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HELICON / IPO

1枚あたり¥3300(税抜¥3000)




 イスラエルの HELICON RECORDS 社傘下のクラシック・レーベル。基本的に1936年以来の伝統を誇るイスラエル・フィルとの提携盤のようで、オケのアーカイヴを使用した貴重な音源が発売されている。特に "The IPO Heritage Series" は、名指揮者らによるヒストリカル音源がリリースされており、貴重。
02-9614
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[HEL-029614]
(12CD)
6CD価格
イスラエル・フィル創立70周年記念ボックス
 [CD 1] 78'54 "
  メンデルスゾーン:序曲「静かな海と楽しい航海」[パウル・クレツキ指揮/1954年/EMI]
  モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」[ヨーゼフ・クリップス指揮/1957年/DECCA]
  シューベルト:交響曲第5番[ゲオルグ・ショルティ指揮/1958年/DECCA]
  マスネ:バレエ「ル・シッド」〜4曲[ジャン・マルティノン指揮/1958年/DECCA](*)
  スメタナ:「売られた花嫁」序曲[イシュトヴァーン・ケルテス指揮/1962年/DECCA]
 [CD 2] 77'47 "
  ヴェルディ:「椿姫」〜第1幕への前奏曲[ズビン・メータ指揮/1978年/DECCA]
  ドヴォルザーク:交響曲第7番 ニ短調 [ズビン・メータ指揮/1972年/DECCA](*)
  バルトーク:管弦楽のための協奏曲[ズビン・メータ指揮/1976年/DECCA](*)
 [CD 3] 75'09 "
  ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調 [ラファエル・クーベリック指揮/1975年/DG]
  メンデルスゾーン:フィンガルの洞窟/交響曲第4番「イタリア」[レナード・バーンスタイン指揮/1978年/DG]
 [CD 4] 74'43 "
  チャイコフスキー:バレエ「くるみ割り人形」組曲[ズビン・メータ指揮/1979年/DECCA]
  シューベルト:交響曲第9番「グレイト」[ズビン・メータ指揮/1977年/DECCA](*)
 [CD 5] 75'59 "
  マーラー:交響曲第4番 ト長調[バーバラ・ヘンドリックス(S) ズビン・メータ指揮/1979年/DECCA]
  バーンスタイン:チチェスター詩篇[レナード・バーンスタイン指揮/1977年/DG]
 [CD 6] 76'41 "
  ウェーバー:「オベロン」序曲[ズビン・メータ指揮/1978年/DECCA]
  サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ[シュロモ・ミンツ(Vn)ズビン・メータ指揮/1988年/DECCA]
  R=コルサコフ:スペイン奇想曲[ズビン・メータ指揮/1980年/DECCA](*)
  ストラヴィンスキー:バレエ「火の鳥」組曲(1919年版)[レナード・バーンスタイン指揮/1984年/DG]
  ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容[レナード・バーンスタイン指揮/1989年/DG]
 [CD 7] 77'53 "
  グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調[ジュリアス・ カッチェン(P)イシュトヴァーン・ケルテス指揮/1962年/DECCA]
  ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調[アルトゥール・ルービンシュタイン(P)ズビン・メータ指揮/DECCA]
 [CD 8] 74'30 "
  モーツァルト:「フィガロの結婚」序曲[ズビン・メータ指揮/1986年](#) /
          ピアノ協奏曲第27番[ダニエル・バレンボイム(P)指揮/1972年](+)
  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」[ラドゥ・ルプー(P)ズビン・メータ指揮/1979年/DECCA]
 [CD 9] 75'36 "
  ベルリオーズ:イタリアのハロルド[ダニエル・ベンヤミニ(Va)ズビン・メータ指揮/1975年/DECCA](*)
  ブロッホ:シェロモ [ヤーノシュ・シュタルケル(Vc)ズビン・メータ指揮/1968年/DECCA](*)
  ベン=ハイム:ピアノと管弦楽のためのイスラエル奇想曲
   [プニーナ・サルツマン(P) カルロ・マリア・ジュリーニ指揮/1960年](#)
 [CD 10] 74'27 "
  ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」 / モーツァルト:協奏交響曲 変ホ長調 KV.364
   [アイザック・スターン(*)、ピンカス・ズッカーマン、シュロモ・ミンツ(*)、
    イツァーク・パールマン(Vn) ズビン・メータ指揮/1982年/DG]
 [CD 11] 75'41 "
  チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調[イツァーク・パールマン(Vn)ズビン・メータ指揮/1990年/EMI]
  ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調[ピンカス・ズッカーマン(Vn)ズビン・メータ指揮/1989年](#)
 [CD 12] 76'04 "
  ベートーヴェン:「フィデリオ」序曲[ロリン・ マゼール指揮/1962年/DECCA]
  シューマン:交響曲第3番 変ホ長調「ライン」/交響曲第4番 ニ短調[クルト・マズア指揮/2003年](#)
  スメタナ:交響詩「モルダウ」[イシュトヴァーン・ケルテス指揮/1962年/DECCA]
  ハティクヴァ(イスラエル国歌)[フィルハーモニア・シンガーズ ズビン・メータ指揮/2004年11月15日](#)
 (#)はイスラエル・フィル・アーカイヴ収蔵のライヴ音源、(+)はイスラエル放送アーカイヴのライヴ音源、(*)はメジャー・レーベルの録音中、インターナショナル CD 初リリース(ただし、日本やオーストラリアなどのローカル商品ではCDリリースがある録音もあり)。
 強力な弦楽セクションの魅力で今日世界有数のオケとして知られるイスラエル・フィル。2007年3月にメータとともに行なった来日公演でも、血を感じさせる濃く熱いマーラーを聴かせていた。その歴史は1948年イスラエル共和国建国を機に現在の名前に改称する以前、名ヴァイオリニスト、フーベルマンによりパレスチナso.としてスタートした1936年にまで遡る。
 当セットは2006年に創立70周年を迎えた当オケを記念して制作されたもの。1954年録音クレツキのメンデルスゾーンにはじまり、2004年メータ指揮のイスラエル国歌で締め括られる、過去50年の記録。その内容は名実ともに世界的オケに引き上げたメータを中心に、バーンスタインら巨匠たちと、デッカ、ドイツ・グラモフォン、EMIに残した代表的な録音が多いが、なかでもやはり注目は、ほとんどすべてが初出となるオケのアーカイヴからのライヴ演奏の数々。バレンボイム弾き振りのモーツァルト、ズッカーマン独奏のベートーヴェン、マズアのシューマンなど、ここに初めて聴く内容は興味の尽きないものばかり。さらに付属のブックレットには、95ページにわたり貴重なカラー写真と新聞記事などの資料が満載。旗揚げ公演を指揮したトスカニーニをはじめ、楽壇に登場した巨匠たちの写真を眺めるだけでも当セットを手にする喜びはひとしお。また、アルバム一枚一枚には可能な限り初出時のオリジナル・ジャケットのデザインをあしらって、このあたりもたいへん丁寧な作りとなっている。オーケストラ自主制作のコレクターズ・アイテムにまたひとつ見逃せない内容が加わった。
ブロッホ:アヴォダート・ハコデシ〔神聖祭儀〕(*)
J.S.バッハ:カンタータ「目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声」BWV.140(#)
 トーマス・ハンプソン(Br;*) ラファエル・フリーダー(語り;*)
 タリア・オール(S;#) ダグラス・パーセル(T;#) クラウス・ハーガー(Br;#)
 イリヤ・コノヴァロフ(Vn;#) ドゥドゥ・カルメル(Ob;#)
 イスラエル・カストリアーノ(通奏低音Org;#) ザ・コレギエイト・コラール(#)
 ズービン・メータ指揮イスラエルpo.
 録音:2008年7月17日-27日、エルサレム、ICC国際センター、ライヴ。
 (*)はユダヤ教会堂の典礼音楽。深い祈りの気分とオリエンタルな雰囲気、充実した管弦楽の響きの融合が魅力の作品。終楽章の合唱の壮大さはさすがメータ、抜群の統率力で聴かせ、ハンプソンのソロの美声もしびれモノ。
HEL-029625
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(12CD)
6CD価格
ズービン・メータ&イスラエルpo.、ライヴ・レコーディング集 1963-2006
 モーツァルト:「フィガロの結婚」序曲[1986年12月]/アイネ・クライネ・ナハトムジーク[2006年4月]
 ロッシーニ:「絹のはしご」序曲[1977年1月] / ヴェルディ:「運命の力」序曲[1986年12月]
 ベートーヴェン:レオノーレ序曲第3番[1975年10月] / シューベルト:交響曲第8番「未完成」[1996年12月]
 モーツァルト:3台のピアノのための協奏曲
  [アリエ・ヴァルディ、イェフィム・ブロンフマン、ラドゥ・ルプー(P)/1987年1月]
 リスト:ピアノ協奏曲第2番 イ長調[イェフィム・ブロンフマン(P)/1996年12月]
 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 Op.18[アリシア・デ・ラローチャ(P)/1987年1月]
 ヴィヴァルディ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 イ短調 RV.522
  [イツァーク・パールマン、ピンカス・ズッカーマン(Vn)/1996年12月]
 モーツァルト:協奏交響曲K.364[ハイイム・タウブ(Vn) ダニエル・ベンヤミニ(Va)/1968年7月]
 ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 Op.53[イツァーク・パールマン(Vn)/1971年10月]
 ブラームス:アルト・ラプソディOp.53[マルヤーナ・リポヴシェク(Ms) プラハ・フィルcho./2000年7月]
 ブラームス:
  運命の歌 Op.54[ロイヤル・スコティッシュ・ナショナルo.&cho./1972年7月]/交響曲第2番Op.73[1977年10月]/
  ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77[ピンカス・ズッカーマン(Vn)/1971年8月、ザルツブルク音楽祭、ライヴ]/
  二重協奏曲 イ短調 Op.102[アイザック・スターン(Vn) ロストロポーヴィチ(Vc)/1986年12月]
 R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」Op.28[1996年7月]
 ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調[1963年5月、モノラル]
 エルガー:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 Op.61[イェフディ・メニューイン(Vn)/1982年10月]
 プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ト短調 Op.63[アイザック・スターン(Vn)/1975年10月]
 サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番 イ短調 Op.33[リン・ハレル(Vc)/1986年12月]
 マーラー:リュッケルトの詩による5つの歌曲[マルヤーナ・リポヴシェク(Ms)/1995年10月]
 ベルク:「ヴォツェック」よりの3つの断章[ステッラ・リッチモンド(S)/1972年3月]
 エーリヒ・ツァイスル(1905-1959):ヘブライのレクィエム(詩篇第92番)
  [ロストルフ=ザミール(S) コル(Ms) ビジック(Br)/2006年4月]
 ホルスト:組曲「惑星」Op.32[テルアビブ・フィルハーモニーcho.女声/1986年7月]
 ブロッホ:シェロモ[ミッシャ・マイスキー(Vc)/1990年11月]
 ドヴォルザーク:スラヴ舞曲集 Op.72 より〔ロ長調/ホ短調/ハ長調〕[1996年7月]
 ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」[1997年7月]
 シェーンベルク:浄められた夜 Op.4(弦楽合奏版)[2006年4月]
 ヴェルディ:レクィエム[マーティナ・アーロヨ(S) シャーリー・ヴァーレット(Ms) リチャード・
             タッカー(T) ボナルド・ジャイオッティ(B) ヨゼフ・フリートラント合唱指揮
             テルアヴィヴ・フィルハーモニーcho./1968年7月、ベツレヘム]
 ノアム・シェリフ(1935-):祝典前奏曲[1996年12月]
 ヨセフ・タール(1910-2008):交響曲第2番[1983年9月]
 ツヴィ・アヴニ(1927-):プログラム・ミュージック[1983年6月-7月]
 ヨーゼフ・カミンスキ(1903-1972):交響的序曲[1982年10月]
 アヴナー・ドルマン(1975-):スパイス、香水、毒素![PercaDu(マリンバ&パーカッション・デュオ)/2006年4月]

  ズービン・メータ指揮イスラエルpo.
 [共演者/録音年月日]。録音:特記以外すべてマン・オーディトリアム、テルアヴィヴ、ライヴ、特記以外ステレオ。なお、代理店の資料作成不具合に拠り、上記曲目一覧のうち、作品番号が3桁のものが一部で一桁落ちてしまい2桁になっています。当店で気づいたものは消去しましたが、誤っているものがある可能性もございますので、御了承のほどお願い致します。
 巨匠メータと長年ゆかりの深いイスラエル・フィルが、1963年から2006年にかけて40年以上に亘り、おもに地元テルアビブでおこなったライヴ演奏の数々を収めた注目のセットがリリースされる。

