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EARLY MUSIC.COM


価格帯記載無し:1枚あたり¥6600(税抜¥6000)





 躍進めざましいカナダの古楽界から、フランス語圏の新しいレーベル『 Early-Music.com(アーリーミュージック・ドットコム)』を御紹介。もうターフェルムジークだけじゃない。アンサンブル・アリオンやリュク・ボーセジュールはもちろんさらにヤープ・テル・リンデン、モニカ・ハジェット、アニェス・メロンら欧州ヴェテラン勢も続々参加中。

 当レーベルの国内代理店は2018年3月を持って事業撤退したため、国内仕様盤は全点廃盤になり当店在庫もございません。 旧・国内仕様盤は下記に掲載している輸入盤と同品番ですが、日本語解説等はありません。なお、国内代理店のアナウンスは2010年11月のものが最後で、以降出た数点は国内未案内です。また、現地での新譜は2017年のものが最後で、基本的には在庫限りとなるレーベルと考えられます。

J.S.バッハ:管弦楽組曲第1番、
 およびチェンバロを含む協奏曲さまざま

 7声の序曲 ハ長調 BWV.1066(管弦楽組曲第1番)/
 ブランデンブルク協奏曲第5番 ニ長調 BWV.1050/
 三重協奏曲 イ短調 BWV.1044/
 2台のチェンバロと弦楽のための協奏曲 ハ長調 BWV.1061
シャンタル・レミヤール(Vn)
クレール・ギモン(Fl−tr)
ハンク・ノックス、
リュク・ボーセジュール(Cemb)
ヤープ・テル・リンデン指揮
アリオン・アンサンブル
 ピリオド楽器使用。いかんなきアンサンブルの妙、ため息が出るほど美しい自然録音!
 Early-Music.com の第1作。指揮者は大御所ヤープ・テル・リンデン! マニア向けの情報としては、テル・リンデン同様かつてムジカ・アンティクヮ・ケルンを支えたフィービー・カライ(Vc)が通奏低音を支えている。プログラムは「管弦楽組曲第1番」にはじまり、チェンバロを主役にすえた協奏曲が3曲つづく。うっすら切ない情緒を漂わせながらも決然と始まり、やがてオーボエやファゴット、ヴァイオリンなどが次々とあざやかな歌を披露する冒頭の管弦楽組曲からもう、アリオン・アンサンブルがいかに見事な音楽性をたたえた集団かがはっきりとわかることだろう(ふつふつと伝わってくる躍動感、各舞曲のコントラスト、愉悦あふれるソロの見事さ・・・!)。早すぎず遅すぎず、の「ブランデンブルク協奏曲第5番」は、クレール・ギモンのフルートに代表される息遣い確かな音楽運びが心地よい。チェンバロのカデンツァも緩急の付け方が絶妙でついつい引き込まれてしまう。必要以上に深刻になり過ぎない「三重協奏曲」BWV1044での風情もこれまた美しく、最後の2台のチェンバロのための協奏曲ではリュク・ボーセジュールとハンク・ノックスという2名手が、互いに高めあうように対話を続けてゆくさまに(両楽器の微妙な音色の違いも鮮やかに)どんどん引きずり込まれてしまう。さくさくと進む緩徐楽章にも綺麗な悲哀が息づいていて、その美しいことといったら…。昨今の最先端ヨーロッパ古楽勢が鋭角的にエスプリをほとばしらせテンション高く迫るとしたら、こちらはずっとスロウな、純粋にバッハならではの音楽美と精緻な対位法の妙味をどこまでも素直に愉しませてくれるスタイル。それでいて心に沁みついて「いい音楽を聴いた!」という快さをいつまでも残してくれる、その存在感の確かさは筆舌に尽くしがたい。
 ジャケットを印象づけている、濃い青から遠くの乳白色へと移るモントリオールの空の色に、バッハの長調音楽独特のあの“うすらはかなさ”を重ねずにはおれない、美麗をきわめるバッハ・アルバムだ。
モーツァルト:フルート四重奏曲(全4曲)
 [第1番 ニ長調 K.285/第2番 ト長調 K.285a/
  第3番 ハ長調 K.285b/第4番 イ長調 K.298]
クレール・ギモン(Fl−tr)
トリオ・ソネリー
[モニカ・ハジェット(Vn)
 エミリア・ベンジャミン(Va)
 アリソン・マクジリヴレー(Vc)]
 言わずと知れた大ヴェテラン、モニカ・ハジェットの名技健在、キャリア豊富なギモンらとのアンサンブルは圧巻の一言、ピリオド楽器による新・決定盤!
