WERGO | ||
リーム:セラフィンのエチュード (器楽および電子楽器のための) |
アンサンブル13 | |
エディションZKM(カールスルーエ・メディア技術&芸術センター)からの1枚。前衛芸術及びマスメディアの研究もしており、IRCAMをしのぐ本格的大組織。 | ||
ゲルハルト・シュテープラー: カラス騒ぐ/沈黙の宮殿/他4曲 |
ゲルハルト・シュテープラー(声) 宮田まゆみ(笙)他 | |
ドイツの作曲家シュテープラーが東京を訪れた際、街を占拠するカラスの群れに衝撃を受けて作った「カラス騒ぐ」。東京のカラスの鳴き声をサンプリング、笙の響きとともに現代社会の抱く不安を盛り上げる不気味な作品。 | ||
エレナ・カッツ=チェルニン(1957-): 非祝祭的行列[ Unceremonious Processions ] (短い15のスタジオ用小品;1999) |
イタ=ミリヤム・ テイレン(Cl) ウーヴェ・ディエルクセン (Tb/Tu) ディルク・ ロートブルスト(Perc) グレゴリー・ ジョーンズ(Vc) ハインツ・フーバー (アコーディオン) エレナ・ カッツ=チェルニン(P) | |
当店未案内旧譜。カッツ=チェルニンはウズベキスタン出身の作曲家。カールスルーエ芸術とメディア・テクノロジー・センター(ZKM)・エディション Vol.7。 | ||
サラウンド・ミュージック アルヴィン・ルシエ: 私は部屋に座っている (ZKM版;声とテープのための)(*) ブリュンマー:メデューサ(+) ジャスティン・ベネット、ニコラス・コリンズ、 カッフェ・マシュー、アンヌ・ウェルメール、 ツァイトブロム:ファイバー・ジェリー(#) |
アルヴィン・ルシエ(声;*) パスカル・ポンス、 ニルス・C.タンネル(Perc;+) ネットワーク・コンサート(#) | |
(*)はルシエのひそひそぼそぼそとした語りが、音響的な変化を加えられながら8回繰り返されるという作品。(+)(#)は鍾乳洞の中にいるような気分にさせられる不思議な音響作品。DVDの容量を活かし123分51秒を収録。 当盤はDVD-AUDIOディスクのため、通常のCDプレーヤーでは再生出来ません。 | ||
ルドガー・ブリュンマー(1958-):作品集 精神(*)/トカゲ点(#)/夜に(*)/スリル(#)/静けさという生き地獄(*) (映像:シルケ・ブリュンマー) | ||
(#)DVD VIDEO/(*)DVD AUDIO。NTSC/Religion 0/5.1サラウンド。 ブリュンマーは、アルス・エレクトロニカ賞のコンピュータ音楽部門第一位、ICMC97におけるICMA賞(国際コンピュータ音楽協会賞)等の受賞者。ドイツ圏を中心に活躍し、日本にも度々訪れている。「トカゲ点」に出てくる女性はまるで貞子。「スリル」は発狂寸前といった趣き。極限までに研ぎ澄まされた音世界がある。 当盤はDVDディスクのため、通常のCDプレーヤーでは再生出来ません。 | ||
ボジダル・スパソフ(1949-): フィアート・コンティヌオ[息の通奏低音] (電子楽器と管楽器のための) |
ムジーク・ファブリーク | |
音響派むけの一枚。宇宙空間を思わせる電子音(テープ)に、フルートやバスクラリネットの超絶技巧が重なり、えもいわれぬ無重力空間を作り出す。まるで宇宙遊泳をしているかのような気分。電子音とナマの楽器が組み合わさると、ナマの楽器の音がおどろおどろしく、さらに恐く聴こえるから不思議。ムジーク・ファブリークの面々の技巧が冴え渡る。なお上記は代理店の訳だが、「fiato」はイタリア語で「管楽器の」という意味もある。 | ||
Death Be Not Proud 〜電子とチューバのための作品集 メルヴィン・プーア: Death Be Not Proud / コート・リップ:チューバとコンピューターのための音楽 ゲオルク・カッツァー:チューバのための「ヘーゲルとの想像的対話9」 / ヴァレリオ・サンニカンドロ:ソネットX メルヴィン・プーア(Tu) | ||
録音:2009年。 | ||
マウリツィオ・スクイッランテ:歌劇「ダイダロスの翼」
エマヌエラ・ヌケッティ(A;運命) フィリップ・ブラウン(T;アポロン) ダヴィッド・ハウトン(ミノス) アレッサンドロ・カルミニャーニ(CT;ペルディクス)他 | ||
ZKM(カールスルーエ・アンド・メディア・センター=現代アート、メディアアートの研究所兼美術館) エレクトロニック・シリーズ。このアルバムでは最先端の電子音響制作技術を用いたオペラ上演の録音がお楽しみ頂ける。神話の世界を歌う生身の声楽家の歌声と、ミュージック・コンクレートの巧妙な融合が何よりの特徴。ピッチのある音とノイズの混合物によって人間の内なる声を描く。 | ||
Enlarge Your Sax 〜サックスと電子音のための作品集 ホアン・カミロ・エルナンデス・サンチェス:炎のメデューサ アゴスティーノ・ディ・シピオ:干渉する旋法第2番 ベルント・シュルテシス:成層 / トム・マイス:よく調律されたパッチII フィヴォス=アンゲロス・コリアス:真実の物語 / アルトゥロ・フエンテス: Plexes パウロ・フェレイラ・ロペス: Três peças do livro da escuridão ペドロ・ビッテンクール(Sax〔ソプラノ、アルト、テナー、バリトン〕) | ||
録音:2007年-2013年。サックスとエレクトロニクスのための作品集。リオ・デ・ジャネイロ出身のビッテンクールが、様々なサックスを自在に持ち替えて不思議な世界を展開している。 | ||
カールハインツ・シュトックハウゼン(1928-2007): 打楽器奏者と10チャンネル録音のための「 STRAHLEN 」(オーディオのみの作品) 〔バイノーラル録音 Ver.1[ダミーヘッド・レコーディング]/ バイノーラル録音 Ver.2[HRTF]/ 5.0 サラウンド 〕 ボーナス映像:「 STRAHLEN 」ドキュメンタリー・フィルム/ シュトックハウゼンへのインタビュー カールハインツ・シュトックハウゼン(作曲/テクニカル&芸術的コンセプト) ラースロー・フダチェク(ヴィブラフォン) Kathinka Pasveer (Artistic supervision), Ludger Brummer (Conception & project lead), Gotz Dipper, Holger Stenschke (Technical conception) | ||
収録分数:楽曲(3種共通)35分5秒|ドキュメンタリー 57分7秒|インタビュー 23分22秒。#当盤は PAL 方式のため、音声のみのトラックも含め、国内の通常機器では再生・視聴出来ず、再生保証もございません。 1枚のDVDにオーディオと映像がそれぞれ収められており、オーディオ部では3通りの録音でシュトックハウゼンの作品「STRAHLEN」が再生可能。映像はドイツ語で話しており、英語の同時音声が流れる。字幕はない。「STRAHLEN」はシュトックハウゼンによる全7部からなる長大なオペラ「光」の中の、「日曜日」に出てくる音楽を基にした作品。ヴィブラフォンと電子音が一体となりあちこちから音が飛んでくる不思議で気持ち良い宇宙的サウンドが堪能出来る。これは現代アート、メディアアートの研究所兼美術館である「ZKM(カールスルーエ・アンド・メディア・センター)」による大プロジェクトであり、2003年から作曲家とコラボレーションを始め、2009年に音が完成した。 | ||
FLICKER TONE PULSE 〜カーティス・ローズ:電子音楽集 2001-2016 Always / Eleventh vortex / Pictor alpha / Never, part 1-3 / Touche pas, part1-2 / Then (*) / Epicurus 映像:ブライアン・オライリー| (*):オーディオのみ | ||
NTSC | 4:3 |リージョン:0 |言語:独英。2016年ギガ・ヘルツ・アワードの受賞者、カーティス・ローズの作品集。かなり前衛的な電子音響とそのパルスを視覚化した電波的映像を収めている(「Then」のみ映像なし)。非常にWERGOらしいマニアックなDVDがNTSCで登場。 | ||
ホルヘ・E.ロペス(1955-): 山の戦争プロジェクト [Mountain War Project] Dream structures for video design with concrete and instrumental surround sound |
ドミニク・ミ指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
発売:2007年|収録時間: 56:50 /音声: Dolby Digital AC 3,4.1 or Stereo /リージョン・コード: 0 。 キューバ出身で5歳の時にニューヨークへ移住し、その後シカゴやオレゴン州ポートランドにも移り住み、広大な自然現象から影響を受けてきた作曲家。1980年代にドイツへ長く滞在した後、1990年にヨーロッパへ移住、1991年以降は、南オーストリア・ハイリゲンブルート近郊にあるホーエタウエルン山脈内で暮らしている。この作品は、"López examines the Alpine front during the First World War, in and around the Dolomites." とのことだが、ヴィデオ・プロジェクトとあらかじめ8チャンネルの音場を持って録音されたオーケストラによるもので、自然音、オーケストラ・サウンド、山の映像と歴史的なフィルムを素材として使用している。 #当商品は、資料によると NTSC 方式での収録となっていますが、外装には全く記載がありません。100% NTSC方式であるという確証が持てませんので、この点につきましての保証は無いものとさせていただきます。あらかじめご了承下さい。 | ||
Spectral Strands(縒られた恐怖)〜ヴィオラとヴィジュアルのための シェルシ:無伴奏ヴィオラのための「マントI」(1966) シャッリーノ:無伴奏ヴィオラのための「ノットゥルノ・ブリリアンテI」 ジェラール・グリゼイ(1946-1998):ソロ・ヴィオラと電子楽器のための「プロローグ」(1976/2001) (*) シャッリーノ:無伴奏ヴィオラのための「ノットゥルノ・ブリリアンテ II 」(1974) マイケル・エドワーズ(1968-):ヴィオラ・ダ・モーレと電子楽器のための「 24/7: Freedom fried 」(2006) (#) シャッリーノ:無伴奏ヴィオラのための「ノットゥルノ・ブリリアンテ III 」(1974) サーリアホ(1952-):ソロ・ヴィオラと電子楽器のための「ノクターンの風」(2006) (+) ガース・ノックス(Va) ブライアン・オライリー(映像) ゲーツ・ディッパー(エレクトロニクス;*) マイケル・エドワーズ(エレクトロニクス;#) ヨアヒム・ゴスマン(エレクトロニクス;+) | ||
現代音楽を代表する作曲家達が書いたヴィオラ作品を集めたもので、電子楽器を伴うもの、伴わないものが収録されている。アンサンブル・アンテルコンタンポランで活躍し、その後アルディッティ弦楽四重奏団のヴィオラ奏者も務めたことのある、現代を弾かせたらピカ一のヴィオラ奏者であるガース・ノックスによる演奏というのが注目ポイント。収録されている楽曲もかなりキワモノだが、その演奏につけられた映像は、シンガポール在住の、映像とサウンドを融合させた作品や、インスタレーションを得意とするブライアン・オライリーによる、恐怖のイメージをあおる物。だが、よく見てみると、演奏している映像を特殊加工した物。音楽と映像のコラボに興味のある方には是非お手に取って頂きたい1枚。 #PAL方式のため、国内の通常映像機器では再生出来ません。また、パソコン等での再生保証もございません。 | ||
Blue Dog ヤニス・キリアキデス:ドッグ・ソング〔ケルベルス・セレナデス・オルフェウス〕(2006) (3つのベルをもつトランペットとツーシュピールのための) アゴスチーノ・ディ・スキピオ: "Modes of interference / 1" (2005/2006) (トランペットとエレクトロニクスによる自動フィードバックシステム) ミシェル・ケンダース:ヘルム&スリンガー (2001/2002) (トランペットとコンピュータ(Max/ MSP)のためのコンポジション)/ ディヴィッド・ドラム(チェインカーヴ)(2006/2007) (3つのベルをもつトランペットとツーシュピールのための) マルコ・ブラーウ(Tp/電子楽器) ドミニク・ブルム(ハモンドOrg/アナログ・シンセサイザー) | ||
楽器の持つポテンシャルを伸ばし、それを進化させるべく活動を続けてきたドイツのカリスマミュージシャン、マルコ・ブラーウ。彼にとってはその意味でコンピューターも立派な楽器の一つであり、音の持つ色彩感覚の幅を広げてくれる可能性の宝庫だった。2000年に電子機器による実験音楽を開始して以来、ブラーウは様々な表現を確立し、電子音楽の最先端をいっている。本CDでは、そんなブラーウの開発したコンピューターによる電子サウンドと、彼の愛するトランペットのアコースティックな会話が展開される。新鮮で粋なモダニズムの中に、どこかひょうきんで可愛らしいものを感じさせる貴重な一枚。トランペットの超絶技巧と電子音のピーというやや耳触りな音が交錯するさまは印象的。マルコ・ブラーウは1965年生まれ。トランペット奏者であり、ケルンの新しい音楽のためのアンサンブル、ムジーク・ファブリークの一員でトランペットの技術的進展に尽力している。1998年よりカールハインツ・シュトックハウゼンと集中的に組み、オペラ連作「リヒト」の初演にも貢献した。 | ||
ヴァレリオ・サンニカンドロ(1971-):IUS LUCIS 〔イウス・ルーキス〕
ピエール=アンドレ・ヴァラード指揮ムジークファブリーク、新音楽アンサンブル | ||
録音:2009年1月。ポンピドゥー・センター(1977年開館)30周年記念委嘱作。片方にシンセサイザーが含まれる2つの器楽アンサンブルが、ケーブルで接続された二つのコンサート・ホールにそれぞれ配置され同時に演奏、聴き手は生の音とスピーカーから出る他ホールの音を同時に聴く。この作品は鏡の構造をもっており、中間点で休憩が入り、聴き手が部屋を移動して反射している部分の作品を後半聴く、という趣向。様々な音色があらわれ、ひとつひとつのモティーフはどちらかといえばシンプルなものとなっている。イタリア出身のサンニカンドロは、作曲とヴィオラを学び、ツェンダーらに師事した作曲家。BMWムジカ・ヴィヴァ作曲賞など世界的なコンクールで次々と入賞し、委嘱作品も多数。ヴィオラ奏者としても活躍しており、シュトックハウゼン存命中、作品演奏で演奏者として参加もした。イウス・ルーキスとは様々な意味をもつが、ここでは「自然光」といった風に訳せるだろうか。 | ||
リュク・フェラーリ:作品集 ジェネリック/プレリュード(空港)/プレスクリアン/駅/金のロバ/インタビュー・ゲーム/ 交響的散歩/森の歌/インタビュー No.1/ラ・カンティン/ラ・フォリ/はい、おしまい。/ 「フェラーリは聞く」 〔ティツィアーナ・ベルトンチーニ/アンティエ・フォヴィンケル/フランク・ニーフスマン/ダヴィッド・フェネク/ ニール・フルカー/ガットゥンク・ヘルシュピールのために/ JETZTへのコメント/ UberunbergrenzteZeit 〕 | ||
フランスの作曲家リュク・フェラーリは、1981-82年にかけてラジオ・プレイ「今 (JETZT) ―あるいは、おそらくこれは場所と瞬間の混乱の中にある私の日々の生活」を手がけていた。フェラーリによる他のラジオ・プレイと同様、この「JETZT」は、音楽、ラジオ芸術とラジオの語り劇といったジャンルの中で特別な存在。フェラーリと彼の妻ブリュンヒルト・フェラーリとの会話はドイツ語とフランス語の両方によっており、録音の場所やプロセスもユニークなものとなっている。フェラーリはすべてをライヴで録音した。フランクフルト空港に着いたとき、マイクをセッティングし、どのようにラジオ・プレイを進めるかなどを相談している声も収録、さらにそれを弦楽四重奏の演奏と重ねたりもしている。深遠で哲学的な質問とともに、フェラーリの自伝的な要素も芸術的にちりばめられている。フェラーリのラジオ・プレイ「JETZT」の全貌がCD化されるのは初めてのこと。[CD3]にはフェラーリのラジオプレイにインスピレーションを得た新作もならび、フェラーリに多方面から光を当てた秀逸なセット。 | ||
Sound Art @ Het Apollohuis〜1980-1995年 コンサート・レコーディングの抜粋 〔[CD1]:ボディ・エクステンションズ/[CD2]:サンプリング・テクニックス〕 鈴木昭男: Ougi /他、アルヴィン・ルシエらの作品 | ||
録音:1980年-1995年、ヘット・アポロハウス、オランダ。音楽と映像の展示&パフォーマンス小屋として1980年から1997年までモダーン・アーティストたちの表現の場となっていたヘット・アポロハウスの貴重な記録。日本人で唯一登場している鈴木昭男は、おもに関西で活動している人。 | ||
グレーテ・スルタン(P)〜ピアノ・シーズンズ ・バロック J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲[録音:1959年] ・古典派 ベートーヴェン:ディアベッリ変奏曲 Op.120 /6つのバガテル Op.126[録音:1969年] ・ロマン派 シューベルト:ソナタ イ短調 Op.42(D845) / シューマン:幻想曲 ハ長調 Op.17[録音:1969年] ・20世紀 シェーンベルク(1894-1951):5つのピアノ小品 Op.23[録音:1990年] コープランド(1900-1990):ピアノ・ソナタ[録音:1969年] ベン・ウェーバー(1916-1979):ピアノのためのエピソード[録音:1986年] シュテファン・ヴォルペ(1902-1972):ピアノのための形式[録音:1972年] アラン・ホヴァネス(1911-2000): Yenovk[録音:1969年] ジョン・ケージ(1912-1992):危険な夜[録音:1969年] 一柳慧(1933-):イン・メモリー・オヴ・ジョン・ケージ[録音:2000年/世界初録音](*) グレーテ・スルタン(P) | ||
(*)は「 First recording 」と記載されており、初出音源。(*)以外は1990年代以降、 CONCORD CONCERTO、LABOR RECORDS、TOMATO といったレーベルから3タイトル分売で(アイテムによっては各レーベルから複数回)CD化された物だが、CONCORD がユニヴァーサル傘下に入った事による権利問題のためか、2013年現在、ダウンロード販売も含め旧譜は全て入手不能となっている。 グレーテ・スルタン(1906-2005)は、古典および現代音楽の名高い解釈者で、ケージと親交があったピアニスト。当レーベルからは先に、彼女のために作曲されたケージ「南のエテュード〔エチュード・オーストラルズ〕」(WER-6152) が発売されている。ベルリン在住のユダヤ系上流家庭に生まれ、当初はリチャード・ブーリグ(ジョン・ケージにも作曲を教えた名教師)、後にレオニード・クロイツァーやエトヴィン・フィッシャーから教えを受けたが、戦争の影響を受けて1941年にニューヨークに亡命し、この地でピアニスト、教師として活躍した。1969年にはニューヨークで「ゴルトベルク変奏曲」の演奏会を開催。それまではテューレックやランドフスカらこの曲の先駆者も含め、15曲目のあとに休憩を挟むのが通例で、休憩後まずアリアを弾いてから再開するというスタイルがとられることが多かったが、彼女は全曲を通しで休憩なしで、しかも繰り返しも実施、もちろんそのたびに装飾も変える、といったことを敢行した(なお、彼女の生涯最後の演奏会も1996年、90歳のときに行った「ゴルトベルク」だった)。また、ニューヨークで彼女が住んでいたアパートの一階上の部屋にはカニングハムが住んでいて、そこをしばしば訪れていたケージと出会い、彼女はケージのよきチェス仲間となった。そして、ケージがもっとも信頼をおく音楽家の一人として活躍するようになった。スルタンは、古典も現代も一切の違いを感じさせず、「実験的」あるいは「難解」とされるシェーンベルクやケージの作品を、詩的情緒をもって演奏することができる稀有な芸術家として貴重な存在だった。この「ピアノ・シーズンズ」ボックスは、グレーテ・スルタンの初出音源を含む音源集で、その作品ジャンルは、バロック、古典、ロマンから現代音楽まで、広域にわたっている。歴史の波に翻弄されながらも芸術の道を歩み続けた一人の女性ピアニストの軌跡をたどる、貴重なボックスセットといえるだろう。一柳慧の「ジョン・ケージの思い出に」は初録音というのも注目。 | ||
METAMORPHOSEN 〜エンヨット・シュナイダー(1950-): モーツァルトのレクイエムK.626についての考察「時の淵で」(*) / イングリッシュ・ホルン、弦とファゴットのための協奏曲 「私は、私自身にとっても他人にとっても、永遠に謎でありつづけたい」(ルートヴィヒ2世の墓碑)(#) / オーケストラのための交響詩「神はわがやぐら」/ オーケストラのためのローベルト・シューマン計画「フロレスタンとオイゼビウス」 クリストフ・ハルトマン(イングリッシュHr;;#) ヨハンエス・シュトラッスル(イングリッシュHr;*) ゴットフリート・ポコーニー(Fg;#) シンシャオ・リ指揮ニーダーエステライヒ・トーンキュンストラーo. | ||
録音:2013年10月。WERGO からリリースされるエンヨット・シュナイダー・シリーズ 10点の第1弾。。エンヨット・シュナイダーはドイツ生まれの作曲家。哲学の博士号も取得している。8夜にわたるオペラ「 Das Salome-Prinzip, Bahnwaerter Thiel, Fuerst Pueckler 」をはじめ、非常に多作。宗教作品も彼の作品の中で重要な地位を占め、オラトリオ、オルガン協奏曲などを作曲している。音楽書も出版している。また、現代ドイツにおける映画音楽の第1人者として活躍。これまでに手掛けた映画作品は600ほど、1993年のドイツ映画「スターリングラード」などがある。シュナイダー作品の多くは、音楽史上よく知られた作品や、作曲家の作曲スタイルの傾向を引用し、それらを「変容」させることによって、伝統に対する新しい創造的な答えを示している。文化的に積み重ねられたものとの対話であり、現存する形式やモデルに対しての主観的な注釈。このCDの4つの作品も、歴史上のモデルに関連している。1曲目はモーツァルトのレクイエム。有名な旋律の断片がいくつも聴かれる中、レクイエムの大きな主題である「死」を思わせる作品。ルートヴィヒ2世の没後125年に作曲された第2曲目は、ルートヴィヒ2世と非常に深い関わりのあるワーグナー作品のパロディ的作品。3曲目の「神はわがやぐら」はメンデルスゾーンの交響曲「宗教改革」にも登場する、ルターが書いたコラール旋律だが、それを増幅させることにより、非常に力強い作品となっている。最後の作品はシューマンの『ダヴィッド同盟』でもおなじみの、物静かなオイゼビウスと活発なフロレスタンから。2人のキャラクターが、シューマン作品の様々な断片を取り入れながら描かれていく。 | ||
China meets Europe 〜エンヨット・シュナイダー(1950-): 笙とオーケストラのための協奏曲「変化」〔雷/水/湖〕/ アルト、笙とオーケストラのための交響曲第3番「中国の四季」〔夏/秋/冬/春〕 ヴェッセリーナ・カサロヴァ(A) ウー・ウェイ(中国笙) シンシャオ・リ指揮ニーダーエステライヒ・トーンキュンストラーo. | ||
録音:2014年4月。エンヨット・シュナイダーは哲学の博士号も取得しているドイツ生まれの作曲家。。非常に多作で宗教音楽から映画音楽まで、手掛けるジャンルは実に広大。多くは、音楽史上よく知られた作品や、作曲家の作曲スタイルの傾向を引用し、それらを「変容」させることによって、伝統に対する新しい創造的な答えを示している。今回は中国の自然をテーマに、雄大な世界を展開。「変化」は、中国笙とオーケストラのための作品。中国笙は、37本の竹管からなる笙(日本の雅楽などで用いられる笙は17本の竹管)。中国笙を奏でるウー・ウェイは、中国笙の第一人者で、チン・ウンスクも彼のために笙の作品を書いているほど。2作品目の「中国の四季」も、中国の広大な大地を想起させる雰囲気の作品。カサロヴァの独唱も聴き物。 | ||
エンヨット・シュナイダー(1950-)::オーケストラ作品集 交響曲7番「ウンターベルクの闇の世界 [Dunkelwelt Untersberg] 」(2012) / 弦楽とテープのための「自然の響き、セルジュ・チェリビダッケ讃」(2012) / 管弦楽組曲「秋のミルク」(1988/2009) /管弦楽組曲「 Die Flucht 」(2007) アロンドラ・デ・ラ・パーラ指揮ウィーン・トーンキュンストラーo. | ||
録音:2015年3月4日-7日、グラーフェネック城講堂、ニーダーエスターライヒ州、オーストリア。ドイツの映画音楽作曲家、エンヨット・シュナイダーの伸びやかでエモーショナルな魅力が詰まった一枚。多くの伝説が眠るウィーンのウンタースベルク山を描いた「交響曲7番」と、自然への讃歌、そして失われゆく自然への哀歌である「自然の響き」(セルジュ・チェリビダッケ生誕100周年、およびドビュッシー没後150周年にあたる2012年に書かれたもの)、そして彼が音楽を手掛けた2つの映画「秋のミルク」と「 Die Flucht 」の音楽がおさめられている。前半ではシュナイダーの大自然への愛と畏怖の念がオーケストラのパレットで雄大に語られ、後半2曲では映画音楽が組曲にまとめられている。シュナイダーの音が描く壮大な景色や情感たっぷりのメロディに身を委ねることができるCD 。 | ||
エンヨット・シュナイダー:協奏曲集 ヴァイオリン協奏曲「大地の眼」[インゴルフ・トゥルバン(Vn)]/ 2台のチェロと弦楽オーケストラのための協奏曲「ジキル博士とハイド氏」 [ヴォルフガング・エマヌエル・シュミット、イェンス=ペーター・マインツ(Vc)]/ 打楽器とオーケストラのための交響曲第2番「シーシュポス」 [ヨハネス・フィッシャー(Perc)] ヴォルフガング・リシュケ指揮ベルリン・ドイツso. | ||
録音:2015年5月26日-29日、テルデックス・スタジオ、ベルリン。主に映画音楽でその名を馳せているドイツの作曲家、エンヨット・シュナイダーの協奏曲集。全3楽章からなるヴァイオリン協奏曲「大地の眼」はアメリカの思想家ヘンリー・デイヴィッド・ソローの言葉、「湖は大地の眼である」という言葉に発想を得た曲。1楽章はドイツのケーニヒス湖、2楽章はオーストリアのモンド湖、3楽章はイタリアのガルダ湖を描いている。その自然の険しさや湖の底から発見された住居の支柱などから沢山の伝説が伝わるケーニヒス湖とモンド湖の不気味で神秘的な様子が描かれた第1、2楽章と、水の神ベナクスと青い髪のニンフとの恋物語が伝わるガルダ湖の明るいエネルギーに満ちた第3楽章からなるこの曲は、聴いているとヨーロッパの大自然が目に浮かぶよう。2台のチェロと弦楽オーケストラのための協奏曲は、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの有名な小説「ジキルとハイド」がベースとなっていて、ジキル博士の二面性が2人のソリストによって表現されている。曲の大半では完全に描き分けられている「善」と「悪」が時たまその境目をなくし、我を失っていく様子は聴きどころの1つ。交響曲第2番「シーシュポス」は、交響曲という名の打楽器協奏曲。ギリシャ神話の登場人物シーシュポスがテーマとなっているこの曲では、シーシュポスが神から与えられた罰である巨大な岩を山頂まで上げ続ける苦行からシーシュポスの解放までが、カミュの随筆「シーシュポスの神話」のアイデアを交えて展開される。カミュがシーシュポスの神話を通して投げかけた「生きることが困難を伴っても人生に意味があるのか」という問いに肯定的に答えたシュナイダーの、生命力あふれる作品。映画のための音楽ではないのに、まるで大迫力の映像が脳裏に浮かぶような雄弁さの曲ばかり。シュナイダーの手腕が光る協奏曲集。 | ||
バッハ、ドラキュラ、ヴィヴァルディと仲間たち〜エンヨット・シュナイダー: BACH - メタモルフォーゼン(協奏曲)[オーボエ、弦、チェンバロ]/ ヴィヴァルディ讃(協奏曲)[リコーダー、弦、チェンバロ]/ ヴィヴァルディッシモ(協奏曲)[2トランペット、弦、チェンバロ]]/ ドラキュリッシモ(合奏協奏曲)[トランペット、トロンボーン、アンサンブル] アルブレヒト・マイヤー(Ob) ドロテー・オーベルリンガー(リコーダー) ヨアヒム・シェーファー、チャバ・ケレメン(Tp) ステファン・ラングバイン(Tb) オルガ・ワッツ(Cemb) トーンキュンストラーo. | ||
録音:2015年9月14日-19日。主に映画音楽でその名を馳せているドイツの作曲家、エンヨット・シュナイダーの合奏協奏曲集。バッハ風の1曲目はアルブレヒト・マイヤーの妙技が堪能できる作品。ヴィヴァルディ風の雰囲気ながら超絶技巧が盛り込まれたリコーダー協奏曲も、ソリストのヴィルトゥオーゾ芸に注目。ドラキュリッシモは、ドラキュラをイメージした作品。おどろおどろしいオープニングなど、映画音楽なども多く手がけているシュナイダーの筆が冴えている。 | ||
エンヨット・シュナイダー(1950-):エディション Vol.6 オーボエ、打楽器と弦楽のための「フェニックス〜神話的詩曲」/ ハンス・ロットの断片に基づくオーボエと弦楽のための「闇の旅」/ ピアノと管弦楽のための「ナイトハルトの悪夢〜宮廷の愛の歌」 クリストフ・ハルトマン(Ob) ヨハネス・フィッシャー(Perc) オリヴァー・トリエンドル(P) ケヴィン・ジョン・エドゥセイ指揮トーンキュンストラーo. | ||
録音:2015年9月14-19日。全曲世界初録音。ドイツ生まれ、600本もの映画音楽を手がける作曲家シュナイダー。WERGOレーベルから10タイトル発売予定のシュナイダー・エディション、第6弾。カオスの中から美しいものが復活し飛翔する「フェニックス」、ブルックナーに評価され学友のマーラーに多大な影響を与えた早逝の作曲家ハンス・ロットの断片を用いた、暗い狂気と幸福な歌が交互に現れる幻想的な「闇の旅」、中世ドイツの吟遊詩人(ミンネジンガー)ナイトハルト・フォン・ロイエンタールを題材にした、中世の舞曲も聴こえてくる「ナイトハルトの悪夢」を収録。すべて世界初録音。協和音を響かせることも厭わない、ロマンティックらあるオーケストラ・サウンドが魅力。ソロ楽器は技巧を誇示するというよりは情景を想起させる役割で、映画音楽作曲家ならではの表現力。 | ||
エンヨット・シュナイダー・エディション Vol.7 破滅のハーモニー〜チェロと管弦楽のための作品集 協奏曲第1番「 Dugud 」/聖なるダンス「 Sulamith 」/ Abaddon ― 地獄の天使 ― 世紀末的シーン/ ジェズアルドの「私は死ぬ」に基づく変奏曲「 Black Sweetness の破滅のハーモニー」/交響詩「 Lilith 」 ラースロー・フェニェー(Vc|使用楽器:マッテオ・ゴフリラー、1695年製) アリエル・ズッカーマン指揮ベルリン・ドイツso. | ||
録音:2016年3月、テルデックス・スタジオ、ベルリン。 ドイツ生まれで600本もの映画音楽を手がける作曲家シュナイダー。WERGOレーベルから10タイトル発売予定のシュナイダー・エディション7弾。1975年生まれのハンガリーのチェリスト、ラースロー・フェニェーをソリストに迎え、ベルリン・ドイツ響という豪華な布陣。シュメール語で半身ワシ、半身タカの古代中東の鳥の神を意味する「Dugud」の雄大な世界。旧約聖書に出てくる言葉で、美しい女性を意味する「Sulamith」の名を冠した作品は、幽玄の世界で、どこか官能的でもある。アルバムのタイトルにもなっている破滅のハーモニーは、ジェズアルドの有名な「私は死ぬ」に基づいた変奏曲で、半音が多様された世紀末的世界。深刻なチェロの独奏に始まる「Abaddon」、そして最後は様々な描かれ方をしている神話(聖書)の世界の女性、「リリス」を題材にした恐ろしい闇を思わせる世界でディスクは締めくくられる。映画音楽作曲家らしく、どの作品も情景が生生しく浮かぶ。 | ||
エンヨット・シュナイダー(1950-):交響曲集 〔第5番「シュヴァルツヴァルト・サガ」(2015) (合唱と管弦楽のための/ August Schnezler 「 The Water-Lily Lake 」のテキストによる)/ 第6番「ライン」(2013) (ソプラノ、合唱と管弦楽のための/タキトゥス、プルタルコス、マルティアリス、 ハイネ、Rosa Maria Assing 、ゲーテ、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンのテキストによる)〕 ジュリア・ソフィー・ワーグナー(S) ハンスイェルク・アルブレヒト指揮ブルノ国立ヤナーチェク歌劇場o.&cho. | ||
録音:2017年6月7日-10日。いずれも世界初録音。 WERGOレーベルから10タイトル発売予定のシュナイダー・エディション、第8弾。シュナイダーは1950年ドイツ生まれ、600 本もの映画音楽を手がける作曲家。当エディションではクラシカルな管弦楽作品をリリースしており、ロマン派調性音楽と映画音楽ならではの効果的な管弦楽法・モダンな手法が混ざり合った、耳に心地よい作風が特徴。声楽を伴う叙事詩的な交響曲2題を収録。第5番「シュヴァルツヴァルト・サガ」のフィナーレはまるで大河ドラマのテーマ。後半は合唱がヴォカリーズでその美しいメロディを歌い上げ、さらなる盛り上がりを見せる。ちなみに「シュヴァルツヴァルト」はドイツの地名で「黒い森」という意味。第6番「ライン」は原始的な力を持って始まり、ヴァイオリンやソプラノのソロが印象的。次第に激しくなり合唱も畳み掛けるように登場、ライン川の雰囲気をロマンティックに描いている。 | ||
空想の魔法〜エンヨット・シュナイダー(1950-):作品集 Vol.9 二胡とチェロのための二重協奏曲「イゾルデとトリスタン」(2014) / ピッコロトランペットとフリューゲルホルンのための二重協奏曲「ドリームダンサーズ」(2016) ヤン・ジェミン(二胡) ウェン=シン・ヤン(Vc) オットー・ザウター(ピッコロTp) セルゲイ・ナカリャコフ(フリューゲルHr) ウラディーミル・ランデ指揮シベリア国立so. | ||
録音:2017年10月1日-5日、クラスノヤルスク、シベリア|共に世界初録音。 ドイツ生まれ、600 本もの映画音楽を手がける作曲家シュナイダー。WERGOレーベルから10タイトル発売予定のシュナイダー・エディション、第9弾。とても珍しい編成の二重協奏曲を2曲収録している。「イゾルデとトリスタン」では二胡が中国の響きを奏で、チェロが半音階的な旋律で対峙。2つの楽器の愛の物語とも思える世界が展開される。ワーグナーの引用もあるようで終楽章は「愛の死」と題されている。「ドリームダンサーズ」は幻想と夢が超絶技巧でうねる夜の音楽。「トランペットのパガニーニ」ナカリャコフも登場し、2人の独奏者が吹く超高音が印象的。 | ||
「陰影」 サクソフォンの色彩〜エンヨット・シュナイダー(1950-): 沈黙の叫び ― 2015年11月13日の追憶に〜ソプラノサクソフォン、合唱と管弦楽のための(2016) (*) / 時が経つにつれて ― J.S.バッハの追憶による組曲〜サクソフォン三重奏のための(2003) パヴァーヌ ― ルイズ・デ・ミランの舞曲による変奏曲〜コーラングレとサクソフォン四重奏のための(2016) (#) / ベルリン・パンク〜サクソフォン四重奏と管弦楽のための協奏曲(2016) (+) クレール=オプスキュール・サクソフォン四重奏団 ドミニク・ヴォーレンウェーバー(コーラングレ;#) コンスタンティン・ヤコブソン合唱指揮クラスノヤルスク「テベ・ポエム」cho.(*) ヴラディーミル・ランデ指揮シベリア州立o.(*/+) | ||
録音:2018年6月29日-7月3日、クラスノヤルスク(*/+) /2018年9月19日-20日、ベルリン(無印/#) |全曲世界初録音。WERGOから定期的にリリースの続くシュナイダー・エディション、第10集はサクソフォンに焦点を当てた曲が並ぶ。シュナイダーは1950年ドイツ生まれの作曲家で、600 本もの映画音楽を手がけていることでも知られている。演奏している四重奏団の名前にある「clair-obscur」とは「明暗法」のことで、極端なコントラストを表するが、ここに収録された作品も「明るく暗く」「強く弱く」「美しく醜く」といった対比が見られる内容となっている。シリアスな題材の曲や過去の大作曲家からの引用などもあり、考えさせられる音楽が並ぶ。1曲目はパリで起きたテロの追憶に書かれた作品。ベートーヴェンの「第九」第3楽章が引用され、つんざく叫びや不穏なざわめき、機械的な連打音を思わせる楽想と交互に現れる。真に人間的な愛情に満ちた旋律と非人間的な無調的音塊の共存が恐ろしさを助長し、サクソフォンも二面性を持ち歌あり叫びあり。合唱は第4楽章の引用も。2曲目はプレリュード、クーラント、サラバンド、ジーグの4楽章からなり、J.S.バッハの平均律を引用している。メロディの一部を切り取りパッチワークにして繰り返しつつパートごとにずらしたり、曲の中心を折り返し地点として鏡像形にしたり、別々の作品のテーマを二重フーガのように組み合わせたり、B-A-C-H音列を含むカノンを展開したりとバッハ的な技術を駆使するが音はノリ良く小洒落てグルーヴィー。3曲目はスペイン・ルネサンス期の作曲家ルイズ・デ・ミランを引用。雰囲気ある柔らかなコードを奏でたかと思えばノスタルジーを感じる旋律があらわれるセピア色の音楽。コーラングレのくすんだ音色も良い味を出している。4曲目はこのアルバムでもっとも「騒々しい」音楽。強烈なエネルギーを持ち、躁状態と鬱状態を繰り返す。シュナイダーはパンクの精神を交響楽に置き換え、強靭な表現力と技術を持つサクソフォン四重奏と対峙させアグレッシヴな音楽を書き上げた。複雑で立体的な構造物を空間的にも芸術的に配置。 | ||
ECHOWAND 〜ミキス・テオドラキス:歌曲集 (セバスティアン・シュヴァブによる歌とピアノのための編曲/ イナ・クトゥラスによるギリシャ語からドイツ語への歌詞訳) 野生の国(*) / Nihtoni (#) /孤独な旅(*) /メデアの断念/毒を入れられた時/ 私のいとしい人はなんと神秘的に美しいことか/幸運の湖沼/わたしのものすべて/ 果てしない海/エスメラルダ/あなたは私にいつも話しかける/別れ/惑わされた歌 ヨハンナ・クルミン(S;*/#) ペーター・シェーネ(Br;#) マルクス・ツーゲヘール(P) セバスティアン・シュヴァブ(口笛;#) | ||
テオドラキスは2015年7月29日で90歳の誕生日を迎える。これをお祝いするために、2012年からあたためられてきたプロジェクトがCD化。ソプラノ歌手クルミンがテオドラキスの歌曲から13作品をチョイス、詩人のイナ・クトゥラスがギリシャ語で書かれたものをドイツ語で歌えるように翻訳。さらに、19歳のヴァイオリン奏者にして作曲者のセバスティアン・シュヴァブが、作品を歌とピアノに編曲した。「若くして比類なき音楽家、セバスティアンは、素晴らしい編曲をしてくれた。彼は私のメロディに大変忠実で少しも変容させず、このことは私を感動させた。」とテオドラキスもこの編曲を絶賛している。 | ||
最新の「第10番補筆完成版」〜 マーラー/ヨエル・ガムゾウ補筆完成版:交響曲第10番(2010) ヨエル・ガムゾウ指揮国際マーラーo. | ||
録音:2011年11月24日-25日。 クック版など数々の補筆完成版が存在するマーラーの交響曲第10番。ここに収められた演奏は2010年完成の「ガムゾウ版」。自らの指揮による世界初録音。ヨエル・ガムゾウは1987年イスラエル生まれの若手指揮者で、12, 3歳でマーラーの10番に魅せられ、若干23歳で補筆版を完成させたという驚きの人物。ちなみにマーラーが10番作曲の筆を置いたのが1910年、亡くなったのが1911年。ガムゾウは100年越しに曲を完成させ、没後100年の年に初録音をしたことになり、特別な意気込みを感じさせる。新たな補筆版をじっくり楽しめる上々の演奏内容も含めて、マーラー・ファン必聴の1枚。 | ||
Herbstmusik 〔秋の音楽〕〜バルバラ・ヘラー(1936-): 弦楽四重奏曲〔第3番「パッチワーク」(2008) /第2番「ラ・カレータ」(2008) 〕/ 弦楽四重奏曲 1958 (1958) /ヴァイオリンとチェロのための「 Eins für Zwei Duo 」 (1985) / チェロとピアノのためのデュオ「秋の音楽」(2012) (+) / ヴァイオリン、チェロとピアノのための「 Arriba! Trio 」(2014) (*/+) / ヴァイオリンとチェロのための「 Zwiegespräche Duos 」 (2008) (*) / ヴァイオリン、チェロとピアノのための「 Minutentrios 」(2014) (*/+) / チェロとピアノのための「 Lalai – Schlaflied zum Wachwerden? 」(1989) (+) ヴェルディSQ (無印) ズザーネ・シュトート(Vn;*) カタリーナ・デゼルノ(Vc;無印以外) ゲーザ・リュッカー(P;+) | ||
録音:2015年-2016年。バルバラ・ヘラーは失われた音、あるいは今まで誰も気づかなかったような音を捜すことに命をかける作曲家。これらの作品からも、ピツィカートや交差する声部を多用して、独自の音を探求している様子がうかがわれる。 | ||
エンヨット・シュナイダー(1950-): 管弦楽のための「歓喜、ベートーヴェンの自由」(2017) / オーボエと管弦楽のための「舞い上がるモーツァルト(未完のオーボエ協奏曲 K.293についての考察)」(2015) (*) / 笙と管弦楽のための「陰と陽」(2017) (#) /管弦楽のための「内なる世界」(2002/03, rev.2018) ユリアナ・コッホ(Ob;*) ウー・ウェイ(笙;#) ジモン・ガウデンツ指揮イェーナpo. | ||
録音:2019年3月11日-14日、イェーナ。ドイツ生まれ、ロマンティックな響きを用いて大管弦楽のための作品を書き、映画音楽も多く手がけているエンヨット・シュナイダー。WERGOレーベルが継続してリリースを重ねている作曲家。今回のアルバムには古典音楽と現代音楽、西洋音楽と東洋音楽といった2つの世界を組み合わせてイマジネーションを拡げ作曲された音楽を収録している。各曲も、ベートーヴェンを題材に用いた第1曲では若いころの力強い書法と晩年の難解な書法を対比させ、笙をソロに用いた(#)は曲名の通り「陰と陽」の対比を描くなど、対比がテーマとなっている。 | ||
カールハインツ・シュトックハウゼン(1928-2007): 電子楽器、ピアノ、パーカッションのための 「コンタクテ」(1959/60) |
デイヴィッド・チューダー (P/Perc) クリストフ・カスケル(Perc) カールハインツ・ シュトックハウゼン、 ゴットフリート・ミヒャエル・ ケーニヒ(エレクトロニクス) | |
ジークフリート・パルム ジェルジ・リゲティ(1923-2006):チェロと管弦楽のための協奏曲 ペンデレツキ:チェロと管弦楽のためのソナタ ウェーベルン:チェロとピアノのための3つの小品Op.11 ヒンデミット:無伴奏チェロ・ソナタOp.25 No.3 ツィンマーマン:無伴奏チェロ・ソナタ |
ジークフリート・パルム(Vc) ミヒャエル・ギーレン指揮 フランクフルト・ヘッセン放送so. アンジェイ・マルコフスキ指揮 ポズナニpo. アルフォンス・コンタルスキー(P) | |
ジョン・ケージ(1912-1992):南のエテュード〔エチュード・オーストラルズ〕 (1974) (全曲) 〔第1巻 Nos.1-8 (*) /第2巻 Nos.10-16 (*) /第3巻 Nos.17-24 (#) /第4巻 Nos.25-32 (#)〕 グレーテ・スルタン(P) | ||
録音:1978年8月(*)、1982年11月-12月(#)、ヴァンガード録音スタジオ、ニューヨーク、AAD (*/#) | (P) 1987/1992, (C) 1992 。 世界初録音だった物。使用楽器:スタインウェイ。ケージが、友人だったスルタン(1906-2005)のために作曲した全32曲の練習曲集。 | ||
ジェルジ・リゲティ(1923-2006): 歌劇「グラン・マカーブル」 |
エイリアン・デイヴィス(S) オリーヴ・フレドリクス(Ms) ペーター・ハーゲ(T) ウーデ・クレコウ(B) ヨハン・ロイドゲプ、 ラースロー・モドス(Br) ヘルベルト・プリコーパ(T) クリスタ・プールマン=リヒター(Ms) エルンスト・ザルツァー(Br) ケヴィン・スミス(CT) エルンスト・ レオポルド・シュトラハヴィツ(Vo) ペネロープ・ ウォームズリー=クラーク(S) ディーター・ヴェラー(Br)他 エルガー・ハワース指揮 オーストリア放送so.、ORF cho.、 アルノルト・シェーンベルクcho.、 グンポルト教会cho. | |
リゲティの代表的傑作オペラ。 「世界の民族音楽のリズムをごった煮にするなど、もうグロも行きつくとこまで行った奇形オぺラ。お薦めである。」(片山杜秀) | ||
サティ:交響的ドラマ「ソクラテス」(*) ジョン・ケージ:チープ・イミテーション(#) |
ヒルケ・ヘリング(P;*) デボラ・リチャーズ(P;#) ヘルベルト・ヘンク(P) | |
サティの「ソクラテス」と、それをもとにしてケージが作り上げた「チープ・イミテーション」をいっしょにカップリング。 | ||
ヒンデミット:歌劇「今日のニュース」 (1929年オリジナル版) |
エリーザベト・ヴェレス、 ザビーネ・ピッター(S) マルティナ・ボルスト(Ms) ロナルド・プリース、 ホルスト・ ヒースターマン(T)他 ヤン・レイサム=ケーニヒ指揮 ケルン放送so. ヨハネス・ヘムベルク合唱指揮 ケルン音楽大学cho. 「プロ・ムジカ」 | |
録音:1987年6月3日。 | ||
ヒンデミット(1895-1963): クラリネット五重奏曲 変ロ調・変ホ調 Op.30 (1923) (#) / 弦楽四重奏のための軍楽隊レパートリー「ミニマックス」(1923) / 朝7時の湯治場で二流のオーケストラによって 初見で演奏された「さまよえるオランダ人」序曲(1925頃) ブッフベルガーSQ クラウス・レフラー(Cl;#) | ||
録音:1989年12月、1990年3月、コンツェルトザール、ドイッチュラントフンク、フランクフルト・アム・マイン、ドイツ / (P) (C) 1991 。 | ||
WER-6198 廃盤 |
ジャン・フランセ(1912-1997): クラヴサンと器楽アンサンブルのための協奏曲(1959) (*) [ジャン・フランセ(Cemb) エミール・ナオモフ指揮ザールブリュッケン放送so.]/ ヴァイオリン、チェロとピアノのための三重奏曲(1986) (#) [サシュコ・ガヴリロフ(Vn) ヨハネス・ゴリツキ(Vc) ライムント・ハヴェニート(P)]/ ギターと弦楽オーケストラのための協奏曲(1982/83) (+) [エマヌエーレ・セグレ(G) ハンス・リヒター指揮南西ドイツ室内o.] | |
ジョン・ケージ(1912-1992):打楽器アンサンブルのための作品集 コンストラクション 〔第1「金属」(1939)(6人の奏者による金属発音体の合奏のための)/ 第2(1940)(4人の打楽器奏者のための)/第3(1941)(4人の打楽器奏者のための)〕/ プリペアドピアノと3つの打楽器のための「アモール」(1943)〔 I-IV 〕/ 打楽器四重奏のための「ダブル・ミュージック」(1941) /イマジナリー・ランドスケープ II (1942) / 打楽器四重奏、声とプリペアドピアノのための「彼女は眠っている」〔 I-II 〕(1943) ヘリオス四重奏団 イザベル・ベルテレッティ(プリペアドP)他 | ||
録音:1989年。 | ||
ジョン・ケージ(1912-1992): ピアノと管弦楽のための協奏曲(1957-58) (*) / アトラス・エクリプティカリス(1961-62) (#) |
ペール・コティック指揮 S.E.M.アンサンブルso. ヨゼフ・クペラ(P) | |
録音:1992年。WER-6951 に全曲含まれていますので、ご注意下さい。 (*)はもともと「ソロ・フォー・ピアノ」という63ページの作品。演奏者はどこを弾いても全部を弾いてもどんな順番で弾いてもよい、という物。これが発展して当作品となった。管弦楽といっても、その編成も人数もこれまた演奏者まかせ。(#)は86ものパートからなる器楽(管弦楽)作品。1961年8月3日に初演され、一柳慧もアシスタント・コンダクターを務めた。1964年にはバーンスタインによっても取り上げられるなど、ケージの代表作となった。仏教の思想と、「森の生活」のヘンリー・デイヴィッド・ソローの思想の世界観をもつ作品で、鳥がさえずり、キノコが豊かに成る森を思わせる。 | ||
ストラヴィンスキー:2台、または4手のためのピアノ作品集 2台のピアノのためのソナタ(1943/44) /3つの易しい小品(1915) / 5つの易しい小品(1915) /2台のピアノのための協奏曲(1935) アルフォンス・コンタルスキー、アロイス・コンタルスキー(P) | ||
録音:1962年11月。 | ||
カールハインツ・シュトックハウゼン(1928-2007): 2台ピアノのための「マントラ」(1970) |
アンドレアス・グラウ、 ゲルツ・シュマハー(P) | |
ヴィルヘルム・キルマイヤー(1927-): シンフォニア1−3 * 夜の思索 生きる喜び |
ヴィルヘルム・ キルマイヤー指揮 * ミュンヘンpo. * ハンス=マルティン・ シュナイト指揮 + シュトゥットガルトRSO + ハンスイェルク・ シェレンベルガー (Ob)指揮 # ハイドン・アンサンブル・ベルリン | |
キルマイヤーはカール・オルフに師事してその強い影響を受けた作曲家。 | ||
ヒンデミット(1895-1963):弦楽四重奏曲全集 Vol.1 〔第3番 Op.16 (1920) /第5番 Op.32 (1923) 〕 |
ジュリアードSQ [ロバート・マン(Vn1) ジョエル・スミルノフ(Vn2) サミュエル・ローズ(Va) ジョエル・クロスニック(Vc)] | |
録音:1995年4月15日、17日-18日、アカデミー・オヴ・アーツ・アンド・レターズ、ニューヨーク市、 US / (P) (C) 1996 。
Vol.2 (第2番&第6番): WER-6607 、
Vol.3 (第1番、第4番&第7番): WER-6622
。 #当 Vol.1 は廃盤となっているため大変高額です。ご注意下さい。 | ||
ディーター・シュネーベル(1930-):コラール前奏曲集 オルガン、器楽とテープのための「コラール前奏曲集」〔 I/ II 〕 (1966-1968/1969) [ゲルト・ザッヒャー(Org) ヨハン・ヴァルター・シャーフ指揮ダルムシュタット演奏家アンサンブル]/ 呼吸 (1970/71)[カルラ・ヘニウス、ギゼラ・ザウアー=コンタルスキー、 ウィリアム・ピアソン(Vo) ディーター・シュネーベル指揮] | ||
録音:1972年。ドイツで極めて名誉ある German Record - Award [German Phono - Academy] を受賞した衝撃的名盤。 | ||
「リヴァー・ラン」ヴォイシングス・サウンド・スケープス〜人声による無音のなかのサウンドとノイズの調和 (WDR「スタジオ・オブ・アコースティック・アート」制作による音の旅」) 監修:クラウス・シェニング | ||
人の声(ヴォイシングス)と人工的な音による構成物(サウンド・スケープス)という異なる音響的要素を組み合わせたこのタイトルは、 存在するすべての音が等価値の素材であることを意味する。スタジオ・オブ・アコースティック・アート制作の無数の音源からケージ、カーゲル、ブレヒト、カーター、ほか総勢58人ののものをセレクション。「音」に対する深い考察を迫る大規模なアルバム。 | ||
ミヒャエル・リースラー: フィーバー(シェイクスピアのソネットによる)(*) ジのウィルス(+) |
ナイジェル・チャーノック (Vo、ダンス) ミヒャエル・リースラー (Cl、Sax、Vo*) ジャン=ルイ・マティニエ (アコーディオン)(+) | |
ジャズ・ミュージシャンでもあるリースラーがWDR(西部ドイツ放送)のために録音した実験的作品。 | ||
ジョン・ケージ:アルファベット 〜ジョイス&デュシャン&サティ(1982)(英語版/独語版) |
ジョン・ケージ (ジョイス/英、独とも) クラウス・ライヒェルト (ナレーター/英、独とも) アルヴィン・カラン (サティ/英) マウリツィオ・カーゲル (サティ/独)他 | |
録音:1990年4月29日、第2回アクスティカ国際フェスティヴァル、ライヴ(英語版)/1987年2月14日、ケージの75歳の誕生日を祝う「NACHTCAGETAG」、ライヴ(独語版)。 ジョン・ケージ(1912-1992)の「アルファベット」は、1982年にラジオ・ドラマとして生み出された。ケージが愛してやまなかった、ジョイス、デュシャン、そしてサティの三人は、ケージの豊かな想像力によってステージ上に蘇り、不思議な会話を交わす。ギリシャ古典文学の話からカンチェンジュンガの山の話、ハイデッガー批判、レオナルド・ダ・ヴィンチの話、そしてなぜか富士山の話。さらに12人の思索家たちも加わって、会話はますますヒート・アップ。それぞれの出演者がケージの音楽仲間たちによって演じられるというのも興味深く、ケージ本人が扮するジョイスの思慮深げな語り口は聞き物。朗読作品ではあるが、その響きはまるで音楽のようであり、今までに体験したことのない不思議な世界が展開する。ボーナス・トラックとして、1982年にこの作品がラジオで放送されたときのケージのコメントを収録。 | ||
フィリップ・コーナー:黙示としてのサティのバラ十字教団(*) アリソン・ノウルズ:豆の連続(二ヶ国語)(+) ジョージ・プレクト:僧燦(鑑智禅師)作「信心銘」(#) |
P.コーナー (声、構成、P;*) A.ノウルズ、 G.プレクト、 H.ヒギンズ、 J.ヒギンズ(+) G.プレクト(英語;#) R.フィリウ(仏語;#) A.ファブリ(独語;#) チャン・チュン=ジェン (中国語;#) | |
フルクサス(ラテン語で「流れ」の意)は、1960年代初頭にニューヨークを中心に欧米各地に拡がった前衛芸術の潮流。オノ・ヨーコが参加していたことでも知られる。 これはそのフルクサスの中心メンバー3人による作品集。「禅」、「チャンス・オペレーション」、「サティ」と、ケージの美学に影響を受けているのが特徴である。 | ||
クルト・シュヴィッタース:作品集 ホワット・ア・ビューティ、または墓の横の微笑/ リブル・ボブル・ピムリコ/朝焼けから暗闇まで/ アンナ・ブルーメに/大いなる愛/ ノルウェーからヘルムトラウトへの詩/ノルゲ/ 小さな手工業者のそばの書籍行商人/ビー・ビュル・リー/ drei (3)(ディナーミク版)(*)/ bii bill ビー・ビル(3つのバージョン)/ bel au hau ベル・オウ・ホウ(2つのバージョン)/ 古い音詩(+)/耳の中のノミ/ある男が私に言った時/ 昔々、七人のご婦人方が/彼女はお人形でお人形遊びをした/ 薔薇がないんですよね/中国語じゃないでしょ/ ディー・ツーテ・トーテ/ブー(+)/ナー(2つのバージョン)/ ドゥーフ(3つのバージョン)/くしゃみの猛威(#)/ ソナタ(**)/ドライ (3)(メトロノーム版) |
シュヴィンドリンゲ [ズィルケ・ エーゲレル・ヴィットマン、 マルティン・エーベルト、 トルステン・ギーツ] | |
CDをかけた途端、こわれたレコードのように繰り返される「ホワット・ア・b、ホワット・ア・b、ホワット・ア・ビューティ」の言葉、言葉、言葉。かと思いきや高らかに鳴り響く魔女のような「ケケケケケ」という笑い声・・・((+)の最後)。(*)はひたすら数字を羅列して読んでいるだけ、(+)はどんなものかと思えば、苦しみのうめきとも喘ぎともとれるような意味深な低い声、(#)では題名どおりくしゃみを素材とした様々な表現等々・・・意味不明な言葉の羅列にすぎない数々の作品を、この演奏団体は、実にまじめに演奏していて、実に「うまい」と思わせてくれる。(**)は、提示部がボヘボヘビーブー、展開部がブビブビッテ、再現部が再びボヘボヘビーブー、というふうに無意味な言葉の羅列をソナタ形式にあてはめたダダイズムの祖ともいえる作品。シュヴィッタース本人が演奏(?)している歴史的CD(WER-6304)もあるが、シュヴィンドリンゲ(ホウライタケ属という意味)の三人による新録音は実にリズミカルで生き生きとしている。ダダイズムにうまいも下手もあったものではないかもしれないが、これは間違いなく「名演」と呼べる。 | ||
ハンス・G.ヘルムス(1932-):実験的語り作品「 Fa:m’ Ahniesgwow 」
シュプレッヒボーラー(言語的=音楽的語り芸術トリオ) | ||
録音:2009年。文学と音楽作品の境目で起こったアヴァン=ギャルドの記念碑的作品。テクストの内容は、ファシスト風な社会構造が続いていることへの非難や、消費社会への洞察。ヘルムスは作曲する言語 (language to compose) を使って、社会・政治経済の現象を考察し、自身が見、体験したことを、意味・音節や文法などの要素と融合させている。このヘルムスの重要な作品を録音するにあたり、このシュプレッヒボーラー(スピーチ・アート・トリオ)は何度も舞台にかけてきた。作曲者とも何度も対話を重ねた上でのこの録音は、非常にオーセンティシティの高いものとなっている。 | ||
シュヴィッタース(1887-1948):音響詩「ウアゾナーテ(原ソナタ)」(1922-32) /他、音詩集
シュプレッヒボーラー[言語的=音楽的語り芸術トリオ] | ||
録音:2014年1月。ダダイズムの旗手、シュヴィッタース。1トラック目に収録されているKaa gee dee いう詩では、「カー・ゲー・デー」という言葉が三人の演者によって、さまざまな音声、時にささやくような声でひたすら繰り返される。このような、語りと音楽の境にあるシュヴィッタースの作品は、第一次世界大戦中のヨーロッパに起こった、芸術は至高なもの、という既成概念を打ち崩そうとする、ダダの芸術として高く評価されている。そんなダダの極みのひとつが、「原ソナタ(ウアゾナーテ)」。原ソナタ、などと言うと難しそうだが、聞いてみると、ひとつの言葉を繰り返したり、さらにそのスペルを突如大きな声で発したり、と、無秩序の世界。しかし、言葉(音)がさまざまな方向から押し寄せる感覚は非常に独特で、音というものへの感覚、音についての考えが根底から覆されてしまうような衝撃に満ちている。シュヴィッタースは、「文字というものは音をもたない。それらは、音を生み出す可能性を秘めているに過ぎないのであり、その音は、話し手によって価値が決められる」と述べているが、この彼の言葉は、そのまま楽譜と演奏者の関係に置き換えることもできるだろう。我々を、音楽の原点に立ち戻させるようなシュヴィッタースの作品を、シュプレッヒボーラーの面々が、時にユーモラスに、時にシリアスに、文字を空間に放って独自の世界を描いていく。心地よい言葉の羅列に浸れる1枚。オーディオ的にも優れている。 | ||
レオポルト・ハート(1979-): 漂移性の塊[アンサンブル・モザイク] /船位算定[アンサンブル・レゾナンツ] / アウグスト・フロンマーのもの[バーゼル・モンドリアン・アンサンブル] / seuring -スイッチ[シモーネ・ヤング指揮ハンブルクpo.] | ||
岸野末利加(1971-): 大太鼓、三群に分かれた14人の奏者、8チャネル・ライヴエレクトロニクスのための 薄明光線 [Rayons Crépusculaires] (2007-08)[アンサンブル・ムジーク・ファブリーク]/ バスクラリネット、バリトン・サックスとトロンボーンのための 「モノクロームの庭 II (2011) /単彩の庭 II 」[パークハウス・トリオ]/ エレキギター、トランペット、トロンボーン、2人の打楽器奏者、ピアノとチェロのための 繊細なるカオス [Sensitive Chaos] (2010)[ミカエル・アルバー指揮アンサンブル・アスコルタ]/ 祈る人 [Prayer] (2011) [松原千振 指揮東京混声cho.]/ 蒼穹から [Du Firmament] (2001-02) [ルカス・ヴィス指揮 hrso.] | ||
録音:2012年-2013年。自然と美が織り成す、岸野末利加の繊細にしてエキサイティングな音世界。自然、特に「光」が重要な要素となっている彼女の作品は、時にまっすぐに差す光、時に乱反射する光など、様々に変容する。岸野末利加〔きしの・まりか〕:京都市生まれ。1994年同志社大学法律学部法律学科卒業。1995年渡。1998年、パリ・エコールノルマル作曲科、2003年フランス国立リヨン高等音楽院作曲科卒業。2004-05年イルカム(フランス国立音響音楽研究所)研究員。作曲を平義久、ロベール・パスカル、フィリップ・ルルーの各氏に師事。2006年第5回フランス国立電子音楽創造センターとアンサンブルo. ・コンテンポランによる作曲賞受賞。 | ||
ヨハネス・ボリス・ボロフスキ(1979-): ファゴット協奏曲(2012/13) [パスカル・ガロワ(Fg) アンサンブル・アンテルコンタンポラン/2014年4月14日]/ 6人の器楽奏者のための「 Wandlung 」(2009, rev.2014)[アンサンブル・アヴァンチュール/2014年5月23日] / ピアノ協奏曲(2010/11)[フロラン・ボファール(P) マヌエル・ナウリ指揮ベルリン・ドイツso./ 2013年11月12日-14日]/ Chergui (2012) [アンサンブル・インターフェイス/2013年11月28日] | ||
録音:[/内]。ボロフスキはハンスペーター・キブルツ、マルコ・ストロッパらに師事、2003年ハンス・アイスラー賞受賞、2009年にはブーレーズ&シカゴso. によるMusicNOWシリーズの委嘱を受けるなど、若くして世界的に認められている作曲家。ピアノ協奏曲でソロを務めるのはフロラン・ボファール。彼は、イザベル・ファウストとのフォーレのヴァイオリン・ソナタの録音などでも素晴らしい演奏を聴かせた名手。宇宙の星を思わせる、きらめくような高音から、ジャズ的な要素を感じさせるリズムまで、ボファールの名技を堪能出来る。 | ||
ヨハネス・クライトラー(1980-): [CD] in hyper intervals (2006-08) / cache surrealism (2008) /見知らぬ仕事(2009) / プロダクトの配置(2008) /リビング・イン・ア・ボックス(2010) [DVD] CD収録曲などの演奏風景+作曲者および演奏者らへのインタビュー映像(言語:独|字幕:英) ヨハネス・カリツケ指揮アンサンブル・モデルン | ||
録音:2011年10月。コラージュ技法を駆使したクライトラーの作品集。 | ||
ヤゴダ・シュミトカ(1982-): Bloody cherries の電子化された思い出(2011) /天使あるいは吸血鬼のような旅人たちのために(2012) / WeltAll-Stars の手びきのこぎり。気前よく。(2011) / sky-me, type-me (2011) / pores open wide shut (2013) /f* for music (2012) /ドッペルゲンガーからのごあいさつ(2013) マリアーノ・キアッキアリーニ指揮アンサンブル・ガラージュ/他 | ||
録音:2014年。ポーランドの女性作曲家、ヤゴダ・シュミトカの作品集。ヴォルフガング・リームらに師事した彼女の作品は非常にごつごつで弦楽器の使い方もギコギコしており、演奏者の身体と楽器との関係性を生々しく感じさせる。攻撃的な印象。 | ||
ミヒャエル・ペルツェル(1978-): Sempiternal Lock-in (2012-13) (*) /音の彫刻 [Sculture di suono] 〜ジャチント・シェルシの思い出に(#) / ...along 101... (+) / ...sentiers tortueux... (*) ヨハネス・カリツケ指揮(*) シルヴァン・カンブルラン指揮(#) ペーター・ヒルシュ指揮(+) クラングフォルム・ヴィーン | ||
スイスの作曲家、ミヒャエル・ペルツェルの作品集。コントラバスの音域からソプラノの音域までをも網羅しながらひとつの音に聞こえるような和音を作るのが夢、と語る。音色の種類が実に様々な作品が並び、カンブルランらの指揮も冴えている。 | ||
ルイス・アントゥネス・ペーナ(1973-):エレクトロニクス作品集 カフェイン(#) [アンサンブル・アサミシマサ]/あわただしく、カンタービレ[エディクソン・ルイス(Cb)]/ 絨毯の上の男(*) /石の3つの絵[リタ・レッドシューズ(声;*) ヌーノ・アローソ(Perc)]/ K-U-L-T [パヴロス・アントニアディス(P)]/反響する詩の解剖 [マファルダ・デ・レモス(声) ファビアン・サトラー(語り) アレクザンダー・ベレズニー(Sax) マーティン・フォン・デア・ハイト(P) ヴァレリオ・サンニカンドロ指揮]/ ノイズと血の断片[アンサンブル・モザイク] ルイス・アントゥネス・ペーナ(エレクトロニクス) | ||
録音:2015年6月11日-13日(#)、2013年9月23日-27日(#以外)。楽音とノイズの違いを越えて「何が音楽で何が音楽でないのか、境界を探究する」というポルトガルの作曲家、ルイス・アントゥネス・ペーナのエレクトロニクス作品集。従来の音楽に使われてきたような楽器の音や声も、冷蔵庫のかすかな唸りや電車内の音の録音など日常生活中の騒音も、同じく音楽の素材として扱い摩訶不思議な音響世界を作り上げるアントゥネス・ペーナのシュールな音楽が詰まっている。「あわただしく、カンタービレ」は、コントラバスとエレクトロニクスの作品。「歌うように」という意味の音楽用語「カンタービレ」とはとても似つかわしからぬこの曲は、弓の木の部分で弦を叩く弦楽器の特殊奏法「コルレーニョ」が曲の全体を占め、それがエレクトロニクスで増幅されることで雨だれのような効果をあげている。「石の3つの絵」で楽器として使われるのはなんと花崗岩。花崗岩同士をこすり合わせることで生じる澄んだ高音からざらりとした音まで、石が生み出す多様な質感の音が素材となっている。花崗岩の可能性に魅せられた打楽器奏者、ヌーノ・アローソの委嘱により書かれ、このディスクでも『ヌーノ・アローソ演奏が演奏』(代理店記載ママ)している。「ノイズと血の断片」は作曲者の試みが詰まった作品。体の中を巡る血液や心拍をノイズやバスドラムで表した「自身の中(1曲目)」や、奏者全員がシンバルをヴァイオリンの弓で奏する「自制と力のほぼ完ぺきなバランス(2曲目)」、そしてクジラの鳴き声のような低音からあらかじめ録音された鳥の声に移行する「言うに言われぬ赤(5曲目)」など、全6曲からなる創意に満ちた作品。 | ||
ヴィト・ズライ(1979-): 独奏ホルンと管弦楽のための協奏曲「ホークアイ」(*) /アンサンブルのための「リストラング」(#) / アンサンブルと管弦楽のための「チェンジオーバー」(#) / 4人の金管楽器奏者とアンサンブルのための「ランアラウンド」(#) * DVD [PAL] 打楽器三重奏のための「トップ・スピン」(+) ザール・ベルガー(Hr;*) マティアス・ピンチャー指揮スロヴェニアpo.(*) ヨハネス・カリツケ指揮アンサンブル・モデルン(#)、フランクフルト放送so.(#) アンサンブル・モデルン打楽器パート団員(+) | ||
録音:2011年11月25日、2014年2月28日、2015年3月14日-15日(+以外) /アナウンスに記載無し(+) 。 # DVD は PAL 方式のため、日本国内の通常映像機器では再生出来ず、再生保証もございません。 スロヴェニアの作曲家、ヴィト・ズライはその音楽のパワフルさが魅力の作曲家。多層的な音響は彼の作品の特徴の一つだが、このスーパーオーディオCDではその立体的なサウンドがじっくりと堪能出来る。球技の審判補佐コンピューター情報処理システムを指す「ホークアイ」や、テニスのコートチェンジを意味する「チェンジオーバー」などというタイトルにみられるように、ズライは創作のインスピレーションを、彼自身が情熱を傾けているテニスから得ている。陽の光と影、様々なものとの遠近法、動きと静けさなど、彼がテニスを通して体感したであろう様々な要素が作曲家ズライというフィルターを通って音楽となった作品の数々は、どこかカラリとして明るい響きがする。ズライの創作に深く関わっているホルン奏者、ザール・ベルガーのソロも圧巻。DVDでは3名のパーカッション奏者が様々な打楽器を、フォークやスプーンなど様々な器具を用いて鳴らしていくというもので、こちらもやはりテニスへの思いに満ちているとともに、直感とアルゴリズムも大切にした作品となっている。カメラワークも秀逸。 | ||
マリーナ・ホルコワ(1981-): collision[アンサンブル・アスコルタ]/ kalngNarbe[トリオ・アッカント]/ ア・プリオリ[ベアトリクス・ワーグナー(Fl) ゲラルト・エッケルト(Vc)]/ VORderGRENZE[ラネット・フローレス(Cl) カスパール・ヨハネス・ヴァルター(Vc) ヘレナ・ブガッロ(P)]/ 弦楽四重奏曲[カイロスSQ]/ ソプラノ、100弦のモノコード、微分音をもつチェンバロ、プリペアード・ピアノ、 マルチフォニックス・ピアノのための「笑いでかける呪い」 [アレッシア・ヒュンクン=パク(S) コラ・ニコラゼ、スザンネ・カバラン (モノコルド) ヨハネス・ケラー(微分音をもつCemb) ユリア・ドラジンダ(プリペアードP) マリーナ・ホルコワ (マルチフォニックP) ゲオルク・ケーラー指揮] | ||
録音:2011年、2015年。マリーナ・ホルコワはロシア生まれの作曲家。2016年現在はベルリンに住んでいる。モスクワ音楽院でピアノと作曲を学んだ後、シュトゥットガルトでカスパール・ヨハネス・ヴァルターのもとで作曲を学んだ。様々な賞を受賞、これまでに室内楽を中心に創作活動を展開、静寂を感じさせる作風が魅力。 | ||
