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APARTE
EVIDENCE


特記以外 1枚あたり¥3300(税抜¥3000)


 音のよさ、クオリティの高さで定評のある AMBROISIE レーベルのプロデューサー、ニコラス・バルトロメーが2009年に立ち上げたレーベル。EVIDENCE (EVCD記号) は APARTÉ (AP記号) の妹的な役割を担い、フランスの若手を中心としたリリースを目的として2014年からリリースを開始。
APARTÉ
異教の夜
 ゴベール:異教の夜(*) / イベール:2つの東洋の歌碑(*) / エマニュエル:3つのアナクレオン風オドレット(*)
 カプレ:おいで、見えない笛よ(*) /私の心を聞いて(*) / ラヴェル:「シェエラザード」〜魔法の笛(*)
 ケクラン:2本のフルートのためのソナタ Op.75 (+) /秋の詩 Op.13 〜睡蓮
 ルーセル:ロンサールの2つの詩 Op.26 (#)/笛吹きたち Op.27 / ドラージュ:ルーセル讃歌
 ドビュッシー:パンの笛(朗読付) / ジョルジュ・ユー:異教の夜

 アレクシス・コセンコ(Fl) エマニュエル・オリヴィエ(P)
 アンナ・ラインホルト(Ms;*) サビーヌ・ドゥヴィエル(S;#) マガリ・モニエ(Fl;+)
 録音:2019年4月8日-10日、5月20日、サン・ピエール教会、パリ。古楽指揮者としても名高いアレクシス・コセンコがモダーン・フルートで録音した最新盤。近代フランスの作曲家がフルートを効果的に用いた作品を集めた興味深いもので、その使用法は多種多様。歌曲にフルートの助奏を加えることは古今東西の作曲家が試みているが、自身が名フルート奏者だったゴーベールから、やはりフルート曲で知られるジョルジュ・ユーの同じ詩によるものまで多数収録。いずれもギリシャ風な東洋色が新鮮。そのほかフルート2本によるケクランのソナタでは注目の若手マガリ・モニエと共演しているほか、ドビュッシーの「パンの笛」ではメゾ・ソプラノのアンナ・ラインホルトが朗読しているのも注目。コセンコのイニシアチヴと多彩な表現力に驚かされる。
アンカンタシオン
 ブルッフ:コル・ニドライ Op.47 / ヴィターリ:シャコンヌ
 サン=サーンス:交響詩「死の舞踏」 Op.40 / チャイコフスキー:ゆううつなセレナード Op.26
 ブロッホ:ニーグン / ショーソン:詩曲 Op.25 / 梅林茂:「夢二」のテーマ

 ヴィルジル・ブテリ=タフト(Vn) ヤク・ファン・ステーン指揮ロイヤルpo.
 録音:2019年7月、ロンドン。ヴィルジル・ブテリ=タフトはフランスの若手ヴァイオリニスト。トゥールとパリの音楽院に学んだ後、ブダペスト、ロンドン、テルアヴィヴで研鑽を積んだ。こだわりのレパートリーで注目されている。最新盤はオーケストラ伴奏によるが、いずれの曲もヴァイオリンが甘美なメロディを歌うのではなく、意味深でやや暗い曲調をミステリアスに奏で聴き手を独特な世界へ誘う。香港のウォン・カーウァイ監督の「花様年華」(2000)からの「夢二」のテーマが聴き物。かつてロックバンドEXのリーダーとして活躍、その後数々の映画音楽で知られる梅林茂の作で、ギドン・クレーメルも録音して話題になった。
AP-226
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(2CD)
ヴィヴァルディ:協奏曲集
 チェロ協奏曲 ト短調 RV.416 /歌劇「救われたアンドロメダ」〜 Souvente il sole RV Anh.117 Ms /
 2つのチェロのための協奏曲 ト短調 RV.531 Vc2 /チェロとファゴットのための協奏曲 ホ短調 RV.409 Fg /
 ピッコロ・チェロのための協奏曲 ト長調 RV.414 /弦楽と通奏低音のためのシンフォニア ハ長調 RV.112 /
 2つのヴァイオリンと2つのチェロのための協奏曲Vn/Vc2 /
 チェロ協奏曲 変ロ長調「テレーザのために」〜ラルゲット(再構築:オリヴィエ・フレ)/
 ピッコロ・チェロのための協奏曲 ロ短調 RV.424 /歌劇「ティート・マンリオ」〜緑のオリーヴの枝でA
 チェロ協奏曲 ニ短調 RV.405 /チェロ協奏曲 イ短調 RV.419(アレグロ)

 オフェリー・ガイヤール(Vc)指揮プルチネッラo.
 ルシール・リシャルドー(MsMs) デルフィーヌ・ガル(AA
 酒井淳(Vc2Vc2) ハビエル・ザフラ(FgFg
 パブロ・ヴァレッティ、マウロ・ロペス・フェッレイラ(VnVn
 録音:2019年8月27-9月3日、パリ。親密な音色と感性豊かな音楽が人気のチェリスト、ガイヤール。最新盤は、ヴィヴァルディの協奏曲集。ガイヤールはここでチェロ独奏とアンサンブルによる協奏曲のほか、2〜4人のソリストとアンサンブルによる協奏曲をプログラム。ソリストの共演陣も、チェロの酒井淳(齋藤秀雄メモリアル賞、レコード・アカデミー賞等受賞)、フライブルク・バロックo. のファゴット奏者ハヴィエル・ザフラらという豪華な顔ぶれ。1737年頃ピエタ慈善院にいたテレーザ(1721年生まれ)という若きチェロ奏者のためにヴィヴァルディは3作のチェロ協奏曲を作曲した。残念ながらそれらは現在ヴィオラ・パートのみが伝わっているという状況だが、ここでガイヤールは“テレーザのために "と題された 変ロ長調の協奏曲の緩徐楽章を再構築している。さらに、ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 RV.179/581のカデンツァも挿入している。歌劇「救われたアンドロメダ」RVAn H.117が雲の中からさっと射す光のようだ。ヴィヴァルディ作品の色彩感と陰影に富んだ世界を堪能できる2枚組。
ナディア・ブーランジェ:祈り/愛の詩/ヴェルサイユ/聴け、とても甘き歌を/
            ナイフ/うつろな時/冬の夕暮れ/エレジー/海
リリー・ブーランジェ:4つの歌〔限りなき悲しみに/期待/反映/回帰〕
ナディア・ブーランジェ、ラウル・プーニョ:明るい時(全8曲)
 シリル・デュボワ(T) トリスタン・ラース(P)
 録音:2018年3月、パラッツェット・ブルー・ザーネ。教育者として名高いナディア・ブーランジェは妹リリーの天才性を前に作曲を諦めたと言われている。そのナディアの歌曲を17曲も収めた好企画。ただし、8曲からなる歌曲集「明るい時」は名ピアニストのラウル・プーニョと共作。カップリングにリリーの「4つの歌」も収めているが、ナディアの作も決してひけをとらぬ仕上がりと魅力にあふれている。フランスのテノール、シリル・デュボワはパリ音楽院でナタリー・デッセーらに学び、もっぱらオペラ界で活躍している。ブーランジェ姉妹の歌曲を10年来温めてきたそうで、説得力あふれる世界を作りあげている。
Brillez, astres nouveaux!
 ベルナール・ド・ビュリ、ラモー、ロワイエ、カルドンヌ、
 ルクレール、モンドンヴィル、ドーヴェルニュ、ボワモルティエ/他の作品

 シャンタル・サントン・ジェフリー(S) ジェルジ・バシェギ指揮オルフェオo.、パーセルcho.
 録音:2017年11月。フランス・バロック音楽のスペシャリストであるシャンタル・サントン・ジェフリーが歌うフランス・バロックの魅力がつまったプログラム。独唱者にも大人数が必要となる合唱にもヴィルトゥオジティが要求されるが、ここで展開されている演奏はあまりにも見事。当時の演奏者たちのレヴェルの高さはいかほどだったのだろうと時空を越えて思いを馳せてしまう1枚。
ブラームス
 幻想曲集 Op.116 /3つの間奏曲 Op.117 /
 6つの小品 Op.118
オルタンス・
 カルティエ=ブレッソン(P)
 録音:2019年4月、リトル・トリベカ、パリ。オルタンス・カルティエ=ブレッソンはフランスを本拠に活躍する女流。高名な写真家アンリ・カルティエ=ブレッソン(1908-2004)はいとこだという。彼女は長年パリ音楽院で教鞭をとるかたわら精力的に演奏活動も行なっている。最新盤はブラームス最晩年の小品集3点。深い寂寥感に翳りながらも、どこかフランス的な洒脱さも感じるベテランならではの説得力に満ちている。
AP-220
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(2CD)
ショパン:ノクターン集
 〔ホ短調 Op.72(遺作)/嬰ハ短調(遺作)/第1番 変ロ短調 Op.9 No.1 /第2番 変ホ長調 Op.9 No.2 /
  第3番 ロ長調 Op.9 No.3 /第4番 ヘ長調 Op.15 No.1 /第5番 嬰ヘ長調 Op.15 No.2 /第6番 ト短調 Op.15 No.3 /
  第7番 嬰ハ短調 Op.27 No.1 /第8番 変ニ長調 Op.27 No.2 /第9番 ロ長調 Op.32 No.1 /
  第10番 変イ長調 Op.32 No.2 /ハ短調(遺作)/第11番 ト短調 Op.37 No.1 /第12番 ト長調 Op.37 No.2 /
  第13番 ハ短調 Op.48 No.1 /第14番 嬰ヘ短調 Op.48 No.2 /第15番 ヘ短調 Op.55 No.1 /
  第16番 変ホ長調 Op.55 No.2 /第17番 ロ長調 Op.62 No.1 /第18番 ホ長調 Op.62 No.2 〕