 Early-Music.comからのモーツァルト・アルバムには、なんと大御所モニカ・ハジェットらが登場する。トリオ・ソネリー名義で集まった弦楽器奏者陣に、アリオン・アンサンブルのリーダーであるクレール・ギモンが加わるかたちで4曲の「フルート四重奏曲」を全曲収録。ピリオド楽器による同曲全集は思いのほか出てこない(コロムビアの有田盤とACCENTのクイケン兄弟盤のほかは、実のところ日本で手に入りやすい新録音がほとんどない)という現状を覆すに足る傑作アルバムに仕上げてくれた。
 ご存知のとおり、モーツァルトがマンハイム〜パリ旅行の途上で作曲したフルートのための一連の協奏曲や四重奏曲は、この天才がいやいやながら作曲したにもかかわらず至高の名曲群になってしまったことで有名だが、さすがは歴戦の名手が居並ぶ本盤、ガット弦とトラヴェルソの味わい深い“かすれ”が重なって醸し出されるまろやかな音響が、春先の模糊とした空気になんとも美しく溶け込んでゆくかのよう。そんな調和の中で各奏者はしっかりと個性を発揮、落ち着いた語り口のなか要所要所に繊細きわまる小憎い音運びを織り交ぜてゆくギモンのトラヴェルソの美音(大人びて巧妙になったリサ・ベスノシウクといった感じだ)もさることながら、アンサンブルをうまく統制するかのように出所をわきまえたモニカ・ハジェットの滋味あるヴァイオリン、折々にソロめいた音が響けば必ず心を打つベンジャミンのヴィオラとマクジリヴレーのチェロもこれまた見事。4人が4人とも“室内楽の心得のある”生抜きの名手であることの素晴らしさが、アルバム全体に漂っているのだ。丁々発止!という感じに暴れないのに、彼らそれぞれの個性はなんと鮮やかに浮き彫りになっていることか・・・。
 トラヴェルソ・ファンのみならずクラシック・ファン全域におすすめ。美しい装丁のモーツァルト・アルバムを贈答用にお探しの方も、ぜひ注目していただきたい一作だ。
ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681-1767):
 フルートと鍵盤のための六つのコンセール(全曲)
クレール・ギモン
(フラウト・トラヴェルソ)
リュク・ボーセジュール(Cemb).
 リュク・ボーセジュール、堂々登場!名手ギモンとともにテレマンのミニマルな旨みを堪能させてくれる秀逸盤。
 現代カナダが誇る気鋭古楽集団アリオン・バロック・オーケストラ(2006年11月来日予定)の主宰者であるトラヴェルソ奏者クレール・ギモンが、NAXOSやAnalektaでお馴染み・フランス語圏カナダを代表するチェンバリストのひとりリュク・ボーセジュールと組んで作り上げた当盤は、通奏低音に工夫を凝らし多数の奏者を置いたりする豪奢な編成でのバロック・ソナタ演奏が多いなか、トラヴェルソとチェンバロの二重奏という限定された編成のなかできわめて多彩で奥深い表現を聴かせてくれる頼もしい一枚だ。プログラムとなっているテレマンの「六つのコンセール」(フランス語タイトルながら、ハンブルクで1734年に出版された“伊仏混合様式”による作品集)も、実際にはデュオだけでなく、チェロやヴァイオリンを加えた大人数編成で弾いてもよい、との指示がある曲集なのだが、そこであえて最小編成を選んだ彼ら、、、そうすることで、この曲集がバッハの「オブリガート・チェンバロとヴァイオリンのためのソナタ」に匹敵する奥深さを秘めた傑作集であることを如実に印象づけてくれる。抑揚ゆたかなギモンの笛に隅々まで神経のゆきとどいたボーセジュールの鍵盤、肩肘はらない阿吽の呼吸で両者の出所を引き立てあう二人。国際リリースされたAnalektaでのボワモルティエ曲集で仏Repertoir誌の10点満点を獲得した彼らのアンサンブル能力は、ここでも遺憾なく発揮されているのだ。
 Early-Music.comが誇る秀逸録音も、演奏の質を見事に際立たせてくれる。ファン必聴の充実盤。
EMCCD-7756
廃盤
ジャイルズ・ファーナビーの鍵盤音楽世界 ティモシー・ロバーツ(Cemb)
聖母マリアにまつわる独唱カンタータ
 アントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741):
  聖母は立てり、悲しみて
   (スターバト・マーテル)RV.621
 ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685-1759):
  ああ、あまりに不公平なこと HWV230
 アレッサンドロ・スカルラッティ(1660-1725):
  ごきげんよう、天の皇后(サルヴェ・レジーナ)
 ジュゼッペ・フェルランディーニ(1705-93):
  マリアの嘆き(伝ヘンデル作・HWV234)
アニェス・メロン(S)
マシュー・ホワイト(CT)
モニカ・ハジェット(Vn)指揮
アリオン・バロックo.
 ピリオド楽器使用。アニェス・メロン、Early-Music.comに登場!!どこまでも鮮やか、深みある歌い口の圧倒的な美!ホワイトの高音もまた美し。そして指揮はハジェット!