オンドレイ・アダーメク(1979-): 【CD】 混声合唱と管弦楽のための「 Polednice 」 [アレクサンダー・リープライヒ指揮ポーランド放送cho.、ポーランド国立放送カトヴィツェso./2013年9月20日]/ 大アンサンブルのための「 Noise 」 [マルコ・アンジュス指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン/2012年1月16日]/ 管弦楽のための「 Dusty Rusty Hush 」[マヌエル・ナウリ指揮ベルリン・ドイツso./2013年11月11日-12日]/ 管弦楽のための「 Endless Steps 」[ピエール・ブーレーズ指揮ルツェルン祝祭アカデミーo./2008年9月] 【DVD】 声とアンサンブルのための「 Karakuri - Poupee mecanique 」 [秦 茂子(声) オンドレイ・アダメク指揮アンサンブル・モデルン/2015年5月31日]/ 24の声と16の楽器のための「 Kameny 」[ジョージ・ベンジャミン指揮 アンサンブル・アンテルコンタンポラン、SWRシュトゥットガルト声楽アンサンブル/2013年1月29日]/ エアーマシンのための「 Luft-Inszenierung 」[演奏者未詳/2013年10月8日-11日]/ エアーマシン、合唱と管弦楽のための「 Korper und Seele 」[クリストフ・グルント(エアーマシン) フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮南西ドイツ放送so.、SWRシュトゥットガルト声楽 Ens./2014年10月19日]/ エアーマシンのための「 Consequences particulierement blanches ou noires 」 [オンドレイ・アダーメク(エアーマシン)/2015年8月] | ||
プラハ生まれの奇才作曲家アダメク。ジャケット写真にも使われている楽器(?)「エアーマシン」が異彩を放つ。空気を流す管に手袋型の風船やおもちゃの笛などを取り付け、不思議な動きと共にヒュー、ピュー、と音を出す装置で、DVDで実際に映像を見るとかなり独特な世界観。オーケストラの扱いも斬新で、細かく書き込まれた譜面から、おもちゃで遊んでいるかのような音楽が飛び出す。指揮にはブーレーズも参加。 # DVD は PAL 仕様のため、日本の通常映像機器では再生出来ず、パソコンでの再生保証もございません。 | ||
ミリカ・ジョルジェヴィチ(1984-): 弦楽四重奏のための「 The Death of the Star-Knower – petrified echoes of an epitaph in a kicked crystal of time I & II 」(2008/09) / ホルン、トランペットとバストロンボーンのための「 Phosphorescence 」(2014) / アコーディオンのための「 ...würde man denken: Sterne 」(2015) / オーボエとヴァイオリンのための「 How to evade? 」(2011) / 「 Do you know how to bark? non-communication for solo contrabass ver. 2.1.1 (コントラバス独奏のための)」(2010/11) / ソプラノ、バス・クラリネット、アコーディオン、ヴァイオリン、 ヴィオラとチェロのための「 Manje te u majke groze 」(2011) / チェロとライヴ・エレクトロニクスのための「 FAIL 」(2010) アルディッティSQ テオドロ・アンゼロッティ(アコーディオン) トゥルイケ・ファン・デア・ペール(Ms) ハンナ・ワイリック(Vn) フロランタン・ジノ(Cb) フランチェスコ・ディロン(Vc/エレクトロニクス) マルコ・ブラウ(Tp) クリスティン・チャップマン(Hr) ブルース・コーリングス(Tb) ピーター・ヴェール(Ob) ヨハネス・ショールホーン指揮アンサンブル・ムジークファブリーク | ||
録音:2016年。 1984年にセルビアのベオグラードで生まれた女流作曲家、ジョルジェヴィチ。彼女の音楽はその研ぎ澄まされた感性と高度な技術によって真に新たな音響を世界に刻み付けるような、前衛的探求心に満ちた物。音素材を厳しく見つめ、執拗なまでにあらゆる表現を網羅しながら音を繰り出す、たいへんな技巧を要する作品ばかり。軋むようなサウンドと、摩擦熱で火傷しそうなパッセージの応酬。演奏が難しければ難しいほど水を得た魚のごとく弾きまくる現代音楽のスペシャリスト、アルディッティ弦楽四重奏団も凄まじい熱演を披露している。 | ||
カローラ・オベルミュラー(1977-): Untergegangen der Mond 〜カウンターテナー、バスとアンサンブルのための(2008/17) / Myrmecia 〜ギター、ハープとダルシマーのための(2015/16) / Pulstastung 〜ピアノのための〔 I (2011) / II (2014/15) / III (2015-17) 〕 / mass: distance: time 〜6声のための(2010/16) / ...Silbern 〜バスフルートとピアノのための(2008/11) / Pulstastung Nichts Fettes nichts Suses 〜アルトFl、クラリネット、打楽器、ピアノとチェロのための(2015) / reflejos distantes 〜バスFl、バスクラリネット、ヴァイオリンとチェロのための(2006) / coiling and swaying 〜 18楽器のための(2014/15) アンサンブル・ムジークファブリーク、アンサンブル・モデルン、 アンサンブル・フォルミンク スカイ・ウェッセル(CT/B)他 | ||
録音:2015年-2018年。ドイツ生まれの作曲家、カローラ・オベルミュラーの作品集。ギター、ハープ、ダルシマーを使って時代性や地域性から超越した響きを作る「Myrmecia」など、独自の作風とセンスが光る。ピアノ曲は一部プリペアドの音に変えられているが、生のピアノの音が聴こえる所では割とロマンティックな響きを選択。アルバム後半は編成が大きくなり、ダイナミックなアンサンブルの楽しみも要素に加わって来る。 | ||
リサ・シュトライヒ(1985-): Segel (2017) 〜管弦楽[グレゴール・A.マイアホーファー指揮ルツェルン祝祭アカデミーo.]/ Pieta (2016/16) 〜モーターライズド・チェロとアンサンブル[ニクラス・ザイドル(モーターライズドVc)他]/ Agnel (2013) 〜 12声の合唱、オブジェクト、少年合唱とエレクトロニクス [エーベハルト・メッテルニヒ指揮ケルン大聖堂cho.]/ Asche (2012)〜クラリネットとチェロ[アンサンブル・ルシェルシュ]/ Stabat (2017)〜 32声の合唱[ロレンツォ・ドナーティ指揮 UT 混声cho.] | ||
録音:2017年。スウェーデン生まれの作曲家シュトライヒによる魅惑的な美しさの作品集。身体性があり、力強い意志を持ち、また同時にひどく繊細。そして残酷なカラーも見せる彼女の音楽は、生身でありながら今まで世界に存在しなかったような衝撃性がある。「Segel」は鞭が規則的に打ち鳴らされ、オーケストラがその残響の如く、影のように響いて漂う。また、声楽作品はケルン大聖堂やローマのサンタ・マリア・イン・カンピテッリ教会で録音され宗教的な雰囲気を高めている。何とも霊気を感じる1枚。 | ||
アンナ・コルスン(1986-): Tollers Zelle 〜ギターとソプラノのための(2017) / Plxus 〜アンサンブルのための(2014) / auelliae 〜オルガンのための(2016) /Ulenflucht 〜20声のための(2016) / Wehmut 〜5声、プリペアドピアノ、ヴァイオリン、コントラバスとサウンド・オブジェクトのための(2011) フラヴィオ・ヴィルツィ(エレキG) アンナ・コルスン(S) ドミニク・シュテック(Org)他 | ||
録音:2011年-2018年。アンナ・コルスンはウクライナ生まれの作曲家。古典的な意味でのメロディは無く、張りつめた音が空気を侵食していく。音数は少なく、編成の多彩さは純粋に音色そのものの表現力へとつながっていく。澄んだ音色が静かに明滅する高音域の扱い方が特徴的で、自然音やディジタル音を生演奏の世界に還元したような感覚。 | ||
ルーラ・ロメロ(1976-): 10の楽器とライヴ・エレクトロニクスのための「 ins Offene 」(2012/13) / ソロ楽器(アコーディオン、テナー・サクソフォン、チェロ、フルート、ハープ、アンサンブル) とライヴ・エレクトロニクスのための「 die Wanderung 」(2016/17) (6曲)/ 2人のソプラノ、アルトとライヴ・エレクトロニクスのための「 Entmundigung 」(2015/16) ザフラーン・アンサンブル、ヴェルティクス・ソノラ・アンサンブル ルーラ・ロメロ、リュック・デーベライナー(ライヴ・エレクトロニクス) 橋本明希、シルク・エヴァース(S) ノア・フレンケル(A) プレミル・ペトロヴィチ指揮/他 | ||
録音:2018年。絶え間なく変化する音色、旋律、テクスチュア。器楽と声楽にライヴ・エレクトロニクスを組み合わせた多様なサウンドに打ちのめされる1枚。電子機器は作曲家自らが扱い、楽器の音を変調しながら作品をリアルタイムで組み立てていく。 | ||
オクサナ・オメルチュク(1975-): CD: アンサンブルのための「 Sieben Intraden 」/エレキベースと打楽器のための「間奏曲1」/ ヴィオラ・ダモーレのための「 Bohmisches Lied // 3. Versuch 」/エレキベースとテルミンのための「間奏曲2」/ フルート、クラリネット、ホルン、打楽器、チェンバロ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための「 Quodlibet 」/ エレキベースとミュージックボックスのための「間奏曲3」/ エレキベースとシンセサイザー EMS VCS-3のための「間奏曲4」/ 2つのトロンボーンとアンサンブルのための「 Wow and Flutter 」/ エレキベースとシンセサイザー EMS VCS-3 のための「 Postludium 」 DVD: 打楽器四重奏と映像のための「 Ballare 」/打楽器とサンプルパッドのための「 Staahaadler Aff 」 ヨナタン・シュトックハンマー指揮ザンクト・ペーター新音楽アンサンブル/他 | ||
ベラルーシ生まれの作曲家オクサナ・オメルチュクの作品集。中世音楽かチンドン屋かと思わせる不可思議音楽に電子音楽のスパイスを注入した、ジャンルを超えた作風。DVDはPALのため日本ではパソコンでしか見れないが、「Ballare」では何故かサッカーの映像に合わせてパーカッションをポコポコ鳴らし、「Staahaadler Aff」では一体何の楽器なんだろうというパーカッションが出てきたりと非常に面白い。 | ||
WER-6511 廃盤 |
アドリアーナ・ヘルツキー(1953-): 歌劇「ブレーメンの自由」(1987) |
独唱者たち アンドラーシュ・ハマリ指揮 アンサンブル・アヴァンス |
録音:1989年4月15日。シュトゥットガルト州立劇場のプロダクション。南西ドイツ放送局との共同製作。 「ブレーメンの自由」は、ニュー・ジャーマン・シネマの重要な映画監督として知られるライナー・ヴェルナー・ファスビンダー(1945-1982)の同名映画(1972)をテキストとした物。 当盤はレーベルで廃盤となっており、国内代理店在庫も尽きてしまいました。 | ||
ペーター・ルジツカ(1948-):作品集 ヨゼフ・ハイドンの主題による 大管弦楽のための「変容 [メタモルフォーゼン]」(1990)(*)/ ヴィオラと管弦楽のための 「 ... den Impuls zum Weitersprechen erst empfinge 」 (1981) (#)/ 大管弦楽のための9つの相 「 Abbrüche 」(1977/78) (*)/ フルートと4つのオーケストラ・グループの ための変奏曲「 Emanazione 」(+) |
ウォルフラム・クリスト(Va;#) カール=ベルンハルト・ セボン(Fl;+) ペーター・ルジツカ指揮(*) リッカルド・シャイー指揮(#) クリストバル・アルフテル指揮(+) ベルリン放送so.(*/#/+) | |
録音:1990年(*)/1987年(#)/1976年(+)、以上ゼンダーフレイス、ベルリン。 | ||
イザベル・ムンドリ:作品集 | シルヴァン・カンブルラン指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
ヘンツェの愛弟子ムンドリ女史の刺激的な前衛音楽。 | ||
モーリッツ・エッゲルト(1965-): 歌劇「アラビアン・ナイト」から * バッド・アティテュード(チェロとピアノのための) + アウサー・アテム(リコーダーのための) # ナンバー9 第1番−第3番(管弦楽のための) ** シュケルター(サクソフォン四重奏のための) ++ |
S.シュナイダー(S)他 * ペーター・ヒルシュ指揮 * バイエルン国立歌劇場o. * S.ヘス(Vc;+) M.エッゲルト(P;+) マリア・ヴィブロウ(リコーダー;#) C.ローター指揮 ニュルンベルクpo. ** アート・サックスQ ++ | |
ポップス的作風。 | ||
バーンフリート・E.G・プレーヴェ: 跳躍(ピアノのための)/ 混合‐変態(4つの楽器と電子楽器のための)/ 素描(フルート・ソロのための)/ エス・トレイスII (2本のフルートと電子楽器のための)/ キリストの変容 (トロンボーンと録音テープのための)/ 鐘(打楽器とピアノのための)/ エア(バスフルートとアンサンブルのための)/ 折り重ねられた時(弦楽アンサンブル、 ピアノと打楽器のための)/ インスタンスII(弦楽三重奏のための) |
ジェイムズ・アヴェリ(P) ピエール・アンドレ・ヴァラド指揮 アンサンブル・コート=サーキット イザベル・ユーロー(Fl) イザベル・シュネラー ロベルト・エイトケン(Fl) ミケ・スヴォホダ(Tb) 中村いさお(Prec) ハン・カヤ(P) ロベルト・プラッツ指揮 アンサンブル・ケルン トーマス・クルグ指揮 ブレーメン・ドイツ室内o. アンサンブル・ムジカ・ ヴィヴァ・ハノーヴァー | |
イサン・ユン、エリオット・カーター、ドナトーニなどに師事した、1963年ドイツ生まれ、新進気鋭の若手作曲家ブレーヴェの作品集。 | ||
ドイツ音楽の方法、同時代の音楽シリーズ 〜フォルカー・シュタウブ ズアロガーテ (声楽アンサンブル、フルート、 トランペット、トロンボーン、打楽器、 鋼鉄線、モーターサイレンのための) |
フォルカー・シュタウブ指揮 | |
サイレンが不気味に鳴り響き、ガラクタの騒音と声楽が奇妙なハーモニーを生み出す怪作。録音も超優秀。 | ||
クリストフ・シュタウデ(1965-): 弦楽三重奏曲 * 灰色の天海(3つのチェロとピアノのための) + ここではないどこか(ピアノのための) # |
レハーヘ・トリオ * アバンス・クァルテット + スヴェン・トマス・カイブラー(P) | |
正統派現代音楽。 | ||
クラウス=シュテフェン・マーンコップフ(1962-): チェンバロのための「ペガサス」/ ピアノと室内アンサンブルのための室内協奏曲/ 室内アンサンブルのための「続けねばならぬ」/ トレマ第1番〜第3番/ ピアノのための「5つの小さな間隙」/ オーボエと室内管弦楽団のための「メデューサ」/ ヴィオラのための「メモル・スム」 |
デイヴィッド・アダムス(Cemb) ユン・ジュ・キム(P) ジェイムズ・エイヴリー指揮 アンサンブル・シュール=プリュ パスカル・ポンス(Perc) T.A.ゲルバー(P) ピーター・ヴィール(Ob) ボード・フリードリヒ(Va) | |
現在シュトゥットガルト国立歌劇場とコラボレーションを行うドイツの中堅作曲家、マーンコップフの作品集。 | ||
シャルロッテ・ザイター(1965-):作品集 シャンルヴェ(ヴァイオリン、チェロとピアノのための;1994)(*) 7つの公表(バリトンとピアノのための;1997)(+) 室内交響曲[半透明の主題](13人の器楽奏者のための;1993)(#) 海、大地と空気I(女声、バス・フルート、 バス・クラリネット、ピアノと2人の打楽器奏者のための;1997)(**) 海、大地と空気II(ソプラノ、バス・フルート、 アコーディオンと打楽器のための;1996)(++) 響きと唸り(ピアノのための:1996)(##) 弦の盟約(ヴァイオリン、ヴィオラ・チェロのための;1996) (***) 言葉を吟味せよ(リコーダー、バス・クラリネット、ピアノ、打楽器、 チェロ、コントラバス、フルサイズ・コントラバスのための;1997)(+++) |
E.ヴィンドリヒ(Vn;*) G・プフィシュテレル(Va;*) M・ヴェンデンベルク(Vc;*) S.シュトール(B;+) R.フリードル(P;+) G・シュルツ指揮BPOメンバー(#) S.フィールド(S;**) M・アルパー指揮(**) Ens.ヴァリアンティ(**) アルテット・ベルリン(++) M・ヴェンデンベルク(P;##) M・ロイポルト(Vn;***) H・シェーファー(Va;***) M・デ・オリヴィエラ・ピント (Vc;***) M・クリード指揮 ムジク・ファブリクNRW | |
ディートリヒ・アイヒマン(1966-): ピアノ四重奏曲「92年暮」/ 殺人鬼・悪指ジョーが 香港の朝のたそがれになめし皮リリーと会った/ さしあたり名無しの作品(フルートとピアノのための) |
アンサンブル・オットマーニ [山根孝司(Cl) ヴェルナー・ディッケル(Vn) おやゆたか(P) ディートリヒ・ アイヒマン(アナウンス) グンヒルト・オット(Fl) クリストフ・グルント(P)] | |
アイヒマンといってもナチス戦犯とは無縁。ジャズやヘヴィメタなどの影響を受けた新世代の音楽とのこと。 | ||
フレドリク・ツェラー(1965-): 裂溝(管弦楽のための;1998)(*)/ 旋回(サクソフォン、ピアノ、 パーカッションのための;1997)(+)/ 流出(ソプラノ、テノール、ヴァイオリン、アルト・ サクソフォンとパーカッションのための;1998)(#)/ ウィンター A・D・E(ヴィヴァルディ「四季」の冬に基づく、 4つのギターのための;1994)(**)/ 合併(33つのピアノのための;1998)(++)/ 連鎖についての習作 (弦楽四重奏と四重唱のための;1996)(##)/ 夢の途中(四重唱とアンサンブルのための;1995)(%) |
マイケル・スターン指揮(*) ザールブリュッケン放送so.(*) トリオ・アカント(+) アンサンブル・アンテグラル(#) アレフ・ギターQ(**) スガワラ・ユキコ、 ヘンミ・トマコ、 ユルゲン・クルゼ(P;++) オズワルド・サラベルガー指揮(##) アンサンブル・モデルン(##) シュトゥットガルト 新声楽ゾリステンのメンバー(##) マンフレート・シュライアー(%) アンサンブル・ヴァリアンティ(%) シュトゥットガルト 新声楽ゾリステン(%) | |
録音:1997年〜2001年。 シュトゥットガルトに生まれ、ラッヘンマンやツェンダーに師事したツェラーの作品集。金管と打楽器によるクラスター音の洪水が耳を襲う「裂溝」、ピアノが打楽器調に暴れる「合併」 など鮮烈な音響にあふれた一枚。「連鎖についての習作」は声楽陣が発する「ズーッ」「フーッ」という擬音に弦が合わせる猟奇音楽。ヴィヴァルディの「四季」のフレーズ(冬)が聴こえる「ウィンター…」、 タイトルにならいシューマンのトロイメライが現れる「夢の途中」も異常性では他に劣らぬ内容。優秀録音。 | ||
エルンスト・アウグスト・クレツケ(1964-):作品集 タイム・ラグ(最近、ディオティマとともに歩むうちに) (女声合唱のための;1993-1996)(*) タウトロの口を利けない郵便配達人(EWG) (4人の打楽器奏者のための;1999-1999)(+) 幻影(「黒い容貌」第1番)(ピアノとテープのための;1995)(#) |
ミヒャエル・アルバー指揮(*) シュトゥットガルト SWT声楽EnS.(*) ケルン打楽器四重奏団(+) パウロ・ アルヴァレス(P;#) | |
録音:1999年11月19日、ヴィラ・ベルク、シュトゥットガルト(*)/2001年2月10日〜11日、シュトルベルガー・シュトラッセ・スタジオ、ケルン(+)/2001年4月10日〜11日、フランクフルト(#)。 ヘルダーリンの「ディオティマへのメノンの哀しみ」をベースにした(*)は神秘的な響きが美しい作品。19人の歌手からなるコーラスを、最初は4分割して互いに反対向きに配置して空間上の演奏効果を上げ、 後に7つのグループに再編成されて独自の動きを見せ始めるというもの。シュトゥットガルト放送の委嘱作品。他に、スネア・ドラムが活躍する、まさに現代音楽らしい(+)、えんえんとピアノが鳴り響く中、 テープ音が絡みつくような錯覚を与える(#)という、現代音楽の王道のような作品が揃えられていえる。 | ||
マティアス・ピンチャー(1971-):作品集 | ||
ヤヌスの顔(2001)(*)/ たそがれの歌(ソプラノと7つの楽器のための;1997) 〔録音:2001年6月29日、ハイデルベルク(*)/ 2001年8月19日、ゾフィエンザール、ウィーン(+)〕 |
タベア・ ツィンマーマン(Va;*) アルバン・ ゲルハルト(Vc;*) ジュリー・モファット(S;+) マティアス・ピンチャー指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
歌曲集「歌ならびに雪のイメージ」 (E.E.カミングスのテクストによる;2000) 〔録音:2001年2月1日、ベルリン・ドイツ放送第10スタジオ〕 |
クラウディア・ バラインスキー(S) アクセル・バウニ(Perc) | |
「どこかへ・・・出発の仕方」 (アルテュール・ランボーの詩「出発」と イザベル・ランボーのテクストによる;2001) 〔録音:2001年6月8日〜9日、ハノーファー放送局スタジオ〕 |
アリアーネ・アンデレッゲン (ナレーション) エルプトナルシュラークヴェルク (Perc) トルステン・エンケ(Vc) トビアス・エンゲリ(Vc) ゴトフリート・ ロスナー(Vc) クリスティアン・クルクセン (ライヴ・エレクトロニクス) ハンス=クリストフ・ ラーデマン指揮 北ドイツ放送cho. | |
イン・ノミネ(無伴奏ヴィオラ用補筆版;1999) | タベア・ ツィンマーマン(Va) | |
「同時代の音楽」シリーズの1枚。ヘンツェに師事したピンチャーの特徴的な作曲方法は、カミングスとランボーの詩に付曲した作品に端的に示されている。作曲者自身の指導のもと、 現代音楽のスペシャリストたちによって演奏された諸作品は、聴き手に「時の瞬間への侵入」というピンチャーの意見への包括的な見解を要求する。 | ||
ブルクハルト・フリードリヒ(1962-): 秋の盛り(ヴァイオリン、アルト・サクソフォンと ピアノのための;1996)(*/+)/ 色彩の変化(無伴奏ヴァイオリンのための;1997)/ spie[ge]l[e]n(ヴァイオリン、サクソフォン、 バス・クラリネットとピアノのための;1998) (+/#/**)(++)/ 室内歌劇「ランスロットの鏡」〜7つの場面 (メゾソプラノ、アルト、ヴァイオリン/ヴィオラ、 チェロ、バス・クラリネット、ギターと 打楽器のための;2000)/ 鏡の都市への眺め(ヴァイオリン、ヴィオラ、 チェロとピアノのための;2000/2001) |
バルバラ・リューネブルク(Vn) クラウディア・ビルクホルツ(P;*) ブルクハルト・フリードリヒ(Sax;+) ミヒャエル・ドルネ(P;#) アンサンブル・アンテグラル(**) | |
録音:2002年2月4日〜8日、ドイチュ・ムジクラートおよびドイツ放送との共同制作(++以外)/2001年11月4日、オーストリア放送、ライヴ(++)。 フリードリヒはベルリン生まれ。アンサンブル・アンテグラルのメンバーとして録音にも加わっている。演奏音域の限界まで酷使し楽器に悲鳴をあげさせる「秋の盛り」は、スーパー・トゥイーターだけで再生可能と思わせるほどの超高周波音楽。“spie[ge]l[e]n”はドイツ語の「鏡(Spiegel)」と「演奏する(spielen)」の綴りをかけあわせたタイトル。とびきり辛口の響きに満ちた音楽の数々。 | ||
イェルク・ヴィトマン:作品集 クラリネットとピアノのための「5つの断章」(1997)/ 独奏ヴァイオリンのための「練習曲3」(2001/2002)/ アンサンブルのための「自由な小品」(2002)/ 高熱に伴う幻覚 |
イェルク・ヴィトマン(Cl) シルケ・アーヴェンハウス(P) ルディガー・ロッター(Vn) ムリエル・カントレッジ(Vn) ケルヴィン・ホートルン(Va) クリストフ・リヒター(Vc) | |
ヴィトマンは独自の音楽哲学をもった30歳の若手作曲家。高熱を出して寝ているときに、天井がうねって見える体験を音にしたような「高熱に伴う幻覚」、聴いているとヴァイオリンの遠心力に乗せられてきわめて危険な気分が味わえる、パガニーニも真っ青の超絶技巧曲「練習曲3」、映画「シャイニング」でのジャック・ニコルソンの狂気の沙汰を思い起こせるような「自由な小品」など聴きものぞろい。 | ||
ステファン・ヴィンクラー: 熱望から存在へ−7つの事件とひとつの現状 (ヴィオラともう7人のための)(*) Gullinkambi−冷たい櫛(管楽器のための)(+) アヴェニュー(#) Zigzag(サクソフォン六重奏のための)(**) |
イェルク・ヴィンクラー(Va;*) ベルリン新音楽室内アンサンブル(*) ステファン・ヴィンクラー (サンプリング)指揮(*) ティナ・レーデラー(Fl;+) マティアス・ベッカー (Ob、Ehr;+)、 マルコ・トーマス(Cl) ノルベルト・プフェルツ(Hr) セリム・アイカル(Fg) トーマス・コリコフスキ (コントラファゴット) クラース・ヴィルレッケ (S-、A-、T-Sax;#/**) カロラ・エルスナー(Br-Sax;#/**) | |
なんとも辛口なサックス六重奏。おそらく多少の電子処理は施されていると思われるが、人間が演奏しているとは思えないほど無機的でドライな音色。ここまで自我を消せる演奏者というのもすごい。全体的に非人間的だが、実に優れた音響。アメーバのようなアニメーション映像つきのサックス六重奏((**)と同曲)を鑑賞すると、宇宙的でシュールな気分を味わえる。 両面ディスクの Dual Disc フォーマットになっており、片面がCD、片面がDVD(NTSC)という仕様。厚みがあるため、国内の一部機器メーカーから再生時に不具合が発生する機種があるとアナウンスされているフォーマットのため、ご購入時にはお気をつけ下さい。 | ||
イエルク・マインカ(1962-):作品集 四分音符=100/トゥッティ/ la condition humaine(人間の条件)/フレデリク |
タイプ文化 | |
13歳か14歳のときに電話帳をめくっていたら「作曲家」という職業を知り、それ以来作曲家になることを強く夢見るようになったというマインカ。「フレデリク」は、 ショパン「バラード第1番」の遠鳴りの中で発狂の世界が繰り広げられる。これはかなり上級者向けかもしれない。 | ||
カリン・ハウスマン(1962-): lys(*)/これぞ騒音(#)/共鳴(*)/ 重さと寸法(ピアノ独奏のための;+)/ 膨らむ(*)/偶然のための場所(**) |
エリック・オーナ指揮(*) チュルムヒェン・アンサンブル(*) ノーマ・エンス(S;#) ファ=キュン・イム(P;+) イングリード・シュミットヒューゼン(S;**) 現代音楽のための音楽工房アンサンブル(**) | |
「植物など自然とお話ができてしまう不思議女性作曲家、カリン。目を閉じればそこは森の中、森の妖精になった気分になれる一枚です。音の使い方がちょっと不思議でなかなか素敵です。」と代理店。 | ||
トビアス・PM.シュナイト(1963-): プレリュード I;ハーモニックな邂逅 鏡のケージの中の気味の悪いシーン 垂直の地平線 私は時間の淵の上で踊っている I 孤独な僧の瞑想 II |
ペーター・ルンデル指揮 ムジークファブリーク カール・ロスマン(Cl) ウルリヒ・レーフラー(鍵盤) | |
1998年にゲーテ・インスティトゥートの招聘で京都に演奏旅行に訪れたこともあるトビアス・PM.シュナイトの作品集。「鏡のケージの中の気味の悪いシーン」は、鏡張りのケージの中に閉じ込められたらどのような音楽が聴こえるか、というもの。江戸川乱歩の「鏡地獄」という短編に同じような設定の話があり、最近実相寺昭雄監督によって映画化されたことでも記憶に新しい。半音階などを多様し強迫観念的で半狂乱風の仕上がりで、曲の終結は狂乱の末の死を感じさせる。演奏も一流アーティストに恵まれ、このうえなく倒錯的で怪しげな世界が広がっていく。 | ||
トーマス・シュティーグラー(1966-):作品集 楽勝ソナタ〜プリペアード・ヴァイオリンのための(*)/ 堀をめぐらせた城〜語りとアンサンブルのための(#)/ decage-decade 〜ヴァイオリン、クラリネットとチェロのための(+)/ ユニゾン〜アンサンブルのための(**)/ 名のない庭(##)/ そして。行った。〜までに。外に。 (女性の語りと12の声のための)(++) |
トーマス・シュティーグラー (プリペアードVn;*) トルイケ・ファン・ デア・ペール(女声;#) トゥームヒェン・アンサンブル(#) エリック・オナ指揮(#) クレメンス・メルケル(Vn;+) ディエゴ・モンテス(Cl;+) カスパール・ヨハネス・ ヴァルター(Vc;+) トゥルムヒェン・アンサンブル(**) エリック・オナ指揮(**) ボゾーニSQ(##) ブリギッタ・ アッショイアー(女声;++) スコラ・ハイデルベルク(++) ヴァルター・ヌッスバウム指揮(++) | |
久々に「いかにも」、のディスク。一曲目の「楽勝ソナタ」は、かけた途端にガムテープをはがすような音がしばらく続き、しばらくすると「ああ、ヴァイオリンをギコギコやっているのか」となんとなくわかって来る。一体こんなものを誰が演奏しているんだろう、と思うと作曲者自身・・・。こんなのが6分続くが、結構ハマッてくるから不思議。 decage-decade は、ジョン・ケージの没後1年の折に書かれた作品で、C-A-G-Eという音列が使われているようなのだが、一聴して判別するのはなかなか困難。さらに「ユニゾン」では、ヴィオラが井戸のポンプのような音を奏でたり、歯医者のあのいや〜な「キュイーン」の音を奏でたりする。 | ||
オルム・フィンネンダール(1963-): 例証作品/来る、そして行く/ 訴願/ケーススタディー |
エンノ・ポッペ指揮 アンサンブル・モザイク ベンジャミン・コブラー(鍵盤) ミリアム・コンツェン(Vn) ザッシャ・アルムブルスター (A-Sax) パスカル・ポンス(打楽器) | |
全体的に硬質な響きの音楽で構成されたアルバム。他惑星の荒涼とした大地を思わせる、凍てついた音のみで構成されるアンサンブルの技量に驚かされる。フィンネンダールはデュッセルドルフに生まれ、ダールハウスらのもとで作曲や音楽学を学んだ。ICEMで教鞭をとったこともある実力硬派の作曲家である。 | ||
エリック・オニャ(1961-):作品集 もう一つの声(6手ピアノのための;*) Tiger und Patriarch(#)/5つの歌(+) すべて近かったものが遠くなる(#) Jodeln(**)/フクロウ・ソナタ(##) |
ブガッロ=ウィリアムズ・ ピアノ・デュオ(*/**) エイミー・ディサナヤケ(P;*) エリック・オンニャ指揮(#) トゥルムヒェン・アンサンブル(#) トルイケ・ファン・ デア・ペール(Ms;+) カスパル・ヨハネス・ ヴァルター(Vc;+) Bluチェロ三重奏団(##) | |
アルゼンチンに生まれ育ったエリック・オニャの作品集。2歳半の時に、自宅にあった洗濯機のそばにずっと座って、洗濯機のうなる音と一緒にあわせて歌をうたっていたというツワモノ。そんな彼の研ぎ澄まされた聴覚が生み出す作品は、鼓膜を羽でこするような微妙な音によって構成されている。 | ||
エンノ・ポッペ(1969-): 木材(クラリネットとアンサンブルのための;1999/2000)(*) 骨(アンサンブルのための;2000) オイル(アンサンブルのための;2001年) |
エルネスト・モリナーリ(Cl;*) ステファン・アスバリー指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
エンノ・ポッペは10歳にして作曲のコンテストで優勝したというまさに天才。ブックレットの中で「シャベルを手に取り、森に行け。暗い穴を見つけたらすぐさま掘り返せ。あなたにちょっとでも幸運が宿っていれば、あなたは木か骨か油を掘り当てるだろう――。」と語っている。自然界の物質は古来より不変で、200年以上前に生きたベートーヴェンと我々を結びつけるものもこうした自然界のものである、という一風かわったオーガニック作曲家だが、作り上げる音世界は意外と前衛的。しかし見方を変えれば原始的な世界ともいえよう。 | ||
カルステン・ヘンニヒ(1967-):作品集 Sing-Sing の後の遠足[マルセル・ヴェングラー指揮ルクセンブルク・シンフォニエッタ]/ aperioden mit 7 faltungen [エリク・オニャ指揮 Thürmchen Ensemble ]/ カデンツァ、13のわな [モニカ・ジョルダン(S) アンサンブル・アレフ]/ マッセン[マーティン・ブラビンズ指揮バイエルン放送so.]/ シノニム[フリードリヒ・ゴルトマン指揮ブレーメン・ドイツ室内po.] | ||
「マッセン」は、自然界の二つの現象(砂嵐と昆虫の大群の動き)を音にしたもの。砂嵐を形成する砂の一粒一粒までが見えるような、遠近感が少しおかしくなるような錯覚を覚える作品。 | ||
イェンス・ヨネライト(1968-): Le tout,le rien(オール・オア・ナッシング) (アンサンブルのための) |
フランク・オッル指揮 アンサンブル・モデルン | |
ヨネライトはドイツ生まれの作曲家。オーケストラ音楽や、映画音楽も書いている。サスペンス色満点の作品で、殺人鬼に追われ逃げまどうヒロインが目に浮ぶよう。 | ||
セバスティアン・クラーレン(1965-):作品集 ポテンキンI:ベイビー・ベイビー(*)/ ディテール(#)/アルカン(+)/ 地獄にて(#)/チャームス・ダブ(**) |
テオドロ・ アンツエッロッティ (アコーディオン;*) トリオ・ルシェルシュ(*) エンノ・ポッペ指揮(#) アンサンブル・モザイク(#) エルンスト・スルベルク(P;+) マティアス・ヘルマン指揮(**) SWRシュトゥットガルト放送so.(**) | |
「アルカン」は19世紀の作曲家ピアニスト、アルカンにちなんで作曲されている。アルカンの作品は、今でこそアムランらの演奏によって知られているが、その超絶技巧があまりに難しいためもあってなかなか演奏されず、一時ほぼ忘れ去られた存在だった。この曲はアルカンを意識して書かれており、嫌味のように繰り返される様々な難しい音階や音型の中に、不思議とエクスタシーが感じられる作品。 | ||
アンドレアス・ドーメン(1962-):作品集 テンポ・ジュスト[スティーヴン・アズベリー指揮ケルン WDR so.、 ケルン打楽器四重奏団、新シュトゥットガルト・ヴォーカルゾリステン]/ Kuhlmannkommentar[ヴァランティーン・ガルヴィエ(Tp) ウーヴェ・ディルクセン(Tb) 小川るみ(Perc)]/ フロッタゲス[カスパル・デ・ロー指揮/アンサンブル・モデルン] ゲルハルト・リヒテルのための音楽 [ローター・ツァグロゼク指揮バーデン=フライブルク SWR so./原盤:COL LEGNO] | ||
ドーメンは、「もっと速く、もっと速く」が口癖の作曲家。「テンポ・ジュスト(正確なテンポで)」では、演奏者は可能な限り高速で演奏することを求められる。パッセージが様々な楽器で受け継がれていく部分や、マリンバの超絶技巧など、かつてない早口音楽が展開されている。 | ||
セバスティアン・スティーア(1970-):作品集 ダブル(2001)〜20人の演奏家のための(*)/ 尽線(2004)(ヴァイオリンとギターのための)(#)/ あちら こちら(2004/04)(Es 管Cl、 ヴァイオリン、アコーディオンのための)(+)/ 二つの歌曲(1994) (児童ソプラノとヴィオラのための)(**)/ der und die(2002) (ソプラノ、クラリネットとチェロのための)(##)/ 風の逃亡者II(1998)(アルトフルートのための)(++) |
アンサンブル・モデルン(*) ドミニク・マイ指揮(*) Duo 10 (#) アンサンブル・クラリネット・ アコーディオン・プラス(+) アルナス・ ブロイティガム(S;**) マルティン・フラーダ(Va;**) ペトラ・ホフマン(S;##) アンサンブル・レシェルシェ(##) ミヒャエル・ シュミット(Fl;++) | |
爆発的なエネルギーを秘めた、スティーア作品集。作品の中でも音のエネルギーが自在に伸縮しているのを感じる。プリミティヴな感じもするが、魂が開放されるような気がする。 | ||
マルクス・ヘヒトレ(1967-):作品集 スクリーン-アンプを伴うアンサンブルのための [ステファン・アスバリー指揮アンサンブル・モデルン] クラリネット、バス・ギター、ヴィオラ、チェロ、コントラバスのための 「休譜のある複数の楽章」 [アントン・ホーリッヒ(Cl) アンドレ・ヘルナンデス・アルバ(バスG) ジャン=クリストフ・ガルシア(Va) マルクス・ティリアー(Vc) ペーター・ヘッキング(Cb)] 7つの声のための「苦情」 [マンフレート・シュライアー指揮シュトゥットガルト新声楽ゾリステン] アンサンブルのための「盲点」[ヨナタン・シュトックハンマー指揮新耳アンサンブル] 語り手と4つの男声とアコーディオンのための「無言の」 [アンドレ・ヴィルムス(語り手) テオドーロ・アンゼッロッティ(アコーディオン) ダニエル・グローガー(CT) マルティン・ナジ(T) ジレルモ・アンゾレナ(Br) アンドレアス・フィッシャー(B) シュトゥットガルト新声楽ゾリステン] | ||
ヘヒトレはドイツの作曲家。ヴォルフガング・リームに作曲を師事し、ツィンマーマンの薫陶を受けたこともある。「あれをやっちゃいけない、これをすることはできない」というルールにがんじがらめの教育を受けながら、その枠を超えた自由な作風。自然の中にいるような、開放感を満喫できる1枚。 | ||
ハンス・トマッラ(1975-):作品集 楽興のとき/野性的。事物/ チェロ対位法/性格的小品タチ |
アンサンブル・ルシェルシュ ルーカス・フェルス(Vc) | |
かなり即席爆発系の音世界が展開されている。突然叫びだしたくなることの多い方は少し共感できるかもしれない音楽。チェロ対位法も、想定外の高音や思いもかけない重音が次々と怒涛のように押し寄せる、叫び声のような、発泡スチロールでガラスをキキキとこするような、耳をふさぎたくなる一歩手前の世界。 | ||
ジェイ・シュワルツ(1965-):作品集 オーケストラのための音楽(*)/ 6つの声のための音楽(#)/ 12のチェロのための音楽(+)/ 5弦の楽器のための音楽(**) |
ディエゴ・マッソン指揮(*) フランクフルト放送so.(*) シュトゥットガルト 新声楽アンサンブル(#) シュトゥットガルトSWRso.の チェロ奏者(+) カイロス四重奏団(**) マティアス・バウアー(**) | |
録音:2005年-2008年。 シュワルツはアメリカのサンディエゴ生まれ。さまざまな音楽祭で作品を発表し、委嘱作品も多く、2000年にはベルント・アロイス・ツィンマーマン賞を受賞した実力派。聴きものは(#)で、ぼんやりと聴き流していると、人の声だとは思えないような不思議な音質の連続。 | ||
スヴェン=インゴ・コッホ(1974-):作品集 ふぞろいの時間たち/貫通/大きながみがみ声の克服/ 月のアスパラガス/そして。広い。飛んだ |
ペーター・フォン・ ヴィーンハルト(Cemb) アンサンブル・ポリフォニーT マンフレート・シュライアー指揮 シュトゥットガルト 新声楽アンサンブル/他 | |
録音:2005年、2008年。 コッホはファーニホウに師事し、アシスタントも務めた。現在はドイツに住んでいるが、学生時代をすごしたカリフォルニアのビーチが恋しくて仕方がない、ということ。作風はなんとなく全体的に中途半端な印象もぬぐいきれない。でも、誰かが話していて途中でもごもご聞こえなくなってしまうと、「で、結局その先どうなったの?」と却って気になってしまうような感じに似ているかもしれない。 | ||
ハンネス・ザイドル(1977-):作品集 暖炉飾りの上のための音楽 私に襲いかかったもの/ ホーム・エンターテインメントの芸術/ 室内のざわめき/異種なるものー今や新しい!/ 貸し出し美術品 |
コンポーザーズ・スライド・ カルテット | |
録音:2008年、2009年。 録音というものは、普通、コンサートホールの響きを再現しようと、マイクと楽器に距離を置いて、美しい響きをとらえようとするもの。しかし、この録音は、コンサートホールの響き、というよりも、比較的狭い室内で、すぐ傍でトロンボーンが鳴り響いているような感覚のもの。実に至近距離で音が鳴っていて、単なるオンマイク録音を越えた音となっている。時折町の雑踏の音が混ざったり、ザーっという音が流れたり、実に耳に刺激的。イヤホンで大き目の音量で聴くと、ちょっと危険かもしれないが、オーディオ的にも面白い様々な音が入っている。 | ||
マルティン・シュットラー(1974-):作品集 採取I/関連付けられた旅/ 「同情は人類にとって禍いである、」/ アウゲンビルダームジーク/採取II/ テイプド&ロウ=ビット/採取3/激しい欲望 |
ムジークファブリーク | |
録音:2007年、2009年。 シュットラーは映画音楽なども手掛けている幅広く活躍する作曲家。電子楽器も含む曲は、ステレオが壊れたかと思うようなノイズ的音響だが、近未来に迷い込んだような気分になれる。 | ||
アルヌルフ・ヘルマン(1968-):作品集 架空のダンス/ばかでかい歌/第3の心/ 類似/直截的な官能 |
アンサンブル・モデルン | |
録音:2007年、2009年。 ハイデルベルク生まれのヘルマンによる作品集。様々なモティーフの断片がぽつんと在ったり多重的に在ったり、構築性に富んでいる。 | ||
アヒム・ボルンヘルト:作品集 ナチュレル/コンセント/ラック/インフラロート/セピア/アチェトン/ナチュレル ヘリオスSQ アンサンブル・フォルミンクス ベルンハルト・ヴルフ指揮フライブルク打楽器アンサンブル | ||
録音:2008年-2009年。 日本人には快く耳に響く虫の音も、西洋人にとっては不快なものであるという話を聞いたことがあるが、まさにこれは西洋人の耳に聴こえる虫の声。鈴虫の羽音のコンピューターによる再現なのに、どこか気持ち悪く聴こえるから不思議。ボルンヘルトは1966年生まれ、電子音楽を中心に活躍している。 | ||
サエド・ハダド(1972-):作品集 ル・コントルデジール/オン・ラヴI/オン・ラヴII/ レ・ドゥ・ヴィザージュ・ドゥ・ロリアン/ ミステリアスなエチュード/ザ・シュープリーム |
アンサンブル・モデルン | |
録音:2008年-2009年。 サエド・ハダドはヨルダン生まれ。ドイツに住み、ベルギーで哲学を学んだ。ラッヘンマンやデュサパンに師事。ローマ大賞も受賞した世界が認める作曲家の真髄を味わえる一枚。一貫した集中力を奏者に求める作風だが、静寂と音について考えさせられる、哲学的な音楽。カーヌーンなどヨルダン地方の楽器ももちいられており、興味深いサウンドの作品が並ぶ。 | ||
オリヴァー・シュネラー(1966-):作品集 アクア・ビット/アコーディオン、チェロとピアノのためのトリオ/ 3つの想像上の空間/ストラティグラフィー1/残響空間/ストラティグラフィー2 | ||
ケルン生まれでミュライユに師事したシュネラーは、アコースティックな音を組み合わせ、様々な音を新たに生みだす名人。トリオはアコーディオンを笙のように用い、興味深い音響になっている。 | ||
エレナ・メンドーサ(1973-): 霧〜ミゲル・デ・ウナムノの劇に基づく [オリヴァー・ニッチェ(語り手;アウグスト) ウタ・ブッフハイスター(Ms;エウゲニア) カティア・グエーデス(S;ロザリオ) グリエルモ・アンゾレーナ(Br;マウルチオ) トビアス・ドゥッチュケ(打楽器/語り;ヴィクトール)]/ 無伴奏6声のための「 Fe de erratas 」[シュトゥットガルト新ヴォーカルアンサンブル]/ フルート、サックス、ヴァイオリン、チェロ、ピアノと打楽器のための「 Gramatica de lo indecible 」 [アンサンブル・ルシェルシュ] | ||
録音:2009年、2010年。スペイン・セビリャ出身で現在はベルリン在住の作曲家、メンドーサ。演劇に強い興味をもっており、1曲目の「霧」は語りと声楽による劇場作品。音と言葉への鋭敏なセンスが光る作品の数々。 | ||
ゴルドン・カンペ(1976-): hal /ハイ・ヌーン/リプリー・ムジークV/ qs nachtstueck / Gassenhauermaschinensuite / Picard | ||
ギコギコギコギコ、ヒュ〜、ドカン!的ないわゆる「現代」の作品かと思わせておきながら、ピアソラの断片風なテイストが漂ったり、どことなく日本の音階を思わせる作品など、なかなかにオツな世界が広がっている。カンペはドイツ・ヘルネ出身の作曲家。ヘルスキーらに師事している。 | ||
サミール・オデ=タミミ(1970-): マドジュヌン/ジャブスール/アヒンヌII/ シラ・シール/フィラキ/知恵の楽園/グダドロージャ |
ドイツを中心とする多数の演奏家 [リコーダー、チェロ、バリトン他] | |
録音:2010年、ドイツ。「政治音楽」の名のもとに作られた一枚で、人の声のエネルギーを結集させ、さらにそれにリコーダーの音を添えるなど、象徴的なアート・ミュージック。どことなく、アラブ的なリズム感の中にどことなく邦楽にも通じる和声が見え隠れし、日本人にとっては非常に興味深い作品。演奏者たちの、殺気立った緊張感の中を怒涛の音楽が流れていく。サミール・オデ=タミミは、イスラエル生まれのパレスチナ人。アラブの伝統音楽をパーカッションなど様々な楽器で学び、さらにヨーロッパに渡ってブレーメン芸術大学で作曲法を学んだ。彼の音楽の特徴は、ヨーロッパの前衛アート・ミュージックと彼の故郷であるイスラエル、パレスチナの伝統音楽の融合にある。こうしたマルチ・カルチュラルな音楽観は、まさに現代のグローバリゼーションの広がりと、それに翻弄される人々の運命を描いているかのようだ。 | ||
ジャミリア・ジャジルベコヴァー(1971-):3月の夜/声/アスパン/閉じこもることへの拒絶 IV /アイキョン
アンサンブル・モデルン | ||
録音:2011年4月。カザフスタン出身のジャミルベコヴァー作品集。フルートとピアノをアルマトイで学んだ後、ロシアに移りチャイコフスキー音楽院で作曲を学んだ。その後DAAD奨学生となりドイツなどでも学び研鑽を積んだ。プロジェクトや、ガウデアムスなどで、作曲家として活躍しているのはもちろん、歌手、フルート奏者、ピアニストなど幅広く音楽活動を展開している。「声」や「アスパン」(カザフスタンの言葉で「山」の意)は彼女自身強い思い入れと郷愁を常に持ち続けているカザフスタンを思わせる空気感が魅力。 | ||
マルトン・イレシュ(1975-):作品集 多次元の風景 より Nos.16, 15, 9, 10 / トルソ〔 III / II 〕 |
フランク・オッル指揮 アンサンブル・モデルン | |
ハンガリー・ブダペスト出身の作曲家イレシュの作品集。直接的な音響、音響そのものに秘められた莫大なエネルギーなど、爆発系作曲家。作曲家、そしてピアニストとしても活躍し、このディスクでも演奏者としても参加している。人間の指紋のように、イレシュの音楽にはハンガリーの民謡が刻印されており、爆発する管楽器の音色の中にもどこか懐かしさのある不思議な魅力に満ちている。 | ||
サラ・ネムツォフ(1980-):ロング・ウェイ・アウェイ/ホケティ
マニュエル・ナウリ指揮アンサンブル・アダプター、 ダニエル・グローガー指揮シュトゥットガルト新ヴォーカルゾリステン | ||
録音:2012年。ドイツのオルデンブルクで生まれたサラ・ネムツォフは、8歳で既に作曲を始めていたという天才。これまでに、ハンス・アイスラー賞やZONTA音楽賞などのほか、最近では、今後の活躍が期待されるアーティストのサポートのためのドイツ・アウトーレン・プライズも受賞した注目の作曲家。ロング・ウェイ・アウェイは、W.G.セバルドの4つの物語「移民」に基づいている。祖国から新しい地への移行、またユダヤのことを扱った物語で、このネムツォフの作品も、様々な対比やリズムなどを効果的に用いている。ホケティ(ホケトゥス)とは、もともとは歌い手が一音一音交互に歌う中世・ルネサンスの手法だが、ここでも様々な歌い手が交互に様々な声を出し、また器楽奏者も様々な音色を出し、現代版ホケトゥスが描かれている。 | ||
ダニエル・スムトニー(1976-):作品集 2005-2012 ピアノ・ソナタ〔第1番(2011) /第2番(2011) 〕[クリストファー・ヒンターフーバー(P)]/ 交響曲(2012) [ライプツィヒMDRso.]/ディヴェルティメント「遠近」(2011) [アンサンブル・カレッジ]/ 悪戯四重奏(2009) [ハイドン・カルテット]/ Velouria (II) (2005)[シュトゥットガルト SWR cho.] | ||
録音:2010年-2012年。現代ドイツ音楽界で最も才能のある作曲家のひとりスムトニーの最新作品を収録したアルバム。現代音楽のスペシャリストたちによる演奏。 | ||
alles 〜セルゲイ・ネフスキ(1972-): Alles /目に見えないアルファベット/わかった/労働の平地/アウトランド アンサンブル・ムジーク・ファブリーク/他、多数 | ||
録音:2011年-2012年。ネフスキは1972年10月モスクワ生まれの作曲家。ドレスデンなどで作曲を学んだ。2006年、シュトゥトガルトの町から作曲賞を受賞し、2012年にはボリショイ劇場で室内オペラ「 Franziskus 」が初演されるなど、若くして活躍している。室内楽や、声を用いた作品を多く書いており、このディスクでも、声と電子音などの巧みな組み合わせが印象的な作品が並ぶ。 | ||
マティアス・オカート(1970-): stretto - fluid space /層流 [laminar flow] /残光 [nachglut] /夜に [dans la nuit] / continuous open flux / strombahnen – II. open circuits / primum mobile szenen ジェラール・ブケ指揮 レナーテ・グライス=アルミン(Fl) アラン・ビヤール(バスCl) セバスティアン・ビシャール(P) ジャグディシュ・ミストリ(Vn) エーファ・ベッカー(Vc) マティアス・オカート(電気G) マヌエル・ナヴリ指揮アンサンブル・モデルン ヤニック・ヴィルナー(P) エディクソン・ルイス(Cb) 打楽器グループ「ドラミング」 ヴァルター・ヌスバウム指揮スコラ・ハイデルベルク、アンサンブル・アイステジス | ||
録音:2010年-2012年。ドイツ生まれのオカートは、建築を学んだあと音楽に転向、ジャズ・ギター奏者および作曲家として、電子音楽、ジャズから様々なメディアを用いたサウンド・インスタレーションを創作している。建築家ならではの構築性と、多方向から迫りくるような音づくりが印象的。 | ||
フィリップ・マインツ(1977-): バリトンとアンサンブルのための「 Fluchtlinie 」/ ヴァイオリンとチェロのための「 NAHT (yo no pido a la noche explicaciones) 」/ ヴァイオリン、チェロとピアノのための「 Tourbillon 」/オルガンのための「 Ferner, und immer ferner 」/ バリトンと管弦楽のための「 Wenn steine sich gen himmel stauen 」 オットー・カッツァマイアー(Br) シャロウン・アンサンブル・ベルリン ローベルト・HP.プラッツ指揮モンテ・カルロpo. | ||
録音:2012年-2013年。表情豊かなトーン・クラスターと、アンバランスな構造が生みだす世界。完璧な瞬間を探求し続けるマインツの求道者のような作品群をお楽しみ頂きたい。マインツはアーヘン生まれ。2010年、ミュンヘンのビエンナーレでオペラ「MALDOROR」がシェン〔注:代理店記載ママ。初演?〕されたほか、2013-14のシーズンにはミュンヘン・フィルの委嘱による声楽とオーケストラのための作品を手掛けるなど、ドイツを中心に着実の活躍の場を拡げている注目株。 | ||
WERGO現代音楽コレクション6〜カタログ 2009-2011 ゴルドン・カンペ:Gassenhauermaschinensuite [I-VII] [e-mexアンサンブル C.M.ワーグナー(P)/WER-6581] ジャミリア・ジャジルベコヴァー:閉じこもることへの拒絶IV[アンサンブル・モデルン/WER-6583] アルヌルフ・ヘルマン:架空のダンス[アンサンブル・モデルン/WER-6576] アヒム・ボルンヘルト:セピア[アンサンブル・フォルミンクス/WER-6577] サエド・ハダド:レ・ドゥ・ヴィザージュ・ドゥ・ロリアン(V)[ウルリケ・ストルツ/WER-6578] エレナ・メンドーサ: Gramatica de lo indecible[アンサンブル・ルシェルシュ/WER-6580] オリヴァー・シュネラー:アクア・ビット[アンサンブル・クール・サーキュイ/WER-6579] サミール・オデ=タミミ:グダドロージャ[ネーデルランド・ヴォーカル・ラボラトリウム/WER-6582] マルティン・シュットラー: Gier[ムジークファブリーク/WER-6575] | ||
WERGOレーベルのカタログ付きサンプラー。2009-2011年にリリースされたタイトルから抜粋して収録。 | ||
Edition zeitgenössische Musik〜サンプラー エンノ・ポッペ:Knochen(1999/2000)/スティーグラー:お手軽ソナタ(1992/93) ヘヒトレ:スクリーン(2001)/フィンネンダール:レクルス(1997/98) ヘンニヒ:マッセン(2005)/トマッラ:楽興のとき(2003/04)/クラーレン:チャームス(2004) シュナイト:部分的組織の再創造的側面についてのある孤独な僧の思考(2001) ヴィンクラー:グリンカンビ(1994/95)/ヨネライト:全か無か(2003/2004) オニャ:Euler Sonaten II&III(2001)/シュティーア:ダブル | ||
ドイツを中心に活躍する現代作曲家たちの作品の中から選りすぐりを集めた究極の2枚。阿鼻叫喚系から、ぽよんぽよんとした音色が面白い作品、強迫観念的世界が繰り広げられる作品など、実に様々。20世紀末から21世紀初頭にかけての現代音楽シーンを早足で振り返るのに最適の2枚となっている。 | ||
ヴェルゴ・コレクション 2〜ドイツ音楽の方法、同時代の音楽篇 ミューラー=ヴィーラント:「朝の詩」から マーンコプフ:「トレマ」第1番 エッゲルト:「バッド・アティテュード」 〜バッド・アティテュード、バッド・テイスト ブレーヴェ:「混合・変態」〜第2曲 シュタウプ:「ズアロガーテ」から ヴェルナー:「IV 1」から マーンコプフ:「トレマ」第2番 ムンドリ:「シュピーゲル・ビルダー(鏡像)」から クレプス:2つの弦楽四重奏曲〜クァルテットマニア キューンル:幻想劇「小さな死」〜前奏曲/鏡像 ホイジンガー:「島から島へ」から シュタインケ:「打ち破られた空間」から フォン・ボーゼ:「シンボルム」から マーンコプフ:「トレマ」第3番 コブレンツ:「ウォーキング・オン・ザ・サン」から |
G・アルブレヒト指揮 P・ポンス(Perc) 他 | |
ヴェルゴのなかでもっとも先鋭的な、ドイツ作曲家による「同時代の音楽」シリーズのサンプラーCD。驚異的なダイナミック・レンジにより オーディオ・チェックにも格好。シリーズ最新カタログ付きの大特価。 | ||
ヴェルゴ・コレクション3〜 ドイツ音楽の方法、同時代の音楽篇 フラマー:ゲトゼマニI デーンホフ: 弦楽四重奏曲第4番〜第2楽章「ロンターノ」 フォン・シュヴァイニッツ:ミサ〜ベネディクトゥス アイヒマン:ピアノ四重奏曲「92年暮れ」〜第1楽章 ザイター:響きと唸り シュタウデ:トランスフォーマット−モンタージュ ワルター:半透明の練習曲I-b クレッケ:タイム・ラグ ザプフ:和音 第3番 ピンチャー:たそがれの歌 ヒューブラー:クリプトグラム シュライエルマッハー:セレモニー第1番/第4番 |
さまざまな演奏家 | |
ヴェルゴ・レーベルのサンプラーCD第3弾で、ドイツの気鋭の作曲家たちによる「同時代の音楽」シリーズからの聴きどころを収録。MD+Gレーベルでケージのピアノ曲全集を録音したシュライエルマッハーの作品も聴ける。シリーズの2003年カタログ付き。 | ||
ヒンデミット: オラトリオ「極まりのないもの」(1931) 台本作者ゴットフリート・ベンによる 「極まりのないもの」導入部の朗読(*) |
ウルリケ・ゾンターク(S) ローベルト・ヴェルレ(T) ジークフリート・ ローレンツ(Br) アルトゥール・コーン(B) ローター・ツァグロゼク指揮 ベルリン放送so.、 ベルリン放送cho.、 ベルリン放送少年少女cho. ゴットフリート・ ベン(朗読;*) | |
録音:1995年2月3日-8日/1932年、ベルリン(*)。 | ||
ヒンデミット(1895-1963):弦楽四重奏曲全集 Vol.2 〔第2番 ヘ短調 Op.10 (1918) /第6番 変ホ調(1943) 〕 |
ジュリアードSQ [ロバート・マン(Vn1) ジョエル・スミルノフ(Vn2) サミュエル・ローズ(Va) ジョエル・クロスニック(Vc)] | |
録音:1996年6月14日-16日、アカデミー・オヴ・アーツ・アンド・レターズ、ニューヨーク市、 US / (P) (C) 1997 。 Vol.1 (第3番&第5番): WER-6283 〔廃盤のため高額〕、 Vol.3 (第1番、第4番&第7番): WER-6622 。 | ||
ヴィルヘルム・キルマイアー(1927-): 5つの夜想曲(ジョン・フィールドのために)(1975)/ 4つのピアノ小品(1986/88) [即興曲/フィガロのエチュード/コラール/ ファンタジー・パラフレーズ]/ スフィンクスの付いたピアノ・アルバム(1999) |
ジーグフリート・ マウザー(P) | |
録音:2001年4月23日、11月26日〜28日、バイエルン放送局スタジオ3、ミュンヘン。 オルフに学んだキルマイアーには、現代作品とは思えない親しみやすさと美しさを持った作品があるのが面白い。その弟子のマウザーによる演奏で。なお、ここでの「スフィンクス」とは、エジプトの有名な像ではなく、もっと抽象的で謎めいた「もの」を示している。 | ||
ヒンデミット(1895-1963):弦楽四重奏曲全集 Vol.3 〔第1番 ハ長調 Op.2 (1915) (*) / 第4番 Op.22 (1921) (#) / 第7番 変ホ調 (1945) (*) 〕 |
ジュリアードSQ [ロバート・マン(Vn1) ジョエル・スミルノフ(Vn2) サミュエル・ローズ(Va) ジョエル・クロスニック(Vc)] | |
録音:1997年3月8日-10日、トンスタジオ・テイエ・ヴァン・ゲースト、ザントハウゼン、ドイツ(*) /1995年4月15日、17日-18日、アカデミー・オヴ・アーツ・アンド・レターズ、ニューヨーク市、 US (#) / (P) (C) 1998 。創設者&創立メンバーだったロバート・マン(1920-)の同団引退直前に録音された全集。 Vol.1 (第3番&第5番): WER-6283 〔廃盤のため高額〕、 Vol.2 (第2番&第6番): WER-6607 。 | ||
フォルトナー: ヴァイオリン・ソナタ/ピアノのための7つの悲歌/ チェロとピアノのためのツィクルス/ ヴァイオリン、チェロとピアノのためのトリオ |
アルブレヒト・ブロイニンガー(Vn) セバスティアン・ヘス(Vc) モーリッツ・エッゲルト(P) | |
教育者としてヘンツェらを輩出した重要な作曲家フォルトナー。その作風は、バッハ、ヒンデミット、ストラヴィンスキー、レーゲーらの影響を昇華させた、反ロマン主義の強い信念に支えられたものであった。 | ||
グルジェフ(ハルトマン編):ピアノ作品集 Vol.3 [聖歌/祈り/典礼集(全51曲)] |
チャールス・ケッチャム(P) ローレンス・ ローゼンタール(P) | |
アレクサンドル・ラスカトフ(1953-):作品集 幻影についての注釈(打楽器合奏と管弦楽のための;1991)(*) クイセーニア(室内管弦楽団のための;1991) |
ウラディーミル・ ポンキン指揮 モスクワ・セルゲイ・ ラフマニノフso. マルク・ペカルスキー (Perc;*) | |
録音:2000年12月、モスクワ、モスフィルム・スタジオ。「W.A.M.の生涯からの5分間」(W.A.M.とはモーツァルトのこと)、「自由はパラダイス」で知られるラスカトフ。 (*)はソ連で初めて打楽器アンサンブルを結成したペカルスキーのために書かれた作品。詩人クセーニア・ネゥラーソワの詩が持つ「純粋で素朴なきらめき」と、 クセーニアというギリシャ語起源の名が持つもともとの意味(異邦人、外国人、客)に影響された作品。これらの作品は、ソヴィエト共産党統治下における当時の、暗い面(*)と明るい面(+)を感じさせてくれる。 | ||
スティーヴ・ライヒ: ノイズ・パターン/ 振り子の音楽(3テイク)/ ピアノ・フェイズ/4オルガンズ |
ライプツィヒ・ アンサンブル・アヴァンギャルド | |
注目はマイクが振り子のようにスピーカーの前を揺れて発生する音をアンプで増幅した「振り子の音楽」。3テイクを収めているらしいが、 「ライヒ・ワークス」(WARNER)にも未収録。 | ||
ルイジ・ノーノ(1924-1990):作品集 6つの楽器と管楽のための 「 Polifonica - Monodica - Ritmica 」(1951)/ ソプラノ独唱、12人の女声と楽器のための 「 Canti per 13 」(1962/63)/ 2つのヴァイオリンのための 「 "Hay que caminar" soñando 」(1989) (*) |
アンゲリカ・ルツ(S) ペーター・ヒルシュ指揮 アンサンブル・ ユナイテッドベルリン、 ユナイテッド・ヴォイセズ | |
録音:1997年5月27日-29日/1998年2月16日-17日(*)。自由ベルリン放送との共同製作。 (*)はノーノ最後の作品と思われる。 | ||
ヒンデミット:ピアノ連弾作品集 交響曲「画家マチス」(連弾用編曲版)/ ラグタイム (バッハ:平均律クラヴィーア曲集」より)/ 連弾のためのソナタ/ 連弾のための 「黒い森の3人の美しき乙女のワルツ」/ 2台のピアノのためのソナタ |
アンドレアス・グラウ、 ゲッツ・シュマッヒャー(P) | |
交響曲ファン、ピアノ・ファンともに嬉しい、ヒンデミット自身の編曲による連弾版「画家マチス」。メカニカルでドライな味わいは原曲以上。超ウルトラ級の難易度ながら、グラウ&シュマッハーの完璧な演奏により「多彩な対位法的手法」がクリアに浮かび上がる。 | ||
フラメンコ、そして・・・ 〜2台ピアノによる新世代のスペイン音楽 トーマシュ・マルコ、フアン・ギンホアン、 ラモン・バルセ、ホセ・ソレルの作品 |
ベゴーニャ・ウリアルテ(P) カール・ヘルマン・ ムロンゴヴィウス(P) | |
ファリャたちのあとに続く新世代スペイン作曲家たちの難曲。マルコとギンホアンの作品は演奏者2人に捧げられた作品でもあり、彼らがヨーロッパでいかに信頼されているかを物語る。 | ||
ジョン・ケージ: ヴァリエーションズII (M.ゴールドシュタインによる ヴァイオリンとグラス・ハーモニカ版)/ ヴァイオリンのための「8つのウィスク」/ ヴァイオリンとパーカッションのための 「ミュージック・フォー・トゥー」/ 竜安寺(肉声とパーカッションのための; ケージ承認のもとM.ゴールドシュタインによる 肉声パートのヴァイオリン編曲版) |
マルコム・ゴールドシュタイン(Vn) マティアス・カウル (Perc/グラス・ハーモニカ) | |
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ: 3つの交響的習作/4つの詩曲 夜の作品とアリア(*)/魔の森(アリアとロンド) |
ミヒャエラ・カウネ(S;*) ぺーター・ルジツカ指揮 北ドイツ放送so. | |
ハリー・パーチ(1901-1974): ウェイワード [バーストゥ/サンフランシスコ/手紙/ U.S.ハイボール] |
スティーヴン・ カルム(Br) ロバート・ オズボーン(B-Br) ニューバンド ディーン・ ドラモンド(音楽監督) | |
録音:1999年12月15日〜17日、ニューヨーク、アメリカ芸術文学アカデミー。 作曲を独学で修めたパーチは、コンサートの慣習、作曲家と演奏者の役割、十二平均律による調律法などの西洋音楽の約束事に対して批判的で、ケージにも似て異端児として有名な存在。「ウェイワード」は、 スコアに「1935-41年アメリカ西部を私が彷徨った結果--浮浪者そのほかの人物たちが書き、話した言葉を基にした音楽作品の集成」とあるように、ロードムービーならぬ、台詞入り「気まぐれ」 ロードミュージック。パーチ自ら発明の純正律に拠った珍妙な楽器が駆使され、蒸気機関車の描写が登場するなど多様な響きが楽しめる。いつもながらの優秀録音に加え、 PRO PIANOレーベルも好んで使用していたホールの響きもポイント。 | ||
尹伊桑: 室内アンサンブルのための協奏的小品/ 弦楽四重奏曲第5番/ フルート、ヴァイオリンとチェロのための 幻想的小品/ 弦楽のための「絨毯」/他 |
ヒャン=スク・リ(S) リョン・ウンカン指揮 ピョンヤン・ ユン・イサン・アンサンブル | |
韓国が生んだ世界の「尹伊桑」。なんとその彼の作品を北朝鮮の音楽家が演奏したもの。独特の緊張感に満ちた完成度の高い演奏、ということだが、北朝鮮の演奏団体によるクラシックCDが世界で発売になったのはおそらくこれが初めて。 | ||
カール・アマデウス・ハルトマン: 5つの小さな歌劇「ろう人形館」(1929/1930) [神聖な悪魔の生と死/死から蘇った男/ チャップリン・フォード・トロット/ まさか・・・?!/エフェソスの未亡人] |
C.バラインスキー(S) M.プリート(Ms) T.ハーパー(T) M.クラウス(Br) 他 ロジャー・エブル指揮 ベルリン・ドイツso.のメンバー | |
録音:1999年2月15日〜19日、イエス・キリスト教会、ベルリン・ダーレム。ハルトマンの珍しいオペラ作品で、中間の3曲は作曲者の死後60年を経て、 ヘンツェラの手により完成に至った。ミヨー、ヒンデミット、ヴァイルに共通する、コンパクト楽器の扱いと当時流行のスタイル(ワルツ、タンゴ、フォックストロット、マーチなど)をの摂取、 ナチス台頭前夜という時代の空気を反映した風刺的内容が特徴。なお、「神聖な悪魔」はラスプーチンを、フォードはアメリカの自動車王を指す。 | ||
管楽アンサンブルとコンサート・バンドのための音楽 ヒンデミット:演奏会用音楽Op.41/交響曲変ロ長調 トッホ:シュピールOp.39/ミニアチューア序曲 ガル:プロムナードミュージック クルシェネック:夢の連続Op.224 |
ロジャー・エッブル指揮 ベルリン・ドイツso. | |
今世紀前半を代表する大作曲家たちによる壮大な吹奏楽のための作品集。 | ||
ヒンデミット:合唱曲集 | ロビン・グリットン指揮 ベルリン放送cho. | |
グルジェフ(ハルトマン編):ピアノ作品集 Vol.4 [大寺院の聖歌集/他] |
チャールス・ケッチャム(P) ローレンス・ ローゼンタール(P) | |
マウリツィオ・カーゲル(1931-): 管弦楽のためのヘテロフォニー(1959-1961)(*) 付加されたアンプロヴィザシオン(1961-1962)(+) |
ミヒャエル・ ギーレン指揮(*) フランクフルト放送so.(*) ゲルト・ ツァッハー(Org;+) | |
現代音楽の雄WERGOがカーゲル生誕70年を記念して、初期作品を収録したアナログ期の名盤をCD化。演奏される度に音響がまったく新しく創り出されるようにスコアが書かれた(+)を振るのは、 近年マーラーなどでも注目の巨匠ギーレン。もとより現代音楽の解釈では高い評価を得ているだけに、恐ろしく錯綜した内容をスッキリと聴かせる。 | ||
シャオンガン・イェ:作品集 最後の楽園/冬/ピーパ協奏曲(*)/地平線 |
ヤンヤン・ワン(S) ソン=フー・リウ(Br) ウェイ・ルー(Vn) マン・ウー(ピーパ) イ・チェン指揮(*以外) ギュンター・ヘルビッヒ指揮(*) サールブリュッケン放送so. | |
中国出身の作曲家、シャオンガン・イェは、その作品が数々の国際的な賞を受賞した実力者。大陸間を忙しく行き来する人気の作曲家で、西と東の音楽文化をこよなく愛する美的放浪者でもある。 | ||
ペンデレツキ:エルサレムの7つの門(1996) | ボジェーナ・ ハラシモヴィチ=ハース、 イサベラ・クウォシンスカ(S) ヤドヴィガ・ラッペ(A) ヴィエスワウ・オフマン(T) ロムアルド・テサローヴィチ(B) ボリス・カルメーリ(語り) カジミエシュ・コルト指揮 ワルシャワ国立po.&cho. | |
エルサレム創都3000年を記念してイスラエル政府がペンデレツキに委嘱した新作。2000年のカンヌCD賞を獲得した。 | ||