 記憶にあたらしい2010年秋をはじめ、度重なる来日公演でもおなじみの巨匠メータ率いるイスラエル・フィル。1961年に急病のオーマンディの代役で指揮台に立って以来、1969年にミュージック・アドバイザーに就任、1977年より音楽監督、1981年より終身音楽監督を務めて今日に至るメータとイスラエル・フィルとの強固なきずなには、半世紀にもおよぶその歴史のなかで、5大陸にまたがるツアーを通じて、すでに2000回を超えるコンサートを敢行していることからも想像以上のものがある。
 メータがイスラエル・フィルと初共演を果たして間もない時期の1963年から、終身音楽監督就任25周年記念を迎えた2006年に至る演奏はごく一部をのぞき、ほとんどすべてステレオで収録されており、収録時期も比較的あたらしいものが多く、古いものもマスターの保存状態が良かったのか、遜色の無いすぐれた音質で残されていたのは朗報といえるだろう。
 ズービン・メータといえば、1962年に異例の若さでロサンゼルス・フィルの音楽監督に抜擢され、同時期に専属契約を結んだDeccaを通じて優秀録音の数々を次々と発表して、一躍スターダムを駆け上がったが、ここでは「春の祭典」「惑星」といった、メータがダイナミックな指揮ぶりで鮮烈なインパクトを与えたプログラムが収められているのも注目される。また、「浄められた夜」では、弦楽合奏版による演奏ということで、イスラエル・フィルの弦楽セクションの威力をあらためて実感させる仕上がりとなっている。
 本セットのおおきな特色といえるのが全12枚のうち、およそ5枚分近くを協奏作品が占めていること。ヴァイオリンではスターンにパールマン、ズッカーマン、ピアノにルプー、ブロンフマン、さらにチェロはハレル、マイスキーという具合に、ソリストの顔触れもたいへん豪華なもので、メータとは公私ともに親密な間柄にある仲間たちの名前が並んでいる。そのことを反映してか、本来的に協奏曲の持つ対立・対決の構図が生み出す緊迫した丁丁発止のやりとりのなかにも、どこかお互いに対話を楽しんでいるようなムードが印象的。
 なお、セットの最後を飾る12枚目に、イスラエルゆかりの作曲家たちを網羅しているのも興味深いところ。ユダヤ人を理由にナチに退廃音楽家の烙印を押され、亡命先のアメリカに渡ったのちにハリウッドで映画音楽を手がけて名を上げたツァイスルの代表作(CD8)のほか、バーンスタインによるマン・オーディトリアム落成公演の際に選ばれたシェリフの出世作、さらにはエキゾチックな雰囲気を漂わせた“パーカッション協奏曲 " 風のドルマンの作品など、じつに多彩。イスラエル・フィルならではの比類なき共感に満ちた音楽作りもあって価値ある内容となっている。
 76ページの付属ブックレットには、メータの若かりし日から、現在に至る写真のほか、当時の新聞記事、パールマンやズッカーマン、女優ソフィア・ローレンとの貴重なショットも収められ、目で見る楽しみも作りとなっている。コレクションする手ごたえ一入のセットといえるだろう。
HEL-029627
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(3CD)
2CD価格
モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」
 ニコラ・ウリヴィエーリ(B−Br;ドン・ジョヴァンニ)
 マウリツィオ・ムラーロ(B;レポレッロ) アンナ・サムイル(S;ドンナ・アンナ)
 マリア・ルイージャ・ボルシ(S;ドンナ・エルヴィーラ) ディミトリ・コルチャク(T;ドン・オッターヴィオ)
 チェン・ライス(S;ゼルリーナ) シモン・オルフィラ(B;マゼット) マルコ・スポッティ(B;騎士長)

 ズービン・メータ指揮イスラエルpo.、ニュー・イスラエル・ヴォーカル・アンサンブル
 録音:2009年1月27日、31日、2月5日、テルアヴィヴ、演奏会形式ライヴ。
 イスラエル・フィルの終身音楽監督であるズービン・メータが今大活躍している中堅、新進の歌手を集めた注目の「ドン・ジョヴァンニ」。タイトルロールのニコラ・ウリヴィエーリは北イタリア、アルコの生まれのバス=バリトン。ロッシーニを得意としている。明るく朗々と響く美声は、2010年のトリノ・レージョ劇場来日公演での「ボエーム」でも評判になっていた。レポレッロのマウリツィオ・ムラーロは、この中では一番のベテラン。スイス国境に近いイタリア、コモの生まれ。1990年代後半からバッソブッフォとして大活躍しており、2004年のウィーン国立歌劇場来日公演でも、トーマス・ハンプソン、エディタ・グルベローヴァらを相手にレポレッロを歌っている。ドン・オッターヴィオのディミトリ・コルチャクは、1979年、モスクワ生まれ。まだ30代始めという若さながら、既に国際的に名声を築いており、ことにロッシーニとモーツァルトで人気を博している。ゼルリーナのチェン・ライスは、地元イスラエル生まれ。伸びの良い美声と美貌の持ち主で、近年急速に人気が急上昇している。ドンナ・エルヴィーラのマリア・ルイージャ・ボルシは、まだデビューして十年ほどにもかかわらず、非常に人気の高いイタリアのソプラノ。2010年代のプリマドンナ間違いなしの逸材。マゼットのシモン・オルフィラは、1976年、スペインのマノルカ島生まれ。堂々としたバスの声の持ち主で、あのグルベローヴァが初めてノルマを歌った2003年の東京での演奏会形式公演でオロヴェーゾを歌っていた。騎士長のマルコ・スポッティはパルマ出身。若いながらも非常に重厚なバスで、ヴェルディのバス役で活躍している。ドンナ・アンナのアンナ・サムイルは、ロシアのペルミ生まれ。彼女も2000年以降に活動を始めた若い歌手で、現在はベルリン国立歌劇場を中心にドイツで活躍している。
 最近では稀にオペラ録音の機会があっても、知名度の高いベテラン歌手が優先されるので、こうした中堅から若手の優れた歌手を聞く機会は限られている。その意味でもこのCDは便利。もちろんメータの指揮が彼らを全面的にバックアップ。メータが指揮する「ドン・ジョヴァンニ」の録音はこれが初めてだろう。イスラエル・フィルの瑞々しい弦の音を生かした、気持ちの良い仕上がりになっている。
ベートーヴェン
 交響曲第5番 ハ短調「運命」Op.67/
 プロメテウスの創造物 Op.43/
 交響曲第6番 ヘ長調「田園」Op.68
ズービン・メータ指揮
イスラエルpo.
 録音:2009年7月8日、10日、15日、16日、マン・オーディトリウム、テルアビブ、ライヴ。
 抜群の弦楽セクションの魅力で世界有数のオケとして知られるイスラエル・フィル。このライヴ演奏でも、底なりがするような力強い「運命」、そして朗々と歌われる有名な旋律が魅力の「田園」など、メータとオケの実力を存分に味わうことができる充実の1枚。
ブラームス:ドイツ・レクイエム
 チェン・レイス(S) ハンノ・ミュラー=ブラッハマン(Br)
 ズービン・メータ指揮イスラエルpo.、ガリー・ベルティーニ・イスラエルcho.
 録音:2009年10月10日、17日、マン・オーディトリウム、テルアビブ、ライヴ。
 メータのさすがの統率力が光るドイツ・レクイエム。第2曲「人はみな草のごとく」の合唱は圧倒的。美貌のソプラノ、チェン・レイスの高みへと私たちを連れて行ってくれるような歌唱は感動的。バリトンのミュラー=ブラッフマンは、シャイーなどとも共演を重ねた実力派で聴かせる。
メータ&IPO〜ブラームス
 交響曲〔第1番 ハ短調 Op.68/第3番 ヘ長調 Op.90〕
ズービン・メータ指揮
イスラエルpo.
 録音:2009年10月13日、14日、16日、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ。おそらく初出音源。「ドイツ・レクィエム」(HEL-029629)や、ブッフビンダーをソリストに迎えた「ピアノ協奏曲第1番&第2番」(HEL-029636)と、ほぼ同時期にメータがイスラエル・フィルを指揮したブラームスの第1交響曲と第3交響曲。メータは当時30代後半だった1976年に、ウィーン・フィルとブラームスの第1交響曲をセッション録音したのを皮切りに、1979年から1982年にかけて、当時音楽監督を務めていたNYPと交響曲全曲をセッション録音、さらに1992年10月にイスラエル・フィルとも一挙に交響曲全曲をセッション録音している。また、イスラエル・フィルとは、1977年に第2交響曲をライヴ録音、さらに同楽団が創設60周年を迎えた1996年にも、ガラ・コンサートにおける第2交響曲のライヴ・レコーディングをおこなっていた。このように、メータにとって第1、第3交響曲とも、イスラエル・フィルとは17年ぶり2度目のレコーディングということになる。メータは過去2度に亘り交響曲全集を完成させた実績からもブラームスをたいへん得意にしているようで、また上記の通り、ここでの演奏はちょうどブラームスを集中的に取り上げていた時期と重なり、レクィエムや協奏曲でも手兵より申し分のない内容を引き出していたことを踏まえると、同様の充実ぶりを聴かせてくれるものとおもわれる。
モーツァルト:交響曲第38番 ニ長調「プラハ」K.504(*)
シューベルト:交響曲第9番「グレイト」D.944(#)
ズービン・メータ指揮
イスラエルpo.
 録音:2010年1月(*)、2006年11月(#)、ライヴ。
 「プラハ」の序曲を思わせる出だし、「グレイト」の有名な冒頭、一切の小細工なしに主題をひとつひとつ丁寧に提示させるところなど、メータのオケの誠実かつ真摯な仕事ぶりが実に光る演奏。「グレイト」の終楽章も、絶妙のテンポとリズムで楽しませてくれる。
ドヴォルザーク
 交響曲第9番「新世界より」 ホ短調 Op.95
R.シュトラウス
 ツァラトゥストラはかく語りき Op.30
ズービン・メータ指揮
イスラエルpo.
 「新世界」の冒頭もかっ飛ばすのではなく、弦の細かな刻み、様々な楽器間での旋律の受け渡し、すべてが実に丁寧。終楽章の弦楽器のリズムの食いつきも絶妙で、メータとオケの間の意思疎通が完璧なものであることをうかがわせる。有名な旋律では、ところどころに隠し味的にちりばめられた微妙なポルタメントが印象的に響く。R.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」は、まさに期待通りの壮大な演奏。華麗にオーケストラが鳴り響く。メータの一挙手一投足にオケが実に敏感に反応しているのがうかがわれる力演。室内楽風の場面では、弦楽器のメンバーの巧さが際立つ。
ハイドン:交響曲第88番 ト長調
チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調「悲愴」Op.74
クルト・マズア指揮
イスラエルpo.
 録音:2008年6月、ライヴ。
 ハイドンでは、朗々と鳴り響き、気高さも兼ね備えた演奏にハッとさせられる。終楽章での滑舌のよい語り口は小気味よい仕上がり。「悲愴」は歌心に溢れている。各メロディー、各フレーズの中での絶妙なデュナーミクと独特の「溜め」は見事。マズアの思い入れをオーケストラがよく汲み取った秀演となっている。
マーラー:交響曲第2番 ハ短調「復活」
 バルバラ・キルダフ(S) クリスタ・ルートヴィヒ(Ms)
 ジェイムズ・レヴァイン指揮イスラエルpo.
 スティーヴン・スローン合唱指揮テルアビブ・フィルハーモニーcho.
 スタンリー・スペルベル合唱指揮リナト・ナショナルcho.
 アヴネル・イタイ合唱指揮イヒュドゥcho.
 録音:1989年2月27日、テルアビブ、マン・オーディトリアム、ライヴ。初出音源。
 イスラエル・フィルのライヴ・シリーズで注目を集めるheliconより、マーラー生誕150周年アニヴァーサリーに絶好のアルバム、レヴァインがイスラエル・フィルを指揮したマーラーの交響曲第2番がリリース。
レヴァインは1974年から80年にかけてRCAにマーラーの8つの交響曲のセッション録音を行っている。これら一連のアルバムは、当時のマーラー受容をけん引するおおきな役割を担い、「マーラー指揮者」レヴァインのキャリアを不動ものとしたばかりでなく、今日においてなお、ファンのあいだで強く支持されている。
 若き日にレヴァインがシカゴ響、フィラデルフィア管、ロンドン響と3つの名門オケを振り分けて録音したマーラーのアルバムは、たくみな音楽運びと精緻をきわめたアンサンブルとで作品の魅力をダイレクトに示してすぐれた内容だったが、どういうわけか第2番と第8番の2曲は録音されなかったので、このたびのライヴによる第2番の登場はまさに快哉をもって迎えられるのではないだろうか。
 イスラエル・フィルは、名ヴァイオリニスト、フーベルマンにより、ヨーロッパ各地でユダヤ系であることを理由に解雇された楽員などを募り1936年に創設されたオーケストラ。設立当初より弦楽セクションは世界のトップクラスと肩を並べると云われてきたが、同時にまた、このオーケストラがマーラーに寄せる共感は特別なものがあった。ちなみに、イスラエル・フィルは、マーラーの「復活」を1967年にバーンスタインの指揮で第5楽章のみをヘブライ語歌唱でライヴ録音、1988年10月にズービン・メータ指揮でライヴ録音、1994年にも同じくメータ指揮でセッション録音している。メータのライヴ録音から4カ月、レヴァインがイスラエル・フィルを指揮した「復活」もまた、声楽の扱いにも非凡なセンスを示すマエストロのもと、ライヴの熱気と緊張感を孕みつつ、情熱的で集中力の高い演奏内容が期待されるところ。
 ここで第4楽章「原光」を歌うメッツォは、クリスタ・ルートヴィヒ。ルートヴィヒの歌う「復活」といえば、1975年のメータ指揮ウィーン・フィルとのセッション録音における深く気高い歌唱がマーラー・ファンには記憶されているが、当夜の模様を伝えるイスラエルの日刊紙「ハアレツ(Ha'aretz)」によるレビューによれば、「1928年生まれのルートヴィヒはこの録音時点で65歳を迎えていたけれども、その存在感は比類がなかった」と伝えられていた。
ブラームス
 ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 Op.15
 ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83(*)
J.シュトラウス2世/
 アルフレート・グリュンフェルト編:
  「こうもり」序曲(ピアノ独奏版)
シューベルト:即興曲第4番 変イ長調 D.899-4
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ
 第8番 ハ短調 Op.13「悲愴」〜第3楽章
ルドルフ・ブッフビンダー(P)
ミーシャ・ハラン(Vc;*)
ズービン・メータ指揮
イスラエルpo.
 録音:2009年10月、テルアビブ、マン・オーディトリアム、ライヴ・ディジタル。ブラームス以外はアンコール。
 指揮のメータ、ピアノのブッフビンダー、それぞれ過去に異なる顔合わせでブラームスのピアノ協奏曲に取り組んできたふたりが、十分な時間を重ねて円熟を迎えたいま、ここにあらたなアルバムをリリース。