 注目すべきは独唱者。なんと、ソプラノは「あの」名花アニェス・メロンではないか! ドミニク・ヴィスのパートナーでもあり、W.クリスティやヘレヴェッヘ、マルゴワールらとフランス古楽界最初の黄金時代を彩った忘れがたい歌い手は、21世紀に入り表現力を益々深めている。本作は2005年リリースされたAlphaのフランス・カンタータ集より僅か前の録音で、綺麗に細い彼女なりの声にはさらに真に迫るものが加わり、よりじっくりと作品美を堪能させてくれるようになった(その点では最近のカークビーと同様か)。
 収録されている4作は独唱がオペラばりの華麗なソロを聴かせるタイプの曲で、どれもバロック後期、すなわち大半のクラシック・ユーザーにアピールしはじめるであろう時代の聴き応えある大曲ばかり。北米を中心に活躍しているカナダのカウンターテナー歌手ホワイトがアニェス・メロンと交代で独唱に立ち、こちらも忘れがたく水際立った歌唱を聴かせてくれる。そして彼らの歌にさらなる精彩を添えるのが、2006年11月に来日ツアーを控えた気鋭団体アリオン!匂い立つパッションを見事に統率しているのが、これまた古参実力派モニカ・ハジェット(!)というから嬉しい!
 ヴィヴァルディやヘンデルといったビッグネームはユーザーへのアピールにもなるし、最近密かに録音の増えているミュンヘンの鬼才フェルランディーニの秀逸作が聴けるなど玄人好みの仕掛けもある。
リュートではなく、クラヴサンで
 〜17世紀初頭、黎明期のクラヴサン音楽

 組曲 イ短調(L.クープラン、
  ガロ、ゴーティエの作品による)/
 組曲 ハ長調
 (シャンボニエール、ゴーティエ、
   ダングルベールの作品による)/
 組曲 ニ短調
 (デュフォーとゴーティエの作品による)/
 組曲 ヘ長調(ピネル、ゴーティエ、
  L.クープランの作品による)
ジョアンヌ・クチュール(Cemb)
 使用楽器:ヴォドリ1681年(ヴィクトリア&アルバート博物館所蔵)のモデルに基づきイヴ・ボプレが製作。なんと麗しくも興味深い“音のアントルメ "!リュートからの編曲ばかりだった初期クラヴサン音楽の世界を、たおやかな演奏でみごとに再現!
 これはまたきわめて興味深いアルバムなのである。というのも、最高の楽器はあくまでリュートで、クラヴサン(=チェンバロ)がまだ“新しい楽器 "だった17世紀初頭のフランスで、どのようにクラヴサンが弾かれていたかを、歴史的に理にかなったやり方で示してくれているからだ。
 そもそもフランスで当初からクラヴサンを意図して音楽が書かれるようになったのは17世紀中旬になってからで(シャンボニエールは唯一の例外的存在にすぎない)、イタリアやイギリスでチェンバロ芸術がさかんに開拓されていた17世紀初頭、何かにつけ新しいもの嫌いの(?)フランスでは、ゴーティエ父子やガロといった偉大なリュート奏者たちのレパートリーをクラヴサンで弾く機会のほうが圧倒的に多かったようだ。事実、後年のダングルベールさえリュート作品の編曲を数多く手がけている程。その上、17世紀にはかなりしばしば複数の作曲家の作品をひとつの組曲にまとめて演奏することもあった(多くの写本がそうした状況を裏づけている)。カナダの名門マクギル音大とオランダのスヴェーリンク音楽院に学んだ俊英クチュールはかくて、17世紀のリュートのために書かれた作品とクラヴサンのための作品をさまざまな写本から集め、作曲家はさまざま、調性ごとにまとめて四つの組曲を再構成したのだ。そしてフランスのクラヴサン語法に精通した演奏の、圧倒的なまでの説得力...!きわめて自然でたおやかな語り口ゆえ、すんなりと17世紀に連れ去られてしまうだろう。古楽好きにはマスト!としてお薦めしたい。解説も充実、クラヴサン音楽の概念を問い直す頼もしいアルバムだ!
ダングルベール:クラヴサンのための作品集
 ジャン=アンリ・ダングルベール(1629-1691):
  クラヴサンのための組曲 ニ短調/
  シャンボニエール氏のトンボー/
  クラヴサンのための組曲 ト短調
   (リュリの序曲やエールの編曲を多数含む)/
  クラヴサンのための組曲 ト長調
   (リュリ「ロラン」の妖精のリトルネル、
    「ファエトン」のシャコンヌを含む)
ハンク・ノックス
(クラヴィシテリウム
 [アップライト型Cemb])
 使用楽器:アルベール・ドラン1768年製作のクラヴィシテリウムに基づき、イヴ・ボプレが2002年に製作。ハープ型? キリン型? 世にも稀なるアップライトのクラヴサン。17世紀最大の名手ダングルベールのめくるめく音楽世界を水際立った名演で味わいつくす。リュリ編曲ももちろん収録!