 ブルーノ・リグット(P)
 録音:2019年2月25日-28日、サル・コロンヌ、パリ。巨匠ブルーノ・リグット、久々の新録音の登場。リグットはイタリア人の父とフランス人の母の間にパリで生まれ、サンソン・フランソワの唯一の弟子だったことでも知られている。1965年にロン=ティボー国際コンクールに入賞、1966年にはチャイコフスキー国際コンクールでも入賞し、以降国際的に活躍している。教育者としても高名で、弟子にはリーズ・ドゥ・ラ・サールら、国際的に活躍しているピアニストを輩出している。今回リグットが録音したのは、ショパンのノクターン。1970年代にも何曲か録音しているが、このたび全集としてあらためて録音、作曲年代順に収めている。師フランソワからも「素晴らしい音色と即興的なセンス、そしてロマンティックな詩の心をたくさんもっている」と絶賛されたリグットらしく、非常にロマンティックな演奏。そして左手の低音がなんともふくよかに響くのが印象に残る。
バッハとヘンデル、架空の出会い
 J.S.バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第4番 ハ短調 BWV.1017
 ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 HWV.371
 J.S.バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第5番 ヘ短調 BWV.1018
 ヘンデル:ヴァイオリン・ソナタ ニ短調 HWV.359a
 J.S.バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第6番 ト長調 BWV.1019

 リナ・トゥール・ボネ(Vn) ダニ・エスパーサ(Cemb)
 録音:2019年4月29日-5月1日、スペイン。同じ1685年生まれで対照的な人生を歩んだバッハとヘンデル。バロック時代の最重要作曲家に数えられるふたりは生涯会うことは無かった。このアルバムはバッハとヘンデルのヴァイオリン・ソナタを交互に演奏し、その作風の違いを聴きながら、ふたりの歴史的な音楽家の邂逅を夢想するもの。注目のヴァイオリニストとして人気の高まっているスペインの女流奏者リナ・トゥール・ボネ。思い切りがよく、明るく溌剌とした演奏が彼女の特徴と言える。自らのアンサンブル「ムジカ・アルケミカ」のメンバーでもある鍵盤奏者、ダニ・エスパーサとの息の合ったやりとりも鮮やか。バッハでは複雑な対位法の綾をキラキラと粒立ち良く響かせ、ヘンデルでは大らかな旋律と懐の深い和声を自然に屈託なく響かせる。ひとりの演奏家が自分の個性を刻み付けつつ交互に演奏することにより、かえって作曲家ごとの違い、互いに到達したそれぞれの高みが鋭い対比となって現れて来る。
テレマン(1681-1767):フランクフルト・ソナタ集
 〔第1番 ト短調/第2番 ニ長調/第3番 ロ短調/第4番 ト長調/第5番 イ短調/第6番 イ長調〕

 ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(Vn) アンネキャスリン・ベレル(Vc)
 トルステン・ヨハン(Cemb/ポジティブOrg) トーマス・C.ボイセン(テオルボ)
 録音:2018年5月15日-18日、フライブルク。フライブルク・バロックo. のコンサートマスター兼指揮者として世界で高く評価されているゴルツが、テレマンが若いころに書いたヴァイオリン・ソナタ集を録音。あまり録音機会のないこれらの作品の、注目の1枚の登場。テレマンは1715年にクラヴサンを伴うヴァイオリンのための6つのソナタ集をフランクフルトで出版した。1708-1712年、テレマンはアイゼナハの宮廷の楽長兼第1ヴァイオリン奏者を務めながら、セレナーデ、カンタータ、室内・管弦楽作品、宗教音楽を作曲し、自身もバリトン歌手として様々な自曲の演奏に参加もしていた。1711年に妻が亡くなり、テレマンはフランクフルトの地に移ったと考えられる。これらのソナタはヨハン・エルンスト4世に捧げられている。すべて4楽章から成り、教会ソナタ(緩―急―緩―急)のスタイルをとっている。当時の出版譜にはヴァイオリンとクラヴサンのための、と記されているが、ここでは楽曲によって通奏低音パートの編成をチェンバロ、チェロ、オルガン、テオルボからふさわしい組み合わせを考慮して演奏されている。テレマンが若き日に書いた旋律が、ゴルツの確信に満ちた表現と、豊かにして輝かしいサウンドで見事に薫りたつ。
AP-216
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(2CD)
リュリ(1632-1687):歌劇「イシス」(全曲|プロローグと5幕からなる音楽悲劇)
 エヴ=モー・ユボー(Ms;タリー/イシス/妖精イオ)
 ベネディクト・トラン(S;名声/メルポメーヌ/ミセーヌ/ジュノン)
 アンブロワジーヌ・ブレ(Ms;カリオプ/イリス/シランクス/エベ)
 シリル・オヴィティ(T;アポロン/ピラント/フュリ)
 エドウィン・クロスリー=メルセル(B−Br;ジュピター/パン)
 フィリップ・エステフ(Br;ネプチューン/アルゴス) ファビアン・イオン(T;メルキュール)
 エムリー・ルフェーヴル(Br;イエラ) ジュリー・カルベート、ジュリー・フェルコテレン(二人の妖精)

 クリストフ・ルセ指揮レ・タラン・リリク、ナミュール室内cho.
 録音:2019年7月11日、13日-14日、サル・ガヴォー。サリエリの歌劇「タラール」(世界初録音)で2019年度アカデミー賞オペラ部門を受賞したルセ率いるレ・タラン・リリク。次なるオペラ新譜は、リュリの「イシス」。全曲録音は、2005年のレーヌのものから約15年ぶりとなる。この「イシス」は、ローマ神話や古代エジプトの要素をとりいれた、愛と嫉妬の物語。ジュピターが妖精イオを宮廷に迎えたことによって起きる恋愛騒動を描いている。当時の宮廷でも太陽王のお気に入りだったモンテスパン夫人が同様のシチュエーションにあるとして、夫人は台本作家キノーを追放するという事態にまで発展した。最終的にイオは女神イシスとなるが、その物語を音楽化したリュリのオーケストラの手腕は見事。氷の世界での凍えるようなコーラス(パーセルにも影響を与えた)、フルートが妖精シランクスを模倣するシーンも絶品。冒頭のフランス風序曲の絶妙なテンポ感と気品からオペラの世界に引き込まれる。素晴らしい器楽奏者による切れのよい管弦楽、そして見事な合唱団と歌唱陣によって、イシスという作品がもつ優雅な雰囲気と魅力のすべてが引き出された名演の登場。
モーツァルト:初期交響曲集
 交響曲〔第1番 変ホ長調 K.16 /第4番 ニ長調 K.19 /ヘ長調 K.An H.223/19a /
     第5番 変ロ長調 K.22 /ト長調 An H.221/45a 〕/
 コントルダンス K.609 〔第2番 変ホ長調/第3番 ニ長調/第1番 ハ長調/第4番 ハ長調/第5番 ト長調〕

 ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(コンサートマスター)フライブルク・バロックo.
 録音:2019年2月。モーツァルト若書きの交響曲を、古楽オーケストラの雄、フライブルク・バロックo. の演奏で。交響曲第1番は1764年、モーツァルトが8歳の頃の作品。習作的だとも言われてはいるが、やはりまさに「神童」モーツァルトをあらためて実感させられる作品。他の作品も子供の頃のモーツァルトがどんな風だったか、そして、その先に書くこととなる傑作の数々の萌芽がみられるものばかり。フライブルク・バロックo. が、実に活き活きと、そしてエレガントに奏でる。交響曲の間に挿入されているコントルダンスは、1791年に作曲されたとされている、モーツァルトの最後の舞曲。管楽器はフルートが入るのみの編成だが、第1番は「フィガロの結婚」の有名なアリア「もう飛ぶまいぞ」の旋律を主題とした楽しい舞曲となっています。ほかにもにぎやかに太鼓の音がとどろく軍楽調の第3番など、交響曲からオペラまでモーツァルト作品を知り尽くしたFBOの面々だからこそ可能な、愉悦の極みの名演となっている。
AP-213
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(2CD)
ALL SHALL NOT DIE 〜ハイドン:弦楽四重奏曲集
 〔ニ長調 Op.50 No.6「蛙」/ニ短調 Op.76 No.2「五度」/ハ長調 Op.54 No.2 /
  ト長調 Op.33 No.5「ごきげんいかが」/ヘ短調 Op.20 No.5 /ヘ長調 Op.77 No.2 〕