 当時30代後半だった1976年に、ズービン・メータはウィーン・フィルとブラームスの第1交響曲をセッション録音したのを皮切りに、1979年から1982年にかけて、当時音楽監督を務めていたNYPと交響曲全曲をセッション録音、さらに1992年10月にイスラエル・フィルとも一挙に交響曲全曲をセッション録音している。また、イスラエル・フィルが創設60周年を迎えた1996年には、ガラ・コンサートにおける第2交響曲のライヴ・レコーディングもおこなっている。このように2度の交響曲全集を完成させた実績が示すように、メータはブラームスをたいへん得意にしているようで、ヴァイオリン協奏曲のほか、ピアノ協奏曲についても複数のレコーディングをおこなっている。
 1946年チェコのリトムニェジツェに生まれたルドルフ・ブッフビンダーは、ウィーンに学んだオーストリアのピアニスト。ベートーヴェンのピアノ・ソナタならびにピアノ協奏曲全曲、モーツァルトのピアノ協奏曲全曲、ハイドンのピアノ・ソナタ全曲などをレパートリーの中心に据え、高い評価を得ている。おもにこうしたドイツ系の演目でキャリアを築き上げてきたブッフビンダーだが、ブラームスのピアノ協奏曲を、いずれもアーノンクール指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管とライヴ録音しており、録音年について第2番が1998年、第1番が1999年だったので、ブッフビンダーにとってほぼ10年の時をおいての再録音ということになる。
 2010年秋におこなわれた来日公演の記憶もあたらしいメータ率いるイスラエル・フィル。1961年に急病のオーマンディの代役で指揮台に立って以来、1969年にミュージック・アドバイザーに就任、1977年より音楽監督、1981年より終身音楽監督を務めて今日に至るメータとイスラエル・フィルとの強固なきずなには、半世紀にもおよぶその歴史のなかで、5大陸にまたがるツアーを通じて、すでに2000回を超えるコンサートを敢行していることからも想像以上のものがある。このアルバムの収録時点で還暦を迎えていたブッフビンダーのピアノもまた、ますます円熟味を増しているものと思われるほか、ここでは、大家ブッフビンダーと巨匠メータ、作品への愛情と理解を深めてきたもの同士ならではの対話が期待されるところで、たいへん楽しみな内容といえるだろう。
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ドヴ・セルツァー:イツハク・ラビンの哀歌
 シャロン・ロストロフ(S) ハダル・ハレヴィ(Ms)
 ヴィンチェンツィオ・ラ・スコーラ(T) ハヤ・サミール(民謡歌手)
 ズービン・メータ指揮イスラエルpo.、新イスラエル歌劇cho.
 録音:1998年4月27日、イスラエル国家独立50周年記念行事オープニング・コンサート、世界初演時ライヴ。NTSC方式の映像付き。イスラエルの重要な政治家、イツハク・ラビンの哀歌。この作品は、この後マズアやマゼールらによっても取り上げられた。
 『イツハク・ラビンの運命と悲劇的な死を扱ったこのレクイエムのテキストと音楽は、平和、そして人々の相互理解への讃歌となり、暴力と戦争への力強い抗議である。フル・オーケストラと声楽(混声合唱、児童合唱、ソリスト)のために書かれた大規模な作品であり。ここでの「哀歌」は、ヘブライの祈りからとられたテキストも含まれているが、世俗的作品であって、宗教的礼拝ではない。他にも、聖書や中世のヘブライ語の詩、さらには今を生きるイスラエルの詩人たちによるテキストも含まれている。12 歳の少女が平和について書いたテキストも含まれている。すべての歌詞はヘブライ語で歌われている。』(ドヴ・セルツァー)
ブロムシュテット&IPO
 モーツァルト:
  交響曲第35番 ニ長調 KV.385「ハフナー」
 ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 Op.88
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
イスラエルpo.
 録音:2005年11月3日-5日、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ。2005年11月5日の演奏が CD-R 使用の HARVEST CLASSICS から HC-06059(廃盤/入手不能)で発売されていたが、当盤はマスターを使用した初発売。名匠ブロムシュテットが2005年にイスラエル・フィルを指揮した注目のプログラム。ブロムシュテットといえば、首席指揮者(1975‐1985)を務めたシュターツカペレ・ドレスデンと、1974年にドヴォルザークの第8番をセッション録音しており、伝統に培われた名門オケの深くゆたかな響きを最大限に活かした音楽作りにはたいへん印象深いものがあった。モーツァルトについても、1982年に第38番「プラハ」と第39番を、1981年に第40番と第41番をいずれもセッションで録音していたが、あいにく第35番「ハフナー」は録音されなかったので、このたびのリリースには期待がかかる。なお、このときのドヴォルザークについては、心ある音楽ファンの間で“ブロムシュテットの最高傑作 " との呼び声もあるほどの出来ばえをみせていたのは有名な話。ドヴォルザークの第1楽章冒頭、チェロの歌い出しに始まり、ボヘミアの田園風景を思わせるアダージョ、センチメンタルな第3楽章、そしてまたフィナーレでのチェロのユニゾン、さらに、どこまでもエレガントな美に彩られたモーツァルト。2曲に共通して、極上の弦楽セクションを看板にするイスラエル・フィルがもっとも真価を発揮する場面の連続であるというところ。ブロムシュテットが揃えた内容は、まさにイスラエル・フィルの美質を極限まで引き出す絶妙なプログラム構成といえるだろう。
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲集
 弦楽四重奏曲〔第1番 ニ長調 Op.11 /第2番 ヘ長調 Op.22 /第3番 変ホ短調 Op.30 〕/
 弦楽六重奏曲 ニ短調 Op.70「フィレンツェの思い出」(*)
  イスラエル・フィルハーモニー・リヒターSQ
  [イリヤ・コノヴァーロフ、シュムエル・グラセル(Vn)
   ドミートリー・ラトゥシュ(Va) フェリクス・ネミロフスキー(Vc)]
  ヴラディスラフ・ラトゥシュ(Va;*) キリル・ミハノフスキー(Vc;*)
 録音:2010年9月12日-15日、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ。イスラエル・フィルハーモニー・リヒター四重奏団は、その名の通りすべてイスラエル・フィルのメンバーで構成され、楽団がイタリア・ツアー中の2006年5月にスポレート音楽祭でデビューを果たしたアンサンブル。結成にあたり、惜しみない寄付と向こう10年間の活動のサポートを申し出た、イスラエルpo.基金理事で後援会員のリヒター・ファミリーに謝意を表して、その名を冠している。結成の目的として、オーケストラの芸術活動になくてはならない部分であった、弦楽四重奏団の偉大なる伝統を継承することがあったが、オーケストラの募金活動やコンサート・ツアーと関連して、数多くのコンサートをイスラエル国内にとどまらず海外でも精力的におこなっている。イリヤ・コノヴァーロフは1977年ロシアのノヴォシビルスク生まれ。7歳で名教師ザハール・ブロンに師事し、学生時代に全ロシア・ヴァイオリン・コンクール、ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで入賞を果たしたコノヴァーロフは、1997年よりイスラエル・フィルのコンサート・マスターを務めている。リトアニアのヴィリニュスに生まれたシュムエル・グラセルは、1980年にイスラエルに移住し、1987年より楽団メンバーとなったイスラエル・フィルの第2ヴァイオリン奏者。1990年にロシアからイスラエルに移住したドミートリー・ラトゥシュは、2004年よりイスラエル・フィル副首席ヴィオラ奏者を務めている。チェロのフェリクス・ネミロフスキーは1963年ウズベキスタンの首都タシュケントの生まれで、1992年よりイスラエル・フィルのメンバー。この四重奏団は、すべて旧ソ連圏の生まれという点が共通し、さらにメンバーの2人がロシア出身ということで、幼い頃よりチャイコフスキーの作品に寄せる共感の強さにはかなりのものがあるとおもわれるので、高水準の演奏内容が期待できそう。
パレー&IPO ライヴ、初出〜シューマン
 交響曲第2番 ハ長調 Op.61(*)/
 交響曲第3番 変ホ長調 Op.97「ライン」(#)
ポール・パレー指揮
イスラエルpo.
 録音:1976年11月18日(*)/1971年11月29日、モノラル(#)、以上 マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ。記載は無いが、(*)はおそらくステレオ。(#)の日にはプニーナ・サルツマン(P)とのバルトーク第3番の協奏曲も演奏されており、先にDOREMIから発売されている(DHR-7840/41)
 "The IPO Heritage Series" ルーアン近郊の(とよく日本語で記載されているが、北北東に70km以上離れている)ル・トレポールに生まれたポール・パレー(1886-1979)は、音楽監督(1952-1963)の立場で後半生を捧げたデトロイト響での仕事ぶりが示すように、「オーケストラ・ビルダー」として名高いフランスの名匠。あまり知られていないが、パレーはデトロイト時代以前にイスラエル・フィルの音楽監督(1949-1951)を務めている。パレー自身はユダヤ系ではなかったものの、1940年に、首席指揮者のポストにあったコンセール・コロンヌで、ユダヤ人演奏家が退団を余儀なくさせられるとパレーも共に楽団を去り、また、夫人がアルザス地方のユダヤの家系の生まれであったこともあって、すぐにイスラエル在住の人びととコンタクトを取り、親交を持つようになったことで、イスラエル・フィル指揮者としての道が開かれた。楽団のレベル向上に強い意欲をみせていたパレーだが、偉大なるバーンスタインの後任ということで運営委員会の選定は難航し、さらにパレーも音楽監督を引き受けるにあたり、不十分だった木管セクションへの新メンバーの加入(フルートにはほかでもないジャン・ピエール・ランパルをパリから連れてきて充てようとしていた)、優秀ながら絶対数の不足していた弦楽セクションのテコ入れをはかるなど、あまりに要求がきびしかったため、就任後も運営委員会とのあいだで壮絶なやりとりがあったことがライナーノート(英語)に記されている。そういうわけで、必ずしもパレーと楽団との関係は良好なものだったわけではなく、ついにアメリカ合衆国&カナダへの演奏旅行を最後に急速に冷え切ってしまうが、この演奏旅行後の1951年5月から6月にかけて、パレーは客演指揮者としてイスラエル・フィルに復帰して、以後も晩年までずっとイスラエル・フィルへの客演を重ねている。
 このアルバムに収録されたシューマンの交響曲第2番と第3番は、パレーが晩年にイスラエル・フィルを客演指揮したときの物。パレーのシューマンといえば、イスラエル・フィルの音楽監督を辞任したのち、交響曲全集をデトロイト響と完成させており、1955年に第2番を、1956年に第3番をセッションで録音していた。そこでは、伝統的なスタイルを踏まえながらも、快速テンポと歯切れのよいリズムがとてつもなくエネルギッシュで、程よく流れる緩徐楽章で聴かれる抒情も魅力的と、いまもってシューマンのベストチョイスに挙げる方も少なくないほど、すぐれた内容を聴くことが出来る。
 メータによる黄金時代を迎えて、国際的に活躍の場を拡げていた時期の古巣イスラエル・フィルを相手に、かつての「鬼音楽監督」パレーが得意とするシューマンをどのように聴かせてくれるのか、上記セッション録音の出来ばえを知る方ならば、おおいに興味の尽きないアルバムといえるだろう。
モントゥー&IPO 1964年ライヴ、初出
 ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調 Op.60
 エルガー:エニグマ変奏曲 Op.36
 ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」第2組曲
ピエール・モントゥー指揮
イスラエルpo.
 録音:1964年3月7日、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ、モノラル。おそらく初出音源。ソース:イスラエル・フィル・アーカイヴ。"The IPO Heritage Series"。ピエール・モントゥー(1875-1964)が、世を去る3か月ほど前にイスラエル・フィルに客演した、幅広いレパートリーを誇った巨匠としても、とりわけ得意のレパートリーがならぶ注目のライヴ。
 単独のオーケストラとの間でこそ全曲録音は実現しなかったモントゥーのベートーヴェン交響曲だが、気品と気力あふれるその演奏はいまなお強い支持を集めている。第4交響曲は1952年のサンフランシスコ響、1959年のロンドン響、1960年のハンブルク NDR so.に続くモントゥー4種目の演奏となり、現状もっとも多く録音が残されているナンバーとなる。ここではヴァイオリン両翼型配置を採用しており、立体的な音響から繰り出される眩いばかりの音楽はたとえようがない。「エニグマ変奏曲」は1958年ロンドン響とのセッション録音が名盤の誉れ高いが、ここでも性格的な変奏をたくみに描き分ける巨匠の音楽運びにあらためて納得させられる。聴きどころはイスラエル・フィルの強力な弦楽セクションが濃厚な味わいを聴かせる「ニムロッド」だろう。そして、締め括りの「ダフニスとクロエ」はもはや説明不要。そのむかし、ディアギレフのロシア・バレエ団とのコラボで初演を手がけた、巨匠きわめつきのプログラム。1959年のロンドン響とのセッション録音や、1955年のコンセルトヘボウ管とのライヴ録音などでもわかるように、モントゥーが指揮するとガラッと色彩がゆたかになるのから不思議。あらたにディジタル・リマスタリングを施した音源は、モノラルながら聴きやすい。
ドラティ&IPO 1963年ライヴ、初出
 マーラー
:交響曲第6番 イ短調「悲劇的」
アンタル・ドラティ指揮
イスラエルpo.
 録音:1963年10月27日、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ、モノラル。おそらく初出音源で、ドラティにとって、そして意外にもオーケストラにとっても同曲の初音盤と思われるもの。ソース(推定):イスラエル・フィル・アーカイヴ。"The IPO Heritage Series"。ハンガリーに生まれたアメリカの名指揮者アンタル・ドラティ(1906-1988)は、戦後ダラスso.の再編(1945-49)を成し遂げたのに続いて、ミネアポリスso.の音楽監督(1949-1960)を務め、さらにデトロイトso.音楽監督に就任(1977-1981)と、オーケストラ・トレーナーとしての手腕を高く評価された。1936年に始まるほとんど600近くに及ぶディスコグラフィには、ハイドンの交響曲全集や8つのオペラなどの傑作も含まれているが、これまでのところマーラーについては、首席指揮者(1966-1974)に次いで、1981年より終身桂冠指揮者を務めたロイヤル・ストックホルム・フィルとの第5交響曲のライヴ録音(1973)と、ベルリン放送so.を指揮してライヴ収録した第9交響曲(1984)のわずかに2曲が知られるのみ。若き日にドラティは、フェレンツ・リスト音楽院でレオー・ヴェイネルに作曲を師事して本格的に音楽家の道を歩み始めている。同門には屈指のマーラー指揮者として名を馳せるショルティ(1912-1997)がおり、ドラティはまたマーラーを得意にしたバースタイン同様にすぐれた作曲家でもあったが、ライナーノート(英語)では、マーラーとその音楽に対する、ドラティの深い造詣の一端を伺い知ることが出来る。ドラティのマーラーへの適性は上述の第9番から実証済みで、ここでの第6交響曲の出来ばえにも期待が持てるが、マーラーに寄せる共感には特別なものを持つイスラエル・フィルとの顔合わせとくれば期待はなお膨らむ。
 なお、ここでドラティは第2楽章をスケルツォ、第3楽章をアンダンテとする演奏順を採用している。
ブロンフマン + メータ&IPO
 ブラームス:
  ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83(*)
 サン=サーンス:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 Op.22(#)
 D.スカルラッティ:ソナタ ハ短調 K11(+)
 シューマン:アラベスク ハ長調 Op.18(+)
 ショパン:練習曲 ハ短調 Op.10-12「革命」(+)
イェフィム・ブロンフマン(P)
ズービン・メータ指揮
イスラエルpo.
 録音:2009年7月1日(*/+)/1991年2月(#)、以上、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ。(+)はアンコール。おそらく初出音源。圧倒的なテクニックと並外れた詩情とを併せ持ち、現在、世界的に活躍するイェフィム・ブロンフマンは、高い人気を誇るアメリカのヴィルトゥオーゾ・ピアニスト。1958年に旧ソ連のタシュケントに生まれたブロンフマンは、1973年イスラエルに移住して、テルアビブ大学サムエル・ルービン音楽アカデミーの名教授アリエ・ヴァルディに師事、さらに1976年のアメリカ移住後はジュリアード音楽院に学び、ルドルフ・フィルクシュニー、レオン・フライシャー、ルドルフ・ゼルキンに師事している。名手たちの薫陶を授かり、天賦の才にさらなる磨きをかけたブロンフマンの凄腕が、あますところなく捉えたこの協奏曲アルバムでは、まず何といっても、ブラームスの第2協奏曲が一番の聴きものといえるだろう。ブロンフマンがすでに実演ではさまざまな指揮者とひんぱんに取り上げているプログラムだけあって、内容への期待度も十分。カップリングのサン=サーンスもまた、ブロンフマンが得意とする演目として有名だが、アンコールとして収録されたスカルラッティのソナタ共々、1992年に収録されたザンデルリング&BPOとのライヴ映像作品(EUROARTS, 20-57638)のなかで、完全に作品を自らのものとしていた姿は記憶にあたらしいところ。メータとはイスラエル時代にモントリオール響との協奏曲の共演で、ブロンフマンが国際舞台へのデビューを果たして以来の間柄だけあって、息の合ったところをみせてくれるものとおもわれる。
ブリテン:戦争レクィエムOp.66 (1961)
 イーディス・ウィーンズ(S) ナイジェル・ロブソン(T)
 ホーカン・ハーゲゴール(Br) メンディ・ロダン指揮室内アンサンブル
 パヴェル・キューン合唱指揮プラハ・フィルハーモニーcho.
 ダフナ・ベン=ヨハナン合唱指揮アンコル児童cho.
 クルト・マズア指揮イスラエルpo.
 録音:1996年4月8日、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ・ステレオ。作曲から35周年にイスラエル・フィルがおこなったライヴ、巨匠マズアはこの作品にひときわ情熱を傾けてきたことで知られる。コヴェントリーにある聖ミカエル教会の大聖堂の献堂式のために委嘱された「戦争レクィエム」は、同教会が第2次大戦下のドイツ軍の爆撃から再建された経緯を踏まえて、かねて自らの最大の関心事であった反戦と平和への祈願というテーマを込めるべく、ブリテンが持てる力のすべてを注ぎ込んだ集大成的傑作。形式的には、ラテン語による通常のミサ典礼文に加えて、第一次世界大戦で夭折した戦争詩人、ウィルフレッド・オーエンによる英文の詩が挿入される形が採られている。さらに、3管編成のオーケストラと室内アンサンブル、ソプラノ独唱、テノール独唱、バリトン独唱、混声合唱、少年合唱、ピアノにオルガンまで動員するという点もまたモニュメンタルな内容にふさわしい特徴となっている。1927年生まれの巨匠指揮者クルト・マズアは、「戦争レクィエム」には格別の思い入れがあるようで、なじみの深いオケと実演で取り上げて、1992年2月に音楽監督を務めるNYPを指揮してライヴ録音、2005年5月に首席指揮者を務めるロンドン・フィルを指揮してライヴ録音を発表していた。ちなみにマズアといえば、1989年10月9日、東西ドイツの統一に向けた激動の最中にライプツィヒで起きた「月曜デモ」に際して、武力行使を回避するよう当局に対話を呼び掛けて、平和的解決に導いたことで、人権活動家としても知られている。1992年以来、マズアが終身名誉客演指揮者を務めるイスラエル・フィルを指揮した「戦争レクィエム」は、精鋭プラハ・フィルハーモニーcho.を招くなど公演にかけるマズアの強い意気込みがうかがえ、ここでも力のこもった演奏を聴くことができるものとおもわれる。
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 Op.98(*)
サン=サーンス
 交響曲第3番 ハ短調 Op.78「オルガン付」(#)
アレクサンドル・ゴリン(Org)
ズービン・メータ指揮
イスラエルpo.
 録音:2006年11月(*)/2007年10月(#)、マン・オーディトリアム、ライヴ。1936年生まれの巨匠ズービン・メータが、録音を重ねてきたこだわりのプログラム2曲。メータは当時30代後半だった1976年にウィーン・フィルとブラームスの第1交響曲をセッション録音したのを皮切りに、1979年から1982年にかけて、当時音楽監督を務めていたNYPと交響曲全曲をセッション録音、さらに1992年10月にイスラエル・フィルとも一挙に交響曲全曲をセッション録音している。また、イスラエル・フィルとは、1977年に第2交響曲をライヴ録音、さらに同楽団が創設60周年を迎えた1996年にも、ガラ・コンサートにおける第2交響曲のライヴ・レコーディングをおこなっていた。heliconレーベルでは、2009年10月のコンサートでイスラエル・フィルを指揮して集中的に取り上げた第1交響曲、第3交響曲、ブッフビンダー独奏によるピアノ協奏曲集、ドイツ・レクィエムがすでにリリースされていることからも、メータがブラームスをレパートリーの柱として長年に亘り力を注いできたことが窺い知れる。ここでの第4交響曲もまた、キャリアのこうした流れの中に位置づけられるもので、看板の弦楽セクションの威力も存分に、パッサカリアなど表情豊かにたっぷりと聴かせてくれるものと期待される。
 メータはサン=サーンスの「オルガン付き」を、これより37年前の1970年に音楽監督時代のロサンゼルス・フィルを指揮してセッション録音したのち、1995年にBPOともセッション録音しているので、このイスラエル・フィルとのアルバムは通算3種目にあたり、やはり得意の内容といえそう。メータは若いころから「惑星」に「シェエラザード」など、ダイナミックで鳴りごたえのするプログラムはお手のもので、悉く抜群のセンスを発揮しては胸のすくような快演で人気を博してきた。「オルガン付き」などもまさにその代表例だが、とりわけ重低音のオルガンと亘り合う第2楽章第2部以降の盛り上がりにかけて、十分な手ごたえを与えてくれるのはまず間違いないものとおもわれる。しかも、過去の録音を通じて隅々まで知り尽くした作品ということもあり、穏やかな部分への目配りもみごとで、たとえば第1楽章第2部ポコ・アダージョ。オルガンの和声上、弦楽器のユニゾンによってしっとりと歌われる旋律主題が馥郁と拡がりゆくひとときは、このたびのイスラエル・フィルの起用が最高の効果を生む場面といえるだろう。今でこそパイプ・オルガン備え付けのホールは一般的になったが、サン=サーンスの第3交響曲といえば、かつては収録会場の制約という事情だけでなく、むしろ鳴り物入りで由緒ある教会や大聖堂でオルガン・パートを別収録するケースもありと、もっぱらセッション・レコーディングに特化した感のあるレパートリーであったことも思い起こされ、ここでライヴ収録という試みも注目されるところ。
 オルガニストのアレクサンデル・ゴリンは1955年旧ソビエト生まれ。ゴリンはアゼルバイジャン音楽アカデミーでピアノとオルガンを専攻したのち、1990年まではクラスノヤルスクを中心にロシア国内で活動を展開していたが、1991年以降イスラエルのテルアビブのルービン音楽アカデミーで教鞭を取るかたわら、イスラエル・フィルとのコンサートでも共演を重ねている。
マーラー:交響曲第7番 ホ短調「夜の歌」 ズービン・メータ指揮
イスラエルpo.
 録音:2007年2月、テルアビブ、マン・オーディトリアム、ライヴ・ステレオ。2011年のマーラー歿後100周年に合わせ、メータ&イスラエル・フィルの第7交響曲ライヴが登場。メータによるマーラーの交響曲録音といえば、1975年収録の「復活」で有名なウィーン・フィルのほか、ロサンゼルス・フィルやNYPを指揮したものなどがあるなかで、現時点で終身音楽監督のポストにあるイスラエル・フィルとの顔合わせによるものがやはり点数も多く、すでに半世紀以上という固い結びつきをあらためて感じさせる。
 2009年にウィーンで音楽出版社ウニフェルザール・エディツィオーンがおこなったインタビューによると、ちなみにメータがマーラーの交響曲を初めて聞いたのは、10代のときにボンベイでブルーノ・ワルターが指揮した第4番だったそうだが、第7番はメータにとって、バーンスタイン指揮ウィーン・フィルのリハーサルで間近に接した思い出の作品とのこと。
 そのインタビューで同時にまた、当時はまだ第7交響曲を知らなかったというメータは「経験がすべてであり、そういうわけで第9番とともに自分にはあまりに早すぎるとの判断から取り上げることを考えなかった」とも述べている。第7交響曲はメータも云うところの「たいへん錯綜とした内容」が特徴的で、マーラー作品に時折見られるシンメトリックな5楽章形式のなかに、スケルツォを挟んで「夜の歌」という通り名の由来となる2つの「夜曲」を置くという構造や、さらに、両端楽章の対照的な性格付け、テナーホルンの音色が異化効果を生む第1楽章と、ある種の躁状態をおもわせるフィナーレとの落差もまた、謎めいた作風を際立たせるものとなっている。マーラーの演奏にあたり、メータはバーンスタインより「ストリート・ミュージックのように演奏するんだよ」とのアドバイスを受けたそうだが、その記憶も脳裏をよぎったのだろうか。
 1936年4月生まれの巨匠メータはこの第7交響曲を指揮した時点で70歳を迎えていたが、もっとも信頼できるオケを得て、確信に満ちた演奏内容を聴かせてくれるものと期待されるところ。(インタビュー内容引用出典© Universal Edition)
ガリー・ベルティーニ
 ベルリオーズ:劇的物語「ファウストの劫罰」Op.24(*)
 ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」(抜粋)〔第1部冒頭−第3部手前〕(#)
  ダーフィト・キュープラー(T;ファウスト;*) フランツ・グルントヘーバー(Br;メフィストフェレ;*)
  ベアトリス・ユリア=モンゾン(Ms;マルグリート;*) デニス・セドフ(B;ブランデル;*)