D・ミュラー=ジーメンス(1957-):作品集 フェニックス1(13器楽奏者のための)(1993) フェニックス2(13器楽奏者のための)(1994) フェニックス3(13器楽奏者のための)(1995) ほとんど白に近い薄い青(11楽器のための)(1993) カッツ(アルト・サクソフォンとアンサンブルのための)(1996/1997) |
イェルク・ヘンネベルガー指揮 バーゼル・フェニックスEns. | |
録音:1999年8月28日-9月1日、バーゼル音楽大学。 | ||
18ヶ国60人の作曲家による60×60秒の世界 ダン・ワンパートン(マンチェスター):スピード・スタディI ジョナサン・カッツ(東京):ヴェンディゴ ダニエル・ランダウ(ハーグ):ロージング・イット・アゲイン カール・ファイア(パリ): 言わせていただいてもよろしいでしょうか ロジャー・クロイアー(ニューヨーク):車から離れて ドナル・フォックス(ボストン):叫び ジェイムズ・バイエ(レギーナ):欲望のデータベース ロベルト・アンドレオーニ(ミラノ):1分経っちゃったでしょ ブライアン・エスクリフ(トロント):メーソンとディクソン アニー・ゴスフィールド(ニューヨーク): ブルックリン。1941年10月5日 ポール・ボードワン(アルストン):Re:ダンス(PNMR) マレク・ゼブロフスキ(ロサンゼルス):エクス・テンポーレ ルイス・アンドリーセン(アムステルダム):開始じゃないでしょ クリストファー・クルポ(パリ):スパンコール イザーク・ゴルトシュナイダー(グラフェンハーゲ):42秒ピアノ リチャード・ブルックス(ブルックリン):興味の衝突 ダニエル・バース(ブリュッセル):ジョーク チャールズ・シェイドル(メドフォード):カウボーイの歌 ソフィー・ド・ヴィト(ロサンゼルス):だれに頼まれたんですか ぺぺ・トニーノ・カラヴァッジオ(サンディエゴ):エイト8 ウィリアム・ボルコム (アン・アーボー):60秒バレエ(鶏のための) ネート・ヒートン(ヴィリニュス):中野区 よしなかあつし(東京):春の宵(雅のうた) 他 全60曲 |
ギー・リビングストン (P、Perc) | |
「パリのアメリカ人」ピアニスト、奇人リビングストンが世界の友人たち60人にそれぞれ60秒の作品を依頼、それを演奏したのがこのCD。内部奏法やテープ増幅など現代的技法ももりだくさん。東京在住の作曲家も参加している。 | ||
テリー・ライリー(1935-): イン・C(ツィニョーリ++による再解釈版) |
ユーロピアン・ ミュージック・プロジェクト ツィニョーリ++ | |
録音:2001年4月19-22日、ケルン・ラジオ放送局ホール。 ライリーの代表作というだけでなく、ミニマル・ミュージックの古典的名曲として知られる「イン・C」が、ついにヴェルゴから登場。任意の数の演奏家が53のモチーフ(すべてアルバム・ブックレットに記載) を任意の数だけ繰り返して演奏するこの曲は、さまざまな有り様が可能。ここで演奏しているツィニョーリ++が「再解釈版」とクレジットしているのも、その点がかかわっている。 作曲家による自演ほか今までさまざまな演奏が録音されてきたが、今回の録音はいわばサイバー・トランス風。クラシックや現代音楽に興味のない人でも、この味を覚えたらはまりまくることまちがいなし、とのこと。 | ||
ケージ:パーカッションのための作品集 クレド・イン・アス(1942)/心象風景I(1939)/ インレッツ(1977)/心象風景III(1942)/ バット・ホワット・アバウト・ザ・ノイズ・オヴ・ クランブリング・ペーパー(1986) |
ヘリオス四重奏団 | |
一作毎に奇抜なアイデアで鮮やかに聴衆を裏切り続けてきたケージ。まさに当作品集は音楽を聴く行為の意味を問い掛ける刺激的な一枚。内容もヴァラエティ豊か。 コントラストの妙で聴かせる「インレッツ」は、循環呼吸法で1人が実際に法螺貝を吹き、別の3人が水の入った法螺貝を操り、パチパチと燃え上がる炎の音がアクセントとして加わるというもの。 「クレド・イン・アス」では、ピアノと空き缶が刻むガムラン調のリズムに乗って、アンチェル、ブーレーズ、ムラヴィンスキーなどの様々なレコード演奏(何が使われているかは聴いてのお楽しみ)がコラージュ風に扱われる。ケージの初期作品を演奏する目的で1986年に結成されたヘリオス四重奏団の演奏は、 作品の魅力を的確に伝えてみごと。優秀録音もポイント。 | ||
ヒンデミット:歌劇「世界の調和」(1957) | アルチュン・コチニャン (B:皇帝ルドルフ/ 皇帝フェルディナント2世) フランソワ・ルルー (Br:ヨハネス・ケプラー) ロベルト・ヴェルレ (T:ヴァレンシュタイン) クリスティアン・エルスナー (T:ウルリヒ) ラインハルト・ハーゲン (B:タンスール) ゾフィー・ラーソン (S:スザンナ)他 マレク・ヤノフスキ指揮 ベルリン放送so. | |
録音:2000年2月〜3月。 ヒンデミット晩年の力作オペラの世界初録音。先に初演された同名の交響曲は有名で、ヒンデミット自身の指揮によるこのオペラの演奏会形式上演(大幅なカット有り)のCDはあったものの、これまで全曲録音がなかったとは意外だ。17世紀初頭に活躍した天文学者ケプラーを主役に据えた、観念的で余韻の深い作品である。バイエルン国立歌劇場での初演の際、指揮を予定していたフリッチャイがオーケストラと対立しついに辞任してしまったという逸話も残っている。まさに適役といえるヤノフスキの指揮にも注目。 | ||
無秩序なハーモニー〜 フレスコバルディ&ケージ:44のハーモニー ジョン・ケージ:「ハーモニー」より [第18番/第26番/第35番/第11番/ 第14番/第15番/第42番/第3番/ 第38番/第5番/第28番/第19番] フレスコバルディ: カンツォーナ集第1巻〜 カンツォーナ「トロンボンチーナ」(第5曲)/ 通奏低音独奏(第2曲)/ カンツォーナ「ボヴィジア」(第1曲)/ 通奏低音独奏(第1曲)/ カンツォーナ「ベルナルディーナ」(第2曲)/ 「スペルバ」(第7曲) |
シュテファン・ フッソング (アコーディオン) マイク・スヴォボダ (Tb/A-Tb) | |
録音:2001年6月14-17日、ケルン・ラジオ放送局ホール。 今回収録された「44のハーモニー」は、1974年から1976年にかけて作曲された各作品の一部を集めたもので、合衆国独立200周年を記念して作曲された「アパートメント・ハウス 1776」 (14のチューン、4つの行進曲、2つのイミタツィオーネを含む)と類似の作品構成をとっており、また技法的にはサティの「ソクラテス」を基礎に作曲された「チープ・イミテーション」と同じく、 フレスコバルディのカンツォーナを基礎に作曲されている。フレスコバルディはルネサンス末期からバロック初期にかけて、いわばケージと同じ立場にあった革新的作曲家。上欄では分けて表記したが、 実際にはケージの曲がフレスコバルディの華やかな作品にはさまれる形で収録されており、ケージの曲はまるでグレゴリオ聖歌のような雰囲気である。 現代音楽を聴き慣れない人にも受け入れやすい外観であると同時に、ケージらしさも失われておらず、現代音楽ファンにも満足のいくアルバムに仕上がっている。 | ||
ベルント・アロイス・ツィンマーマン: メルヘン組曲(1950)/ カント・ディ・スペランツァ(希望の歌)(1957)/ 即興曲(1958)/ アラゴアナ(ブラジル奇想曲)(1950-1955) |
ルーカス・フェルス(Vc) ペーター・ヒルシュ指揮 ベルリン放送so. | |
録音:2001年1月20日&21日、自由ベルリン放送大ホール、ライヴ。 オペラ「兵士たち」で知られる、1970年に自殺を遂げたツィンマーマンは偏執的に自作の改訂を重ねた作曲家。1950年代、創作初期の作品を収めたこのアルバムも例外ではなく、 作品間の引用・転用も盛んで互いに渾然一体と結びついているのが特徴。世界初演の「メルヘン組曲」は、初の大管弦楽作品「シンフォニア・プロソディカ」の引用4曲に加え、新たに3曲を書き下ろしたもの。 ドライで粗野な響きの中にも独特のロマンティシズムが漂い、作曲者再評価の気運に大いに弾みを付ける内容。かのヴァントがギュルツェニッヒ時代に初演指揮した序曲を含む「アラゴアナ」は、 同名のバレエによる管弦楽組曲で、こちらも世界初録音。 | ||
ハンス・ウェルナー・ヘンツェ(1926-): 侵略交響曲(マラトンの墓の上で)(2001)(#)/ 4つのフルート、2つのトランペット、 2つのトロンボーンとティンパニのための 「アンティフォナ」(1960)/ ピアノ協奏曲第1番(1960)(*) |
クリストファー・タイントン(P;) ペーター・ルジツカ指揮 北ドイツ放送so. | |
(#/*)世界初録音。どんなに大きな編成でも、どこまでもすっきりと整った響きのヘンツェ作品。70代半ばで書いた近作でもセンスは鈍っていない。 | ||
クリスティアン・ヴォルフ(1934-):パンとバラ 1人、2人または3人のために 〜あらゆる楽器のための(1964)[I/II/III]/ エクササイズ27 〜スネアードラム・ピース・マーチ2(1988)/ 1人、2人または3人のために 〜あらゆる楽器のための(1964)[IV/V/VI/VII]/ パンとバラ(1976)〜ヴァイオリン独奏のための/ 1人、2人または3人のために 〜あらゆる楽器のための(1964)[VIII/XI/X]/ エッジ〜楽器、演奏者の数ともに指定なし |
マルコルム・ ゴールドシュタイン(Vn) マティアス・ カウル(Perc) | |
ヴォルフは生粋のアヴァン・ギャルド。ドアのきしむ音、ガラスをキーキーこする音、かと思えば唐突な叫び声・・・音楽を特別な存在で終らせたくないと考えるヴァルフは、曲をきいた人が不快な思いをしたり、あるいはそれを聴くことによって何かを考えずにはいられなくなるような音楽づくりをしている。「そもそも音楽とは何ぞや」と哲学してみたい方に。 | ||
シュトックハウゼン: 星座のための12のメロディー |
ウォルフガング・フェルナウ(Cb) ステファン・フッソング (アコーディオン) ミヒャエル・キーダイシュ (ヴィブラフォン) ミヒャエル・リースラー(バスCl) スコット・ローラー(Vc) マイク・シュヴォボタ(Tb) | |
古代からある「天体の音楽」という考え方に基づき、シュトックハウゼンが書いた作品。目を閉じて聴いていると、星と星とがぶつかり合いそうになりながら、音をたてて動いている様がまぶたに浮かんで来るようだ。 | ||
アルヴィン・ルシエ:すべてが夢(nothing is real) 遠鳴りの太鼓(増幅ドラムのための/1994)/ 管弦楽のための銀の路面電車 (増幅されたトライアングルのための/1988)/ 聖なるキツネ(ひょうたん、ボウル、箱、その他 共鳴する器を通した声のための/1994)/ 物体のあるオペラ(共鳴する物体を持った パフォーマーのための/1997)/ すべてが夢〜ストロベリー・フィールズ・ フォー・エヴァー(ピアノ、増幅された ティーポット、テープレコーダー、 ミニチュアサウンドシステムのための/1990) |
マティアス・カウル (Perc/声/P) | |
電気音楽の詩人、アルヴィン・ルシエ。ICCでの講演、またコンサートのためにしばしば来日している彼のファンは多いはず。今回は天才カウルを演奏者にむかえ、幽霊屋敷の中にいるような気分になれる音世界を提供している。1曲目の「遠鳴りの太鼓」はまるで雨漏り天井の下にタライを置いたような音の連続。5曲目は「ストロベリー・フィールズ・フォー・エヴァー」を基にしたもの。執拗なまでのモチーフの繰り返しを聴いているとレノンの顔が浮かんで来る。不思議と気分が落ち着いてしまうところがルシエのチカラなのだろう。 | ||
ジョージ・アンタイル(1900-1959):作品集 第5ソナタ(*)/粗野なソナタ/ 女性のソナタ(*)/第4ソナタ/第3ソナタ(*) |
ギー・ リビングストン(P) | |
(*)は世界初録音。戦前のアメリカ最大の問題児作曲家として悪名・名声ともに高いアンタイル。しかしこのCDに入っているソナタは、問題児どころかどことなくプロコフィエフ風で、「戦争ソナタ」を極限まで突き進めたらこんな感じになるのではという曲ばかり。リビングストンのさらりとした弾きこなしも恰好良い。 | ||
ヴィンコ・グロボカール(1934-): クワドラ/タッチャー(触れる人)/大地についての会話/ ?肉体的/引き裂かれたパンジー/陰/ 幽霊のリズムに乗って広がる女子同性愛者 |
マティアス・カウル (打楽器、声、 回転七弦琴[ハーディ・ガーディ]) | |
目をつぶれば東南アジアかと思うような打楽器の音色にのって、マティアス・カウルが叫ぶ叫ぶ。このうえなくクレイジーな音世界は、かなり上級者向け。 | ||
ヘンツェ:管弦楽作品集 バレエ・ヴァリエーション (Handlungsloses Ballet fur grosses Orchester)(ver.1998)/ コンチェルティーノ (管、打楽器のオーケストラとピアノのための)(1947)/ 室内で歌う人々「銀の薔薇」の声の織り地 (パウル・クレーの絵に基づくバレエ音楽)(rev.1990)/ 室内協奏曲(ピアノ、フルートと弦楽のための)(1946)/ 「孤独大通り(Boulevard Solitude)」〜間奏曲(1951) |
クリストファー・タイントン(P) マティアス・パール(Fl) ペーター・ルツィカ指揮 ハンブルクNDRso. | |
中で聴きものなのが室内協奏曲。伊福部をほうふつとさせるオスティナート風リズム、時に東洋、時にジャズの香りのピアノパート、自在に動き回るフルートと、ヘンツェのかっこよさに満ち溢れている。 | ||
ヘンツェ: 歌劇「ポッリチーノ」(おやゆびこぞう) |
フィリップ・ホルシュタイン (おやゆびこぞう) ライラ・フィッシャー (クロティルデ=人食い鬼の娘) ステファン・リセフスキ (オルコ=人食い鬼) テレーズ・アファルター (おやゆびこぞうの母親役) トーマス・シェンデル (おやゆびこぞうの父親役)他 ヨープスト・リープレヒト指揮 | |
「おやゆびこぞうのおはなし」を歌劇にしたもの。オペラというよりも、劇音楽といったほうがあたっているかもしれない。ストーリーは、「ヘンデルとグレーテル」 のお話の魔女が人食い鬼になったと思っていただければ当たらずも遠からず。親に見捨てられた子供たちが家をぬけだし、人食い鬼や狼など様々な困難に出会い、それらをくぐりぬけ、 ついには大人のいない国へと向かう物語。ヘンツェ自身が「子供のために」と書いた作品ではあるが、大人が聴いても十二分に楽しめる。ベルリン音楽学校の生徒たちによるオーケストラがなんとも絶妙な味わい。 | ||
ヘンツェ:ラジオ・オペラ「田舎医者」 | ローラント・ヘルマン(Br:田舎医者) ロデリク・M・キーティング(T:馬男) ヨナス・デコフ(少女ソプラノ;患者) マッテオ・デ・モンティ(B:父親) イゾルデ・ジーベルト(S:バラ、娘) ダフネ・エヴァンゲロートス(A:母) マルクス・ステンツ指揮 ケルン放送so. ケルン大聖堂cho. 小さな子供の合唱 | |
ヘンツェ:ラジオ・オペラ「この世の終わり」 (プロローグとエピローグを伴う) |
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ (語り手) フリーダー・ラング (T:落下していく男性の魂9 ダフネ・エヴァンゲロートス (A:マルケーザ・モンテトリスト9 ロデリク・M・キーティング (T:ドブロフスカ、二倍の天才) イゾルデ・ジーベルト (S:スガンバーティ嬢、星占術師) ロベルト・ボルク(Br: クンツ=サルトーリ教授、政治家) ゴットフリート・リッター指揮 ケルン放送so. | |
ヘンツェは、「舞台上ではなしえないことも表現できる」としてラジオ・オペラという形態を尊重していた。ここに収録されているのは、カフカの同名の小説に基づく「田舎医師」と、ヒルデシャイマーの小説「失われた愛の伝説」に基づく「この世の終わり」のふたつ。前者はカフカのシュールレアリズム、後者は容赦ない皮肉、このふたつの作品は切っても切り離せない。 「田舎医者」の舞台は冬。夜中、田舎の医者が重病人に電話で呼び出されるが、彼は自分の飼っていた馬が死んでしまったために十分な治療ができない。ある日、見慣れない人物がこの医者に二頭の新しい優駿を紹介する。医者は馬を追い返そうとするが付いて来るので飼うことにした。後にまた治療不可能な患者に出会って、この馬に乗って逃げようとしたら馬はいつまでも永久に走り続けたのであった、というなんともシュールな内容だが、芝居っけたっぷりな歌い手たちによってなんともそら恐ろしい雰囲気に仕上がっている。 「この世の終わり」もヘンツェには珍しい痛烈な社会批判(貴族主義への批判)で、切れ味鮮やかな管弦楽の扱いもみごと。 | ||
ルイージ・ノーノ(1924-1990):作品集 管弦楽のための作品第1(*)/ 赤いマント〜Der rote Mantel(全3幕)(1954)(#) (「ドン・ベルリンプリーンのベリサとの 庭での恋」に基づく〜ソプラノ、バリトン、 混声合唱とオーケストラのための/ エンリケ・ベックによるテキストのドイツ語翻案) |
アンゲリカ・ルッツ(S;#) イェルク・ゴットシック(Br;#) ぺーター・ヒルシュ指揮 ベルリン・ドイツso.、 RIAS室内cho.(#) | |
(#)は世界初録音。2004年のルイージ・ノーノ生誕80年を記念してのCD。「管弦楽のための作品第1」は1951年に作曲されたもの。もともとこれはプラハの共産主義者ジャーナリスト、フチーク (作曲家のフチークとはまったくの別人)についての作品で、二人の弁者と管弦楽のために書かれる予定だったが、当時の社会的事情からこの形では未完となり、後にオーケストラのみの作品として完成された。 音だけでは解りづらいが、この作品でノーノは音の素材を9つに制限しているという。 「赤いマント」ではアンダルシアの薫りがカスタネット等の木の楽器から感じられる。ところどころに聴こえる耳に残る金属音は「死」の告知。「すべての生が閉ざされたあと、黒い紙で作られた鳥がはらりと落ちて終わる舞台音楽のようです。」と代理店。 | ||
コンロン・ナンカロウ(1912-1997):練習曲と独奏曲 「プレイヤー・ピアノのためのスタディ」より (ピアノ・デュオ編曲版)(*) [9/6/4/3B/3C/3D/15/14/18/19/26]/ ウルスラのための3つのカノン(1988)(#) [カノンA(5:7)/カノンB(6:9:10:15)/カノンC(2:3)]/ タンゴ?(1984)(+)/三部からなる舞曲(1940年代初頭)(+)/ プレリュード(1935)(*)/ブルース(1935)(#)/ ソナティーナ(1945頃)(*) |
ブガッロ=ウィリアムズ・ ピアノ・デュオ(*) [ヘレナ・ブガッロ(P;#) エイミー・ウィリアムズ(P;+)] | |
ナンカロウといえば、プレイヤー・ピアノ。ナンカロウはとてつもなくリズムに対して厳密な人で、自分の作品が少しでも間違ったリズムで演奏されることに我慢できなくなってしまい、
人間が演奏するのが不可能かと思われるほど複雑で細かいリズムの作品をプレイヤー・ピアノのために書くようになった。 このCDはプレイヤー・ピアノのための作品を、実際に生身の人間が演奏したというもの。あまりにも難しい作品はピアノ・デュオに編曲されているが、編曲する人も演奏する人も、とてつもなく大変だったことが想像できる。出来上がった音はきわめて恰好が良く、襟を正したジャズのようでもある。 | ||
B.A.ツィンマーマン(1918-1970):作品集 ほんのわずかの無 (マルセル・エイメの「月の鳥」にちなんだ、 明るく三日月形で、鳥類学的な音楽; 小編成のオーケストラのための;1964) [夜の女序曲/月による変身 I/軍人達のやかましい足音/ 月の小ワルツ/小鳥を強制的に眠らせる子守歌/ 月による変身 II/月の光のブギ・ウギ]/ 黄色なるものと緑なるもの (フレッド・シュネッケンブルガーの 人形劇劇場のための音楽;1952) [プロローグ/ブルレスケ/小さなワルツ/ 幻影的魅力/行進/エピローグ]/ オムニア・テンプス・ハーベント (ソプラノと17の楽器のためのカンタータ;1957)(*)/ メタモルフォーゼ(1954) |
アンゲリカ・ルッツ(S;*) ペーター・ヒルシュ指揮 コレギウム・ノヴム・チューリヒ | |
「月の鳥」は、フランス童話界の重鎮ミヒャエル・エイメ(劇団四季でもおなじみの「壁ぬけ男」を書いた人)による物語。月の光によって不思議な力を得て、自分のきらいな人を鳥に変身させることができるという、風変わりなセンセイのお話。ツィンマーマンは、バレエ音楽としてこの作品を書いた。はずかしいくらいにメルヘンチックな世界ではあるが、風変わりなセンセイがなにやらあやしげな奇術をつかっているさまが目に浮かぶような曲である。音質もきわめて良好。(*)は、輸入元の紹介文によれば「アブノーマルながらもたのしめるものとなっております」とのこと。 | ||
ジャチント・シェルシ(1905-1988): スオーノ・ロトンド(丸い音)〜ソロ&トリオ即興作品集 マントラ−題名のない歌(独奏楽器のための;1987年版)/ インプロヴィゼーション VIII/ 3つの断片(トロンボーン独奏のための;1956)/ インプロヴィゼーション VI/同 III/ Ko-Tha シヴァの踊り(打楽器のように奏するキタラのための)/ インプロヴィゼーション XI/同 XVII/ 深い目覚め(夜 II;コントラバス独奏のための;1972)/ インプロヴィゼーション X |
ミヒャエル・キーダイシュ (Perc、G) ステファノ・スコダニッビオ(Cb) マイク・スヴォボダ(Tb) | |
シェルシは東洋の神秘に影響されたイタリアの作曲家で、トランス状態で即興演奏し、他者がそれを採譜するという作曲スタイルをとるという一風かわった手法の持ち主で、生涯にわたって異端視され続けた。彼の自筆の楽譜はひとつも存在せず、顔写真もほとんど誰も見たことがないらしい。作品を聴いてみると魔術的な魅力に満ちており、即興的に積み上げられていくモチーフやリズムは、時としてミニマルミュージックのような、時として広い洞窟やお寺の中に一人でいるような錯覚をおぼえるような、実に不思議な世界となっている。 シェルシの生誕100周年にあたる2005年、ここでキーダイシュ、スヴォボダ、スコダニッビオという3人の現代音楽のエキスパートが全力でシェルシの即興世界を再現している。シェルシの作品の中には高橋アキに献呈されたものもあり、今後その筋の人の注目度が高まってくるかもしれない。 | ||
ヘルベルト・ウィリ(1956-):管弦楽作品集 トランペット協奏曲「エイレーネ」 (「モンタフォン」(2001)から)(*)/ 空間(+)/ …かなり長いとき…(フルート、オーボエと 管弦楽のための協奏曲;「モンタフォン」から)(#)/ 出会い(**)/ ロンディーノ(歌劇「眠れる兄弟」から)(++) |
ラインホルト・フリードリヒ(Tp;*) ウォルフガング・シュルツ(Fl;#) ハンスイェルク・ シェレンベルガー(Ob;#) ギュンター・ヘルビッヒ指揮(*/#) ペトリ・サカリ指揮(+/++) マイケル・スターン指揮(**) ザールブリュッケン放送so. | |
ウィリはメシアンにも師事したことのある天才肌で、時に日本のおはやし、時にジャズを思わせるなんとも新鮮な作風の持ち主。その作品がアバド指揮ウィーン交響楽団や小澤征爾指揮ウィーン・フィルによって初演されるなど、ウィリは今、まさに飛ぶ鳥を落す勢いで。 ラインホルト・フリードリヒは2004年9月にアルミンク指揮新日本フィルとの共演で「エイレーネ」を日本初演、大喝采を受けた。「モンタフォン」というアルプスの峠を題名とした組曲の幕を開くのがこの「エイレーネ」。冒頭から高らかに鳴り響くトランペットは、上を下へのまるでお祭りのような大騒ぎでなにやらただならぬことの始まりを予感させるが、なんといってもこの協奏曲の白眉は第2楽章。ジャズ風な響きの中でトランペットが何度もヒヒーンといななく。この協奏曲ではトランペット奏者はC管、B管の両方において熟練の技術を要求される。他のプログラムも豪華演奏陣に彩られ実に見事、故アイザック・スターンの愛息マイケル・スターンもこれまた格別の味わい。 | ||
ディーター・シュネーベル(1930-): ORCHESTRA(持ち運べる楽器の奏者のための交響楽的音楽) (1974-1977) | ||
「オーケストラ」というと、楽員たちは座席にはじまり、奏法などもかなり様々な制約を受けざるを得ないが、それを解消しようという試みとして作曲されたのがこの作品。30年ほど前に作曲されたにも関わらず、この作品はオーケストラという概念に対する挑戦として、常に新しい存在と受け止められている。 | ||
テリー・ライリー&ステファノ・スコダニッビオ: ダイアモンド・フィドル・ラングイッジ I(*) トリトヌス(三全音)(+) ダイアモンド・フィドル・ラングイッジ II(#) |
テリー・ライリー (シンセサイザー、声) ステファノ・スコダニッビオ(Cb) | |
録音:1998年11月28日(*)、2000年4月26日(+)、1999年10月8日(#)、すべてライヴ。 さすがインド音楽の研究に明け暮れたライリー、実にインドなシンセである。さらにインド音楽未経験だった名手スコダニッビオのコントラバスが信じられないほど多彩な音色で、時にシタール、時にはドラム的効果も醸し出しており、なんとも不思議な風合いに。インド音楽っぽいとはいえ、シタールを聴くときのような恍惚感にも似た状態に陥ることを決して許さない奇妙な冷静さがあり、否が応でも自分と向き合わざるを得ないような、ちょっとコワイ感覚をおぼえる。ディープなトランス世界体験希望者向け。 | ||
パウル・ヒンデミット(1895-1963):歌劇「長いクリスマスの晩餐」 | ルート・ツィーザク(S:ルチア) ウルズラ・ヘッセ・ フォン・シュタイネン (Ms:マザー・ベイヤード) ヘルマン・ヴァレン (Br:ロデリック) アルチュン・コチニャン (B:ブランドン) クリスティアン・エルスナー (T:チャールズ) 他 マレク・ヤノフスキ指揮 ベルリン放送so. | |
録音:2004年8月16-24日。 ヒンデミット晩年のオペラで、1961年12月17日にマンハイムで作曲者自身の指揮で初演された。時間にして50分弱という短い1幕もので、合衆国のある一家のクリスマス・ディナーの様子が、あれよあれよと時代が一世紀近く下がっていくという、不思議な物語。ヒンデミットのオペラの多くがCDになっているなか、この「長いクリスマスの晩餐」だけは、なぜか日本語訳詞上演のライヴCDしかなかった。今回はドイツ語による初録音。しかも名匠マレク・ヤノフスキの指揮に、ツィーザクや・ヴァレン以下優れたキャストで、万全。 | ||
ヴォルフガング・リーム(1952-): 天球をまわる天球 問いかけ |
ルーカス・ヴィス指揮 アンサンブル・レシェルシュ サロメ・カンマー(Ms) | |
鋭く硬く美しい響きの作品集。「天球をまわる天球」は宇宙にいるかのような錯覚をおぼえる音響。「問いかけ」は5曲からなる組曲で、それぞれリームの親友の描く絵に着想を得て作曲された。世界を堪能できる一枚。 | ||
ベリオ: カンティクム・ノヴィッシミ・テスタメンティ (4つのクラリネット、 サクソフォン四重奏と8つの声のためのバッラータ) ア=ロンネ(5人の役者のためのラジオ的ドキュメンタリー;1974) |
ペーター・ルンデル指揮 ノイエ・ヴォーカルゾリステン・ シュトゥットガルト ニューワーズ4・クラリネッツ クササックス | |
録音:2003年12月。 ベリオがエドアルド・サングイネーティの詩のために作った二作品。「カンティクム・ノヴィッシミ・テスタメンティ」は独特のニュアンスが不思議な作品。「ア=ロンネ」は英独仏伊語と意味不明語の歌詞によるごった煮という感じである。 | ||
さわって! でもさわっちゃイヤ! 〜テルミンのための作品集 オルガ・ボキヒーナ(1980-):カント・オスティナート カスパール・ヨハンネス・ヴァルター(1964-): 真空状態そして幻覚 ニコラウス・リヒター・デ・ヴロエ(1955-):テルミン島 ミカエル・ヒルシュ(1958-):叙唱とアリア ユリアン・クライン(1966-):おのぞみならば ヴラディミール・ニコラエフ(1953-):白と黒の音楽 モーリッツ・エッゲルト(1965-): ドラキュラの娘の息子 vs (宇宙の彼方からやってきた) おそろしいフランケンシュタインの戦い イライダ・ユスポヴァ(1962-):見えざる町キテジ-19 |
リディア・カヴィナ、 バーバラ・ブフホルツ(テルミン) ベルリン新音楽室内アンサンブル テープ | |
「ついにWERGO からテルミンのCD が登場です。オススメは7 トラック目。冒頭、ドラキュラのホゲゲゲゲという笑い声の模倣のようなものを聴いていると気分はもうすっかり『怪物くん』の世界。ドラキュラだけでなくオオカミ男など、題名に出てくる以外の妖怪(?)も豪華総出演といった感の作品です。トラック6 もオススメ。2人の名手による2台のテルミンの激しいかけあいは、丁々発止でなかなか見事ではありますが、しかしどう聴いても歯医者の治療のあのイヤーな『キュイーン』音にしか聴こえません。トラック8 の「見えざる町キテジ」は、ソヴィエト時代の秘密衛星都市で、核実験なども行われた町を暗示しています。ユスポヴァ自身このキテジなる地に住んだことがあり、地図にもないこの町に対して常に感じている忘れがたき郷愁を鎮めるために書いたということです。 クラシックの名曲をカバーした演奏CD は数あれど、テルミンのためにかかれたオリジナル作品を集めたCDはまだそう多くはありません。テルミン奏者の二人はともにモスクワで本格的にテルミンを学んだ実力派。特にリディア・カヴィナは、レオン・テルミン博士(映画『テルミン』にも実際に登場するテルミンの第一人者)の縁戚(姪)にあたり、血筋、実力ともに現代を代表するテルミン奏者です。作曲家陣も、ショット社オススメの新進気鋭の若手ばかり。この機会に是非、テルミンの魅力に120%どっぷり浸かってみてください! 重度の虫歯のある方がこのディスクのトラック6 を聴かれた際に生じてしまった問題等は、弊社では責任を負いかねますのでご注意ください。」と代理店。 | ||
ヘンツェ(1926-): 鉄条網の向こうのオルフェウス(*) アリスタエウス(+) |
ロビン・グリットン 指揮ベルリン室内cho.(*) マルティン・ヴットゥケ(語り手;+) マレク・ヤノフスキ 指揮ベルリン放送so.(+) | |
ヘンツェは今年で80歳になるが、ますますその創作意欲は衰えず、新しいものを提示し続けている。当盤の収録曲は少し前の作品ではあるが、いずれも世界初録音。ともに「オルフェウスとエウリディーチェ」の物語にまつわる内容を持っている。 神話の世界の時代、音楽の名人オルフェウスと結婚して間もないエウリディーチェは、蛇にかまれて命を落とす。黄泉の国からエウリディーチェを連れ戻すために、オルフェウスは地獄の番人に得意の歌を聴かせて門を開かせることに成功する、地上に戻るまで決してエウリディーチェの方を振返ってはならないという約束を破ってしまい、エウリディーチェと再び引き裂かれてしまう。 両曲とも、詩の主体は時にオルフェウス、時にエウリディーチェ、時に傍観人、と様々であはあるが、この悲話を現代音楽劇に置き換えたものとなっている。「アリスタエウス」は詩の中にでてくる人物で、エウリディーチェを死にいたらしめた蛇を先祖にもつとされている。かたや清澄な無伴奏合唱の世界、かたや色彩豊かな絡み合う管弦楽を伴うドラマと、ヘンツェの芸術の真骨頂を味わうことができる。 | ||
アリベルト・ライマン(1936-): ソロ(チェロ独奏のための)/ アリア(チェロとピアノのための)(*)/ ノクトゥルヌ(チェロとハープのための)(*)/ 道(3つのピアノ作品)(*)/ソナタ(チェロとピアノのための)(*) ソロ II(チェロ独奏のための)(*) |
ウェン・シン・ヤン(Vc) アクセル・バウニ(P) クリスティーナ・ビアンキ(Hp) | |
声楽・舞台作品の作曲家として特に人気のあるライマンの、室内楽作品を収録。ライマンはベルリン芸術大学の教授を務め、声楽にも造詣が深く、声楽の伴奏をしている録音もある。冒頭の「ソロ」で聴かれるのは、四方に何も見えない砂漠の中で瞑想にふけっている僧が観た幻影のような、聖と俗、静と動が入り混じった混沌とした独特の世界。ノクトゥルヌも、夢幻的というか禅というか、ちょっと不思議な独特の世界。 | ||
ラッヘンマン(1935-):作品集 tem A(フルート、歌声とチェロのための)/ トッカーティーナ (ヴァイオリン・ソロのための練習曲)/ プレッション(一人の女性チェリストのための)/ 無題(一人の女性クラリネット奏者のための)(*)/ アレグロ・ソステヌート |
アンサンブル・フォルミンクス | |
「特殊奏法のデパート」ラッヘンマンの作品集。フルート一本と声、チェロによる「ヒョロヒョロかっぽん」お化け屋敷の再現風作品「tem A」以外、ボリュームを最大限に上げても殆ど何も聴こえず、何をしているかあまりよくわからないという極小音量で展開される作品ばかりのキワモノ的一枚。 たとえば(*)も極小音量作品ではあるが、しかしよくよく耳を澄ましてみると、超絶技巧が展開されているもようだ。『演奏者はややマゾヒスティックな快感をおぼえる人物でないと演奏できないものと思われ』るとは代理店の弁。これらはすべて、作曲をとおして楽器を人々に再認識させる、というラッヘンマンの独特な思考の産物。また代理店は、前項とは矛盾するようだが(*)で『クラリネット奏者がキーをタポタポ押すだけで、こんなにも色々な音色が出るものかと驚かされ』るとも述べている。 | ||
ストラヴィンスキー・ イン・ブラック・アンド・ホワイト 〜ストラヴィンスキー作品の、 作曲者自身による2台4手のための編曲集 春の祭典(1913)/ 弦楽四重奏のための3つの小品(1914)/ ダンバートン・オークス 協奏曲 変ホ長調(1938)/ 七重奏曲(1953)/ムーヴメンツ(1959)/ ダンス(1台4手のための)(1914) |
ブガッロ=ウィリアムズ・ ピアノ・デュオ | |
完璧無比にして無敵の美女ピアノ・デュオ、ブガッロ=ウィリアムズ・ピアノ・デュオによる最新盤は、ストラヴィンスキー作品集。 「春の祭典」のドライかつスポーティなリズム感覚は驚異的、オケ版をもしのぐ迫力と力強さで圧倒する。「ダンバートン・オークス協奏曲」は、ストラヴィンスキーがアメリカに永住する前、結核を患った娘がジュネーヴのサナトリウムで療養していた頃、ヨーロッパで書かれた最後の作品。当時彼はバッハの音楽をよく聴き、自身ピアノでよく演奏もしていた。新古典様式の結晶のような存在とされるこの作品、冒頭からブランデンブルク協奏曲の第3番の冒頭に似ているなど、バッハの影響がいたるところで見られる。 今回の録音でデュオの二人は、オーケストラ版の楽譜に細かく指示されている、作曲者によるアーティキュレーションを活かしており、ひとつひとつのモティーフが活き活きくっきりと演奏されている。「ムーヴメンツ」は、ウェーベルンの「5つの小品」を思わせる、無調風のセリー音楽で、リズムや強弱の対比が一番のポイントとなる作品だが、無敵のピアノ・デュオは100点満点の演奏を繰り広げている。 | ||
ソフィア・グバイドゥーリナ(1931-):作品集 破滅に瀕して (7つのチェロと2つのアクアフォンのための)(*)/ 深遠なる(バヤンまたはアコーディオンのための)(#)/ 四元数(4つのチェロのための)(+) イン・クローチェ(チェロとアコーディオンのための)(**) |
ユリウス・ベルガー(Vc;*/**) ヨン=ユン・ファン、 ニクラス・エッピンガー(Vc;*) アレクサンドラ・オアール、 ユーハン・チョイ、 ディエゴ・ガルシア、 テイ=ヤン・ツァン(Vc;*/+) ソフィア・グバイドゥーリナ、 ヴィクトール・ススリン (アクアフォン;*) ステファン・フッソング (バヤン;#/ アコーディオン;**) | |
1曲目の「破滅に瀕して」は、チェロの楽器本体のへりから上の指板で奏でられる、高音域による(時にはフラジオレットとなる)グレゴリオ聖歌の「怒りの日」が印象的な作品。また、2曲目は、名手フッソングによるバヤンが堪能できる曲。冒頭は低い音域で楽器自体ががたがたと鳴っているが、曲が進むにつれて高揚とともに音域も高まり、宇宙遊泳をしているような雰囲気の音楽となる。 グバイドゥーリナはハンブルクにほど近いアッペンという村に居をかまえている。そこの庭は、かつて日本を訪れた際に持ち帰ったシダが生い茂り、彼女の家の中には、ロストロポーヴィチがプレゼントしたというスタインウェイのグランドピアノをはじめ、クラシックの楽器のみでなくアジア各地の伝統的な楽器が実に数多く置かれている。このディスクに収められているのも、チェロといったクラシックの楽器のみならず、グバイドゥーリナ自身によるアクアフォン、さらには名手フッソングによるバヤンも含まれており、彼女の中に広がる、深い思考に満ちた音楽世界の一端に触れることが出来る。 | ||
ハラルド・ヴァイス: 静かな壁(弦楽四重奏とテープのための;全15曲) |
ノモスSQ | |
スタジオジブリ系の映画のサントラを髣髴とさせるサウンド。ヴァイスといえばどちらかといえばヒーリング、ニューエイジ系の世界で大物だが、このたび弦楽四重奏のための作品が登場。弦楽四重奏の音色が波のようにひたひたと聴くものの心に寄せては返す。どこまでも優しい雰囲気の作品で、さすがヒーリングの大家、何を書かせても実にじっくりと心にしみてくる。ただひたすら癒されたいという方に是非おすすめの一枚。 | ||
ジャチント・シェルシ(1905-1988): やぎ座のうた Canti del Capricorno (女声と楽器のための20の歌;1962-1972) |
平山美智子 (声/ゴング/リコーダー) ウルリヒ・ クリーガー(Sax) マティアス・バウアー(Cb) ユルゲン・グレーツィンガー (Perc) ローランド・ ネッフェ(Perc) | |
かけた途端、ゴングの刻むリズムにのって、女声によって淡々と唱えられるおそろしい呪文か念仏のような言葉、言葉、言葉。 「2006年5月、ウルム市のなんとも穏やかな春の夜、ファーの分厚いコートを着、医療用のマスクで顔を覆った小柄な人物がホテルから出た―その名はヒラヤマミチコ、82歳にして現代音楽の偉大な「singer」、そして、伝説と謎に包まれた作曲家シェルシの「ミューズ」であった人物に他ならない・・・。(中略)彼女はローマからやってきた。ポケットの中には、聖典のように大切な、シェルシの「Canti del Capricorno」の楽譜を携えて・・・。(ライナーノーツより)」 この平山美智子氏は、1924年生まれ。1940年代の東京で学び、その後渡欧。イタリアをはじめ各地のオペラ劇場で、蝶々夫人などを歌う歌手であった。シェルシに初めて出会ったのは1957年。彼女の友人が、シェルシのアパートの部屋の真下に住んでおり、彼女の家でのパーティーにシェルシも平山も招かれていたことが始まりだった。シェルシは、平山の歌う日本民謡に強く興味をしめした。彼は毎晩夜の11時から明け方の4時まで即興演奏をすることを日課としており、平山はその即興演奏を彼の部屋の前の階段にうずくまりながら聴いて、シェルシの音楽を少しずつ理解するようになった、という。シェルシは「生まれついてのパーカッショニストだった」と平山が述べているように、声楽にも、ほかの楽器にも打楽器的要素が強く見られるこの20の曲からなる作品、平山は時に呪文や経典を唱えるように、時に心のうちをすべて吐き出すように、時に動物的な声まで、縦横無尽、変幻自在に力強い歌唱を聞かせる。これで82 歳・・・ものすごい。 | ||
the drum speaks〜ドラムは語る 朗読「私の心を見よ」 クラウス・ヒンリヒ・シュターマー: Ndim Lo 朗読「地獄の保護」 クラウス・ヒンリヒ・シュターマー: 夢をみないことを夢見る夜(*) 朗読「グァバ・ジュース」/同「スペア」 クラウス・ヒンリヒ・シュターマー:チャカ 朗読「音楽ゲリラ讃」 クラウス・ヒンリヒ・シュターマー:ウンラバ(+) 朗読「レッド・ソング」/同「リーン・ブルース」/ 同「トラック・オブ・トラックス(トラックの痕跡)」 クラウス・ヒンリヒ・シュターマー:ルガーディ(+) 朗読「わが祖国への愛の詩」 クラウス・ヒンリヒ・シュターマー:歳をとらない夜−祈り(+) |
サンディル・ディケーニ(朗読) カリン・レヴィン(Fl;*) ジェニファー・ハイマー(P;*) ステハン・フロレイクス、 オラフ・パイラス(打楽器;*) オンファロ四重奏団(打楽器) アンドレアス・ケーニヒ、 アキ・ホフマン(P;+) | |
日本の横笛を思わせる鬼気迫る迫力のフルートの焦燥感、閉塞感を抜け出そうとする旋律に、アフリカの打楽器のリズムが絡み、ドラマティックな物語的世界を繰り広げていく。曲と曲の間に入る詩は、サンディル・ディケーニという南アフリカ出身のジャーナリストでもある詩人が、政治的理由で牢獄に入れられていたときに創作したもの。自己の存在を認められないもどかしさと閉塞感、死についての考察など、人生についての深い考えが反映された主題の詩が多くみられる。詩人本人による朗読のため、韻をふんでいる箇所、詩の山場などの表現も実に巧みで、朗読自体がなにか歌曲を聴いているかのような説得力をもってせまってくる。入る音楽も詩の内容と連動したもので、なかなか奥深い一枚である。 | ||
ウルリヒ・シュトランツ(1946-2004):作品集 nicht mehr- noch nicht(もはや、まだ)〜 室内アンサンブルのための(1971/1981)(*)/ Contrasubjekte(B-A-C-Hの名にもとづく 14人の弦楽奏者のためのパッサカリア)(1980)(#)/ ピアノとオーケストラのための音楽第2番(1992)(+)/ ダンス音楽(1990、セレナードより) 2つの管楽四重奏とコントラバスのための(**)/ Anabasis(1970)ピアノ・ソロのための(##)/ 文脈の外で(1997) 3つの部分からなる、新しい楽器のための音楽(++) |
H.P. インデアミューレ(Fl;*) H.エルホースト(Ob;*) K.ウェーバー(Cl;*) H=J.バーリッヒ(打;*) O.ゼーガー(P;*) M.デルングス(Cem;*) H.フォースター(Va;*) M.リーヒティ(Vc;*) ラート・チュップ指揮(*) ハンス・シュタットマイア指揮(#) ミュンヘン室内o.(#) ティモン・バルト(P;+) クリストフ・ エッシェンバッハ指揮(+) チューリヒ・トーンハレo.(+) クリスティアン・ ジーグマン指揮(**) バンダ・クラシカ(**) ゴットフリート・ ヘフェーレ(P;##) リノス・アンサンブル(++) | |
ウルリヒ・シュトランツは、ミュンヘン育ちの作曲家。ドイツ国内で、次世代を担う期待の新進作曲家として活躍していた。間を大切にし、音がどんなに多く重ねられ大きくなっても失われない透明感を持つ作風が特長。ドライな部分があまりなく、あたたかみのある音楽が魅力。「音楽は物質世界を超えて人々と対話することのできるひとつの方法」と述べており、彼の音楽的宇宙を体感することが出来る。 | ||
シチェドリン: ポリフォニーの手帳 (25のポリフォニック前奏曲) Op.50 (1972)(*)/ 12の前奏曲とフーガ (# 系)Op.29 (1964)(#)/ 12の前奏曲とフーガ (♭系)Op.45 (1970)(+) |
ロディオン・ シチェドリン(P) | |
録音:1973年(*)、1966年(#)、1971年(+)。原盤:MELODIYA 。 バレエの女王プリセツカヤの夫君にして旧ソ連を代表する現役作曲家ロディオン・シチェドリン (1932-)による、ピアノの代表作2篇の自作自演。彼はヤコフ・フリエール門下のピアノの名手で、自作の演奏にかけては他の追随を許さぬ神業を示す。「24の前奏曲とフーガ」はショスタコーヴィチの同名傑作以後もっとも優れたもので、非常に充実した内容と高度なピアノ技巧を堪能出来る。 | ||
シチェドリン:自作自演によるピアノ作品集 ピアノ・ソナタ Op.25/ 若者のための手帳 Op.59(全15曲)/ バレエ音楽「せむしの子馬」〜3つの小品/ ユモレスク/アルベニスを模して/ 2つのポリフォニックな小品/ バッソ・オスティナート/ |
ロディオン・シチェドリン(P) | |
録音:1964年、1983年、モスクワ。原盤:MELODIYA。BMGとの提携時代にCD発売されて以降、入手出来なかった録音。 モスクワ音楽院でヤコフ・フリエール門下だったシチェドリンは、ロシアの作曲家の伝統にもれず、ピアニストの腕前も卓越している。当アルバムはシチェドリンの代表的なピアノ曲の自作自演集。思いのほかデリケートで、説得力満点。かつてメロディアからLPが、BMGからCDが発売されていたが、現在入手不可能となっていたので大歓迎の再登場。 | ||
アレクサンダー・ゲール(1932-): Symmetry Disorders Reach (対称的な無秩序が到達するもの) |
ヒュー・ワトキンズ(P) | |
録音:2005年。 アレクサンダー・ゲールは、シェーンベルクに師事していた作曲家(で指揮者の)ワルター・ゲールを父に持つ音楽名家出身。ベルリンに生まれたがイギリスで育ち、パリとダルムシュタットでメシアンに師事。その後1960年代にはBBCのプロデューサーとして活躍、その後は様々な大学で教鞭をとり、ジョージ・ベンジャミンも門下生の一人。当盤の曲集に含まれる「メートル法の迷路」はベンジャミンに献呈されている。この人が書くピアノ曲の傾向は、聴きやすいシェーンベルク風といったところ。曲によっては、間延びしたジャズのようなしゃれた和声も聴かれる。 | ||
ジョン・ケージ(1912-1992): チェロのための作品集 ソロ・フォー・「チェロ」(1958) / 一人の弦楽器奏者のための 59秒1 / 2 (1953) / アトラス・エクリプティカリス (2つのチェロのための)(1961) / 変奏I (1958)(ガウヴェルキ編 によるチェロ独奏版) / Etudes Boréales(1978) (チェロ独奏のための) |
フリードリヒ・ ガウヴェルキ(Vc) | |
CDをかけた瞬間から、宇宙で原子がぶつかりあっているかのような、プリミティヴな世界が展開されており圧倒される。孤高の奇才チェリスト、ガウヴェルキは、ケージの作品をボディ・ペインティングのように激しい弓使いで進めて行く。「ジョン・ケージ」という険しくそそり立つ氷山の一角に昇り、そこで裸で踊っているような、命がけの演奏。4曲目の「変奏I (1958)」はガウヴェルキ編によるチェロ独奏版だが、偶然性の音楽の最たるもの。ガウヴェルキの神がかり的な弓さばきによって織り成される音世界は、人間の内奥の叫びのよう。最後におさめられたEtudes Boreales は、同じ題名でピアノのためにも同じ長さの曲が書かれており、このチェロのためのものとピアノのためのものを同時に演奏することもできるというもの。意識の奥底に押し込められている狂気を呼び覚ますような作品。 | ||
レベッカ・サウンダース(1967-):作品集 blaauw/ブルー・アンド・グレー/デュオ/ ヴァーミリオン/興奮した静けさ |
ムジーク・ファブリーク | |
どれも管楽器が活躍し、絶妙な「間」を感じさせる作品ばかり。決してやかましい音楽ではないが、心臓をわしづかみにされるような鬼気迫る感じが漂う一枚。 | ||
トビアス・ピッカー(1954-):作品集 ウルスラのための4つのエチュード/古い失われた川/ ピアノのための3つの作品/川の流れ着くところ/ 甘き声が息絶えるとき/ブルー・フラ/ キーズ・トゥ・ザ・シティ(*) |
アーシュラ・オッペンス(P) トビアス・ピッカー(P;*) | |
現代ものの名手、アーシュラ・オッペンスによるピッカーの作品集。ドライになりすぎず、しかしポリリズムなども的確に演奏しており、芯が一筋通った説得力のある演奏。終曲のキーズ・トゥ・ザ・シティ(keys to the city)はマンハッタン島とニューヨークのブルックリン区を結ぶ、ブルックリン橋にまつわる様々なエピソードを音楽化したものといわれている。 | ||
ナンカロウ没後10年記念 コンロン・ナンカロウ(1912-1997): 弦楽四重奏曲第1番/弦楽四重奏曲第3番/ プレイヤーズ・ピアノのための練習曲 [第15番(弦楽四重奏版/ イヴァー・ミカショフ編)(*)/ 第31番(弦楽四重奏版/ポール・アッシャー編)(*)/ 第33番(弦楽四重奏版/ポール・アッシャー編)(*)/ 第34番(弦楽三重奏版/作曲者編)(*)]/ ヴァイオリンとプレイヤーズ・ピアノのための トッカータ/ プレイヤーズ・ピアノのための三部作(*) [ A=72 / B=50 / C=92 ] |
アルディッティSQ プレイヤーズ・ピアノ (コンロン・ナンカロウ) | |
録音:2004年-2005年。(*)は世界初録音。 ナンカロウといえば、技術的に異常に困難な上に、細部にわたるまでくどいまでのテンポや強弱の指示のあるピアノ曲を書き、人間が演奏したものに決して満足できずに、ついにプレイヤーズ・ピアノ(代理店は「穴を開けたロールを中に入れ、そのロールを回転させることによってピアノ動かし[代理店記載ママ]正確無比な演奏が得られる自動ピアノ」と記している)のために作品を書いたという、自分のこだわりを貫きとおした20世紀最大の奇人作曲家。しかしその作品はジャズ風のもの、小気味よいリズムと軽めの和声など、おおいに楽しめる。 ナンカロウが33歳のときに書いた弦楽四重奏曲第1番は、美しい和声を用いたミニマル・ミュージック風な部分あり、新古典風の要素あり、で、普通に「いい曲」。23歳(1935年)に書かれたトッカータは、最初は生身の人間が弾くピアノのためにかかれたが、演奏が難しい急速なテンポによる連打があるため、1980年代に、ナンカロウ自身がプレイヤーズ・ピアノの適用を決めた。音がめまぐるしく駆け巡るさまは快感すら覚えるが、この録音にあたって、スタジオ内にはアルディッティのファーストヴァイオリン奏者とプレイヤー・ピアノだけがいた(あった)だけだと想像すると、なんともいえない感じがする。1987年、75歳のときに書かれた弦楽四重奏曲第3番では、さすがナンカロウといった感じで、終楽章でアッチェレランド(次第に速度をはやめ、音も大きくなる)の部分があるが、各パートでその加速の割合が厳密に定められている(第1ヴァイオリンは3%、第2ヴァイオリンは4%、ヴィオラは5%、チェロは6%)など、よくそこまで、と逆に感心してしまう指定ぶり。 迎えうつは現代ものを弾かせたら右に出るものはない団体、アルディッティ弦楽四重奏団。弦楽四重奏曲第3番は彼らのために書かれた作品とあって、正確無比な演奏が展開されている。聴けば聴くほど、ほんとによく演奏したなと感心の出来栄えとなっている。 | ||
初演メンバーによる貴重な演奏がCD化! ベルント・アロイス・ツィンマーマン(1918-1970):歌劇「兵士たち」(4幕) ミヒャエル・ギーレン指揮ケルン・ギュルツェニヒo. ゾルタン・クレーメン[ケーレメン?](B;ヴェーゼナー) エディット・ギャブリー(S;マリー) ヘルガ・イェンケル(Ms;シャルロッテ) マウラ・モレイラ(A;ヴェーゼナーの老母) クラウディオ・ニコライ(Br;シュトルツィウス) エリザベート・シェルテル(A;シュトルツィウスの母) リアーネ・シネク(Ms;ド・ラ・ロッシュ伯爵夫人) ヴィッリ・ブロックマイアー(T;若い伯爵・伯爵夫人の息子) アントン・デ・リッダー(T;デポルト) ハイナー・ホルン(Br;アイゼンハルト) エーリヒ・ヴィンケルマン(B;フォン・シュパンハイム伯爵、大佐) アルベルト・ヴァイケンマイアー(T;ピルツェル) ゲルト・ニーンシュテット(Br;オーディ) カミッロ・メゴール(Br;マリ) ノルマン・パイゲ、フベルト・メーラー、ヘリベルト・シュタインバッハ(T;若き将校) | ||
録音:1965年2月21日-22日、3月2日-3日、WDR Grosser Sendesaalスタジオ。モノラル、初CD化。日本語解説&日本語訳詞付き(ドイツ文学者、岩淵達治氏によるもの;国内代理店が輸入盤単体では販売を行いません)。ドイツの現代音楽の名門レーベルWERGOがLPで発売して以来ずっと幻の音源とされていたドイツの作曲家ツィンマーマンの「兵士たち」が遂に初CD されることとなった。 ツィンマーマンの作風の特徴の一つが、引用の技法を用いているということ。バロックからロマン派、さらに民俗音楽、ジャズなど様々なジャンルの音楽のエッセンスが隠し画のように取り入れられている。この引用の技法は、このオペラでも用いられている。さらにこの「多元主義」は、視覚的にもこのオペラに現われる。たとえば第2幕の終りでは、舞台上に3つの段が用意され、3つの場面が同時進行する。 初演にあたり、この作品はあまりにも難しく演奏不可能であるとサヴァリッシュやヴァントに言われて、初演時期がなかなか決まらなかったなど、数々の困難を伴った。最終的に、若き日のギーレンに棒が託されたが、そのリハーサルは壮絶だった。ソリスト歌手たちの練習は実に370回、声楽アンサンブルの練習が100回、さらにステージでの立ち稽古も60回以上。さらに、オーケストラ稽古が25回、全曲の通し稽古も実に10回(うち7回はピアノでなくオーケストラとの練習)。この作品の上演に対する当時の劇場関係者および演奏者たちの使命感がいかに強かったか、ということを感じさせられる。初演はチケットも早々に売り切れる大好評、一部否定的な見方をする批評家たちもいたが、大絶賛で終った。この、厳しい初演を実現したメンバーたちによる演奏の録音が、このCD。普通に聴いていても「演奏するのはたしかに難しいだろう」と感じられるこの作品だが、劇的で、うねるような圧倒的迫力。人間誰もが心の奥底に持っている、ドロドロした部分が冒頭から炸裂している。 2008年5月5日、7日、10日には、新国立劇場で若杉弘指揮で日本初演が成され(当盤の代理店初回出荷は2008年5月9日となってしまい、1月にアナウンスがされたにもかかわらず初日に間に合わなかったわけだが)、2008年最大の話題オペラ間違いなしといえるだろう。 あらすじは、小間物商人の娘マリーが、婚約者がいながら兵士たちと逢瀬を重ね、道を踏み外し、乞食、娼婦へと身を窶していくというもの。ドロドロの人間ドラマが繰り広げられている。 | ||
シチェドリン:歌劇「貴族夫人モロゾワ」(2006)
ラリサ・コスチュク(Ms;モロゾワ) ヴェロニカ・ジオーエワ(S;モロゾワの妹ウルーソワ) アンドルー・グッドウィン(T;分離派指導者アッヴァクム) ミハイル・ダヴィドフ(B;皇帝アレクセイ) ボリス・テヴリン指揮器楽アンサンブル、モスクワ音楽院室内cho. | ||
録音:2006年10月30日、モスクワ音楽院大ホール、世界初演時ライヴ。 シチェドリンといえば旧ソ連の作曲家というイメージが強いが、今なお作曲を続けており、2006年も新作オペラ「貴族夫人モロゾワ」を発表した。当ディスクは同曲の世界初演ライヴ。作曲に30年を費やしたというこの作品は、オペラの常識を破るものとなっている。登場人物はたった四名、オーケストラ・ピットには合唱団が陣取り、器楽はトランペット、教会の鐘、ティンパニと神の威光を表わす鎖のみ。物語は17世紀半ば、ロシアの宗教改革の際に命をかけて古代信仰を貫いた実在の貴族夫人モロゾワを主人公に、改革と西欧化、狂信性への反動と人間としての抵抗心をテーマにしている。旧ソ連節の健在ぶりにロシア音楽ファン狂喜。 | ||
モートン・フェルドマン(1926-1987): for Philip Guston(1984)〜 フルート、パーカションとピアノのための |
ユリア・ブロイアー (ピッコロ/Fl/アルトFl) マティアス・エングラー (グロッケンシュピール/ ヴィブラフォン/ チューブラー・ベル/マリンバ) エルマー・シュランメル(P) | |
フェルドマンは、図形楽譜を考案したり、80分以上かかる長大な作品を書いたりした作曲家。作品を通して、音は極めて少なく、寡黙な印象の中、ゆったりと曲が進む。 フィリップ・ガストン(1913-1980)は、モントリオール出身の抽象表現主義を代表する画家で、ユダヤ人虐殺や、残虐な行為を行う特殊団体などを題材とする絵画を遺している。1950年、フェルドマンとガストンはケージの紹介で出会った。作品はC(ハ)、G(ト)、A フラット(変イ)、 E フラット(変ホ)の4つの音がモチーフになっており、これは、ケージ(CAGE)のことを指している。 各ディスクとも1時間を余裕で越えており、トラック数は2〜3のみ。はっきり言って、どのディスクのどの部分から聴き始めても印象は同じだが、じっと聴いてみると、少しずつだが動きがあったりそれが収まったり、ちょっと音が高くなったりまた元に戻ったり・・・と何かしら常に変化していることに気付く。蝶がさなぎから孵化する過程(ここでは孵化という結末にはならないが)の映像を、早送りせず見せられている気分を味わえる作品。 | ||
ペーテリス・ヴァスクス(1946-):作品集 ムジカ・アドヴェントゥス/ヴィアトーレ/ コンチェルト(イングリッシュホルン協奏曲;*) |
ノルムント・シュネ (コールアングレ;*)指揮 シンフォニエッタ・リガ | |
時代劇映画のBGMのような、そして大河ロマンのような、様々な熱さや優しさを内包しているヴァスクスの作品集。何か大切なものを抱きしめているような音楽。どちらかといえばヒーリング系の音楽と言えるが、そのスケールと包み込むような深い音色は他ではなかなか得られないものといえるだろう。 | ||
ジョン・ケージ&ハンス・オッテ:東洋と西洋 オッテ:響きの書-2(*) ケージ:ソナタ第7番(#)/ソナタ第8番(#) オッテ:響きの書-9(*) ケージ:インターリュード第1番(#) オッテ:響きの書-8(*) ケージ:ソナタ第2番(#) オッテ:響きの書-6(*) ケージ:ジェミニ(#) オッテ:時の本-39(*)/時の本-13(*) ケージ:ソナタ第3番(#) オッテ:時の本-16(*) シェーンベルク: ピアノのための6つの小品〜Op.19-2(*) オッテ:時の本-17(*) ケージ:ソナタ第5番(#) オッテ:時の本-24(*) ケージ:ソナタ第11番(#) オッテ:時の本-19(*) ケージ:ソナタ第16番(#) オッテ:響きの書-10(*) オッテ:時の本-25(+) ケージ:ソナタ第6番(+) オッテ:時の本-48(+) |
フィリップ・ヴァンドレ (P;*/プリペアドP;+) エルマー・シュランメル (プリペアドP;#/P;+) | |
このCDに収められているのは、もともと、ハンス・オッテの80歳の誕生日のために催されたコンサートで演奏されたのとほぼ同じ内容。ヨハネ福音書は「初めに、言葉があった。」と書き起こすが、少なくとも、音楽においては、初めにあるのは「音」。音楽に言葉がつけられたものも存在するが、それは、音楽の内容を異口同音に反復しているにすぎないのであって、あくまでも音そのものだけで何らかの意味を成さない音楽は、不完全である、という考えのもとに組まれたコンサートだった。静寂に自然に溶け込む音が、我々に西洋と東洋のバックグラウンドを想起させる。 オッテの「響きの書」は、催眠術のようなミニマルミュージック。実に美しい響きがはてしなく繰り返される中で少しずつアクセントの位置やハーモニーが変わってゆき、まさにヒーリングやニューエイジずばりそのもの。西洋音楽の新しい潮流の音楽。「時の本」は、西洋音楽の礎である調性を脱した「無調」で書かれている、ちょっと禅の空気を含む作品。禅の研ぎ澄まされた世界と、西洋音楽の究極の進化形のひとつの世界があわさっている。ケージのソナタの数々は、プリペアド・ピアノのために書かれており、ガムラン音楽のような呪術的要素を感じさせるもの。ヒーリングといってもお手軽なものではなく、耳も心もやさしくマッサージされるような気分になれる。 | ||
ヘルスキー(1953-):悲劇 a-n | ヨハンエス・デブス指揮 ムジーク・ファブリーク | |
録音:1999年11月、ライヴ。 「音はどこから生まれ、どこへ消えてゆくのか」。ルーマニアに生まれたドイツ人ヘルスキーの頭からこの問いが離れることはない。彼女にとって、音楽創作活動は彫刻活動のようなもの。彼女の作品は、あらゆる方向から飛び出て来て、聴く人の体に突き刺さる。色々な楽器を効果的に響かせる技は見事。 | ||
モートン・フェルドマン:4手のための作品 エドガー・ヴァレーズ/エレナ・ブガッロ編: アメリカ(2台ピアノ、8手版) モートン・フェルドマン:5台のピアノ |
ブガッロ=ウィリアムズ・ ピアノ・デュオ [エレナ・ブガッロ エイミー・ウィリアムズ]、 エイミー・ブリッグズ、 ベンヤミン・エンゲリ、 シュテファン・ヴィルト(P) | |
録音:2008年12月。「動」の作曲家エドガール・ヴァレーズと、ヴァレーズを敬愛してやまなかった、「静」の作曲家フェルドマンの作品集。#演奏家名は代理店記載ママ。 フェルドマンの作品は、彼ならではのひたひたと寄せては返す波のような音楽。5台のピアノによって演奏されても、不思議と静寂が増幅されているような感覚。 間に挟まれているのは、ヴァレーズの「アメリカ」。「春の祭典」の影響を受けたことが濃厚に感じられる作品。もともとは50人の管楽器奏者と、ほぼ絶え間なく打ち続けられる打楽器パートを備えた大規模な管弦楽作品。タイトルの「アメリカ」とは、その地理的なものを示すのみでなく、革新、冒険、発見といったものの象徴としての意味を含んでいる。規模の大きな作品がどのようにアレンジされているか、注目。 ヴァレーズの死後、フェルドマンは「ヴァレーズがいなかったら私の人生はどうなっていただろう?」と書いているほど、ヴァレーズに心酔し、自ら自分はヴァレーズを模倣している、とまで述べていた。二人の作曲家の作品を並列して聞くことにより、新たな聴覚が切り開かれる。 | ||
サロミックス・マックス [salomix-max] コール・ポーター: マイ・ハート・ビロングス・トゥ・ダディ ルチアーノ・ベリオ:セクエンツィアIII モーツァルト:老婆 カローラ・バウクホルト:老婆/エミール タルクイニオ・メルラ: Hor ch'e il tempo di dormire アルバン・ベルク:四つの歌 Op.2 ハロルド・アーレン:オーヴァー・ザ・レインボウ ルーディ・スプリング:二つの断章 クルト・ヴァイル: 私は哀れな親戚(「鏡の湖」より)/ マトローゼン氏が言ったこと; スラバヤ=ジョニー(「ハッピー・エンド」より) ヘルムート・エーリング: 1つの声と拡声器のための「2」 リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行 |
サロメ・カンマー(声) ルーディ・シュプリング (P/Cemb/編曲) ミヒャエル・リースラー (Cl/Sax) マリア・ライター(acc.) ベッティーナ・フックス(Fl) | |
ついに出た!声による「熊蜂の飛行」。といっても、さすがにあの急速なパッセージをずっと声のみで演奏するわけではないのだが、相当がんばっている。単なるヴォカリーズ(母音唱法)や高速スキャットではなく、ズーズー言ったり、アワアワホヨホヨ言ったり、聴く者に息つくヒマも与えない。クライマックスではものすごい超絶技巧の超高音域でノックアウト。この夏これを聴き逃してはならないだろう。 サロメ・カンマーはフランクフルト出身の歌手・女優・チェリスト。ジャズからミュージカル、クラシック歌唱、さらにお芝居の世界でも活躍している。実に多彩な彼女、ミュージカル・ナンバーは爽やかに歌うし、ベリオ作品ではエッジの効いた表現で我々の度肝をぬき、メルラではクラシックの歌唱で聴かせる。「熊蜂の飛行」は、はっきり言って笑えるが、しかし途轍もなく上手いことに驚かされる。モーツァルトの「老婆」も、女版志村けんを思わせる、爆笑モノの名演技&名歌唱である。 | ||
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(1926-): エル・シマロン〜 逃げ出した奴隷、エステバン・モンテーホの伝記 (4人の音楽家のための朗読劇 ミゲル・バルネットの本に基づくテキスト) |
アンゲロ・デ・ レオナルディス(Br) グンドゥル・アッゲルマン(Fl) クリスティーナ・ショルン(G) イヴァン・ マンチネッリ(Perc) ミヒャエル・ケルスタン音楽監督 エル・シマロン・アンサンブル ハンス・マグヌス・ エンツェンスベルガー (翻訳・音楽台本) | |
「4人の音楽家のための朗読劇」と副題がつけられたこの「エル・シマロン」(「シマロン」とは逃げ出した奴隷のこと)は、1860年に生まれた元奴隷、エステバン・モンテーホの伝記という形を取った作品。モンテ−ホが104歳の時、キューバの民族学者にしてライターのミゲル・バルネットが行ったインタビューを基にしている。ヘンツェは、モンテーホが108歳の時に会ったことがあり、「あんなに年老いた男には初めて会った。木のように背の高い大男で、歩くのは遅いが背筋は伸びている。そして目はぎらぎらと生気に漲っている・・・彼はまさに歴史的人物である」と述べている。 物語は、モンテーホの独白というかたちで進められていく。つらい労働を強いられた奴隷生活、脱走のこと、隠れるために入った森、森で出会った幽霊、そして女性のこと、喧嘩のことなど、まさにモンテーホの歩んだ波乱万丈の人生が語られていく。 | ||
ペーテリス・ヴァスクス:オルガン作品集 ヴィアトーレ/カントゥス・アド・パーチェム/ カント・ディ・フォルツァ/ ムジカ・セリア/テ・デウム |
タリヴァルディス・ デクスニス(Org) | |
「美しい静けさ」という表現がぴったりの一枚。現代作曲家によるオルガン作品。オルガンというと、バッハの圧倒的な神を感じさせる音世界が思い浮かぶが、これはちょっと違う。はてしなく広がる冬の大地か地平線を思わせるような、静かに深く集中した世界が広がる。静かな世界はとても美しい。 | ||
ジョン・ケージ:ドリーム ジョン・ケージ:ピアノ協奏曲 ジョン・ケージ/ステファノ・スコダニッビオ編: フリーマン・エチュード(ヴァイオリン版)/ ドリーム(ピアノとコントラバス版)/ 竜安寺(コントラバスとテープ版) ジョン・ケージ: ラジオ・ミュージック(5人の演奏家のための) |
ファウスト・ボンゲッリ、 マヌエル・ズリア、 ラブリツィオ・ オッタヴィウッチ(P) マイク・スヴォボダ(Tb) ジョヴァンニ・ダミアーニ、 ステファノ・スコダニッビオ指揮 | |
録音:1995年-2008年。 色々なイライラがたまって突然叫びたくなる瞬間、なんともいえない気分になることが誰でもあるのでは。ケージのピアノ協奏曲は、そんな気分が持続しているような作品。突如として噴出す不満のような各楽器、時折入る叫び声など、ぎりぎりの狂気が収められている。「竜安寺」は、スコダニッビオが生前のケージの前で演奏し、「これ以上完璧な演奏は聴いたことがない」と激賞されたという。禅僧たちの読経の声のようでもあり、あの世とこの世の境、意識と無意識の境にある重く固い扉を徐に開こうとするようでもある低い音。ケージが描こうとした禅の世界を究極の形で音にして私たちに提示してくれる。 | ||
カール・アマデウス・ハルトマン(1905-1963):作品集 ブルレスケ・ムジーク/ ピアノ、管楽器と打楽器のための協奏曲/ 葬送協奏曲/ ヴィオラとピアノのための、 管楽器と打楽器伴奏による協奏曲 |
ベンヤミン・シュミット(Vn) ヨルク・クローネンベルク(P) エリザベス・クフェラート(Va) フローリアン・ウーリヒ(P) ポール・グッドウィン指揮 カイザースラウテルンSWR放送o. | |
録音:2004年、2007年。 バリバリ系ドイツが好きな方にはたまらない、逸演のハルトマン作品集。ハルトマンの作品は、時にシェーンベルク、時にマーラー、特にブルックナーを思わせる瞬間がある作風だが、高いテンションの持続、時折挟み込まれるピアノやピアニッシモによるソロの官能的な美しさなど、たまらない。ドロドロとした官能の後期ロマンの世界の色合いが強いが、葬送行進曲はフス派のコラールに基づいているナチへの抵抗作品であることなど、社会的メッセージも大変強い作品集となっている。 | ||
ゲルハルト・シュテープラー(1949-):作品集 kybele / ]desires[ / x-錠前のための / ]roses[ / spices [3] |
アンネッテ・ロッベルト(S) ケルン打楽器四重奏団 | |
録音:2007年12月。 シュテープラーは特に打楽器のための作品を多く書いており、実に全作品の三分の一が打楽器作品。リズムはもちろんのこと、打楽器が持つ魔術的な側面や、儀式のような側面を極限まで引き出した作品が多く、独特の世界が広がる。 | ||
シュテファン・フッソング〜ユン・イサン:作品集 コンチェルティーノ(*/#)/デュオ(*/+)/ インテルメッツォ(*/+) (**)/ ペッツォ・ファンタジオーゾ (バス声部と2つの楽器のための〜自由に) |
シュテファン・フッソング (アコーディオン;*) ミンゲSQ (#) ユリウス・ベルガー(Vc;+) | |
録音:2009年5月。(**)は世界初録音。 鬼才アコーディオン奏者フッソングの新譜は、ユン・イサン作品集。アジアの舞踊の身振りや僧院での鳴りものを想起させるインテルメッツォは、静と動の絶妙なバランスで、聴き手に緊迫感を感じさせつつ、精神的な静けさをもたらす不思議な世界。 | ||
シュトックハウゼン:初期作品集 コントラ・プンクテ(十楽器のための)(*)/ ルフラン(ピアノ、チェレスタと打楽器のための)/ ツァイトマッセ(5つの木管楽器のための)(*)/ シュラーク・トリオ(ピアノと打楽器のための) |
アンサンブル・ルシェルシュ ルパート・フーバー指揮(*) | |
録音:2008年8月。 ここに収められている4つの作品は、シュトックハウゼンのほぼ半世紀にわたる作曲活動の初期9年間に作曲されたもの。‘初期 'という言葉がシュトックハウゼンの作品に使われることはまだ稀だが、戦後ヨーロッパのアヴァン=ギャルド最大の作曲家の若き日のこれらの作品は、同世代の音楽家達に多大なる影響を与えている。共通の要素をもってはいるが、それぞれがいかに変化に富んでいるか、ということに驚かされる。シュトックハウゼンの初期の発展の物凄さを伝えてくれる作品群。 アンサンブル・ルシェルシュは現在の現代音楽シーンに欠かせない名人集団。1985年の設立以来、実に450作品ほどの初演を手がけ、現代の室内楽とアンサンブル音楽の発展に大きな貢献をしている団体。猟奇的な発作的発声など、楽器以外でもうまさを発揮している。 | ||