 ハンソンSQ[アントン・ハンソン、ジュール・ドゥサップ(Vn)
        ガブリエル・ラフェ(Va)シモン・デュシャブル(Vc)]
 録音:2018年11月、2019年3月。2013年結成のハンソン四重奏団による初CD 、ハイドンの登場。思わずはっとさせられるような美しくもみずみずしい音色、そして作品の神髄までを極めた者にしかためし得ない深みのある対話が魅力。ハンソン四重奏団は2013年に、ハット・バイエルレ(ヨーロッパ室内音楽アカデミー)、エベーヌ四重奏団、そしてジャン・シュレムらのアドヴァイスによって結成された。ハイドンの弦楽四重奏曲を柱にしながら、細川俊夫、ヴォルフガング・リーム、マティアス・ピンチャーらといった現代の作曲家作品までをも演奏するマルチな才能を持つアンサンブル。2016年ジュネーヴ国際音楽コンクール第2位、同年ヨーゼフ・ハイドン室内音楽コンクール第2位(ハイドン・プライズ、聴衆賞、20世紀作品のベスト演奏賞も同時受賞)するなど世界がその実力を認めている。タイトルのALL SHALL NOT DIEは、すべてが死ぬというわけでもない、といった意味の、ハイドンも引用したことのあるラテン語(Non omnismoriar)。まさにこれらのハイドンの作品が、今なお生き生きとした対話となって響きわたっている。
アントン・ライヒャ〔アントニーン・レイハ〕(1770-1836):
 8つの楽器のための室内大交響曲第1番 ニ長調(*)
ベートーヴェン:ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、クラリネット、
         ホルンとバソンのための七重奏曲 変ホ長調 Op.20
 ジュリアン・ショヴァン(Vn) ル・コンセール・ド・ラ・ローグ団員
 [アンエ・カミロ(Vn;*) ピエール=エリック・ニミロヴィチ(Va)
  ジェローム・ユイル(Vc) ミシェル・ゼオリ(Cb) アントワーヌ・トルンチュク(Ob;*)
  トニ・サラール・ヴェルドゥ(Cl) ハヴィエル・ザフラ(Fg) ニコラ・シュドマイユ(ナチュラルHr)]
 録音:2019年2月| (*):世界初録音。2017年、ジュリアン・ショヴァンらは、BNFの音楽部門に寄贈されたアーカイヴを調査していた際、失われたと考えられていたライヒャの「9つの楽器のためのグランド・サンフォニー・ド・サロン(室内大交響曲)」(このCDに世界初録音している)、そして他にも10の楽器のための同タイプの作品を発見した。いずれの作品も、明らかにライヒャによるものと断定できる自筆譜のほか、演奏の際に用いられたパート譜(こちらは筆写譜)がそろって残されていた。ここに収録された9つの楽器のための作品をレコーディングするにあたり、演奏者たちは、19世紀初頭の楽器を用い、さらに実にパリジャン的な雰囲気の、優れた音響を備えたサロンで録音することができた。このことにより、実にパリ的な空気に満ちた響きの演奏をたのしむことが出来る。
ハイドン:交響曲第87番 イ長調
アントニオ・ザッキーニ(1730-1786):私がほしいのはあなたの優しさ
グルック:「オルフェオとエウリディーチェ」〜なんと惨めな生活なのだろう
ジャン=バティスト・ルモワーヌ:「フェードル」〜彼は来るだろう
ヨハン・クリストフ・フォーゲル:「デモフォン」〜おお黄金の時よ
アンドレ=エルンスト=モデスト・グレトリー:「サムニウム人の結婚」〜おお運命よ!
ルイ=シャルル・ラグエ:交響曲 ニ短調 Op.10 No.1

 ゾフィー・カルトホイザー(S)
 ジュリアン・ショヴァン指揮ル・コンセール・ド・ラ・ローグ
 録音:2018年10月、2019年3月。ジュリアン・ショヴァンの率いるル・コンセール・ド・ラ・ローグによるハイドンのパリ交響曲とその同時代の作品をレコーディングしていくプロジェクト。今回は交響曲第87番。さらに、その表情豊かな声で世界を魅了しているソプラノ、ゾフィー・カルトホイザーをゲストに迎えてのアリア集、というプログラム。ル・コンセール・ド・ラ・ローグのモデルとなったのは、1783年に設立され、ハイドンの「パリ交響曲」を献呈されたコンセール・ド・ラ・ローグ・オランピック。ここに収録されたハイドンの交響曲以外もすべてこの団体に捧げられた物。ハイドンの交響曲以外はほぼすべて歴史に埋もれてしまっていたが、カルトホイザーの表情豊かな歌唱と、ショヴァン率いる管弦楽の見事さで、かつての光を取り戻したようだ。
太陽王のオペラ
 ルイ・(ド・)リュリ(1664-1734):「オルフェ」(1690) 〜 Ah ! que j’éprouve bien que l’amoureuse flamme
 マラン・マレ:
  「アルシオーヌ」(1706) より〔序曲/ Marche pour les Matelots /船員たちの第2のエア〕/
  「アリアーヌとバッカス」(1696)より〔 Croirai-je, juste ciel ! ce que je viens d’entendre ? /
                     眠りのサンフォニー/フルートのためのエア/ロンドー〕
 カンプラ:「イドメネ」(1731年版) より
   〔シャコンヌ/ Espoir des malheureux, plaisir de la vengeance / Coulez, ruisseaux ; dans votre cours〕/
      「優雅なヨーロッパ」(1697) 〜 Mes yeux, ne pourrez-vous jamais /
      「テレフ」(1713) より〔サラバンド/ Soleil, dans ta vaste carrière / Charmant Père de l’harmonie /
                  Quelle épaisse vapeur tout à coup m’environne ?〕
 ジャン=バティスト・リュリ:「アシとガラテ」(1686) 〜 Enfin, j’ai dissipé la crainte /
               「ブシュケ」(1671) 〜 Deh, piangete al pianto mio /
               「町人貴族」(1670)〜トルコ人の儀式のための行進曲
 デマレ:「キルケー」(1694)より〔 Sombres marais du Styx, Cocyte, Phlégéton / Calmez votre violence 〕
 ジャン=バティスト・シュトゥック:「 Air ajouté à Thétis et Pélée 」(1708) 〜 Non sempre guerriero /
                  「ポリドール」(1720) 〜 C’en est donc fait : le roi n’a plus de fils
 モンテクレール:「夏の祭典」(1716) 〜 Mais, tout parle d’amour dans ce riant bocage !

 キャスリーン・ワトソン(S) アレクシス・コセンコ指揮レ・ザンバッサデュール
 録音:2018年9月。イギリス出身のソプラノ、キャスリーン・ワトソンのソロ・アルバムの登場。ワトソンはケンブリッジのトリニティ・カレッジでアングロ=サクソン史と文学を研究するとともに、同カレッジ合唱団でコーラスを学んだ。2008年に卒業し、クリスティが主宰するアカデミー「声の庭」に合格、以降活躍の場を広げている。2019年10月のクリスティの来日時、「メサイア」で素晴らしいソロ(ソプラノI)を務めていたことも記憶に新しい存在。ここでは「太陽王のオペラ」と題し、オペラ・アリアと器楽曲をプログラム。カンプラ、マレ、さらにはルイ・ド・リュリの忘れられた歌劇「オルフェ」からの楽章も入っている。恋に落ちた女性から抒情的悲劇の主人公まで、ワトソンが気品と知性とを兼ね備えた完璧な歌唱力で演じ歌いあげる。彼女の歌声のまっすぐな美しさ、そしてアンサンブルのメンバーの奏でる音色が、フランス・バロックの粋を提示してくれる。
AP-208
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(3CD)
2CD価格
アントニオ・サリエリ(1750-1825):歌劇「タラール」(初演:1787年6月8日)
 [プロローグと5幕からなるオペラ/台本:ピエール=オーギュスタン・カロン・ド・ボーマルシェ(フランス語)]