  ガリー・ベルティーニ指揮イスラエルpo.、クルジュ・トランシルヴァニア国立po. cho.(*)
  リナトcho.〔イスラエル室内cho.〕(#)
 録音:1996年3月2日(*)/1974年1月1日(#)、以上、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ。2005年に世を去ったイスラエルの巨匠指揮者ガリー・ベルティーニは、なによりマーラーのエキスパートとしてのイメージが強烈に刻印されているが、このアルバムに収録されているふたりの作曲家、ベルリオーズとラヴェルの作品を好んで実演で取り上げていた。ベルリオーズのケースでは、幻想交響曲(1993年)や序曲「ローマの謝肉祭」、「ベンヴェヌート・チェッリーニ」序曲(1994年)といった、死後に日の目を見たケルン放送so.とのライヴ録音などからもうかがえるし、ベルティーニはまた、東京都so.の音楽監督(1998-2005)として2003年11月、劇的交響曲「ロメオとジュリエット」の公演を大成功に導き、大編成作品にみせるたしかな手捌きも実証済みなので、イスラエル・フィル創立70周年にあたる2006年の「ファウストの劫罰」でも充実した内容を期待できるのではないかとおもわれる。なお、併禄の「ダフニスとクロエ」について。ベルティーニは1989年に「ダフニスとクロエ」組曲第2番(1989年)をケルン放送so.とライヴ録音しているが、ここではラヴェルによる組曲版ではなく、全曲版の第1部冒頭から第3部手前あたりまでを収めている。
妙なる時〜イスラエル・フィル創立75周年記念アルバム
 ヴェルディ:「運命の力」序曲 / モーツァルト:「フィガロの結婚」序曲[1986年]
 ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調「運命」〜第1楽章 / ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調〜第3楽章[2009年]
 シューベルト:交響曲第9番 ハ長調「ザ・グレイト」〜第2楽章[2006年]
 ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 ホ短調 Op.72 No.2[ズービン・メータ指揮/1996年]
 チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調「悲愴」〜第2楽章[クルト・マズア指揮/2008年]
 ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調〜第3楽章[ヘルベルト・ブロムシュテット指揮/2006年]
 ベルリオーズ:「ファウストの劫罰」〜ハンガリー行進曲[ガリー・ベルティーニ指揮/1996年]
 マーラー:交響曲第2番 ハ短調「復活」〜第2楽章[ジェイムズ・レヴァイン指揮/1989年]
 ハイドン:交響曲第88番 ト長調「V字」〜フィナーレ[クルト・マズア指揮/2008年]
 J.S.バッハ:カンタータ第140番「目覚めよ、と呼ぶ声が聞こえ」BWV140〜コラール[カレジエイトcho./2008年]
 ヴィヴァルディ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 イ短調 RV.522〜第2楽章
  [イツァーク・パールマン、ピンカス・ズッカーマン(Vn)/1996年]
 モーツァルト:協奏交響曲 変ホ長調 K.364〜第3楽章[ハイイーム・タウブ(Vn) ダニエル・ベンヤミニ(Va)/1968年]
 モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K.595〜第3楽章[ダニエル・バレンボイム(P)/1972年]
 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調〜第2楽章[ピンカス・ズッカーマン(Vn)/1989年]
 ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調〜第4楽章[ルドルフ・ブッフビンダー(P)2009年]
 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調〜第1楽章[アリシア・デ・ラローチャ(P)1987年]
 サン=サーンス:ピアノ協奏曲第2番 ト短調〜第2楽章[イェフィム・ブロンフマン(P)1991年]
 プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ト短調〜第3楽章[アイザック・スターン(Vn)/1975年]
 ブラームス:ドイツ・レクィエム〜第2曲[ガリー・ベルティーニ・イスラエル合唱団/2009年]
 モーツァルト:「ドン・ジョヴァンニ」〜シャンペンの歌[ニコラ・ウリヴィエーリ/2009年]