ジョン・ケージ: ハーモニー第27番(チェロとピアノのための)/ 北のエチュード (ピアノを奏するパーカッション奏者のための)/ ハーモニー第22番(チェロとピアノのための)/ 10 '40.3 ' 'から26 '1.1499 " (弦楽奏者のための〜チェロ・ヴァージョン)/ ハーモニー第24番(チェロとピアノのための)/ 北のエチュード(チェロ独奏とピアノ独奏のための)/ ハーモニー第13番(チェロとピアノのための) |
フリードリヒ・ガウヴェルキ (Vc) マーク・ノップ(P) | |
録音:2009年9月。 スローモーショーンの映像を見せられているようなハーモニー第27番、冷たい水と氷の世界を思わせる北のエチュードなど、人の心や脳裏のどこか、正気と狂気の間に潜んでいるような風景満載の作品集。鬼才ガウヴェルキのチェロと、ノップの完璧なピアノの音色が冴えわたる1枚。 | ||
アリベルト・ライマン:メリュジーヌ(4幕のオペラ)
マルレーネ・ミルド(S;メリュジーヌ) テレサ・エルベ(Ms;ピティア) ガブリエーレ・メイ(Ms;マダム・ラペルーズ) リヒャルト・キンドリー(T;マックス・オルレアンダー)他 ペーテル・ヒルシュ指揮ニュルンベルクpo. | ||
録音:2007年5月。 ディースカウらの伴奏者としても活躍している作曲家・ピアニストのアリベルト・ライマンのオペラ世界初録音盤。題材になっているのは半人半魚のメリュジーヌ。幻想的な物語ながら、歌はかなり高度な技巧が要求される難しいオペラとなっている。 【あらすじ】メリュジーヌと結婚したマックス・オルレアンダーは、メリュジーヌが公園で過ごしてばかりで一向に家に帰ってこないので不平たらたら。しかしメリュジーヌにとって唯一の安息場所であった公園に、伯爵が宮殿を建てることになった。メリュジーヌは妖精の国に行き、妖精ピティアに懇願し、女性らしい美しい魅力を手に入れます。そのかわり、脚は人魚の脚になり、男と恋に落ちてはならない、そして恋のできない体になった。メリュジーヌは自分の魅力を利用して、宮殿の工事作業を止めようとするが、しかしメリュジーヌの努力も虚しく、宮殿はどんどん出来上がっていく。ある日食事の席で、メリュジーヌは宮殿を建設している張本人である伯爵と出会う。二人は一目で恋に落ちるが、すでに時遅し。メリュジーヌは恋をできない体になっている。宮殿は完成し、はなやかに花火で祝典が開かれると、その花火が原因で宮殿は炎に包まれる。焼け跡からは伯爵とメリュジーヌの遺体が運び出されて幕となる、メルヘンの要素と恋の要素をもった悲劇。 | ||
ヘンツェ:管弦楽作品集 交響曲第7番 [ダンス/静かに、動いて/絶え間なく動いて/静かに、控えめに]/ シンフォニア第8番 [アレグロ/ アレグラメンテ・コン・コモド・テネレッツァ・エ・バッラビリタ/ アダージョ] |
マレク・ヤノフスキ指揮 ベルリン放送so. | |
ヘンツェの新作、2つの交響曲の世界初録音盤の登場。阿鼻叫喚の中にも美しい旋律などが息づく作品。 | ||
ヘンツェ(1926-): 交響曲第9番〜混声合唱とオーケストラのための (アンナ・ゼーゲルスの小説 「七番目の十字架」に基づく) |
マレク・ヤノフスキ指揮 ベルリン放送so.&cho. | |
録音:2008年11月。 ヘンツェが1996年から97年にかけて取り組んだ交響曲第9番は、アンナ・ゼーゲルスの小説『七番目の十字架』に基づくテキストに作曲された、ほぼ休みなく歌い続ける合唱を伴う大規模な交響曲。ゼーゲルスの本の内容は、7人の囚人が強制収容所から逃げ出そうとして失敗。士官たちは他の囚人たちへの見せしめとして、収容所の7本の木を切り倒し、十字架を作り、7人をはりつけにしようとする。しかし、7本目の十字架に乗るはずだった囚人は、脱走に成功。誰もいない7本目の十字架が、抵抗の象徴、独裁者への勝利のしるしとして描かれる物語。この交響曲は、不安で焦燥感いっぱいの「脱走」から始まり、「迫害者の告白」や「迫害」などと題された「7」の楽章から成る。最後は「救済」と題されてはいるが、終わり方はきわめて不安げなまま。独裁による人道の危機は終わることはない、というヘンツェのメッセージがこめられているようだ。 | ||
ヘンツェ:交響曲集(大オーケストラのための) 〔第3番(*) /第4番(*) /第5番(#) 〕 |
マレク・ヤノフフスキ指揮 ベルリン放送so. | |
録音:2010年1月(*)/2010年9月(#)。オペラから交響曲まで幅広いレパートリーで聴衆を唸らせ続けているヤノフスキ指揮による充実のヘンツェ交響曲集。交響曲第3番は、世紀末を思わせるような爛熟の官能的響きと大規模な作風が印象的。元々はヘンツェ自身のオペラ「鹿の王」第2幕の幕切れの音楽として書かれた交響曲第4番は、静かな弦の響きの中から様々なモティーフが生まれては消え、発展しながら進み、最後は壮大な音の重なり合いとなる、演奏時間20分超の単一楽章で非常に高い集中を保った曲。第5番は一言で表すならば「ドラマティック」な作品。バーンスタイン&NYPの委託を受け作曲されたもので、ヘンツェいわく「ローマの風景、人々のイメージに触発されて作曲した」物。激しいリズムや熱いクレッシェンドの連続など、こちらもまたヤノフスキの曲の構成力が光る演奏となっている。 | ||
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(1926-2012): 室内オーケストラのための「第1交響曲」(1947, rev.1963 & 1991) / 2つのオーケストラのための「シンフォニア第6番」(1969, rev.1994) マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送so. | ||
録音:2012年。ヘンツェの交響曲集。第1番は、ヘンツェ20歳の時の作品。後にヘンツェはこの1947年版を「完全に間違っている」とし、1964年にベルリンで演奏された折に改訂を施している。「リズム、和声、メロディといった細胞的要素はオリジナル版のままで、緩徐楽章にはほとんど手を加えていない。それでも全てが新しく、違っており、そしてずっと良い」と自身述べている。実際には、第1、3楽章は単なる改訂にはとどまっておらず、完全に新しい作品となっている。もともと比較的小編成の作品だったが、この改訂版ではファゴット、トロンボーン、チューバ、打楽器も削除され、かわりにハープ、ピアノ、チェレスタが用いられている。透明感のある響きが印象的な秀作。1969年、ヘンツェは2度にわたってキューバへと旅をする。キューバでは音楽シーンの重要人物と多くの出会いがあり、自身さとうきび畑で作業の手伝いをしたりもしたという。初めてキューバ旅行を訪ねるにあたり、ヘンツェは交響曲の依頼を受けた。リズムが印象的なこの作品は、ハバナで11月26日、ヘンツェ自身の指揮によって初演された。 | ||
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(1926-2012):交響曲集 〔第2番(大オーケストラのための)(1949) (*) /第10番(大オーケストラのための)(1997-2000) (#) 〕 マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送so. | ||
録音:2012年8月28日-29日(*)、2013年6月12日-14日(#)。ヘンツェの初期の交響曲と、最後の交響曲集。第2番はヘンツェが12音技法を用いた最初の大きな作品で、当時の現代音楽の最高の解釈者のひとりであった指揮者ヘルマン・シェルヘンに献呈されている。とはいえ、メロディ的な部分など随所に調性音楽的な部分も見られる。第1楽章冒頭のトロンボーンとハープによる静かな和音がこの交響曲全体の性格を示している。ヘンツェ自身この作品を「冬の音楽、灰色で薄暗い。」と述べている。終楽章のクライマックスではJ.S.バッハのカンタータ第1番「輝く暁の明星のいと美わしきかな」のコラールの引用も見られる。最後も半音階的な12音技法で書かれているが、不思議と調性感も持ったまま曲は幕となる。第10番は第2番から約50年の時を経て書かれた物。第7番では「ドイツ的なもの」を追求し、第8番はベートーヴェン同様、明るくテンポのよいものを書き、そして第9番もベートーヴェン同様合唱を含む(その歌は歓喜の内容ではなく、7人の囚人が強制収容所から逃げ出そうとする物語)。この第9番が完成する前に、第10番をヘンツェに発注したのはラトルだった。その発注時に「(ラトル)自分自身を反映させたポートレイトのような作品を」と述べたとヘンツェは回想している。とはいえ作品はラトルを描いたというよりも、何か絵画のような雰囲気となっている。第10番は2000年に完成し、1999年に亡くなったヘンツェのパトロンの一人、パウル・ザッヒャーの「思い出に」ささげられている。第1楽章は2000年3月にラトルによって初演された。 | ||
ハヤ・チェルノヴィン(1957-): 変速する重力[ディオティマSQ ヨナタン・シュトックハンマー指揮アンサンブル・ニケル]/ ウィンター・ソングス III[アンサンブル・クレージュ、エリク・ドブレス(IRCAMアシスタント)他] | ||
録音:2009年-2010年。チェルノヴィンは2006年のザルツブルク音楽祭で、モーツァルトのオペラ「ツァイーデ」を補完するかたちのオペラ「アダマ」を作曲、話題となった。楽器の素材を生々しく感じさせ、電子音までもがリアルにせまる実体感に満ち、ノイズや楽音で旋律を思わせる線状の素材を用いての作曲が特徴。 | ||
オマージュ〜ヘンツェ:作品集 6人の演奏家のためのソナタ(*)/ マルガレーテのワルツ(*)/レントラー(*)/左手(*)/ 墓碑銘(*)/トッカータ・ミスティカ/ 3つの楽章のトリオ(*)/ ode al dodicesimo apostolo(*)/ アン・ブレントン(*)/ ラインホルドのためのピアノ作品(*)/ セレナーデ(*)/アダージョ・アダージョ(*) |
アンサンブル・ルシェルシュ | |
録音:2008年、2009年、(*)世界初録音。 1970年代後半から1998年にかけて作曲されたヘンツェの作品集。世界初録音も多く含まれる。各楽器がきわめて魅力的な音色で響いており、ヘンツェがあらゆる楽器に精通した作曲家であることを実感する作品ばかり。アンサンブル・ルシェルシュは、1985年に設立され、これまでに450以上の作品の初演を手掛けた現代音楽のエキスパート集団。現代音楽だけではなく、フライブルク・バロックo.とコラボレーション、幅広いジャンルで活躍している。 | ||
ヒンデミット:プレーン音楽祭〜1932年、プレーン音楽祭のための音楽 朝の音楽/ターフェルムジーク/カンターテ/夕べの協奏曲 ディートリヒ・ヘンシェル(Br) ダーヴィド・ライベル(語り) ヨープスト・リーブレヒト指揮ベルリン中部放送so.、 マルツァーン=ヘレルスドルフ・ユーゲントo.、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ音楽院アンサンブル、 ベルリン放送cho.、白ベルリン児童合唱団&青少年cho. | ||
録音:2008年10月、全曲世界初録音。プレーン城で行われた音楽祭のために書かれた音楽。音楽祭には音楽学生が参加し、一日中城は様々な楽器の音色で満たされる。この参加学生たちによって構成されるアンサンブルのために、ヒンデミットがその場で音楽を書き、学生たちの演奏を見ながら様々に修正・加筆を加えたものがこれらの作品。朝の音楽は、朝7時に演奏が開始され、また、カンタータはヒンデミットが選んだアグリーコラのテキストに基づいているなど、興味深い内容となっている。 | ||
ヴィクトル・エキモフスキー(1947-): 交響的舞曲〜ピアノと管弦楽のための(*)/ 聖母被昇天〜打楽器アンサンブルのための(#)/ アヴィケンナの鏡〜14奏者のための(+)/ 27の破壊〜打楽器アンサンブルのための(#)/ ヴァイオリン協奏曲 「アッタレーア・プリンケプス」(*) |
ミハイル・ドゥボフ(P) ナーザリ・コジュハーリ(Vn) オレグ・フジヤコフ指揮(*) ロシアpo.(*) ペカルスキー打楽器アンサンブル(#) アレクセイ・ ヴィノグラードフ指揮(+) モスクワ現代音楽アンサンブル(+) | |
録音:2006年1月、モスフィルム・スタジオ。モスクワ生まれのエキモフスキーは、シュニトケやグバイドゥーリナに続く世代を代表する作曲家。ハチャトゥリヤン門下で、さらにメシアンの研究書で博士号もとっている。作風はミニマル系に属しながら、ロシア・アヴァンギャルドの作曲家たちを思わす凶暴なエネルギーに満ち、ロシアの伝統を感じさせる。当アルバムは彼の1990年代の作品を集めているが、代表作が網羅されているのが嬉しい限り。なかでも(*)は邦訳も出ているガルシンの小説を音楽化したもので、ロシア文学ファンならば二重三重の興味を持つこと間違いなしの作品。 | ||
フレデリク・ジェフスキ(1938-): 不屈の民による36の変奏曲 |
カイ・シューマッハー(P) | |
録音:2009年1月。 ジェフスキの「不屈の民変奏曲」は、チリの革命(抵抗)歌をもとにした、36の変奏曲。ジェフスキはポーランド系アメリカ人で、1960年代ころからめざましい活躍をしているピアニスト・作曲家。自身シュトックハウゼンやブーレーズなどの作品を初演したこともあるピアノの名手であり、作曲をダッラピッコラに師事、セリー音楽主義に影響を受けた。この作品は1975年に作曲され、ピアニストのアーシュラ・オッペンスに献呈されている。1時間以上を要し、ジャズ、ミニマル・ミュージック、底力のある民俗音楽的要素、そして超絶技巧や即興的な要素がちりばめられ、弾き手にも聴き手にも高度なものが要求される20世紀ピアノ作品の傑作のひとつ。作曲者自身による演奏の記録やアムランによる録音などが存在するが、ここでは若手ピアニストのカイ・シューマッハーがエネルギッシュかつものすごい集中と迫力で、冒頭にあらわれる主題旋律の物悲しくも力強い歌から最終楽曲の集結部分での決然たる和音の連続まで、一気呵成に聴かせる。 | ||
ヴァレンチン・シルヴェストロフ(1937-): スペクトラム(1965)[レニングラード・フィルハーモニック・ソロイスツ・アンサンブル/ 1965年12月12日、グリンカ・ホール、レニングラード、ライヴ]/ 交響曲第2番(1965)[レニングラード室内o./1968年3月31日、 レニングラード・フィルハーモニー大ホール、レニングラード、ライヴ]/ ソプラノと室内管弦楽のためのカンタータ(1973) [ネリー・リー(S) ペルペツィム・モビレ室内o./1983年]/ チェロと管弦楽のための瞑想曲(1972)[ワレンチン・ポターポフ(Vc) キエフ室内o./1976年6月10日、 キエフ国立フィルハーモニー・ルイセンコ・ホール、ライヴ]/ 静寂の歌(1977)〜この世よさらば(シェフチェンコ詩/ブラシコフ編曲) [ユーリー・オリイニク(Br) 室内アンサンブル/1991年] イーゴリ・ブラシコフ指揮 | ||
録音:[/内]、特記無しはセッション。いつのまにかニューエイジ風ピアノ曲の人気作曲家となってしまっていた感のあるシルヴェストロフだが、1960-70年代はソ連きっての前衛作曲家として名を馳せていた。当アルバムにはその時代の作品が集められているが、メロディア音源をはじめとする入手困難なものが目白押しでシルヴェストロフ・ファン、現代ロシア音楽ファン狂喜の内容となっている。初期シルヴェストロフの作風は、息の短い素材断片が楽器間を浮遊して響きあうもので、チェレスタやヴィブラフォン、ハープの明滅が独特の音色を生んでいる。前衛的ではあっても、武満徹を思わすデリケートな音世界で、今日の芸風の萌芽が感じ取れる。シルヴェストロフは現在までに交響曲を7篇作っているが、1965年の第2番が収録されているのも嬉しい限り。フルート、打楽器、ピアノと弦楽合奏という編成によるわずか11分で、「歌詞のないマドリガル」と称されている。またロストロポーヴィチに捧げられた「瞑想曲」は32分の大作。レとラの空虚五度の持続音がベートーヴェンの第9交響曲の冒頭を連想させる。シルヴェストロフとしては珍しいfffによる恐るべきカタストロフを迎え、スコアには「舞台の照明を消し、指揮者とオケのメンバーはマッチを擦って明りを灯せ」とある。すべてがシルヴェストロフの朋友でムラヴィンスキー門下のイーゴリ・ブラシコフが指揮を担っているのも貴重。また、ソプラノのネリー・リー、チェロのポターポフらソ連時代の超実力派たちがソロを務めているのも豪華。最新録音でも実現できない高みに達している。 | ||
シチェドリン:封印された天使 | イネセ・ロマンツァーネ (S) ゼーン・ジルバート(Ms) ユルギス・リェプニェクス(T) ディタ・クレンベルガ(Fl) マリス・シルマイス指揮 ラトヴィア国立cho. | |
録音:2009年7月17日、クロスター・エバーバッハ音楽祭、ライヴ。 現存する旧ソ連時代の作曲家の最長老ロディオン・シチェドリン。つい先頃もゲルギエフとマリインスキー・オペラが、彼の歌劇「魅せられた旅人」の最新録音をリリースしたばかりだが、これも同じニコライ・レスコフの原作に基づく大規模な声楽作品。しかし新作ではなく、1988年のロシアのキリスト教化千年を記念して作られた。今回、合唱の国ラトヴィアの演奏家によるライヴだが、静謐で透明、深くて優しい、この世のものとは思えぬ美しさ。涙なしには聴けない、最高のヒーリング音楽。 | ||
As fast as possible〜コンロン・ナンカロウ: プレイヤー・ピアノのための練習曲 〔第16番(2台8手編曲版)(*/#) /第20番(ピアノ連弾編曲版)(*) /第26番(4台7手編曲版)(*/#) / 第32番(ピアノ・デュオ編曲版)(*) /第44番「偶然性のカノン(エンドレス)」(2台4手編曲版) (*)〕/ 管弦楽のための組曲(**)/室内管弦楽のための3つの楽章(##)/七重奏 断片(##)/ パウル・ウッシャー:ピアノラと室内管弦楽のためのナンカロウ協奏曲(##/++) ヘレナ・ブガッロ&エイミー・ウィリアムズ(P;*) エイミー・フリッグス、 イングリード・カルレン(P;#) レックス・ローソン(ピアノラ;++) シュテファン・アシュバリー指揮WDRケルン放送so.(**) カスパー・デ・ロー指揮アンサンブル・モデルン(##) | ||
録音:2004年、2005年。#一部ピアノ曲で内容と演奏者数が合わなかったため、当店で正しいと思われる記載へ変更しています。ナンカロウといえば、プレイヤー・ピアノ。生のピアノを含む音楽を書いていたナンカロウは、演奏不可能なほど難しいものを書き、自分の作品が正しく演奏されないことを憂い、一寸の間違いのない機械仕掛けのプレイヤー・ピアノのために作品を書きだした。50曲以上あるこの練習曲では、ありえない音程のアルペジオや、複雑怪奇なリズム、テンポに満ちている。欧米を中心にナンカロウ・ブームが巻き起こった時、彼はコンサートへの関心に目覚め、この練習曲集を編曲するようになった。基本的にナンカロウ作品の編曲は本人以外してはいけないことになっており、現在もこのルールは生きている。編曲のプレイヤー・ピアノは、ジャズとスペイン的空気が入り混じったような、無機的なリズムに裏打ちされた独特な世界が広がる。ナンカロウが生の楽器のために書いた作品も収録されており、ナンカロウの魅力を多角的に見ることが出来る。 パウル・ウッシャーによる「ピアノラと室内オーケストラのためのナンカロウ協奏曲」は、亡くなってしまったために未完のままとなっていたナンカロウのスケッチから作品を書き起こした物。プレイヤー・ピアノのための作品よりも人間味の漂う世界で、ナンカロウが意図したものと同じかどうかはわからないが、「いかにも」ナンカロウ「らしい」音響(ジャズのようでありスペイン風味のある)となっている。ソロを務めるのはピアノラの名手、レックス・ローソン。ナンカロウはローソンに出会ってピアノラに興味を示したと言う。ナンカロウも認めた奏者による演奏をご堪能頂きたい。 | ||
ペーテリス・ヴァスクス:四季〜ピアノのための 「四季」白い風景―春の音楽―緑の風景―秋の音楽/ 「夏の夜のための音楽」 |
ヴェスタルド・シムクス(P) | |
録音:2009年9月、ライヴ、世界初録音。静かに静かに、雪の音や風の音、葉がすれ合う音などがピアノで再現される。「耳を澄ます」という行為に集中できる1枚。 | ||
B.A.ツィンマーマン(1918-1970):初期作品集 ナッハラスの3つの歌(1939-42)(*)/ヴァイオリンとピアノのための小組曲(1942) (#)/ ヴァイオリンとピアノのためのアリア(1942) (#)/中声とピアノのための5つの歌曲(1942-46) (*) / ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのための三重奏曲(1944)(+)/ エルンスト・ベルトラムの詩にもとづく3つの宗教的歌曲(1946)(*)/ ヴァイオリン・ソナタ(1950)(**) アンナ・プロハスカ(S;*) アレッサンドロ・カッポーネ(Vn;#) ラファエル・シュミット(Vn;**) コルデリア・ヘーファー(P;*/#/**) トリオ・ベルリン(+)[アレクサンドル・イヴィチ(Vn) ユリア・ガルテマン(Va) マルティン・メンキング(Vc)] | ||
録音:2009年-2010年。2008年5月に新国立劇場で上演された「軍人たち」の記憶もあたらしいB.A.ツィンマーマンの初期作品集の登場。「軍人たち」(1965年発表)的な作品が収録されているかと思いきや、聴いてびっくり、R.シュトラウスやマーラーのように爛熟した調性感と官能的な世界が広がっている。 ツィンマーマンは、1938年の冬頃から音楽の勉強を本格的に始めたが、家族からの猛反対の中でのスタートであったこと、さらに、フランス、ポーランド、ロシアでの兵役のため音楽学校を卒業したのは1947年のことだった。ここに収められている作品は、音楽学校に入学して間もない頃から、卒業後しばらくというまさに駆け出しの頃のものばかり。 歌曲は、フランス歌曲かと思ってしまうような雰囲気。ヴァイオリンとピアノのための小組曲も、懐かしさをおぼえるようなメランコリックな旋律に彩られた作品。BPOの精鋭メンバーによって構成されたトリオ・ベルリンが演奏するトリオも退廃的な薫りと官能性を併せもっている。ツィンマーマンは、バッハから脈々と続く西洋音楽の遺産を反復しているに過ぎない、などといった批判の対象となったが、高度な設計によって構築された作品たちはどれも魅力に満ちている。 | ||
シュトックハウゼン(1928-2007):星座のための12のメロディー(オルガンによる) みずがめ座/うお座/おひつじ座/即興I/おうし座/ふたご座/かに座/即興II/ しし座/おとめ座/てんびん座/即興III/さそり座/いて座/やぎ座/即興IV ドミニク・シュステック(Org、即興) | ||
録音:2008年9月、ケルン、聖ペーター教会。シュトックハウゼンの「星座のための12のメロディー」は、もともとはオルゴールのために生まれた音楽で、前衛的なところがほとんどない。もちろんハーモニーは古典派のものとは少々趣が異なるが、メロディーと伴奏という伝統的で明確な構成をとっている。この作品は演奏者に楽器や音色の選択などを委ねており、ピアノ版や室内楽版、また、6人の奏者による版(WER-6659)など様々な録音があるが、ここに新たに登場した録音は一人の奏者が奏でるオルガンによる物。それにしても、このオルガンの音はすごい!オルガンマニアの間では有名なケルンの聖ペーター教会のオルガンを使用している。この教会は、信仰の場であることはもちろん、「聖ペーター・アート・ステーション」とも呼ばれていて、現代美術の展覧会や、新しい音楽のコンサートが開かれている、いわば現代芸術の砦。日々の礼拝もすべて現代音楽で執り行われている。ここに備えられているオルガンは、エオリアン・ハープ、チェロ、ハープ、サックス、打楽器、ホイッスルなど様々な音を模した音色が出るストップを合計104兼ね備えていて、すべての音が一人の奏者の指や足から発せられている音とは信じられない壮大さ。さらに、この録音でオルガンを弾いているのは、当教会オルガン奏者のシュステック。日々の礼拝で楽器に触れ、楽器を熟知してすべてのストップの音色を巧みにブレンドすることができる、まさに理想的な布陣での録音となっている。オルガンによるこの作品の演奏は、極彩色の世界。どことなくメシアンのオルガン作品を想起させるようでもある。あらゆるものを超越したもの、時に呪術的なものを強烈に感じさせる。ひとつひとつの曲が終わり、ウヮンッというオルガンの残響が消えたあとの静寂は、まるで宇宙に放り出されたような感覚。究極の宇宙遊泳世界を是非ご堪能頂きたい。 | ||
Souvenir, souvenir 〜リュク・フェラーリ(1929-2005): Suite hétéroclite 〔統一性のない組曲〕/アンチソナタ/ソナチネ・エリブ/ Visage 〔顔〕 I /ピアノと磁気テープのための小品コレクション、または36の一連/ 1980-1982の親密な日記からの断片 エルマー・シュランメル(P) | ||
録音:2010年6月。「日常のなかにすでに存在する音を録音して、加工・編集することであるひとつの音楽作品を作ろう」とするフランスで生まれたミュジック・コンクレートの作曲家として有名なフェラーリは、「逸話的音楽」と名付けたコンセプトを展開していった。1967年に発表した「プレスク・リアン第一番」は彼の代表作であり、多くの作曲家・演奏家に影響を与えた。1982年、電子音響による作曲とラジオ・アートのための協会ラ・ミューズ・アン・セルキュイを設立。交響作品やラジオ劇などでイタリア賞、カール・ズッカ賞、クーセヴィツキー賞などを受賞した。90年代頃からジム・オルークなど、特に音響系からの再評価が高まり、ジョン・ゾーンやデイヴィッド・グラブスのレーベルからもCDがリリースされている。自由で無調な音楽の中に、何故か馴染みやすい日常的なものがあり、詩的にさえ感じられる。 | ||
ヘルムート・ラッヘンマン: オーケストラを伴うクラリネット独奏のための「アッカント」 [エドゥアルト・ブルンナー(Cl) ハンス・ツェンダー指揮ザールブリュッケン放送o.] 12の声と4つの打楽器のための「コンソレーション No.1」 [クリトゥス・ゴットヴァルト指揮スコラ・カントルム・シュトゥットガルト] 大オーケストラのための「コントラカデンツ」 [ミヒャエル・ギーレン指揮SWRシュトゥットガルト放送so.] | ||
無駄なものを削ぎに削ぎ落とし、骨格の本当に関節の要の部分だけをレントゲンにとったような音楽で、時にコンサートホールで客席に座っていて、開演前に舞台袖から聴こえてくるオーケストラ奏者たちの練習のような、不思議な世界が広がる。これが曲順に27分、8分、18分も続くので、耐える快感がある。演奏者陣がツェンダーにギーレンなど、豪華なのも注目。 | ||
ガリーナ・ウストヴォリスカヤ(1919-2006): コンポジション第2番「怒りの日」(*) /ソナタ第6番(#) / チェロとピアノのためのグランド・デュエット(+) ステファノ・スコダニッビオ指揮ルードゥス・グラヴィス(Cbアンサンブル;*) ラウラ・マンチーニ(木製キューブ;*) ファブリツィオ・オッタヴュッチ(P;*) マリーノ・フォルメンティ(P;#/+) ロハン・ド・サラム(Vc;+) | ||
録音:2010年、イタリア。社会主義リアリズムに即した音楽を書くように強制されたスターリン政権を生き抜いた数少ない作曲家、ウストヴォリスカヤの秘蔵作品集。「私の作品は、他の作曲家のそれとは全く違う」という彼女の言葉に添えられた作品たちは、独特の非常に風変わりな作曲様式で、反復の活用、ホモフォニックな音塊、異例な楽器法、楽器の集合を用いてのトーン・クラスターの導入などが見られる。また、宗教のテクストにインスパイアされたものが多く、宗教的な側面を色濃く持っているために、神秘的な雰囲気を醸し出している。実際耳にすると、カオスな中にも、何か非常に精神的な深みを行くような、興味深い感覚に陥る。演奏者はどれも、数々の賞を受賞した世界的に名だたる者たちで、主に現代音楽の中で楽器の可能性を追求し続けている。本CDは、素晴らしい作品を残しながらも、未だ音楽史の中で光を当てられていないウストヴォリスカヤに捧げられた物。「現代音楽」という枠組みにさえ収まりきれないような、ウストヴォリスカヤの宇宙世界をご堪能頂きたい。 | ||
ジョン・ケージ(1912-1992): 南のエチュード (1974) (全曲) |
ザビーネ・リープナー(P) | |
録音:2011年、カンマームジークザール、ドイチュラントフンク。音そのものに関心を持ち、音の持つ様々な魅力を作品に引き出そうとしたケージの芸術には、作曲上の実験だけでなく、社会問題や自然現象、宗教、神秘主義そしてユートピア思想など、実に様々な世界観が表現されている。環境音を素材として自由に扱い、音楽の概念を拡大して視覚的要素を導入したケージの魅力をお楽しみ頂きたい。32の練習曲からなる複雑なピアノ作品「南のエチュード」は、伝統的な楽器と記譜法に対するケージの興味を示す、一連のヴィルトゥオーゾ作品の初期作品。ケージが南半球の夜空を彩る星座の表から、易によって星(星座)を選び出し、その星座(星)を音高に置き換えた物。ピアノの鍵盤を左右の手でフルに使うように記譜された楽譜とそこから生まれる音はまさに天体・宇宙をも思わせるスケール。ザビーネ・リープナーは、新進気鋭のドイツ出身のピアニスト。「新しい音楽」を主なレパートリーとし、その積極的な解釈に従事している。数多くのテレビ、ラジオ、国際音楽祭にソリストとして、またはアンサンブル・メンバーとして出演し、高い評価を得ている。オルガ・ノイヴィルス、イェルク・ヴィトマン、フランコ・ドナッティ、クリスティアン・ヴォルフなど、著名な現代音楽作曲家や現代アーティストとのコラボレーションを手掛け、作品の初演も数多く果たしてきた。ケージの音楽が持つ偶然性、視覚的要素を巧みな解釈で実現させている。 | ||
アール・ブラウン(1926-2002):抽象的なサウンド・オブジェクト 家庭の埋葬(*) /フォリオ/25のページ/4つのシステム/夏の組曲 '95 ザビーネ・リープナー(P) | ||
録音:2009年6月。(*)は世界初録音。いわゆるニューヨーク楽派(ケージ、フェルドマン、クリチャン・ウォルフ)に属するブラウンによる、ピアノのための作品集。ニューヨーク楽派の中でもブラウンは特に、同時代の他ジャンル(ヴィジュアルアートなど)芸術家と相互に強く影響し合ったと言われている。筆の先からインクをたらす手法で圧倒的な力を持つ作品を生み出したジャクソン・ポロックのアクション・ペインティングを思わせるような、ダイナミックな空間性、静と動の共存、一見無秩序に見えて実は巧妙に計算されている音の配列などは、ブラウンでなければためし得ない世界といえるだろう。この独自の世界を再現するピアニスト、リープナーは、ケージ、フェルドマン、ウストヴォリスカヤなどの現代作品のスペシャリストとして活躍するピアニスト。ブラウン作品が今なお斬新さに満ちていることを実感する1枚。 | ||
da lontano〜彼方から ジャチント・シェルシ(1905-1988): Mantram-Canto anonimo ジョン・ケージ(1912-1992):スライディング・トロンボーンのための「ソロ」 シュトックハウゼン(1928-2007): signale zur invasion,I ルイジ・ノーノ(1924-1990):ポスト・プレリュード第1番〜ドナウのための/ チューバ、ライヴ電子楽器のための(1987) (*) マイク・スヴォボダ(Tb/Tu) ホルガー・シュテンシュケ(電子楽器;*) | ||
録音:2011年11月。トロンボーンのスヴォボダといえば、抱腹絶倒のワーグナーパロディCD「ワーグナーはお好き?」など楽しいプログラムで魅せてくれるが、今回はシェルシ、ケージ、シュトックハウゼン、ノーノという4名に焦点をあて、アヴァン=ギャルドを真正面から聴かせてくれる。SACD層にはサラウンドでも音源が収録されており、音楽だけでなく、音響的にも大変たのしめる充実の内容。シェルシは、ブレス、息、楽器の音色を使って、Mantramを、スピーチ風の作品に仕立て上げた。始まり、中間、終りのない、時間を感じさせないような「surrounding sound」的作品となっている。トロンボーンかと思うとスヴォボダの肉声、それらがホーミーのように雄大に響き渡る。スヴォボダの妙技にご注目頂きたい。ケージ作品は、ピアノとオーケストラのための協奏曲「1957-58」からのある部分を抜き取って、それを様々なテンポで演奏、多重録音で8本のトロンボーンのための作品に仕上げた物。それぞれの録音はわかりづらいだがカノンのようになっている。スヴォボダが発する様々な音色に驚かされ、そして時折訪れる無音の状態に、ふっと自分という存在を思い出したりする不思議な作品。サラウンドで是非お楽しみいただきたい1曲。シュトックハウゼンの「Invasion」(侵略)は歌劇「リヒト」の「火曜日」の部分からのもので、原曲では「ミカエル(トランペット/善)」、と「ルシフェル(トロンボーン/悪)」が音楽的闘争を繰り広げる。シュトックハウゼンがこの「火曜日」を書いたのはスヴォボダがいたから。さらに、この抜粋ソロ版「Invasion」が生まれたのも「スヴォボダならできるから」とシュトックハウゼンは述べている。オペラ「リヒト」の特徴は、演者の身体の動きも様々に楽譜に指示されていること。このディスクからも、スヴォボダが前後左右に動いたりジャンプしたりしているのがおわかりいただけることと思われる。ノーノの作品は、「前」奏曲であると同時に「後」奏曲でもある曲で、前後に動きながら進む作品。不安定な要素の多い作品だが、突然電子楽器とトロンボーンによる低音域でのトーンクラスター的な部分が現われるなど、意表をつかれる瞬間が何度もある不思議な作品。マイク・スヴォボダは1960年グアム生まれのトロンボーン奏者、作曲家。1984-95にかけて、シュトックハウゼンと音楽活動を展開。その後も室内楽やジャズグループ、また、世界的オーケストラとも共演多数。彼が手がけた初演作品は300を超える。 | ||
明るい青空に〜ヘンツェ(1926-):アンサンブルのための音楽 テノール、ギターと8人の楽器独奏者のための「室内楽1958」 (1983/84) (ヘルダーリンの「明るい青空に」に基づく)/ チェンバロ、アルト、8人の楽器独奏者のための即興「アポロとヒヤシンス」(1948/49) (ゲオルク・トレーケルの「公園にて」に基づく)/ 7つの楽器のためのカンツォーナ(1982) クレメンス・C.レシュマン(T) マキシミリアン・マンゴルト(G) ヤン・クローネンブレック(Cemb) ニコル・ピーパー(A) アンサンブル・ホリゾント イェルク=ペーター・ミットマン | ||
録音:2011年10月。ヘンツェによる室内楽編成の作品集。「室内楽」(1958年) はブリテンに献呈された作品。詩人ヘルダーリンは、彼の生活の不安定さ、恍惚とした言葉、そして晩年は狂人として扱われたことなど、19世紀はなかなか受け入れられなかった存在だった。再び注目されるようになったのは、1945年以降のこと。特に後期の作品を中心に、題材とする人が多くなった。作曲家でも、ノーノ、クルターク、リーム、ツェンダーらがヘルダーリンの詩に作曲をしているが、その先駆的存在が、ヘンツェだった。この作品はもともとは12の楽章から成り、初演はテノールのピーター・ピアーズとギターのジュリアン・ブリームといったメンバーで行われた。ギターのソロ部分は単独で演奏されることも多い人気曲となっている。「アポロとヒヤシンス」はフォルトナーに師事していた頃、1947年の作品。12音技法で書かれている。チェンバロが物語を描写し、進ませる役割を果たす中、調と無調の間を漂うような世界が展開されている。16、17世紀の音楽作品のタイトルを思わせる「カンツォーナ」は、オーボエが奏でるメロディの装飾の美しさが、ルネサンスや初期バロックの声楽作品を思わせる。 | ||
モートン・フェルドマン(1926-1987):初期ピアノ作品集 休止〔2つの休止/休止3、4、5、6〕/変奏曲/ピアノのための自然な作品/拡張3/ピアノ・ピース1952 / ピアノのための3つのピース/ピアノ・ピース1955 /ピアノ・ピース1956 / last pieces /水平的な思考4/ ピアノ・ピース(フィリップ・ガストンのために)/ピアノ・ピース1964 /ピアノ ザビーネ・リープナー(P) | ||
録音:2009年1月。ジョン・ケージ、アール・ブラウンや、クリチャン・ヴォルフらとならんで、ニューヨーク楽派と称されるモートン・フェルドマン。その音楽でまず特徴に挙げられるのは、ライヒやグラスとは全く違うミニマル音楽的構造、そして、決して瞑想曲ではない沈思的な音だろうか。また、ここに収められた作品はすべて伝統的な記譜法で書かれているが、拍子(拍節)の扱い方はまったくあたらしく、西洋音楽に特徴の周期的なアクセント(リズム)が感じられないものとなっている。フェルドマンの作品は、lessness (無いこと)、すなわち、何かを表現しようとしたり、何かを論理的に展開しようとはしていない。にもかかわらず、フェルドマンの作品は、非常に複雑で、演奏の際には、細部に至るまで細心の注意を払うことが要求される。この2枚のCDは、フェルドマンが30年に渡って書いた作品の数々。フェルドマンは、生涯に渡ってピアノのために作曲していた。フェルドマンはピアノを愛しており、自身もよく演奏していた。ここに収められた作品全体を通して、フェルドマンという人間、およびその作品像が見えて来る。演奏するのはケージ作品なども手掛けるザビーネ・リープナー。フェルドマンならではの静謐な世界が広がる。 | ||
zeit(t)räume 〜時代 シュトックハウゼン(1928-2007):星座のための十二のメロディ(黄道十二宮)(1975)〜ソプラノとピアノ(*) ベリオ(1925-2003):セクエンツァIII〜女声のための(1975)(#) シュトックハウゼン:ピアノ曲 IX (1961) (+) / ベリオ:4つの民謡(声とピアノ)(1947) (*) クラウディア・ベトヒャー(S) ヨヴィタ・ツェール(P) | ||
録音:2012年2月(*)、2011年9月(#)、2011年11月(+)、ケルン、ドイツ。シュトックハウゼンのティアクライス(黄道十二宮、または星座のための十二のメロディ)。これまでにもトロンボーンのスヴォボダ率いるアンサンブル版や、オルガン版などをリリースしてきたWERGOレーベルから今回登場するのは、ソプラノとピアノによる演奏。「黄道十二宮」は、もともとは舞台作品「MUSIK IM BAUCH(胃の音楽)」(1974年)にルーツを持つ。この作品は、6人の打楽器奏者のためのもので、彼らの頭上には "Miron "という大きな鳥男がぶら下げられていて、その鳥男の胃にはオルゴールが隠されていて、物語の進行に沿って、演者達がそのオルゴールを動かす、という物。このオルゴールに仕込まれたメロディが、シュトックハウゼンが書いたもので、12の星座の特徴を、ピッチ、リズム、ハーモニー、そしてデュナーミクで表したものとなっている。このメロディを、この盤ではソプラノが歌い、ハーモニーをピアノが担当する。歌詞は、各星座人の特徴を述べたテキストを用いての演奏ということだけあって、非常にユニークな仕上がりとなっている。シュトックハウゼンのピアノ曲\は、1952-61年にかけて彼が書いた11のピアノ曲の中の1曲。セリー的要素の強い作品。セクエンツァは、ベリオが1958年から2002年にかけて取組み続けた、様々なソロ奏者のための曲集(14曲からなる)。第3番は、唯一の声楽曲。「4つの民謡」は、彼が、伝統に対して、真摯でありながらも常に革新的な姿勢で向き合っていたことを示す作品。意欲的なソロ作品と、伝統に対するリゲティの姿勢をみることのできる興味深い組み合わせといえるだろう。演奏するのは2008年からデュオを組んでいるクラウディア・ベトヒャーとヨヴィタ・ツェール。このプログラムは、実際に2010年に演奏会で取り上げた物。満を持しての録音。 | ||
ペーテリス・ヴァスクス(1946-):ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための作品集 愛の声(ヴァイオリンと弦のためのファンタジア)/ 遠き光(ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための協奏曲)/ 孤独な天使(ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための瞑想曲) アリーナ・ポゴストキナ(Vn) ユハ・カンガス指揮シンフォニエッタ・リガ | ||
録音:2011年6月。ラトヴィアが生んだ作曲家ヴァスクスによる、人間と社会への愛に満ちたサウンドを、ポゴストキナの奏でる美しくも悲しき音色で堪能する1枚。「愛の声」は、「これを聴いた人が、少しでもよりフレンドリーで愛に対してよりオープンになるように」という願いが込められた作品。ヴァイオリンがタイトルの通りの優しくも悲しい愛の旋律を奏でる。「遠き光」は1996-97年に書かれたもので、ヴァスクスの作品の中でもとても激しい作風の曲。コントラストに満ちた様々な短い部分の連なりで、時にラトヴィアの民謡を思わせる。2006年頃に書かれた「孤独な天使」は、世界の状況を見ている天使の悲しい目と、天使の羽の愛に満ちたはばたきが人々の心に平安や慰めをもたらしている様子を描いたとヴァスクスは語る。ヴァスクスの愛に満ちた旋律のヴァイオリンを奏でる、ポゴストキナは、ロシア生まれのドイツ人。2005年第9回シベリウス国際ヴァイオリンコクールでドイツ人として初めて優勝、これまでに何度か来日も果たしている。 | ||
ヴォルフガング・リーム(1952-):オルガン作品集 魔力、夜の熱狂(1980) /ファンタジー(1968) /3つのファンタジー(1967) / シンフォニアI〜オルガンのためのミサ(1971) /コンテンプラーツィオ(1967) /7つの形(1974) ドミニク・ズシュテック(Org) イェンス・ブリュッルス(タムタム) | ||
録音:2011年11月。リーム生誕60年記念盤。いくつかの作品はリームが10代の頃に書かれた作品だが、すでにいまの作風を思わせる大規模で暴力的ともいえる威力に満ちたリーム世界が展開されている。若い頃、自分の作風を模索している時にオルガンと出会い、様々なことを得たという。意欲と実験精神に満ちた力作が並ぶ。「3つのファンタジー」と「コンテンプラーツィオ」は実に情の深い作品。オルガンのためのファンタジーは、リーム曰く、「多面カットのプリズムのようで、熱狂的なエンディングのオルガン作品」。実際、彼のオーケストラ作品でみられる暴力的ともいえる威力を予感させるパッセージが盛り込まれている。「シンフォニアI〜オルガンのためのミサ」はミサやオルガンつきの交響曲を生み出したフランスの伝統の流れをくむ作品。6つの楽章は、共通の素材などで大規模作品ながら見事な統一感を示している。「7つの形」では直観性と論理性の両方のバランスが共存する不思議な作品。タムタムの音色が聴き手を別世界へといざなう。「魔力、夜の熱狂」は、オルガンの魅力のとりことなったリーム自身を、遠くから皮肉に満ちた目で見たような音楽。事実、このあとリームはしばらくオルガンのための作品から遠ざかっていた(2002-2004年にかけて書いた「無題」や、器楽作品の1パートとして用いたくらい)ほどで、リームにとって怪物的魔力を持つオルガンへの訣別の音楽のようでもある。これら魔力に満ちた作品を奏でるドミニク・ズシュテックは、オルガン版のシュトックハウゼンの黄道十二宮で私たちの度肝を抜く宇宙空間的演奏を展開した名手。ここでも、リーム独特のミステリアスながらも規模の大きな世界を、絶妙な間の取り方で見事に再現している。 | ||
ミヒャエル・ヒルシュ(1958-): 捨てられたディドーネ[ティトゥス・エンゲル指揮アンサンブル・クラージュ]/ 第5スタディ(ミュージック・コンクレート)[ミヒャエル・ヒルシュ]/ 弦楽四重奏曲[ソナールSQ]/悲喜劇[シュトゥットガルト新ヴォーカルゾリステン]/ ウンバウ2(ミュージック・コンクレート)[ミヒャエル・ヒルシュ] クラウディア・ノイベルト(S) ダニエル・オチョア(Br) | ||
録音:2004年、2009年、2011年。ミヒャエル・ヒルシュは、ミュンヘン生まれ&ベルリン在住の作曲家。これまでに、エリザベス・シュナイダー賞やブゾーニ賞といった作曲賞を受賞しており、イタリアのフェローシップも与えられるなど、今後の活躍が大変注目されている作曲家のひとり。「捨てられたディドーネ」は、メタスタージオが書いた、ディドーとエネアスのテキスト(1724)に基づいた再創作。ディドーとエネアスを担当する二人の歌手、そして10人の室内アンサンブルとミュージック・コンクレート(自然界から発せられる音や、機械や人の声などを録音、加工し創作される音楽)を巧くミックスし、ぎゅぎゅっと凝縮された神話の世界が広がる。エチュードは様々な要素を組み合わせる練習曲。最後の喜歌劇はスペイン語とドイツ語の2言語で構成される音楽劇。対話の断片からなる要素と、筋の通った朗読的要素、二つの混合体。とても独特で不思議な世界観を持つヒルシュの作風に、どっぷりと浸かってみては? | ||
ベンヤミン・シュヴァイツァー(1973-):室内楽作品集 別れの歌(デュエット)/ achteinhalb (8 1/2) / 「開始/網」(マルボルクII)/浄化/鈍重な草根と春の雨/別れの歌(ソロ) ティトゥス・エンゲル指揮ドレスナー・アンサンブル・カレッジ | ||
録音:2011年12月5日-8日。1973年7月26日ドイツ・マールブルク出身の作曲家ベンヤミン・シュヴァイツァー。1997年に現代音楽アンサンブルのドレスナー・アンサンブル・カレッジを創設した。シュヴァイツァーは器楽曲を中心に作曲し、近年は室内オペラなども手掛けている。ここでは室内楽作品を収録している。「開始/網」はイタリアの作家イタロ・カルヴィーノの作品「冬の夜ひとりの旅人が」の構成を模した作品。また鈍重な草根と春の雨は、英国の詩人T.S.エリオットの傑作「荒地」の冒頭の一節を引用したフルート、オーボエ、ファゴットのための作品。 | ||
LATE and UNKNOWN 〜コンロン・ナンカロウ(1912-1997):プレイヤー・ピアノのための作品集 リゲティのために(*) /ウルスラのための3つのカノン(*) /プレイヤー・ピアノのための練習曲第18番(第2版)(*) / プレイヤー・ピアノのための練習曲第48番/数字の付けられていない練習曲(カノン3:4:5:6) (#) / プレイヤー・ピアノのための練習曲〔第46番/第45d番(*) /第47番〕 | ||
(#)は世界初録音。(*)は、ナンカロウのプレイヤー・ピアノを用いた物としては初録音。ナンカロウは超難しい作品を書いて世に出したものの、満足できる演奏に出会うことができず、次第に機械ピアノ(プレイヤー・ピアノ)のために作曲するようになったというなんともヘンクツな作曲家。音の長さを計算して自らロールに穴をあけ(パンチング)、自動ピアノのための、人間にはほぼ演奏不可能とも思われるような複雑な作品を残している。今回リリースされるのは、ナンカロウ自身が所有していた自動ピアノを用いての演奏。自動ピアノなが、その音楽は、ジャズ的要素あり、ケージ的要素あり、複雑なリズムが織り成す世界は実にカッコイイものばかり。世界初録音作品も含まれる注目盤。 | ||
ロルフ・リーム(1937-):Hamamuth 〜天使の街(*) /この子供たちは誰だ?(#)
ニコラス・ホッジス(P) ベアト・フラー指揮バーデンバーデン&フライブルクSWRso. | ||
録音:2012年(*)、2009年(#)。世界初録音。リームはB.A.ツィンマーマンに認められ、ツェンダーと共にフランクフルト音楽大学の作曲家の教授を務めた。天使の街は、TVなどで放送されていたイラク戦争で破壊された街のこと。鋭いアクセントや、軍隊を思わせるような機械的なリズムなど、暴力的ともいえるエネルギーに満ちた作品。戦争に対してのアーティストとしての反対表明ともいえる。「この子供たちは誰だ?」も政治的色合いがあり、2作品ともドナウエッシンゲン音楽祭で初演されている。 | ||
ヴォルフガング・リーム(1952-):弦楽四重奏作品集 弦楽四重奏曲第11番(1998/2010) (*) / インタースクリプトゥム(弦楽四重奏とピアノのためのデュオ)(2000/02) (#) / グラーヴェ(トーマス・カクシュカの思い出に)(2005) (+) ミンゲット〔ミンゲ〕SQ マルクス・ベルハイム(P;#) | ||
録音:2011年12月11日-12日(*)、2012年1月16日-19日(#/+)。リームは弦楽四重奏曲を多数書いており(番号が付されているものだけでも12曲(2番は欠番))、そのひとつとして同じようなスタイルで書かれているものはない。リーム自身、弦楽四重奏は、楽器の組み合わせ方の一種で、チェロの低音域からヴァイオリンの高音域にまで亘る広い音域が、多様な対話のありかたを可能にするもの、というふうに考えており、古典派・ロマン派の伝統とは意図的に距離を置いている。弦楽四重奏第11番は、第11番とされているが、完成は第12番(2000/01)の後。1998年に着手され、2010年に完成した。抑制と爆発、簡易な部分とヴィルトゥオーゾ的な部分と、対照的な動きを繰り返しながらピークに達する。4楽章から成り、演奏に約35分かかる大曲。「インタースクリプトゥム」は、副題に「弦楽四重奏とピアノのためのデュオ」とあり、弦楽四重奏が一つの楽器として扱われ、弦楽四重奏とピアノによる二重奏、というかたちで書かれている。両者によるどのような対話が展開されるか、興味深い作品。「グラーヴェ」は、アルバン・ベルク弦楽四重奏団のヴィオラ奏者だったトーマス・カクシュカ(1940-2005)の思い出に捧げられた作品。アルバン・ベルク弦楽四重奏は、リームの作品の初演を多く手掛けており、リームは、弦楽四重奏曲第4番を彼らに捧げている。「グラーヴェ」の冒頭は、 イ短調、 イ長調、 変ホ短調の3つの調をさまよいる。続いてメロディックな部分があらわれ、時折聴かれる2度下降の音型は、ため息を表する。最後は浄化と救済で終るが、悲痛な気分が残る作品。ミンゲット・カルテットは、芸術は大衆に愛されるものであるべき、と唱えた18世紀スペインの哲学者パブロ・ミンゲットの名を冠したカルテット。リームの弦楽四重奏作品の全曲録音プロジェクトを手掛けるほか、ルジツカの弦楽四重奏曲全集録音やイェルク・ヴィトマンの弦楽四重奏の全曲演奏プロジェクトなどを手掛ける一方、J-P.サラステやゲルハーヘルらとも多く共演を重ねている、多ジャンルにわたり活躍している団体。 | ||
リゲティ他:オルガン作品集
リゲティ(1923-2006): ムジカ・リチェルカータ(1951-53)(シュステク編曲/オルガン版/原曲:ピアノ)/ オルガンのための2つの習作(1967/69) より〔ハーモニーズ/クレ(流出)〕 ドミニク・シュステク(1977-):話すシグナル(オルガンのための即興) (2012) リゲティ:ヴォルーミナ(1961/62, rev.1966) ドミニク・シュステク(Org) | ||
録音:2012年8月6日-9日、聖ペテロ文化ステーション、ケルン。シュトックハウゼンの「星座のための12 のメロディー」オルガン版(WER-6736)で強烈な印象をあたえたドミニク・シュステクが、今度はリゲティに挑戦! リゲティによるオルガン作品は3曲のみだが、作曲発展過程において重要な足跡となっているだけでなく、現代のオルガン作品の新しい道を切り開いた。「ヴォルーミナ」は、トーン・クラスターの作品。メロディー、リズム、ハーモニー(方向運動を伴うもの)を排した物。時間的な芸術というより、空間的な芸術として聴き手に届く作品で、オルガンならではの迫力と、シュステクの巧みな音色選び、そして素晴しい残響が、この大規模な作品を見事に響かせる。「2つの習作」の「ハーモニーズ」は、たえず10の音からなる和音が鳴り響き、その和音が少しずつ変容していくという物。「クレ」は虫の羽音のように細かく動き続ける音型が、アメーバのように形を変えていく。ムジカ・リチェルカータは、リゲティが30歳になる前頃に書いた作品。11曲から成り、もともとはピアノの作品だが、オルガンで聴いてもこれがまた面白い。第1曲はラの音のみで構成され、単音、オクターブで重ねられるラの音、そしてリズムという要素で構成されている(一番最後にレの音が現れる)。オルガンの残響や、様々な音色で次々と現れるラの音を聴いていると、精緻に織り上げられた響きにだんだんがんじがらめにされていくような気分になる。ピアノでは味わえない迫力がある。続く楽曲も、音の素材を極限まで制限したものが続き、4曲目は「手回しオルガン風ワルツ」だが、大道芸人がひろばでまわしている手回しオルガンとは違い、どちらかといえば不気味さ濃厚のワルツで、これがまたオルガンで聴くと効果抜群!8曲目の有名なセリー音楽的な曲も、軽快なリズムで、様々なストップを駆使して実に効果的に響かせている。シュステクは、リゲティが織り上げた緻密な音の細密画を、オルガンによって、空間に見事に再現している。シュステクの即興作品は、単なるオルガンとは思えないような、ノイズとしか思えない音や、ウィンドチャイムを思わせるような響きやマリンバ的な音色など、様々な音色を駆使した物。楽器が壊れないかと心配になるほど、シュステクが楽器を弾きまくっている。2013年はリゲティ生誕90周年、彼の記念碑的オルガン作品を核とした、非常に魅力的なディスクの登場といえるだろう。 | ||
ジョン・ケージ(1912-1992):笙、水で満たされた5つの巻貝のための「 TWO3 」 〔第4番&第7番/第2番/第1番&第6番/第8番/第3番/第3番&第9番/第9番/第5番&第10番〕 シュテファン・フッソング(アコーディオン/巻貝) ウー・ウェイ(笙/巻貝) | ||
録音:2013年6月10日-12日。晩年の6年間、ケージは、いわゆる「数の音楽」を書いていた。「数の音楽」は数字のタイトルが付されており、その数字は、演奏者の数、あるいは、その作品の部分の数を指す。また、同じ演奏者数の作品が複数ある場合、上付き数字で区別される。たとえば、ここに収録されている「 TWO3 」は、二人の演奏家のための作品シリーズの第3番のこと。「私はここにきてようやく、美しい音楽を書いているような気がする」とは1990年のケージの言葉。同年彼は笙奏者宮田まゆみに出会い、日本古来の楽器、笙のための作品を委嘱された。ケージは17本の竹管からなる笙の音色と、そのうち6本まで同時に吹け、6本でひとつの音を出すことも、6本それぞれが違う音色を出し複雑な効果を生み出すことができることに感銘を受けた。さらに、この笙との出会いにより、ケージが1940年代から取り組んできた「 Zen(禅)」の精神のひとつの帰着点を見ることとなった。このTWO3は、水のような動き(段階的な変容、沈黙によって中断する流れなど)が特徴。笙のパートを演奏するのは世界的中国笙奏者、ウー・ウェイ。中国の笙は日本のとは違って37本の竹管から成る。さらに、指定の笙と巻貝以外に、アコーディオンも登場する。これは、笙とアコーディオンの音色に似た部分があるという二人の奏者の考えによる物。時に楽器特有の音を出し、時に両者渾然一体と融け合う音色を聴いていると、不思議な静寂につつまれ、瞑想の世界にいざなわれるようだ。 | ||
クルターグ(1926-):ピアノ連弾と2台ピアノのための作品全集 遊び〔I/ III / IV / VIII (#) /マショー作品の編曲(*) /ラッスス作品の編曲(*) /フレスコバルディ作品の編曲/ シュッツ作品の編曲(*) /パーセル作品の編曲(*) /J.S.バッハ作品の編曲/組曲 ブガッロ=ウィリアムズ・ピアノ・デュオ[ヘレナ・ブガッロ、エイミー・ウィリアムズ(P)] | ||
録音:2011年10月19日-21日、2013年3月29日-30日。(#)の一部と(*)は世界初録音。ルーマニア出身&ハンガリーの作曲家クルターグによる、2015年現在の「ピアノ・デュオ」作品全集。前半は全8巻からなる彼のピアノ曲集「遊び」から、後半はマショーからJ.S.バッハに至るまでのルネサンス音楽の編曲、そしてピアノ連弾のための「組曲」がおさめられている。「遊び」は、短い中に様々な世界が凝縮され、移ろい変わり、聴く人を透明な音宇宙に誘う。後半の一連の編曲ものは、クルターグと過去の巨匠達との対話であり、端正な佇まいの曲の数々がクルターグの手で編曲され現代の楽器で演奏されることで、時代が移っても変わらない作品の普遍性が際立つ。演奏は現代作品演奏で知られるブガッロ=ウィリアムズ・ピアノ・デュオ。クルターグの音楽の中できらめく研ぎ澄まされた音色は必聴。 | ||
「レオパルディ・ツィクルス」より〜クラウス・オスパルト(1956-): 室内アンサンブルとライヴ・エレクトロニクスのための「 Così dell'uomo ignara... 」 (2007-08) [ペーター・ヒルシュ指揮コレギウム・ノヴム・チューリヒ、SWR実験スタジオ/2009年11月19日]/ 大管弦楽のための「 Sovente in queste rive... 」 (2009-10) [ルーペルト・フーバー指揮ケルンWDRso./2011年12月16日]/ 混声合唱、バス・テューバ、打楽器四重奏とライヴ・エレクトロニクスのための 「 Sopra un basso rilievo antico seppolcrale... 」 (2008-09) [ハンス・ニッケル(バスTu) ケルンWDR放送cho.、ケルン打楽器四重奏団/2012年4月25日-27日] | ||
録音:[/内]。ドイツの作曲家、クラウス・オスパルトが2005〜2011年に書いた一連の作品「レオパルディ・チクルス」。18世紀後半〜19世紀前半のイタリアの詩人ジャコモ・レオパルディによる詩「砂漠に咲く花」を題材にした全6作の作品のうち、このCDには3作品目、5作品目、4作品目がおさめられている。200年近く前に書かれたレオパルディの厭世的、抒情的な世界が、現代に通じる普遍的なテーマとして音楽の中に息づいているこれらの作品群は、不気味な低音や、エレクトロニクスによる音色の歪み、各楽器や合唱が作り出す滲むような響きによって独特な世界を形作っている。重々しい曲調ながらカタルシスを味わえる作品。 | ||
ジョン・ケージ(1912-1992): ピアノのためのソロ [Solo for Piano] (1957-58) |
ザビーネ・リープナー(P) | |
録音:2012年5月。この「ピアノのためのソロ」は、ケージの「ピアノとオーケストラのための協奏曲」(1957-58作曲)のピアノ・パートのこと。普通に鍵盤を押すことによって発せられる音、内部奏法の音色、ピアノの弦をこする音など様々な音が交錯するリープナーは、ケージの「南のエチュード」(WER-6740)や、アール・ブラウンの「抽象的なサウンド・オブジェクト」(WER-6745)などを手掛けた現代音楽のスペシャリスト。ここでも、ケージの謎のような楽譜を見事に音楽化している。ケージが心がけていたのは、「非主体的な音」、音自体にいかなる方向性や意味、色や記憶や伝統などを持たせないことだった。50年代は主に2つの手法によってこの音を求めるようになる。まず、「偶然性」。中国の易経に基づいて算出された要素に基づいて音を構築していく、いわば作曲行為時に不確定要素が盛り込まれるように作曲した。そして、50年代後半になると、易経に基づいて決められたことを楽譜化するのではなく、むしろ楽譜自体に不確定性をもたせ、音符や楽譜上ではなく、「偶然性」(チャンス・オペレーション)が演奏時に初めて形になるように、演奏者に委ねられるようになった。このスタイルで生み出された初期の作品のひとつが1957-58年に書かれた「ピアノとオーケストラのための協奏曲」で、この協奏曲のピアノ・パートが「ピアノのためのソロ(Solo for Piano)」として独立した作品となっている。63ページ、84の異なるタイプのグラフィック譜から成る。この楽譜は、一見すると楽譜のようだが、実際の音の高さやリズムなどは指定されていないもので、いわば演奏者への「提案」のような物。リープナーは内部奏法も巧みに取り入れながら、ケージの音世界を展開している。なお、本来、この作品は楽章分けされていないが、聴き手が作品を味わいやすいようにと、7つにトラック分けされている。 | ||
シュトックハウゼン(1928-2007): モメンテ(ソプラノ、4つの合唱グループ、13人の楽器奏者のための) (1965年版) マルティナ・アロヨ(S) アロイス・コンタルスキー(ハモンドOrg) アルフォンス・コンタルスキー(ロウリーOrg) ケルン放送cho. カールハインツ・シュトックハウゼン指揮ケルン放送so.団員 | ||
録音:1965年、WDR 。初出 (LP): WER-60024 〔発売:1967年/廃盤〕。初CD化。レーベル初期に生み出されたLPで未CD化のものをあらためて世に送り出す「 Studio Reihe Nerer Musik 〔スタジオ・ライン・新音楽〕」シリーズ。「モメンテ」はWDRの委嘱で1961から62年にかけて作曲された。ソプラノ、4つの合唱グループ、13人の楽器奏者のための作品だが、始まりも構造も終りも明確には指示されていない。複数の意味を持つ独立したイベントからなる作品。計画された長さで、手で扱える発音体から発せられる音に基づく「瞬間」のいくつかのグループが、演奏の様々なヴァージョンを作り上げる。シュトックハウゼン自身の指揮の下、当時の現代音楽シーンを牽引する演奏家たちが臨んだ真剣勝負の録音。極限の緊張感と集中が生みだした奇跡的な名演。 | ||
WERGO 創立第1弾&ブーレーズ指揮〜シェーンベルク:月に憑かれたピエロ(全曲)
ヘルガ・ピラルツィク(Vo) マリア・ベルクマン(P) ジャック・カスタニエ(Fl/ピッコロ) ギィ・ドゥプリュ(Cl) ルイ・モンテーニュ(バスCl) ルーベン・ヨルダノフ(Vn) セルジュ・コロ(Va) ジャン・フショ(Vc) ピエール・ブーレーズ指揮 | ||
録音:1961年/初発売 (LP): WER-60001 (1963年) 〔他に Disques Adès, Everest からも発売〕。LP 発売時、仏アカデミー・シャルル・クロ「グランプリ・ドゥ・ディスク」受賞。リマスタリング: 2012年、DSD 。おそらく初 CD 化。収録分数(推定):約29分。なお LP の表記や資料によっては、演奏家はまとめて「ドメーヌ・ミュジカル」扱いになっていることがある。また、1CDの商品だがブックレットが厚いため、2CD用ジュエルケースに収納されている。Studio Reihe Nerer Musik シリーズ。ドイツの現代音楽名門レーベル、WERGOの記念すべきリリース第1弾、初演から約50年経った頃の「月に憑かれたピエロ」。ブックレットには発売当時のブーレーズのコメントが掲載されているが、シェーンベルク自身が信頼していたエリカ・ワーグナー&シュティードリー盤を聞いて、「今日の我々の耳には絶望的に時代遅れ」とし、シェーンベルク自身が演じるシュプレヒシュティンメを聴いたことのあるレナード・シュタイン(シェーンベルクのアシスタントでもあった)の助言を得るなど、様々な試行錯誤をしてこの演奏に至った経緯が語られている。シェーンベルクの無調時代を代表する作品、『月に憑かれたピエロ』。話し言葉の伴奏のために書かれた器楽の音楽、「メロドラマ」のスタイルで書かれている。このメロドラマというジャンルは19世紀に一世を風靡し、一度下火となったものの、1910年頃再び人気が出てきたもので、シェーンベルクがこの作品を書いたのは最先端、というわけでは無かったが、メロドラマを代表する作品として歴史に輝いている。五人の奏者が八つの楽器を受け持つという編成による12音技法の伴奏パートと、語る旋律シュプレヒシュティンメ(シュプレヒゲザングとも/音符の符尾に×印がつけられた音をまず正確に音符どおりの高さで発声したのち、すぐに高く、あるいは低く変化させる)が織り成すミステリアスな世界は、一度聴いたら忘れられない鮮烈な物。この作品を書くよう示唆したのは女優(正確には話し家、あるいは朗吟家)のアルベルティーネ・ツェーメで、この曲は彼女にささげられており、初演も彼女によって1912年にベルリンで行われた。 | ||
ブーレーズ指揮〜シェーンベルク:クラリネット、バスクラリネット、マンドリン、 ギター、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとバリトンのためのセレナード Op.24 ルイ=ジャック・ロンドルー(B) ギィ・デュプル(Cl) ルイ・モンテーニュ(バスCl) ポール・グルンド(マンドリン) ポール・スティングル(G) ルーベン・ヨルダノフ(Vn) セルジュ・コロー(Va) ジャン・フショ(Vc) ピエール・ブーレーズ指揮 | ||
録音:ステレオ。収録時間:30分46秒。初出[LP] : WERGO, WERGO-60002〔発売:1963年〕 。 DSD リマスタリング:2012年。※CDは1枚だが、解説書が48ページと厚いため、2枚組用のプラケースに入っている。 ブーレーズ指揮によるWERGO最初期録音がDSDリマスタリングを経てCDで蘇った。高音質レーベル「CYBELE RECORDS」を手掛けるIngo Schmidt-Lucas 氏によるマスタリング。ステレオ録音なだけでも有難いところだが、これが驚くほどすばらしい音質!くっきり明瞭、演奏レベルの高さが十二分に味わえるたまらないディスクの登場。シェーンベルクはかの有名な『5つのピアノ曲』 Op.23でついに12音技法を体系化し、世に送り出した。その次の作品番号(Op.24)を持つ『セレナード』は12音技法の可能性をさらに押し広げたもので、7楽器と声楽という、ピアノ独奏曲とは違う豊かな色彩を備えた編成によって書かれた重要作。ギターが入っているあたりブーレーズの『ル・マルトー・サン・メートル』を思わせる音響で、機械的な動きにしてキラキラした音を振りまくのが印象的。それをブーレーズが指揮しているのだから何とも面白い演奏となっている。 | ||
ジョン・ケージ(1912-1992):ソナタとインターリュード ソナタ Nos.1-4 /第1のインターリュード/ソナタ Nos.5-8 /第2のインターリュード/ ソナタ Nos.9-12 /第3のインターリュード/ソナタ Nos.13-16 アントニス・アニセゴス(P) | ||
録音:2012年10月26日-27日。インド哲学の影響を受けて作曲したこの「ソナタとインターリュード」(1946-48)は、プリペアード・ピアノ、そしてケージの名を広く世界に知らしめることとなった名作。ネジ、ボルト、ゴム、フェルトやプラスチック製のものをピアノ弦に設置、ガムラン音楽の楽器を思わせる打楽器の音色を得て、インドの瞑想的な世界が広がる興味深い作品。どのようなネジをどのピアノ弦に設置するか、という指示は、ケージの後年の作品と違ってかなり細かく厳密なもので、ピアニストはこの作品のプリペアード・ピアノの準備に約3時間要するといわれる。ガムラン音楽を思わせる要素の強い音楽のため、どこか呪術的な方向に走りがちな演奏が多いが、このアニセゴスの演奏は、時に非常に機械的、時に非常にミステリアスと、様々な表情で聴かせる。アニセゴスは1970年ギリシャ生まれ。7歳からピアノを始め、作曲でも受賞多数、電子音楽も演奏するというマルチの才能の持ち主。 | ||
ペーテル・エートヴェシュ(1944-): 6人のためのソナタ(2人の鍵盤楽器奏者、3人の打楽器奏者と 1人のサンプリング・ピアノ奏者のための)(2006) (*) / 詩篇151(フランク・ザッパの思い出に)(#) / コスモス(1または2つのピアノのための) (1961, rev.1999) (2台ピアノ版)(+) グラウ&シューマッハー・ピアノ・デュオ(*/+) ケルン打楽器四重奏団 パブロ・アルバレス(Kb;*) | ||
録音:2007年(+)、2008年(*)、2010年(#)。エトヴェシュにとって、「母国語」音楽はバルトークである、という。「6人のためのソナタ」は、もともとは2006年のバルトーク生誕125周年にあわせて書かれたピアノ協奏曲CAP-KO (協奏曲for Acoustic Piano, Keyboard, and Orchestra)。もとはピアノ、キーボードとオーケストラのための協奏曲で、キーボードはピアノが奏でた素材を拡大したりするために用いられた。エトヴェシュはこの作品でバルトークの開拓精神を象徴したかったという。この協奏曲を6人の奏者のために編曲したのが「6人のためのソナタ」。バルトーク的な連続8度などが印象的な作品。「詩篇151」は、フランク・ザッパが1993年に42歳の若さで亡くなったことへの悲しみを込めた作品。エトヴェシュは「ザッパがこんなに若くして死んでしまうなんて、神を信じることはできない、むしろ神に抗議したい」と述べており、この抗議の意が込められたような作品となっている。「コスモス」はバルトークのミクロコスモスにかけたが、同時にガガーリンの有名な宇宙飛行直前の1961年3月に書かれた物。エトヴェシュは当時17歳で、ガガーリンはこの若き作曲家の想像力に感銘をうけたという。 | ||
シュトックハウゼン(1928-2007): Amour 〔愛〕(*) /ハルレキン〔小さなハーレキン〕 ) (*) / オペラ「光」(一週間の七つの日)〜月曜日「 WOCHENKREIS 」(#) ミケレ・マレッリ(Cl;*/バセットホルン;#) アントニオ・ペレス・アベリャン(シンセサイザー;#) | ||
録音:2013年3月。18歳でシュトックハウゼンと出会い、以後10年以上に渡ってアーティストとして関わりをもち、彼の作品のいくつかを、作曲者自身の指揮によって初演も手掛けたクラリネット奏者マレッリによるシュトックハウゼン。シュトックハウゼンは、マレッリに、バセットホルンにも注力するよう強く勧めたというが、ここではバセットホルンによる「光」も収録。「AMOUR(愛)」は、シュトックハウゼンが、作曲当時関わりのあった女性に送った5つの短い詩に基づいた5曲からなる小品集。3曲目の「蝶々が飛んでいる」は、2匹の蝶が追いかけっこをしながら飛んでいる様子を、2つのリズムと2つのテンポの間を行ったり来たりすることで表現した物。7分におよぶ難曲として知られるが、シュトックハウゼンにも認められたマレッリの演奏、注目。「ハルレキン(小さなハーレキン(=道化))」は、シュトックハウゼンの舞台作品として最もよく知られたもののひとつで、奏者は、衣装を身にまとい、かなり緻密に楽譜上に師事されているダンスの動きをし、聴衆を音響的にも視覚的にも楽しませながら、難曲を弾かなければならない。本来は40分以上もする大曲だが、ここではパントマイムの部分を演奏。マレッリがどのような「道化」を演じるか、聴き逃せない(CDなので映像はついていないが、ダンスをしている足音はきちんと収録されている)。バセットホルンとシンセサイザーのためのWOCHENKREISは、一週間の七つの日は、イエス・キリストの誕生から昇天までを描いた大作オペラ「光」(一週間の七つの日)の月曜日。大天使の役割を与えられたシンセサイザーを務めるのは、同じくシュトックハウゼンの信頼も厚かったアントニオ・ペレス・アベリャン。「エヴァ(イヴ)の歌」をバセットクラリネットが音楽的に奏で、シンセサイザーと絡む充実の世界。 | ||