 クリストフ・ルセ指揮レ・タラン・リリク
 オリヴィエ・シュネーベリ合唱指揮ヴェルサイユ・バロック音楽センター歌手メンバー

 シリル・デュボワ(T;タラールとその影) カリーヌ・デエ(S;アスタジとその影)
 ジャン=セバスティアン・ブ(Br;アタールとその影) ユディト・ファン・ワンロイ(S;自然、スピネット)
 エンゲラン・ド・イス(T;カルピーギ) タシス・クリストヤンニス(Br;アルテネとその影、炎の精)
 フィリップ=ニコラ・マルタン(Br;アルタモルトとその影、農民)
 マリーヌ・ラフダル=フラン(S;エラミール) ダナエ・モニエ(S;賢い羊飼い、スピネットの影)
 録音:2018年11月26日、ジャン=バティスト・リュリ音楽院、プトー/2018年11月27日-28日、シテ・ド・ラ・ミュジーク=フィルハーモニー、パリ|世界初録音。サリエリの歌劇「タラール」世界初録音の登場。サリエリ(1750-1825)生前の大成功作品にして、ボーマルシェ(1732-1799)がリブレット(台本)を手がけた唯一のオペラを、鬼才ルセ&レ・タラン・リリクと豪華歌唱陣による演奏で。この録音に先駆け、ルセはヴェルサイユ宮殿内王立歌劇場で2018年11月22日に演奏会形式でこの作品を演奏、大きな話題となった。とにかく素晴らしい音楽が怒涛のように押し寄せる2時間45分の大作。何をとっても話題必至の録音。サリエリといえば、映画「アマデウス」により、「モーツァルトの同時代の人」というイメージしかないといっても過言ではないが、彼が生きていた当時サリエリは、ヨーロッパ楽壇の頂点に立つ人物だった。オペラを43曲のこしており、この「タラール」は中で最も成功した作品のひとつ。初演は1787年。パリの王立音楽アカデミーで初演された。サリエリが最初にパリで受け入れられたのは1784年、「ダナオスの娘たち」の成功によった。その後、パリは「オラース兄弟」そしてこの「タラール」をサリエリに委嘱。「タラール」の台本を手がけたのは、ボーマルシェ。ボーマルシェは「セビリャの理髪師」や「フィガロの結婚」等、オペラの原作となった戯曲を書いているが、ボーマルシェが直接台本まで手がけたオペラは、この「タラール」のみ。彼は大変すぐれたセルフ・プロモーターでもあったため、このオペラが発表される前から巧みに話題作りをし、初演の前から人々は「タラール」をしばしば話題にしていた。上演は大成功をおさめ、1826年までの間に131回も上演されている。「タラール」の舞台はペルシャ湾の王国オルムス。独裁的な王アタールと、兵士タラール、そしてその妻アスタジの物語。妻アスタジは王アタールのハーレムにとらえられるも、最終的には助けられ、独裁的な王アタールは世を去り、新しく王となるタラールと幸せに暮らす、という物語。ハーレムや独裁的な王が登場するという点でモーツァルトの「後宮からの誘拐」(1782)とも共通点が見られる。音楽は、冒頭のプロローグの嵐の烈しい描写から「Nature(自然)」が登場するくだりまで迫力満点で一気に引き込まれる。本編の序曲はシンバルもかき鳴らされるなどオリエント趣味も含みつつ、急速なパッセージの連続で大変華やか。レチタティーヴォは‘レチタティーヴォ・アッコンパニャート '(オーケストラ伴奏つきのレチタティーヴォ)で、時にアリア風なパッセージも含むものとなっている。アリアもどれも非常に表情豊か、そして随所に歌手の腕の見せどころも盛り込まれた充実曲ばかり。プロローグから本編5幕まで、聴きどころ満載の傑作。ルセの指揮も大変見事。サリエリとボーマルシェが織りなすドラマを、名手ぞろいのレ・タラン・リリクを率いて息つく間もなくたたみかけるように響かせる。世界でひっぱりだこのシリル・デュボワやカリーヌ・デエらをはじめ豪華歌唱陣も万全の歌を披露している。サリエリの真価を世界中に問う、名作の名演の登場。
ベルク/テオ・ファーベイ編曲:叙情組曲(*)
ヴェーベルン:緩徐楽章 M 78 (1905) (#)
シュレーカー:間奏曲とスケルツォ Op.8 (#)
ロベルト・フォレス・ヴェセス指揮
オーヴェルニュ室内o.
 録音:2017年11月9日-11日(*)、2018年3月28日-31日(#)、コルドリエ礼拝堂、クレルモン=フェラン。スペイン生まれ、フィンランドで修業した指揮者ロベルト・フォレス・ヴェセスとオーヴェルニュ室内o. 待望の新譜登場。今回は新ウィーン楽派の3篇。ベルクの「叙情組曲」は、同じベルクのピアノ・ソナタのオーケストラ編曲で知られるテオ・ファーベイによるもので、濃厚きわまりない音世界が広がる。またシュレーカーの出世作となった2篇のうち間奏曲は驚くべき美しさを示す秘曲。映画やドラマで使われれば人気がでること間違いなしの隠れた名作。
BACH & CO 〜バッハと仲間たち
 ヨハン・ダーヴィト・ハイニヒェン(1683-1729):
  ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲 ハ短調 S 240 〜ヴィヴァーチェ
 テレマン:ヴァイオリンとトラヴェルソ・フルートのための協奏曲 ホ短調 TWV.52: e3
 J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲〔ト短調 BWV.1056R /イ短調 BWV.1041 〕
 グラウン(1703-1771):ヴァイオリンとリコーダーのための協奏曲 ハ長調 CV: XIII: 96
 フェルステル(1693-1745):ヴァイオリン協奏曲 ト短調(*)
 ヨハン・フリードリヒ・ファッシュ(1688-1758):ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲 ニ短調 WVL: d4
 テレマン:2つのヴァイオリンのための協奏曲 ハ長調

 ティボー・ノアリ(Vn)指揮 クレール・ソットヴィア(Vn)
 ジャン・ブレニャック(トラヴェルソ)、エマニュエル・ラポルト(Ob)
 セバスティアン・マルク(リコーダー) レ・ザクサン
 録音:2017年11月1日-3日、ボン・セクール教会| (*):世界初録音。ヴァイオリン奏者のティボー・ノアリ率いるアンサンブル、レ・ザクサンの新譜はバッハに啓発された作曲家たちによる作品をめぐる旅。西洋音楽の父ともよべるバッハの作品とあわせて、同時代のテレマン、ファッシュやフェルステルや、グラウン、ハイニヒェンらの作品を収録しており、バッハ当時の音楽シーンを俯瞰できるようだ。ノアリの歌うようなヴァイオリンと、二重協奏曲でみせるリコーダーやフルートの名手たちとの掛け合いも非常に楽しめる。
レオポルト・モーツァルト(1719-1787):ミサ・ソレムニス
 アリアンナ・ヴェンディッテッリ(S) ゾフィー・レンネルト(A)
 パトリック・グラール(T) ルートヴィヒ・ミッテルハンマー(B)
 アレッサンドロ・デ・マルキ指揮バイエルン室内po.
 ジュリアン・シュテーガー合唱指揮 Das Vokalprojekt
 録音:2018年4月。レオポルト・モーツァルトは「モーツァルトの父」ということで、その教育熱心さなどは多く語られている。しかし、レオポルトの作品は子・ヴォルフガングの影に隠されてしまっていると言わざるをえない。ここに録音された素晴らしい「ミサ・ソレムニス」も、長きにわたって息子ヴォルフガングの作品とされておった。しかし、近年ではこの作品はレオポルトによるものと確かめられている。30年以上前にこの作品は録音があったが現在は廃盤、アニバーサリー・イヤーに非常に貴重な新録音の登場。指揮のアレッサンドロ・デ・マルキ(1962年生まれ)はイタリア出身、とりわけバロック期のオラトリオやオペラの優れた演奏で知られている。2010年より、ヤーコプスの後任としてインスブルック古楽音楽祭を率いている、古楽界のゆるぎない実力者。管弦楽はレオポルトの生地でもあるアウグスブルクの素晴らしいバイエルン室内・フィルハーモニー。ドイツの Das Vokalprojekt(ダス・フォカールプロイェクト)による声楽アンサンブルもやわらかで美しい。
ショパン:弦楽五重奏伴奏版ピアノ協奏曲全集
 ピアノ協奏曲〔第2番 ヘ短調 Op.21 /第1番 ホ短調 Op.11 〕
 デイヴィッド・ライヴリー(P|使用楽器:エラール、1836年製
 カンビーニ=パリSQ
  [ジュリアン・ショヴァン、カリーヌ・クロケノワ(Vn)
   ピエール=エリック・ニミロヴィチ(Va) 酒井淳(Vc)]

 トマ・ド・ピエルフ(Cb)
 録音:2016年10月25日-28日。ショパンのピアノ協奏曲の室内楽(弦楽五重奏)伴奏版。19世紀は大衆文化が開花した時代で、音楽もしかり、家庭やサロンで演奏できるような連弾や室内楽がさかんに生み出された。規模の大きな協奏曲も、管弦楽伴奏を室内楽が代わりに受け持って自宅やサロンで演奏、ということもよく行われていた。ショパンの協奏曲についても、ショパン自身が自宅等で室内楽版で演奏したという記録が残されているが、ショパン自身の手になる編曲版の楽譜は残されていない(ショパンが実際に室内楽版の楽譜を作成したかどうかも不明)。この録音では、オーケストラの弦楽パートを基本的にほぼそのままアンサンブルが担当して、弦楽器以外で演奏される重要な部分は基本的にピアノが演奏するというかたちをとっている。特にトゥッティの部分ではピアノと弦楽五重奏が極めて密度の濃いアンサンブルを展開するかたちとなり、前奏から繰り広げられる世界に一気に引き込まれる。ピアノは1836年製のエラール、そして弦楽アンサンブルもすべて19世紀の楽器を用いており、まさにショパンのサロンでもこのような音色が響いていたのだろうかと想像しながら聴くと、喜びもひとしおの1枚。
ダルベルト&ノーブス・クァルテット〜フランク(1822-1890):
 前奏曲、コラールとフーガ ロ短調 M21 /前奏曲、アリアとフィナーレ ホ長調 M23 /ピアノ五重奏曲 ヘ短調 M7 /
 前奏曲=アンダンティーノ〔前奏曲、フーガと変奏曲 M30 より|バウアー/ダルベルト編曲〕