  ズービン・メータ指揮(指揮者記載無しの曲全て) イスラエルpo.
 録音:[/内]、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ。代理店によると、全て既出盤からのコンピレーション。
ロストロポーヴィチ〜チャイコフスキー
 交響曲第6番 ロ短調 Op.74「悲愴」/
 幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」Op.32
ムスティスラフ・
 ロストロポーヴィチ指揮
イスラエルpo.
 録音:1975年1月14日、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ・モノラル〔代理店記載ママ〕。ソース:イスラエル・フィル・アーカイヴズ(ディジタル・リマスタリング)。おそらく初出音源。"The IPO Heritage Series"ムスティスラフ・ロストロポーヴィチがイスラエル・フィルを指揮して、チャイコフスキーの「悲愴」交響曲と「フランチェスカ・ダ・リミニ」を演奏したアルバムが登場。よく知られるように、ソビエト時代のロストロポーヴィチは、物理学者サハロフや作家ソルジェニーツィンを擁護したことにより、当局からみずからも反体制派分子とみなされ、演奏活動を大幅に制限されてしまい、ついに1974年、向こう2年間のビザを取得して出国し、そのままソビエト連邦より亡命することになる。西側に出て本格的に指揮活動をスタートさせたロストロポーヴィチは、リムスキー=コルサコフやプロコフィエフ、ショスタコーヴィチなどのロシアものでおおいにその本領を発揮し、レコーディングも次々と行って行くが、なかでも当時、その旺盛な表現意欲と実力を世に広く知らしめた代表的録音が、チャイコフスキーの交響曲全集だった。じっさい、チャイコフスキーの「悲愴」は、ロストロポーヴィチにとってもよほど思い入れの強い作品なのだろう。ロストロポーヴィチ指揮による「悲愴」では、ロンドン・フィルとの全集シリーズ中、1976年10月のロンドンのキングズウェイ・ホールにおけるセッション録音のほかにも、ゴルバチョフの招きでワシントン・ナショナルso.を率いて16年ぶりに母国へ凱旋公演した際、1990年2月のモスクワ音楽院大ホールにおける演奏を収めたライヴ録音も知られている。また、「フランチェスカ・ダ・リミニ」については、同じくロンドン・フィルとの全集録音の流れで、1977年5月ロンドンのアビー・ロード・スタジオでセッション録音していた。20世紀後半を代表するチェロの大家としてのロストロポーヴィチは、野太い音色を武器に、スケールの大きな表現を持ち味としていたが、そのスタイルはそのまま指揮のケースにも当てはまるといえるだろう。このたび登場する音源は、1975年1月におこなわれたコンサートの模様をライヴ収録したもので、ここでは得意のチャイコフスキーを取り上げて、思いのたけのすべてをぶつけたような情熱的な演奏内容を聴かせてくれるものとおもわれる。
クーベリック&IPOの「合唱」〜ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 Op.125「合唱」
 エルジー・モリソン(S) ローリス・エルムズ(A)
 ヴァルデマル・クメント(T) デイヴィッド・ケリー(B)
 ラファエル・クーベリック指揮イスラエルpo.、テルアビブ・フィルハーモニーcho.
 録音:1958年4月25日、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ・モノラル。ソース:イスラエル・フィル・アーカイヴズ(ディジタル・リマスタリング)。初出音源。"The IPO Heritage Series"チェコ出身の指揮者ラファエル・クーベリックは、スメタナやドヴォルザークといった母国の音楽と同様に、モーツァルトからブルックナー、マーラーに至る独墺系の作品にもすぐれた演奏を聴かせ、遺された録音の多くがすぐれた内容として知られている。ベートーヴェンについても、クーベリックは手兵バイエルン放送so.のほか、ウィーン・フィル、BPOなど、9つの世界屈指のオーケストラを振り分けた交響曲全集をはじめとして、知と情のバランスの取れた印象深い録音をいくつも残した。こうしたなかで、クーベリックはベートーヴェンの「第九」を、1959年にロイヤル・フィルとモノラル・セッション録音、1974年にクレンペラー追悼演奏会でニュー・フィルハーモニアとステレオ・ライヴ録音、1975年に上述の交響曲全集企画としてバイエルン放送so.とステレオ・セッション録音、1982年にバイエルン放送so.とステレオ・ライヴ録音をおこなっている。また、ほかに1970年12月にはバイエルン放送so.とのジルヴェスター・コンサートにおけるライヴ映像も収録していた。イスラエル・フィルとの顔合わせによる「第九」は1958年4月のライヴなので、現状でクーベリックがもっとも若い時期の記録ということになる。ちなみにイスラエル・フィルとはこの後1975年にも第4交響曲をセッション録音しているが、このときクーベリック43歳。17年後の1975年のバイエルン放送so.盤との単純比較では、全曲で4分ほど短くなっており、ここでは壮年期のパワー漲る表現にも期待したいところ。
イシュトヴァーン・ケルテス、死去直前のライヴ含む
 ヨーゼフ・ハイドン:ミサ曲第9番 ニ短調「ネルソン・ミサ」Hob.XXII-11 (*)
 マーラー:亡き子をしのぶ歌(#)
  ルチア・ポップ(S;*) イルゼ・グラマツキ(A;*) ミーシャ・ライツィン(T;*)
  岡村喬生(B;*) モーリーン・フォレスター(A;#)
  イシュトヴァーン・ケルテス指揮イスラエルpo.、テルアビブ・フィルハーモニーcho.(*)
 録音:1973年4月(*)、1971年4月(#)、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ・モノラル。ソース:イスラエル・フィル・アーカイヴズ(ディジタル・リマスタリング)。おそらく初出音源。"The IPO Heritage Series"ハンガリー出身の名指揮者イシュトヴァーン・ケルテス(1929-1973)が、イスラエル・フィルを指揮して、ハイドンとマーラーの声楽曲を演奏したライヴ録音は、いずれもこれまでディスコグラフィにはなかったレパートリーだけにファンには見逃せない内容。1973年4月16日、ケルテスはイスラエル・フィルに客演した際に、テルアビブの海岸を遊泳中の事故で世を去るが、ハイドンの「ネルソン・ミサ」はまさにその当月1973年4月のライヴ。ソリストも粒ぞろいで当時34歳のポップに、バスには日本が誇る岡村喬生の名前が。岡村にとってケルテスはケルンで出会って以来の恩人かつかけがえのない友人であった。ケルテスの死去に関しても、自らの半生記「ヒゲのオタマジャクシ世界を泳ぐ」(新潮社/1983年初版)に詳しいが、2001年よりイシュトヴァーン・ケルテス協会会長も務めている。これはきわめて重要なドキュメントといえるだろう。
 カップリングは、伝説のコントラルト、モーリーン・フォレスターをソリストに迎えたマーラーの「亡き子をしのぶ歌」。フォレスターは、“マーラーの直弟子 "ワルター仕込みのマーラー歌いとして知られ、ここでも圧倒的な存在感を示しているものとおもわれる。
シノーポリ&IPO、1993年ライヴ
 ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 Op.55「英雄」
 ラヴェル:高雅にして感傷的なワルツ
ジュゼッペ・シノーポリ指揮
イスラエルpo.
 録音:1993年10月28日、テルアビブ、マン・オーディトリアム、ライヴ・ステレオ。大物バーンスタインのサプライズ登場で「ライヴ音源の金脈」として俄かにクローズアップされつつある「Helicon Classics」に、こんどはシノーポリ(1946-2001) が登場。マーラーをはじめ、プッチーニやR.シュトラウスなど、シノーポリは後期ロマン派から近現代にかけての管弦楽曲ならびにオペラを得意としたことで知られ、事実、そのあたりのディスコグラフィも充実しているが、どういうわけか古典派のレパートリーを正規のレコーディングで取り上げた例はごくわずかしかなく、ベートーヴェンも例外ではない。シノーポリによるベートーヴェンの交響曲といえば、1996年3月にゼンパーオーパーでシュターツカペレ・ドレスデンを指揮して「第9番」をライヴ録音したアルバムと、シノーポリ最後の日本公演となった2000年1月に東京・NHKホールで、やはりシュターツカペレ・ドレスデンを指揮した「第9番」のライヴ映像作品があったくらいなので、イスラエル・フィルとの「エロイカ」は、広く歓迎されるところといえるだろう。交響曲史上、規模・内容ともに画期的な作品として位置づけられる「エロイカ」に対して、シノーポリによるマーラーやプッチーニの演奏に顕著な、明晰でありながら、極端なテンポ・ルバートが生み出す劇的なアプローチが、たとえば名高い葬送行進曲における慟哭表現や、手の込んだ変奏曲形式で書かれたフィナーレの扱いなどにどのように反映されているのかにも注目したいところ。このたび登場する「エロイカ」の収録は1993年10月におこなわれている。シノーポリにとって、1984年以来のフィルハーモニア管首席指揮者のキャリアも仕上げの段階に差し掛かり、重要プロジェクトであったマーラーの交響曲シリーズも、この年の12月に第9番を録音、翌1994年1月、2月に控える第3番でようやく完成という、大詰めの時期を迎えていた。いっぽうで、前年の1992年に首席指揮者に就任したシュターツカペレ・ドレスデンとは、シューマンの交響曲全曲録音を完成、まさしく新天地での活動に燃えていた時期でもあった。シューベルトのワルツをモチーフに着手された「高雅にして感傷的なワルツ」は、結果として和声法の限界点にまで接近したラヴェルの進歩的傑作。シノーポリはこの作品を1989年12月にNYPとセッション録音していたので、これが2種目の録音ということになるが、全曲の演奏時間について、NYPとの18分48秒に対して、イスラエル・フィルとの演奏では17分17秒と、およそ1分半、10パーセントほど速くなっている。テンポ・表情の指定から8つの部分からなり、移ろうように刻刻と姿を変えゆく内容は、濃密なカンタービレを持ち味とし、主情的な踏み込みも辞さないシノーポリの個性がよく映える演目といえそう。
シェーンベルク:ワルシャワの生き残り Op.46 (*)
ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調(#)
フリートへルム・エーベルレ(語り)
クルト・マズア指揮イスラエルpo.、
イスラエル・オペラcho.男声合唱
 録音:2006年12月31日(*)/1995年3月(#)、以上、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ。1927年生まれの巨匠指揮者クルト・マズア&イスラエル・フィルのブル7は、終身名誉客演指揮者就任から3年目に行われたコンサートの模様。カップリングの「ワルシャワの生き残り」は、ベートーヴェンの第9交響曲とともに、イスラエル・フィル創立70周年の2006年ジルヴェスター・ガラで演奏された物。1970年から1996年までの長期に亘り、ライプツィヒ・ゲヴァントハウスo.のカペルマイスターを務め、今日に繋がる名声の足掛かりを築き上げたマズアは、1974年から1978年にかけて同オケとともにブルックナーの交響曲全集録音を完成させている(第7番は1974年収録)。さらにマズアは、メータの後任にあたるNYPの音楽監督時代(1991-2002)に、1991年に第7番を、1993年に第4番を、いずれもライヴ録音していた。当ライヴを含め現状で5種を数える第7番は、ブルックナーの交響曲のなかでもマズアが得意とする演目のようで、上記のほかにも1967年ロンドンにおけるシュターツカペレ・ベルリンとのライヴ録音、2003年のシュレスヴィヒ=ホルシュタイン祝祭管とのライヴ録音が知られているほか、現在でも客演を重ねているフランス国立管の音楽監督在任中(2002-2008)の2005年、2007年という具合に、実演でよく取り上げてもいた。対照的に、イスラエル・フィルによるブルックナー録音といえば、1963年にライヴ収録された第9番(HEL-029625)のほか、1987年にフランクフルトでライヴ収録された第8番の映像作品、1989年にセッション録音された第0番と第8番くらいでごく数点しかなく、これらはすべてメータ指揮によるものだった。ブルックナーのおおきな魅力のひとつに、息の長い緩徐楽章の美しさが挙げられるが、そのままこれは優秀な弦楽セクションを誇るイスラエル・フィルにとっておおいに真価を発揮する場面ともいえそうで、数多くブルックナーを手掛けてきたマズアとの顔合わせはたいへん興味の尽きないものといえるだろう。イスラエル勢による迫真の「ワルシャワの生き残り」。第2次大戦中のホロコーストという、ナチがおこなった未曾有の残虐行為を扱った内容に対して、ここでイスラエルの演奏陣がみせる息詰まる音楽は想像以上で、終盤、男声合唱が「聞け、イスラエル」という歌うくだりに至っては鬼気迫るものがある。語りを担当するフリートへルム・エーベルレは1935年生まれのドイツの名優。エーベルレは、マズアが1988年にグリーグの「ペールギュント」のセッション録音をおこなった際にも語りとして参加していた。
エルガー:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 Op.61 (*)
J.S.バッハ
 ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 BWV.1041 (#)
ピンカス・ズッカーマン(Vn)
ズービン・メータ指揮
イスラエルpo.
 録音:2006年4月8日(*)/1986年12月29日(#)、以上、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ。メータ率いるイスラエル・フィルが、名手ズッカーマンを独奏に迎えてエルガーとJ.S.バッハのヴァイオリン協奏曲を演奏したアルバム。ズッカーマンにとって、両曲ともすでに複数のレコーディングによりすぐれた実績を示しているプログラム。エルガー53歳、もっとも創作の盛んであった時期に書かれたヴァイオリン協奏曲は、長年独学で習得してきたヴァイオリンの技巧を駆使しながら、劇的でむせかえるような濃厚な味わいと一連の作品に通じる高貴な佇まいとを湛えた大曲で、初演者クライスラーに献呈されている。ズッカーマンもこの曲に惚れ込んだひとりで、1976年にバレンボイム指揮ロンドン・フィルとセッション録音、1992年にレナード・スラットキン指揮セントルイス響とセッション録音しているが、前回より14年ぶりとなる2006年のライヴは、イスラエル・フィルが創立70周年を迎えたシーズンに果たした生地テルアビブでの公演ということで、母国の聴衆を前に熱のこもった内容が期待されるところ。カップリングのJ.S.バッハのヴァイオリン協奏曲第1番は、エルガーより20年前、イスラエル・フィル創立50周年にあたる1986年の演奏。1948年生まれのズッカーマンは、1969年のレコード・デビュー以来、40年以上におよぶキャリアのなかで、J.S.バッハのヴァイオリン協奏曲をすべて録音していて、第1番については、1990年のイギリス室内管との顔合わせを含め、過去に2度弾き振りでレコーディングしていた。アイザック・スターンに見出され、ジュリアード音楽院で名教師ガラミアンに師事したズッカーマンといえば、ガラミアン門下屈指の美音で幅広い人気を博してきたが、ここでも世にも美しいバッハを堪能できるものとおもわれる。
バーンスタイン&IPO、
 1985年本拠でのマーラー「第9」、初出