in croce 〜グバイドゥーリナ(1931-): コントラバスとピアノのためのソナタ(1975) (*) /コントラバスとピアノのためのパントマイム (1966) / イン・クローチェ(作曲者編曲/コントラバスとバヤン版(2009) / 原曲:チェロとオルガン(1979) or チェロとバヤン(1991) )/ プレリュード(作曲者編曲/コントラバス版(2009) /原曲:チェロとオルガン(1974) ) ダニエーレ・ロッカート(Cb) ファブリツィオ・オッタヴィウッチ(P) マッシミリアーノ・ピトッコ(バヤン) | ||
録音:2009年、2012年。(*)を除き、世界初録音、あるいは当版による世界初録音。グバイドゥーリナによるコントラバス作品集。うち2作の原曲はチェロ用だがグバイドゥーリナ自身が編曲。「ソナタ」では比較的伝統的な雰囲気の作品。だが、フィンガリングなどは演奏者の自由にゆだねられている部分も大きい。イン・クローチェでは、バヤンの音色がロシアのフォークロアを思わせる中、コントラバスが嘶く。 | ||
細川俊夫(1955-):弦楽四重奏のための作品集 開花 [Blossoming] (2007, rev.2009) (#) / 花の妖精 [Floral fairy] (2003) / 弦楽四重奏のための6つの小品 「書 [Kalligraphie] 」(2007, rev.2009) (*) / ランドスケープI [Landscape I ] (1992) / 沈黙の花 [Silent Flowers] (1998) / 弦楽四重奏曲「原像 [Urbilder] 」(1980, rev.1984) |
アルディッティSQ [アーヴィン・アルディッティ(Vn1) アショット・サルキシャン(Vn2) ラルフ・エーラーズ(Va) ルーカス・フェルズ(Vc)] | |
録音:2012年2月。(*)は世界初録音、(#)は改訂版の世界初録音。2013年「サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ」のテーマ作曲家、細川俊夫の注目アルバム。「書」は書のジェスチャーのエッセンスを6つの金言的な音絵で表している。『音楽は音を用いたカリグラフィー(書)である。そしてそれは沈黙というキャンヴァスの上に描かれる』(細川俊夫)。ほかにも、華道の哲学世界(細川の祖父は華道家)の「花の妖精」と「沈黙の花」、蓮の花が開く様子を描いたという「開花」、細川の初の弦楽四重奏作品で、すでに彼の哲学から成る静寂の世界が広がる「原像」などを収録。アルディッティ弦楽四重奏団による演奏は極めて精緻で、細川の世界を巧みに表現している。 | ||
ジョージ・アンタイル(1900-1959):ピアノのための作品集 ジャズ・ソナタ(1923) /ラジオのためのソナチネ(1929) /花火と世俗的なワルツ(1919) /黄金の鳥(1921) / 飛行機ソナタ(1922) /スウェル・ミュージック(1928) /ピアノ・ソナタ第3番「機械の死」(1923) / ピアノ・ソナタ第5番(1923) /野蛮なソナタ(1923) /リトル・シミー(1923) /メルレのために(1925) / オペラ「トランスアトランティック」〜序曲とタンゴ(1930) /4手のための組曲(全14曲)(1939) (*) / 機械仕掛けの蛇(リヴィングストン編曲、ピアノ6手版)(1921) (#) ギー・リビングストン(P) フィリップ・ケレル(P;*/#) ステファヌ・レアシュ(P;#) | ||
録音:2013年5月-6月、サン・マルセル寺院、パリ。アメリカの未来派作曲家アンタイルは、高名な割には音のイメージが湧かない作曲家なので、ピアノ曲をこれだけまとめたアルバムは大歓迎。コープランドと同年生まれで、ガーシュウィンより2歳、ヘンリー・カウエルより3歳年少だが、いずれとも作風は異なり、意外にも近代ロシアのピアノ音楽を思い起させる。名前を伏せて聴けば、ストラヴィンスキーかショスタコーヴィチの未知の作品かと見紛う個性的な面白さに満ちている。アンタイルは多才で興味深い人物だったようで、音楽家のみならず、エズラ・パウンド、ジョイス、イェーツら文学者やピカソと親しく、また発明の才にも恵まれ、今日の無線LAN や携帯電話の原理となるものも、彼が絡んでいると言われている。そうした才気が彼の音楽にも充溢している。ジャズ・ソナタはわずか1分49秒の作品で、「自動ピアノのように弾け」という指示がある。また「飛行機ソナタ」では最尖鋭の文明機器を、「野蛮なソナタ」では原始主義を見事に昇華、芸術作品に仕立てている。ピアノの打楽器的な用法、敏捷な指の動きは痛快でストレス解消にもオススメ。演奏者ギー・リビングストンはパリ在住のアメリカ人奇人ピアニスト。アンタイル研究家としても知られ、これ以上ない説得力を示している。 | ||
ジェルジ・リゲティ(1923-2006):ピアノのためのエチュード 全曲 1巻(1985)〔無秩序/開放弦/妨げられた打鍵/ファンファーレ/虹/ワルシャワの秋〕/ 2巻(1988-1994)〔ガランボロン/メタル/眩暈/魔法使いの弟子/不安定なままに/組み合わせ模様/悪魔の階段/無限柱〕/ 3巻(1995-2001)〔白の上の白/イリーナのために/息を切らして/カノン〕 トーマス・ヘル(P) | ||
録音:2011年9月26日-28日。通算16年をかけて作曲されたリゲティの超難曲に全曲録音が登場。挑んだのはブレンデル、そしてクルタークも絶賛したドイツの若きピアニスト、トーマス・ヘル。既に何度も演奏会で取り上げているという兵だけに注目盤。リゲティ自身ピアノを弾くのがとても好きだったため、凝りに凝った作品が並ぶ。まず特徴なのが、その多層性。ポリフォニックに書かれていることはもちろん、声部によってリズム(強拍の位置)が異なっていたり(=ポリリズム)、時には同時に演奏される声部間のテンポが異なっていたり(=ポリテンポ)と、非常に難解。しかしそれが完璧に克服されたときに鳴り響く素晴しい音楽は、他では得られない。このレコーディングもたった3日間で仕上げているが、この音楽的な演奏にはただただ圧倒されるばかり。リゲティのエチュードといえばエマールのものが有名だが、ここに待望の素晴らしい新録音がうまれた。アルフレート・ブレンデルに「知性とヴィルトゥオージティの両面をあわせもつ」と絶賛されたピアニスト、トーマス・ヘルはドイツ・ハンブルク生まれ。オルレアン国際ピアノコンクールで優勝しているほか、さまざまな国際コンクールで入賞している。現在ハノーヴァー国立音楽演劇大学とシュトゥットガルト国立音楽芸術大学で行進の指導にあたる傍ら、日本でもマスタークラスを開催している。古典から現代音楽まで幅広いレパートリーを持っているが、とりわけ20/21世紀の音楽の演奏を得意としている。このリゲティのエチュードも何度も演奏会で演奏しており、実演に接したクルタークは、“リゲティの音楽を理解し、それを解釈し、最高度の演奏技術をもって演奏する特別な才能 " とヘルのことを絶賛している。 | ||
spaces & spheres 〜直観的な音楽 ungone/銀の舌の/液状の恐怖/ライト・ブライト・ナイト/彼女は空気を浄化した/再び見えざるもの マルクス・シュトックハウゼン(Tp/フリューゲルHr) タラ・バウマン(Cl/バスCl) ステファノ・スコダニッビオ(Cb) ファブリツィオ・オッタヴィウッチ(P) マルク・ナウセーフ(Perc) ワルター・クインタス(編集) | ||
録音:2008年2月。1980年代から共演を重ねている現代音楽シーンを彩る5人の音楽家が4日間、直観の赴くままディスカッションも無しに演奏された音楽から CD 1 枚分に編集されたもの。メンバーの一人スコダニッビオは2012年に亡くなっており、このディスクは彼に捧げられている。 | ||
ハンス・ツェンダー(1936-): 32の声と4つの管弦楽グループのための「 Logos-Fragmente (Canto IX) 」(2006-2009) Fragments 〔 II: Passion (Pirqe Abot) / III: Warum (Johannes 10,17–18) / V: Valentinos (*) / VIII: Maria Magdalena (Johannes 20,13–18) / I: Im Anfang (Johannes 1,1–16) (*) / VII: Weg (Johannes 14,1–9) / IV: Weinstock (Johannes 15,1–6) / VI: Thomas (*) / IX: Geist (Apostelgeschichte 2,2–4 / Acta Johannis) 〕 エミリオ・ポマリコ指揮バーデン=バーデン&フライブルクSWRso.、 SWRシュトゥットガルト声楽アンサンブル | ||
録音:2011年12月。全曲としては( (*) を除き)世界初録音。ツェンダーといえば精緻な指揮者だが、作曲活動も旺盛。このLogos Fragmente は音と言葉の関係を追及している彼ならではの、規模の大きな言葉を伴う作品。新約聖書(ヨハネの福音書)やユダヤの人々の間に伝わるタルムード(ヘブライ語の経典)など、様々なテキストに基づいている。4つのグループにシンメトリーに分けられた器楽奏者、そして32人の声楽家という編成。大規模なオーケストラで、充実の打楽器パート、そして四分音ずれて調律された2台のピアノが含まれている。時にはギターまで加わるという多彩ぶり。やや難解な印象を受ける作風だが、言葉と音楽が混然一体となって聴き手に迫って来る。 | ||
Quintets & Solos 〜細川俊夫: 笙と弦楽四重奏のための「ランドスケープ V [Landscape V] 」/ ヴィオラのための「哀悼歌 [threnody] (+) / リコーダーと弦楽四重奏のための「フラグメンテ II [fragmente II] 」(#) / チェロのための「小さな歌 [small chant] 」/ヴィオラのためのエレジー/ ハープと弦楽四重奏のための「ランドスケープ II [Landscape II ] 」(#) アルディッティSQ 宮田まゆみ(笙) 吉野直子(Hp) 鈴木俊哉(リコーダー) | ||
録音:2013年9月16日-17日、SWR バーデン=バーデン・ハンス・ロスバウト・スタジオ(#以外)、2012年9月24日、津田ホール(#)、セッション。(+) は世界初録音。 WERGOより、アルディッティが奏でる細川俊夫作品集第2弾が登場。弦楽四重奏のための6つの小品「書(カリグラフィー)」(WER-6761)でも話題となったが、今回は、弦楽四重奏のほか、細川作品を語るうえで欠かせない笙を担当する宮田まゆみ、ハープの吉野直子やリコーダーの鈴木俊哉らをゲストに迎えた、さらに豪華な内容。いずれも、細川ならではの静寂の世界がますます研ぎ澄まされた作品。(#)は津田ホールで特別に録音された物。リコーダーが時に尺八のような響きを繰り出し、ハープが時に弦楽四重奏の通奏低音のように、時に弦楽四重奏をのみ込むような音で様々に変化していく。世界初録音の(+)は聴いていると次第にトランス状態になるような作品。細川は自分の音楽について「聞き手を“無という静寂の境地 "へと誘う」と述べているが、彼の禅を思わせる日本に根ざした音世界は、宗教、文化的イディオムを越えて、様々な国の人の耳を魅了しつづけている。 | ||
シェルヘン〜シェーンベルク(1838-1889):モノドラマ「期待」Op.17
ヘルガ・ピラルツィク(S) ヘルマン・シェルヘン指揮北西ドイツpo. | ||
録音:1960年/初発売;1964年( LP 品番: WER 50001 )。2012年、DSDリマスタリング。'studio reihe neuer musik'。収録時間:31分25秒。1CDだがブックレットが厚いため、2CD用ジュエルケース入り。シェーンベルク最初の舞台作品「期待」のシェルヘンによる演奏。シェルヘンといえば、1912年にシェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」を初演したなど、同時代の音楽の推進に非常に積極的だった。「期待」はシェーンベルクがわずか17日で書き上げた大作だが、演奏が困難なこともあり、初演は1924年まで行われなかった(初演の指揮はツェムリンスキー)。死へのおそれに満ちた悪夢のような不安な闇の世界とグロテクスな官能が入り混じる様が、テンポの激しい変化や非常に難しい歌唱・管弦楽パートによって表現されている。初演から40年弱のときを経て行われたこの録音、シェルヘンは気迫満点、非常に濃厚で劇的な音楽で聴かせる。現代音楽も得意とし、「ピエロ歌い」としても名を馳せていたピラルツィクも、シュヒターらに鍛え上げられた歴史をもつ北西ドイツ・フィルの面々と一体となって、迫力ある歌唱を聴かせている。 | ||
ロスバウト〜ストラヴィンスキー: バレエ音楽「アゴン」(1957) |
ハンス・ロスバウト指揮 バーデン=バーデン南西ドイツso. | |
録音:1957年10月/初発売;1964年( LP 品番: WER 50002 )。2012年、DSDリマスタリング。'studio reihe neuer musik'。収録時間:27分19秒。1CDだがブックレットが厚いため、2CD用ジュエルケース入り。「アゴン」はギリシャ語で「競争」を表す言葉で、1957年6月17日 作曲者の75歳の誕生日を祝う「オール・ストラヴィンスキー演奏会」で、ストラヴィンスキー自身の指揮によって初演(音楽のみ)され、同年12月1日、親友のバランシンの振付により、舞台初演されたバレエ音楽。出版譜の扉ページにも、ストラヴィンスキー自筆のギリシャ文字によるタイトルが刷られた。「12人のダンサーのためのバレエ」という副題がつけられている。作品は三分の二がセリー主義で書かれ、また、凝った旋法も用いられた作品。ストラヴィンスキーは、17世紀中ごろのフランスの舞踊教本に基づいて、いわば組曲のかたちをとった1幕の作品に仕立てている。特に物語性はないが、突き刺すようなリズム、ブランルの部分の透明感や、効果的な楽器の音色の選択など、随所にストラヴィンスキーの創意の冴えが光る。現代音楽の擁護者としても名を馳せた名指揮者ハンス・ロスバウト(1895-1962)の明晰な指揮ぶりも注目。 | ||
カールハインツ・シュトックハウゼン(1928-2007): 打楽器奏者のための「ツィクルス」(1959)(2種) 〔第1版(*)[クリストフ・カスケル(Perc)] /第2版(#)[マックス・ノイハウス(Perc)]〕/ ピアノ作品 X (+) [フレデリク・ジェフスキ(P)] | ||
録音:1960年10月(*)、1963年2月(#)、1964年12月(+)。( LP 品番: WER 60010 ) 。DSDリマスタリング:2012年。'studio reihe neuer musik'「打楽器奏者のためのツィクルス」は、クライニヒシュタイン打楽器コンクールのために作曲されたもので、複数の調律されたカウベル、アフリカのドラムなどといった楽器指定のある作品。楽器の調達が難しい場合は、似たような音色のものを用いることも出来る。楽曲の長さも指定がないが、大抵9-15分に収まる。1959年に初演を務めた打楽器奏者カスケル(シュトックハウゼンの自主レーベルに収められた演奏も彼によるもの)は、「最初に楽譜を見た時はこの作品がどれほど難しいかすぐにはわからなかった」が「作曲されたエレメンツが満ちた楽譜ながら、奏者には即興の自由が与えられている」と語る。楽器の調達、配置などの難しい問題を克服した素晴しい演奏。第2版の奏者ノイハウスはこの作品のために、新しい奏法を編み出したというので、どちらも興味深い。ピアノ作品 X は、無秩序と秩序を結び付けようとした作品。スケール(音階)を用いて、無秩序と秩序があらわされる。天才的離れ業師ジェフスキの技巧が光る。 | ||
ヘルベルト・アイメルト(1897-1972): 久保山愛吉への墓碑銘(語り手と話された言葉のための/ 墓碑銘翻訳:ギュンター・アンダース)(1957–1962)[リヒャルト・ミュンヒ(語り)]/ 6つのスタディ(電子音楽)(1962)[西ドイツ放送電子音楽スタジオ/ レオポルト・フォン・クノーベルスドルフ(リアリゼーション)] | ||
初発売;1966年( LP 品番: WER 60014 )。2012年、DSDリマスタリング。'studio reihe neuer musik'。収録時間:41分22秒。ヘルベルト・アイメルトは、1951年に西部ドイツ放送協会電子音楽スタジオを設立し、その後シュトックハウゼンやカーゲルらに影響を与えた、電子音楽の祖の一人といえる存在。久保山愛吉への墓碑銘は、1954年3月1日、ビキニ環礁で行われた水爆実験に巻き込まれた被爆した数百隻のマグロ漁船団の内、唯一放射線障害で死亡したと言われる第五福竜丸無線長(国内代理店記載に『船長』とあるが、誤り)だった久保山愛吉氏を悼んだ作品。最初に彼の死を悼む内容の詩が読まれ、その後、その肉声の音声を、テープ、アンプ、スピーカー、フィルターなどを通して電気的に変容させたものが流れる。語り手が発した言葉(=音)のみを素材として用いており、その他の外部音の録音素材などは一切使われていない。おそろしさすら感じさせる圧倒的な仕上がり。6つのスタディは、1962年春に作曲されたもので、こちらの作品もまた、人があるテキストを朗読した音声を変容させていく作品。オーディオ的にかなり聴きごたえのある1枚。 | ||
リュク・フェラーリ(1929-2005):作品集 電子ピアノと磁気テープのための「 UND SO WEITER 〔などなど〕」 (1965-66) (*) / 音楽的プロムナード(オリジナル・ミックス)(1964-69) より〔第1部/第2部〕(#) ジェラール・フレミー(P) | ||
録音:1966年(*)、1969年(#)/初発売;1969年( LP 品番: WER 60046 。2012年、DSDリマスタリング。'studio reihe neuer musik'。収録時間:36分11秒。(*)はどちらかというと耳障りな音で構成される。(#)も、雑踏の雰囲気、街中で聴こえるラジオの音、誰かの叫び声など、街中で聴こえてくるような音を巧みにコラージュして作り上げられた、なんとも深遠な世界。フェラーリ的な環境音楽好きにはたまらない内容。音質が妙になまなましくリアルなのも魅力。 | ||
Studio Reihe Neuer Musik 〜B.A.ツィンマーマン:作品集 チェロとオーケストラのための協奏曲「パ・ドゥ・トロワ〔3ではなく〕の形式で」(1965-66) (*) [ジークフリート・パルム(Vc) エルネスト・ブール指揮バーデン=バーデン南西ドイツ放送so.]/ フォトプトシス(大オーケストラのための前奏曲) (1968) (#)[ハンス・ツェンダー指揮ベルリン放送so.]/ Tratto II (1968) (+) [演奏者詳細記載なし/電子音楽] | ||
初発売;1972年( LP 品番: WER 60062〔国内代理店は "WER 60072" としているが、これはアリベルト・ライマンの作品集で誤り〕)。初CD化。2012年、DSDリマスタリング。'studio reihe neuer musik' 現代音楽シーンの牽引レーベルとして高く評価されている WERGO は、2012年に創立50周年を迎える。1960年代から豪華演奏陣による充実の演奏をリリース、もちろん初期はLPでの発売だが、その中にはCD化されていないものもたくさんある。記念の年を迎え、WERGO は「新音楽スタジオ・シリーズ [Studio Reihe Neuer Musik] 」と銘打たれたレーベル初期の名録音から、CD化されていなかった物をあらためて世に送り出す(なお、国内代理店は『 Studio Reihe Nerer Musik スタジオ・ライン・新音楽シリーズ』『スタジオ・ライン・シリーズ』等と記載しているが、斜字の部分は誤り。ライへ [Reihe] は英語ならば「シリーズ」「ライン」の意味だが、これを並べているということは、意味が判っていないということになる)。20世紀の音楽史のハイライトともいえるこれらの録音は、現在もなおその作品や演奏の新鮮味とオーセンティックさを高く保ち、録音の質も驚くほどの良さ。丁寧なマスタリングとともに、20世紀音楽の音楽史の貴重なページが約40年ぶりに鮮やかによみがえる。 シリーズ第1作はツィンマーマン。彼の作風の特徴の一つが、引用の技法を用いているということ。バロックからロマン派、さらに民俗音楽、ジャズなど様々なジャンルの音楽のエッセンスが隠し画のように取り入れられている。この引用された素材たちは、高い次元で、音楽の中で、過去・現在・そして未来と融合、爆発している。(*)はひとつの音楽単細胞から、魔術的なまでの力をもつ怪物的音楽を作り上げる。パルムの超人的な弓さばきは圧巻。(#)は「軍人たち」を思わせるようなラッパの咆哮が聴き手の不安感を掻き立てる作風で、時折ベートーヴェンの第九を思わせるパッセージが聴こえるなど、コラージュ技法がふんだんに盛り込まれた、彼の真骨頂的作品のひとつといえるかもしれない。 (+)は 1968年の大阪万博のために書かれた、電子音楽最初期の重要作品。Trattoとは様々な意味があるが、ここでは「ストレッチ」と解される(時・そして空間の伸長)。曲の最初から進行する部分と、最後からさかのぼる部分が同時進行で書かれた。時空が捻じ曲げられたような不思議な感覚をおぼえる。ジークフリート・パルムは1927年ヴッパータール生まれ。8歳から父の手ほどきでチェロを始め、マイナルディにも師事した。1947年から15年間、イッセルシュテットの下、北ドイツ放送so.の首席チェロ奏者として活躍、その後もハンブルクおよびケルン放送so.の首席チェロ奏者として重要な役割を果たした。何よりも現代音楽のエキスパートとして歴史に名を刻んでおり、カーゲル、リゲティ、クセナキス、ペンデレツキ、フェルドマン、そしてツィンマーマンら多くの作曲家が彼のために作品を書いている。ほか、オーケストラも指揮者も最高の布陣といえるだろう。WERGOの、現代音楽の旗手としての高い理想を目の当たりにするようだ。 | ||
Studio Reihe Neuer Musik 〜クリスティアン・ウォルフ(1934-):作品集 ピアノのためにI (1952) (*) [デイヴィッド・チューダー(P)]/ ピアニストのために(1959) (#) [フレデリック・ジェフスキ(P)]/ 10の部分からなる「バードックス」(1971) (抜粋) (+) 〔 II(和音)/ V(金属)/ VI(メロディと伴奏)/ VIII(100ビット) / \(流砂)〕 [デイヴィッド・チューダー(バンドネオン/Org) デイヴィッド・バーマン(Va/メロディオン/笛) クリスティアン・ウォルフ(ベースG/Fl) ゴードン・ムンマ(Hr/ハーモニカ) フレデリック・ジェフスキ(P/Perc) ジョン・ナッシュ(Vn)] | ||
録音:1971年8月/初発売;1972年( LP 品番: WER 60063 。初CD化。2012年、DSDリマスタリング。'studio reihe neuer musik'クリスティアン・ウォルフはアメリカの作曲家。ハーヴァード大学で古典学を専攻した。演奏家自身が音楽を練り上げること、ある程度まで自由に音響に働きかけ、それに反応することをよしとした作風。思わせぶりな「間」など、どこか日本の詩歌の世界も彷彿とさせるかもしれない。(*)はチューダーのために書かれ、1952年に彼が初演した。長さと密度(和音)が変化する16の部分から成っている。初期作品の特徴とされる「間」(休符)がふんだんに用いられているが、緊張感に満ちた演奏。14分38秒の作(#)は歌手と一緒に演奏されることも念頭において作られたが、ここではジェフスキが一人で演奏。10ページから成るがその楽譜は難解で、「演奏者を迷宮に迷いこませる」とヴォルフ自身が述べているほど。この作品も音と音の間の「間(休符)」が緊張感を高めている。(+)は管弦楽のための作品。10の部分から成っており、この録音では半数が収録されている。20世紀音楽史を彩る豪華な面々による演奏、ちなみにBurdockとはゴボウのこと。デイヴィッド・バーマン〔ベールマン〕(1937-):ハイフェッツの甥。リーガー、プスール、そしてシュトックハウゼンらに師事したアメリカの作曲家。1966年からソニック・アーツ・ユニオン(電子音楽ライヴ演奏集団)のメンバーとして電子音楽の分野で活躍。自ら開発したシステムを使用している。ゴードン・ムンマ(1935-):アメリカの作曲家、電子音楽作曲家、ホルン奏者。ソニック・アーツ・ユニオンを設立。音と空間を巧みに組み合わせた作風。舞踊を始め、他ジャンルとのコラボレーション多数。フレデリク・ジェフスキ(1938-):アメリカの作曲家、ピアニスト。シュトックハウゼンのピアノ作品の初演に他ズさらったほか、ブーレーズ、アイスラーの作品のレコーディングも行っている。ドラマチックで、20世紀の難曲ピアノ作品の一つに数えられる「不屈の民」の作者としても名高い。デイヴィッド・チューダー(1926-):アメリカのピアニスト、そして作曲家。シュトックハウゼンの「コンタクテ」など重要作品の初演に参加、また、ブーレーズのソナタ第2番をアメリカに紹介した。ケージとの親交もあつく、「ハプニング」(偶然性の音楽)とでもいうべきものを発明。ケージの問題作「4'33''」も世界に紹介した。1960年以降は主として電子音楽の演奏者として活躍している。 | ||
angels リザ・リム:いかれた口笛を伴うC管コルネット独奏のための「 WILD-Winged-One 」 * リチャード・アイレス:4つのトランペットのための「 No.37 C 」 レベッカ・サウンダース:ダブル・ベル・トランペット二重奏のための「 Neither 」 * ゲオルク・フリードリヒ・ハース/マルコ・ブローウ編曲: ...Einklang freier Wesen...(四分音フリューゲルホルン独奏版) カール・ラッグルズ:弱音器付管楽六重奏のための「 Angels 」(#) アガタ・ズベル:ダブル・ベル・トランペット独奏のための「 Wounded Angel 」 マルティン・スモルカ:バケットミュート付4つのトランペットのための「ピアニッシモ」 マルティン・パディング:ダブル・ベル・トランペット独奏のための「 23 Sentences & Autograph 」 マルコ・ブローウ: Deathangel(多重録音) ジミー・ロウルズ:ダブルベル・トランペットとプリペアド・ピアノのための「 The Peacocks 」(#) マルコ・ブローウ(Tp)他[3Tp、Hr、Tb、P] | ||
録音:2012年5月。(#)を除き世界初録音。曲目後の * が何を指しているかは、国内代理店のアナウンスに記載されておらず、いない。現代音楽シーンで特に活躍しているトランペットの名手、マルコ・ブローウ。今回も様々なテクニックを駆使して新しい世界を展開している。「これらの音楽は、振動する空気がおりなスピリチュアルで天使のような存在」とブローウは語る。 | ||
マルク・・アンドレ(1964-):ピアノ作品集 2台ピアノのための「 S1 」(2009-2012) (*)/ Un-fini III (1993-95) / iv 11a (2011) / iv 11b (2011) /コントラプンクトゥス (1998-99) / iv 1 (2010) (#) 辺見智子(P;#以外) 菅原幸子(P;*/#) | ||
録音:2012年5月。パリ生まれで、パリ国立高等音楽院にてクロード・バリフとジェラール・グリゼイに師事、その後シュトゥットガルトでラッヘンマンの薫陶を受け、ドナウエッシンゲン音楽祭などでオーケストラ賞を受賞。2012年にはモーツァルト週間のコンポーザー・イン・レジデンスを務め、現在はドレスデンのカール・マリア・フォン・ウェーバー音楽院で教授を務めているベルリン在住の作曲家アンドレによるピアノ作品集。消え去ってしまう「音」の反射と衰退を緻密に研究した成果に基づいたもので、さらにトーン・クラスター、弦を指でさすって音を出すなどの様々な音色が聴かれる。彼自身が最も信頼している楽器・ピアノで音・音色・音響を極限まで追及した成果。 | ||
原田敬子(1968-):作品集 F-fragments(アコーディオンとピアノのための) 〔 Twin Leaves / Speedy / Noise / Fall Time Blues / Pray for 18537? +2654? / Vertical / Points/ Alert/ BONE/ Try to Fly / (no title) 〕/ Book I(アコーディオンのための)〔 Detour / Aprinkled Efforts / Anticipation / Hen-pu 〕/ Nach Bach(ピアノ・ソロのための) 〔 XV: 廻由美子へのオマージュ/ VI: ル・コルビジェへのオマージュ/ IX: 間宮芳生へのオマージュ/ X: 美加理(ミカリ)へのオマージュ/ XVIII: 三善晃へのオマージュ/ XXI: ブライアン・ファーニホウへのオマージュ/ XII: ステファン・フッソングへのオマージュ〕 廻由美子(P) シュテファン・フッソング(アコーディオン) | ||
録音:2013年1月10日-12日、相模湖ホール/録音:桜井卓。日本人作曲家、原田敬子の作品集。福島が強く意識された作品が並ぶ。演奏するのはアコーディオンの世界的名手、フッソングに、ピアニストの廻。原田作品ならではの時間軸や緊迫感を感じさせる世界を見事に響かせている。F.フラグメンツは、2012年11月3日に世界初演された作品。原田自身「直接の面識がない人々、行ったことのない土地、そこで流れた時間を、覚醒して意識的に、この11の断片的楽章に記憶しようと試みた」と述べているが、福島をめぐる様々な事象や人物が刻み込まれた音を、ピアノとアコーディオンが極度の集中の中響き合わせていく。BOOK I(アコーディオンのための)は2010年8月28日、サントリーサマーフェスティヴァルの一環の、芥川作曲賞創設20周年記念ガラ・コンサートで委嘱世界初演された物。アコーディオンにはどちらかというと難しく、上手く効果が出ないと言われている表現、すなわち、囁くような音色で素早くレガートで動き回ること、垂直的で鋭い音色による多重音の速い複雑な音の連なり、気の遠くなるほどの長音を弱音で、極限の蛇腹技術でコントロールすること、そして複雑な手の動きと同時に複雑なリズムで「口」(無声音)も使うなど、名手フッソングをしても「不可能」と言わしめた非常に難しい作品。原田はこのCDのフッソングの演奏には意にそぐわないところはない、と述べている。Nach Bach は、田崎悦子ピアノリサイタルシリーズ〜NACH BACH〜のために書かれたもので、2004年の9、11月に初演された。田崎が2004年に平均律でリサイタルのプログラムを構想していた折、「平均律」に関係する作品を作ってほしい、と原田にリクエストした。平均律の各曲のプレリュードかフーガのいずれかを任意で選び、各主題の音組織を全く自由に並び替えることで、各曲に対応する全24曲を作曲。それぞれは、主に芸術関係者へのオマージュとなっている。本CDには、原田の3名の恩師、美加理(俳優)、ル・コルビジェ(建築)、そして廻とフッソングへのオマージュの7作品が収録されている。原田敬子は、幼少のころからピアノで即興演奏をするなどして作曲を開始。桐朋学園大学で作曲を川井學、三善晃、ブライアン・ファーニホウに、ピアノを間宮芳生、室内楽(クルターク作品)をジェルジ・クルタークに師事した。大学では作曲を専攻すると同時に、ピアノ・室内楽・指揮法を学び、1993年に研究科課程を修了している。 '90年代半ばから「演奏家の、実際の演奏における内的状況を作曲する」というコンセプトで、演奏家の身体と脳の可能性を拡げることで実現される、独自のテンションや字管構造を特色とした作品を多く書いている。これまでに第62回日本音楽コンクール第1位(室内楽)をはじめ、芥川作曲賞(2001、管弦楽)、尾高賞(2008、管弦楽)ほか受賞多数。現在、東京音楽大学(芸術作曲)准教授。 | ||
レナート・デ・グランディス(1927-2008): 48の前奏曲(1998-2002) |
アントニオ・タラッロ(P) | |
録音:2013年2月-6月、ミラベッロ・レコード・スタジオ、パヴィア。レナート・デ・グランディスはマリピエロ門下で、マデルナ、ノーノ、ベリオと同世代にあたるイタリアの作曲家。1960年代から80年代はドイツに住み、前衛派を代表するひとりだったが、1987年に作曲をやめてしまい、哲学に専念したり、仏教系宗教の信者となりアジアにたびたび旅をした。その後作曲意欲が再燃し「前奏曲」と題するピアノ曲を48曲作った。様々な作風によるが、作曲者の心象日記のような趣の小品集。ピアニスティックな面白さもあり、グランディスの魅力をすべて味わえる。演奏のタラッロはイタリアのベテラン。 | ||
アドリアーナ・ヘルツキー(1953-): ...und ich sah wie ein glaesernes Meer, mit Feuer gemischt... 〔そして私は草の海が炎と混ざり合っていくのを見た〕(1996/97) / Efeu und Lichtfeld 〔ツタと光の草原〕(2008) (*) / ...und wieder Dunkel I 〔そしてふたたび暗闇 I 〕 (1985/90) (#) ドミニク・ズステック(Org) ザビーネ・アキコ・アーレント(Vn;*) イェンス・ブリュッルス(打楽器;#) | ||
録音:2013年4月。ヘルツキー独特の不安感をあおられる世界を、シュトックハウゼン(WER-6736) やリゲティ(WER-6757)でも名演をのこしている鬼才オルガニスト、ズステックの演奏で満喫できる1枚の登場。ヘルツキーの音楽は、1970年代に初めて発表された当時、不安やパニックと結び付けて論じられ、エキセントリックで不安定な音楽であると批評された。ヘルツキー作品における重要な要素のひとつが「時間」。「私が戦争のことを思う時、そこで体験される様々な『時間』のことを思う。戦闘機のパイロットが感じる時間、爆弾が地面で爆発する時の時間・・・。こうした、ひとつの場所で起こっている、時間の感覚の様々な相違は、私の作曲の核となっている」(ヘルツキーの言葉)。彼女の作品の中では、拍動を感じない時間や、加速したり減速したりする時間など、その感覚は様々。さらに、音の空間的広がりも、無重力の宇宙空間のようであったり、非常に狭い空間であったり、伸縮自在。そんなヘルツキーの世界を表現するには、空間を広く使うオルガンという楽器はぴったりといえるだろう。ヘルツキー独特の世界にどっぷり浸かれることうけあい。 | ||
ラヴ・ソングス〜アンサンブル・ルシェルシュへの献呈作品集 ハンス・アブラハムセン(1952-):愛の歌 / マーク・アンドレ(1964-): Iv 9 カローラ・バウクホルト(1959-):愛の歌 / セバスティアン・クラーレン(1965-): M. B. R. M. M. P. P. ハヤ・チェルノヴィン(1957-):愛の歌 / クリストファー・フォックス(1955-):欲望への線 ゲオルク・フリードリヒ・ハース(1953-):愛の歌1, 2, 3 ニコラウス・A.フーバー(1939-):音楽に寄す。Poem -Liebesradierung ゲオルク・クレル(1934-): Mit innigster Empfindung / ラモン・ラスカーノ(1968-):無言歌 エレーナ・メンドーザ(1973-):ルシェルシュのための愛の歌 W.A.モーツァルト/サルヴァトーレ・シャリーノ(1947-)編曲:グラスハーモニカのためのアダージョKV 356 (617a) ファビオ・ニーダー(1957-):Dear SCHUH auf dem WEG zum SATURNIO エクトール・パッラ(1976-):ルシェルシュのための愛 / エンノ・ポッペ(1969-): Schweiss アンドレ・リシャール(1944-):Y al volver la vista atràs se ve… ルチア・ロンケッティ(1963-):Rosso pompeiano /スケルツォ for ensemble ロルフ・リーム(1937-):愛の歌 / フランソワ・サラン(1972-):愛の情景 ヨハネス・シェルホルン(1962-):シャンソン(愛の歌) コルネリウス・シュヴェーア(1953-):ノットゥルノ・アモローゾ マルティン・スモルカ(1959-): AMarcORdOSO / ヨハネス・マリア・シュタウト(1974-):愛の歌 ギュンター・シュタインケ(1956-):お前に / カスパール・ヨハネス・ヴァルター(1964-):Angelorum Psalat イェルク・ヴィトマン(1973-):愛の歌 / ゲルハルト・E.ヴィンクラー(1959-):愛の歌(無言歌I) アラ・ザガイゲヴィチ(1966-):愛しい人のまなざし ハンス・ツェンダー(1936-):アルファベット(カーマスートラ) アンサンブル・ルシェルシュ | ||
録音:2011年。 | ||
ジャチント・シェルシ(1905-1988): 組曲第9番 Ttai (1953)(全9楽章)/ 組曲第10番 ka (1954)(全7楽章) |
ザビーネ・リープナー(P) | |
録音:2014年3月7日-9日、5月2日-4日。謎につつまれた作曲家、ジャチント・シェルシ。東洋の神秘に影響されたイタリアの作曲家で、トランス状態で即興演奏したものを録音、そのテープを他者に採譜させるという作曲スタイルをとり、生涯にわたって異端視され続けていた。魔術的な魅力に満ち、即興的に積み上げられていくモチーフやリズムは、時としてミニマルミュージックのような、時として広い洞窟やお寺の中に一人でいるような錯覚をおぼえるような、実に不思議な世界。根強いファンがいる作曲家の一人。今回リリースされるのは、そんなシェルシのピアノ作品。組曲第9番は「Ttai」、これは中国の易書の11番目のシンボル(イタリア語表記)で「平和」を意味する。シェルシは出版譜の前書きに「この作品は大いなる内的穏やかさをもって聴かれ、演奏されなければならない。ナーヴァスな人々は、離れて頂きたい。」と書いている。近年、瞑想音楽としても見直されてきている作品。組曲第10番の「Ka」は様々な意味を持つ(「要素」、あるいはサンスクリット語では「誰?」や「何?」の意味)。ほぼ単旋律で不規則的なアラベスク模様を描くような不思議な雰囲気の作品。 | ||
ジョン・ケージ: ONE 7 (*) / FOUR 6 (#) |
ザビーネ・リープナー(P) | |
録音:2012年5月(*)、2013年7月(#)。2曲とも、ピアノ版による世界初録音( FOUR 6 は多重録音)。晩年の6年間、ケージは、いわゆる「数の音楽」を書いていた。「数の音楽」は数字のタイトルが付されており、その数字は、演奏者の数、あるいは、その作品の部分の数を指す。また、同じ演奏者数の作品が複数ある場合、上付き数字で区別される。たとえば、ここに収録されている「ONE 7 」シリーズは、一人の演奏家のための作品シリーズの第7番のこと。この作品は、唯一女性作曲家ポーリーヌ・オリヴェロス(1932年生まれ)に献呈されたという意味で特別な物。「FOUR 6 」の要素も感じられる作品で、さらに、作曲家自身による参考用のピアノ版演奏録音が残されている。「FOUR 6 」は多重録音。リープナーは4部それぞれで、ピアノの奏法を変えている。第1部はいわゆる普通の奏法、第2部はプリペアド、第3部はピアノの弦をはじき、第4部はノイズのような音を出している。 | ||
コントラプンクテ〜イェルク=ペーター・ミットマン(1962-): …バッハとともに〜「主よ、人の望みの喜びよ」への接近/ ヴァイオリンとアンサンブルのための「ドナ・ノービス・パーチェム」(*) / 7人の奏者のためのモンテヴェルディの音楽「ラメント」/ ニーチェのテキストに基づく女声と9つの楽器のための「十字架の歌」(#) / 10の楽器のためのパッサカリア(*) /ソプラノと7つの楽器のための「永遠性について」(+) アンサンブル・ホリゾント イェルク=ペーター・ミットマン指揮(*) キャスリン・ベーレ(S;+) ニコル・ピーパー(A;#) | ||
録音:2014年1月。1曲目はバッハのかの有名なコラール合唱曲をもとにしたパロディ的作品。作曲者のミットマンはヴェストファーレン生まれ。教師やジャーナリスト、そして指揮者、作曲家、さらにオーボエ奏者としても活動している。アンサンブル・ホリゾントの音楽監督を務めており、作品もアンサンブルを意識したものを中心に創作活動を展開している。 | ||
Craquelé 〔ひびの入った〕〜フランツ・マルティン・オルブリッシュ(1952-): 大オーケストラのための「 grain 」(*) / フルートと電子ライヴのための「フルート、音&電子ライヴ」(#) / Craquelé 〔ひびの入った〕(+) /時の停止(**) シャン・エドワーズ指揮(*) ローランド・クルティヒ指揮(+) hr so. 〔旧・フランクフルト放送so.〕(*/+) ヤマザキユリ(Fl;#) マルティン・バウムゲルテル(電子ライヴ;#) ウラディミール・ゴルリンスキ指揮モスクワ新音楽スタジオアンサンブル(**) フランツ・マルティン・オルブリッシュ(電子音;**) | ||
細川俊夫(1955-):ディープ・サイレンス〜GAGAKU〜 盤渉調の調子(アコーディオンと笙のための) 細川俊夫:クラウドスケープス〜月の夜 (アコーディオンと笙のための) 黄鐘調の調子(笙のための) 細川俊夫:線V(アコーディオンのための) 双調の調子(アコーディオンのための) 細川俊夫:光の中の呼吸のように(笙のための) 壱越調の調子(アコーディオンと笙のための) |
宮田まゆみ(笙) シュテファン・フッソング (アコーディオン) | |
かけた瞬間、部屋の中が京都の竹林にはやがわり。聴き進めていくうちに、笙の音とアコーディオンの音に、体が八方から包み込まれる不思議な感覚が味わえる。まさに雅な無重力音世界、他では味わえない感動。 | ||
ワーグナーはお好き?〜 Do you love Wagner? 2歩すすんで1歩さがる (ローエングリン「第三幕への前奏曲」より)/ ミックス・アンド・マッチ (ニュルンベルグの マイスタージンガー「第一幕への前奏曲」より)/ Tコード(トリスタン和声)への前戯 (トリスタンとイゾルデ「前奏曲」より)/ 愛の漂流(「愛の死」より)/ 重量オーバーの荷物(「タンホイザー」より) |
マイク・スヴォボダ(Tb) スコット・ローラー(Vc)他 | |
トロンボーンを吹かせたら右に出るものはいない、スヴォボダ渾身のワーグナー編曲集。一曲目のローエングリーン第三幕への前奏曲は、ジャングルの奥地から聴こえてくるツンタカツンタカ刻むリズムにのって、トロンボーンが一人寂しくテーマを奏でる。ジャングルなのに何故かジャズのようにかっこよく聞こえてしまうのは、スヴォボダならではの上手さなのだろう。アコーディオンとメロディオンで聴くトリスタン和声は不思議とはまって、モダンタンゴのよう。ニーチェやマリネッティ、サティがワーグナーについて語った文章も曲の合間に朗読されており、ワーグナーの意外な一面を見ることができる。 | ||
雲と月 アドリアーナ・ヘルスキー(1953-):雲と月 J.S.バッハ:オブリガート・チェンバロと ヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ第1番 ト長調 BWV.1027 同第3番 ト短調 BWV.1029 アドリアーナ・ルスキー: ミゼレーレ(アコーディオンのための;1991/1992) J.S.バッハ:オブリガート・チェンバロと ヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ第2番 ニ長調 BWV.1028 アドリアーナ・ヘルスキー: 名詞から名詞へ II(チェロのための;1983) |
ユリウス・ベルガー(Vc) ステファン・フッソング (アコーディオン) | |
なんとアコーディオンの名手フッソングがチェンバロ・パートを担当するという豪華なバッハの登場。チェンバロとチェロ(あるいはヴィオラ・ダ・ガンバ)のバージョン以上にそれぞれのパートが美しく絡み合って、実に見事。音もきわめて良好。ルーマニア生まれのヘルスキーは、なんとも辛口な作風が魅力。 | ||
PRIMEVAL SOUNDS-〜太古の響き ドビュッシー:前奏曲集I(1909-1910)/ クラム:マクロコスモスI(1972) クラム:. 始原の響き(創生I)「巨蟹宮」 ドビュッシー:デルフィの舞姫 クラム:プロテウス「双魚宮」 ドビュッシー:帆 クラム:牧歌(紀元前10000年の アトランティスの王国から)「金牛宮」 ドビュッシー:野を渡る風 クラム:十字架「磨羯宮」 ドビュッシー: 音と香りは夕べの大気の中に漂う クラム:幻のゴンドラ乗り「天蠍宮」 ドビュッシー:アナカプリの丘 クラム:夜の魔法I「人馬宮」 ドビュッシー: 雪の上の足あと/西風の見たもの クラム:影の音楽(エオリアン・ハープ のための)「天秤宮」 ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女 クラム:無限の不思議な輪 (永久運動)「獅子宮」 ドビュッシー:さえぎられたセレナード クラム:時の深淵「処女宮」 ドビュッシー:沈める寺 クラム:燃えいずる火「白羊宮」 ドビュッシー:パックの踊り クラム:夢の影像(愛と死の音楽) 「双子宮」 ドビュッシー:ミンストレル クラム:らせんの銀河「宝瓶宮」 |
エンリコ・ベッリ(P) | |
ジョージ・クラムは、1929年に生まれたアメリカの作曲家。内部奏法を多用し田作品、マクロコスモスの第1集(1972年)の出版譜の冒頭で、彼は次のように述べている。「私の「マクロコスモス」のタイトルと形式は、20世紀のピアノ音楽の偉大なる2人の作曲家に対する私の敬意が反映されている。それは、バルトークとドビュッシー。もちろん、私はバルトークのミクロコスモスと、ドビュッシーの24の前奏曲を念頭において書いた(マクロコスモスIIは、1973年に完成され、マクロコスモスIとあわせると24の‘幻想的な作品集 'となる)。」 ドビュッシーの前奏曲第1集は、「大地」に、そしてクラムのマクロコスモスI は「天体」に根源を持っている。これらは二つとも、近代化や機械化に逆らうかのように、古代から伝わる神話への郷愁によって調和している。ドビュッシーは想像上の時空の中で、自身が神話の登場人物のパーンとなって、海、風、音を感じたままに音にしている。クラムは、無意識の感情や夢の投影としての星座の神話の世界を見つめながら作品を書いた。スタンスは違えども、二人とも神話を手がかりとして異次元への旅を試みている。そんな二人の作品が交互に演奏されることによって形成される螺旋階段をひとつひとつ昇っていくと、クラムの作品によって我々の想像力の扉が開かれ、ドビュッシーの作品の中に広がっている、今までに見たことのない世界、聴いたことのない響き、感じたことのない香り、すべてがくっきりと鮮やかに聴く者の目の前に立ち上ってくる。そしてドビュッシーのあとに演奏されるクラムの曲も、無機的な宇宙ではなく、香り高く幻想的な神話の世界として我々のもとに降りてくるような感じがする。不思議な気分で、2枚とも一気に聴きとおせてしまう不思議な説得力のあるCD。 エンリコ・ベッリはペーザロ出身の、フレスコバルディからシェルシまで、膨大なレパートリーをもつピアニスト。写真家、指揮者、役者、舞踊家、画家、すべての芸術家たちが一堂に会するPerpianosolo Festival にも度々出演している。今後、クラムのマクロコスモス全集を録音予定もあるということ。沈思に満ちた演奏は、説得力抜群、哲学者のようなピアニスト。 | ||
サティ&スヴォボダ〜音声測定法 サティ:スポーツと気晴らし &スヴォボダ:20のフランス歌曲 [第1番−第10番] スヴォボダ:練習曲第1番「スピード」 サティ: 歌曲集「潜水人形」(全5曲)/ 最後から2番目の思想(前3曲)/ 3つの恋愛詩 スヴォボダ:5つのカノン 練習曲 サティ:スポーツと気晴らし &スヴォボダ:20のフランス歌曲 [第11番−第20番] サティ:グノシエンヌ第1番 (声、トロンボーン、アコーディオン、メロディカ) |
アンヌ=マリー・クリューゲル (声/バレルOrg/トイP/ メロディカ[ホーナー社製 鍵盤ハーモニカ]) ステファン・フッソング (アコーディオン/ トイP/メロディカ) マイク・スヴォボダ (Tb/メロディカ) | |
「私は音楽家ではない・・・誰もがあなたにそう言うだろう。それは正しい。私の音楽は純粋に、音声測定法なのだから」(サティ)。 ある意味この言葉は真実かも、と思わせる1枚。天下一のトロンボーン名人、スヴォボダの思慮深い作品配列と選曲、編曲によって、わけのわからないことをやっては「異端児」と呼ばれていたサティが、実に科学的で理知的な香りの強い作曲家であった、ということが浮かび上がって来る。 グノシエンヌ第1番は、ピアノ・ソロで聴くと、けだるげなステキな感じだが、このディスクの最後に収められているスヴォボダの編曲版で聴くと、謎めいた雰囲気を漂わせつつも、音の運びやハーモニーには無駄なものがなく研ぎ澄まされたものであることが感じられ、興味津々。「スポーツと気晴らし」は、サティの詩に自分が作曲した歌曲と交互に演奏している。時にホーミーを思わせるような音色をトロンボーンが奏でるなど、人間の本能に直截訴えてくるスヴォボダの作品を合間に挟むと、サティ作品の実にカチカチっとしている部分が際立つ。 なお、代理店の日本語表記には「泉水人形」なるものがあるが、誤り。 | ||
神秘の踊り〜 mythical dances ジョージ・クラム: 天界のメカニック「マクロコスモスIV」 (増幅されたピアノ、4手のための宇宙のダンス) [ケンタウルス座アルファ星/白鳥座ベータ星/ りゅう座ガンマ星/オリオン座デルタ星] ストラヴィンスキー:「春の祭典」第1部&第2部 |
ベッリ・ピアノ・デュオ | |
独特の音作りで我々を魅了するクラムの「マクロコスモスIV」と、ストラヴィンスキーの「春の祭典」という組み合わせ。この「マクロコスモスIV」は4手のために書かれており、特殊奏法が用いられる。聴覚が清められ、研ぎ澄まされるような感覚をおぼえると同時に、宇宙のような広い空間に包み込まれて浮遊しているような感覚をおぼえる。この状態で「春の祭典」を聴くと、なんだかまったく違う曲に聴こえてくるから不思議。クラムの作品は、我々が今生きている「時」とほぼ同時に、しかし我々とは別の世界に存在している宇宙の神秘を、そしてストラヴィンスキーの作品は、我々が生きている「時」よりかなり以前に確かに存在していて、しかし今は手が届かなくなってしまった大地の神秘を描いているといえるだろう。 | ||
シューマン&ヴィトマン:作品集 イェルク・ヴィトマン(1973-):トッカータ シューマン:4つの夜曲 Op.23 ヴィトマン:悪の華 シューマン:暁の歌 Op.133 |
ファビオ・ロマーノ(P) | |
クラリネット奏者としても優れた評価を得ているヴィトマンは、このディスクでは作曲家に徹している。ヴィトマン作品で耳を覚醒してから聴くシューマン作品は、新たな魅力に満ちている。「悪の華」は名高いボードレールの詩集に着想を得た作品。ボードレールが、美をあらわすためにありとあらゆる種類の言葉を用いて創りあげたこの詩集が19世紀半ばにしてモダニズムへの扉を開いたのに対し、若き作曲家ヴィトマンは、ミニマルミュージック的な中毒をもたらす狂気を感じさせる音をつかって都市化がもたらした近年の惨事を描く。ヴィトマンのこの毒気の強い作品を聴いたあと、最後に収録されているシューマンが自殺未遂をする少し前に書いた暁の歌を耳にすると、作品像が生々しく聴き手に迫る。 | ||
Monolithen 〔石碑〕〜ドビュッシー、ツィンマーマン、ストラヴィンスキー ドビュッシー:白と黒で / ストラヴィンスキー/作曲者編曲:春の祭典(ピアノ連弾版) ベルント・アーロイス・ツィンマーマン:モノローグ(2台ピアノのための「ダイアローグ」版) クラヴィーア・デュオ・フーバー&トーメ[スザンネ・フーバー、アンドレ・トーメ(P)] | ||
録音:2013年2月。ピアノ連弾の記念碑的(=石碑)名曲を集めた1枚。ドビュッシーの「白と黒」は、第一次世界大戦初期に書かれた物。ドイツがフランスを攻め、フランスの文化を破壊しようとしているのを見たドビュッシーは、この作品で、フランスを白、ドイツを黒として表現をしているようだ。このCDの白眉ともいえるのが、ツィンマーマンの作品。非常に高度なテクニックが要求される作品。2台のピアノそれぞれの奏者は挑戦ともいえるような難しいことを展開、さらに、両者が冷静にバランスをとることが要求されている。ツィンマーマンの特徴である引用(ここでは、グレゴリオ聖歌、バッハ、モーツァルト、ベートヴェン、ドビュッシーからメシアンまで)も見られる作品。管弦楽作品の人気曲「春の祭典」だが、ストラヴィンスキーは、この作品をピアノで作曲したことがスケッチなどからも明らかとなっている。ピアノ編曲版、と呼ぶのは間違いではないが、作品のオリジナルのコンセプトはむしろこのピアノ連弾版にあるともいえるものとなっている。迫力のリズムは見事。 | ||
天国から地獄へ マルティン・スモルカ: ラッシュ(天体の道でのひととき) マウリシオ・カーゲル:オルケストリオン通り ルイス・アンドリーセン:Racconto dall 'Inferno |
ムジークファブリーク | |
録音:2004年-2007年。 その昔、天体が動くときに宇宙では音楽が鳴り響いている、という説があった。これに則ったスモルカの作品「ラッシュ」は、天体が動く道で生じた交通渋滞を表現。車のラッシュ以上の迫力。カーゲル作品は、ストリートミュージシャンのために書かれたというコンセプトの物。ストリートミュージシャンはいつもお金に困っていて、寄付をねがう、とブックレットには記載されている。アンドリーセンの作品では、天国的な響きと地獄を思わせる響き、様々な音色が登場する。 | ||
影のゲーム ミシェル・ジャレル:…プリズム/光の投射II… ステファノ・ジェルヴァゾーニ:ファー・ニエンテ ジョエル=フランソワ・デュラン:影/鏡 ファーニホウ:シャドウタイムVI |
ムジークファブリーク | |
録音:2004年-2007年。 複雑なことで有名なファーニホウの作品は、抑揚の大きな語りと少しずつ狂気を呼び覚ますかのような音色の音楽。 | ||
戴冠式 バルタカス:(co)ro(na) レベッカ・サウンダース:cinnabar マグヌス・リンドベリ:Joy クセナキス:タレイン |
ムジークファブリーク | |
録音:2004年-2006年。 戴冠式・・・様々な人の思いが渦巻く儀式。名誉の戴冠もあれば祝福されない戴冠など色々あるだろう。もはや戴冠式や貴族や王の威光を示すというよりも、ゴシップの対象にすらなることもある。王冠や栄光に様々な角度から焦点をあてて作品を書いた、現代を代表する作曲家たちの一騎打ち。クセナキスの作品「タレイン」の新録音が出たというのも貴重といえるだろう。 | ||
Edition Musikfabrik Vol.6 - Nach innen [Toward the inside] イアン・ウィルコック:墓 マルク・アンドレ: Ni カイア・サーリアホ:グラール・テアートル |
ムジークファブリーク | |
人間の内奥に潜む狂気や欲望、また静けさなどをモティーフにした作品集。 | ||
Edition Musikfabrik Vol.7 - Unerwartet [Unexpected] デイヴィッド・ラング:やったことある? フィリップ・ブスマン:ピアノ六重奏 リヒャルト・バレット:干渉 ルカ・フランチェスコーニ:形式の想定外の終結 |
ムジークファブリーク | |
現代音楽シーンの牽引役、現代音楽演奏団体ムジークファブリーク。デイヴィッド・ラングの作品は、冒頭朗読から始まり、その後テクノ風な音色で不思議な空間へと移行する。フランチェスコーニの作品は、盛り上がるのかなと思うと収まる、という動きの繰り返しの中、最後は「えっ、そこで?」とツッコミを入れたくなるような思いがけない終わり方。 | ||
カールハインツ・シュトックハウゼン(1928-2007): ミヒャエルの旅 [Michaels Reise um die Erde] (1978) (歌劇7部作「光」(1977-2003) 〜「木曜日」(1978-80) 第2幕) マルコ・ブラーウ(Tp;ミヒャエル) ニコラ・ユルゲンセン(バセットHr;エヴァ) ペーター・ルンデル指揮アンサンブル・ムジーク・ファブリーク | ||
録音:2008年12月13日-14日、MC93 、パリ、ライヴ。シュトックハウゼンによる歌劇7部作「リヒト」の「木曜日」第2幕を占めるオーケストラ作品(この幕は元々器楽演奏のみ)。トランペット・ソロが担うミヒャエルは、人の姿で地上に舞い降り、人類を天国へと導く天使。バセットホルンが務めるエヴァは愛、命の神。ミヒャエルは文字通り、アメリカ、日本、バリなどを旅し、最後はエヴァと一心同体となり天に昇る(両者が長いトリルを演奏し、最後はそれがシンクロする)。その中に、シュトックハウゼンらしく様々な仕掛けがなされている。現代音楽の猛者集団ムジークファブリークは、この「ミヒャエルの旅」を、パフォーマンス集団「ラ・フラ・デルス・バウス」とのコラボレーションで、2008年にヨーロッパ各都市で上演した。この CD はこの一連のツアーにおけるパリでのライヴ。ちょうど没後一年にあたる時期の演奏とあり、独特の熱気と興奮もとらえられた注目の1枚。 | ||
リザ・リム(1966-):ピアニストの即興、バリトンと16の音楽家のための「見えざる舌」 (テキスト:ヨナタン・ホルメス/ハーフェズの詩に基づく) ウリ・ケイン(P) オマール・エブラヒム(Br) アンドレ・ド・リダー指揮アンサンブル・ムジークファブリーク | ||
リザ・リムは中国人の両親のもと、オーストリアに生まれた。ペルシャ語圏最大の詩人ハーフェズ(14世紀頃)の詩に触発されたもので、即興要素を巧みに融合させ、無限の広がりを見せる。 | ||
細川俊夫(1955-): チューバとアンサンブルのための「旅 VIII 」[メルヴィン・プーア(Tu) ペーター・ルンデル指揮アンサンブル・ムジークファブリーク/2006年5月27日]/ フルートとピアノのための「リート」[ヘレン・ブレッドゾー(Fl) ウルリヒ・レフラー(P)/2013年9月25日]/ オーボエとハープのための「弧のうた」 [ペーター・ヴェーレ(Ob) ミルヤム・シュレーダー(Hp)/2013年9月9日]/ クラリネット、ヴァイオリン、チェロとピアノのための 「時の花 − オリヴィエ・メシアンへのオマージュ」[アンサンブル・ムジークファブリーク/2011年8月24日]/ 尺八とアンサンブルのための「 旅 X − 野ざらし」 [田嶋直士(尺八) イラン・ヴォルコフ指揮アンサンブル・ムジークファブリーク/2009年6月13日] | ||
録音:[/内]。ヨーロッパでその名を広く馳せる細川俊夫は、西洋音楽の中で「日本」を描いた作品を多く生み出している作曲家。海外に出た後で邦楽器や雅楽など日本の音楽を学んだという彼の音楽、その発想の源には、奥深く東洋的な美学、哲学が根付いている。物そのものもよりも光と影、空間に美しさを感じること、人間がやってきて、いずれは帰っていく世界と繋がろうとすること、宇宙や自然と個が溶け合い、一つになること…。そんな西洋とは違う世界のとらえ方、感じ方が、どの作品にも根底に流れている。CDにおさめられている「旅」シリーズでのソリストとアンサンブルの関係(「宇宙」と「個」)や、「弧のうた」で描かれる無から無へと生まれては消えていく音などにそれを感じることが出来る。「旅X」の楽譜冒頭には芭蕉の寂寥感漂う句「野ざらしを心に風のしむ身かな」が記されているとのこと。西洋音楽の中に凝縮された「和」の感性を感じることができる作品群。 | ||
GRAFFITI チン・ウンスク:大アンサンブルのための「 GRAFFITI 〔壁画〕」 オルガ・ノイヴィルト: ...milamondo multiplo... (トランペットとアンサンブルのための編曲版) サン・ラ: OUTER NOTHINGNESS(サックスとアンサンブルのための編曲版)/ プレイアデス(サックスとアンサンブルのための編曲版) アンサンブル・ムジーク・ファブリーク | ||
録音:2008年-2013年。チン・ウンスクの作品は、非常にスリリング。ノイヴィルトの作品では、ヘンデルとマイルス・デイヴィスが握手をしているようだ。サン・ラの作品には独特のエネルギーが満ちている。 | ||
Edition Musikfabrik 09 - Scherben〔破片〕 ジョナサン・ハーヴィー:アンサンブルのための「スリンガラ・シャコンヌ」(2015) [ペーター・ルンデル指揮/2010年1月9日] エンノ・ポッペ:アンサンブルのための「破片」(2000/2008) (#) [スティーヴン・アスバリー指揮/2009年1月9日] カイヤ・サーリアホ:チェロとアンサンブルのための「 Notes on Light 」(2010) [ディルク・ヴィーテガー(Vc) エミリオ・ポマリコ指揮/2010年6月20日] エマヌエル・ヌネス:4群のアンサンブルのための「 Chessed I 」(1979/2005) [シャン・エドワーズ指揮2005年8月27日] アンサンブル・ムジークファブリーク | ||
録音:[/内]。(#)を除き世界初録音。4人の作曲家たちの「光、愛」をテーマにした作品が収められている。ヒンズー教や仏教に傾倒する作曲家ジョナサン・ハーヴィーの「スリンガラ・シャコンヌ」は、インドの伝統的な美学で愛の感情を表す「スリンガラ」を題材にとった作品。人と人との愛、神と人との愛、そしてインドの全芸術の源となる愛である「スリンガラ」の強烈なエネルギーを、バロック音楽の形式である「シャコンヌ」を用いて音楽にしている。印象派を思わせるようなデリケートな響きで幕を開けた曲は徐々に激しさを増して展開し、最後はまばゆい光を思わせるような高音に収束していく。エンノ・ポッペの「破片」は、5秒ほどからなる121の断片が組み合わさって構成されている実験的な作品。「ムジークファブリークのようなソリスト・アンサンブルの編成は21世紀におけるシンフォニー」という作曲者の言葉通り、従来の奏法に留まらない楽器法からは魅力的で存在感の強いサウンドが引き出され、その音楽は時間や空間の密度、質感を自在に変化させながら聴衆の耳を捉えて離さない。繊細なティンパニソロから金管の絶叫まで、音楽の「破片」が個性の強い光を放ち、ぶつかり、溶け合う。カイヤ・サーリアホの「ノーツ・オン・ライト」は標題のついた5楽章からなるチェロ協奏曲(I半透明の秘密 II燃えて III覚醒 IV蝕 V光の中心)。T.S.エリオットの詩から取られたという、生と死、意識と無意識の間の「光の中心、静寂」を中心として曲は展開する。他の北欧の作曲家と同様、フィンランド出身の彼女の音楽にも光の色合いなど自然からの影響が見られるが、そんな彼女の幻想的な音をまといながらチェロがしなやかに、時に激しくリードするこの曲も、多様な光の質感に溢れている。エマヌエル・ヌネスが扱うのは、ユダヤ教の伝統を引き継ぐ神秘思想「カバラ」で「愛、慈しみ」を表す「ケセド」。ヌネスはかねてからユダヤの神秘思想に興味を寄せていたが、委嘱を受けた際に手渡されたカバラのテキストの最後の言葉が「ケセド」だったという。4つのヴァイオリン、4 本のクラリネット、2本のフルートと2つのヴィオラ、チェロと3つのコントラバスという「ケセドの数字4」を基調とした楽器編成で描き出されるこの曲では、音域のアンバランスさが奇妙な感覚を生み出す。アンサンブル・ムジークファブリークの鮮やかな演奏によって命を吹き込まれた、4人の作曲家の「光と愛」が、ここにそれぞれの輝きを放っている。 | ||
Edition Musikfabrik 10 - sterben フランチェスコ・フィリデイ:すべての身振りが終わったとき[マーカス・クリード指揮/2013年10月24日] ミヒャエル・バイル:ブラックジャック[オットー・タウスク指揮/2012年1月21日] マウリシオ・カーゲル:褥の墓にて[マルクス・ブルッチャー(T) エミリオ・ポマリコ指揮/2010年9月18日] アンサンブル・ムジークファブリーク | ||
録音:[/内]。全て世界初録音。人間の歴史が始まって以来、人々は死後の世界について考え続けてきた。死後の世界への信仰は人々の慰めであり、救いだった。近代になり、信仰が薄れ、ニーチェの有名な「神は死んだ」という言葉が登場してから今に至るまで、すでに久しい時が経っている。神の不在は音楽にどう影響するのか、拠り所をなくした人間はどこへ向かうのか。そんな問いに向き合った3作品。カーゲルの「褥の墓にて」は、作曲者の死によりテキストの最後の1行のところで未完に終わっている。テキストとなっているハイネの詩も、寝たきりの床を意味する「褥の墓」で書かれた物。死を目前にした2人の芸術家により生み出された15曲からなるこの歌曲には、死に向かいつつある時に芸術によって現実を乗り越えようとする人間の姿がそのままに表れている。フィリデイは「すべての身振りが終わったとき」のタイトルは、2010年に没したイタリアの詩人エドアルド・サングイネーティの「最新約の書」より「愛情のすべての身振りが終わった時、それは音楽に終わる」という一節から取られている。音が生まれ、消える中に「生と死」を見出すというフィリデイが、楽器以外に奏者の声やガラスの音などを駆使して哀悼を生み出すこの曲には、どことなく儚さが漂う。「死」にフォーカスした作品に挟まれて異彩を放つのはバイルの音と映像による作品「ブラックジャック」。このCDのように映像がなく音楽だけの体験となっても遺憾なく存在感を発揮するこの曲は、死と相反する「生」の方向を向いているのかもしれない。信仰の薄い時代に何が死にゆく人間の拠り所となり得るか、目まぐるしい速さで変わっていく社会の中で、芸術の意味を改めて考えさせられるこれらの曲を、ムジークファブリークのハイクオリティの演奏でお楽しみ頂きたい。 | ||
SCHLAMM 〔泥〕 ファーニホウ:6つの声と器楽アンサンブルのための「 Finis Terrae 」 クラウス・ラング:アンサンブルのための「 Yes と No の海」 カローラ・バウクホルト:アンサンブルのための「 Schlammflocke 」 ホルヘ・E.ロペス:ワーグナー・チューバ、イングリッシュ・ホルン、 バス・クラリネット、ヴィオラとチェロのための「 Gonzales the Earth Eater 」 アンサンブル・ムジークファブリーク | ||
録音:2009年-2013年。全曲世界初録音。現代音楽の猛者アンサンブル、ムジークファブリーク。咆哮する管楽器の中、6人の声楽家たちが声明のような世界を繰り広げるファーニホウ作品、はじまりも終わりも盛り上がりもオチもなにもないラングの作品、ジャングルに迷い込んだような気分になるバウクホルト作品、そしてワーグナー・チューバなどやや特殊な楽器のアンサンブルのために書かれたロペス作品と、色とりどりの作品が収録されている。 | ||
沈黙〜ムジークファブリーク・エディション 12 ゲオルク・フリードリヒ・ハース(1953-):アンサンブルのための 「 Ich suchte, aber ich fand ihn nicht. 」(2011) (#) [エミリオ・ポマリコ指揮/2012年6月30日] エヴァン・ジョンソン(1980-):9つの楽器のための「 Die Bewegung der Augen 」(2011-12, rev.2013-14) [クリスティアン・エッゲン指揮/2014年4月6日] ヤニ・フリストウ(1926-1970):役者、指揮者、アンサンブルとcontinuumのための 「 Anaparastasis III - The Pianist 」(1968) (*) [ルーペルト・フーバー指揮/2010年2月27日] ゲオルク・フリードリヒ・ハース:ソプラノと室内管弦楽のための「 ...Wie stille brannte das Licht 」(2009) [サラ・ウェゲナー(S) エンノ・ポッペ指揮/2009年5月3日] アンサンブル・ムジークファブリーク | ||
録音:[/内]、クラウス・フォン・ビスマルク・ザール、ケルン、ライヴ。(*)を除き世界初録音。 驚くほど高い演奏技術で知られざる優れた現代音楽を紹介し続ける「ムジークファブリーク7・エディション」の第12集。現代音楽において無視出来ない大きなテーマとなった「沈黙」をアルバムタイトルに掲げ、新しい音楽の在り方を果敢に模索した4作品を収録している。ジョン・ケージは「沈黙を作り出すことは出来ない」と言ったが、記譜された音楽の周囲には常に沈黙が存在しており、書かれた音のありようによって沈 黙を感じることは可能。例えば(#)は、巨視的にはひとつの旋律がグリッサンドでうねっていくようなヘテロフォニックな音楽だが、不意に離れたところで別の意識下から出てきたような旋律が現れては消え、多層的な空間を感じさせる。新たな空間に耳をそばだたせることによって、そこに沈黙が残る、と言えなくもない。静かな曲という訳ではなく、後半は雰囲気を変え爆発的な音響に盛り上がったりと一筋縄ではいかない楽曲構成も面白い。 | ||
交差〜ムジークファブリーク・エディション Vol.13 ヴァッソス・ニコラウ(1971-):アンサンブルのための「 Farbenmaschinen 」(2011/12) (*) ヨハネス・ショールホーン(1962-):大アンサンブルのための9つのバガテル「 Pièces Croisées 」(2012) (#) ジェラール・グリゼー(1946-1998):18人の奏者のための「 Partiels 」(1975) (+) ディーター・マック(1954):室内管弦楽のための「室内音楽 V 」(2007) (**) エミリオ・ポマリコ指揮(*/+) ペーター・ルンデル指揮(#) エンノ・ポッペ指揮(**) アンサンブル・ムジークファブリーク | ||