 ミシェル・ダルベルト(P) ノーブスSQ
  [キム・ジョエン、キム・ヨンウク(Vn) キム・キュユン(Va) ムン・ウンフィ(Vc)]
 録音:2018年10月13日-14日、リエージュ、フィルハーモニー・ホール|輸入盤・日本語帯・解説付。#国内仕様盤のみの御案内。 巨匠ダルベルトの新譜は、ダルベルトの熱く力強く、それでいて心をわしづかみにするような良い意味での怜悧さも併せ持つ音色が冴えわたるフランク。前奏曲、コラールとフーガ ロ短調では、ダルベルトのストイックな音楽の運びにただただ圧倒。プレリュード、アリアとフィナーレのフィナーレでは、ダルベルトのテクニックとストイックな音楽が炸裂している。そして韓国の気鋭四重奏団、ノーブス・クァルテットとのピアノ五重奏曲では、ロマンの香りが濃密に漂うアンサンブルが展開されている。最後に収録されているプレリュードは、原曲はオルガンのための作品で、流れるような感傷的な主題が美しい曲。ダルベルトの抑制の効いた演奏が、かえって曲のもつ様々な感情を浮き彫りにしているようだ。ダルベルトのますます冴えわたる芸術にただただ圧倒される1枚。
ルセ〜フレスコバルディ(1583-1643):
 トッカータとパルティータ集第1巻/トッカータ〔第1番/第3番/第6番/第7番/第8番/第9番/第10番〕/
 第3のバレエ/クーラントとパッサカリア/パッサカリアによる100のパルティータ/
 フォリアのアリアによるパルティータ/ロマネスクのアリアによる14のパルティータ/
 4つのクーラント/モニカのアリアによる11のパルティータ/バレエとシャコンヌ

 クリストフ・ルセ(Cemb
  |使用楽器:制作者不詳、16世紀制作〔1736年、リナルド・デ・ベルトニス一部改造〕
 録音:2018年11月10日。フレスコバルディは即興性と建築性を天才的に組み合わせた作曲家といえるだろう。フレスコバルディはイタリアのマドリガーレに根差した豊かな歌と、豊かな創意、そしてヴィルトゥオーゾ性に満ちた作品を残している。ルセは16世紀後半に作られたチェンバロで演奏しており、フレスコバルディの斬新な響きを見事に蘇らせている。旋法的なハーモニーはどこか古風に感じられるかもしれないが、即興性を感じさせる自由なリズムは今なお聞き手を魅了する。カラヴァッジョの絵画のような繊細な光と影にも通じるような表情が見事に再現された1枚。
フォーレ:レクイエム/他
 フォーレ:レクイエム Op.48 (1893年版)(*)
 プーランク:カンタータ「人間の顔」(CD)
 ドビュッシー:シャルル・ドレルアンの3つの歌(第1曲、第3曲は第1稿)
  マテュー・ロマーノ指揮アンサンブル・エデス、レ・シエクル
  ルイ=ノエル・ベスティオン・ド・カンブーラ(Org;*)
  ロクサーヌ・シャラール(S;*) マテュー・デュブロカ(Br;*)
 録音:2018年5月、リトル・トリベカ、ブローニュ=ビヤンクール(*以外) /2018年8月、レセ修道院(*) 。レ・シエクルがフォーレの名作「レクイエム」を録音した。とは言っても指揮者はロトではなくマテュー・ロマーノ。ロトの「ダフニスとクロエ」盤で手兵の合唱団アンサンブル・エデスの合唱指揮 絶妙な効果をあげていたが、今回はそのアンサンブル・エデスを主役にしたアルバム。伴奏の必要な「レクイエム」のみレ・シエクルが加勢するという超豪華なものとなっている。加えて注目なのが、ハルモニア・ムンディからも興味深い最新アルバムをリリースするルイ=ノエル・ベスティオン・ド・カンブーラが「レクイエム」のオルガン・パートを務めていること。驚きの存在感を示している。ドビュッシーの「シャルル・ドレルアンの3つの歌」はパリ国立図書館所蔵の第1稿による演奏。現行版と非常に違うのに驚かされる。エリュアールの詩によるプーランクの二重合唱による「人間の顔」は、同時期のヴァイオリン・ソナタのように第2次世界大戦中の抵抗運動へのプーランクの思いがこもった作品。抑えた感情が非常な感動を生みる。ロマーノとアンサンブル・エデスはまさに合唱のレ・シエクルで、クリスタルのように透明な響きで声の素晴らしさを満喫させる。フォーレの「レクイエム」はレ・シエクルがもちろん当時の楽器を用い、温かくも清冽な音世界を作りあげている。
リスト(1811-1886):歌曲集
 高貴な愛 S.307 /青春の幸福 S.323 /愛の夢 S.298 /朝起きるとぼくはたずねる(第2稿) S.290 No.2 /
 風がざわめく(第2稿) S.294 No.2 /ローレライ(第2稿) S.273 No.2 /ぼくの歌には毒がある S.289 /
 喜びに満ち、悲しみに満ち(第2稿) S.280 No.2 /お前は S.277 /愛とは?(第1稿)S.288 No.1 /
 ノンネンヴェルトの僧房(第4稿) S.274 No.4 /日の光を知った S.310 /私を休ませて S.314 /
 揺れよ、青い眼(第1稿) S.305 No.1 /漁師の子供(第1稿) S.92 No.1 /
 もし美しい芝生があるなら(第1稿) S.284 No.1 /わが子よ、私が王だったなら(第2稿) S.284 No.2 /
 おお、私が眠りにつくときは(第2稿) S.282 No.2 /どうやって、彼らはたずねた(第2稿)S.276 No.2 /
 金色の髪の天使(第2稿)S.269 No.2 /ペトラルカの3つのソネット(第1稿) S.270 No.1