 マーラー:交響曲第9番 ニ長調
レナード・バーンスタイン指揮
イスラエルpo.
 録音:1985年8月25日、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ|おそらく初出音源| (P) (C) 2012 。このコンビによる同曲は、翌月のライヴ2種(1985年9月3日&1985年9月5日)が、CD-Rの使用の ETERNITIES から ETCD-031/2-S、ETCD-033/4-Sで発売され〔初出だった LANNE HISTORICAL COLLECTION とともに、すべて廃盤〕、共に伝説級の名演としてマニアには有名だが、その直前に本拠地で行われたライヴが初登場。音質的には今回の物が一番優れているのではないかと予想され、マニアならずともマーラー愛好家は必聴と言えるだろう。
ハイドン:オラトリオ「天地創造」
 バーバラ・ヘンドリックス(S;天使ガブリエル/イヴ) クリス・メリット(T;天使ウリエル)
 ジョゼ・ヴァン・ダム(Br;天使ラファエル/アダム) パリo.cho.
 ズービン・メータ指揮イスラエルpo.
 録音:1986年12月25日、マン・オーディトリアム、テルアビブ、ライヴ。イスラエル・フィルにとって1986年は、節目となる重要な年だった。半世紀前の1936年に名ヴァイオリニスト、フーベルマンの呼びかけに応じて集まった数多くのユダヤ人音楽家たちは、トスカニーニの指揮により同じく1936年12月26日にテルアビブで楽団の創立記念演奏会を開いている。このたび登場するハイドンの「天地創造」は、イスラエル・フィル創立50 周年を迎えた1986年12月25日のクリスマスに、1936年生まれで楽団と同様に50歳を迎えたメータが、イスラエル・フィルを指揮しておこなったコンサートの模様をライヴ収録した物。ハイドンの最高傑作ともいわれるオラトリオ「天地創造」は、ユダヤ教の重要な聖典とされる旧約聖書の「創世記」と「詩篇」、ミルトンの「失楽園」をテキストの題材として、神による創造の第1日、から第4日、まで、生き物が出現する第5日、と第6日、そしてアダムとイヴの登場と、創世の七日間を時系列に沿って3部構成で描いている。このように直截的にユダヤ教、キリスト教に共通する世界観で彩られた内容と、絵画的ともいうべき巧みな手法でわかりやすく活写される動物たちの魅力や、大合唱が動員されて聞き栄えすることなどから、欧米ではとりわけ人気も高く特別な作品として迎えられ、年末から年始にかけて取り上げられる機会も多く、クリスマス・シーズンの風物詩ともなっている。こうした内容だけに、演奏会の時期も併せて、プログラムに「天地創造」が選ばれたのはイスラエル・フィル創立50周年の特別な年を締め括るにふさわしいとの判断がはたらいてのことなのだろう。ソリストには、ヘンドリックス、メリット、ヴァン=ダムと、世界的なスター歌手が揃えられ、合唱には、1976年に創設され10 周年のアニヴァーサリーを迎えたパリo.合唱団を迎えて、とびきりのイベントに華を添えている。ワーグナーやヴェルディのオペラでのたしかな手腕で知られるメータは、大規模な声楽作品についても、たとえば2009年にイスラエル・フィルとライヴ収録した「ドイツ・レクィエム」などからもわかるように、ここでもドラマティックな音楽運びでおおいに盛り上がりをみせているものとおもわれる。ちなみに、メータによるハイドンといえば、実演ではウィーン・フィルと交響曲第103番や第104番、第12番なども取り上げ、交響曲第22番をライヴ収録していたほか、音楽監督に就任した1998年にバイエルン州立歌劇場管とは「戦時のミサ」の映像作品も残していた。
シェーンベルク:グレの歌(*) /淨められた夜 Op.4(弦楽合奏版;#)
 ダニエル・キルヒ(T;ヴァルデマール王) ジェニファー・ウィルソン(S;トーヴェ)
 ダニエラ・デンシュラグ(A;山鳩) アレクサンドル・ツィンバリュク(B;農夫)
 ニクラス・ビョルリンク・リーゲルト(T;クラウス) イタイ・ティラン(語り)
 ズービン・メータ指揮イスラエルpo.、ルカーシュ・ヴァシレク合唱指揮プラハ・フィルハーモニーcho.、
 ローネン・ボルシェフスキー合唱指揮ガリー・ベルティーニ・イスラエルcho.
 録音:2011年7月31日(*) / 2006年4月(#)、以上 マン・オーディトリアム、テル・アヴィヴ、ライヴ。「グレの歌」は、メータがイスラエル・フィル終身音楽監督に就任して30年目を迎えた2011年7月のライヴ録音。メータは1991年5月に、13年間に亘り音楽監督を務めたNYPとの最終公演で同曲を取り上げた際の模様を収めたアルバムを発表していたので、20年ぶりの再録音ということになる。ちなみに、メータは、この翌年2012年6月にもウィーンのムジークフェラインでウィーン・フィルを指揮して「グレの歌」を演奏しているが、破格に巨大な編成を擁する作品の性格から実演での上演が稀である現実を踏まえると、むしろ近年のメータの本作への入れ込みぶりが窺い知れる。なお、この上演では、重要な役どころである山鳩のデンシュラグ、農夫役のツィンバリュクがこのアルバムと同一のキャスティングとなっていた。「グレの歌」は声楽陣だけでも、5人の独唱者、3群の男声四部合唱、混声八部合唱を加えた300 人近い人員を要することから、ここでは地元の合唱団のほか、世界有数の実力派団体として知られるプラハ・フィルハーモニーcho.をゲストに迎えていて、やはりメータの気合の入り具合が伝わって来る。メータの「淨められた夜」については、1967年にロサンゼルス・フィルを指揮したDECCAのセッション録音と、2003年にバイエルン州立歌劇場o.を指揮したFARAOのライヴ録音がリリース済みだったので、イスラエル・フィルとのライヴ録音は、前作より3年ぶり、通算3種目の内容ということになる。ブラームスの第4交響曲(2006年)、マーラーの「夜の歌」(2007年)など、ここ最近のメータによる充実の指揮ぶりはHELICONのリリースを通じて確かめられるが、ここではイスラエル・フィル看板の弦楽セクションが奏でる「淨められた夜」というポイントだけで、もはや説明不要だろう。むせかえるような官能美を期待したいところ。
パウル・ベン=ハイム:オラトリオ「ヨラム」
 カタリナ・ペルシケ(S) カルステン・ズュース(T)
 ベルント・ヴァレンティン(Br) ミクローシュ・シェベシュチェーン(B)
 ハイコ・ジーメンス指揮イスラエルpo.、ミュンヘン・モテットcho.
 録音:2012年4月3日、スモラルツ・オーディトリアム、テルアビブ大学、ライヴ。2008年にジーメンスによって初演された作品の、イスラエル初演時ライヴ。「イスラエル音楽の父」のひとりと称されるパウル・ベン=ハイムは、イスラエルに移住してその名を名乗る以前の1897年、パウル・フランケンブルガーとしてミュンヘンで誕生した。生地でフリードリヒ・クローゼに作曲を師事、1920年から24年にかけてブルーノ・ワルターとハンス・クナッパーツブッシュのアシスタント・コンダクターを務めたのち、1924年から31年までアウグスブルク歌劇場のカペルマイスターを務めていたが、31年、ユダヤ人の同僚皆と共に解雇されてしまう。その年に故郷ミュンヘンの家族のもとに戻ると、ベン=ハイムは若いころから作曲を夢見ていた作品、「ヨラム」の仕事に取り掛かる。けれども、完成したときには、すでにナチが権力を掌握しており、このオラトリオは作曲後、自筆譜のまま遺され、45年間一度も演奏される機会の無かった、いわば「幻の作品」となっていた(1979年にテルアビブでヘブライ語訳版により一部が演奏されている)。1933年2月にナチの政権奪取後、ミュンヘンからベン=ハイムが逃れる直前に完成したオラトリオ「ヨラム」だが、東プロイセン生まれのユダヤ系詩人ルードルフ・ボルヒャルト(1877-1945)の叙事詩「ヨーラムの書」(1907)に基づく内容は、聖書のヨブ記を題材としたもので、J.S.バッハの受難曲からメンデルスゾーンの「エリヤ」に至る、ドイツ・ロマン派のオラトリオの偉大な伝統に連なることを念頭に書き上げられた記念碑的作品。ハイコ・ジーメンスは、1954年にシュレスヴィヒ・ホルシュタインに生まれたドイツの教会音楽家であり、2008年11月8日にミュンヘンで、オリジナルの独語テキストによる「ヨラム」世界初演を成功に導いた指揮者。このアルバムは、ジーメンスがイスラエル・フィルを指揮して、2012年4月3日にエルサレムで行った、オリジナルの独語版「ヨラム」の記念すべきイスラエル初演時の模様をライヴ収録したもので、この大作の世界初録音となる。ジーメンス以下、魂の響きそのもののイスラエル・フィルの気合いの入ったアンサンブルに加えて、世界初演時と同じくミュンヘン・モテット合唱団を迎えた万全の布陣によって、およそ2時間に亘り、熱のこもった演奏内容が繰り広げられている。
ベートーヴェン:劇付随音楽「エグモント」Op.84 /交響曲第7番 イ長調 Op.92
 シャロン・ロストルフ=ザミール(S) クルト・マズア指揮イスラエルpo.
 録音:2012年3月31日、スモラルツ・オーディトリアム、テルアビブ大学、ライヴ。ドイツを代表する巨匠指揮者クルト・マズアが、85歳を迎える2012年に終身名誉客演指揮者を務めるイスラエル・フィルを指揮して、ベートーヴェンの交響曲第7番と劇音楽「エグモント」を演奏したコンサートの模様。マズアによるベートーヴェンの交響曲といえば、まず思い起こされるのが1970年から96年までカペルマイスターを務めたライプツィヒ・ゲヴァントハウスo.と完成させたふたつの全集録音だろう。マズアがカペルマイスターに就任して間もない時期の1972年から73年にかけてドレスデンのルカ教会で行った1回目のセッション録音と、さらに同ポストの仕上げ段階を迎えた1987年から93年にかけてライプツィヒの新ゲヴァントハウスで行った2回目のセッション録音とは、いずれもゲヴァントハウス時代の重要な業績として高い評価を獲得していた。このほかにもマズアは、音楽監督在任中(1991-2002)のNYPを指揮して、1992年に第5番のセッション録音や、1999年のジルヴェスター・コンサートにおける第9番のライヴ録音を行っていたし、2002年11月には音楽監督に就任後のフランス国立管を指揮して第2番と第6番を演奏したシャンゼリゼ劇場、ライヴ録音を発表していたことからも、マズアにとってベートーヴェンが重要なレパートリーであることがよくわかる。マズア指揮によるベートーヴェンの第7番は、上記のゲヴァントハウス管とのふたつの全集中の録音が、1972年11月と1990年11月に行われていたので、第1回目の録音からじつに29年ぶり、前作からも11年ぶり、このたびのイスラエル・フィルとの演奏はマズアにとって3種目の内容ということになる。いっぽう、マズアは「エグモント」について、1973年にゲヴァントハウス管を指揮して序曲をセッション録音していたほか、1992年にNYPを指揮して序曲を含む全曲をセッション録音していた。ここでは第8曲メロドラマを除いた、全9曲での演奏となっている。なお、会場のスモラルツ・オーディトリアムは、テルアビブ大学内にあるホール(座席数1,200)。1957年の開設より半世紀を経て改修工事中の本拠マン・オーディトリアム(座席数2,760)との音響条件の違いも興味深いところ。
ロッシーニ:スターバト・マーテル
 セレーナ・ファルノッキア(S) リナ・シャハム(Ms)
 コスミン・イフリム(T) シモン・オルフィラ(B)
 アッシャー・フィッシュ指揮イスラエルpo.、ガリー・ベルティーニ・イスラエルcho.
 録音:2012年6月、スモラルツ・オーディトリアム、テル・アヴィヴ、ライヴ。ダニエル・バレンボイムの愛弟子にして、Melbaレーベルにワーグナーの「ラインの黄金」全曲を録音するなど注目著しいイスラエルの若手、アッシャー・フィッシュによるロッシーニの「スターバト・マーテル」。宗教曲ながらロッシーニならではの劇場的感覚と美しいメロディに満ちたオペラ・ファン大喜びの世界、エネルギッシュで爆演系のフィッシュ向き。日本でもお馴染みのソプラノ、ファルノッキアの張りのある声、イフリムやオルフィラなどオペラ歌手総出で声楽の素晴らしさを満喫させる。
リムスキー=コルサコフ:シェヘラザード
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲(*)
アンヘル・ロメロ(G;*)
イアン・マクアダムス指揮
イスラエルpo.
 録音:2012年5月11日-13日、スモラルツ・オーディトリアム、テル・アヴィヴ、ライヴ。1982年生まれのアメリカの指揮者ライアン・マクアダムスがイスラエル・フィルを振ったアルバム。本来はラファエル・フリューベック・デ・ブルゴスが振る予定となっていたが、ドタキャンしたため、マクアダムスに白羽の矢が立った。彼はこの代役を見事にこなし、今後のイスラエル・フィルとの仕事に大きく期待出来る。曲はリムスキー=コルサコフの「シェヘラザード」。イスラエル・フィルのような高性能オーケストラにピッタリの演目で、弦のたっぷりした響きがこのうえなく魅力的。この曲独特の中近東的色彩も濃厚に表れ、最高に理想的な演奏となっている。ロドリーゴの人気曲「アランフェスの協奏曲」は名人アンヘル・ロメロの独奏。円熟の度が深まり、魔術的な演奏を披露している。
ハイドン
 交響曲第60番 ハ長調「うっかり者」/
 交響曲第104番 ニ長調「ロンドン」/
 ピアノ協奏曲 ニ長調 Hob.XVIII-11
マヤ・タミル(P)
ヨエル・レヴィ指揮
イスラエルpo.
 録音:2012年4月30日、イェルサレム・シアター、フライデイ・モーニング・インテルメッツォ・シリーズ・コンサート、ライヴ。イスラエル・フィルの首席客演指揮者、イル・ド・フランス国立管の首席指揮者などを務める1950年ルーマニア生まれの指揮者、ヨエル・レヴィによるハイドン。ピアノ協奏曲でソリストを務めたマヤ・タミルはこの録音当時12歳というイスラエルの天才少女ピアニストで、絶妙なテンポ感、細やかなデュナーミクの変化をつけながらも、子供らしい気持のよいまっすぐな演奏で弾ききっている。
メータ& IPO 〜ヘンデル:オラトリオ「メサイア」
 ヘザー・ハーパー(S) アルフレダ・ホジソン(Ms)
 ロバート・ティアー(T) ベンジャミン・ラクソン(B)
 ズービン・メータ指揮イスラエルpo.、シンギング・シティ・コア・オブ・フィラデルフィア
 録音:1974年12月31日、マン・オーディトリアム、テル・アヴィヴ、共にライヴ、ステレオ。 おそらく初出音源。またメータ指揮の「メサイア」はおそらく音盤初登場レパートリー。 #ブックレットおよびインレイに「モノラル」との誤表記がありますが、このまま供給されます。ご了承下さい。 1974年ジルヴェスター公演の模様。楽団の演奏史上いまも語り草といわれるこのライヴは、ソリストにイギリスを代表する世界的な顔ぶれたちを揃えていることに加え、合唱もフィラデルフィア市長とアメリカ合衆国国務省の肝いりで、1948年に結成されたシンギング・シティ・コア・オブ・フィラデルフィアの総勢100人を迎えるという、たいへん力の入ったものだったことがうかがえる。
メータ& IPO 〜シェーンベルク
 交響詩「ペレアスとメリザンド」 Op.5 (*) /
 管弦楽のための変奏曲 Op.31 (#)
ズービン・メータ指揮
イスラエルpo.
 録音:1988年(*)、1975年(#)、マン・オーディトリアム、テル・アヴィヴ、共にライヴ、ステレオ。 おそらく初出音源。#ブックレットおよびインレイに「モノラル」との誤表記がありますが、このまま供給されます。ご了承下さい。 メータとイスラエル・フィルにとって、両看板のマーラー演奏にも通じるシェーンベルクの代表的なオーケストラ曲2篇を演奏した興味深いアルバム。交響詩「ペレアスとメリザンド」が1988年、「管弦楽のための変奏曲」が1975年にいずれもテル・アヴィヴのマン・オーディトリアムで行われたコンサートのライヴ音源からのCD化で、録音状態良好なステレオ収録というのもおおきな魅力となっている。キャリアの初期よりメータが、実演とレコーディングの双方を通じて、シェーンベルク作品を好んで取り上げてきたのはよく知られている。ここでの2曲について、メータは「管弦楽のための変奏曲」を、1968年にロサンゼルス・フィルを指揮してデッカにセッション録音しており、「ペレアスとメリザンド」を1989年6月に同じイスラエル・フィルを指揮してソニーにセッションでレコーディングしていた。そのルーツゆえにイスラエル・フィルもまた、シェーンベルクを主要レパートリーのひとつに位置付けていて、やはりメータが指揮した「グレの歌」(2011年)と「淨夜」(2006年)のライヴ演奏(HEL-029658)では、作品に寄せる互いの共感の深さもあって、熱気を孕んだ内容を聴かせていたことも思い起こされる。
メータ& IPO 、1979.6.23
 プロコフィエフ:バレエ「ロメオとジュリエット」より
  〔モンタギュー家とキャピュレット家/ロメオとジュリエット/
   百合の花を手にした娘たちの踊り/ジュリエットの墓の前のロメオ/タイボルトの死〕