録音:2012年6月30日(*/+)、2012年12月5日(#)、2011年1月15日(**)、クラウス・フォン・ビスマルク・ザール、ケルン、ライヴ。(+)を除き世界初録音。 現代音楽専門・超絶技巧集団「アンサンブル・ムジークファブリーク」の作品集第13巻。今回もとてつもないレベルの演奏。作品もグリゼー以外は世界初録音とたいへん貴重。ブックレットは折り畳み式になっており、ドイツ最高峰の画家ゲルハルト・リヒターの絵があしらわれている。異なる音色のレイヤーが相互に作用し、新たな領域へと耳を啓く作品が並ぶ。異なる文化が交錯する現代を表していると言えるかも知れない。非常に複雑で技巧的なアンサンブルが要求される難曲ばかりだが演奏は完璧。キラキラと光る特殊効果、ノイズの如きロングトーン、突然の歌。(**)ではピアノと打楽器が同時に打ち鳴らされ鐘の響きを模す箇所がある。スペクトル楽派の重鎮グリゼーの作品はさすがに美しく圧倒される。 | ||
扇〜ムジークファブリーク・エディション 14 カスパール・ヨハネス・ワルター(1964-):打楽器独奏と大アンサンブルのための「メートル法による不協和音」(2009) イザベル・ムンドリー(1963-):アンサンブルのための「揺らめく時」(2006-09) (#) ディルク・ロトブルスト(Perc;無印) ペーター・ルンデル指揮(無印) エミリオ・ポマリコ指揮(#) アンサンブル・ムジークファブリーク | ||
録音:2010年1月9日(無印)、2009年2月27日(#)、共にケルン、ライヴ|共に世界初録音。 現代音楽界の最強アンサンブルによるシリーズ第14弾、「扇」と題されたアルバム。シンプルな1点から複雑に大きく広がっていくイメージが意図され、音楽はいつしか異質な形へと移行していく。(無印)は様々なテンポで一定に叩かれる打楽器独奏のリズムに始まり、次第に各楽器が滲んできてグラデーションのように色が変化していく。(#)は繊細で技巧的なアンサンブルに舌を巻く難曲。ルイ・クープランの作品を素材に用いており、時折調性感の香る旋律が浮かび上がる。チェンバロや声も入った「普通でない」編成も刺激的で面白い。 | ||
嵐〜ムジークファブリーク・エディション 15 シュテフェン・シュライエルマッハー(1960-):アンサンブルのための「 Das Tosen des staunenden Echos 」(2009) カイヤ・サーリアホ(1952-): ソプラノ、バリトンとアンサンブルのための「 The Tempest Songbook 」(1993-2004) (*) ミヒャエル・ヴェルトミューラー(1966-): サクソフォン、ドラムス、エレキベースとアンサンブルのための「 Antagonisme controle 」(2009) (#) ジャン・ドロワイエ指揮(無印) エミリオ・ポマリコ指揮(*) クリスティアン・エッゲン指揮(#) アンサンブル・ムジークファブリーク オリヴィア・フェアミューレン(S;*) ペーター・シェーネ(Br;*) ペーター・ブロッツマン(Sax;#) ディルク・ロスブラスト(ドラムス;#) マリーノ・プリアカス(エレキベース;#) | ||
録音:2009年-2014年。現代音楽の猛者集団ムジークファブリークの演奏集、第15弾。「嵐」と題され、様々な質感の風が吹き荒れる音楽が並んでいる。(無印)は様々な楽器の音色を駆使した、規則的リズムと不規則リズムの饗宴。轟音と静けさの生み出すパラドックスが全編を支配する。(*)はシェイクスピアの「テンペスト」によるテキストを用いた作品。(#)はジャズ畑のアーティストたちによるフリー・ジャズがクラシックのアンサンブルと衝突、まったく温度の違う風がぶつかり合う。どれも目を見張るほどの技巧的アンサンブルが繰り広げられており、凄まじい音楽表現の連続に舌を巻く。まさに嵐のゲンダイオンガク。 | ||
落下〜ムジークファブリーク・エディション 16 ブライアン・ファーニホウ(1943-):クラリネット独奏と室内アンサンブルのための「 La Chute d'Icare 」(1987/88) ステファン・ヴィンクラー(1967-):17人の楽器奏者のための「 Von der Gewissensnot der Insekten 」(2012) (#) オスカー・ベッティソン(1975-):大管弦楽のための「 Livre des Sauvages 」(2012)(+) カール・ロスマン(Cl;無印) ディエゴ・マッソン指揮(無印) クレメント・パワー指揮(#) エミリオ・ポマリコ指揮(+) アンサンブル・ムジークファブリーク | ||
録音:2008年2月8日(無印)、2013年3月17日(#)、2012年11月24日(+)、すべてライヴ| (#/+):世界初録音。超絶技巧集団ムジークファブリークによる世界初録音を含むシリーズ第16集。衝撃的・破滅的な曲想を持った現代音楽作品が並ぶ。技巧の凄まじさとアンサンブルの複雑さに舌を巻くものばかり、一体どうやったらこんな演奏が可能なのだろうと唸ってしまう強烈さ。ファーニホウの作品はイカロスの墜落を描いたもので、クラリネット独奏とバックのアンサンブルが目まぐるしく超絶技巧を繰り出しあい旋回していくような恐るべき音楽。 | ||
コンロン・ナンカロウ(1912-1997):自動ピアノのための練習曲集 | ||
録音:1988年1月10日&12日、ナンカロウの自宅スタジオ、メキシコ・シティ。使用楽器:ナンカロウ自身が手を入れたアンピコ自動ピアノ。旧 WER-6907、6909、6911の3点5枚をセットにした物。 アンピコ・ピアノの鄙びた音色と人間の手では到底不可能な速さで弾かれるパッセージの融合が独自の雰囲気を作り出す。 | ||
ジョン・ケージ: 「日記〜いかに世界を改良すべきか、 事態はますます悪くなるだけだろう」 |
ジョン・ケージ(朗読) | |
ケージを語る上で外せないCD。64ページの解説書つき。 | ||
ヴェルゴ創立40周年記念(1962-2002)〜 スペシャル・エディション・ボックス シュトックハウゼン:コンタクテ(*) ケージ:ローラトリオ(+) リゲティ:(#) トリオ(1982)/コンティヌウム(1968)/他 リーム:(**) イメージとエコー/コルキス/他 |
シュトックハウゼン、 ケーニヒ(Fl;*) チュードア(P、Perc;*) ケージ(語り;+) ガヴリロフ(Vn;#) バウマン(Hr;#) カニーノ(P;#) ホイナツカ(Cemb;#) ギーレン指揮(**) 南西ドイツ放送so.(**) 他 | |
ドイツの現代音楽レーベルの老舗ヴェルゴの名盤4点;WER-6009(*)、WER-6303(+)、WER-60100(#)、WER-6623(**)のセット化。完全限定盤。 | ||
WER-6925 (3CD) 廃盤 |
ジェルジ・リゲティ・追悼スペシャル・エディション (1923年5月28日トゥルナヴェニ - 2006年6月12日ウィーン) CD1(単売: WER-60045 ):レクイエム/アバンチュール/新アバンチュール CD2(単売: WER-60079 ):弦楽四重奏曲集 CD2(単売: WER-60161 ):コンティヌーム/木管五重奏のための10の小品/他 | |
アール・ブラウン・コンテンポラリー・サウンド・シリーズ〜ブラウンの音楽人生 vol.1
[disc 1] CONCERT PERCUSSION FOR ORCHESTRA アマデオ・ロルダン(1900-1939):リトミカ第6番(*)/リトミカ第5番(*) ルー・ハリソン(1917-2003):カンティクル第1番(*) ウィリアム・ラッセル(1867-1935):3つの舞曲的楽章(#) ヘンリー・カウエル(1897-1965):オスティナート・ピアニッシモ(*) ウィリアム・ラッセル:三つのキューバ風作品 ジョン・ケージ(1912-1992)&ルー・ハリソン:ダブル・ミュージック(#) ジョン・ケージ:アモーレス(+) [ポール・プライス指揮(*) ジョン・ケージ(プリペアードP;+)指揮(#) マンハッタン・パーカッション・アンサンブル/1961年、LP] [disc 2] シュトックハウゼン、カーゲル カールハインツ・シュトックハウゼン(1928-2007): 独奏打楽器奏者のための「ツィクルス」(*)/リフレイン(#) マウリシオ・カーゲル(1931-2008):トランシシオンII (ピアノ、打楽器、2つのテープのための)(+) [アロイス・コンタルスキー(P;#/ウッドブロック;#)、 ベルンハルト・コンタルスキー(チェレスタ;#/アンティック・シンバル;#) デイヴィッド・チューダー(P;+) クリストフ・カスケル (マリンバ、ギロ、木製ドラム、シンバル、トライアングル/他;以上*、 ヴィブラフォン、カウベル、グロッケンシュピール;以上#、Perc;+)/1961年、LP] [disc 3] 電子音楽の即興対決ライヴ ローマ(MEV = Musica Electronic Viva) [アラン・ブライアン、アルヴィン・カラン、フレデリック・ルツェフスキ、 リチャード・テイテルバウム、イヴァン・ヴァンドール] ロンドン(AMM)[コルネリウス・カーデュー、ルー・ゲール、クリストファー・ホッブス、 エディー・プレヴォスト、キース・ローヴェ][1970年、LP] | ||
全てマスタテープからのCD化、ディジタル化・マスタリング:ウド・ヴュステンドルファー。 1960年代にLPで出されたアール・ブラウン監修による貴重なシリーズが、WERGOより復刻される。第1弾は、ケージ自身が演奏するプリペアード・ピアノの音も聴ける打楽器コンサート(disc1)、カスケルの切れ味鋭いマリンバ、チューダーのまさに絶妙なタイミングのピアノが聴けるdisc2、そして、ローマとロンドンの電子音楽演奏集団の即興対決のdisc3。どれも、当時最先端をゆく演奏者たちが結集して最高のものを目指しているだけあって、大変クオリティの高い見事な演奏。50年弱たっても少しも色褪せないどころか、素晴らしい輝きと新鮮さを保っている音楽を、是非、ご一緒に。 アール・ブラウン/コンテンポラリー・サウンド・シリーズについて:このシリーズは、ケージ、ベリオ、シュトックハウゼン、そして他の前衛的な作曲家の作品に誰も接したことがなかった時代にリリースされた貴重な記録(LP)の復刻。今となっては実験的な音楽(現代音楽)の録音・資料は市場に多数あるが、1960年代初頭の人々は、同じ時を生き、革命を起こしている新しい世代の作曲家たちの作品を知らなかった。1960年代当時の革命作曲家世代のリーダー的存在であったアール・ブラウンは、彼自身、そして同時代の仲間たちの作品をレコードに記録するする機会を得、すでに当時活躍していた作曲家、また、頭角を現し始めた作曲家たちの作品を選んで収録した。ブラウンは世界中の作曲家や演奏家たちに呼びかけ、当時考えうる最高のメンバーを結集、演奏の面でも音質の面でも最高のクオリティでこの仕事をやり遂げた。これらの録音は、1961年から73年の間に計18枚のLPとしてリリース、現在、コレクター達の間でコンテンポラリー・サウンド・シリーズとして知られている。冒険的なレパートリー、質の高い演奏、そして作品と作曲家への高い忠誠度をもった、これらの録音は、20世紀音楽の最も重要な記録資料となっている。個々のCDのブックレット内容はすべて発表当時のものを採用、貴重な写真資料満載。WERGOは2011年の秋にかけて年間2巻ずつ、全6巻(各3CD)のシリーズとしてこの貴重な遺産をリリースしていく。復刻にあたっては、現代音楽の分野で高名なエンジニア、ウド・ヴュステンドルファーが、最高の機材を用いディジタル化。ブラウンが望んだ音世界が高い次元で再現されている。 アール・ブラウン(1926-2002):アメリカの作曲家。図形楽譜や、通常の5線譜ではなく50線譜を用いた作品、「開かれた形式(演奏者は楽譜をどのように読んでも、どこから演奏しても、どこで終わっても、何人で演奏してもよい)」で知られている。ケージやチューダーとともに「音楽と磁気テープのためのプロジェクト」にも参加、アメリカ・アヴァンギャルドの指導者としての地位を確立した。キャピトル・レコードの編集者および録音エンジニア、60年にはメインストリーム・レコードの「コンテンポラリー・サウンド・シリーズ」(このWERGOのシリーズの元となるもの)のディレクターを務めた。 | ||
アール・ブラウン:コンテンポラリー・サウンド・シリーズ〜ブラウンの音楽人生 Vol.2
・室内オーケストラのための作品集(*) ルイジ・ノーノ(1924-1990):ポリフォニカ ― モノディア ― リトミカ(1951) ブルーノ・マデルナ(1920-1973):セレナータ No.2(1954/1957)[ブルーノ・マデルナ指揮イギリス室内o.] ルチアーノ・ベリオ(1925-2003):ディファレンス(5つの楽器とテープのための)(1958-1960) [ルチアーノ・ベリオ指揮 ジャック・カスタニェ(Fl) ワルター・ルイス(Cl) フランシス・ピエール(Hp) ワルター・トランプラー(Va) セイムール・バラブ(Vc)] ・ニューミュージック・フロム・ロンドン(#) ピーター・マクスウェル・デイヴィス(1934-):アンテクリスト(1967)(**) ハリソン・バートウィストル(1934-):無口なカリヨンを鳴らせ(1964-65)(##) [ザ・ピエロ・プレイヤーズ(**) ピーター・マクスウェル・デイヴィス指揮(##) メアリー・トーマス(S;##) アラン・ハッカー(Cl;**/##) バリー・キン(Perc;**/##)] デイヴィッド・ベッドフォード(1937-):カム・イン・ヒヤ・チャイルド(1968) [ジェーン・マニング(S) ジョン・ティルバリー(P)] リチャード・オートン(1940-):2人または4人のプレイヤーのためのサイクル(1967) [モリー・ウェルシュ(Vc) リチャード・オートン(P/Perc)] ・フェルドマン―ブラウン(+) モートン・フェルドマン(1926-1987):durations I-IV (1960, 1961) アール・ブラウン(1926-2002): ヴァイオリン、チェロとピアノのための音楽(1952)/チェロとピアノのための音楽(1955)/ホドグラフI(1959) [ドン・ハモンド(Fl/アルトFl) ドン・バターフィールド(Tu) デイヴィッド・チューダー(P/チェレスタ) フィリップ・クラウス(ヴィブラフォン/ベル/マリンバ) マテュー・ライモンディ(Vn) デイヴィッド・ソイヤー(Vc)] | ||
録音:1961年(*)/1970年(#)/1962年(+)。 アール・ブラウン/コンテンポラリー・サウンド・シリーズ、第1弾につづいてお宝音源がギッシリ。(*)ベリオのディファレンスは電子音楽の金字塔的存在。ベリオ自身の指揮ということもあり、並々ならぬ緊張感に漲っている。(#)のベッドフォード作品はソプラノの声がピアノなどに共鳴した音から、虫歯に響きそうな高音など様々な音など実に様々な音が現れる。(+)にはブラウン本人の作品を収録。空間的な要素が強く、聴いていると宇宙に放り込まれたような気分になる。 アール・ブラウン/コンテンポラリー・サウンド・シリーズについて:このシリーズは、ケージ、ベリオ、シュトックハウゼン、そして他の前衛的な作曲家の作品に誰も接したことがなかった時代にリリースされた貴重な記録(LP)の復刻。今となっては実験的な音楽(現代音楽)の録音・資料は市場に多数あるが、1960年代初頭の人々は、同じ時を生き、革命を起こしている新しい世代の作曲家たちの作品を知らなかった。1960年代当時の革命作曲家世代のリーダー的存在であったアール・ブラウンは、彼自身、そして同時代の仲間たちの作品をレコードに記録するする機会を得、すでに当時活躍していた作曲家、また、頭角を現し始めた作曲家たちの作品を選んで収録した。 ブラウンは世界中の作曲家や演奏家たちに呼びかけ、当時考えうる最高のメンバーを結集、演奏の面でも音質の面でも最高のクオリティでこの仕事をやり遂げた。これらの録音は、1961年から73年の間に計18枚のLPとしてリリースされ、現在、コレクター達の間でコンテンポラリー・サウンド・シリーズとして知られている。冒険的なレパートリー、質の高い演奏、そして作品と作曲家への高い忠誠度をもったこれらの録音は、20世紀音楽の最も重要な記録資料となっている。個々のCDのブックレット内容はすべて発表当時のものを採用、貴重な写真資料満載。WERGOは2011年の秋にかけて年間2巻ずつ、全6巻(各3CD)のシリーズとしてこの貴重な遺産をリリースしていく。復刻にあたっては、現代音楽の分野で高名なエンジニア、ウド・ヴュステンドルファーが、最高の機材を用いディジタル化。ブラウンが望んだ音世界が高い次元で再現されている。(このシリーズはすべて、LPからの復刻で、オリジナルマスターテープはすべて消失している。) | ||
アール・ブラウン:コンテンポラリー・サウンド・シリーズ〜ブラウンの音楽人生 Vol.3
[CD1] ザ・ボイス・オブ・キャシー・バーベリアン ベリオ:サークルズ(*) / ブッソッティ:フラッメント(#) ジョン・ケージ:アリア・ウィズ・フォンタナ・ミックス(声とテープ) [キャシー・バーベリアン(声) フランシス・ピエール(Hp;*) ジャン=ピエール・ドルーエ、ボリス・ドゥ・ヴィノグラドフ(Perc;*) ルチアーノ・ベリオ(P;#)/Original LP: 1962年] [CD2]黛敏郎:涅槃交響曲[ヴィルヘルム・シュヒター指揮NHKso. 東京コラリアーズ、日本大学cho./Original LP: 1962年] [CD3]クセナキス(1922-2001):ヘルマ ロジャー・レイノルズ(1934-):ファンタジー・フォー・ピアニスト 高橋悠治:ピアノのためのMetathesis(音位転換)(1968) アール・ブラウン(1926-2002):Corroboree(大騒ぎ) [高橋悠治(P)/Original LP: 1970年] | ||
好評のアール・ブラウン監修コンテンポラリー・サウンド・シリーズCD化シリーズ第3弾は、注目のお宝音源目白押しとなった。黛敏郎の「涅槃交響曲」に高橋悠治のクセナキス、さらにベリオとその妻バーベリアンの共演を含む魅力満載のボックス。 [CD1]のキャシー・バーベリアンは、ベリオの妻で、ビートルズをバロック・アリア風に歌い、ケージらの作品をしばしば取り上げるなど、実に多彩な活動をした優れた歌手だった。ここでも自らの声を自在に変容させており、特にベリオ作品での夫ベリオのピアノとのコラボレーションは聴き物。 [CD2]「涅槃交響曲」を指揮するは、1959年2月から1962年3月まで常任指揮者を務めたヴィルヘルム・シュヒター。彼はカラヤンのアシスタントもしていた人物で、NHKso.を鍛えに鍛えた人物として知られている。この演奏の録音は、以前東芝(現・EMIジャパン)からもCDリリースがあったが、今や入手困難。ここに甦った奇跡の名演奏は、全体にものすごい緊張感が漲っている。黛自身のコメント(英語)がブックレットに記載されている。黛は、梵鐘の音色に魅了され、その響きを、大音量で大編成の生楽器を積み重ねることで再現した。鐘の音は時の移ろいとともに変化し、その様は「盛者必衰の理」をも表しているという日本独自の考えにもあらためて心打たれたと語っている。さらに、声明の、リズムとイントネーションの周期的変化、そして複数の僧侶が微妙にずれた音高で詠うことによって生み出されるノイズにも惹かれたと書いている。鐘の響きと祈りの歌・心に理想の音を求めたこの作品のことを、黛は、交響曲であると同時に、 ' Bhddhistic cantata ' とも呼べると書いている。 [CD3]は、高橋悠治のソロ。複雑な数の順列に基づいて作曲されている、超難解なことで知られるクセナキスの「ヘルマ」を、約40年前、若き日の高橋悠治は明晰に演奏。自分たちの手で時代を切り拓いている、という自負と誇りと充実感に満ち満ちた1枚。 このセットは、紙ボックスに収められているが、中身の個々のCDはオリジナルジャケット及びライナーを採用している。高橋悠治とブラウンのツーショットなど、演奏者たちの貴重写真満載なのも注目。黛のジャケットデザインをオノ・ヨーコが手がけているという事実も見逃せない。何から何まで注目の第3弾となっている。 | ||
アール・ブラウン・コンテンポラリー・サウンド・シリーズ〜ブラウンの音楽人生 Vol.4
[CD1]「弦楽四重奏のための新しい音楽」〔オリジナルLP:1972年〕 ブーレーズ:弦楽四重奏のための書〔 Ia (*) / Ib (*) / II (*) / V (#) 〕 シェルシ:弦楽四重奏曲第4番 (+) / アール・ブラウン:弦楽四重奏曲(**) [パレナンSQ (*) ハーマンSQ (#) 新音楽SQ (+) ニューヨークSQ (**)] [CD2]「室内オーケストラのための新しい音楽」〔オリジナルLP:1972年〕 クセナキス(1922-2001):アホリプシス(21の楽器のための)(*) アルド・クレメンティ(1925-2011):フルート、オーボエ、クラリネットのための「トリプルム」(#) ブー・ニルソン(1937-):室内オーケストラのための「情景 III 」(+) シェーンベルク:室内アンサンブルのための3つの作品(+) ヴオジミェシュ・コトンスキ(1925-):アンサンブルのための「歌」(+) 高橋悠治:4つのヴァイオリンのための「6つのストイケイア」(**) ブー・ニルソン:フレクヴェンツェン(*) [フランシス・トラヴィス指揮ハンブルク・カンマーゾリステン(*) セヴェリーノ・ガッゼローニ(Fl;#) ローター・ファベル(Ob;#) ギィ・デュプリュ(Cl;#) ブルーノ・マデルナ指揮国際クラニッヒシュタイナー室内アンサンブル(+) ポール・ズーコフスキー(Vn〔多重録音〕;**)] [CD3]ハンブルク・カンマーゾリステン〔オリジナルLP:1962年〕 ミルコ・ケレメン(1924-):管楽五重奏のための対位法的エチュード ニコロ・カスティリョーニ(1932-1996):トロピ ヴィットリオ・フェッレガーラ(1927-):9つの楽器による室内オーケストラのためのセレナータ 尹伊桑(1917-1995):7つの楽器のための音楽 [フランシス・トラヴィス指揮ハンブルク・カンマーゾリステン] | ||
「アール・ブラウンの芸術」シリーズ、発売延期となっていた第4弾の登場。disc1は、弦楽四重奏のための作品集。弦楽四重奏は、多くの器楽作品の作曲家にとって、自身の技量を見せ付けるために選ばれる演奏形態だった。シェルシは四人の奏者に微分音を奏でさせ、微妙な音高の変化やリズムの微妙な変化をそれぞれのパートに間断なく与える。曲は次第に盛り上がるが、上りきったと思ったらまたさらにクライマックスがあるといった感じの、上れども上れども頂上まで行き着かないようなもどかしさの中で曲が閉じる。ブラウンの作品は、布を引き裂くような音が聞こえるなど、楽器の限界を超えた表現に満ちている。disc2は、室内オーケストラのための作品集。イタリアの作曲家アルド・クレメンティ初期の「トリプルム」は、セリエル音楽のお手本のような作品。名手ガッゼローニがフルートを担当しているのもポイント。スウェーデン出身の作曲家、ニルソンの重要作品のひとつ「情景III」は打楽器が効果的に響き、最後は思わず耳をふさぎたくなるような大音量での高いテンションが持続するが、耳を澄ますとそれぞれの奏者が細かな仕事をしており、ニルソンの持ち味である細密画のような雰囲気も失われていない。シェーンベルクの3つの小品はこれが当時世界初録音だった。どこかストラヴィンスキーの「春の祭典」を思わせうる響きをもった3曲目は未完となっており、途中で終る。高橋悠治の「ストイケイア」は4つのヴァイオリンのための作品だが、ここでは一人の奏者が多重録音している。ハーモニクスの神経質な重音が通奏低音のように鳴り響く中、鋭いピチカートなど様々な音が断片的に奏され、次第にメロディーのようなものも顔を出すが、最初から最後まで大きな変化はないままに幕となる。disc3はすべてこのハンブルク・カンマーゾリステンによって初演された作品。ケレメンの「対位法的エチュード」は、コラールなどの旋律ではなく、リズム構造で対位法を構築していく。カスティリョーニの「トローピ」では、沈黙の合間に様々な楽器によって奏でられるアリアが印象的に響く。フェッレガーラの「セレナータ」は、十二音技法を様々に応用して、ある音を契機に色が変わったり流れが変わったりする。打楽器の使用も印象的。ユンの作品はベルクの精神を感じさせる物。単音や二つの音の繰り返し(それぞれの音の長さは異なる)から構成されるメロディーを軸に楽曲が展開される。楽章が進むにすれて音の密度が低くなり、最終楽章では非常に速いテンポで、高まるリリシズムの中、幕となる。 | ||
アール・ブラウン:コンテンポラリー・サウンド・シリーズ〜ブラウンの音楽人生 Vol.5
sonic arts union: electric sound[オリジナルLP:1972年] アルヴィン・ルシエ: Vespers / ロバート・アシュリー: purposeful lady slow afternoon ダヴィッド・ベアマン:ラン・スルー / ゴードン・ムンマ:ホーンパイプ アイヴズ:ピアノ・ソナタ第2番「マサチューセッツ州コンコード1840-60年」 [アロイス・コンタルスキー(P) テオ・プリューマッハー(Va;*) ウィリー・シュヴェーグラー(Fl;#)/オリジナルLP:1962年] フルートとピアノのための音楽[オリジナルLP:1962年] フランコ・エヴァンゲリスティ:プロポルツィオーニ / ニコロ・カスティリオーニ:ジメル(+) L.ベリオ:セクエンツァI / メシアン:クロツグミ(+) / 松平頼則:蘇寞者 / マデルナ:蜜の夢(+) [セヴェリーノ・ガッゼローニ(Fl) アロイス・コンタルスキー(P;+)] | ||
アール・ブラウン監修のLPを復刻するシリーズ第5作。ルシエの「ヴェスパー」は、カチカチと石がぶつかりあうようなパルス音に混じって、遠くの方で草刈り機が稼働しているようなモーター音が聴こえるが、これはエコロケーション(反響位置測定装置)システムを持った奏者たちが、物体に近づいたり物体から遠ざかったりすることにより生じる音が収録された物。ルシエ本人は反響定位を行う動物(コウモリやクジラは超音波を発し、対象物からの反射によって、その対象の形や大きさ、位置などを知る)に尊敬の念をこめて作曲したと語っている。この不思議な音が何と反応して生じているのかはわからないが、面白い世界。ソニック・アーツ・ユニオンとは、1966年にアルヴィン・ルシエ、ロバート・アシュリー、ダヴィッド・ベアマン、ゴードン・ムンマによって結成されたいわば電子音楽相互協力促進のためのグループ。電子音楽の最先端を切り開いた彼らの気概に溢れた作品が並ぶ。 アイヴズのソナタは、1939年にカークパトリックによって初演されて以来、演奏不可能とされた、マーラーのように壮大で物語性に満ち、ベートーヴェンの第5番交響曲の引用といった古典の要素と、小節線がなく板で鍵盤を押してトーン・クラスターの効果といった現代的な要素をあわせもつコンコード・ソナタの不滅の名演。第1楽章は広大なコンセプト、第2楽章はいくらかおとぎばなしのような世界にむけての冒険へと我々をいざなうマテリアルの断片、第3楽章は行進曲風、第4楽章は「夜行列車とともに安らぎのないこの世界もどこかへ行ってしまい」、「詩人の吹くフルートの音色が湖の向こうから聴こえてくる」といったアイヴズのノートを読みながら聴くと様々な風景が目の前に広がる。 CD3はフルートの伝説的名手、ガッゼローニの演奏による20世紀の名作の数々。フルートのために作品を書くことは作曲家にとって非常に足かせの多い挑戦となる。約3オクターブに限られた音域、音色の可能性の幅の狭さ、また、発生できるノイズ音も、キーをタッピングする、あるいは楽器に息を吹き込む音など2種類ほどしかない。しかし、1919〜1992年に生きたガッゼローニは、ストラヴィンスキー、ブーレーズ、リゲティなど内外を問わず様々な大作曲家にインスピレーションを与え、ガッゼローニのために作品を書いた。現代のフルート音楽はガッゼローニなくして語れないといっても過言ではないだろう。ベリオのセクエンツィアなどは鬼気迫る完璧な技巧の名演、松平の蘇寞者も神秘的な雰囲気にのまれてしまう。 | ||
アール・ブラウン(1926-2002)・コンテンポラリー・サウンド・シリーズ〜ブラウンの音楽人生 Vol.6
・ジョン・ケージ/クリスティアン・ウォルフ〔オリジナルLP:1962年〕 ジョン・ケージ:カートリッジ・ミュージック[ジョン・ケージ、デイヴィッド・チューダー(P)] クリスティアン・ウォルフ(1934-): ヴァイオリニストとピアニストのためのデュオ(*) /ホルンとピアノのためのデュエットII (#) [小林健次(Vn;*) ハワード・ヒリヤー(Hr;#) デイヴィッド・チューダー(P)]/ 弦楽四重奏のための Summer[ワルター・トランプラー(Va) デイヴィッド・ソイヤー(Vc)] ・ニュー・ミュージック・フォー・ヴァイオリン・アンド・ピアノ〔オリジナルLP:1973年〕 クラム(1929-):ヴァイオリンとピアノのための4つのノクターン(1964) ユン・イサン(1917-1995):ガサ / チャールズ・ウォーリネン:長いものと短いもの ジョン・ケージ:ヴァイオリンと鍵盤のための6つのメロディ [ポール・ズコフスキー(Vn) ギルバート・カリッシュ(P)] ・ニュー・ミュージック・フロム・サウス・アメリカ〜 室内オーケストラのための〔オリジナルLP:1973年〕 ジェラルド・ガンディーニ(1936-):ソリア・モリア(1968) セザール・ボラニョス(1931-):ディヴェルティメント III (1967) マルロス・ノブレ(1939-):トロピカル(1968) / オスカール・バザン:ソノグラマス(1963) マニュエル・エンリケ: Diptico I (1969) / アルキデス・ランツァ: Penetrations (1967) [アルキデス・ランツァ指揮ザ・ニュー・サウンド・コンポーザーズ・パフォマーズ・グループ] | ||
好評を博したアール・ブラウンの音楽人生シリーズ最終巻。CD1はケージとクリスティアン・ウォルフ。ケージはアンプ、スピーカー、そして生身の演奏者をパフォーマンスに関係させることによって、ステージのような状況を再現したかったと語る。もちろん録音ではステージはないが、そのかわり、何がどこでどのように作用しているかを見ることができないミステリーの要素が生じていると語っている。ウォルフの作品は、様々な長さの音のグループを何度でも好きなように繰り返すよう指示されているだけで、曲全体の長さは演奏者たちに委ねられている。一つの作品に対し、同じ演奏はありえないように書いたと語るウォルフ。ウォルフ自身が選んだ信頼できる演奏者たちによる演奏で。CD2は、4人の作曲家によるヴァイオリンのための作品集。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が書かれた当初、レオポルト・アウアーは演奏不可能としてこの初演を断ったが、今ではこの作品は超人気のスタンダード・レパートリーとなっている。現代のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲をめざそうと立ちあがった4人の作曲家によるヴァイオリンのための作品集。虫歯に響きそうなヴァイオリンのか弱い音色と、ピアノのクリアーな和音の絡み合いが絶妙なクラムの作品や、強烈なグリッサンドと和音が印象的なユン・イサンの作品など、興味深い作品が並ぶ。CD3は南アメリカ発の音楽。アルゼンチンやメキシコなどに生まれ、メシアン、ダッラピッコラ、ヒナステラらに師事した作曲家たちによる作品集。南米といってもラテンのノリは感じさせず、スピーカーなどを用いた電子音楽や、トーンクラスターなど、バリバリの現代音楽が並ぶ。しかしそんな中にも独特の熱っぽさや人間くささが漂っているから不思議。 | ||
50 years - 1962-2012 CD1(WER-6228) ストラヴィンスキー:2台、または4手のためのピアノ作品集 CD2(WER-6287) ディーター・シュネーベル:コラール前奏曲集/他 CD3(WER-6203) ジョン・ケージ:打楽器アンサンブルのための作品集 CD4(WER-6631) ルイジ・ノーノ:作品集 CD5(WER-6717) シュトックハウゼン:初期作品集 | ||
WERGOレーベル創立50周年記念限定ボックス。名門音楽出版社SCHOTT社のグループ会社であり、SCHOTTアーティストの作品などを今も精力的にCDなどで紹介してきたWERGOレーベル(記念すべき第1弾は、ブーレーズ指揮によるシェーンベルクの「月に憑かれたピエロ」だった)。当時のプロデューサーにして美術史家、コレクター、熱き魂をもっていた、ヴェルナー・ゴルトシュミット(Werner Goldschmidt → WERGO)によって1962年に産声をあげたレーベルは、今なお内容・デザインともにエッジの効いたリリースで人々を驚かせてくれている。実に600タイトルほどの現代音楽をリリースしてきたWERGOが、よりぬきの5タイトルをボックス化。伝説の兄弟ピアニスト、コンタルスキー兄弟によるストラヴィンスキー。ドイツで極めて名誉あるGerman Record-Award (German Phono-Academy) を受賞した衝撃的名盤のシュネーベル作品集。若きケージの実験精神と知性に満ちた打楽器のための作品集。ショット社の重要作曲家ノーノが大切にした「歌」。そしてドイツを代表するシュトックハウゼンの作品集。一言では語り尽くせない、WERGOの歴史の重みを感じるボックスセット。 | ||
ジョン・ケージ(1912-1992):100 SPECIAL EDITION ソナタとインタリュード(1946-48)[録音:1975年/単売:WER-60156 [廃盤]] ピアノと管弦楽のための協奏曲(1957-58) /アトラス・エクリプティカリス(1961-62) [録音:1992年/単売:WER-6216] 「アルファベット」1982年ラジオ放送時のケージのコメント/「アルファベット」(英語版) [録音:1990年4月29日、第2回アクスティカ国際フェスティヴァル/単売: WER-6310 (2CDs/独語版併録)] ヴァリエーションズII(1961) /8つのウィスクス(1985) / ミュージック・フォー・トゥー(1985) /竜安寺(1983-85)[録音:1998年/単売:WER-6636] ハーモニー第27、22、24、13番(チェロとピアノのための)(1976) / 北のエチュード(ピアノを奏するパーカッション奏者のための)(1978) / 「10'40. 3''」(弦楽奏者のための〜チェロ・ヴァージョン)(1955) / 北のエチュード(チェロ独奏とピアノ独奏のための)(1978)[録音:2009年9月/単売:WER-6718] | ||
ケージ生誕100周年記念、様々な編成によるケージ作品のディスクをまとめた5枚組ボックス。[CD1] 「ソナタとインタリュード」は、16のソナタと4つのインタリュード(間奏曲)から成り、演奏時間にして50分を超える。インド哲学に影響を受けたケージがヒンドゥー古来の概念である様々な不変の感情を表現したという物。東洋の様々な打楽器の音色を思わせるプリペアド・ピアノの響きが織り成す神秘的な世界は見事。ジョシュア・ピアースはこのソナタとインタリュードをコンサートで23回は演奏したという兵。さらに、ブックレットには、どのピアノ線にどんなネジやボルトを仕掛けたかが詳細に記されており、こちらも見逃せない。[CD2] ピアノと管弦楽のための協奏曲(1957-58)はもともとは「ソロ・フォー・ピアノ」という63ページの作品。演奏者はどこを弾いても全部を弾いてもどんな順番で弾いてもよい、という物。これが発展してピアノと管弦楽のための協奏曲になった。管弦楽といっても、その編成も人数もこれまた演奏者まかせ。アトラス・エクリプティカリスは86ものパートからなる器楽(管弦楽)作品。1961年8月3日に初演され、一柳慧もアシスタント・コンダクターを務めた。1964年にはバーンスタインによっても取り上げられるなど、ケージの代表作となった。仏教の思想と、「森の生活」のヘンリー・デイヴィッド・ソローの思想の世界観をもつ作品で、鳥がさえずり、キノコが豊かに成る森を思わせる。[CD3]「アルファベット」は、1982年にラジオドラマとして生み出された物。ケージが愛してやまなかった、ジョイス、デュシャン、そしてサティ。三人は、ケージの豊かな想像力によってステージ上に蘇り、ちょっと不思議な会話を交わする。ギリシャ古典文学の話からカンチェンジュンガの山の話、ハイデッガー批判、レオナルド・ダ・ヴィンチの話、そしてなぜか富士山の話。さらに12人の思索家たちも加わって、会話はますますヒート・アップ。それぞれの出演者がケージの音楽仲間たちによって演じられるというのもまた興味深い物。ケージ扮するジョイスの思慮深げな語り口には思わず聞き入ってしまう。ここでは英語版のみを収録。1982年にこの作品がラジオで放送されたときのケージのコメントが入っている。[CD4] ヴァリエーションズは複数の出来事が同時に起こっているザ・偶然性の音楽。その出来事のひとつひとつが耳に心地よいものから虫歯に響きそうな音まで様々。そのほかにも俳句にヒントを得たエイト・ウィスクス。また、京都の有名な竜安寺にインスパイアされて作曲したその名も「竜安寺」では、小石による波のもようをグリッサンドに、そして配置された岩(石)をピッチ(音高)に見立て、静かで不思議な世界が広がっている。[CD5] スローモーショーンの映像を見せられているようなハーモニー第27番、冷たい水と氷の世界を思わせる北のエチュードなど、人の心や脳裏のどこか、正気と狂気の間に潜んでいるような風景満載の作品集。鬼才ガウヴェルキのチェロと、ノップの完璧なピアノの音色が冴えわたる1枚。 | ||
ジャン・フランセ(1912-1997):生誕100周年セット ピアノと管楽アンサンブルのための「愉快な主題による変奏曲」(1976) [ジャン・フランセ(P) マインツ管楽アンサンブル/録音:1977年4月]/ ピアノのための「少女たちの5つの肖像」(1936)[ジャン・フランセ(P)/録音:1980年5月]/ 2台のピアノとオーケストラのための協奏曲〜(1965)[ジャン・フランセ、クロード・フランセ(P) ピエール・シュトール指揮バーデンバーデン南西ドイツ放送so./録音:1967年6月]/ クラヴサンと器楽アンサンブルのための協奏曲(1959) [ジャン・フランセ(Cemb) エミール・ナウモフ指揮ザールブリュッケン放送so./録音:1988年9月]/ トランペットと管楽器のための「陽気なパリ」(1974) [キャロル・ドーン・ラインハルト(Tb) マインツ管楽アンサンブル/録音:1976年6月]/ 10の管楽器のための「特徴的な9つの小品」(1973)[マインツ管楽アンサンブル/録音:1974年6月]/ 恋人たちのたそがれ(羊飼いの時間)〜Friedrick K. Wanekによる管楽器とピアノのための編曲版 [アガーテ・ヴァネク(P) マインツ管楽アンサンブル/録音:1977年3月]/ バレエ「ソフィーの不幸」に基づく10の管楽器のための7つの踊り(1971)[録音:1977年3月]/ ギターと弦楽オーケストラのための協奏曲(1982/83) [エマニュエル・セルジュ(G) ハンス・リヒター指揮南西ドイツ室内o./録音:1986年2月]/ 11の管楽器と打楽器のための8つの異国風舞曲(1981) [ジョン・ドヴォラチェク(Perc) マインツ管楽アンサンブル/録音:1987年1月]/ 9つの管楽器とコントラバスのための「ハイドンの主題による11の変奏曲」(1982) (#) / 擬似的即興曲(*) /モーツァルト・ニュールック(#)/友パパゲーノへのオマージュ(+) [野田一郎(Cb;#) マインツ管楽アンサンブル/録音:1977年3月(*)、1987年1月(#/+)]/ モーツァルト没後200年記念のエレジー / シューベルト/フランセ編曲:3つの軍隊行進曲 Op.51, D733 ショパン/フランセ編曲:3つのエコセーズ/ドイツ民謡による変奏曲 シャブリエ/フランセ編曲:3つの絵画風小品/ヨーロッパ風小ワルツ[アマデ管楽アンサンブル/録音:1997年2月] | ||
1912年生まれの音楽家といえば、ギュンター・ヴァント、ジョン・ケージ、ショルティなど、様々な巨匠がいたが、フランスが生んだ作曲家、フランセも1912年生まれだった。ジャン・フランセのモットーは、「喜びのための音楽」を作り上げることだった。エレガントでエスプリが効いたハーモニー、極めて明晰な音楽の響きが魅力で、音楽のユーモア、優雅さと皮肉がうまくちりばめられた、独自の世界が広がる。フランセの生誕100周年を記念してリリースされるこのセットでは、フランセの魅力のエッセンスを伝える録音を選りすぐってお届け。[disc1] は、自作自演によるピアノの作品も収録、軽やかな魅力に満ちている。フランセの演奏によるクラヴサンも非常に軽妙洒脱な響きで、驚かされる。[disc2] でも、ミヨーら6人組を思わせるなんともエスプリに満ちた、フランセならではの作品が並ぶ。[disc3] フランセと・・・では、ハイドンの交響曲第94番第2楽章の旋律に基づいた変奏曲や、シューベルトの3つの軍隊行進曲などに関してフランセが語った肉声、シャブリエのピアノ曲を管楽器編成に編曲したものなど、音色と楽器の魔術師フランセの真骨頂をみることが出来る。 【ジャン・フランセJean Françaix】:1912年5月23日に、作曲家にしてピアニストの父と、声楽家で合唱団を設立した母のもとに生まれ、10歳でナディア・ブーランジェに和声の手ほどきをうけた。同年、第1作となる作品を作曲、ラヴェルのすすめでパリ音楽院に進み作曲を学ぶ傍ら、ピアニストとしても活躍した。18歳の時、イシドール・フィリップのクラスで第一等を獲得。二十代前半から作曲家およびピアニストとして世界で認められるようになり、以降、オペラ、バレエ、管弦楽作品、協奏曲、映画音楽、声楽音楽など多岐にわたる業績をのこしている。娘クロード(ピアニスト)との共演など、晩年まで積極的に演奏活動も行っていた。1997年9月25日、没。 | ||
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(1926-2012)交響曲全集〔第1番−第10番〕
マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送so.&cho. | ||
録音:2006年-2013年。分売: WER-6721〜6725 をそのままスリップ・ケースに入れたセット化(紙 BOX ではありません)。 | ||
ジュリアードSQ 〜ヒンデミット:弦楽四重奏曲全集 〔第1番 ハ長調 Op.2 /第4番 Op.22 /第7番 変ホ調/ 第2番 Op.10 /第6番 変ホ調 /第3番 Op.16 /第5番 Op.32 〕 ジュリアードSQ [ロバート・マン(Vn1) ジョエル・スミルノフ(Vn2) サミュエル・ローズ(Va) ジョエル・クロスニック(Vc)] | ||
録音:1995年4月15日-18日、1996年6月14日-16日、1997年3月8日-10日。単売: WER-6283, WER-6607, WER-6622 のセット化。冴えわたる技巧と高い合奏能力を武器とするアメリカの名カルテット、ジュリアード弦楽四重奏団によるヒンデミットの弦楽四重奏曲録音がお求めやすい価格でセット化再発売。単発では廃盤になっているものもあり、嬉しいリリース。バルトークなど近現代音楽も得意とするカルテットゆえに、演奏は申し分ない。ハイドンやベートーヴェン、或いはバッハを思わせる彫琢された4声体でありながら、メカニックでカサカサした独特の語り口や和声感がいかにもヒンデミットな四重奏。またヴィオラ弾きでもあったヒンデミットだけあって、内声の対位法的な充実ぶりが目を引く。ジュリアード弦楽四重奏団はこういう音楽にもめっぽう強く、疾走感と力強さを兼ね備えた演奏を展開している。未来的でドライなサウンドがクセになる、20世紀ドイツ音楽の面白さを世に伝えるWERGOならではの名盤。 | ||
TRACES 〔痕跡〕〜デトレーフ・ミュラー=ジーメンス(1957-): ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのための弦楽三重奏曲(2002) / ヴァイオリン、ヴィオラとピアノのための「遠い痕跡」(2007) (*) / チェロとピアノのための「・・・夕暮れを呼ぶ」(2008-2009) (*) / ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとピアノのための「失われた痕跡」(2007) バーゼル・モンドリアン・アンサンブル | ||
録音:2013年5月。ミュラー=ジーメンスはリゲティの弟子。(*)は師の思い出にささげられている。 | ||
初CD化 野獣〜モートン・サボトニック(1933-):記念碑的録音集 増幅トランペット、器楽アンサンブルとテープ [electronic ghost score] のための 「蝶のあとに [After the Butterfly] 」(1979) (*) / トロンボーン、ピアノとテープ [Ghost Electronics] のための 「野獣 [The Wild Beasts] 」(1978) (#) マリオ・グァルネリ(Tp;*) モートン・サボトニック指揮(*) 20世紀プレイヤーズ(*)[2Vc、2Cl、2Tb、Perc] マイルズ・アンダーソン(Tb;#) ヴァーコ・バーリー(P;#) | ||
録音:1980年4月、ザ・レコード・プラント、ロサンゼルス(*) /1981年3月、エヴァーグリーン・スタジオ、バーバンク、カリフォルニア州(#) 。原盤: NONESUCH 。おそらく初 CD 化。モートン・サボトニックは、電子音楽分野の発展を語る上で欠かせない、生ける伝説のような存在。当時最先端の技術を作曲に取り込んでいる。野獣は、野獣派(フォーヴィスム)の絵画にインスパイアされた作品。伝統的な楽器を、普通の音色はもはや期待できない環境の中で演奏させるという作風で、まさに強烈な色彩を放つフォーヴィスムの絵画のような作品になっている。 | ||
歴史的録音集〜モートン・サボトニック(1933-):両生類の二重生活(1984) 〔無伴奏チェロとエレクトリック・ゴースト・スコアのための「アホロートル [axolotl] 」(1980/82) (*) / 2つのチェロ、クラリネット、バス・クラリネット、バス・トロンボーン、 2つのピアノ、2人の打楽器奏者とコンピュータのための「 ascent into air 」(1980-81) (#) / ソプラノ、2つのチェロ、シンセサイザーとエレクトリック・ゴースト・スコアのための 「野獣の最後の夢」(1979, rev. 1982/84) / 弦楽四重奏とエレクトリック・ゴースト・スコアのための「翼の飛翔 [A Fluttering of Wings] 」(1981) (+) 〕 ジョエル・クロスニック、エリカ・デューク、デーン・リトル(Vc) ジョアン・ラ・バーバラ(S) ジュリアードSQ (+) カラーツ21世紀プレイヤーズ モートン・サボトニック(エレクトロニクス) スティーヴン・I.モスコ指揮 | ||
録音:1981年-1985年。おそらく初CD化。初出 LP: Nonesuch, N 78012 (*) , N 78020 (#/+), N 78029 (無印) 。CDマスタリング: 2016年。電子音楽界のレジェンド、サボトニックの Nonesuch LP 盤が CD 化。サボトニックは楽器と他のメディアを組み合わせた作品で革新的な役割を果たした。このアルバムは交響詩「両生類の二重生活のための音楽」からの抜粋。「両生類」とは、蛙が水中と空気中で生きているように、私たちが過去と未来、あるいは野獣と天使の心を持っていることの暗喩だと語るサボトニック。サボトニック特有の、 電子ゴースト・スコア(振り子が左右に揺れる音や、何かが通過する音、あるいは加速するパルス音など、何か動き(ジェスチャー)を伴う音を収録した テープを用いる)と生の楽器が織りなす世界をお楽しみ頂ける。 | ||
デイヴィッド・ブリニャル・フランソン(1978-): The Negotiation of Context (2009-2011) |
Yarn / Wire 〔打楽器ピアノ四重奏団〕 | |
ロルフ・リーム(1937-): モスクワのレンツ(2011)[アンサンブル・アスコルタ]/ナイチンゲールの谷で(2007)[エリク・ボルギール(Vc)] 音のための音(バビロンの白い通り)(2007)[テオ・ナビフト(コントラバスCl)] 泉のほとりで(2007)[シャン・エドワーズ指揮フランクフルト放送so.(hrso. )](#) | ||
録音:2011年(#以外) /代理店アナウンスに記載無し(#)。ロルフ・リームは作曲をフォルトナーに学んだ。また、オーボエ奏者としても優れ、自作の初演(Ob)を手掛けてもいる。グリム童話(ねずの木の話)を題材にした音楽が特に知られている。自身、自分の作品のことを「政治的によろしくない」としており、どの楽派にも属さない、政治・社会と直接的なかかわりを見つめた作品を書いている。人の声を意識した独特の美しさをたたえた旋律や、音を聴いていると映像が目に浮かぶような、描写の見事な世界で独自の人気を誇る。「モスクワのレンツ」のレンツとは、ゲオルク・ビューヒナーの「狂ってゆくレンツ」でも描かれたドイツの作家。1751年生まれ、ゲーテらとも関係のあったレンツは、1780年頃からロシアに移り、最後はモスクワで、家庭教師や通訳などとして生計をたてながら、フリーメイソンなどの活動もしたが、精神の病もかかえながら1792年にモスクワで亡くなった人物。ノコギリヴァイオリンやトロンボーン、様々な楽器が、レンツの人物像を形作っていく。他にも、オルフェウスを題材にした「ナイチンゲールの谷にて」や、聖書の怪人ゴリアテと少年ダビデの戦い(=大なるものと小なるものの戦い)をほうふつとさせるオーケストラ効果の見事な「泉のほとりで」など、注目作が並ぶ。 | ||
ゲルハルト・シュテープラー(1949-):作品集 ギリギリの限界に関する音楽的エッセイ(2001) /熱い!(1988) /窓(1983) / TAP (1998) /しかし・・・(2009) ドミニク・ズステック(Org) | ||
録音:2014年1月、聖ペーター教会、ケルン。オルガンを愛してやまない作曲家、シュテープラーによる5つのオルガン曲を収録。シュテープラーは多作な作曲家だが、小学生のころから魅かれていたオルガンのための作品は、このCDに収録された5曲のみ。あまりに好きで思い入れが強くなりすぎてしまうため、まだ5曲しか作曲できていないということ。どれも、オルガンを熟知し、ノイズのような音から微小な音色、地響きのようにパイプを轟かせるような音まで聴きどころ満載。演奏するのはリゲティやシュトックハウゼンの作品などでも秀演を披露しているズステック。驚くべき迫力で、不思議な説得力に満ちている。 | ||
イェルク・ヴィトマン(1973-):弦楽四重奏曲集 弦楽四重奏曲〔第1番/第2番「コラール四重奏曲」/第3番「狩の四重奏曲」/ 第4番/第5番「フーガの試み、ソプラノを伴う」(*) 〕/ オペラ「不在」の弦楽四重奏曲/弦楽六重奏のための「1分間に180回」(#) ミンゲット〔ミンゲ〕 SQ [ウルリヒ・イズフォルト、アンネッテ・ライジンガー(Vn) アロア・ゾリン(Va) マティアス・ディーナー(Vc)] クラロン・マクファーデン(S;*) アレクサンダー・ヒュルスホフ、アンドレイ・シモン(Vc;#) | ||
録音:2014年1月、4月。すぐれたクラリネット奏者としても活躍している作曲家、イェルク・ヴィトマンの弦楽四重奏作品集。番号が付された作品を1晩で演奏するプロジェクトを行ったミンゲット・カルテットによる演奏で、ヴィトマン自身、「このアンサンブルは、それぞれの作品が補足的だったり矛盾に満ちたりしていながらも、すべてがドラマ的につながっていることをよく理解している」と信頼を置いている。番号が付された作品のほか、ヴィトマンが学生時代に書いたオペラ「不在」の1シーンに出てくる弦楽四重奏曲に基づく‘オペラ「不在」の弦楽四重奏曲 'や弦楽六重奏の作品など、ヴィトマンの室内楽の筆致を存分に味わえる。ミンゲット・カルテットは、芸術は大衆に愛されるものであるべき、と唱えた18世紀スペインの哲学者パブロ・ミンゲットの名を冠したカルテット。リームの弦楽四重奏作品の全曲録音プロジェクトを手掛けるほか、ルジツカの弦楽四重奏曲全集録音やイェルク・ヴィトマンの弦楽四重奏の全曲演奏プロジェクトなどを手掛ける一方、J−P.サラステやゲルハーヘルらとも多く共演を重ねている、多ジャンルにわたり活躍している団体。 | ||
ゲオルク・クライスラー(1922-2011):ピアノ作品全集 5つのバガテル/ピアノ・ソナタ/3つのピアノ小品/ メゾ・ソプラノ、ピアノとヴァイオリンのための「バーバラのための5つの歌」 シェリ・ジョーンズ(P) オリヴィア・フェルモイレン(Ms) アンドレアス・ライナー(Vn) | ||
録音:2014年3月、11月。ゲオルク・クライスラーはウィーン生まれ。ユダヤ人で、戦後しばらくはアメリカで映画やテレビ音楽の分野で活躍、チャップリンとも仕事を共にしたという。キャバレーやバー等で演奏して生計を立てた。1950年代後半からヨーロッパに戻り、ザルツブルクで没した。自ら詩を書き作曲したシャンソンを自ら歌い伴奏した録音なども遺されているが、作曲家としての認知度はきわめて低いものと言わざるをえない。ここに収録された作品は非常にエッジの効いたアヴァン・ギャルド的作品で、どことなくジャズも思わせるようなハーモニーが魅力。 | ||
ティエリー・ペク(1965-): 大管弦楽のための「 Orquoy 」/3つのフルートと管弦楽のための「 Chango 」/ 管弦楽のための「 Marcha de la humanidad 」 ジョナサン・ストックハマー指揮フランス国立o. | ||
録音:2013年11月27日-29日。全曲世界初録音。フランス生まれ、世界各国に滞在しながら作曲するペクの管弦楽作品を収録したアルバム。その作風はヴィラ=ロボス、チャベス、レブエルタスを思わせるラテン・アメリカの響きとリズムを持ったユニークな物。室内楽的な薄い響きに始まり大音響のクライマックスに至るまで、各楽器が独立したリズム感で短いパッセージを繰り返し、その堆積によって音楽が構築されていく。無調とはいえそれぞれのメロディは耳馴染みの良い音階で、日本人の耳には盆踊りやお祭りに聴こえる部分もあるかもしれない。曲は常に賑やかという訳ではなく、全体の構成や楽器の色使いに気を配った繊細さも見られる。「Chango」はアフロキューバン音楽にインスパイアされ書かれた作品。3つのフルートが呪術的なメロディを吹きあう第1楽章と、パーカッションが活躍し盛大なリズムの饗宴となる第2楽章からなる作品。 | ||
ハヤ・チェルノヴィン(1957-): The Quiet [ブラッド・ラブマン指揮バイエルン放送so./2011年2月11日]/ Zohar Iver (Blind Radiance) [アンサンブル・ニケル マリオ・ヴェンツァーゴ指揮ベルンso./2011年10月20日]/ Esh (*) [カイ・ヴェッセル(CT) エヴァン・クリスト指揮コトブス州立劇場po./2012年1月8日]/ White Wind Waiting [シュテファン・シュミット(G) フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮南西ドイツ放送so./2013年9月10日]/ At the Fringe of Our Gaze [ダニエル・バレンボイム指揮ウェスト=イースタン・ディヴァンo./2013年8月18日] | ||
録音:[/内]。(*)を除き世界初録音。イスラエル生まれの作曲家、ハヤ・チェルノヴィンによる管弦楽作品集。いずれも古典的なトゥッティなどはなく特殊奏法も多く、そよぐ風、 水の流れ、虫たちのさざめきとも聴こえるようなサウンドが展開される。(*)までの3曲は「クレッシェンド三部作」と名付けられており、静けさの中で保続音がじわじわと強くなるなど、さまざまな試みがなされる。 | ||
Cage After Cage 〜ジョン・ケージ(1912-1992):ソロ・パーカッション作品集 スネア・ドラム独奏のための「作曲された即興」/ヴァリエーション1(スチールドラムとムビラ版)/ 打楽器独奏のための「木の子供」/金属音付き、あるいは金属音無しの片面ドラムのための「作曲された即興」/ 水で満たされたほら貝を奏する3人、循環呼吸でほら貝を奏する1人と発砲音のための「入り江」/ 打楽器独奏のための「 27'10.554" 」 マティアス・カウル(Perc) | ||
録音:2014年4月22日-25日。ケージが「静寂」にこめた意図へ正面から挑んだ CD 。ヴァリエーション1は、透明な板に書かれた五線紙と点を重ね合わせた楽譜が用いられ打楽器の選択も奏者に任されるという作品。カウルは長さの異なる金属片を指で鳴らす楽器ムビラと、ドラム缶を加工したスチールドラムを選択、多様な音色を引き出している。さらにユニークなのは「入り江」。水音と火がはぜる音が混ざり合い、原始的な情景を呼び起こす。音と静寂へのケージの探求が込められた一枚。 | ||
シャルロッテ・ザイトヘル(1965-):作品集 Champlève (ピアノ三重奏のための)(1994) / Cry (無伴奏ヴァイオリンのための)(2009) / Gran passo (ピアノ独奏のための)(2006) / Merging Strain (無伴奏チェロのための)(1999) / Playing Both Ends Towards the Middle (ヴァイオリンとチェロのための)(2000) / Equal Ways of Difference (ピアノ三重奏のための)(2011) エロール=クラヴィーア・トリオ [ Uta-Maria Lempert: violin / Matthias Lorenz: violoncello / Stefan Eder: piano ] | ||
録音:2013年10月17日-20日。自らの作品について「妄想の世界を音にしてあらわしたもの」と述べるザイトヘルの作品集。 | ||
...auf... 〜マルク・アンドレ(1964-):大オーケストラのための3部作 ...auf...1 (管弦楽のための)/ ...auf...2(管弦楽のための)/ ...auf...3 (管弦楽とライヴ・エレクトロニクスのための) シルヴァン・カンブルラン指揮バーデン=バーデン・フライブルクSWRso.、SWR 実験スタジオ、フライブルク | ||
録音:2009年。アンドレは1964年フランスに生まれ、その後ドイツで活躍している作曲家。パリでクロード・バリフやジェラール・グリゼーに、ドイツではラッヘンマンに師事している。「 ...auf... 」シリーズは、2009年3月28日、ベルリン・フィルハーモニーにて、当盤と同顔合わせの面々によって初演された。非常に大掛かりな陣容の作品で、木管楽器パートは各4名(イングリッシュ・ホルン、バス・クラリネット、コントラファゴットも4名)、金管も、トランペット、トロンボーン、チューバまでも4名という作品。さらに、...auf...3 になると、この編成に、聴衆を取り囲むようにして6名の打楽器奏者と電子音を流すスピーカーが加わるという。ヴァイオリンを筆頭にすべての楽器は舞台上で対称的に配置され、ステレオ効果抜群の音世界が作り出される。 | ||
ペーテリス・ヴァスクス(1946-): オーケストラのための交響的エレジー「 Sala 〔島〕」(2006) / 弦楽オーケストラのためのムジカ・アッパッショナータ(2002) / オーケストラのためのクレド(2009) アトヴァルス・ラクスティガラ指揮リエパーヤso. | ||
録音:2014年1月、5月。ラトヴィアの作曲家、ペテリス・ヴァスクスの作品集。1曲目の「Sala」(島)はエレジーとあるように非常に抒情的かつ叙景的で、スケールの非常に大きなヒーリング音楽のようだ。時にラトヴィアの民謡を思わせるような親しみやすい旋律も聴かれる。2曲目のムジカ・アッパッショナータは厚い和音と変化に富んだ作品。クレドはクラリネットと弱音器をつけた弦楽が織りなす深い祈りの世界。 | ||
ヴィオレタ・ディネスク(1953-): 日記から〔 I 1Fl / II 1BFl / III 1AFl / IV 1Picc / V 1ContFl〕/ 観察〔 I 2Fl / II 5Fl / III 3Fl / IV 4Fl / V 9Fl〕/ 海の鐘Fl/4Hr / Kata Fl/P (*) /モーツァルトを求めてFl/Hp /イクトゥスFl/Vn/P カリン・レヴァイン(Fl/バスFl/アルトFl/コントラバスFl/ピッコロ) シュテファン・ラーン(P) シンシア・オパーマン(Hp) ズザーネ・ツァップ(Vn) ドープラ・ホルン四重奏団 | ||
録音:2014年7月2日-4日、2015年2月24日-25日、11月16日。(*)以外すべて世界初録音。ルーマニア生まれの作曲家ディネスクによるフルート作品集。フラッターツンゲ、ブレス・ノイズ、重音、グリッサンドなど特殊奏法を駆使して奏でられるものの、音楽はどこか優しく柔らかい印象を受ける。フルートの本数が増えると、何層もの幕が別々にゆらめくようなサウンドが出現し、不思議に心地よい感覚を覚える。各種のフルートを流麗に吹きこなすカリン・レヴァインの妙技にも注目。 | ||
モートン・フェルドマン(1926-1986): オーケストラのための「オーケストラ」(1976) (*)/ ソプラノ、混声合唱とオーケストラのための「エレメンタル・プロセデュアズ」(1976) / オーボエ、トランペット、ピアノ、ヴィオラ、チェロ、コントラバスのための「お定まりの研究」(1976) クラウディア・バラインスキー(S) ペーター・ルンデル指揮ケルン放送so. ニコラウス・コック合唱指揮ケルン放送cho. | ||
録音:2010年2月10日(*) 、2013年2月5日-6日(*以外)。ジョン・ケージやアール・ブラウンらと並ぶアメリカ現代音楽の重要な担い手であったモートン・フェルドマン。図形楽譜の発案者として、またその静謐な音楽や、演奏時間が最大で6,7時間に及ぶような長大な作品で知られている。晩年に書かれた「〜でもなく(Neither)」は彼の唯一のオペラ作品だが、このディスクにはそのオペラ作曲に先立ち、前段階として1976年、どれも短期間のうちに書かれた3作品群を収録。当時フェルドマンはアイルランド出身の劇作家サミュエル・ベケットの作品を用いたオペラ作品を委嘱されていた。ベケットのテキストの使用や、ソロや合唱での声の用い方など、オペラを書くにあたっての実験の場でもあったこれらの作品は「ベケット三部作」と呼ばれている。音の扱い方などに後のオペラに通じる要素を見ることができ、彼の創作の軌跡を追うことができる。霧が立ち込めたような静寂、ぽつりぽつりとつぶやくような音数の少なさなど、フェルドマンの代名詞ともいえる空気感に溢れたこれらの曲、フェルドマンファンにはたまらない。現代音楽の演奏に定評があり、彼女のために多くの作品が書かれているソプラノ、バラインスキーの妖艶なヴォカリーズにも注目。 | ||
Amiable Conversation 〜 ヘンリー・カウエル|ジョン・ケージ ジョン・ケージ:トスト・アズ・イット・イズ・アントラブルド(1943) (*) /独白(1945) / 夢(1948) /ホロコーストの御名にかけて(1942) (*) /2つの小品(1946) / 危険な夜(1944) (*) /プリミティヴ(1942) (*) ヘンリー・カウエル:不吉な響き(1930頃) /エオリアン・ハープ(1923) / 3つのアイルランドの伝説(1912) /バンシー(1925) /痕跡(1920) / 5つのアンコール(1917) /富士山の雪 ザビーネ・リープナー(P;*以外/プリペアードP;*) | ||
録音:2014年12月11日-13日、バイエルン放送スタジオ2、ミュンヘン。20世紀アメリカの二大天才によるピアノ曲を集めた好企画。もちろんトーンクラスターとプリペアード・ピアノ満載で、その効果の面白さや表現力を改めて実感させるが、どちらも日本の精神文化から影響を受けていて、日本人の心を打つ何かがある。ケージ作品はマース・カニンガムのダンスのために作ったものが中心となっているが、「トスト・アズ・イット・イズ・アントラブルド」や「ホロコーストの御名のかけて」など、ジョイスの「フィネガンズ・ウェイク」からとられた言葉遊び的なタイトルに興味をひかれる。カウエル作品は作曲者の自作自演が残されているが、現代作品のスペシャリストのリープナーがよりシャープに表現。ペンタトニックのトーンクラスターが不思議な極東感を漂わす「富士山の雪」など、曲の良さを再認識させる。 | ||
フアン・カルロス・パス(1901-1972): フルート、クラリネット、ヴァイオリン、チェロとピアノのための 「 édalus, 1950 」 Op.46 (1950-51) (*) / 弦楽四重奏のための「 Invención 」(1961) WPR / ピアノのための「 Núcleos 」(1962-64) (#) / フルート、クラリネット、ファゴット、トランペット、コルネット、トロンボーンと テューバのための「 Concreción 」(1964) (+) WPR アンサンブル・アヴァンテュール おかべ・あきこ(P;*/#) アレクザンデル・オット指揮(*/+) | ||
録音:2014年9月26日-28日、11月30日。世界初録音 WPR 。20世紀アルゼンチンの作曲家、フアン・カルロス・パスの作品集。世界初録音も2曲含まれる。当時、ラテンアメリカの音楽界では民族音楽をベースにした創作が主流だったが、パスはその風潮とは一線を画し、当時の西洋音楽の動向を吸収しつつそれらを統合させるような作品を発表した。当時ヨーロッパで盛んに使用された音楽語法の一つ、「12音技法」を初めて南米で使用した作曲家とも言われている。後期ロマン派、新ウィーン楽派の12音技法、ジャズや新古典主義など、20世紀前半にヨーロッパで起こっていた、または持ち込まれた様々な同時代音楽の影響を受けた彼が、20世紀半ばのうちに遠く海を隔てた国でこのような作品を書いていたことは、現代に続く「西洋音楽の多国籍化」の始まりといえるだろう。文化の国境が徐々になくなっていく、世界で同じ文化を共有する、そんな新しい時代の文化のあり方を感じる一枚。 | ||
ペーテリス・ヴァスクス(1946-): 弦楽四重奏曲集 Vol.2 〔第4番/第1番(*) /第3番〕 |
スピーツェルSQ | |
録音:2014年5月(*)、2014年7月(*以外)、レーゼクネ市コンサート・ホール GORS 、ラトヴィア。ラトヴィア生まれの作曲家ペーテリス・ヴァスクスの弦楽四重奏曲集。ソビエト占領下時代から独立後の混乱期まで、祖国ラトヴィアとそこに生きる人々の苦難を間近に見てきたヴァスクスにとって、音楽を書くことは人々にとっての「魂の楽園」を求めることだった。彼の創作の中で重要な位置を占めている5曲の弦楽四重奏曲には、どんな厳しい環境でも失われない彼の祈り、愛、希望が一貫して描かれている。弦楽四重奏第1番は、ソビエト占領下時代に書かれた作品。ラトヴィアを取り巻く厳しい状況と混乱、絶望に満ちた感情や、突き上げるような抵抗が描かれたのち、最終楽章では理想の世界を希求する静かで穏やかな楽想が広がる。弦楽四重奏第3番は、ラトヴィア独立後間もない頃に書かれた作品。クリスマスキャロルを引用した第1楽章、ラトヴィアのフォークダンスのリズムを用いた第2楽章の後に続く第3楽章では、それまでと一変し鋭くシビアな表情が現れ「地球上で平和は可能か?」という問いを聴衆に突きつける。最終楽章で再び現れる希望の光は、そんな自問自答を繰り返した作曲者の答えなのかもしれない。21世紀を目前にした1999年に書かれた弦楽四重奏第4番は、90歳を迎えたヴァスクスの母に捧げられた作品。彼女の生涯と20世紀が歩んだ歴史に想いを馳せて作曲されたという。最終楽章「瞑想」は、高音域で透明感のある歌を奏でるヴァイオリンソロが特徴的。「空高く飛ぶ天使が下界の状況を悼みつつ、かすかな癒しと慰めを与える」と作曲者が説明している。この最終楽章「瞑想」は、2006年にヴァイオリンと弦楽合奏版が作られ、その版には「孤独な天使」というタイトルがつけられている。既にWERGOからリリースされている弦楽四重奏第2番&第5番(WER-7329)に引き続き今回も演奏を手がけるスピーツェル弦楽四重奏団は、シンフォニエッタ・リガo.とリエパーヤso.のメンバーからなるラトヴィアの弦楽四重奏団。古典から現代まで幅広いレパートリーを持ち、ラトヴィア人作曲家の作品の演奏に力を入れて活動している。そっと人々に寄り添うような曲を書き続けるヴァスクス。痛みに満ちた時代だからこそ必要とされる希望や信仰が、作曲者の肉声として伝わってくるような作品集。 | ||
ディミトリー・テルツァキス(1938-): レジェトス(1988) [カーラ・ベイヤー、ルーシー・レーカー(Vn)/2014年7月14日]/ サッフォーチクルス(2006)[2007年10月13日](*) /ヴィジョン(2004)[2005年7月11日](#) [タチアナ・マスレンコ(Va;*/#) ブリギッテ・ファスベンダー(語り;*) アンティゴネ・パポウルカス(S;*) クリスティアーネ・ロレンツ(Fl;*) アンドレス・マウポイント(P;*) ウテ・レック(語り;#) ゲオルク・クリストフ・ビラー指揮トーマス教会少年cho.(#) ]/ ある聖母へ(2007)[2009年1月30日](+) /地獄のソナタ(2008-09)[2012年2月15日](**) [コーリャ・レッシング(Vn;+/**) ウルフ・シルマー指揮ミュンヘン放送o.(+) アンドレアス・ケルステン(P;**)] | ||