 ルイ・クープランやフローベルガー、シャンボニエールらと並んで17世紀のフランス・クラヴサン音楽界を代表する重要作曲家ダングルベール。折にふれてアルバムのリリースはなされるものの、まだまだその数は少ない。当盤では、テレマン作品集(EMCCD-7763)でも手堅い通奏低音を聴かせ、バッハ・アルバム(EMCCD-7753)では名手ボーセジュールとともに細やかなソロを聴かせてくれている俊英ハンク・ノックスが、いかにも17世紀フランス!といった物腰柔らか&気品のただよう演奏で聴かせてくれる。
 ノックスはカナダの名門マクギル大学を卒業後パリに渡り、同郷の大先達ケネット・ジルベール(つまりケネス・ギルバート)に師事。確かに何となくこの師匠ゆずりの“気品ある穏やかさ”が感じられる弾き方をする人だ。今ではアリオンの通奏低音を支える傍ら母校マクギル大でオペラ・プロジェクトを指揮している・・・というあたりは何やらケネス・ワイスやクリストフ・ルセ、ウィリアム・クリスティといった手合いと似たキャリア形成で、組曲にダイナミックな物語性をもたせながら曲ごとの性格を綺麗に弾き分ける巧さはこの劇音楽での経験から来るものだろう。なかなか将来的にも楽しみな逸材ではないか。
 ところでこのアルバム、使われている楽器がやや風変わりなのも注目ポイント。なんと世にも珍しい“アップライト型クラヴサン”クラヴィシテリウムを弾いているのだ。基本的には一般的なクラヴサンと大差はないものの、心もち、よりはっきりと音の粒が感じられるように思われる。古い調律によるウルフトーンを介した転調も意義深長、シャンボニエールを追い落として宮廷一の名手となったダングルベールの芸風を余すところなく味わえる秀逸盤となっている。
EMCCD-7760
廃盤
「シュザンヌはある日」
 イタリア・チェンバロ音楽の250年
  〜ガブリエーリからガルッピまで
ティモシー・ロバーツ(Cemb)
「一糸まとわぬ彼女の美しさ」
 18世紀スコットランドの音楽〜伝統と、バロックと

 オズワルド:
  凍てつくような寒い朝/アヒルの足〜「四季:春」より
 伝統旋律(ビウィック編):ビールと食事の店バノック亭
 オズワルド:イーウィスの山並
 伝統旋律(エドワード・ミラー編):バランダインの山並
 伝統旋律(バルサンティ編):踊れ、踊れよ、痩身の嫁さんよ
 マクリーン:ソナタ第12番 変ロ長調
 伝統旋律(フレイザー蒐集):
  麗しき五月の朝/マーガレット・マクドナルド
 オズワルド:荒野の鐘の音〜「四季:夏」より
 伝承旋律(オズワルド編):かわいいナンシー
 N.ガウ:兄弟の死に寄せる哀歌
 J.N.N.ガウ(フレイザー蒐集):
  アイラからウイストへ漕いでゆく
 マンロウ:わらで彼女をこすりあげろ
 マクリーン: ト長調のソナタ
 マッテイス:スコットランド流のユーモアに倣ったグラウンド
 オズワルド:一糸まとわぬ彼女の美しさ/
        メアリは若くて清らかで(フレイザー蒐集)
 オズワルド:
  マギー・ラウダー/
  「四季:秋」〜くしゃみを誘う、この麦汁/
  エプロンつけた、いとしいおまえ/
  砂糖飴と、ちびのいたずらジョン/
  グリーンスリーヴズ
 作者不詳:おやすみなさい、神がそばにおられますよう
アリソン・メルヴィル
(リコーダー、トラヴェルソ)
マイケル・ジャーヴィス(Cemb)
ポール・ジェンキンズ(Cemb)
メアリ=キャスリン・フィンチ(Vc)
カーク・エリオット(Hp/G)
ベン・グロスマン(Perc)
 悠々と艶やかな、トラヴェルソとリコーダーの名技に酔う…懐かしい民謡旋律。何と豊かなスコットランドのバロック。
 ヘンデル、ジェミニアーニ、アーベル&J.C.バッハ…と、イングランド(ロンドン)やアイルランド(ダブリン)のバロック音楽は相当ディスコグラフィも充実している昨今、、、に、このところスコットランドのバロック音楽のアルバムも徐々に増えつつある。本盤はそうしたスコットランドならではの作品群の魅力を、カナダ現代が誇る古楽笛のスーパープレイヤー、アリソン・メルヴィルが縦横無尽、自由闊達な吹奏で味あわせてくれる秀逸アルバム。それも、ライト・ユーザーにもヘヴィ・ユーザーにも双方アピールする要素が詰まった有難いアルバムなのだ。
 世紀初頭に王位がイングランド王に兼任されるようになって以来、イギリスの辺境となりつつも逆に文化的伝統への情熱が高まった18世紀スコットランド。「庭の千草」などで有名な5音階の長閑な民謡には、はるばるイタリアからやってきたマッテイスやバルサンティといった連中まで魅了され、作曲家たちは変奏曲やソナタにそうした旋律をうまく織り込んでいった…ロンドンの音楽シーンの一環としてではなく、スコットランド側からバロック音楽を捉えたプログラムの綿密さもさることながら、無伴奏または通奏低音つきトラヴェルソ(4トラックほど感動的に見事なリコーダー吹奏もあり)に焦点を絞り、全体として堅苦しさとは無縁な、ニューエイジにも通じるオーガニックな癒しサウンドに仕上げているのが素晴らしい。テクニックはいわずもがな、説得力豊かな音楽運びで悠々と歌い上げられる笛の音の美しいこと!