 シリル・デュボワ(T) トリスタン・ラエ(P)
 録音:2018年10月。フランスのテノール、シリル・デュボワによるリスト歌曲集。デュボワは2015年ヴィクトワール・ミュジーク受賞。パリ国立高等音楽院で学び、オペラ・歌曲の両方で活躍しているフランスのテノール。ルセ指揮のサリエリ:歌劇「タラール」でもタイトル・ロールで素晴らしい歌唱を聴かせていた。彼はリートをヘルムート・ドイチュの下でも学んでおり、ドイツ語のものでも素晴らしい演奏を聴かせてくれる。
モーツァルト:ソナタ集
 〔イ短調 K.310 /変ホ長調 K.282 /ヘ長調 K.332 〕/
 ロンド イ短調 K.511
ファブリツィオ・
 キオヴェッタ(P)
 録音:2017年12月19日-21日、マーラー・ホール、ドッビアーコ、イタリア。モーツァルトの比較的若い頃の作品から、 イ短調のロンドのような悲劇さと高度なテクニックが求められる難曲まで、モーツァルトの多面性をあらためて実感するプログラム。バドゥラ=スコダも「繊細にして熱い感情が伝わる演奏」と激賞するキオヴェッタによる、モーツァルトの核心に迫る名演奏。ファブリツィオ・キオヴェッタはスイスのピアニストで、パウル・バドゥラ=スコダ、ジョン・ペリー、ドミニク・ウェーバーなど、世界の名だたる名教師・ピアニストに師事し、ソロはもちろんのこと室内楽、声楽の伴奏、そして即興演奏など様々な演奏形態の作品を積極的に学んできた。師のバドゥラ=スコダは「繊細にして熱い感情が伝わる演奏」と激賞している。
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲全集
 〔第1番 ニ短調 Op.49 /第2番 ハ短調 Op.66 〕
トリオ・メトラル
[ジョゼフ・メトラル(Vn)
 ジュスティーヌ・メトラル(Vc)
 ヴィクトル・メトラル(P)]
 録音:2018年4月-5月、リトル・トリベカ、パリ。トリオ・メトラルは、フランスの若い三兄弟によるピアノ三重奏団。長兄のジョゼフはパリ音楽院でオリヴィエ・シャルリエに師事。妹の同院でジュスティーヌはチェロをラファエル・ピドゥー、ラファエル・メルランに、弟のヴィクトルも同院でピアノをケフェレック、ダルベルトに学び、さらにチッコリーニ、プレスラー、ペヌティエの教えも受けたサラブレッドたち。正確な技巧に加え、フレッシュな感性による清潔な演奏を聴かせてくれる。
ルセ〜F.クープラン:諸国の人々
 クリストフ・ルセ(Cemb)指揮レ・タラン・リリク
  [ジローヌ・ゴーベール=ジャック、ガブリエル・グロスバール(Vn)
   ジョスリーヌ・ドビグニ、ステファニー・トロッフェ(Fl) ジョセ・ドメネク、トマ・メラネル(Ob)
   エイアル・ストレット(Fg) 酒井淳(ガンバ) ローラ・モニカ・プスティルニク(テオルボ)]
 録音:2017年9月7-13日、ギャルリー・ドレ・ド・ラ・バンク・ド・フランス。F. クープランは鍵盤のイメージも強いが、室内楽作品でもその真価を発揮した作品を数多く残している。「諸国の人々」は、1726年に出版された、器楽による室内楽作品集。諸国とは、フランス、スペイン、神聖ローマ帝国、そしてサヴォイ公国の4つの国々を指す。4つの組曲から成り、組曲内の各曲は同じ調性で書かれている。クープランはフランス様式の舞曲や、イタリア様式を思わせるトリオ・ソナタなど様々なスタイルの曲をちりばめており、彼の創意の多様性が遺憾なく発揮された名作。ルセ率いるレ・タラン・リリクのアンサンブル(酒井淳も参加)も魅力の、F. クープランの才に魅せられる演奏。
ルセ〜F.クープラン(1668-1733):王宮のコンセール(1722)
 〔第1組曲 ト長調/第2組曲 ニ長調/第3組曲 イ長調/第4組曲 ホ短調〕
 クリストフ・ルセ指揮レ・タラン・リリク
 ステファニー=マリー・ドゥガン(Vn) ジョルジュ・バルテル(Fl)
 パトリック・ボージロー(Ob) 酒井淳(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
 録音:2015年12月。ルセのクープラン、王宮のコンセールの登場。王宮のコンセールは、クラヴサン曲集第3巻の第2部として1722年に出版された4つの組曲からなる作品集。この組曲には楽器の指定はないが、様々な種類の楽器を組み合わせたアンサンブルの編成で、1714-15年にヴェルサイユ宮殿で日曜に行われていた演奏会でも、クープラン自身がチェンバロを弾いて、他にヴァイオリン、オーボエ、フルートのメンバーたちと演奏されていた。ルセとレ・タラン・リリクのメンバーが、フランス一流のエレガンスとヴィルトゥオジティでこれらの作品を演奏している。酒井淳も参加しており、充実のアンサンブルを楽しむことが出来る。
ドヴォルジャーク:弦楽セレナード ホ長調 Op.22
ヤナーチェク(1854-1928):弦楽オーケストラのための組曲(1877)
マルティヌー:弦楽六重奏曲(1932/1951年弦楽オーケストラ編曲版)
 ロベルト・フォレス・ヴェセス指揮オーヴェルニュ室内o.
 録音:2018年2月22日-24日、3月28日、クレルモン=フェラン、シャペル・デ・コルデリエ。バレンシア生まれ、セーゲルスタムに師事した指揮者、ヴェセス率いるフランスのオーヴェルニュ管による、ボヘミア色豊かな1枚。指揮者のヴェセスは2017年5月にN響デビュー、チャイコフスキーの交響曲第5番で絶賛を博し、すぐさま再招聘が決定。
AP-194
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(2CD)
ガイヤール、ピオー〜ボッケリーニ
 チェロ協奏曲〔第6番 ニ長調 G.479 /第9番 変ロ長調 G.482 〕/交響曲第6番 ニ短調「悪魔の家」G.506 /
 弦楽五重奏曲「マドリッドの通りの夜の音楽」(マドリッドの夜警隊の音楽) Op.30 No.6 /
 スターバト・マーテル G.532 (*) /チェロ・ソナタ第2番 ハ短調 G.2 /交響曲序曲 ニ長調 G.521

 オフェリー・ガイヤール(Vc)指揮プルチネッラ
 サンドリーヌ・ピオー(S;*) フランチェスコ・コルティ(Cemb)
 録音:2018年4月、9月、パリ。人気女性チェロ奏者オフェリー・ガイヤールとプルチネッラが、ボッケリーニを録音した。ガイヤールが率いるアンサンブル、プルチネッラのみずみずしい管弦楽が奏でる前奏がなんとも清々しく思わず耳をうばわれた後に始まるガイヤールのソロの、親しみやすくあたたかい音色は絶品。ここでは、協奏曲、ソナタ、交響曲のほか、超人気ソプラノ、サンドリーヌ・ピオーをゲストに迎え、ボッケリーニの最高傑作のひとつ、弦楽五重奏とソプラノ独唱のためのスターバト・マーテルも演奏しているのもまた注目。ピオーの歌声は澄みきっていながら円熟味も感じさせ、彼女の歌に寄り添うような弦楽五重奏のアンサンブルも絶品。ボッケリーニは歴史上最初のヴィルトゥオーゾ・チェロ奏者。イタリアに生まれ、プロイセンやスペインの宮廷につかえたほか、ヨーロッパ中で活躍した。ボッケリーニがいたからこそ、ヴァイオリンばかりに注目が集まっていたところにチェロのための作品も生み出されるようになったといっても過言ではない。絵画においてゴヤが色彩でマドリッドのにぎやかさを表現したのと同様、ボッケリーニはアンダルシアの舞曲のリズムとメロディで人々の息吹までをも表現した。ガイヤールのセンシティブで親しみやすい音色がボッケリーニにぴったり。喜びにあふれた舞曲風の楽章での生き生きとした表情は、他では得られない。ボッケリーニの魅力のすべてを伝えてくれる。
AP-193
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(2CD)
ルセ〜クープランとわたし
 王宮のコンセール〜第3コンセール(*)〔プレリュード/アルマンド/シャコンヌ・レジェール〕/ La Steinkerque (*) /
 ラ・スルタン〜 Gravement (*) / Air serieux (1701) ≪Doux lien de mon coeur≫ (*) /
 クラヴサン曲集〔第1巻第2組曲〜幸福な思い/第2巻第6組曲〜神秘のバリケート/第2巻第8組曲〜パッサカイユ/
         第2巻第9組曲(2つのクラヴサンのためのアルマンド)/第4巻第23組曲〜アルルカン/
         第3巻第28組曲〜ティク・トク・ショク/第1巻第1組曲〜森の精/第2巻第11組曲/
         第3巻第27組曲〜風で回る小風車/第1巻第3組曲〜陰気な女/第4巻第28組曲〜とげとげしい女〕/
 諸国の人々〜神聖ローマ帝国 より(3曲?)/ Verset du motet de l 'annee derniere 〜 Qui dat nivem /
 ヴィオール曲集より〔第2組曲 La Pompe funebre /第1組曲 シャコンヌあるいはパッサカイユ〕/
 聖水曜日の第3のルソン・ド・テネブル/
 趣味の融合〜第9コンセール/趣味の融合、あるいは新しいコンセール より〔序曲/グランド・リトルネロ〕/
 王の命令により作曲されたモテットの7つの Versets 〜 Operuit montes umbra ejus 、Extendit palmitos suos
 バッカスに慰められたアリアーヌ より〔レチタティーヴォ/エア〕/リュリ讃〜パルナッス山の平和

 クリストフ・ルセ指揮レ・タラン・リリク サンドリーヌ・ピオー(S) クリストフ・コワン(Vc)他
  (*)のみ初出|音源: Aparte, Naive, Harmonia Mundi, Warner, Decca 。古楽界の重鎮にして鬼才、クリストフ・ルセの、クープランでまとめたベスト盤。クープランとわたし、と題し、アパルテ音源のほか、ハルモニアムンディ録音の音源なども網羅している。45年以上にわたってフランソワ・クープランの作品を演奏、指揮しているルセ。今日もなお日々クープランの新たな魅力に気づかされる、という。ルセ自身が選りすぐった、自身のクープラン演奏で特に気に入っているものをまとめたもの。
恋人アレッサンドロ〜カウンターテナーのためのアリア集  ボノンチーニ:「アブドロミーノ」前奏曲/
        「アレッサンドロのインドからの帰還を祝うエウレオ」〜あなたの目の美しさに
 ヘンデル:「インド王ポーロ」〜かくも素敵なふたつの目の力なら/「アレッサンドロ」〜むなしき愛
 ペシェッティ:「インドのアレッサンドロ」〜大きな努力に目を向け
 ステッファーニ:「レオナートの熱意」〜シンフォニア / ドラーギ:「不屈の勝利」〜私が隠すのは/報酬と罰は
 マンチーニ:「サイダのアレッサンドロ大王」より〔聖霊は復讐に燃え/シンフォニア〕
 ボノンチーニ:「アレッサンドロのインドからの帰還を祝うエウレオ」〜明るい夜明けが
 ヴィンチ:「インドのアレッサンドロ」〜大きな努力に目を向け
 レーオ:「ペルシャのアレッサンドロ」〜私のいとしい偶像よ / ポルポラ:「ポーロ」〜武器を手に