録音:[内]。ギリシャ出身で、作家アンゲロス・テルツァキスを父に持ち、文学作品に発想を得た作品も多いドイツの作曲家、ディミトリー・テルツァキスの作品集。セリー音楽全盛期にその音楽が肌に合わないと感じ、敢えて別の音楽を模索しルーツでもあるビザンチン音楽の語法に可能性を求め、調性を感じさせるような全音階的な音使いと旋律の水平的な音楽、微分音程による揺らぎなどで、独自の世界を切り開いた。このディスクにおさめられた「サッフォーチクルス」や「ヴィジョン」のように直接文学作品をテキストとして使うこともあれば「ある聖母へ」や「地獄のソナタ」のように、器楽曲ながらボードレールの詩集「悪の華」の中の冒涜的な詩「ある聖母へ」やダンテの「神曲」などを音楽的な根としている作品もある。その非西洋的でどこかいにしえの香を感じさせる音楽は、西洋の現代音楽の中で異彩を放っている。どこか異界に連れて行かれるような、テルツァキスの独特な音の世界が詰まった1枚。 | ||
マルティン・スモルカ(1959-):合唱作品集 ポエマ・デ・バルコネス(*) /「ウォールデン、星の雫の蒸留者」(#) /塩と悲しみ(+) マーカス・クリード指揮 SWR シュトゥットガルト声楽アンサンブル マルティン・ホーマン(Perc;#) | ||
録音:2009年3月17日-18日(*)、2008年2月19日-21日(*以外) 。(*/+)は世界初録音。チェコの作曲家、マルティン・スモルカの合唱作品集。5楽章からなり打楽器を伴う「ウォールデン 星の雫の蒸留者」は、「現代社会の暴力性」をテーマにした作品を委嘱された作曲者が、現代社会が損なっているものとしての「自然」をテーマに書いた物。テキストに取られているのは、森の中で2年2か月に渡る自給自足の生活を送り環境保護運動の先駆者としても知られるヘンリー・デイヴィッド・ソローの著書「ウォールデン 森の生活」からの抜粋。自然への賛歌の中に損なわれゆく自然の姿や暴力性が潜んでいるこの曲で、スモルカはあえてシンプルな長短音階や従来の拍節を用いて純粋な自然、人間の立ち返る場所を描いたとのこと。シンプルな中に紛れ込むひずみが現代社会の姿を写してしているようだ。★「ポエマ・デ・バルコネス」と「塩と悲しみ」はどちらも初録音。それぞれ14分、18分を超える大作。「ポエマ・デ・バルコネス」ではスペインの詩人ガルシア・ロルカの詩から抜き出された3行「海は浜辺で踊る/バルコニーの詩/水は轟く」が、「塩と悲しみ」ではポーランドの詩人タデウシュ・ルジェヴィッチの愛と記憶についての詩が使われている。哀愁漂う透明感、飲み込まれるような声の渦…スモルカが生み出す独特な世界観に注目。SWRシュトゥットガルト声楽アンサンブルは高い実力や豊かな実績を持ち、現代音楽合唱シーンには欠かせない存在となっている。声が持つ表現力の幅広さに魅せられること間違いなしのディスク。 | ||
合唱の理想郷〜ハインツ・ホリガー(1939-):合唱作品集 混声合唱とソリストのための、 ダヴィド・ロケアの12の詩に基づくブロークン・ソング「 Shir Shavur 」(2004) [2007年7月2日-5日] / 16の独唱者のための「 Psalm 」(1971) (*) [2015年10月20日-21日] / 混声合唱と任意の打楽器のための、 カート・マルティの詩に基づくモテット「 holle himmel 」(2011/12) [2015年3月20日-21日、10月20日-21日] / 混声合唱のための、ベルン方言によるカート・マルティの4つの詩「 Rosa Loui 」(2006/07) [2010年11月17日] / 3群の12人からなる合唱団のための「 Utopie Chorklang 」(2004) (#) [2006年2月9日] マルクス・クリード指揮(#以外) ハインツ・ホリガー指揮(#) SWR ヴォーカルアンサンブル | ||
録音:[内] 。 (*)を除き世界初録音。 世界屈指のオーボエ奏者にして高名な作曲家でもあるホリガーのア・カペラ合唱作品集。驚くほど緻密な書法と繊細なことばの扱いによって複雑にうねる音楽は、まるで打ち寄せる大波のようだ。自由自在に声を操り、大オーケストラに劣らぬ、あるいはそれ以上の音響を造り上げている。「ShirShavur」はヘブライ語とオランダ語が使われ、左右に分かれたパートが複雑に呼び交わし、ステレオ効果抜群。「Utopie Chorklang」は12人からなる合唱グループが3つあり、グループごとに別々のピッチが求められる。第2グループが楽譜通り歌い、第1グループは記譜より1/3音高く、第3グループは1/3音低く歌うというような大変な作品。3分足らずの作品だが非常に濃い内容で、様々な歌唱法で震えわななき、にじみ広がっていくサウンドが圧巻。指揮のマルクス・クリードはケンブリッジのキングズ・カレッジ出身で合唱のスペシャリスト。SWRの合唱団もべらぼうに巧く、ホリガーの精緻な音楽が完璧に鳴り響いている。合唱芸術ここに極まれり、といった名演奏。 | ||
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ:カンタータ「美しくあること」(*) /室内楽1958年(#)
ペーター・ルジツカ指揮(*/#) アンナ・プロハスカ(S;*) ソフィア・ウィットソン(Hp;*) アンドレアス・グリュンコルン、 ファビアン・ディーデリヒ、カタリナ・クール、ヴァレンティン・プリーバス(Vc;*) ペーター・ハイスベルトセン(T;#) ユルゲン・リュック(G;#) 北ドイツ放送so.(#) | ||
録音:2015年5月3日(*)、2013年1月25日(#)、NDR。保守と革新の中道を行く作風でドイツ音楽界を牽引してきたハンス・ヴェルナー・ヘンツェによる、声楽を含む2つのアンサンブル曲。(*)はランボーの同名の詩がテキスト。ヘンツェが交響曲第5番番の初演(バーンスタイン指揮)のため渡米した折、貧富の格差、命の危機と古典的な理想の美への挑戦、豊富さと腐敗の矛盾などにショックを受けた事が創作源と言われ、それらがランボーの詩で予言されている、と感じたという。歌心溢れる4つのチェロとハープの抒情的なヴェールをまとったソプラノが世紀末的、官能的な詩を歌い上げる、大変美しい曲。(#)はベンジャミン・ブリテンに捧げられた曲で、ドイツの詩人ヘルダーリンの詩によるテノール、ギター、クラリネット、ファゴット、ホルン、弦楽器5部が1人ずつ(このディスクでは複数)の楽器による12の楽章から成る。ヘンツェはヘルダーリンの神秘的なイメージや象徴で綴られる自然、人間、古代の神々、苦難と運命についての詩を6つの楽章に分け、さらにそこに器楽曲としての6つの楽章を足し「テノールと全楽器」「ギターなしの器楽曲」「テノールとギター」「ギターソロ」という4つの編成のヴァリエーションを生み出した。中でも「テントス」と名付けられた3つのギターソロは単独で演奏されることも多くある。ヘンツェの抒情の世界に浸ることができるディスク。 | ||
バルツ・トリュンプ(1946-): ギターのためのバラード/マリンバのための5つの小品/フルートのための「エオリアンソング」/ マリンバとギターのための4つのデュエット/ソプラノ、バリトン、フルート、打楽器のための「シビュラの託宣」 エル・シマロン・アンサンブル | ||
録音:2014年9月3日-6日、12月5日、チューリヒ。スイスの作曲家、バルツ・トリュンプの作品集。セリエリズムや偶然性など、彼が若いころ全盛期だった前衛音楽とは違う路線を歩み、彼にとっての「美しい音楽」を追い求め続けているトリュンプ。故郷スイスの山に囲まれた空の高さやギリシャ神話への傾倒など、豊かな創作のバックグラウンドから紡ぎ出される彼の音楽を、様々な楽器や編成で多角的に味わうことができるアルバム。最初におさめられているソロ用の3作品は、どれもそれぞれの楽器から引き出す多様な表情や語り口、聴き手を掴む展開が魅力的。20世紀を代表する作曲家、ルチアーノ・ベリオのアシスタントをしていたこともあるというトリュンプだが、これらのソロ作品はベリオのソロ作品シリーズ「セクエンツァ」の世界を思わせながらも、トリュンプ独自の歌心を感じさせる。マリンバとギターのための「4つのデュエット」は、性格も音の出る仕組みも全く異なる2つの楽器の会話。双方のそれぞれに個性的な音色が重なることにより生まれる陰影や独特な音の手触りが特徴的。このディスクで1番大規模な作品「シビュラの託宣」は、ソプラノ、バリトン、フルート、打楽器によるアンサンブル。本CDの演奏を手掛けるエル・シマロン・アンサンブルのために書かれ、同アンサンブルのメンバーに献呈されている。西洋古典文学の中でアエネアスの冥界への旅路に同伴した女性とされる預言者、クマエのシビュラを題材に取ったこの作品で、フルートは同じく冥界来訪の神話で知られるオルフェウスの楽器として、またモーツァルトの歌劇「魔笛」のように異界から身を守るものとして、暗示的に使われる。フルートと絡み合い、縁どるようなソプラノや、ファルセットと低音域を行き来するバリトン、それを煽るような打楽器が描くシビュラの嘆きと恍惚は呪術的な雰囲気を醸し出し、聴き手を異界に導くようだ。エル・シマロン・アンサンブルは、20世紀ドイツを代表する作曲家ハンス・ヴェルナー・ヘンツェの作品「逃亡奴隷(エル・シマロン)」を始めとする現代作品の演奏で知られ、ザルツブルク音楽祭など数々の音楽祭出演など国際的に活躍する団体。初演も多数行い、多くの作品がエル・シマロン・アンサンブルに献呈されている。 | ||
ハンス・ツェンダー: ヴァイオリン、ソプラノ、器楽のための「 ¿adónde? wohin? 〔どこ?〕」(*) / ソプラノ、混声合唱と小オーケストラのための「 oh bosques (o Waelder) 〔森〕」(#) [アンゲリカ・ルッツ(S) エルンスト・コヴァチッチ(Vn;*) シルヴァン・カンブルラン指揮(*) クラングフォルム・ヴィーン(*)、スザンナ・マルッキ指揮バイエルン放送so.&cho.(#) ]/ 無伴奏、2つの混声合唱グループのための「 ¿por qué? warum? 〔なぜ?〕」(+) [マークス・クリード指揮 SWR 声楽アンサンブル・シュトゥットガルト]/ 歌い手と器楽奏者から構成される3つのグループのための「 oh chritalina... 」 [エミリオ・ポマリコ指揮 SWRバーデン=バーデン&フライブルクso.] | ||
録音:2010年-2014年。(*)を除き世界初録音。ハンス・ツェンダーの作品集、オクターヴを72に分割した微分音の超絶世界。これら4作品は異なる編成によるが、歌詞がすべて16世紀スペイン黄金時代に生み出された文学の中でも頂点とされるフアン・デ・ラ・クルス〔十字架の(聖)ヨハネ〕(1542-1591)の「霊の賛歌 [Cántico espiritual] 」からとられている。『全部で40行からなる作品の最初の14行』(とあるが、行ではなく「連」の誤謬)に付曲をしており、ダダのような世界の(*)、どこかシェーンベルクを思わせる(#)、声による突き刺すようなハーモニーが印象的な(+)、、管楽器と声楽が不思議に響き合う中、ピアノの音色がかけめぐる大規模な(**)と、超絶の微分音が多用された世界を堪能出来る。 | ||
アリベルト・ライマン(1936-): 大管弦楽のための「夢の螺旋」(*) /暗闇に包み込まれて(#) /管弦楽のための9つの小品(+) クリストフ・エッシェンバッハ指揮北ドイツ放送so.(#以外) ティム・セヴロー(CT;#) | ||
録音:2003年6月17日(*) /2004年5月13日(#) /2001年6月12日(+) 。ドイツの作曲家、アリベルト・ライマン(1936-)は2016年に傘寿を迎える。ライマンはヨーロッパやアメリカのオペラハウスではその作品がレパートリー上演されるなど、世界で最も注目を集めている作曲家の1人。日本でも日生劇場で2012年にオペラ「メデア」、2013年にオペラ「リア」が日本初演され、話題となった。もとはメゾ・ソプラノのために書かれたという「暗闇に包み込まれて」は、無伴奏声楽ソロ。20世紀のドイツ系ユダヤ人の詩人、パウル・ツェランの詩をテキストとして書かれた9曲からなる連作歌曲。名歌手フィッシャー・ディースカウの伴奏者として頭角をあらわすなど伴奏ピアニストとしてのキャリアも持ち、声の醍醐味を知り尽くしたライマンが、楽器を伴わず「声のみ」で描いた単旋律の世界を、このCDではカウンターテナーのティム・セヴローが、カウンターテナー独特の透明感と硬質さのある歌声で聴かせる。★当ディスクではオーケストラの曲に挟まれて声楽ソロ曲が入るという一見変わった組み合わせがなされている。これはオーケストラのための「9つの小品」が、その前に置かれている「暗闇に包み込まれて」に対応しているため。「暗闇に包み込まれて」の直後に書かれたという「9つの小品」は、前作の歌曲の各曲に対応しながらも、全く独自の作品として新たな世界を作り出している。並べて聴くことで、ライマンの創作の軌跡を辿ることが出来る。エッシェンバッハの深い解釈にも注目。 | ||
Les paysages fleurissants 〜ゲオルク・カッツァー(1935-):電子音響作品集 アリアドネが来る前(ロンド)/プロイセンの青、白昼夢、記憶(*) / 石の歌1/機械と摩耗の作用/ Mein 1989 /花咲く風景(*) /石の歌2(*) ゲオルク・カッツァー(エレクトロニクス) | ||
(*)は世界初録音。自ら電子音楽スタジオを設立、電子音楽分野での活躍が知られるゲオルク・カッツァーの80歳記念CD。1976年から2010年までの30年近くに渡る彼の電子音響作品がおさめられている。彼の創作の大きなテーマの一つに歴史的、政治的な出来事への眼差しがあり、実際このCDにおさめられている「アリアドネが来る前」は1968年の「プラハの春」に、「Mein 1989」は東ドイツの政治変動に対する物。静謐な世界に漂う緊張感や不穏な空気感は、激動の時代の中心に身を置いていた作曲者のリアリティそのものともいえるかもしれない。「機械と摩耗の作用」は、曲中でフランスの百科事典「ラルース」より「機械」の項全文の子供による朗読が入るというユニークな作品。独特な浮遊感がやみつきになる。 | ||
ハンス・ツェンダー(1936-): 2台のピアノと3群の管弦楽のための「 Dialog mit Haydn 」(1982) [ヘルマン・クレッチマー、ウエリ・ヴィゲット(P) ハンス・ツェンダー指揮 ドイツ連邦青少年o./1993年1月17日、ゲヴァントハウス、ライプツィヒ]/ ソプラノと管弦楽のための「 Issei no kyo 」(2009) [クラロン・マクファーデン(S) ヨハネス・カリツケ指揮ケルンWDRso./ 2010年9月29日、フィルハーモニー、ケルン]/ 四部合唱と器楽アンサンブルのための「 Nanzen no kyo - Canto VII 」(1992) [ハンス・ツェンダー指揮ケルンWDRso.、ケルン放送cho./1993年6月8日-10日、フィルハーモニー、ケルン] | ||
録音:[/内] ヴィースバーデン生まれ、フォルトナーに作曲を師事。作曲家、指揮者、さらには教育者、思想家、作家として芸術活動を続ける重鎮ハンス・ツェンダーの自演を含む作品集。1982年にハイドン生誕250年を記念して書かれドナウエッシンゲン音楽祭で演奏された「Dialog mit Haydn(ハイドンとの対話)」は、ハイドンの「驚愕交 響曲」を素材に用いている。ツェンダーの精妙なハーモニー感覚が遺憾なく発揮された怪作で、3群に分かれたオーケストラはそれぞれ11セントずつずれたチューニングを求められる。そして2台のピアノは「グループ1」と「グループ3」のオーケストラにそれぞれ調律を合わせるため、ピッチが22セント(半音の約1/5)ずれることになる。それらが重ね合わされ、うっすらとにじむようなクラスターを創出。その中からハイドンの素朴なメロディが超現実的に浮かび上がり、次第に勢いを増す打楽器に飲み込まれていく。ツェンダー本人の見事な指揮ぶりにも注目。残りの2曲は室町時代の禅僧、一休宗純に題材を求めた声楽作品。前者はソプラノ独唱、後者は合唱になっており、お経をテキストに繰り広げられる摩訶不思議な哲学的世界は唯一無二。この2作は世界初録音の音源。三人寄れば文殊の知恵。 | ||
ベルント・アロイス・ツィンマーマン(1918-1970): 大オーケストラのための「1楽章の交響曲」(1951) / 様々な巨匠たちによる小管弦楽のための古い舞曲「 Giostra Genovese 」(1962) / 弦楽オーケストラのための協奏曲(1948) / 7つの部分とアントレのバレエ・ノワール「ユビュ王の晩餐のための音楽」(1966) ペーター・ヒルシュ指揮ケルンWDRso. | ||
録音:2013年、2015年。『★B.A.ツィンマーマンは、1938年からケルンで音楽の勉強を始めましたが翌1939年、第二次世界大戦がはじまるとともに徴兵されました。3年兵役につきましたが、有毒物質が原因の慢性的な皮膚病を患ったため、任を解かれます。この経験による、戦争、そして時間現象についての分析は短い期間に書かれた作品を特徴づけるものとなっています。このCDに収められた作品は、ツィンマーマンの音楽の特徴である、ひとつの作品の中で様々な時間軸が存在し、史実性(物語性)が取り除かれたものが並びます。★1952年の交響曲の初演は手ひどく批評されました。ツィンマーマンは「より経験を積んだオーケストラ書き」になることを約束し、ただちに作品を書きなおし、タイトルを「1楽章のシンフォニー」と改めました。この改訂の中で、ツィンマーマンは作品を短くし、いくつかの形式要素も縮めました。この録音は、手ひどく批評された初版(「交響曲」)に基づいた世界初録音。★GiostraGenovese(バレエ組曲)は16、17世紀の舞曲の形式に則り、新旧の作曲家たちの作品の引用がちりばめられています。★「ユビュ王の晩餐のための音楽」は、1965年、ツィンマーマンがベルリンの芸術院のメンバーに迎えられた時に作曲されたもの。過去の他の作曲家、およびツィンマーマン自身の音楽作品のコラージュ(貼り合わせ)とデコラージュ(原画・原作の一部を破るなどする)だけで構成された作品。「ユビュ王」は、アルフレード・ジャリの戯曲で、独裁者にのし上がった田舎のブルジョワを風刺した作品(1888年)。ダダイストやシュールレアリストに大きな影響を与え、ツィンマーマンは1961年の作品でもユビュ王を題材にしています。今日にいたるまで、あらゆる音楽作品の中でも、ダークで刺激的で、政治的に問題がある作品とみなされています。』 | ||
カールハインツ・シュトックハウゼン(1928-2007):ピアノ曲 I-XI 〔 XI (1956) [Version 1/Version 2] / I (1952/53) / II (1952/53) / III (1952/53) / IV (1952/53) / VIII (1954) / VII (1954/55) / VI (1954/55/61) / V (1954) / IX (1954/61) / X (1954/61) 〕 ザビーネ・リープナー(P) | ||
録音:2015年12月5日-6日、2016年9月19日-21日、2017年6月14日、バイエルン放送スタジオ2/2018年2月21日-23日、バイエルン放送スタジオ1、すべてミュンヘン。 2018年8月22日、シュトックハウゼンは生誕90周年を迎える。ブーレーズ、ノーノと並び「前衛三羽烏」と讃えられた偉大な作曲家のアニヴァーサリーを記念して、現代音楽専門レーベルWERGOより、注目の新譜が発売される。第2次世界大戦により破壊された世界で「未来の音楽」を書くことを自らの道としたシュトックハウゼン。「過去の瓦礫の中で、新たな音楽を創り出さねばならない」と1955年に語っている。1952年から1961年にかけて書かれたI-XIまでの「ピアノ曲」は、あえて中立的で普遍的な音色を持つピアノに使用楽器に限定することで新しい音楽を模索した、若きシュトックハウゼンの代表作のひとつ。点描的セリー音楽を発展させ編み出した「群作法」による「I 〜IV」に始まり、「V 〜X」では記譜上の「厳格性」と「不確定性」の軋轢による効果を推し進め、同時に様々な奏法を試みる。「XI」は一つの到達点と言える作品で、決められたルールの下でいくつかの群を奏者が自由な順番で弾いていく。このCDには2パターンの演奏が収められており、演奏の自由度と緊張感の凄まじさが良く分かる。ザビーネ・リープナーはWERGOレーベルから多数のアルバムをリリースしているピアニスト。ケージ、フェルドマン、カーゲル、シェルシなど現代音楽を十八番とする。深い理解に裏打ちされた精確無比な演奏が素晴らしく、難解な作品の意図を明確かつ繊細に伝えてくれる。 | ||
近藤譲(1947-): 女声、アルトフルートとコントラバスのための「ボンジン」/フルートとピアノのための「ペルゴラ」/ メゾソプラノとヴァイオリンのための「 Lotus Dam 」(*) /ギターのための「カラミンサ」(*) / メゾソプラノとピアノのための「茂吉の歌六首」(*) /フルートとギターのための「ディシラム」/ ヴァイオリンとピアノのための「撚り III 」/フルートと打楽器のための「トゥウェイン」(*) / ヴァイオリンと打楽器のための「3つの接骨木の歌」 アンサンブル・ラール・プール・ラール | ||
録音:2003年1月。(*)は世界初録音。「線の音楽」で知られる作曲家・近藤譲。作曲者自身、たとえば151番目の音を決めるときは1番始めから150番目の音までを順に見直してから決定する、と言っているように、その作風はひとつの旋律をひたすら紡いでいく独特な物。たくさんの音を凝縮し同時に響かせるようなことはまずない。感覚的でありながらも必然性を感じる流れを作り出す独自の作曲法で、ひたすら音を聴き、吟味し、慎重に選び取っていく。複数の楽器が使われていても、ひとつひとつの音とその進む先をしっかりと聴き分けることができ、音楽の流れに耳を澄ましていると不思議と安らかな気持ちになれる。「茂吉の歌六首」は斎藤茂吉(1882-1953)の短歌を用いた歌曲。単純な音型をループさせるピアノと、一言ずつ言い聞かせるような落ち着き払った歌唱。ほのかに香る抒情性に魅せられる。 | ||
Dystemporal 〜アントニー・チャン [Anthony Cheung] (1982-): シンクロニシティ/吹きさらしの糸杉/ピアノのための「(全)音域を駆ける」(2008) (*) / Centripedalocity /句またがり、注入、内破/23の音楽家のための「 Dystemporal 」(#) ジェイムズ・ベーカー指揮タレア・アンサンブル(*/#以外) アントニー・チャン(P;*) スザンナ・マルッキ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン(#) | ||
録音:2011年-2012年、ニューヨーク、 US 。サンフランシスコ生まれのコンポーザー・ピアニスト、アントニー・チャンの作品集。尺八のような効果を生み出すフルートなど、器楽奏法の効果的な書法が印象的な「シンクロニシティ」や、ジャズを思わせる「吹きさらしの糸杉」など多彩な作品が並ぶ。 | ||
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(1926-2012): 管弦楽のための幻想曲「ロス・カプリチョス」(1963) / 音楽による寓話「皇帝ヘリオガバルス」(1971/72, rev.1986) (#) / チェロと管弦楽のための「イギリスの愛の歌」(1984/85) (*) /管弦楽のための「劇場のための序曲」(2012) アンッシ・カルットゥネン(Vc;*) オリヴァー・ナッセン指揮 BBCso. | ||
2014年2月7日、ライヴ(#以外) /2014年2月24日-25日、セッション(#) |(*/#):世界初録音。#曲ごとのライヴとセッションの表記が、当初の代理店アナウンスと逆であったことが判明しております。2018年に惜しくも世を去った指揮者オリヴァー・ナッセンは作曲家としても活躍した現代音楽のスペシャリスト。ヘンツェは自作や他の作曲家の作品を彼の指揮で聴いたとき、その素晴らしさに衝撃を受け、大いに賞賛したという。このアルバムではナッセン指揮によるヘンツェの中期から後期にかけての管弦楽曲を収録。「皇帝ヘリオガバルス」「イギリスの愛の歌」は他に録音がない貴重な物。さらに「劇場のための序曲」はヘンツェが最期の年に書いた作品であり、どの曲も作曲者と高い信頼関係にあったナッセンのきめ細やかな演奏で聴けるのは注目に値する。同名のゴヤのエッチングから着想を得た「ロス・カプリチョス」は導入部と主題、7つの変奏からなる音楽で、9つの部分それぞれにゴヤの絵のタイトルが付けられている。グロテスクで風刺の利いたゴヤの一連の作品を音楽で描くにあたり、ヘンツェは敢えて現代的な特殊奏法を抑え、幻想的でメランコリックな美しい響きを選択。歌うようなメロディもあり不思議な世界観を持っている。「皇帝ヘリオガバルス」は30分に及ぶ大規模なオーケストラ作品で、ローマ史上最悪の君主マルクス・アウレリウス・アントニヌス・アウグストゥスの渾名をタイトルとしている。暴君の生と死を描いた強烈な音楽で打楽器も大活躍、血沸き肉躍る凄まじいエネルギーに圧倒される。ふと現れる恐ろしい暗さも印象的。「イギリスの愛の歌」はチェロ協奏曲の体裁をとり、もともと「7つの愛の歌」というタイトルでハインリヒ・シフの独奏により初演された物。イギリスの詩に基づいて書かれたが、初演時には「誰の何の詩によるものか」をヘンツェは明らかにしなかった。その後、手が加えられこのCDの形に落ち着いた。チェロを弾くカルットゥネンは現代音楽を多く手掛けてきたフィンランドの名手で、レンジの広い自在な演奏が音楽の魅力を的確に伝えている。「劇場のための序曲」はベルリン・ドイツ・オペラ創立100周年記念の委嘱作品として書かれたもので、初演後間もなくヘンツェが亡くなったため最後の作品となっている。快活な曲想、突進するような力強いアレグロ、喜びに満ちた大胆な管弦楽法とヘンツェの醍醐味が詰まった音楽で、最晩年になっても勢いを緩めなかった創作意欲に打たれる。 | ||
マウリシオ・カーゲル(1931-2008): 2人のアシスタントを伴う1人のオルガン奏者のための「書き足された即興 [Improvisation ajoutee] / オルガンのための8つの小品「 Rrrrrrr... 」(1980-81) 〔 Raga / Rauschpfeifen / Repercussa / Regtime-Waltz / Rondena / Ripieno / Rosalie / Rossignols enrhumes 〕/ 連続的な器楽音のための「ゲネラル・バス」(1972) / オブリガートつきのオルガンのための幻想曲(1967) ドミニク・ズステック(1977-):オルガンのための即興「 K-A-G-E-L 」 ドミニク・ズステック(Org) | ||
録音:2014年4月、聖ペーター教会、ケルン。シュトックハウゼン (WER-6736)やリゲティ (WER-6757) 作品などでも超絶技巧で聴き手を驚かせてきたオルガンの鬼才、ドミニク・ズステックによるカーゲル作品集。カーゲルも「ティンパニの中に奏者が飛びこむ」や「指揮者が倒れる」などの指示をする際だった世界観のアルゼンチンの作曲家。本盤の注目は、初演時に物議をかもした「書き足された即興」。この作品は、オルガン奏者はもとより、二人のアシスタントたちも、咳、おしゃべりをし、笑い、笛を吹いたり手をたたいたり、大声でわめいたりと大騒ぎの作品。本作の初演は聖なる教会で予定されていたものの、このような作品を演奏するのはけしからんとして直前にキャンセルされるなど、ひと騒動が巻き起こった。ズステックと二人のアシスタントたちは、パワー全開でこの作品の世界を体現している。続く「Rrrrrrr…」は様々なインド的な「Raga」など色濃いキャラクターをもつ小品が並ぶ作品。ズステックの妙技が光る。また、本アルバムでもズステックは即興演奏を収録。カーゲルの名前にちなんだ、オルガンだけで演奏されているとは思えない音世界が展開されている。 | ||
ヴォルフガング・リーム(1952-):弦楽四重奏&弦楽五重奏のための作品集 弦楽四重奏のための「 Geste zu Vedova 」(2015) /弦楽四重奏曲 ト調(1966) / 弦楽四重奏曲(1968) /弦楽五重奏のための「エピローグ」(2012/13) (#) ミンゲット〔ミンゲ〕SQ イェンス=ペーター・マインツ(Vc;#) | ||
録音:2015年3月6日-8日、2016年1月14日-16日。 早熟の天才であり多作家としても知られるリーム。彼はわずか11歳の時に作曲を始めた。このCDには14歳の時に書かれた弦楽四重奏曲 ト調から2015年の作品まで、4曲の弦楽作品を収録している。弦楽四重奏曲 ト調ははっきりした主題提示に始まり、ハイドンの影響を受けていた初期ベートーヴェンの作品に近いものを感じる。2年後の1968年に書かれた弦楽四重奏曲も似た作風。時は流れ、2013年に書かれたエピローグはシューベルトのロマンティシズムを彷彿とさせるゆったりとした弦楽五重奏曲。無調の和声が薄い膜として持続される中、次第に強烈なピッチカートの応酬が始まる。 Geste zu Vedova はヴェネツィアの前衛画家エミリオ・ヴェドヴァへのオマージュで、けばけばしいパーカッシヴな作風が特徴的。 | ||
イン・ワン(1976-): サクソフォンとエレクトロニクスのための「 Tun ? Tu 」(2012) / アコーディオンとエレクトロニクスのための「 Wave ニ長調」(2008) / アンサンブルのための「 Glissadulation 」(2014) / クラリネットとエレクトロニクスのための「 Focus Exchange 」(2015) / ドラム・ソロのための「 Tip to Top 」(2015) / アンサンブルとエレクトロニクスのための「 Coffee & Tea 」(2013) ニコラ・ルッツ(Sax) テオドロ・アンゼロッティ(アコーディオン) ニーナ・ヤンセン(Cl) 中村功(Perc) イン・ワン(エレクトロニクス) アンサンブル・フェニックス・バーゼル | ||
録音:2015年4月17日-21日、9月11日、11月12日。 上海生まれの作曲家イン・ワンによる、エレクトロニクスと生楽器による音楽。素早く同音反復される、明滅するパルスのような素材が多用され耳に残り、何とも緊張感の高まる暗喩的な効果を生んでいる。比較的大きな編成になる「Coffee & Tea」がこのアルバムにおける表現の集大成のようで面白い。楽器によるノイズ、ブレストーン、または電子音を縦横に用い、細切れでメカニックな、フレーズともつかない素材を重ね構成した音楽。ミュージックコンクレートの語り口を生演奏も合わせて体現したような趣。風通し良くすっきりと音が配置されているのもセンスを感じる。 | ||
ヘルムート・ツァップ(1956-):弦楽四重奏曲集 〔第3番/「音」(弦楽四重奏曲第2番)/第1番/9つのバガテル「 Verschwommene Rander 」(弦楽四重奏曲第4番)〕 ソナーSQ | ||
録音:2015年11月21日-24日。 ハイドン以降、弦楽四重奏というジャンルは作曲技術の根幹にあたる部分が結晶化したかのような調和と均整を持つ、完全なる四声体として書かれてきた。しかし現代に生きる作曲家ツァップは古典の在り方に真っ向から対立しつつ、かつ完成された弦楽四重奏の世界を作り上げることを試みる。そこにはメロディもハーモニーもない。ピッチカート、トレモロ、ハーモニクス、グリッサンド、スル・ポンティチェロなどあらゆる奏法を駆使し、かつ大体の場面において4人とも同じ奏法でアンサンブルを行うことにより、ひとつの音の固まりが波打ちながら形を変え、変容していくような世界が拓かれる。「シュッ」「クッ」と口で発音する場面もあり効果満点。尖った表現が耳に突き刺さる。 | ||
ペーテリス・ヴァスクス(1946-): フルートと管弦楽のための協奏曲(2007/08, rev.2011) /第3交響曲(2004/05) ディータ・クレンベルガー(Fl) アトヴァルス・ラクスティガラ指揮リエパーヤso. | ||
録音:2016年。ラトヴィア生まれの作曲家、ペーテリス・ヴァスクス。初期はバルトークやショスタコーヴィチ、そして「新ポーランド楽派」の影響を受けたが、90年代以降はエストニアのミニマリズムにインスピレーションを受けている。2007/08年に書かれた交響曲は、フィンランドの空気感が濃厚な、そして神が作りたもうたこの美しい土地への愛、闇と光の終わりなき闘いなどを描いた40分にわたる息の長い作品。フルート協奏曲は、荒々しい中間楽章を静かで美しい楽章が挟むシンメトリックな構造。管楽器が奏でるコラール、息の長いパッセージが、瞑想や慰めの空気を作り上げている。 | ||
トム・ソラ(1956-): 弦楽三重奏のための「 Gruppenzwange 」(2011) /弦楽三重奏曲第2番(2015) / 2つのギターのための「 frei sein 」(2014) /ピアノのための「 Stahlbauten 」(2016) / ソプラノと打楽器のための「 Wer sich nicht..., wird nicht... 」(2009) / ソプラノ、バリトンと手回しオルゴールのための「 Wechselspiel 」(1994) / エレキギターと打楽器のための「 Heavy metal 」(2015) サラ・マリア・ズン(S) トム・ソラ(Br) アンドレアス・スコウラス(P) トーマス・ハストレイター(Perc) デュオ・スチューバー・オリンガー(G) トリオ・コリオリス〔弦楽三重奏〕 | ||
録音:2016年2月10日-12日。ブカレスト生まれの作曲家トム・ソラによる作品集。ちょっとしたアイデアを基に素朴な1曲として仕上げる作風。「Gruppenzwange」はほぼ同じ律動でジグザグと動き回る旋律からなり、しかも常に2人、3人と並行進行して奏でられる。塗り込めたような厚みのある不思議なサウンド。「Heavy metal」はそのタイトルとエレキギターの登場が目を引くが、音楽は単純無垢な佇まい。ハ音とト音を止まり木にしながら、至ってシンプルなフレーズに終始するギター。パーカッションがこれまたシンプルに、タカタカと16部音符でひねりなく合いの手を入れ、拍節も多少変化あれどまず4拍子。自然すぎて逆に驚く。 | ||
夏の終わり〜ヴィルヘルム・キルマイヤー(1927-2017):テノールとピアノのための歌曲集 アイヒェンドルフ歌曲集/ヘルダーリン歌曲集(抜粋)(*) / トラークル歌曲集1/トラークル歌曲集2「沈黙と幼年時代」 マルクス・シェーファー(T) ジークフリート・マウザー(P) | ||
録音:2016年10月14日-16日。(*)を除き世界初録音。 ミュンヘン生まれの作曲家キルマイヤーは合唱や歌曲などの「うた」を創作の柱とした。2017年の8月21日に90歳を迎えるということで記念すべき年に発売されるアルバムだったが、惜しくも誕生日の前日8月20日に亡くなり、追悼盤となってしまった。ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ、フリードリヒ・ヘルダーリン、ゲオルク・トラークルのテキストを用いた歌曲集。詩の世界を崩すことなく、そして余計なものを足すことなく、血の通った輝きのある音へと昇華している。響きは完全な調性を持ち、シンプルな歌が胸にしみる、ほろりとする音楽が特徴。ひとつの協和音が保続され、急激な変化はまったくない。ピアノは和音を押さえたり点描的に単音を重ねたりするが技術的にも平易で穏やか。肩肘張らないくつろいだ雰囲気のなかテノールの温かい歌が紡がれていく。素朴ながらどこか達観した深みも感じる名品。 | ||
ディーター・シュネーベル(1930-): 動く音楽家のための「モヴェメント」(2015) (*) / Schulmusik (1974) 〜 Gesums-Geknarrt (#) |
ジルケ・ エゲラー=ヴィトマン指揮(*) マンフレート・ペータース指揮(#) AGノイエ・ムジーク・アム・ ライニンガー・ギムナジウム・ グリュンシュタット(*/#) | |
録音:2016年、作曲家臨席(*) /1985年(#) 。(*)は世界初録音。 シュネーベルは、作曲家としてのキャリアの初期から、教育にも非常に積極的にかかわっていた。モヴィメントは子供たちが楽器と声でジャンプ、ジョギング、ヨガ、などと様々に題された楽章ごとに、様々な世界を作り上げる。音階を歌ってそれが増幅され、次第に拡散していく楽章や、叫び声、声や楽器は鳴らないが、子供たちが動き回っている気配が感じられる楽章など、耳から様々な世界を感じ取ることができる。1985年に収録された、 Schulmusik (学校の音楽)からの抜粋も同時収録されている。 | ||
ヒンデミット:サクソフォン作品集 4つのホルンのためのソナタ(サクソフォン四重奏版)/ ピアノ、ヴィオラとヘッケルフォンまたはテナーサックスのための三重奏曲 Op.47 / 2つのアルトサクソフォンのためのコンチェルトシュトゥック/ アルトホルンとピアノのためのソナタ 変ホ調(アルトサックス版)/ 小さなエレクトロミュージシャンのお気に入り(サクソフォン三重奏版)/ フランケンシュタインの怪物のレパートリー(サクソフォン四重奏版)/ 詩人と農夫(サクソフォン四重奏版)/旧友(サクソフォン四重奏版) クレール=オブスキュール・サクソフォン四重奏団 バーバラ・ブントロック(Va) ロベルト・コリンスキー、フローリアン・フォン・ラドヴィッツ(P) | ||
録音:2016年5月9日-12日、7月14日。 19世紀に考案された比較的新しいクラシック楽器であり、豊かな音色と幅広い表現力を持つサクソフォン。このCDのテーマであるヒンデミットは1920年代にサクソフォンに魅せられ、この楽器のために作品を残した。編曲物も含めてヒンデミットの音楽とサクソフォンの関わりを探るアルバム。なかなかお目にかかれない作品ばかりで、『4つのホルンのためのソナタ』『旧友』は世界初録音。サクソフォンならではの語り口、色合いにご注目頂きたい。クレール=オブスキュール・サクソフォン四重奏団はサクソフォンのためのクラシック作品に力を注いでおり、そのレパートリーは膨大。オリジナル作品の他、ピアノ曲や弦楽四重奏曲を意欲的にサクソフォンのために編曲し、楽器の可能性を見せつける活動をしている。 | ||
原田敬子: アルト/バスフルートと箏のための「 zero hour 」(2005/08/10) / ギターとアコーディオンのための「 the 5th season 」(2008-12) / トロンボーンとアコーディオンのための「 midstream+ 」(2004/08) / バスフルートとピアノのための「 in 」(2000) / フルートとアコーディオンのための「 hird ear deaf II-b 」(2003) / アコーディオンとピアノのための「 devil fire tarantella - devil fire tango 」(2014-16) カリン・レヴァイン(各種Fl) マイク・スヴォボダ(Tb) ユルゲン・リュック(G) シュテファン・フッソング(アコーディオン) 菊地奈緒子(十三絃箏/十七絃箏) 廻 由美子(P) | ||
録音:2016年4月4日-8日、ブレーメン放送局スタジオ、ドイツ。 2014年に発売された作品集(WER-6786/ KKC-5404)がレコード芸術特選盤に選ばれた原田敬子のWERGOレーベル第2弾アルバム。前作に引き続きアコーディオンとピアノでフッソングと廻由美子が参加しているほか、フルート、トロンボーン、箏、ギターと多彩な楽器が登場。さまざまな組み合わせの二重奏曲が並ぶ。切り詰めた緊張感を保ちながら、呼吸と身振りでもって間を読みあいじっくりと音楽を紡ぐような構成が特徴的。アルバムタイトルにもなっている「midstream+」はトロンボーンとアコーディオンという、音量差の大きな楽器による普通ではありそうもない編成のデュオ。しかし空気を通して音を出すという共通点もあり、両者の奏でる音が極めて近い感性で溶け込みあい、その中で互いの特徴も活かしつつ、興味の尽きない音世界を作り上げる。何の楽器がいくつ鳴っているのか、ということもあまり気にならないような新しさ。 | ||
ハヤ・チェルノヴィン(1957-): 声と息のための「 Adiantum Capillus-Veneris 」 (2015-16) / 弦楽四重奏とエレクトロニクスのための「 HIDDEN 」 (2013-14) エリアフ・インバル・ヘヴァー(Ms) ジャックSQ IRCAM | ||
録音:2016年4月11日-13日。共に世界初録音。 ハヤ・チェルノヴィンはイスラエル出身の女流作曲家。「 Adiantum Capillus-Veneris (ホウライシダの学名)」は無伴奏声楽作品。テキストはなく様々な発声が試みられる。ブレスまで細かく楽譜に書かれているそうで、息のための作品という表現もうなずける。「HIDDEN」は40分超えの大曲。エレクトロニクスを用い水がちょろちょろと流れるような音や耳鳴りのような音が現れては消える。音量は控えめで緊張感を持って聴ける。 | ||
ヴァルター・ツィンマーマン(1949-):ピアノ作品集 Voces abandonadas (*) / The Missing Nail at the River / Blaupause (*) / Bluepoint (*) / Romanska Bagar (*) / AIMIDE より(*)〔 Cura / Fuga / Svara 〕 ニコラス・ホッジズ(P) | ||
録音:2009年、全曲作曲者臨席。(*)は世界初録音。内省的でありながらも親密な雰囲気をあわせもつ作風の W /ツィンマーマンのピアノ作品集。514 のピアノの短いセンテンスからなる「 Voces abandonadas 」は、散文詩的な印象で、禅にインスパイアされたピアノ曲「初心」(1975)とは対極に位置する作品。 | ||
ロルフ・リーム: ヴァイオリンと大管弦楽のための「 schifting 」(*) / 大管弦楽と電子音のための「 archipel remiex 」(#) ギィ・ブラウンシュタイン(Vn;*) デニス・ラッセル・デイヴィス指揮(*) ペーター・ルンデル指揮(#) ケルン WDR so.(#) | ||
録音:1995年(*) /2000年(#) 。共に世界初録音。川のように旋律がたゆたう大規模作品(*)、様々な島からなる諸島のような(#) を収録。 | ||
Funambles ジョルジュ・アペルギス:綱渡り三重奏 ロルフ・リーム: アレッポ・バザール、あるいはティルスの通り ヨハネス・シェールホルン:シナイ 1916 シュテファン・プリンス:ミラー・ボックス |
トリオ・アッカント [マルクス・ヴァイス(Sax) ニコラス・ホッジズ(P) クリスティアン・ ディエルシュタイン(Perc)] | |
録音:2016年。 サックス、ピアノ、打楽器という珍しい組み合わせのトリオ・アッカント。なんと、25年の歴史をもつ。これらの作品は、すべて彼らのために作曲された。このCDは、すべて作曲者立ち会いのもと、収録が行われている。アペルギスの作品はまさに綱渡り的な絶妙なバランス感がスリリングな曲。リームの作品は、バザールの喧騒を思わせる部分など、様々な描写が楽しい曲。シェールホルンの作品は、ルーマニアのシナイア修道院に伝わる聖歌を題材とした作品。ミラー・ボックスは、様々な道具で打楽器を鳴らす不思議な音や、プリペアード・ピアノの特殊な音色などが、きわめて小さな音で絶えず聴こえてくるので、思わず息をひそめて聞いてしまう不思議な世界。 | ||
Unanswered Love ライマン(1936-):ソプラノと9つの楽器のための「3つのサッポーの詩」(2000) ヘンツェ(1926-2012):ソプラノと大管弦楽のための「夜想曲とアリア」(1957) リーム(1952-):ソプラノと小管弦楽のための「アリア/アリアドネ」(2001) ユリアーネ・バンゼ(S) クリストフ・ポッペン指揮 ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送po. | ||
録音:2009年1月23日-25日。 近現代のレパートリーも得意とするソプラノ歌手バンゼによるドイツ現代音楽の大御所作曲家3人の声楽作品集。バンゼはキャリア初期にこの3人の作曲家と出会い、その後彼らの多くの作品の初演に関わり音楽語法をしかと身につけているため、申し分のない解釈と表現力で再生可能。ほとんど無伴奏の独唱が続き、時折軋むような器楽が添えられるライマン。「夜想曲」と題された3曲の管弦楽曲と2曲のアリアが交互に現れる情 景的なヘンツェ。25分の単一楽章で聴き応えある大きな展開を見せるリーム。大小さまざまな管弦楽を相手に、情熱的に歌い切るバンゼ。まるでオペラの名場面のような魅力的かつ圧倒的な音楽が楽しめる。 | ||
マイケル・ブレイク(1951-):チェロとピアノのための作品集 The Philosophy of Composition (2009) (*/#) / The Richter Scale (2015) (*) / Sonata (2016) (*/#) / A Fractured Landscape (2009) (#) / Connectivity (2008) (*/#) / Pentimenti (2012) (*) / 無言歌集(1975) (*/#) / Seventh must Fall (2016) (#) フリードリヒ・ガウヴェルキ(Vc;*) ダーン・ファンドヴァール(P;#) | ||
録音:2017年2月6日-9日、ケルン。全曲世界初録音。 マイケル・ブレイクは南アフリカの作曲家。すっきりとしたサウンドを使いながらも、アイヴズやケージを思わせる自由な素材と独創的な構造。20世紀後半のイギリスとアメリカを結びつける作風と言えるかも知れない。「無言歌集」はポップスのような遊び心あふれる音楽で、今にもヴォーカルが歌いだしそうな伴奏で始まる。しかしその「伴奏」が音楽本体であり、それが展開していくという肩すかし的な作品で、どこか皮肉めいた感じも。属七和音の第7音は順次下降進行しなければならない、という機能和声のルールをテーマとした「Seventh must Fall」も独自のセンスでニヤリとさせられる。 | ||
グラシェラ・パラスケヴァイディス(1940-2017): フルート、クラリネット、ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための 「 libres en el sonido presos en el sonido 」(1997) / アルトフルート、コーラングレとピアノのための「 ¿Y si fuera cierto? 」(2003) (*/#) / ピアノのための「 un lado, otro lado 」(1984) / オーボエ、ファゴットとコントラバスのための「 tris 」(2006) (*/#) / チェロのための「 ...il remoto silenzio 」(2002) (*) / アルトフルート、ピアノと打楽器のための「 sin ir mas lejos 」(2013) (*) / フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、 トランペット、ホルン、トロンボーンとピアノのための「 sendas 」(1992) (#) アンサンブル・アヴァンテュール | ||
録音:2016年9月22日-23日(#以外)、2017年2月11日-12日(#) |(*)は世界初録音。 アルゼンチン生まれで、南アメリカの重要な作曲家の一人と目されるパラスケヴァイディスの作品集。素早く短いパッセージを延々ループさせる手法はミニマル的・コンピューター的でありながらラテンのリズム感も存分に感じる。作曲家と演奏家の身体的感覚が近いところで繋がっている音楽。 | ||
マウリシオ・カーゲル(1931-2008):ピアノ作品集 「メタピース/擬態」(1961) 〔「他曲(4つの小品)と交互」、 「他曲(練習曲「 An Tasten 」)と同時」&「単独」でそれぞれ演奏〕/ ピアノのための4つの小品(1954) (*) / 練習曲「 An Tasten 」(1977)〔「メタピース/擬態」と同時演奏〕/ MM51 (1976) 〜映画音楽からの小品 ザビーネ・リープナー(P) | ||
録音:2017年1月9日-10日、2月10日、(*)は世界初録音。 カーゲルは1961年に、2つのタイトルを持つピアノ作品を書き上げた。「Metapieceメタピース」と題された独奏曲は、別の作品と交互に、あるいは同時に演奏することが可能で、その場合「Mimetics 擬態」というタイトルで呼ばれる。ピアニストのリープナーはこの音楽に対し、ケーゲルの別作品を用い、まずは交互に、続いて同時に、最後は単独で演奏。この曲の開かれた可能性を感じさせる。楽譜は古典的な記譜法ではなく、五線 を用いつつも図形的な物。鋭い不協和音が点描のように明滅する。同時演奏される「An Tasten」は完全に調性があり、それが余計に緊張感を増する。「MM51」はまさかのメトロノームと共演、最後はピアノを弾きながら笑い狂うという危険な小品。 | ||
歌と詩 アンドレアス・ドーメン(1962-): Versi rapportati (2012/13)〜アルト&バリトンサックス、ピアノと打楽器 ハンス・トマッラ(1975-): Lied (2007/08)〜テナーサックス、ピアノとヴィブラフォン ヴァルター・ツィンマーマン(1949-): As I was walking I came upon chance (1998/2008)〜テナーサックス、ピアノと打楽器 ヴォルフガング・リーム(1952-): Gegenstuck (2006)〜コントラバスサックス、ピアノと打楽器 アルド・クレメンティ(1925-2011): Tre Ricercari (2000)〜アルトサックス、ピアノと鍵盤打楽器(チェレスタ、ヴィブラフォン、チューブラーベル) トリオ・アッカント | ||
録音:2017年4月10日-13日、ケルン。全曲世界初録音。 現代音楽のスペシャリスト、トリオ・アッカントのために書かれた作品集。「歌と詩」と題された、完全な器楽作品のみのアルバム。現代音楽サウンド全開、超絶技巧のアンサンブルも惜しみなく聴かれるその音楽は、同時にどれも歌への憧れ、声への憧れが強く感じられる。サックス、ピアノ、パーカッションという一見ジャズ・トリオの編成でありながらひたすら現代音楽を奏でる者たちによる、声の無い歌。切実な表現が生む緊張感あふれる演奏に舌を巻く。パーカッションの使用楽器の多彩さも面白い。 | ||
ブリス・ポゼ(1965-):ピアノのためのカノン集 3つのカノン(1989) /5つのカノン(1990-2002) /7つのカノン(2010) /9つのカノン(2004-10) / ピアノとライヴ・エレクトロニクスのためのカノン「 Perspectiva sintagma I 」(#) ニコラス・ホッジズ(P) ベンジャミン・レヴィ(ライヴ・エレクトロニクス;#) | ||
録音:2016年8月16日-19日。 フランス生まれの作曲家ポゼによるピアノためのカノン集。すべて世界初録音。作曲技術の最高峰であるカノンの神秘的な美しさに魅せられたポゼが、ルネサンスの多声声楽曲の大家オケゲムが創り上げたような「技法と美の統一」を1台のピアノ上で試みる。9つのカノンでは楽器の限界に挑み、ピアニストに「ペダルの超絶技巧」を要求する。ソステヌートペダルを駆使し、クラスターが鳴り響いたかと思えば亡霊のような響きが残り、新しい音が加わり、といった具合。また、伝統的なカノン書法を最も根本的に取り入れたという Perspectiva sintagma I (それでも古典的なカノンにはほとんど聴こえない?)は、同時にライヴ・エレクトロニクスを取り入れており、「譜面の厳格性」と「音の演出性」の両方に光を当て、互いの相違を提示しつつ生かすという作品。 | ||
サラ・ネムツォフ(1980-): キーボードとドラムセットのための「 White Eyes Erased 」(2014/15) / フルート、ヘッドフォン、エフェクトライヴ SX 、 テープ、ライヴビデオ(任意)のための「 Amplified Imagination 」(2014) / ノー・ドラムセットとカオスパッドのための「 Drummed Variation 」(2014) / 増幅されたバスクラリネットと3つのエフェクトペダルのための「 Implicated Amplification 」(2014) / 増幅されたハープ、カオスパッド、増幅されたバスフルート、バスクラリネット、 ノートパソコンと増幅された弦楽四重奏のための「 Zimmer I-III 」(2013) アンサンブル・アダプター、アンサンブル・モザイク、ソナーSQ | ||
録音:2016年5月30日、6月1日、6月27日-29日、ドイッチュラント放送スタジオ。全曲世界初録音。 若い世代で最も刺激的な作曲家のひとり、1980年ドイツ生まれのサラ・ネムツォフの先鋭的電子音楽作品集!未体験の音響に満たされ、プログラムされたカオスが脳天を直撃する。ある楽器はアンプを通しエフェクトをかけられ変容、シーケンサーやパソコンまで編成に加わる。「ノー・ドラムセット」とはバケツやら段ボールやらの日用品などを集めて作った疑似ドラムセット。エレクトロニクスの世界で無限に広がるイマジネーション! | ||
ヘルムート・ラッヘンマン(1935-): 高音域ソプラノとピアノのための「ゴット・ロスト」(2007/08) (*) / 弦楽三重奏曲(1965) (#) /ピアノのための「セリナーデ〜」(1997/98) (+) 角田祐子(S;*) 菅原幸子(P;*/+) トリオ・ルシェルシュ(#) | ||
録音:2016年1月18日-19日(*)、2017年5月1日-2日(+)、17日(#)、SWR ハンス・ロスバウト・スタジオ、バーデン=バーデン。 あらゆる特殊奏法を極め、生楽器によるミュージックコンクレートという無二の世界を展開したラッヘンマン。しかし「ラッヘンマン=特殊奏法」というレッテルのみではこの作曲家を深く味わうことは出来ないだろう。実際に70年代頃からは特殊奏法を一般的なものに留めつつ新たな構成原理で音楽を書くようになり、予想以上にエモーショナルな音も出てきて驚かされる。ピアニストの菅原幸子はラッヘンマンの夫人であり「セリナーデ」は彼女のために書かれた。強烈な轟音でコードが叩きつけられては休符が響きを断絶、同時にいくつかの音がペダルで伸ばされ別の響きが広がる。中ほどで一つの不協和音をこれでもかと何度も響かせる部分(ベートーヴェンの31番みたい?)は鬼気迫るような凄味がある。ちなみにタイトルの「Serynade」は彼女の名前「Yukiko」の「Y」と「Serenade」を組み合わせた造語。角田祐子はラッヘンマンのオペラ「マッチ売りの少女」でタイトルロールを歌ったこともある、作曲家を熟知したソプラノ。「ゴット・ロスト」は様々な発音ときれぎれの単語が超絶技巧を伴い歌われ、強弱の幅も広くかなりの迫力。しかも30分近くかかる大作。2016年にはこのCDのメンバーで日本初演も行われた。「弦楽三重奏」は現代音楽界の名グループ、アンサンブル・ルシェルシュのメンバーによる演奏。奏法のバリエーションが豊富でアンサンブルも込み入った作品のため、古典的なトリオと違い、まるで全体がひとつの生き物のように聴こえる。 | ||
Frozen Time ジョン・ケージ(1912-1992): "Organ2/ASLSP" (1987) ドミニク・シュステック(1977-): Carillon (*) 〔 I (2015) / II (2015) / III (2015) 〕 細川俊夫(1955-): Cloudscape (2000) / Sen IV (1990) ドミニク・シュステック(Org) | ||
録音:2015年4月20日-22日。(*)は世界初録音。 WERGOレーベルから数々のアルバムをリリースしている名オルガニスト、シュステックがケージの「問題作」に挑む。現代音楽ならではのオルガン書法を存分にお楽しみ頂きたい。ケージの "Organ2/ASLSP" は「As Slow aS Possible(可能な限り遅く)」からとったタイトルで、演奏時間は演奏者の自由。数分から数百年(!)まで、多種多様な長さの演奏が可能な楽曲。シュステックは44分かけて演奏。ゴーッと鳴り続けるオルガン、ゆっくりと変容する和音。時が止まったような世界が広がる。続くシュステック自作の楽曲は鐘の音に始まり幻想的に展開。そこへ厳しい音造りが特徴的な作曲家、細川俊夫の作品が挟み込まれ、アルバム全体を引き締める。「Cloudscape」では音がにじみながら伸びていき、「Sen IV」では衝撃的な音響が空間に突き刺さる。 | ||
イェルク・ヴィトマン(1973-): ヴィオラ、クラリネットと管弦楽群のための「光の習作 II 『対位法的陰影』」(2001) (*)/ ソプラノと管弦楽群のための「第三の迷宮」(2013/14) (#) クリストフ・デジャルダン(Va;*) イェルク・ヴィトマン(Cl;*) サラ・ウェゲナー(S;#) ハインツ・ホリガー指揮(*) エミリオ・ポマリコ指揮(#) WDR so.(*/#) | ||
録音:2002年1月10日-12日(*) /2014年1月9日-10日、フィルハーモニー、ケルン(#) |いずれも世界初録音。 作曲家のみならず指揮者、クラリネット奏者としても活躍するマルチタレント、イェルク・ヴィトマン。彼の魅力が炸裂するソリストと管弦楽のための作品2題。自らクラリネット・ソロでも参加!「対位法的陰影(Polyphone Schatten)」は「光の習作」と題されたシリーズの2曲目。ポリフォニックな音の組み合わせとも自然界の音の描写ともとれる不思議な音楽。クラリネットのソロに始まるが、カチャカチャと物音を立てたりブレスの音を聴かせたりとなかなか楽音が出てきません。次第に音程のある音が聴こえ始め、ヴィオラも技巧的に軋みながら音を発し、オーケストラは木々がざわめくように鳴り出す。非常に研ぎ澄まされた感性で無駄なく展開される音楽でピリピリとした緊張感が心地よい。「第三の迷宮(Drittes Labyrinth)」は「迷宮」、「第二の迷宮」に続く迷宮シリーズ3作目。ソプラノの独唱を伴う作品で、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編小説「アステリオンの家」に触発され書かれた。登場人物は家の中にいるナレーターとして言葉を発するが、実は迷宮(ラビリンス)に閉じ込められているミノタウロスだった、という物。ラストは高低に広がった各楽器が「fffff」でつんざき、衝撃的な残響が長く尾を引く。 | ||
ジョン・ケージ(1912-1992)/トリオ・オムファロス編曲: Chess Pieces (1944) (*) トム・ジョンソン(1939-)/トリオ・オムファロス編曲: Rational Melodies (1993) (*) ジョン・ケージ: Four Dances (1942-43) トム・ジョンソン: Counting Duets (1982) 〜第2番 トリオ・オムファロス[ Stefan Hulsermann(Cl) Olaf Pyras(Perc) Ji-Youn Song(P)] | ||
録音:2016年10月25日-29日。 (*)は当編曲による世界初録音。 トリオ・オムファロスは2006年に結成されて以来、その編成のユニークさと独創的なプロムラミングで目を引く活躍を続けている。音色はプリペアドピアノの拡張版と言うべきか、単旋律をユニゾンで演奏することによって気の抜けた楽しいサウンドを作り出している(ちょっとファミコンっぽい音)。簡潔な音像のケージ作品はうってつけのレパートリーと言えるだろう。1944年、ケージはデュシャンやイサム・ノグチらを含む多くの著名なアーティストと共に、ひとつの絵を展覧会に寄稿するように求められた。そのとき作られた絵画作品が「Chess Pieces」。その中には音符や五線も見られたため、のちにトイ・ピアノで有名なマーガレット・レン・タンがピアノ音楽として再構築、演奏したことで知られている。このアルバムに収録されているのは、そこからさらにカラフルなトリオ編成にアレンジした物。マニア心をくすぐる選曲。トム・ジョンソンは1939年アメリカ生まれで、1983年以降パリに在住する作曲家。作風は清々しいほどに徹底したミニマル音楽。ひとつのアルペジオを規則的にリズムを変えながらひたすら繰り返すとか、あるスケール中の音をひとつずつ増やしてメロディを伸ばしていくとか、単純極まりない世界で面白いことをやっている。 | ||
ストラヴィンスキー:作曲者自身による4手編曲作品集 〔(*):ピアノ連弾のための版/(#):2台のピアノのための版〕 バレエ「ペトルーシュカ」(*) /弦楽四重奏のためのコンチェルティーノ(*) / バレエ「アゴン」(#) /ロシア風スケルツォ(#) ブガッロ=ウィリアムズ・ピアノ・デュオ[ヘレナ・ブガッロ、エイミー・ウィリアムズ(P)] | ||
録音:2015年5月18日-21日、ケルン。 ストラヴィンスキー自身がピアノ用に編曲した自作曲をすべて録音するプロジェクトの完結編。第1弾(WER-6683)と合わせて、これにて全曲が出揃った。今作には色鮮やかなバレエ「ペトルーシュカ」、12音技法も取り入れた抽象的なバレエ「アゴン」、単色にしてアクセントの綾で互いに協奏する「コンチェルティーノ」、アメリカ時代にジャズ・バンドのために書かれた「ロシア風スケルツォ」が収録されている。曲ごとの個性にも注目、まるでそれぞれが別世界のようだ。ストラヴィンスキーは若いころピアノ編曲版を通して西洋音楽のレパートリーを知った。その経験が自作においてもピアノ編曲を行う理由のひとつになっているかも知れない。多様性と色彩感において比肩するもののないストラヴィンスキーの音楽たち、その魅力が白と黒の鍵盤に凝縮され、高い集中度でもって奏でられる。ブガッロ=ウィリアムズ・ピアノ・デュオはストラヴィンスキーの他にクルターク(WER-6766)やナンカロウ(WER-6670)のアルバムも発表しており、技術は折り紙つき。細かいリズムがメカニカルにパリッと弾かれる様は快感すらある。 | ||
マルコ・ストロッパ(1959-): クラリネット、ヴィオラとピアノのための 「ジェルジ・クルターグへのオマージュ」(1997-2003, rev.2008) / 弦楽四重奏のための「宇宙のサイン [Un segno nello spazio] 」(1994) / ヴァイオリン、チェロとピアノのための「文学的なドローンのための7つのストローフィ [Osja, Seven Strophes for a Literary Drone] 」(2005, rev.2013) アンサンブル・K.N.M.ベルリン | ||
録音:2015年10月20日-24日、WDR 、ケルン。 イタリアの作曲家ストロッパによる室内楽作品集。彼はブーレーズのもとIRCAMで働いた経歴を持っており、生楽器でも繊細な音色を使いこなす。「 Hommage à Gy. K.」は7つの小さな楽章からなり、演奏者が互いの位置を繰り返し変えながら演奏する。クルターグを思わせる静謐で繊細な音のやり取りがさまざまなエフェクトとなり耳をくすぐる。「Un segno nello spazio」は弦楽四重奏ながら多層的な響きで、空間を削り出したかのような複数の切り口を見せ、宇宙的なパルスも感じる。「Osja, Seven Strophes for a Literary Drone」はロシアの詩人ヨシフ・ブロツキーを題材としており、「Osja」はブロツキーの愛称。弱音が支配的だが動きは途切れず、集中が続く音楽。 | ||
ロルフ・リーム(1937-): コロラトゥーラ・ソプラノと大アンサンブルのための「 Die schrecklich-gewaltigen Kinder 」(2003) [ピア・コムシ(S) アンサンブル・モデルン/録音:2013年10月15日、フランクフルト、初演時ライヴ]/ 管弦楽とテープのための「父」(1984) [カジミエシュ・コルド指揮南西ドイツ放送so./録音:1984年10月21日、ドナウエッシンゲン、初演時ライヴ] | ||
ダルムシュタットで注目されドイツの現代音楽界を牽引、21世紀に入ってなお創作活動を続ける作曲家ロルフ・リームによる作品集。2曲とも初演時の録音を収録しており、演奏レベルの高さにも唸らされる。「Die schrecklich-gewaltigen Kinder」は古代ギリシャの詩人、ヘシオドスの「神統記」に基づいた作品。オーケストラがさまざまな肌触りのフレーズを細切れに繰り出し、ちぐはぐに音楽が進んでいく。コロラトゥーラ・ソプラノは繊細にして超絶技巧の歌唱が求められ、表現豊かに物語を歌い上げる。カップリングの「O Daddy」は1977年にイタリアの若者マルコ・カルーゾが父親を殺した事件を題材にした作品。オーケストラのサウンドをテープが歪め、人々の語りがカオスのように聞こえ、うっすら「モツレク」が鳴り、ただ事ではない世界が広がる。 | ||
Una carta 〜コリウン・アハロニアン(1940-2017): フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、 コントラバス、カリンバとスティールドラムのための「 Gente 」」(1990) / アルト・フルート、ホルン、トランペット、トロンボーンとトムトムのための五重奏曲「 Musica 」(1972) / フルート、ヴァイオリンとピアノのための三重奏曲「 Musica 」(1968) / ピアノのための「 ¿Y ahora? 」(1984) / バス・クラリネット、ファゴットとチェロのための「 ¿De qué estamos hablando? 」(2006) (*) / クラリネット、ファゴット、チェロとピアノのための「 Los cadadias 」 (1980) / フルート、クラリネット、ヴィオラ、チェロとピアノのための「 Una cancion 」(1998) / 15の楽器奏者のための「 Una carta 」(2001) (*) /管弦楽のための「 Mestizo 」(1993) アンサンブル・アヴァンチュール ゾルターン・ペシュコー指揮バーデン=バーデン・フライブルクSWRso. | ||
録音:2017年11月2日-5日、室内楽ホール、ドイッチュラントフンク、ケルン/2019年3月16日、 SWR Studio Freiburg, Schlossbergsaal | (*):世界初録音。コリウン・アハロニアンは1915年のジェノサイドを生き延びたアルメニア人移民の息子として、1940年にウルグアイのモンテビデオで生まれた。その作風はラテンアメリカの文化に根ざしたリズミカルでエネルギッシュな物。それでいてカラッとした、乾いた感じの曲想が印象的。民俗音楽の香りを持つ短い動機素材を用い、慎重に緻密に組み立てていく構成で、示唆に富む作品を作り上げている。様々な編成の楽曲を集めており音色の変化にも注目。 | ||
ギャザリング・サンダーズ〜現代打楽器作品集 シュトックハウゼン(1928-2007):ツィクルス〜打楽器奏者のための(1959) クセナキス(1922-2001):プサッファ〜打楽器奏者のための(1975) ラッヘンマン(1935-): Interieur I 〜打楽器奏者のための(1966) ニコラウス・A.フーバー(1939-):ポトス〜打楽器奏者のための(2010) エトヴェシュ(1944-):雷 〜バス・ティンパニのための(1993) ヨハンズ・フィッシャー(1981-):ギャザリング〜ヴィブラフォンのための(2018) (*) レオニー・クレイン(Perc) | ||
録音:2018年5月9日-11日| (*)は世界初録音。20世紀と21世紀のパーカッション音楽を集めた、様々な作曲家の打楽器書法に酔いしれる万華鏡の如きアルバム。ノイズも音楽の一部として扱い新たな響きを造り上げた現代音楽の世界において、打楽器の表現力はより強大なものとなった。複雑なのに音色とノリが軽妙でとっても楽しいクセナキス、ペダルで音程を変えティンパニから驚くほど変化に富んだ音楽を繰り出すエトヴェシュ、プリペアド・ヴィブラフォンも登場し宇宙的な音色を奏でるヨハンズ・フィッシャーなど、1993年生まれの若きパーカッショニストが嬉々として演奏している。 | ||
記憶痕跡〜アルベルト・ポサダス(1967-): Anklange an Francoix Couperin(F. クープランとの共鳴)(2014) / Anklange an 沈める寺(「沈める寺」との共鳴)(2015) / Anklange an シューマン(シューマンとの共鳴)(2015) / Anklange an Anklange an Aitsi(「Aitsi」との共鳴)(2017) / Anklange an Stockhausen(シュトックハウゼンとの共鳴)(2017) / Anklange an B. A. Zimmermann(B. A. ツィマーマンとの共鳴)(2018) フロリアン・ヘルシャー(P) | ||
録音:2018年3月26日-27日、5月22日-23日|世界初録音。スペイン生まれの作曲家アルベルト・ポサダスによる、6つのピアノ音楽と作曲家へのオマージュで構成されたピアノ曲集。「沈める寺」はもちろんドビュッシー、「Aitsi」はシェルシの作品名。ポサダスが持つそれぞれの音楽の記憶に、彼独自の感性でもって対峙し新たな響きを模索していく。原曲がわかりやすく聴こえてくるということはまったくない。ピアノは内部奏法もあり、かなりの轟音で鳴まくる。20分近い曲も相当なテンションで弾くため強烈な迫力。フロリアン・ヘルシャーの超熱演が凄い。 | ||
エマヌエル・ヌネス(1941-2012): ミンネザング〜12人の独唱とア・カペラのための、ヤコブ・ベーメのテキストによる(1975/76) (*) / モザイクの〜4群の管弦楽のための(1998, rev.2001) (#) マルクス・クリード合唱指揮 SWR ヴォーカルアンサンブル(*) エミリオ・ポマリコ指揮ケルン WDR so.(#) | ||
録音:2017年10月20日、ドナウエッシンゲン(*) /2001年3月31日、ケルン(#) | (#)は改訂版による世界初録音。エマヌエル・ヌネスはブーレーズ、シュトックハウゼンに学んだポルトガルの作曲家。細かく書き込んだ音符が複雑に絡み合うが、全体の音響は広く空間性があり、とても立体的。音色も美しいもので、なるほど師匠の音楽からの影響を思わせつつ、自家薬籠中のものとした完成度の高い書法が味わえる。「ミンネザング」とは中世の叙事詩や恋愛の歌。ドイツの神秘主義者、ヤコブ・ベーメのテキストを基に繰り広げられる(*)は沢山のパートが入り組み、複雑な展開を見せる。声楽家たちは合唱団の一員であったり騒ぐ群衆であったり、さまざまな立場から声を発する。「Musivus」は音楽・文芸の女神ムーサ(Musa)から派生した言葉で、ムーサのあるところの、という意味で、神殿の飾りとして生まれたモザイク(musivum)の元となる言葉。翻って、「モザイクの」という意味を持つ。シュトックハウゼンの「グルッペン」の上をゆく4群(!)のオーケストラのために書かれた(#)はまさにモザイク模様、目も眩まんばかりの音の綴れ織りにムーサも眩暈を覚える。 | ||
