ドゥフトシュミットの名演で登場!バロック後期らしい雄弁・繊細・多彩な音楽は、マレよりも聴きやすく、ひたすら面白い! オーストリア随一、いや今やサヴァールやパンドルフォらと並ぶヨーロッパ最高のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者のひとりローレンツ・ドゥフトシュミット待望の新譜が登場。しかもガンバ・ファンなら誰もが「誰かやらないか」と思っていたフォルクレ作品の全集というからたまらない! ドゥフトシュミットは ARCANA から Pan Classics に移った後に自身のレーベルまで起こしているが、こういう嬉しい傑作盤を Pan Classics からリリースしてくれたことに大感謝! A.フォルクレは1700年前後に活躍したフランスのガンバ奏者で「マレは天使のように、フォルクレは悪魔のように弾く」と並び称された大御所。息子のJ−B.フォルクレも“父とまったく同等の技量をもつ "と絶賛されたガンバ奏者で、父の歿後その作品を整理・1744年に出版したのも息子のほう。出版譜はしかし初期ロココめいた作風をしめしているため父の作か息子の作か判別つきかねるそうだが、なにしろ名盤あまた、バロック・ファンならご存知のとおり「すべての曲が」傑作ばかりな上、フランス大時代様式に偏っているマレよりはるかに自由&多彩な音楽展開は、マレよりもずっと日本のリスナー向きだろう。さしずめガンバのヴィラ=ロボスかアルカンか...といった傑作の数々、しかしクラヴサン編曲版(こちらも有名だが)の全曲盤こそあれ「オリジナルのガンバ版の全集」はこれが初では?何しろサヴァール御代ら成し遂げなかった偉業を、有象無象ではなくドゥフトシュミットが成し遂げたのから感慨至極、ファン必携。ぜひご注目あれ! | ||