 シャビエ・サバータ(CT) ダニ・エスパーサ指揮ヴェスプレス・ダルナディ
 録音:2018年1月、リトル・トリベカ、バルセロナ。バルセロナ出身のカウンターテナー、シャビエ・サバータはスキンヘッドに髭のコワモテだが、声と歌唱は清純で乙女チック、心に沁みわたるような美しさです。今回はバロック・オペラのアリア集だが、凝った選曲が光る。タイトルは「恋人アレッサンドロ」で、いずれもアレクザンダー大王を主人公にしたもので、彼の英雄的な史実と、男色家だったとされる乙女心をサバータが絶妙に表現。さらに嬉しいのは、スペインのピリオド楽器団体ダニ・エスパーサ指揮ヴェスプレス・ダルナディが伴奏を務めていること。情景描写も巧みで、独特な雰囲気を醸し出している。
ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 Op.55「英雄」
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a
マクシム・エメリャニチェフ指揮
ニジニ・ノヴゴロド・
 ソロイスツ室内o.
 録音:2017年9月、ニジニ・ノヴゴロド。 2018年9月に初来日し、東京so.とブラームスの交響曲第1番やベートーヴェンの「皇帝」(スティーヴン・ハフ独奏)で日本デビューを果したマクシム・エメリャニチェフ。クルレンツィスのムジカエテルナの通奏低音奏者として、モーツァルトのダ・ポンテ・オペラ三部作録音で驚くべき才気を発揮して注目された。しかし彼はモスクワ音楽院指揮科でロジェストヴェンスキーに師事、さらにクルレンツィスのもとで研鑽を重ねるなど、現在最高の訓練を受けたサラブレッド。イタリアのイル・ポモドーロを指揮し、イタリア・バロックの声楽作品などのディスクもリリースしているが、今回は古典派、ロマン派のドイツ作品に挑戦した。ニジニ・ノヴゴロドso. は、ロジェストヴェンスキーがモスクワで演奏を禁じられたシュニトケ作品を初演したり、ロストロポーヴィチが指揮者デビューしたことで知られる優秀団体。今回エメリャニチェフは、フル編成ではなく室内o. まで刈り込んで録音に臨んだ。彼はオーケストラの音響効果に非常な興味を持ち、客席でどう聴こえるか細心の注意を払って楽器を配置し、その微妙な向きまでこだわるオーディオ・マニアの一面もある。単に音響のみならず、初演当時のオーケストラの編成まで丹念に調べ、当録音でも弦楽器をそれに則した数にしたとのこと。まず驚かされるのはテンポの速さ。それが全く自然で推進力と生命力となっている。また小編成ながら音量も造形も大きく、まさに「21世紀のムラヴィンスキー」登場かと興奮させられる。クルレンツィスに勝るとも劣らぬ才能の発見。
コレッリ(1653-1713):
 シンフォニア ニ短調 WoO.1 (合奏協奏曲 Op.6 No.6 〜第3楽章ラルゴの原曲|
   ジョヴァンニ・ロレンツォ・ルリエル作曲のオラトリオ
    「 Santa Beatrice d 'Este 」のための序曲〔シンフォニア〕、1689年ローマで演奏)
/
 合奏協奏曲集 Op.6 より〔ニ長調 Op.6 No.1 /ヘ長調 Op.6 No.2 /ハ短調 Op.6 No.3 /
               ニ長調 Op.6 No.4 /変ロ長調 Op.6 No.5 /ニ長調 Op.6 No.7 〕

 ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(Vn)指揮フライブルク・バロックo.
 ペトラ・ミュレヤンス(Vn) グイド・ラリッシュ(Vc)
 録音:2017年11月、ドイツ。フライブルク・バロックo. が、コレッリの合奏協奏曲 Op.6を録音した。意外にもこれが初録音となる。さらに、ここでは編成も演奏も非常に自由で華やか、トランペット、オーボエ、ファゴット、トロンボーンがヴァイオリンを増強しているほか、時にはコンチェルティーノになりかわってメインで演奏、さらに自由な即興部分まで付け加えられているという、FBOのうまさと能力が炸裂した仰天演奏!通奏低音楽器もチェンバロ、オルガンにくわえ、リュート、ハープも参加しているという編成で、迫力あるサウンドの合奏協奏曲をおたのしみ頂ける。なお Op.6は全12曲から成るが、ここでは、いわゆる「教会ソナタ」の形式をとる、緩楽章から始まるものを中心に収録されている。コレッリは、器楽作品のみで名声を博した最初の作曲家といえるだろう。声楽(宗教)作品全盛期の17世紀後半において、これは非常に珍しい現象だった。コレッリは生涯にわたり、ほぼその全ての作品が「パーフェクト」ともいえるほど、どの作品に対しても勤勉な姿勢を保ち、生涯にわたってその名声が消えることは無かった。合奏協奏曲 Op.6 No.6の第3楽章ラルゴは、1689年にローマで演奏されたジョヴァンニ・ロレンツォ・ルリエルのオラトリオ「Santa Beatrice d 'Este」のための序曲(シンフォニア)として書かれたものが元になっている。このディスクではその序曲をフルヴァージョンで演奏しているという、凝った内容となっている。
シューベルト:ブラームス、ヴェーベルンによるオーケストラ編曲版の歌曲 + 完成版未完成
 涙の雨(「美しき水車小屋の娘」第10曲/ヴェーベルン編)/道しるべ(「冬の旅」第20曲/ヴェーベルン編)/
 メムノン D.541(ブラームス編)/ひめごと D.719(ブラームス編)/肖像(「白鳥の歌」第9曲/ブラームス編)/
 タルタルスの群れ D.583(ブラームス編)/君は憩い D.776(ヴェーベルン編)/
 交響曲第7番(未)完成 D.759
  〔第1楽章/第2楽章/第3楽章(スケルツォ)アレグロ:シューベルトのスケルツォ(スケッチ)に基づく、
     ニコラ・サマーレ&ベンヤミン=グンナール・コールス補完版、2015年/
   第4楽章(フィナーレ)アレグロ・モデラート:劇付随音楽キプロスの女王ロザムンデの間奏曲〕

 フローリアン・ベッシュ(B−Br) ステファン・ゴットフリート指揮
 コンツェントゥス・ムジクス・ウィーン[トーマス・フェオドロフ(コンサート・マスター)]
 録音:2018年4月27日-28日、ウィーン楽友協会、大ホール、ライヴ。アーノンクールが1953年に妻と設立したコンツェントゥス・ムジクス・ウィーン。2016年にアーノンクールが亡くなったあと初めて、彼らがCD をリリースする。現在、アーノンクールとオペラでも共演し信頼厚かったステファン・ゴットフリートが音楽監督(首席指揮者)を務め、モザイク弦楽四重奏団でもおなじみのエーリヒ・ヘーバルト(コンサート・マスター)、アンドレア・ビショフ(第2コンサートマスター)と共に楽団を牽引している。彼らが取り上げたのはシューベルト。世界的バリトンのフローリアン・ベッシュをソリストに迎え、シューベルトの歌曲をブラームスとヴェーベルンがオーケストラ伴奏版に編曲したものと、シューベルトの未完成交響曲を、4楽章構成で演奏したもの(第3楽章は、シューベルトが残したスケッチを、作曲家のニコラ・サマーレと音楽学者のベンヤミン=グンナール・コールスが補完したもの、そして第4楽章はロザムンデの間奏曲、という構成)、というなんとも注目のプログラム。ベッシュの歌唱は余裕たっぷりで精確無比なディクションと詩の世界を雄大なスケールで描いており、オーケストラ伴奏でその世界もより一層引き立つような素晴らしい物。未完成では、アーノンクールによって培われた精緻なアンサンブルが炸裂。第1楽章での管楽器のクリアな発音など、ちょっと驚かされるほど。第3楽章と第4楽章も実に自然に流れており、ひとつのあり方として理想的名演が誕生したといえるだろう。ウィーン楽友協会の会場いっぱいに響き渡るサウンドが心地よくとらえられており、まるでホールにいるような迫力ある演奏が楽しめる。コンツェントゥス・ムジクス・ウィーンの新たな時代の始まりを告げる、実に鮮やかなシューベルトの登場。
 #当初、国内代理店からのインフォメーションに従い、曲目最後に『劇付随音楽「魔法の竪琴」序曲 D.644 』をクレジットしておりましたが、発売後代理店から『収録曲に誤りがありました。収録曲は・ブラームス、ヴェーベルンによるオーケストラ編曲版のシューベルトの歌曲・シューベルト:交響曲第7番(未)完成D759のみで、劇付随音楽「魔法の竪琴」は収録されておりません。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、ご確認、修正のほどお願い申し上げます。』とのアナウンスがあり、上記曲のみであることが判明いたしました、
ノーブス・クァルテット〜ベルク&シューベルト
 ベルク:叙情組曲
 シューベルト:弦楽四重奏曲第14番
         ニ短調 D.810「死と乙女」
ノーブスSQ
[キム・ジョエン、
 キム・ヨンウク(Vn)
 イ・スンウォン(Va)
 ムン・ウンフィ(Vc)]
 録音:2017年9月、リトル・トリベカ、パリ。2007年韓国芸術総合学校の学生たちにより結成されたノーブス・クァルテット。クリストフ・ポッペンに師事し、2014年に国際モーツァルト・コンクールで優勝した。韓流スターと見まごう4名から成るが、演奏はいたって辛口で真摯。死の匂いのする2篇を驚くべき緊張感と集中力で聴かせてくれる。
万華鏡的
 ヤーン・ラーツ(1932-):万華鏡的練習曲 Op.97(世界初録音)
 アルヴォ・ペルト(1935-):モーツァルト=アダージョ(1992/2017年クラリネット用に編曲)
 ヘンリク・ミコワイ・グレツキ(1933-2010):「ひばりの音楽」〜レチタティーヴォとアリオーゾ Op.53