マーク〔マルク?〕・アンドレ(1964-): 管弦楽のための「 hij 1 」(2008/10) (*) /(CD) 24の声とライヴ・エレクトロニクスのための「 hij 2 」(2010/12) (#) マリアーノ・キアッキアリーニ指揮ケルンWDRso.(*) マルクス・クリード指揮 SWR 声楽アンサンブル&エクスペリメンタル・スタジオ(#) | ||
録音:2015年5月4日-5日(*) 、2013年11月9日(#) 。音楽が何かの意味を持ち語りかけてくる、その前段階の響きに向き合った作品。管弦楽を用いた(*)でも、初めはブレスの音、そのうち楽器を叩く音、と時間をかけて「何かとして認知される前」を模索している。音楽が聴く者の意識の中にスッと滑り込み、謎を残したまま消えていくような感覚が味わえます。とはいえバッハの名に基づく音程(B-A-C-H)を構成音として用い、カノンなどの厳格な書法も取り入れた作品であり、感覚のみで書いているのではないようだ。非常に内省的でこわれやすい響きでありながら、強い主張を持った音楽で、音と静寂の間に張りつめた緊張感が微妙なニュアンスを物語っている。 | ||
アンドレアス・H.H.ズベルク(1958-):レオナルド・ツィクルス
ダニエル・グローガー(CT) パウル・ヒュブナー(Tp/アルプホルン) オラフ・ツショッペ(Perc) アンドレアス・H.H.ズベルク(エレクトロニクス) | ||
録音:2017年9月1日-9日。エッセン生まれの作曲家アンドレアス・H.H.ズベルクによる、謎めいたレオナルド・ダ・ヴィンチの予言を核として構成した音楽。ノイズと楽音、生活音が入り乱れた電子音楽に、あやしげなカウンターテナーの歌が乗っかっている。生楽器はごく一部に取り入れられているにすぎず、そのため逆に強い存在感を放っている。2019年に没後500年を迎えた超天才ダ・ヴィンチの常人離れした芸術的センスに思いをはせながら、ノイズの海におぼれて頂きたい。 | ||
モートン・フェルドマン(1926-1987): チェロとピアノのための「パターンズ・イン・ア・ クロマティック・フィールド」(1981) |
マティス・マイヤー(Vc) アントニス・アニセゴス(P) | |
録音:2016年7月13日-15日、 ZKM 、カールスルーエ。フェルドマンの主要作品であり人気も高い「パターンズ・イン・ア・クロマティック・フィールド」。フェルドマンならではの書法で瞑想的に変容していく淡い世界が味わえる80分。マイヤーとアニセゴスは優れた技術を持つ演奏家でありながら、電子音楽の音響にも慣れ親しむ現代的感性を持った名手。ドラマティックな音楽とは一線を画した静かで有機的な音の流れを自然と作り出している。聴き続けるほどに心地よい不思議な1枚。 | ||
マンフレート・トロヤーン(1949-): 弦楽四重奏曲第2番(クラリネットとメゾ・ソプラノを伴う)(1979/80) ミンゲ〔ミンゲット〕SQ ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー(Ms) トルステン・ヨハンス(Cl) | ||
録音:2018年5月29日-31日、室内楽ホール、ドイッチュラントフンク|世界初録音。 マンフレート・トロヤーンはドイツのクレムリンゲン生まれの作曲家で、フルート奏者、指揮者としても活動している。前衛世代以降の作曲家が個々の音楽言語を模索した時代の、ポスト・モダーン的作風。トロヤーンは無調音楽に馴染めず、ロマン派の作曲家に強くインスピレーションを受けたようだ。と言っても不協和音と協和音を織り交ぜた書法を取り、ベートーヴェンへのオマージュと書かれた第6楽章も皮肉めいた語り口で一筋縄ではいかない。第2、4、5楽章でメゾ・ソプラノとクラリネットが登場するのも印象的。 | ||
エルヴィン・シュルホフ(1894-1942):ピアノ作品集 ピアノ・ソナタ第3番(1927) /4手のための「皮肉」 Op.34 (1920) (*) /10のピアノ小品 Op.30 (1919) / ピアノのための音楽 Op.35 (1920) /ピアノのための11のインヴェンション Op.36 (1921) モニカ・グートマン(P) エリカ・ル・ルー(P;*) | ||
録音:2019年2月25日-26日、5月28日、 Festeburgkirche, Frankfurt am Main 。ドイツ系ユダヤ人の両親を持つプラハ生まれの作曲家エルヴィン・シュルホフは第一次大戦後ダダイストとして様々なジャンルの音楽を書いた多作家。ナチスに「退廃音楽」と烙印を押され、強制収容所で肺炎を患い命を落とした。調性の香りをまといながらもメカニカルでアヴァンギャルドな走句にあふれ、終始カッコイイ響き。ロシア・アヴァンギャルドにも近いものを感じる作風。 | ||
ペーテル・エトヴェシュ(1944-): メゾ・ソプラノ、テノール、ナレーター、合唱と管弦楽のための「ハレルヤ=オラトリウム・バルブルム」(2015) [イリス・フェルミリオン(Ms;天使) トピ・レーティプー(T;預言者) マティアス・ブラント(語り) ペーテル・エトヴェシュ指揮ケルンWDRso.、 ローベルト・ブランク合唱指揮ケルン放送cho./2017年4月28日-29日、ケルン、スタジオ]/ 管弦楽のための「名も無き犠牲者へ」(2016)[アントニオ・パッパーノ指揮サンタ・チェチーリア国立アカデミーo./ 2017年10月14日、サンタ・チェチーリア・ホール、ライヴ] | ||
録音:[/内]|ともに世界初録音。 「ハレルヤ」は我々が生きているこの時代の肖像であるとエトヴェシュは言っている。破壊的なオーケストラのアタックに始まり、声楽が言葉を叩きつけ、のっけから強烈な緊張感。ナレーションも切迫したもので、言葉の持つ力が表現の核となっている。そこへグレゴリオ聖歌、モンテヴェルディ、シャイン、バッハ、ヘンデル、そしてムソルグスキーやゴスペル・ミュージックなどからの様々な引用が差し込まれ、宗教曲やオペラのような世界も出現し、複数の意識が同時進行するように進んでいく。エトヴェシュ本人の指揮が複雑な作品を見事に音響化、50分の大作を一気に聴かせる。「名も無き犠牲者へ」は純粋器楽オーケストラの作品でありながら、こちらも言葉と同様に強く訴えかける力を持った音楽で、やはり現代の世界を描いたものと言える。3つの楽章からなり、それぞれ救済を求める人々が旅を続けていくようなイメージ。繊細なソロのパッセージがふんだんに使われ、各楽器の扱いの巧さ、色彩の作り方の巧さに舌を巻く。パッパーノの細やかな指揮が素晴らしく、作品の綾を精妙に表現している。 | ||
エンノ・ポッペ(1969-):9つのシンセサイザーのための「 Rundfunk 〔放送〕」(2015-18)
アンサンブル・モザイク ヴォルフガング・ハイニガー(オーディオ・ソフトウェア) | ||
録音:2019年1月30日-2月1日、Haus des Rundfunks Berlin, Saal3 |世界初録音。ドイツの作曲家エンノ・ポッペは、共感的懐疑主義と呼ばれる態度で電子音楽に取り組む音楽家。アンサンブル・モザイク代表として自ら演奏も手掛けている。9台のシンセサイザーによるこの作品はFM音源、ミニモーグ、ピガニーノなど60 〜70年代のサウンドを用いているが、そのまま音を使うのではなく、コンピューターで変調・再構成しながら音楽を作っていく。「I」ではシンプルなピコピコ音で始まり、「II」ではノイズのドローンが支配的となり、「III」ではそれぞれの要素が絡み合いながら大きく変容・展開。演奏家には鍵盤楽器奏者としての技術よりも電子音を巧みに操る技術が求められる。演奏家の身体性をもって作り上げる電子音楽であり、ポスト・ディジタル音楽と呼ぶことが出来るだろう。 | ||
THINKING OF...(ステファノ・スコダニッビオへのオマージュ) セバスティアン・グラムス: A Catena / Macchina Basso / Fioritura / Spirale / Un Vento Silenzioso / Moto Perpetuo / Pezzi Difettosi / Sul Viaggio / In Altre Parole / Soffermiamoci マーク・ドレッサー: Sostevoli Su / ジョン・エックハルト: La Coda del Nebbio セバスティアン・グラムス: Voyager / バリー・ガイ: Outside-Inside クリスティーヌ・フック: Rock! Nella Nebbia / ジョエル・レアンドル: For Stefano ディーター・マンデルシャイト: Subito Sera / バール・フィリップス: Tocarme ダニエーレ・ロッカート: Breaking Glasses / 齋藤徹: Casino / ハコン・テリン: H-Moll ・ボーナス・トラック スコダニッビオ&グラムス: Virtù | ||
2012年に亡くなった天才コントラバス、ステファノ・スコダニッビオへのオマージュ。世界のトップレベルのコントラバス奏者が集結している。セバスティアン・グラムスは、プロデューサー、作曲家、そして奏者の一人としてプロジェクトに参加。自身の作品および、スコダニッビオの作品を増幅させたような作品、また、このプロジェクトのために集まった奏者たちによる作品が並ぶ、コントラバスの祭典のような1枚。集結したコントラバス奏者:マーク・ドレッサー(アヴァン・ギャルド・ジャズ)/ジョン・エックハルト(クセナキスの作品の演奏を中心に活動を展開)/セバスティアン・グラムス(即興、ジャズ、現代音楽)/バリー・ガイ(即興ジャズ、オーケストラ、室内楽等)/クリスティーヌ・フック(オーケストラなど)/ジョエル・レアンドル(即興、作曲)/ディーター・マンデルシャイト(ジャズ)/バール・フィリップス(ベース・インプロヴァイザー)/ダニエーレ・ロッカート(ソリスト、作曲家)/齋藤徹(コントラバス演奏、作曲)/ハコン・テリン(コントラバス演奏、作曲) | ||
ジェルジ・リゲティ(1923-2006): レクイエム(1963/65)(*) /アバンチュール(1962)(#) /新アバンチュール(1962/65) (#) リリアーナ・ポーリ(S;*) バルブロ・エーリクソン(Ms;*) ミヒャエル・ギーレン指揮ヘッセン放送so.(*)、バイエルン放送cho.(*) ジェルティ・シャルラン(S;#) マリー・テレーズ・カーン(A;#) ウィリアム・ピアソン(Br;#) ブルーナ・マデルナ指揮ダルムシュタット国際室内 Ens.(#) | ||
録音:1968年11月、ヘッセン放送局、フランクフルト(*) /1966年、 Internationalen Musikinstituts Darmstadt (#) 、すべてドイツ| (P) + (C) 1985 。 | ||
ジェルジ・リゲティ(1923-2006):弦楽四重奏曲集 〔第1番(1953/54) /第2番(1968) 〕 |
アルディッティSQ | |
録音:1978年5月、 EMI スタジオ、ロンドン、 UK | (P) + (C) 1984/1988 。 | ||
ジェルジ・リゲティ(1923-2006): ヴァイオリン、ホルンとピアノのためのトリオ(1982)/ チェンバロのための「ハンガリー風パッサカリア」(1978)/ チェンバロのための 「ハンガリー・ロック(シャコンヌ)」(1978)/ チェンバロのための「コンティヌム」(1968)/ 2台ピアノのための「記念碑、自画像、運動」(1976) |
サシュコ・ガヴリロフ(Vn) ヘルマン・バウマン(Hr) エッカルト・ベッシュ(P) エリザベト・ホイナツカ(Cemb) アントニオ・バッリスタ(P) ブルーノ・カニーノ(P) | |
パウル・ヒンデミット(1985-1963): 歌劇「聖女スザンナ」Op.21(1921)(*)/ 3つの歌Op.9(1917)(#) |
ヘレン・ドナート(S;スザンナ;*) ガブリエーレ・シュナウト(A;*) ガブリエーレ・ シュレッケンバッハ(A;*) ジャニス・マーティン(S;#) ゲルト・アルブレヒト指揮(*/#) ベルリン放送so.(*/#)、 RIAS室内cho.(*) | |
録音:1984年6月、イエス・キリスト教会、ベルリン。ベルリンRIAS放送局との共同製作。 | ||
ジェルジ・リゲティ(1923-2006):ピアノ作品集 ムジカ・リチェルカータ(1951-1953)/ カプリッチョ第1番/インヴェンション/カプリッチョ第2番/ 2台ピアノのための「記念碑、自画像、運動」(1976) |
ベゴーニャ・ウリアルテ、 カール=ヘルマン・ ムロンゴヴィアス(P) | |
パウル・ヒンデミット(1985-1963): 歌劇「殺人者、女の望み」Op.12(1921)(*)/ バレエ「悪魔」Op.28(1922)(#) |
フランツ・グルントヘーバー(Br;*) ガブリエーレ・シュナウト(A;*) ヴィルフリート・ガームリヒ(T;*) ヴィクトル・フォン・ハーレム(B;*) ベンクト=オーラ・マグヌソン(T;*) ルーシー・ピーコック(S;*) ガブリエーレ・ シュレッケンバッハ(A;*) ベアトリス・アルダ(S;*) ゲルト・アルブレヒト指揮(*/#) ベルリン放送so.(*)、 RIAS室内cho.(*) ベルリン放送so.団員(#) | |
録音:1986年2月、イエス・キリスト教会、ベルリン。ベルリンRIAS放送局との共同製作。 | ||
パウル・ヒンデミット(1985-1963): 歌劇「ヌシュ・ヌシ」Op.20(1920) |
ハラルト・スタム(B) ヴィクトル・フォン・ハーレム(B) デイヴィッド・クヌートソン(CT) ヴィルフリート・ガームリヒ(T) ペーター・マウス(T) ガブリエーレ・ シュレッケンバッハ(A)他 ゲルト・アルブレヒト指揮 ベルリン放送so.、 RIAS室内cho. | |
録音:1987年、イエス・キリスト教会、ベルリン。ベルリンRIAS放送局との共同製作。 | ||
ジョン・ケージ(1912-1992): プリペアド・ピアノのための ソナタとインタリュード(1946-48) |
ジョシュア・ピアース(P) | |
録音:1975年7月26日-27日、ミノット・サウンド・スタジオ、ホワイト・プレイン、ニューヨーク。WER-6951 に全曲含まれていますので、ご注意下さい。インド哲学に影響を受けたケージが、ヒンドゥー古来の概念である様々な不変の感情を表現したという、16のソナタと4つのインタリュード(間奏曲)から成る演奏時間50分超の作品。東洋の様々な打楽器の音色を思わせるプリペアド・ピアノの響きが織り成す神秘的な世界。ジョシュア・ピアースはこのソナタとインタリュードをコンサートで23回は演奏したという兵。さらに、ブックレットには、どのピアノ線にどんなネジやボルトを仕掛けたかが詳細に記されており、こちらも見逃せない。 #当盤は国内代理店から廃盤と告知されています。2012年9月時点においてはレーベル在庫がある模様なので御案内していますが、入荷困難の可能性もございます。 | ||
ジェルジ・リゲティ(1923-2006): コンティヌーム[アントワネット・ヴィシェ(Cemb)/不明]/ 木管五重奏のための10の小品[バーデン=バーデン南西ドイツ放送木管五重奏団/ 1970年12月、ミュールハイム・アン・デア・ルール]/ テープのための2つの作品〔アーティキュレーション/グリッサンド〕 [ケルン放送電子スタジオ/1958年、1957年、ケルン]/ オルガンのための習作[ジグモンド・サットマーリ〔サットマリー〕(Org)/ 時期未記載、ヴェリングスビュッテル、ハンブルク]/ オルガンのためのヴォルミーナ(初版) [カール=エーリク・ヴェリン(Org)/1962年6月、ミュールハイム・アン・デア・ルール] | ||
録音:[/内]| (P) + (C) 1984/1988 。 | ||
アリベルト・ライマン(1936-):歌曲集 ヴェルナー・ライネルトの詩による ソプラノとピアノのための子供の歌(1961)(*)/ メゾソプラノとピアノのための ルイーズ・ラベの9つのソネット(1986)(#)/ ピアノ連弾とソプラノ独唱のための「夜の空間」 (ライナー・マリア・リルケの "Sieh hinauf. Heut ist der Nachtraum heiter" による)(1988)(+) |
クリスティーネ・シェーファー(S;*/+) リアト・ヒンメルヘーバー(Ms;*) アクセル・バウニ(P;*/#/+) アリベルト・ライマン(P;+) | |
録音:1989年5月29日-31日、バイエルン放送第3スタジオ。 デビュー当時のシェーファーが参加している。 | ||
ヴォルフガング・フォン・シュヴァイニッツ(1953-): 独唱、合唱と管弦楽のためのミサ曲Op.21 (1984) |
シェリル・ステューダー(S) ガブリエーレ・シュレッケンバッハ(Ms) ウィリアム・ペル(T) ボリス・カルメリ(B) ゲルト・アルブレヒト指揮 ベルリン放送so. ウーヴェ・グロノスタイ合唱指揮 RIAS室内cho. | |
録音:1984年? | ||
ヴォルフガング・リーム〜 in the moment 〜ポートレイト | ||
言語:ドイツ語/字幕:英・仏/約260分。 リーム作品の初演時映像の一部(アバド指揮BPO&マーラー・ユーゲントo.、メッツマッハー指揮NDRso.&ハンブルク州立歌劇場o.、ミンゲSQ、エッシェンバッハ、ヴィトマン、マウザー、プレガルディエンらによる物)や、リームの音楽のハイライトが収められている。リームの音楽についての考察、また、リームの音楽が流行して売れっ子作曲家となり多忙を極めた時期の写真映像などが満載。 また DVD-ROM データとして、作品一覧、楽譜の抜粋、広範囲の文献、ディスコグラフィとMP3ファイル(リームと、ディーター・レクスロート[音楽学者?]との対話、など)も収められており、資料的価値も高い。 当商品はPAL方式収録で、再生可能な機器が限定(基本的にパソコンのみ。テレビなどの映像機器を使用する場合はPAL対応のものが必要)されますのでご注意下さい。 | ||
ペーター・フォーゲル(1937-):ザ・サウンド・オブ・シャドウズ | ||
フォーゲルは英語で語っており、字幕はドイツ語のみ表示。インタラクティヴ・エレクトリック彫刻のパイオニアであるドイツの音響彫刻家、ペーター・フォーゲルのドキュメンタリー。細かな部品を自らハンダと半田ごてを自在に操って組み合わせ、その前で手を動かしたりすることによって様々な効果が生み出される、複雑なテルミンのような楽器を実際に作る過程などが映し出されている。三次元を説明するために絵を描くなど、なんでもしてしまうぺーター・フォーゲルの頭脳の中を少しだけ垣間見ることができるような興味深い映像作品。
#PAL方式のため、国内の通常映像機器では再生出来ません。また、パソコン等での再生保証もございません。 | ||
ジョン・ケージ〜 BirdCage: 73'20.958" for a composer 〔バードケージ:73 '20.958〜作曲者のための〕映像制作:ハンス・G.ヘルムス | ||
映像制作:1972年。NTSC|リージョンALL|MONO|言語:英・独(字幕なし)|73 ' 21。ジョン・ケージ生誕100周年記念盤。1972年にケージの生誕60年を記念して『W製作』(代理店記載ママ。Wは誤植か?)されたフィルムのコラージュで、ドナウエッシンゲン音楽祭で初公開された物。ケージという芸術家、音楽と音楽以外についての彼の思考、彼のキャラクターと重要な作品などを描く映像作品。映写機のための作品で、カットなしのオリジナル版でのDVDリリースは初めてのこと。 映像編集をてがけたのは、作曲家でもあるハンス・G.ヘルムス。ケージが九官鳥に「What's your name?」と語りかけるシーンからはじまり、プリペアド・ピアノの準備をするケージ、鳥かごを買うケージ、当時の最先端をいく演奏家たちによる演奏シーン、ケージがピアノを弾いてカニングハムがダンスを練習するシーン、大勢の前で講義をするケージ、詩を朗読するケージ、創作するケージ、そしてジョン・レノン、オノ・ヨーコとケージ3人の対談シーン、キノコについて語るシーン(自分でキノコいりのラザニアを作った話)、楽譜に青色鉛筆で修正を入れるシーン、チューダーが「易の音楽」をストップウォッチ片手に練習している横でケージが何やら読みあげるシーンなどなど、実に興味深いシーンがモザイクのように多数組み合わされている。ケージの人柄、音楽観などをたっぷりとうかがい知ることのできる貴重な映像。 | ||
ヴォルフガング・フォルトナー(1907-1987):歌劇「血の婚礼」(1956)(原作:ロルカ)
ダリア・シェフター(Ms;母) バヌ・ベーケ(S;花嫁) トーマス・ラスケ(Br;レオナルド) ジョスリーヌ・レフター(Ms;女中) ミリアム・リッター(Ms;レオナルドの妻) コルネリア・ベルガー(CA;レオナルドの義母) グレゴール・ヘンツェ(語り;花婿) シュテファン・ウルリヒ(語り;花婿の父) マルティン・コッホ(T;月) インゲボルク・ヴォルフ(死/物乞女/隣人)他 演出:クリスティアン・フォン・ゲッツ ヒラリー・グリフィス指揮ヴッパータールso.、ヴッパータール歌劇場cho. | ||
録音:2013年1月11日、3月17日、ヴッパータール歌劇場、ライヴ。 NTSC|ステレオ|約132分|歌唱:独|字幕:英。 フェデリコ・ガルシア・ロルカの戯曲「血の婚礼」をドイツの作曲家フォルトナーがオペラ化した傑作のDVD。結婚式の当日、花嫁が元カレと逃げ去り、それを追った花婿と殺し合いになるというショッキングな内容。根底には母親の存在の大きさがあり、彼女の過去も浮かび上がる心理劇となっている。ギュンター・ヴァント指揮ケルン市立オペラにより初演され、現代オペラを代表する傑作となっている。母親役のイスラエルのメゾ、シェフターは役に没入して凄みある演技。また隠れた重要役の物乞女をドイツの名女優インゲボルク・ヴォルフが怪演、ホームレスそのものの容姿で主役陣を喰ってしまう存在感を示している。 | ||
事物の中以外に観念なし〜作曲家アルヴィン・ルシエ ヴィオラ・ルーシェ&ハウケ・ハーダー監督作品(2012年) | ||
実験音楽を代表する大物で、何回か来日もしているアルヴィン・ルシエ(1931-)。彼の作品は前衛を通り越して、ほとんどノイズ。出世作となった「ソロ演奏家のための音楽」(1965)は、特別な電子回路が演奏者の脳波からアルファ波を検知、それを電気信号に変換して音響を発生させ、それで演奏者の中枢神経を刺激し、結果として演奏者の発する脳波に影響を与えるという拷問のような作品。この映像ではルシエ自身が実験台となっているのが注目。このほか代表作「私は部屋の中に座っている」(1969)は、ある部屋の中で自分の声を再録に再録を重ねていくと、部屋にある特定の周波数が徐々に声を蝕み、ノイズと化していく…という奇怪な作品。どの作品も自己崩壊する猟奇の世界だが、本人の生活を映した場面ではオーガニック野菜に香辛料を用いずに料理、健康的な老人なのに驚かされる、非常に貴重な記録。 | ||
ガリーナ・ウストヴォーリスカヤ(1919-2006):ピアノ・ソナタ全集 〔第1番(1947)[オリガ・パシチェンコ(P)]/第2番(1949)[クセニヤ・セミヨノワ(P)]/ 第3番(1952)[アレクセイ・グローツ(P)]/第4番(1957)[エリザヴェータ・ミレル(P)]/ 第5番(1986)[ウラジーミル・イワノフ(P)]/第6番(1988)[アレクセイ・リュビモフ(P)]〕 | ||
収録:2011年3月7日、演劇芸術学校モスクワ、ライヴ。 PAL | 16:9 |カラー| STEREO |約73分。ショスタコーヴィチの弟子中、最も異彩を放つウストヴォーリスカヤ。旧ソ連、女性、教育、他からの影響など、何にもあてはまらない作風で、天才なのか異常なのかさえ分りかねる存在となっている。ソ連時代には不遇ながら、今日かなり演奏・録音され始めたが、ロシアでもアレクセイ・リュビモフがイニシアティヴをとり、6篇のピアノ・ソナタを連続演奏。1曲ずつ弟子の若いピアニストたちに担わせ、最後に最も異常な第6番を自身が現代ピアノで奏している。1947年作曲の第1番は4楽章構成で、まだ小節線を有し、彼女のソナタの中では最も常識的な書法だが、その暴力性は同時代のどの男性作曲家よりも過激。2番から4番までは独自のトーンクラスターを延々と叩くスタイルで、それは鐘の音か爆発のように聴こえる。1988年の6番は最も短いものの、クラスター奏法が進化して掌や腕でガンガン響かせ、聴く者の脳を破壊する。そのあまりに非ソ連的音楽は、迫害されていたはずのシュニトケやグバイドゥーリナが体制側に見えてしまう。特異な奏法や指遣い等、非常に役立つ映像。 #当DVDの再生にはPAL方式対応のプレイヤーが必要で、パソコンでの再生保証もございません。またドイツでの発売盤にもかかわらず、代理店のアナウンスには『リージョン:5 』(ロシア向け)というあり得ない表記が成されていたため、当店で商品の外装イメージを確認した所「DVD 5」(片面一層DVD)という表記があるのみで、リージョンの表記はありませんでした。実際にはリージョン・オールと思われますが、実物の確認が出来ないためリージョンに関しても無保証とさせて頂きます。ご了承下さい。 | ||
カール・オルフ:「アストゥトゥリ」(バイエルン地方のコメディ)
マルク・マスト指揮 ヘルムート・マティアセク(舞台監督) ミヒャエル・シャンツェ(狂言回し) | ||
バイエルン地方のコメディで、鼻もちならない高飛車のアストゥトゥリ人たちが、ある日やってきた詐欺師によっていとも簡単にだまされてしまうという「裸の王様」的な要素のある物語。詐欺師はあることないこと魅惑的な言葉を並べたて、最後は皆をだまして「コカーニエン」という豊穣の地から取り寄せられた目に見えぬ高価な洋服を身に付けさせ、彼らをまる裸にし隙をみてすべてのものを持って逃げ去る。強烈なバイエルン訛りのドイツ語で、楽器は打楽器と管楽器だけ、物語も語り(詐欺師一人に対し大勢のアストゥトゥリ人の群衆の語り)で進む。印象的なメロディなどはないが、非常に力強い作品。 #PAL方式のため、国内の通常映像機器では再生出来ません。また、パソコン等での再生保証もございません。 | ||
カール・オルフ(1895-1982):歌劇「エディプス王」
ノルベルト・シュミットベルク(T;エディプス) ディミトリ・イヴァシュチェンコ(B;神官) アンドレアス・ダウム(Br;クレオン) オレクサンドル・プリトリュク(Br;コロスを導く者) マルクス・ドゥルスト(T;コロスを導く者) マルク・アドラー(T;ティレシアス)他 シュテファン・ブルニエル指揮ダルムシュタット国立o.、ダルムシュタット国立劇場男声cho. ジョン・デュー(演出) ハインツ・バルテス(舞台) ホセ・マヌエル・バスケス(衣装) | ||
収録:2006年-2007年。リージョン・オール|PAL|16:9|126m + 10m|Dolby Stereo。オルフはギリシャ悲劇に傾倒し、「アンティゴネ」(1949年)、「エディプス王」(1959年)、そして「プロメートイス(プロメテウス)」(1968年)とギリシャ悲劇に基づいた三作のオペラを書いており、これらはいずれもオルフの傑作として知られている。「エディプス王」は、ギリシャ悲劇の中でも特に傑作として名高いソポクレスノ「オイディプス」を、フリードリヒ・ヘルダーリンが独訳したものを用いている。通常のオペラではあり得ない膨大な量の台詞と、多数の打楽器と複数のピアノに対して弦楽器はコントラバスだけという通常のオペラとはまったく異なったオーケストラが生み出す音楽は極めて強烈。 エディプスは、ケルン出身のテノール、ノルベルト・シュミットベルク。性格テノールからワーグナーの英雄役まで手がける実力派。クレオンには、ドレスデン出身で2004年以来ダルムシュタット国立劇場で活躍しているバスバリトン、アンドレアス・ダウム。指揮のシュテファン・ブルニエルは、1964年、スイスのベルン生まれ。2001年から2008年までダルムシュタット国立劇場の音楽監督を務めていた。同劇場のインテンダントを務めるジョン・デューが演出を担当。音だけでは理解しづらいこの独特な作品の真価を、映像によって把握できることだろう。 #PAL方式収録のため、日本国内での再生保証はございません。 | ||
カール・オルフ(1895-1982)::歌劇「アンティゴネ」
キャスリン・ゲルシュテンベルガー(S;アンティゴネ) アニャ・フィンケン(S;イスメネ) オレクサンドル・プリトリュク(Br;コロスを導く者) アンドレアス・ダウム(Br;クレオン) スヴェン・エールケ(T;ヘモン) マルク・アドラー(T;ティレシアス) トーマス・メーネルト(B;使者) ズザンネ・ゼルフリング(S;オイリディセ)他 シュテファン・ブルニエル指揮ダルムシュタット国立o.、ダルムシュタット国立劇場男声cho. ジョン・デュー(演出) ハインツ・バルテス(舞台) ホセ・マヌエル・バスケス(衣装) | ||
収録:2006年、2007年。リージョン・オール|PAL|16:9。「アンティゴネ」は、1949年のザルツブルク音楽祭でフェレンツ・フリッチャイの指揮によって初演され、大成功を収めたばかりか、その後の作曲家オルフの方向を定めたものとして重要な意義を持つ作品。原作はもちろんソフォクレス、これを18世紀末から19世紀初頭にかけての鬼才フリードリヒ・ヘルダーリンが独訳したものを用いている。物語は「エディプス王」の後日談に当たり、エディプスの死後、テーバイに戻った彼の娘アンティゴネの物語。 タイトルロールのキャスリン・ゲルシュテンベルガーはハレ出身のソプラノ。1993年から長くダルムシュタット国立劇場に所属し、メゾ・ソプラノからソプラノ役まで幅広く歌って活躍している。ヘモン(=ハイモン)のスヴェン・エールケは、デンマークとの国境の町フレンスブルク出身。1998年にダルムシュタット国立歌劇場とバリトンとして契約、2004年にテノールに転向している。同じ劇場での同シーズンの上演とあって、「エディプス王」と役・歌手が共通している人が多いのも特徴。シュテファン・ブルニエルの熱の入った指揮と、ジョン・デューの分かりやすい演出はここでも同じ。映像でこの作品を見る利点は計り知れないものがある。 #PAL方式収録のため、日本国内での再生保証はございません。 | ||
カール・オルフ(1895-1982):歌劇「犠牲」(1913) (日本の悲劇「寺子屋」のカール・フローレンツ独訳に基づく音楽ドラマ/歌唱:ドイツ語) 橋本明希(S;菅秀才/小太郎) オレクサンドル・プリトリュク(源蔵) アンドレアス・ダウム(松王)他 演出:ジョン・デュー コンスタンチン・トリンクス指揮 ダルムシュタット州立歌劇場o.&cho. | ||
収録:2010年1月30日、ダルムシュタット州立歌劇場、世界初演時、ライヴ。本編65分、ボーナス15分|字幕:英| Dolby Stereo|16:9|PAL。カール・オルフ初の舞台作品オペラ、幻の「犠牲」の世界初演ライヴ映像。この「犠牲」は1913年、オルフ18歳の時の作品だが、オルフ自身が「若気の至り」などとしてなかなか初演の機会に恵まれなかった物。現代の作曲家による改訂なども経ての上演は、ドイツの聴衆にも歓迎されたという。平安時代の道真失脚の物語を描いた「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」の中でも特に有名な「寺子屋」の段(歌舞伎でもしばしば取り上げられる)を、ドイツ人の日本学者、カール・フローレンツがドイツ語に訳したものに基づいた物語。オルフは日露戦争の時も日本に共感し、日本のものにあこがれた少年時代を送ったという日本びいきだった。 物語の舞台は10世紀。一組の夫婦、松王と千代の物語。千代はある日、息子の菅秀才(かんしゅうさい)を源蔵が主宰する寺子屋に入門させる。実はこの息子は道真が遺した男の子で、松王とその妻千代に引き取られていた。寺子屋の教師源蔵(道真の弟子であった)は、菅秀才と、自身の実の息子、小太郎があまりにそっくりなのに驚く。やがて、道真の血筋を絶やすために時平がやって来て、道真の息子菅秀才の首を求める。時平を欺くため、そして道真への忠実を守るため、源蔵は道真の息子菅秀才ではなく、瓜二つの男の子、自身の息子、小太郎の首を差し出す、という物語。 オルフによる音楽は、西洋の下地と旋法には東洋的な要素を取り入れたエキゾティックなしあがり。時折「さくらさくら」が聴こえてくるなど、巧みに日本の旋律も取り入れられている。この日本の悲劇伝説を手がけた演出家はジョン・デュー。1944年キューバ生まれで、2004-05、ダルムシュタット州立劇場の監督を務め、この「犠牲」のほかにも、ヘンツェの「アポロとヒヤシンス」など、数々の近代の歌劇も手がけたベテラン。能舞台の雰囲気を湛えたになんとも幽玄の世界を感じさせる舞台作りが冴えている。キャストで注目なのが、菅秀才と小太郎、一人二役を見事に演じた橋本明希。彼女は日生劇場の「夕鶴」つう役で第21回第21回飯塚新人音楽コンクール第1位、第11回日本モーツァルト音楽コンクール第1位受賞。この「犠牲」の舞台には唯一の日本人として登場、このニュースはNHKでも放送された。現在もドイツを中心に活躍するほか、新国立劇場にも登場している。日本で愛され続けている道真の物語が、海を隔てた作曲家オルフの手によって歌劇に仕立てられ、幽玄的な演出を得て、耽美の世界を織り成すさまは見物。 ボーナス映像では、オルフが愛犬と戯れる姿など、彼の人物を知る興味深い映像を見ることが出来る。 #PAL方式のため、国内の通常映像機器では再生出来ません。また、パソコン等での再生保証もございません。 | ||
WERGO DVD "musica viva" (PAL) 当レーベルの以下DVDアイテム( NZ 記号) は、映像がPAL方式で収録されており、国内の通常映像機器では視聴することができませんので、ご注意下さい。また、一部品切れのアイテムが出ており、入荷しないものがある可能性があります。 | ||
ムジカ・ヴィヴァ Vol.1〜 ディーター・シュネーベル:(1930-) 法悦 [Ekstasis] (2002) カティア・ベーア、ティム・ヘンニス、ミヒャエル・ヒルシュ、ニルス・ケラー、 シドニー・フォン・クロシク、中村 功、Henrike Paede, Isolde Siebert, Gustav Sjökvist ローター・ツァグロゼク指揮バイエルン放送so.&cho. | ||
収録:2002年6月22日(初演日)/2005年1月8日。収録時間:175分/音声: Dolby Digital Stereo /メニュー:独・英/リージョン・コード: 0/画面: 4:3 /映像方式:PAL。 16部に及ぶ壮大な作品。 当商品はPAL方式収録で、再生可能な機器が限定(基本的にパソコンのみ。テレビなどの映像機器を使用する場合はPAL対応のものが必要)されますのでご注意下さい。また、国内代理店で扱いが無い商品ですので、入荷までにはお時間がかかります。 | ||
ムジカ・ヴィヴァ Vol.2〜 イェルク・ヴィートマン(1973-):実験的室内楽作品集 打楽器独奏のための「 Skelett 」[シュテファン・ブルム(Perc)]/ 6人の独唱のための「 Signale 」[シュトゥットガルト・新ヴォーカルソリスト]/ ピアノ独奏のための[ Hallstudie 」[イレーネ・ルッソ(P)] イェルク・ヴィートマンへのインタビュー | ||
収録:2004年4月16日/2004年11月16日。収録時間:126分/音声: Dolby Digital Stereo /メニュー:独・英/リージョン・コード: 0/画面: 4:3 /映像方式:PAL。 当商品はPAL方式収録で、再生可能な機器が限定(基本的にパソコンのみ。テレビなどの映像機器を使用する場合はPAL対応のものが必要)されますのでご注意下さい。また、国内代理店で扱いが無い商品ですので、入荷までにはお時間がかかります。 | ||
ムジカ・ヴィヴァ Vol.3〜恐怖と熱望 ヘルムート・ラッヘンマン(1935-):作品集 ...zwei Gefühle... / Consolation I und II / Mouvement (- vor der Erstarrung) ヘルムート・ラッヘンマンへのインタビュー |
ヘルムート・ラッヘンマン(語り) ヴァルター・ニュスバウム指揮 ensemble aisthesis, スコラ・ハイデルベルク | |
収録:2003年10月24日、聖ルカ教会、ミュンヘン。収録時間:124分/音声: Dolby Digital Stereo /メニュー:独・英/リージョン・コード: 0/画面: 4:3 /映像方式:PAL。 当商品はPAL方式収録で、再生可能な機器が限定(基本的にパソコンのみ。テレビなどの映像機器を使用する場合はPAL対応のものが必要)されますのでご注意下さい。また、国内代理店で扱いが無い商品ですので、入荷までにはお時間がかかります。 | ||
ムジカ・ヴィヴァ Vol.4〜 カール・アマデウス・ ハルトマン(1905-1963):3つの交響曲集 [第1番「レクィエムの試み」(1935-1936)(*)/ 第5番「協奏交響曲」(1950)(#)/ 第8番「大管弦楽のための」(1960-1962)(+)] |
カテリーネ・ゲルトナー(A;*) ローター・ツァグロゼク指揮(*) フランク・オッル指揮(#) インゴ・メッツマッハー指揮(+) バイエルン放送so.(*/#/+) | |
収録:2004年10月29日/2005年9月30日/2005年10月29日。収録時間:144分/音声: Dolby Digital Stereo /メニュー:独・英/リージョン・コード: 0/画面: 4:3 /映像方式:PAL。 当商品はPAL方式収録で、再生可能な機器が限定(基本的にパソコンのみ。テレビなどの映像機器を使用する場合はPAL対応のものが必要)されますのでご注意下さい。また、国内代理店で扱いが無い商品ですので、入荷までにはお時間がかかります。 | ||
ムジカ・ヴィヴァ Vol.5〜 ヘルムート・エーリング(1961-):作品集 Das Blaumeer, aus: Einkehrtag / Verlorenwasser, aus: Der Ort / Musikalisches Opfer ヘルムート・エーリングへのインタビュー |
マーティン・ブラビンズ指揮 ノルベルト・グロー指揮 インゴ・メッツマッハー指揮 バイエルン放送so.、 Xsemble München | |
収録時間:135分/音声: Dolby Digital Stereo /メニュー:独・英/リージョン・コード: 0/画面: 4:3 /映像方式:PAL。 当商品はPAL方式収録で、再生可能な機器が限定(基本的にパソコンのみ。テレビなどの映像機器を使用する場合はPAL対応のものが必要)されますのでご注意下さい。また、国内代理店で扱いが無い商品ですので、入荷までにはお時間がかかります。 | ||
ムジカ・ヴィヴァ Vol.6〜 ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(1926-):作品集 独奏弦楽器、金管と打楽器のための 「 Antifone 」(1960)/ ソプラノと大オーケストラのための 「 Nachtstücke und Arien 」(1957)/ 歌劇「鹿の王」(1953-56)〜 ソプラノとテノールのための二重唱 「 Was können wir tun 」/ 管弦楽のためのエア「 Fraternité 」(1999) / 大管弦楽のための 「 Appassionatamente 」(1993/94) ハンス・ヴェルナー・ヘンツェへの 2つのインタビュー(1988年/2006年) |
ミカエラ・カウネ、 モイカ・エルトマン(S) ステュアート・スケルトン(T) ペーター・ルジツカ指揮 バイエルン放送so. | |
収録時間:171分/音声: Dolby Digital Stereo /メニュー:独・英/リージョン・コード: 0/画面: 4:3 /映像方式:PAL。 当商品はPAL方式収録で、再生可能な機器が限定(基本的にパソコンのみ。テレビなどの映像機器を使用する場合はPAL対応のものが必要)されますのでご注意下さい。また、国内代理店で扱いが無い商品ですので、入荷までにはお時間がかかります。 | ||
ムジカ・ヴィヴァ Vol.7〜 Mythos und Technik ヤニス・クセナキス(1922-2001):作品集 18の弦のための「 Symos 」(1959)/ ピアノと86人の奏者のための「シナファイ」(1969)/ 「 Theraps 」(1975-76) (*)/「 Nekula 」 ヤニス・クセナキスへのインタビュー |
大井 浩明(P) フランク・ライネッケ(Fg?) ヨハネス・カリツケ指揮 アルトゥーロ・タマヨ指揮 ローター・ツァグロゼク指揮 バイエルン放送so.、 Ensemble Resonanz | |
収録時間:130分/音声: Dolby Digital Stereo /メニュー:独・英/リージョン・コード: 0/画面: 4:3 /映像方式:PAL。(*)は元々無伴奏コントラバスのための作品だが、当盤での編成は不明。 当商品はPAL方式収録で、再生可能な機器が限定(基本的にパソコンのみ。テレビなどの映像機器を使用する場合はPAL対応のものが必要)されますのでご注意下さい。また、国内代理店で扱いが無い商品ですので、入荷までにはお時間がかかります。 | ||
ムジカ・ヴィヴァ Vol.8〜 シェルシ&ツェンダー:作品集 ジャチント・シェルシ(1905-1988): Hymnos / Quattro pezzi (su una nota sola) / Natura renovatur ハンス・ツェンダー(1936-): チェロと管弦楽のための「バルド」 |
ハンス・ツェンダー指揮 バイエルン放送so. | |
収録:2006年3月3日。音声: Dolby Digital Stereo /メニュー:独・英/リージョン・コード: 0/画面: 4:3 /映像方式:PAL。 当商品はPAL方式収録で、再生可能な機器が限定(基本的にパソコンのみ。テレビなどの映像機器を使用する場合はPAL対応のものが必要)されますのでご注意下さい。また、国内代理店で扱いが無い商品ですので、入荷までにはお時間がかかります。 | ||
ムジカ・ヴィヴァ Vol.9〜Schwarz auf Weiss ハイナー・ゲッベルス(1952-):演奏集 エリック・サティ/マイク・スウォボダ編: Phonométrie セバスティアン・シュティーア: Double / Fluchtlinien / hin her / Zwei Lieder / der und die / Windflüchter II ジョン・ケージ/ハンス・オッテ編: Orient - Occident |
ハイナー・ゲッペルス指揮 アンサンブル・モデルン、 ストラスブール・ パーカッション・アンサンブル | |
収録:2006年7月1日、プリンツレーゲンテン劇場、ミュンヘン/2000年9月28日、ムッファトハレ、ミュンヘン。音声: Dolby Digital Stereo /メニュー:独・英/リージョン・コード: 0/画面: 4:3 /映像方式:PAL。 当商品はPAL方式収録で、再生可能な機器が限定(基本的にパソコンのみ。テレビなどの映像機器を使用する場合はPAL対応のものが必要)されますのでご注意下さい。また、国内代理店で扱いが無い商品ですので、入荷までにはお時間がかかります。 | ||
WERGO "ALCRA" | ||
ALC-5104 廃盤 |
シューベルト(ジャン・フランセ編):3つの軍隊行進曲 ショパン(ジャン・フランセ編): 3つのエコセーズ/ドイツ民謡による変奏曲 シャブリエ(ジャン・フランセ編):3つの絵画的小品 ジャン・フランセ: モーツァルト没後200年記念のエレジー/ ヨーロッパ風小ワルツ |
ライナー・シェル指揮 アマデ木管アンサンブル |
ピアノ曲の名曲をジャン・フランセが管楽アンサンブル用に編曲したもの。 | ||
全跳躍〜ジークフリート・ケーラー:作品集 ユモレスク(*)/7つの芸術歌曲(+/#) 喜歌劇「全跳躍」〜バレエ音楽(**) レヴュー・オペラ「つむじ風と喜びの雲」〜 ギゼレイアの登場の歌(+/**)/タランテラ(**) タンゴ・ヴィジョン(**)/情熱(**)/ 犯罪喜歌劇「紳士淑女」〜幽霊の場(**/***) ミュージカル「おしとやかなザビーネ」〜 影絵芝居の音楽(++) ミュージカル「オールド・ジャーマニー」〜 世界漫遊旅行者のブギ(##) |
クリスティーネ・ ミュールバッハ(Hp;*) レナ・ノルディン(S;+) ジークフリート・ケーラー (P;#)指揮(**/++) ストックホルム王室宮廷楽団(**) ラインラント=プファルツ 州立po.(++) ガリー・ベルクソン(P;##) ストックホルム歌劇場の 歌手たち(***) | |
録音:1977年3月&6月。 ケーラーは東ドイツにおいて音楽関係の要職を歴任した重鎮。明晰で旋律的なスタイルを追求した作風で、聴きやすいと同時に心に訴えてくる要素をたっぷりたたえている。 | ||
ムソルグスキー/ナウモフ編曲: ピアノ協奏曲「展覧会の絵」(1991) ナウモフ:ピアノと管弦楽のための「瞑想」(1982) |
エミル・ナウモフ(P) イーゴリ・ブラシュコフ指揮 ベルリン・ドイツso. | |
録音:2000年2月14日〜18日、ベルリン自由放送大ホール。クラシックを越えて様々なアレンジで広く親しまれている「展覧会の絵」。 オリジナルのピアノ版と管弦楽編曲版双方の美点を生かすべく、鬼才ナウモが用意した答えがこれ。ラヴェルをはじめストコフスキー、アシュケナージら先人たちがアイデアを凝らした冒頭の処理を、 意表を突いてカデンツァで開始するあたりが何とも心憎い限り。 初演で指揮を務めたロストロポーヴィチも絶賛という出来栄え。他にディティーユの委嘱による静寂なムードを湛えたナウモフの自作を収録。 | ||
エリック・サティ &ユンゲル・グレーツィンガー〜夢の中で 眠りの空間/グノシエンヌI/ 私はたくさん夢をみる/ドリーム・プレイI/ 天使/3つの恋愛詩よりI/ドリーム・プレイII/ 詩人の歌(潜水人形より)/グノシエンヌII/ 悲歌(3つの歌より)/グノシエンヌIII/ 花(もうひとつの3つの歌より)/ ドリーム・プレイIII/3つの恋愛詩よりII/ もしあなたが知っているのなら/ 3つの恋愛詩よりIII/雲の中で/ グノシエンヌIV/ドリーム・プレイIV/ シルヴィ(3つの歌より)/ グノシエンヌVII/ドリーム・プレイV |
アンサンブル・ヨーロピアン・ ミュージック・プロジェクト | |
グレーツィンガーはヨーロッパ打楽器界の重鎮。演奏者としてのみならず、編曲者、パフォーマーとして多方面で活躍している。そんな彼が仲間をひきつれて、自ら書いたサティ「風」な曲やサティの曲を演奏。なんとも摩訶不思議な音空間。 | ||
バーバラ・ヘラー(1936年-): リコーダー・ソロのための100のメロディーの本 |
ヨハネス・フィッシャー(リコーダー) | |
13センチのリコーダーかファゴットのようなおばけリコーダーまでを駆使したアルバム。名手フィッシャーが、約100にものぼるリコーダーのためのメロディーを、一曲一曲楽器を吟味しながら演奏している。瞑想的な曲、故郷の山々の間を吹きぬける一陣風のようなどこか寂しげな曲、どの曲も1分少々ときわめて短い中に、濃縮された世界が広がっている。 | ||
パウル・ディートリッヒ:クラシック・パロディ [場つなぎピアニスト/ラグタイム・トリスタン/ ベートーヴェンはいかにしてエリーゼを祝ったか/ モーツァルト対クレメンティ/ ベートーヴェンとスコット・ジョプリンが 「ハッピー・バースデー」を共作したら] |
パウル・ディートリッヒ(P) | |
タイトルだけでも笑いを誘うアルバム。CDでは、ディートリッヒが「ピアノ&釈明」とクレジットされており、これまた徹底している。 | ||
フェルディナント・ロー(1869-1927): のみのワルツ(猫ふんじゃった) |
フェルディナント・ロー(P) | |
録音:1896年。シングルCD。 レーベルよりの正式コメントで「間違いなく1896年録音」とされているが、SP再生音のようなノイズ以外は極めてクリアで、新しい録音にノイズを載せたようにも聞こえる程。いずれにしろ珍品系アルバム。なお、ブックレットや解説は一切無く、CDシングル用のケースに盤のみが収められている。 | ||
ワーグナー(ノルベルト・J.シュナイダー編): ミニッツ・トリスタン(12台のピアノによる) |
ミュンヘン音楽大学 ピアノ・アンサンブル | |
録音:1996年。収録時間:約6分。 ミュンヘンのプリンツゲント劇場改装記念のCDで、CD本体がワーグナーの顔の形に切り取られていると言う、クラシックでは非常に珍しいアイテム。曲も面白く、ピアノ・ファン、ワーグナー・ファンなら持っていて損はない。ブックレットや解説は一切無く、CDシングル用のケースに盤のみが収められている。 | ||
WERGO "INTUITION" ギリシャの作曲家ミキス・テオドラキスを中心としたシリーズ。同郷のクセナキス同様クーデターで投獄されてパリに亡命。その後国会議員となり、軍司政権崩壊後は大臣に就任、今や国家の文化的英雄となった。なかなか聴く機会のない作曲家だけに、これだけの作品が出ているのは嬉しい。中でもケーゲルの交響曲第7番は要注目。 | ||
テオドラキス・シングス・テオドラキス omorfi poli / Dioti den sinemorfothi / 8. Novembri / Gelasto paidi / tin porta anigho / Chathika / Anigho to stoma / Imaste dio / Margarita / Sto perigali / Mirtia / Afti pou tharthoun ミキス・テオドラキス(Vo)他、管弦打楽器 | ||
録音:1990年12月。 INTUITIONレーベルより発売されていた音源が品番・バーコードはそのままにWERGOレーベルから再発売される。クラシックのみならず「その男ゾルバ」などの映画音楽も手掛けたギリシャの大音楽家テオドラキスによるポピュラー・ソング自作自演。管弦打楽器さまざまな組み合わせの生演奏と御大の渋い歌声をお楽しみあれ。 | ||
ピアソラ:現実の57分 | アストラ・ピアソラ(バンドネオン)他 | |
これこそピアソラ最後の録音。神業の域まで達している。 | ||
テオドラキス:バレエ音楽「ゾルバ」 | ソフィア・ミハエリディ(Ms) コスタス・パパドプロス(リュート) ルーカス・カリティノス指揮 ハンガリー国立o. ハンガリー放送cho. | |
テオドラキス:オリンピックの歌 祈りの歌/オリンピック競技/勝利/戦い/ 競技の失敗/競技の復活/大地への讃歌 |
ルーカス・カリティノス指揮 ギリシア放送cho.、管弦楽団 | |
テオドラキス: オラトリオ「カント・ゲネラル」 (詩/パブロ・ネルーダ) |
アレクサンドラ・パパジアコウ(A) フランギスコス・ヴチノス(Br) ルーカス・カリティノス指揮 ベルリン器楽合奏団、 ベルリン放送cho. | |
テオドラキス: 交響曲第7番「スプリング」/アテネの実行/ 海の行進曲/葡萄園の女性 |
カーリ・レヴァース(S) ヴィオレッタ・マジャロヴァ(A) セルゲイ・ラリナス(T) グンター・エマーリヒ(B) ヘルベルト・ケーゲル指揮 ドレスデンpo.、プラハ放送cho. | |
テオドラキス:交響曲第4番 | ルーカス・カリティノス指揮 アテネso.、cho. | |
テオドラキス:バレエ組曲「アレキス・ゾルバ」 | ソフィア・ミハエリディ(Ms) コスタス・パパドプロス(ブズーキ) ミキス・テオドラキス指揮 ルーカス・カリティノス指揮 ハンガリー国立o. ハンガリー放送cho. | |
オルフ:カトゥッリ・カルミナ | ヴォルフガング・シェーファー指揮 アントワープ・ロイヤル・ フレーミシュpo.団員 | |
WERGOから発売されている「トリオンフィ3部作」からの分売。「愛」のありかたについて問う内容と、かなりきわどい挿絵の数々が妙にマッチ。 | ||
テオドラキス:交響曲第1番/アダージョ | ミキス・テオドラキス指揮 ペテルブルグ国立オペラso. | |
ピアソラ〜1989年BBSライヴ | アストラ・ピアソラ(バンドネオン) | |
録音:1989年。ライヴ。 ピアソラ最後のコンサートのひとつを録音した貴重なドキュメント。 | ||
テオドラキス:シンフォニエッタ/戒厳令 | ミキス・テオドラキス指揮 インターナショナル室内o. | |
テオドラキス:室内楽作品集 ヴァイオリンとピアノのためのソナティネ第1番(1952)/ ヴァイオリンとピアノのためのソナティネ第2番(1958)/ ピアノ三重奏曲(1947) |
トリオ・アテーニエン | |
録音:1986年。テオドラキス初期の貴重な室内楽作品が作曲者自身の監修で初CD化。リズミカルで歌謡性に富んだソナティネ第1番は、自作「クレタ」からの歌曲と舞曲を基にした作品。 テオドラキスの最も洗練された作品の一つに数えられるソナティネ第2番では、母国ギリシャ固有の音楽の伝統と新たな作曲技法とを簡潔かつ巧みにまとめ上げている。ピアノ三重奏曲は、 内戦時レジスタンス運動のメンバーになった翌年に作曲されながら、40年近くの間埋もれていた作品。テオドラキス・ファン必聴の内容。 | ||
テオドラキス:レクイエム | ジャンヌ・ポレウツォワ(Ms) リュポウ・ジルツォワ(S) ペーター・ミグノフ(B) アレクサンドル・ ティムチェンコ(T) ミキス・テオドラキス指揮 サンクト・ペテルブルグ国立 アカデミック・カペラso.、 同cho.、少年cho. | |
テオドラキスの自演による入魂の演奏。さすがは自作だけあり、作品への共感は見事だ。 | ||
テオドラキス:歌劇「アンティゴネ」/「メデア」/「エレクトラ」 | ||
INT-3312、3316、3320で分売されている古代ギリシャ・オペラ三部作ボックス・セット。 | ||
テオドラキス:「エレクトラ」(1991-94) | ガリーナ・トルボノス(エレクトラ) ウラディーミル・フェリャエル(オレステス) エミリヤ・チタレンコ(クリソテミス) ダーリャ・ルイバコワ (クリテミネストラ) エフゲニー・ヴィチネフスキ (オレスト)他 ミキス・テオドラキス指揮 サンクトペテルブルク 国立アカデミー・カペラ | |
録音:1998年4月、サンクトペテルブルク。作曲家テオドラキスはギリシャの国民的英雄で、大臣経験者。この作品は上演された各都市で熱烈に歓迎された、R.シュトラウスの同名作よりむしろ聴きやすく、美しい音楽。 | ||
テオドラキス:歌劇「アンティゴネ」(1999初演) | エミリヤ・チタレンコ (アンティゴネ) ユーリ・ヴォロビオワ (エディプス) ウラジーミル・ フェリャエル(クレオン) イリーナ・ リオグカヤ(ヨカスタ)他 アレクサンドル・ チェルノウシェンコ指揮 サンクトペテルブルク国立 アカデミー・カペラ | |
録音:1999年10月、サンクトペテルブルク。テオドラキス最後のオペラ。 | ||
テオドラキス:歌劇「メデア」(1991初演) | エミリヤ・ チタレンコ(メデア) ニコライ・オストロフスキ (ジャゾン) ペーテル・ミフノフ (エジェウス)他 ミキス・テオドラキス指揮 サンクトペテルブルク国立 アカデミー・カペラ | |
録音:1998年4月、サンクトペテルブルク。テオドラキスが渾身の大作をみずから指揮。 | ||
ASTOR PIAZZOLLA & QUINTETO TANGO NUEVO LIVE IN COLONIA,1984 Biyoya(未発表)/Caliennte(未発表)/ ルンファルド/デカリシモ/天使のミロンガ/ 天使の死/天使の復活/AA印の悲しみ)/鮫/ アディオス・ノニーノ/Contraaraque(未発表)/ ムムキ/Miguel angelo(未発表)/チンチン |
アストル・ピアソラ (バンドネオン) パブロ・ジーグレル(P) フェルナンド・ スアーレス(Vn) オスカル・ ロペス・ルイス(G) エクトル・コンソール (ダブルベース) | |
録音:1984年11月14日、ドイチェ・ヴェレ、ケルン。ライヴ。 ニューヨーク時代を経て、フュージョンやジャズまでをも吸収・消化したピアソラ円熟期後半のクインテート時代。ヨーロッパ・ツアーの最終日にケルンで行われたライヴ。 一世一代の名曲「Adios Nonino(アディオス・ノニーノ)」はもちろん、天使3部作に加え、4曲もの未発表曲を収録。タンゴの枠を越えた、斬新な和音が響き渡る。 | ||
テオドラキス: オーケストラのためのバレエ組曲「謝肉祭」 [序曲/男のダンス/グレート・ダンス/ 愛のダンス/ディヴェルティメント/ メイ・ポール/ポニー/キャメル/ 女のダンス/大団円]/ メゾ・ソプラノとオーケストラのための 「大がらす」(*) |
アレクサンドラ・ グラヴァス(Ms;*) ミキス・テオドラキス指揮 サンクト・ペテルブルグ 国立カペラ | |
どこまでも透明で明るい色彩を帯びた音世界。「謝肉祭」の音世界はテオドラキス色120パーセントだが、「大がらす」は一転してしっとりとした厭世感ただよう音世界。 テオドラキスの以外な一面が発見できる一枚。 | ||
テオドラキス(ローロフ編): ギター編曲による作品集 |
ライナー・ローロフ(G) | |
テオドラキス作品をギターに編曲して精力的に演奏活動を行なっている、ライナー・ローロフによる、テオドラキスの書いた歌謡曲をギターに編曲したものをあつめたアルバム。 地味にも思えるが、かなりオシャレ。疲れた日の夜に小さな音で聴いていると、ささくれだった心に染み透り、人生意外に捨てたものではないかも、と思えて来る。 | ||
チャーリー・マリアーノの芸術 アルビノーニ:アダージョ レオンカヴァッロ:「道化師」〜衣装をつけろ プラム/アイランド/次の最後の波/キャンディ・リップ もう行った方がいいよ/バラードじゃなく/ローピン ヤーガプリヤ |
チャーリー・マリアーノ(Sax) ジョナサン・スィアーズ指揮 ヴュルツブルグpo. ニュー・オン・ザ・コーナー [ベルンハルト・ピヒ(P) ルーディ・エンゲル(Cb) ビル・エルガールト(ドラムス)] | |
チャーリー・マリアーノは1923年生まれのアルト・サックスの巨匠。渡辺貞夫の師匠にして秋吉敏子の元夫。1曲目がアルビノーニのアダージョだが、 あのオーソン・ウエルズの「審判」でも使われた、甘いけれどもどこか荘重な響きのアルビノーニが、突然どこかのナイトクラブの妖しい音楽に変身してしまう。その後はもう一気呵成にマリアーノの音楽に翻弄される1時間。 おもしろい音楽が聴きたい、という人にお薦め。 | ||
First Songs〜 ミキス・テオドラキス(1925-):若き日の作品集 私がほしいもの(1939)/ まなざしをかわすより(1939)/秋(1942)/ 平和(1947)/夜のミサ(1939)/他 (全15曲+1ボーナストラック) |
ミキス・テオドラキス、 マリア・ファラントゥーリ(歌)他 | |
録音:1999年。 テオドラキスの20代の作品も収められた歌曲集。合唱つきで軽快なリズムの伴奏がついており、どれも耳に心地よく、「みんなの歌」風なつくりになっているものから、しんみりと聴かせるものまで様々。 | ||
ミキス・テオドラキス(1925-): resistance ソング・オブ・レジスタンス/ 包囲網の状態/魂の行進 |
ミキス・テオドラキス(朗読/歌) | |
ギリシアの音楽機関などに対するレジスタンス活動を展開したテオドラキス。彼の影響力はあまりに大きく、彼の主張は、音楽界のみならず、詩や映像や演劇にまで浸透した。彼の影響力をおそれた政府は、1967年にギリシアが軍事政権になった際、彼の音楽を禁止し、彼を捕らえた。このディスクに収められているのは、テオドラキスが捕らえられていた期間に彼が語ったり朗読したり、歌ったりした詩や音楽。自由について、また、捕らえられている部屋の壁の向こうを思いながら歌ったものなど実に様々。尚、通常のカセットテープにシンプルに録音されたものが音源なので、音質はやや古めかしい。 | ||
テオドラキス:歌劇「ディオニュソスの変容」 (全2幕/ヘンニク・シュミートによる室内楽オケ版) |
ミキス・テオドラキス指揮 オルケストラ・ディ・ムジカ・ ディフィシーレ(グダニスク) コンチェントゥスcho. | |
テオドラキスはオペラを数曲書いているが、その第1号である作品がこれ。ギリシア神話のディオニュソス神が登場する。ディオニュソスは神として、そしてまた人間としてこの世に現われる。物語は詩人によって語られ、時は1900年代半ばから古代まで、そして所も様々に飛躍しながら進められる。最後は詩人が観客にむかってピストルをかまえ「私は未来を撃つ」と言って幕となる、幾重もの物語から構成されるやや複雑なストーリーではあるが、音楽自体は非常に明快。 | ||
テオドラキス:作品集〜エーゲ海の東 音楽に満ちた海/日は沈む/あなたの海なる髪/ 火のとき/スプリング・ミュージック/あなたを待つ海/ 日がな一日あなたを愛す/水と戯る/海がつづくかぎり/ 海のうた/水の循環/海の色/ナイト・フライト/ 波のリズム/神秘なるエーゲ/あなたの身体の川/ ビザンツ遺跡/太陽のあしあと/欲望に火がついて/ 水の音楽とともに/燃え盛る7月の風 |
ジェン・ナウミルカ(Vc) ヘニング・シュミート(P) | |
録音:2007年2月。 「人間の深い声、チェロの音色、ピアノの澄み切った宝石のような音色・・・音楽が「語る」ものというのは、人間の心でとらえきることはできない」とテオドラキスは語る。テオドラキスの音楽のもつ豊かな情景、きらきらとした光・・・掬おうとしても指の間からこぼれてしまう、砂のかけら、夢のかけらといったものに満ちた音楽。暖かな気分に浸れる幸せな一枚。 #当盤は国内代理店で製造中止扱いとなっています。流通在庫限りと思われますので、ご注文時に入手不能となっている可能性もございます。 | ||
WERGO "ORGAN" | ||
リオネル・ロッグ〜オルガン・リサイタル・イン・ジュネーヴ リオネル・ロッグ:武満のオマージュ 他、ヴィエルヌ、ヴィドール、フランク、ビゼー、リストの作品 | ||
録音:ヴィクトリア・ホール、ジュネーヴ。 リサイタルが行われたジュネーヴ・ヴィクトリア・ホールは1984年に壊滅的な火災に遭ってオルガンも焼失、その再建に携わったロッグにとって新しく完成したオルガンはまさに理想的な楽器であり、 選曲の巧みさもあいまって、よくあるオルガンCDとは違うエキサイティングな雰囲気を味わうことができる。 | ||
有名な女流オルガニストたち アラウホ:ティエント[オディール・バイユー(Org)] ジャンヌ・ドメシュー(1921-1968):テ・デウム[ジャンヌ・ドメシュー(Org)] デュリュフレ:アランの名によるプレリュードとフーガ[マリー=マドレーヌ・デュリュフレ=シュヴァリエ(Org)] デュプレ:インテルメッツォ/トッカータ[ロラン・ファルシネッリ(Org)] グーディメル:賛美歌/ジュアン・アリスト・アラン(1911-1940):フリジア旋法によるバラード ラングレー:旋法風の小品第3番[マリー=ルイーズ・ジロ=パロ(Org)] リスト:バッハの名による前奏曲とフーガ[マリー=クレール・アラン(Org)] | ||
原盤:ERATO/他。20世紀を代表する6人のオルガニストの演奏を収録。もちろんオルガンもそれぞれ異なる。ジュアン・アリスト・アランはマリー=クレールの兄で、第2次世界大戦にて若くして没した。 | ||
ハラルト・ゲンツマー: オルガン・ソナタ第2番/オルガン幻想曲/ クリスマス協奏曲/オルガン・ソナタ(1952) |
ゲルハルト・ヴァインベルガー(Org) | |
暁の星のいと美しきかな シャイデマン、シャイト、ブクステフーデ、バッハ、 ガーデ、H.ライマン、カルク=エレルト、 レーガー、カミンスキ、ディストラーの作品 |
トルステン・ラウクス(Org) | |
録音:2000年2月。オルガン曲を得意としたルター派の成立から現代にいたるまでの各年代の代表的な作曲家たちによる「暁の星のいと美しきかな」を題材にした曲の数々。 オルガンも「1910/11年製ドルヌム、聖バルトロマイオス・ルター派協会のフォン・ホーリー・オルガン」、 「1900年生アイゼンベルク市教会のヴァルカー・オルガン」、「1939年製シュパイヤー、プロテスタント記念教会のシュタインマイヤー=クロイカー・オルガン」の3台を弾き分けており、なかなか凝ったCDと言える。 | ||
ヴィドール:オルガン交響曲第5番 から トッカータ バッハ:コラール「おお人よ、汝も罪の大いなるを嘆け」 前奏曲とフーガ ニ長調 バッハ(グレース編曲):主よ、人の望みの喜びよ メンデルスゾーン(コメット編曲):結婚行進曲 デュプレ:アントレ、カンツォーナとソルティエ ジョンゲン:トッカータ Op.104 |
フェリックス・ヘル(Org) | |
ルイ・アルシャンボウ(1705-1789): オルガン作品集 |
マリー・アカン(Org) | |
1690年製歴史的オルガン使用。ヴェルゴから古楽系が出るのは珍しいが、レパートリーのほうがこれまた非常に珍しい。アカンはフランスの美少女系オルガン奏者。 名前の似ているマリー=クレール・アランのポストたり得るか? | ||
バッハ/レーガー編曲: 半音階的幻想曲とフーガ BWV993 平均律クラヴィーア曲集 〜前奏曲とフーガ嬰ハ短調 BWV849 2声のインヴェンション BWV772-786(3声に編曲) 幻想曲とフーガ BWV912(原曲;トッカータ ニ長調) |
イレーネ・ペロー(Org) | |
編曲魔でバッハ・マニアだったレーガーならではの作品。2声に独自の半音階的声部を付加したインヴェンションが興味深い。 | ||
リオネル・ロッグ自作自演集 亡霊/永遠の光 4つのエレメント − 武満徹をたたえて 3つの新練習曲/デュリュフレ讃歌 オルガン曲集 トッカータ・カプリチョーザ |
リオネル・ロッグ(Org) | |
BISに録音したブルックナーの交響曲のオルガン編曲版がロング・セラーを続けているロッグ。「4つのエレメント」は武満追悼にために書かれ、東京オペラ・シティで初演されたシンセサイザー的・SF的音響の作品。 | ||
オルガン・デュオのための作品集 J.クロッパーズ(1937-):舞踊組曲 J.G.アルブレヒツベルガー(1736-1809):前奏曲とフーガ ハ長調 D.ベダール(1950-):小組曲/トリロジー S.ウェスリー(1766-1836):エリザのためのデュエット R.ベルティング(1953-):名クリスマス・キャロルによる組曲 |
シルヴィ・ボワリエ& フィリップ・クロジエ(Org) | |
録音:1998年10月27-28日、カナダ、ケベック州モントリオール。カサヴァント大オルガン使用。20年近いキャリアを持つカナダの夫婦デュオによる4手のためのオルガン作品集。 | ||
ハンザ同盟都市のバロック時代におけるオルガン名曲集 〜ロスキレ司教座教会の時鐘 トゥンダー:前奏曲ヘ長調 コラール幻想曲「主なる神よ、われら汝をたたえん」/カンツォーネ ブクステフーデ: トッカータ ヘ長調 BuxWV156/シャコンヌ ヘ短調 BuxWV160 カンツォーネ BuxWV171/テ・デウム BuxWV218 バッハ:主なる神、われら汝をたたえん BWV725(27のコラールより) 前奏曲とフーガ ト長調 BWV550 |
ユルゲン・エルス(Org) | |
録音:2001年3月26-29日、デンマーク、ロスキレ、司教座教会。1554/1654年製歴史的オルガン使用。 | ||
スイスの作曲家のオルガン作品集 ハンス・フーバー(1852-1921): 聖書の言葉による幻想曲(1882) ルドルフ・モーザー(1892-1960): オルガンのためのパッサカリア Op.30 No.1 オネゲル(1892-1955): フーガ嬰ハ短調(1917)/コラール ニ短調(1917) フリードリヒ・クローゼ(1862-1942): ブルックナーのある即興(の主題)による前奏曲と 二重フーガ(師ブルックナーの正確な思い出に;1907) |
ベルンハルト・レオナルディ (Org) | |
録音:2001年6月15-17日、ベルン大聖堂。1726年L.G.ロイ製、1999年クーンによりシステム付加されたオルガンを使用。 フーバーは19世紀スイスで最も重要な作曲家。ライプツィヒ音楽院に学び、ロマン派的な作品を残した。モーザーは同じくライプツィヒ音楽院で学んだ後、フーバーに師事した作曲家。 より現代的で個性的ながら教会様式に結びついた表現を特徴としている。クローゼはカールスルーエ、ジュネーヴ、ウィーンで研鑽を積んだロマン派の作曲家。 ウィーン時代にブルックナーに師事したことは特筆に値し、今回録音された作品の下地にもなっている。オネゲルはフランス6人組としてよく知られているが、ル・アーブルで生まれたスイスの作曲家で、 ドイツ的側面とフランス的側面がバランスよく融合された点を特徴としている。演奏者のレオナルディはザールブリュッケン聖ヨハネ大聖堂の常勤オルガニスト。 ザールブリュッケンとベルンで学び、ヨーロッパで活躍する新進演奏家。 | ||
ドイツ最初のカヴァイエ=コル製オルガン 曲目不明 |
ダニエル・ロート(Org) | |
ロートはデュリュフレとアランに師事したフランスのヴェテラン・オルガニスト。 | ||
ナジ・ハキム(1955-):聖書と民謡を題材としたオルガン作品と即興集 最期の裁き(マタイ伝第25章31-46節;2000) 歓びの歌(詩篇第150;1998) 洗礼者ヨハネをたたえるシンフォニア(1997) ラトヴィア民謡によるバガテル(1998) 2つの民謡風主題に基づく即興的幻想曲(1000) |
ナジ・ハキム(Org) | |
録音:2000年2月12日、12月2日、パリ、三位一体教会。使用楽器:アリスティド・カヴァイエ=コル製。 ナジ・ハキムはレバノンのベイルートに生まれ、フランス・オルガン音楽の正統的後継者として認められ、今回の録音場所でもある 聖三位一体教会のオルガニストにメシアンの後を受けて就任した。 |