 妖艶美麗なジャケットもまた良しでマニアだけではなく一般層も引きつけられるであろう、わかりやすくも奥深い良質盤なのだった。
バッハからモーツァルトへ
 〜最小編成によるトリオ・ソナタ集

 J.S.バッハ(1685-1750):
  フルートとオブリガート・チェンバロのための
   ソナタ ロ短調 BWV1030/
  トリオ・ソナタ第3番 ニ短調 BWV527
 カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714-1788):
  フルートとオブリガート・チェンバロのための
   ソナタ ニ長調 Wq.83
 ヨーハン・クリストフ・フリードリヒ・バッハ(1732-1795):
  チェンバロ・コンチェルタントと
   フルートのためのソナタ ヘ長調 Wf.VIII-1
 ヨーハン・クリスティアン・バッハ(1735-1782):
  フルートまたはヴァイオリンとチェロの
   序奏つきチェンバロ・ソナタ ト長調Op.2-2
 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791):
  ヴァイオリンまたはフルートの序奏つき
   チェンバロ・ソナタ ヘ長調 K.13
クレール・ギモン(Fl−tr)
ヤープ・テル・リンデン(バロックVc)
ゲイリー・クーパー(Cemb)
 実力派たち3人が揃い、4人分の音楽を響かせる!チェンバロの右手を1パートに見立てた新分野の変遷を、絶妙のアンサンブルと音色でたどる好企画。
 かたやモーツァルトの四重奏曲やテレマンの協奏曲集など、Early-Music.comで多元的な音楽性を発揮している古楽フルート奏者ギモン。かたやASVでの名盤群やレイチェル・ポッジャーと録音しているモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ集の数々で、日本の明敏なリスナーたちにも名手ぶりを印象づけている英国の気鋭古楽奏者ゲイリー・クーパー。彼ら2人の室内楽の名手が、折々に大先達ヤープ・テル・リンデンを交えながら送る「ふたりで3人分、3人で4人分」のソナタ集が登場!18世紀中盤の叙情あふれるロココ様式を、バッハの息子たちの忘れがたい作品群で堪能させてくれる。
 トリオ・ソナタは元来、低音と中音域を和声楽器が担当し、旋律部分を担当する二つの楽器のかけあいを伴奏してゆくというもの。しかし鍵盤楽器は一台でかなり充実した音楽を演奏できるから、鍵盤パートをきちんと書き込んで、旋律もひとつ受け持つ形にすれば、2人だけでもトリオができる・と「オブリガート(=必ず参加する)チェンバロ」と旋律楽器のための作品をせっせと書き始めたのが大バッハ。18世紀中〜後盤には、逆に鍵盤ソナタに「旋律楽器で助奏をつける」という形のソナタが流行(モーツァルトのヴァイオリン・ソナタも同様)。その狭間にどれほど美しく忘れがたい音楽が花咲いていたか。とにかくはまず聴いてみていただきたい。切なさと叙情、雄弁と歌心のすべてがここにある。録音の少ないJ.C.F.バッハの作品まで含め、6曲すべてが傑作…そう感じずにはおれない名演なのだ。
ゲオルク・フィリップ・テレマン(1678-1767):
 フルートやリコーダーのための協奏曲あれこれ

 2本のフルート、ヴァイオリン、弦楽合奏と
  通奏低音のための合奏協奏曲 TWV53:e1/
 リコーダー、ヴィオラ・ダ・ガンバ、
  弦楽合奏と通奏低音のための
   二重協奏曲 イ短調 TWV52:a1/
 リコーダー、弦楽合奏と通奏低音のための
  リコーダー協奏曲 ヘ長調 TWV51:F1/
 2本のフルート、ファゴット、弦楽合奏と
  通奏低音のための合奏協奏曲 ロ短調 TWV53:h1/
 2本のリコーダー、弦楽合奏と通奏低音のための
  二重協奏曲 変ロ長調 TWV52:B1/
 フルート、リコーダー、弦楽合奏と通奏低音のための
  二重協奏曲 ホ短調 TWV52:e1
ヤープ・テル・リンデン(Vc/Vg)指揮
アリオン・アンサンブル
 ピリオド楽器使用。ターフェルムジークを追い落とすカナダ最高の古楽集団、登場!テレマンの魅力を120%堪能させるエキサイティングな圧倒的名演。カナダのグラミー、ジュノー賞にもノミネート。必聴のクオリティ!