 レスピーギ:交響詩「ローマの松」/ボッティチェッリの3枚の絵
  ズービン・メータ指揮イスラエルpo.
 録音:1979年6月23日、マン・オーディトリアム、テル・アヴィヴ、共にライヴ、ステレオ。 おそらく初出音源。#ブックレットおよびインレイに「モノラル」との誤表記がありますが、このまま供給されます。ご了承下さい。 いかにもメータが得意とするプログラムだが、意外にもこれまでカタログになかったレパートリー。その意味でもたいへん価値ある内容。1979年といえばメータ43歳。思い切りのよい音楽づくりで迫力満点のサウンドを聴かせるアルバムを次々と発表して、おおいに名を馳せていた。メータが乗りに乗っていたその時期に、抜群の相性のイスラエル・フィルを指揮して、色彩的で鳴りっぷりの良い名曲を取り上げた、三拍子揃ったステレオ・ライヴは、幸いアーカイヴの保存状態が良く音質も上々で、期待を裏切らない仕上がりとなっている。
HEL-029667
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(4CD)
3CD価格
ズービン・メータ&イスラエルpo. 〜フーベルマン週間音楽祭30周年 1982.12
 J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV.1043
  [アイザック・スターン(Vn1) シュロモ・ミンツ(Vn2)]/
         ブランデンブルク協奏曲第6番 変ロ長調 BWV.1051
  [ピンカス・ズッカーマン(Vn) ダニエル・ベンヤミニ(Va)]
 ヴィヴァルディ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 イ短調 Op.3 No.5,RV 522
  [ヘンリク・シェリング、ハイイーム・タウブ(Vn)]/
         3つのヴァイオリンのための協奏曲 ヘ長調 RV.551
  [アイザック・スターン、ロイ・シロアッフ、シーラ・ラヴィン(Vn)]/
         4つのヴァイオリンのための協奏曲 ロ短調 RV.580
  [アイザック・スターン、シュロモ・ミンツ、イダ・ヘンデル、イヴリー・ギトリス(Vn)]
 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61[イツァーク・パールマン(Vn)]
 チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35[ヘンリク・シェリング(Vn)]
 メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64[シュロモ・ミンツ(Vn)]
 エルガー:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 Op.61[ピンカス・ズッカーマン(Vn)]
 シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47[イダ・ヘンデル(Vn)]
 バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112[イヴリー・ギトリス(Vn)]

  ズービン・メータ指揮イスラエルpo.
 収録:1982年12月13日-19日、ライヴ。ヴァイオリン・ファンが泣いて喜ぶ、豪華競演陣が一堂に会したフーベルマン週間音楽祭のライヴ! フーベルマンの生誕100周年にズービン・メータが企画したもので、スターン、ヘンデル、ギトリス、シェリング、パールマンらヴァイオリン界の巨匠が一堂に会した。シェリングらフーベルマンに直接師事していたヴァイオリニストから、その後継者パールマン、ズッカーマン、ミンツなどの当時の若手・中堅のヴァイオリニストも参加している。音楽祭ならではの盛り上がったライヴだが、演奏はいずれも抜群。バッハのドッペル(スターン&ミンツ)やヴィヴァルディの4つのヴァイオリンのための協奏曲(スターン、ミンツ、ヘンデル、ギトリス)は個性のぶつかり合いとも言える熱演でこのメンバーでしか表現することのできない衝撃の演奏を聴くことが出来る。一方、シェリング&ハイイーム・タウブ(1969年から1988年までイスラエル・フィルのコンサートマスターをつとめたヴァイオリニスト)のヴィヴァルディは硬派なアンサンブル。また、各ヴァイオリニストがソロをつとめた演目ではソリストの得意中の得意のレパートリーを披露しており、パールマン(ベートーヴェン)、シェリング(チャイコフスキー)、ズッカーマン(エルガー)、ヘンデル(シベリウス)、ギトリス(バルトーク第2番)と名演揃い。これだけのメンバーの演奏を1週間の間に聴くことができたのは後にも先にもないほど充実した演奏会であったことは言うまでもない。音楽週間最終日(1982年12月19日)はフーベルマン生誕100周年に当たり、この偉大なヴァイオリストの功績を称えた歴史的な演奏会となった。
 ブロニスワフ・フーベルマン(1882-1947):1882年12月19日、ワルシャワに近いチェンストホヴァに生まれ、ヴァイオリンは幼少の頃より才能を開花させ周囲を驚かせた。たくさんの伝説的逸話があるが、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を作曲家本人の前で演奏し感銘させたと言われている。音楽作りは非常に奔放で、“フーベルマン節 " とも言える独創性に富んだスタイルで聴衆を魅了した。ヒトラー政権後には人種差別政策に抗議を表明し、1936年にはユダヤ系の亡命音楽家たちが主要メンバーのパレスチナo.(後のイスラエル・フィルで、もちろん当音楽祭のオーケストラも当団)をイスラエルに創設した。1937年に演奏旅行中に飛行機事故に遭ったが、奇跡的に生還し、怪我を克服して翌年には演奏活動に復帰した。フーベルマンの次の世代に活躍したシェリング、ギトリスなど多くのヴァイオリニストに大きな影響を与えたヴァイオリニスト。戦後はヨーロッパに戻り1947年にスイスにて死去した。

 # 当初、代理店のミスにより HEL-029677 という品番でご案内していましたが、正しくは上記となります。
チャイコフスキー:歌劇「スペードの女王」
 カリーナ・A.フローレス(S;リーザ) オレグ・クルコ(T;ゲルマン)
 アルバート・シャギドゥリン(Br;エレツキー侯爵) ニーナ・ロマノヴァ(Ms;伯爵夫人)
 セルゲイ・レイフェルクス(Br;トムスキー伯爵) エカテリーナ・セメンチュク(A;ポリーナ)
 ヴィアチェスラフ・ヴォイナロフスキ(Tチェカリンスキー) マキシム・ミハイロフ(B;スリン)
 オリガ・シャラエヴァ(Ms;家庭教師)ベン・ヨハナン合唱指揮アンコールcho.、
 ロネン・ボルシェフスキ合唱指揮ガリー・ベルティーニ・イスラエルcho.