 Early-Music.com のポテンシャルを端的に味わいたければ、何はともあれ、まずはこのアルバムから聴いていただきたい。フラウト・トラヴェルソとリコーダーを核に、バロック・ファゴットやヴィオラ・ダ・ガンバなど意外なソロ楽器も入り混じりつつ闊達な技量とともに織り上げられてゆく、ヴァラエティ豊かなテレマンの協奏曲集だ。文句なしのハイ・クオリティのほどが買われて、ご存知「カナダのグラミー賞」ともいうべき大規模音楽賞であるジュノー賞のクラシカル部門にも堂々ノミネートされてしまった・・・と聞けば期待感も高まるだろうか?いや実際、その期待を裏切らない素晴らしいアルバムなのである。
 アリオン・アンサンブルはターフェルムジーク他有数の古楽団体で腕を磨いた若き奏者たちが集まり、ATMAなどカナダの既存レーベルで録音経験を積んだのち Early-Music.com を立ち上げて独立。各パートに見せ場がありそれぞれに自立性を求められるテレマンの多声協奏曲の数々こそ、彼ら一人一人の技量の確かさを印象づけるにふさわしい。リーダーのC.ギモンの修辞感覚たしかなトラヴェルソ、抑揚豊かに旋律を歌いあげるCh.レミヤールのヴァイオリン、そしてM.モーティがヘ長調のリコーダー協奏曲で聴かせる、シェークもターンもアクサンも自由自在な縦横無尽の吹きまわし(三半規管に糸を通されて思うがままに操られる思い!)、長調から短調に転じる瞬間の見事さ、まろやかに連なる細かな音符・・・そして彼ら自発性あふれる気鋭奏者たちを鮮やかに一つに纏め上げる、熟練の音楽家ヤープ・テル・リンデンの的確な指揮に舌を巻かずにはいられない(若き日のアーノンクール同様、チェロを弾きつつ指揮をしているもよう)。さらに贅沢なことに、なんとテル・リンデン自らヴィオラ・ダ・ガンバを手に1曲ソロを買って出ている。彼のガンバを聴けるなんて、大昔のMAK時代以来の快挙?たおやかに美音のリボンをはためかせるような、その鮮やかな音色がリコーダーとからむ至福の瞬間・・・。
 バロック・ファンや管楽器ファンのみならず、王道クラシック・ファンにも是非おすすめ。美麗外装ゆえ、贈答用にもぴったり。
アントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741):
 ファゴットとフルートの協奏曲集

 ファゴット協奏曲 イ短調 RV497
 フルート協奏曲 イ長調 RV428Op.10-3
  「ごしきびわ」/
 ファゴット協奏曲 ト長調 RV493/
 フルート協奏曲 イ短調 RV440/
 ファゴット協奏曲 ホ短調 RV484/
 協奏曲 ト短調 RV104「夜」(Op.10-2 の異版)/
 ファゴット協奏曲 変ロ長調 RV503
マテュー・リュシエ(Fg)
クレール・ギモン(Fl)
アリオン・バロックo.
 ピリオド楽器使用。大本命のヴィヴァルディ協奏曲集!緩急自在のトラヴェルソ、粋なバロック・ファゴットの妙味あふれるブロウ、上気する弦…技巧的なファゴット協奏曲から傑作標題音楽「夜」の異版まで、完成度120%の名録音!
 フランス語圏カナダに冠たる古楽アンサンブル・アリオン。バロック・ファン待望の!といった感のあるヴィヴァルディ協奏曲集。原題に“キアロスクーロ(明暗法) "とある通り、高音の妙味と中低音の味わいのコントラストを独奏楽器の音色で楽しんでもらおうという企画。同じヴィヴァルディでも昨今イタリア/フランス勢が名盤を連発している弦楽器のための協奏曲ではなく、なにげに名作揃いのファゴット協奏曲と注目作・有名作の多いフルート協奏曲に焦点を当ててきたのも憎いところ!しかし何より、演奏が素晴しい。レーベル主宰者が「誇りに思える名演」というだけある充実度! ある時はヴィヴィッドに興奮をさそい、ある時はしっとりと叙情を描き出す極小編成の弦楽陣の上で、トラヴェルソはまろやかな音色で自由自在に歌い、バロック・ファゴット(これがまた妙音で!)は的確なリズム感と流麗な歌心で、どこまでも味わい深い旋律線を描き出す……通奏低音に加わるバロックギターのかき鳴らしもエキサイティングに興を添え、あっという間に聴き通してしまうほど!有名なフルート協奏曲「夜」はファゴットを入れた異版での演奏、両独奏楽器の対象を美しく面白く聴かせてくれるのも魅力。ヨーロッパ勢とは微妙に違う、アングロサクソン的精確さとラテン的な自発性の融合に独特の余裕感が加わった絶妙のプレイ。ぜひご注目頂きたい!
J=F.ルベル(1666-1747):
 18世紀のバレエ音楽

 組曲「テルプシコル」/組曲「舞踏さまざま」/
 カプリース(気まぐれ)/組曲「田園の悦楽」/
 ファンテジー(幻想)/組曲「四大元素」
ダニエル・キュイエ指揮
アリオン・バロックo.
 ピリオド楽器使用。ストラディヴァリアの主宰者を客演指揮に迎え、まさに「みずみずしい」の一言!整然と揃いつつニュアンス豊かな弦音、のどかに歌うオーボエ、通奏低音のアクセント...次々と移り変わる変幻自在のリズムがかもし出す幻想気分は、ヴァトーの雅宴画そのもの!
 ダニエル・キュイエといえば、古くは今はなきADDA、今ではCypresやMirareで数多くの名盤を制作しているEns.ストラディヴァリアの主宰者で、フランス古楽シーンの草分け的バロック・ヴァイオリン奏者。そのキュイエが、フランス語圏カナダきっての古楽集団アリオンに客演指揮として登場! バッハやラモーの同時代人、変幻自在のリズムの魔術師ともいうべきルベルのバレエ音楽をぎっしり詰め込んだ極楽バロック・アルバムを作り上げた。
 当時のフランスでバレエ振付師といえば百発百中ヴァイオリニストだったそうだが、キュイエも長年レザール・フロリサンのコンマスとしてフランス劇音楽の様式をつちかった人ゆえにか、こうしたバロック舞踏曲のまとめ方・緩急のつけ方のセンスは超一流!整然と揃いつつニュアンス豊かなアリオンの音楽性をぞんぶんに生かしながら、みずみずしく連ねられるサウンドはまさに絶品!
知られざるテレマン 〜未知の領域へ
 ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681-1767):
  序曲 (管弦楽組曲) ニ長調 TWV53:C1
   〜2本のオーボエ、2艇のヴァイオリン、
   リコーダー、ファゴット、弦楽合奏と
   通奏低音のための/
  フランス風協奏曲 ハ長調 TWV53: C1
   〜2本のオーボエ、ファゴット、
   弦楽合奏と通奏低音のための/
  フルート協奏曲 ト長調 TWV51: G2/
  序曲(管弦楽組曲) ホ短調 TWV55: e8
   「オンファールの竪琴」〜
   弦楽合奏と通奏低音のための/
  序曲(管弦楽組曲) 変ホ長調 TWV55: Es1
   〜2本のホルン、弦楽合奏と通奏低音のための
ヤープ・テル・リンデン 指揮
アリオン・バロックo.
 (ピリオド楽器使用)
 これはバッハの曲では・・・などという意外なサプライズもあり。「現存作品8,000曲以上」の伝説はだてじゃない、まだまだ嬉しい発見は続く。多作な職人芸術家テレマンの至芸を堪能できるフルコース、味わい深い極上演奏で。
 フランス語圏カナダ発の強力古楽アンサンブル、アリオンによるテレマン作品集は本レーベルでも今回で2作目。5曲それぞれに演奏編成が多彩なのも嬉しいのに加えて、フランス風組曲、アンチ・イタリア様式な協奏曲、オーセンティックなソロ・コンチェルト...と曲種も多彩でそれぞれ「今までになかった」感が必ずどこかにあり、聴いていて飽きようがない。各奏者共ソリスト級のヴェテランなせいもあるだろうし、英国的上品さとフランス的香り高さを兼ねそなえた、このグループ特有のセンスがこれまた絶品なせいもあるのだろう。一番普通っぽい3曲目さえ結構クセもので、なんとバッハの超有名曲の「原曲」がこのテレマン作品という意外な発見。どこをとっても手抜きのない、慈しみをもって作られたアルバムになっている。
フレスコバルディ:鍵盤のための作品集
 カプリッチョ集第1巻(1624)より
 [ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラのカプリッチョ/
  ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ドのカプリッチョ]/
 トッカータとパルティータ集第2巻(1627)より
 [カンツォーナ第1・2・3・4番/
  トッカータ第1・7番/ガリアルダ第2・3番/
  コルレンテ第1番]/
 トッカータとパルティータ集第1巻補遺(1637)より
  パッサカーリャによる100の変奏/
 フランス風カンツォーナ集(歿後刊、1645)より
  アリア「バレット」
ハンク・ノックス(Cemb)
 ケネス・ギルバート門下の天才が、正統的なイタリア楽器で奏でる至福の15トラック。純正調律ならではの特質を活かした不協和音のニュアンスは、なんともセクシー。これぞバロック、これぞチェンバロ。じっくり聴きたい、フレスコバルディ芸術の精髄。
 フランス語圏カナダの古楽シーンは近年ますます盛り上がっており、ご存知・名門ターフェルムジークとEarly-Music.comでおなじみのアリオン・バロックo.、ふたつの気鋭団体が合同で交響曲演奏会を行うような大規模な催しも、もはや珍しくないとか。パリで同郷の巨匠ケネス・ギルバートに師事、アリオンの通奏低音を支える名手ハンク・ノックスも、今や同アンサンブルとともにすっかり「地元の名匠」として地盤を築きつつある(末はバークリーのダヴィット・モロニーのように、ヨーロッパからも頼られる存在になるのだろうか)。数年前にも、録音が意外に少なかった“リュリの通奏低音奏者 "ダングルベールのクラヴサン作品集を録音、フランス語圏人ならではの適性と端正な表現のみごとな均衡でファンを驚かせてくれた。この「弾き崩しすぎない絶妙のライン」をどこに定めるかによって、チェンバロ音楽の印象はがらりと変わってくるもの。そういう意味で、今度新たに登場したこのフレスコバルディ作品集は出色の仕上がり、といえるだろう。
 モンテヴェルディの同時代人、イタリア・バロック最初の世界的鍵盤奏者にして、ある意味ではルネサンス最後の巨匠ともみなしうるこの偉人が手がけた数多い鍵盤のための傑作群から、舞曲・トッカータ・変奏曲...と各ジャンルの逸品をバランスよく収録したこのアルバム、作曲者の精緻な設計を周到にふまえつつ、古い1/4コンマ・ミーントーン調律の特性を完璧に掌握、随所にひそむ不協和音や音程進行の妙をさりげなく際立たせる「絶妙のライン」
 もしCD1枚で端的にフレスコバルディ芸術を堪能するなら、今は迷わずこのアルバムがお奨め。
コレット:ノエル四重奏曲とコミック協奏曲
ミシェル・コレット(1707-95):
 「四重奏編成のサンフォニーによる
  フランス内外のノエル6様」(1781)より
 [サンフォニー第2番 ニ長調/
  サンフォニー第4番 ニ短調/
  サンフォニー第5番 イ短調/
  サンフォニー第6番 イ短調]
 コミック協奏曲5様
 [第4番 イ短調「カドリーユ」(1733)/
 第7番 ハ長調「高級タバコを吹かす人」(1733)/
 第19番 イ長調「トルコ」(1752頃)/
 第24番 ハ長調「ユロンの歩み」(1760頃)/
 第25番 ト短調「未開人たち」(1760頃)]
アリオン・バロックo.