 ヴラディーミル・ユロフスキ指揮イスラエルpo.
 録音:2012年11月11日、14日、16日、スモラルツ・オーディトリウム、テル・アヴィヴ、ライヴ。ユロフスキ、イスラエル・フィルとの初共演となった公演「スペードの女王」のライヴ録音の登場。歌唱陣もロシア勢を中心とした布陣。ギャンブルのおそろしさを描き、主人公は二人とも自殺してしまうというストーリーながらも、各所に盛り込まれた美しく洗練された音楽が魅力の本オペラ。ユロフスキの楽団と歌唱陣をまとめあげる力量が遺憾なく発揮された名演奏となっている。第1幕のリーザの部屋の場面であらわれる様々な美しい旋律、第2幕の舞踏会のシーンとそれに続く伯爵夫人のアリアの胸を打つアリオーソ、フィナーレの場面まで、チャイコフスキーの美しい旋律と響き、そして熱に魅了される。
ノセダ& IPO 、 2014.1
 ボロディン:歌劇「イーゴリ公」序曲
 ベルリオーズ:幻想交響曲 Op.14a
ジャナンドレア・ノセダ指揮
イスラエルpo.
 録音:2014年1月4日-5日、10日-11日、チャールズ・ブロンフマン・オーディトリアム、テル・アヴィヴ、ライヴ。ジャナンドレア・ノセダが、2011年より首席客演指揮者を務めるイスラエル・フィルを指揮して、ベルリオーズの幻想交響曲をレコーディング。大規模な音響改修が施されてあらたに生まれ変わった本拠マン・オーディトリアム改め、ブロンフマン・オーディトリアムで、2014年1月におこなわれたコンサートをライヴ収録した物。1964年ミラノ生まれのノセダは、1997年にカダケスo. 指揮コンクール入賞を皮切りに、同年マリインスキー劇場から外国人初の首席客演指揮者として迎えられ、2007年にはトリノ王立劇場の音楽監督に就任、現在に至るその活躍にはめざましいものがある。2011年いっぱいで、9シーズン務めたBBCフィルの首席指揮者を勇退(現在は桂冠指揮者)したノセダはあらたに率いるイスラエル・フィルとも良好な関係を築いているようで、当コンビは2014年春に初の合衆国ツアーを敢行することになっている。ここでの演奏内容もまさしくその好調ぶりを示す物。ノセダのスケールゆたかで劇性に富んだ音楽運びとともに、オーケストラの地力のほどもよくうかがえて、たとえば、幻想交響曲の前半3楽章で聴かれる弦の美しさには、さすがは楽団設立以来の伝統を思わせるものがある。なお、ノセダはこのたびのアルバムをヘリコン・クラシックス第1弾として、今後も、継続的にイスラエル・フィルとアルバム製作をしてゆくとのことなので、おおいに期待されるところ。
ブルックナー
 交響曲第8番 ハ短調 WAB.108 (1890/ノーヴァク版)
ズービン・メータ指揮
イスラエルpo.
 録音:2013年12月15日-17日、チャールズ・ブロンフマン・オーディトリアム、テル・アヴィヴ、ライヴ。
ブルックナー
 交響曲第7番 ホ長調 WAB.107(ノーヴァク版)
ズービン・メータ指揮
イスラエルpo.
 録音:2012年7月8日-9日、スモラルツ・オーディトリアム、テル・アヴィヴ大学、ライヴ。巨匠メータが長年の手兵イスラエル・フィルを指揮して、ブルックナーの2交響曲コンサートをライヴ収録。メータにとって、第8番がイスラエル・フィルとは、1987年のフランクフルトでライヴ収録された映像作品、1989年2月のセッション録音に続いて24年ぶり3種目、ほかにも1974年のロス・フィルとのセッション録音や2005年にコンセルトヘボウ管を指揮したライヴ盤を含めると、6種目の内容となる。いっぽう、第7番は正規2種目、イスラエル・フィルとは初のレコーディング。メータによるブルックナーの交響曲録音といえば、これまでのところ、第0番、第4番、第7番、第8番、第9番の5曲が知られていて、なかでも若き日のメータが1965年5月に名門VPOを指揮してデッカにおこなった第9番は、ゾフィエンザールを満たすゆたかな響きを捉えた名録音としても有名だが、メータはちょうどその2年前の1963年5月に、イスラエル・フィルを指揮して第9番を演奏してもいた(HEL-029625)。資料によると、その後もメータは、第7番以降の3曲については、実演で取り上げる頻度も高く、それだけに思い入れの強いナンバーであることを伺わせますが、ここでのふたつの演奏は、最新の録音で音質がすぐれていることに加えて、巨匠が半世紀以上に亘り信頼関係を築き上げてきた楽団とともに、じっくり深めてきたブルックナー演奏を味わえるものとして期待される。なお、第8番の収録会場であるチャールズ・ブロンフマン・オーディトリアムとは、改称後のマン・オーディトリアムのことで、2013年の大規模な音響改修の際に、多大な寄付で貢献した人物の名を冠している。イスラエル・フィルの本拠がどのようなサウンドに様変わりしたかを確かめるのも興味深いところといえそう。最後に、使用楽譜の版について。第8番はメータが指揮した過去5種の録音と同じく、ノーヴァク版に拠る演奏で、アルバムにはハース版と表記されている第7番も、じっさいに音源にあたり確認したところ、過去のメータの実演同様に、ここでもノーヴァク版に拠る演奏となっている。
メータ& IPO 「英雄」〜ベートーヴェン
 交響曲第3番 変ホ長調 Op.55「英雄」(*) /
 「エグモント」序曲(#)
ズービン・メータ指揮
イスラエルpo.
 録音:2013年(*) /1981年(#) 。イスラエル・フィルの終身音楽監督を務めるメータによるエロイカの登場。切れ味鋭く、かつ豪快なならしっぷりで、名曲をあらためて新鮮に聴かせる。
HEL-029679
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1 Bonus CD)
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イスラエル・フィル創立80周年記念ボックス
 ノアム・シェリフ:祝典前奏曲[レナード・バーンスタイン指揮/1957年、MONO]
 モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299
   [ウリ・ショアム(Fl) ユディト・リベール(Hp) ポール・パレー指揮/1977年、STEREO]/
        クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
   [ヨナ・エトリンガー(Cl) セルジュ・チェリビダッケ指揮/1958年、MONO]
 ベートーヴェン:献堂式序曲 Op.124 [レナード・バーンスタイン指揮/1957年、MONO]
 モーツァルト:交響曲第38番 ニ長調 K504「プラハ」[ズービン・メータ指揮/1972年、MONO]
 チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35
   [アイザック・スターン(Vn) クラウディオ・アバド指揮/1972年、MONO]
 シューマン:交響曲第2番 ハ長調 Op.61 [ポール・パレー指揮/1976年、STEREO]
       交響曲第3番 変ホ長調 Op.97「ライン」[ポール・パレー指揮/1971年、MONO]
 ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 Op.15
   [ミンドゥル・カッツ(P) ヨーゼフ・クリップス指揮/1964年、MONO]
 ストラヴィンスキー:「火の鳥」[イーゴリ・ストラヴィンスキー指揮/1963年、MONO]
 ベートーヴェン:交響曲第4番 変ロ長調 Op.60 / エルガー:エニグマ変奏曲 Op.36
 ラヴェル:組曲「ダフニスとクロエ」[ピエール・モントゥー指揮/1964年、MONO]
 パウル・ベン=ハイム(1897-1984):
  ヴァイオリン協奏曲[イツァーク・パールマン(Vn) レナード・バーンスタイン指揮/1968年、MONO]/
  永遠のテーマ [The Eternal Theme] [パウル・クレツキ指揮/1966年、MONO]
 マーラー:交響曲第2番 ハ短調「復活」[パウル・クレツキ指揮/1966年、MONO]
 ラヴェル:マ・メール・ロワ[ロリン・マゼール指揮/1972年、MONO]
 ショスタコーヴィチ:交響曲第6番 ロ短調 Op.54[キリル・コンドラシン指揮/1980年、STEREO]
 チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 Op.74「悲愴」[ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ指揮/1975年,STEREO]
 シューベルト:交響曲第5番 変ロ長調 D485 [ズービン・メータ指揮/1989年、STEREO]
 ドヴォルジャーク:交響曲第8番 ト長調 Op.88 [ズービン・メータ指揮/1979年、STEREO]
 コープランド:リンカーンの肖像[アンドレ・コステラネツ指揮/1976年、STEREO]
 チャイコフスキー:交響曲第5番[ズービン・メータ指揮/1989年、STEREO]
 シェーンベルク:ピアノ協奏曲[フランク・ペレグ(P) アンタル・ドラティ指揮/1962年、MONO]
 シェーンベルク:ワルシャワの生き残り[クルト・マズア指揮/2006年、STEREO]
 メナヘム・アヴィドム:瞑想シンフォニエッタ[ラファエル・クーベリック指揮/1958年、MONO]
 ブルックナー:交響曲第7番[クルト・マズア指揮/1955年、MONO]
 A. U. ボスコヴィッチ:オーボエ協奏曲[イヴリン・ロスウェル(Cl) ジョン・バルビローリ指揮/1962年、MONO]
 モルデカイ・セテル:徹夜祷 [Midnight vigil] [ガリー・ベルティーニ指揮/2000年、STEREO]
 モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K.595[ダニエル・バレンボイム(P)指揮/1972年4月、MONO](#)
 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 Op.37[ダニエル・バレンボイム(P)指揮/1995年11月、STEREO](#)

  イスラエルpo.
 録音:[/内]。最後のバレンボイム弾き振り2曲がボーナス・ディスク収録。おそらく初出多数。 # (#)の2曲が含まれるボーナスCDについては、商品外装に一切記載がないとの事です。代理店によると初回プレス分には『 ステッカーなども貼付されておりませんが、ボーナスCDは間違いなく封入されております。』とのことですが、再プレス分等に関しては変更される可能性もあるため、当店では ボーナスCD に付きましては付属保証無し とさせて頂きます。ご了承下さい。 創立80周年の節目を迎えた名門イスラエルpo.。多彩なレパートリー、そして豪華指揮者による膨大なレコーディングがのこされている。このたび、創立80年を記念して、貴重音源を集めた12枚組ボックスが登場する。1936年、イスラエル・フィルの前身であるパレスチナo.が誕生した。ヴァイオリン奏者フーベルマンの呼びかけで集まった75名のユダヤの音楽家たちがメンバーだった。お披露目コンサートは1936年12月26日、指揮はアルトゥーロ・トスカニーニ。その後1940-43年、フーベルマンをソリストにしたツアーを皮切りに、多くの演奏旅行を重ね、名称をイスラエルpo.に改める。豪華指揮者たちとの共演を重ね、多彩なソリストたちとの録音の機会にも恵まれてきた。現在では、ズービン・メータが終身音楽監督(1981年〜)に就任している。魅力の音源満載の当ボックス。指揮者には、バーンスタイン、チェリビダッケ、クリップス、クーベリックら超豪華な顔ぶれ。コンドラシンの緊迫のショスタコーヴィチは1980年ステレオ。アバドとスターンのヴァイオリン協奏曲も、1972年録音でモノラルながら、スターンの華やかなテクニックと、楽団とのアンサンブルを満喫出来る。ストラヴィンスキーの自作自演やシェーンベルクのピアノ協奏曲などは録音のクオリティは時代を反映させたものではあるが、それでもなお貴重な録音の登場といえるだろう。また歴史的にも貴重な音源が多数。[CD1]の冒頭トラックを飾るのは、イスラエル・フィルの本拠地、マン・オーディトリウムが建設された1957年の柿落し公演に際して作曲されたノアム・シェリフの「祝典前奏曲」。バーンスタインの指揮という豪華布陣。[CD10]に収録されている、シェーンベルクが1947年アメリカで書いたホロコーストの残忍さを訴える「ワルシャワの生き残り」は、ドイツ国防軍の兵士だったマズアの指揮によるという、なんとも皮肉な顔合わせ。歴史的和解の演奏といえるだろう。[CD12]に収録されているモルデカイ・セテルの「midnight vigil(徹夜の祈祷)」は資料に欠落があり、指揮者ベルティーニ以外の演奏者の名前が残されていないが、アルトのミラ・ザカイの声が収録されていることは間違いないと考えられる。※モノラル収録の音源は、すべてスタジオで丁寧にマスタリングが施され、自然な音でおたのしみいただけるようになっている。【ソリスト情報】*ウリ・ショハム/楽団フルート奏者(1951〜/1970-97年までの27年間首席奏者)*ユディト・リベール/楽団首席ハープ奏者(1963-2003年)*ミンドゥル・カッツ(1925-1978、ピアノ)/ルーマニア出身。エネスコに見出されたことで知られる。リパッティ(1917-1950)と同じ師に師事セルジュ・チェリビダッケ、クリップス、マゼールアンタル・ドラティといった指揮者と共演を重ね、世界でツアーを行う。1959年イスラエルに移住。教師としても優れ、イスラエルでのピアノ教育に大きな功績を残している。1974年、第1回ルービンシテイン国際ピアノコンクールで審査員を務めた。シェリングの唯一のフランクのヴァイオリン・ソナタ録音でピアニストを務めている。52歳の時、イスタンブールでの演奏会でベートーヴェンの「テンペスト」を演奏中に倒れて亡くなった。*ヨナ・エトリンガー(1924-1981)/クラリネット奏者。1947-1964、楽団の首席奏者。室内楽の分野でも活躍した。*フランク・ペレグ/1958年当時の楽団のクラリネット(カデンツァ注:ピアニストなのでおそらく誤り)奏者。
マーラー(1860-1911):交響曲第3番 ニ短調
 藤村美穂子(Ms) ズービン・メータ指揮イスラエルpo.
 ローネン・ボルシェフスキー合唱指揮ガリー・ベルティーニ・イスラエルcho.
 ダフナ・ベン=ヨハナン合唱指揮エルサレム音楽舞踊アカデミー・ジョシュア・トゥットナウアー・アンコールcho.
 録音:2016年7月14日、チャールズ・ブロンフマン・オーディトリウム、テル=アヴィヴ。 メータ&イスラエル・フィルによるマーラーの第3番の登場。独唱は藤村美穂子という強力布陣。全篇を通してイスラエル・フィルの美しい弦楽器がまず絶品。そして管楽器も要所要所で主題をきわめて印象的に、時に神々しく、時に不吉に響かせる。藤村の迫真の歌唱は圧巻。独唱と器楽のかけあいも強烈なインパクト。終楽章で次々とたたみかける弦も、美しいハーモニーにおぼれることなく、歌う。幕切れまで、メータの見事な統率に圧倒される第3番となっている。これまでにメータはマーラーの第3番を、ロサンゼルス・フィル(1978年/ 98 '30 ")、イスラエル・フィル(1992年/ 94 '18 ")、バイエルン国立o.(2004年/ 94 '24 ")と録音しているが、このたび4回目、そして手兵イスラエル・フィルとは2回目の録音となる。今回は89 '37 "という演奏時間となっており、メータの本作品についての、また新しい解釈を聴くことが出来る。


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