 (ピリオド楽器使用)
 異才コレット、ピリオド楽器の響きをさわやかに。トラヴェルソとガット弦の重なるなかしゃらりとチェンバロが絡む、フランス・ロココのクリスマス音楽をどうぞ。
 コレットといえば、マレの『膀胱摘出手術』、シュメルツァーの『フェンシング指南』、ファリーナの『酔狂なるカプリッチョ』...などとともに、折々バロック期の冗談音楽として扱われる一連の「コミック協奏曲」なる変り種音楽の作曲者として知られる人。もっとも、彼が活躍したのはルクレールやラモーが有名になりはじめた頃から、モーツァルトが青年になってからパリに来た頃くらいまで、つまり厳密に言うとむしろロココ〜古典派時代。パリでは1760年代、ハイドンが交響曲を書き始めた頃にもまだヴィヴァルディの『春』が人気だったくらいバロック趣味を引きずっていたので、コレットのうすらバロック然とした作風にも何ら古めかしさはなかったのだろう。この酔狂な作曲家の書く音楽ときたら、冗談めいたトリックぬきに、メロディセンスは抜群もいいところ、和音推移は驚くほどキレイだったり意表ついたり、そもそものレヴェルがきわめて高いのから
 しかし冗談音楽の傍流作曲家とでも思われているのか、ちょくちょくリリースのあるオルガンもの以外ではなぜか、コレット単体での合奏曲の録音がなかなか出てこないのは何とも残念。そこへ登場したのが、このアリオン・バロックo.による傑作アルバム。
 最小限に絞られた室内楽編成で織り上げられる音楽のまあ綺麗なこと。前半は「ノエル」と呼ばれるクリスマス音楽をロココ流儀の四重奏に仕立てたもの。トラヴェルソの素朴な木のぬくもり、たおやかに揺れるガット弦の響き、そこにシャラリとからむクラヴサンが、キラキラとクリスマスにぴったりのサウンドを醸し出す。後半「コミック協奏曲」では、随所で耳に快いフランス民謡が次々と出て来る
ハイドン(1732-1809):交響曲集
 〔第41番 ハ長調 Hob.I-41 (*) /
  第49番 ヘ短調 Hob.I-49「受難」/
  第44番 ホ短調 Hob.I-44「悲しみ」
ゲイリー・クーパー指揮
アリオン・バロックo.
 録音:2008年11月24日-26日、 Saint-Augustin-de-Mirabel 教会、ケベック、カナダ。(*)はハイドンが当初意図した楽器 [composer’s originally intended] で演奏したものとしては、世界初録音になるとの事。
ドメスティック・オペラ〜ウィリアム・ベイベル(1690頃-1723):
 自編の組曲と、鍵盤楽器用編曲によるヘンデルの歌劇からの序曲とアリア集

  ウィリアム・ベイベル:組曲第1番 (Suits of the Most Celebrated Lessons) (*)
  ヘンデル(1685-1759)/ウィリアム・ベイベル編曲:「忠実な羊飼い」より (*)
     〔序曲/エア/エアとメヌエット/ラルゴ/アレグロ〕
  ウィリアム・ベイベル:組曲第2番 (Suits of the Most Celebrated Lessons) (#)
  ヘンデル/ウィリアム・ベイベル編曲:
   「セメレ」より (+)〔序曲/ガヴォット〕/「ラダミスト」〜序曲 (+)
  ウィリアム・ベイベル:組曲第4番
   (Suits of the Most Celebrated Lessons; ヘンデル:「リナルド」より) (*)
 ハンス・ノックス(Cemb)
 録音:2007年2月7日-9日、 Benton Fletcher Collection at Fenton House, ロンドン。使用楽器:Burkat Shudi & Johannes Broadwood, 1770 (*) / Burkhat Shudi, London, 1761 (#) / Jacob Kirckman, London, 1752 (+)。
 第4組曲以外も全てがベイベルの自作ではなく、ヘンデルの「リナルド」やガスパリーニの作品などからの編曲が多く含まれている。
C.P.E.バッハ:王子のための音楽
 シンフォニア ハ長調 Wq.182-3 H.659 /
 協奏曲 ヘ長調 Wq.38 H.454 /
 交響曲 ロ短調 Wq 182-5 H.665 /
 フルートと弦楽のための協奏曲 ニ長調 Wq.22 H.482-1
クレール・ギモン(Fl)
ゲイリー・
 クーパー(Cemb)指揮
アリオン・バロックo.
 録音:2009年11月23日-25日、 Saint-Augustin-de-Mirabel 教会、ケベック、カナダ。


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