 パトリック・メッシーナ(Cl|使用楽器:ビュッフェ・クランポン「ヴィンテージ」
 アンリ・ドマルケット(Vc|使用楽器:ストラディヴァリウス「 le Vaslin 」、1725年製
 ファブリツィオ・チオヴェッタ(P|使用楽器:スタインウェイ
 録音:2017年12月、イタリア。フランス国立o. の首席クラリネット奏者、メッシーナによる万華鏡のようなアルバムの登場。クラリネット、チェロ、ピアノという編成の3作品。ヤーン・ラーツの「カレイドスコーピック・エチュード」は世界初録音。ジャズ風な部分やライヒの初期のフェーズ・パターン的な部分、と思うと少しメロディックな部分ありと、様々な要素が次々と現れる作品。ペルトの作品は、モーツァルトのピアノ・ソナタ K.280のアダージョにインスパイアされて書かれた物。もとはピアノ三重奏曲の作品だが、2017年、クラリネットとチェロ、ピアノ用に新たに編曲された。モーツァルトのアダージョ楽章の内的世界がこれでもかと拡大された、張り詰めた美しさ。この編成では世界初録音となる。グレツキの「ひばりの音楽」は終楽章でベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番冒頭の和音の動きを連想させる動きが様々に繰り返され、印象的。
ハイドン:交響曲第82番 ハ長調 Hob.I: 82 「熊」
ジャン=バティスト・ダヴォー(1742-1822):
 2台の独奏ヴァイオリンのための愛国的アリアを伴う協奏交響曲
フランソワ・ドヴィエンヌ(1759-1803):
 フルート、オーボエ、ファゴットとホルンのための協奏交響曲第4番 ヘ長調
  ジュリアン・ショヴァン指揮ル・コンセール・ド・ラ・ローグ
   [シュシャヌ・シラノシアン(Vn) タミ・クラウス(Fl) エンマ・ウラック(Ob)
    ハヴィエ・ザフラ(Fg) ニコラ・シェドメイユ(Hr)]
 録音:2017年10月、ルーヴル・オーディトリウム。フランスの気鋭ヴァイオリン奏者、ジュリアン・ショヴァンの指揮による、ハイドンのパリ交響曲(第82-87番)を録音するプロジェクトの第3弾(第1弾 AP-131 /第2弾 AP-157)。当時の演奏会習慣に則り、交響曲をメインに据え、様々な編成の楽曲でプログラムが構成されている。冒頭から実に痛快な「熊」でたちまち演奏に引き込まれる。その後も心地よいテンポ感で滑舌のよい音楽発語が見事。18世紀フランスの、ウィットに富み、ヴィルトゥオーゾ要素満載の音楽を心ゆくまで堪能できる1枚。ダヴォーは当時のフランスで聴衆から最も人気のあった作曲家の一人で、ゴセックと同じくらいに有名だった。この協奏交響曲に含まれるアリアは、ダヴォー自身の歌劇「テオドーラ」からとられている。パリでは管楽器は特別な人気があった。ドゥヴィエンヌのこの作品は、変奏曲の形式をとりながら、テーマを奏でる各楽器奏者に高い難度の技巧を要求しつつも、当時の記述に「花畑の中で幸せに語り合う恋人たち」と称されたような幸福に満ちた作品となっている。
AP-185
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(2CD)
ルセ〜サリエリ:オラース兄弟(3幕)
 台本:ニコラ=フランソワ・ギヤール(コルネイユの悲劇「オラース」(1640年)に基づく)

 クリストフ・ルセ(Cemb)指揮レ・タラン・リリク
 ユディト・ファン・ワンロイ(カミーユ) ジュリアン・ドラン(若いオラース)
 ジャン=セバスティアン・ブ(老いたオラース)他
 録音:2016年10月15日、ヴェルサイユ宮殿内王立歌劇場、ライヴ|世界初録音。2016年にルセがヴェルサイユで行った、サリエリの3幕の歌劇「オラース兄弟」のライヴ録音。このサリエリの大作を上演するにあたり、ルセは豪華歌唱陣を集結させた。古代ローマのホラティウス兄弟と、当時ローマと対立関係にあったクリアティウス兄弟の決闘の物語に、サリエリがロマン派を思わせるドラマティックな音楽をつけている。戦いや大群衆のシーン、ヒロインであるカミッラの涙のシーン、クリアティウスのジレンマなど、手に汗握る物語展開の作品を、ルセが見事に蘇らせている。貴重な初録音にして決定的名演といえるだろう。
Canto da Sereia 〔人魚(セイレン)の歌〕
  Quem viver, vera / Canto da sereia / Samba da Bencao; Samba pra Vinicius / Eu sei que vou tea mar /
  Alvorada / Bachianianinha No.1 / Tarde em itapoa / Fariseus / Acuarela / Carinhoso /
  Escravo da Alegria / Tristeza / ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第5番(チェロとギターのデュオ版)(*)

 トキーニョ(声/G) オフェリー・ガイヤール(Vc/Perc〔一部〕)
 ガブリエル・シヴァク(P/編曲) ファビアン・シプリアン(Tb/Perc)
 ロマン・ルクイエール(Cb/G;*) フロラン・ジョドレ(Perc)
 リューベン・ロペス(ドラム) 以下ゲスト ロドリーゴ・サミコ(7弦G)
 ヨナタン・エド(Perc) ルイス・アウグスト・カヴニ(ドラム)
 言わずと知れたブラジルの名ギタリスト=トッキーニョ、最新作はクラシックの人気女性チェリスト、ガイヤールを大々的にフィーチャーしたライヴ盤!トッキーニョの巧みなギター捌きと柔らかい歌声、そこに合わせて奏でられるチェロの響きが非常に新鮮。これほどまでにバランス良く歌と演奏が共存しているライヴとは末恐ろしいだが、近年のトッキーニョの余裕ぶりがひしひしと伝わってくるようだ。本作でトッキーニョと共に鮮烈な印象を残すチェリスト、オフェリー・ガイヤールは、親密な音色と感性豊かな音楽性で高い評価のあるフランス人演奏家。ブラジルでのリサイタルのため、とあるホールでリハーサルしていた折、偶然トッキーニョがガイヤールの前に現れたという。その印象について「彼の話す声の響きは魅力的な楽器が奏でる音楽のようだった」とコメントしている彼女だが、この作品の華はその冴えたチェロの響きによるものも大きいだろう。盟友ヴィニシウス・ヂ・モライスとの楽曲を大々的に取り上げつつ、ジョビンやバーデン・パウエルとの楽曲も演奏、さらに極め付きはトッキーニョのジェントルな歌声を敢えて封印しギターに徹した演奏である(13)。普段はバッハの " 無伴奏チェロ組曲 " をレパートリーとするオフィリー・ガイヤールだが、彼女を引き立てるべくヴィラ・ロボスの "ブラジル風バッハ第5番 " を選曲するこの辺りに垣間見えるセンスの良さも、本作の余韻をより深くしていくのに一 役 買っている。次いで取り上げたいのが、もう一曲のインストである(6)。この作者であるパウリーニョ・ノゲイラはかつてトッキーニョが師事したことでも著名なブラジリアン・ギターの隠れた名手。ギターとチェロのデュオによるこの演奏に漂う深い哀愁には、トッキーニョとオフェリー・ガイヤールの相性の良さが刻まれているだけでなく、ブラジルとバッハを繋ぐささやかな、しかし強固でもある道筋が確かに見えてくるだろう。
シャルル・グノー(1818-1893):歌曲集(全24曲)
 私の美しい恋人は死んだ/祈り/セレナーデ/出発/いとしい子よ、おやすみ/他
  タシス・クリストヤニス(Br) ジェフ・コーエン(P)
 録音:2017年12月。 ダヴィッドの歌曲集 (AP-086)やラロの歌曲集 (AP-111)、ゴダールの歌曲集 (AP-122)などもリリースしている、19世紀の作曲家の歌曲に力を注いでいるクリストヤニス。今回は生誕200周年記念作曲家、グノーの歌曲集に挑戦した。グノーは150曲ほどの歌曲を出版しており、その3分の1は英語の詩によるもの、他にイタリア語、スペイン語、ドイツ語のものもある。フランス語のものでは、ユゴー、ミュッセ、ゴーティエ、ラ・フォンテーヌ、ロンサールらによる詩のものがある。映画に出てきそうな物憂げな雰囲気が美しい「祈り」(仏語)やいとしい子よ、おやすみ(英語)の洒脱なピアノに乗って歌われるやさしいメロディなど、グノーの魅力に満ちた1枚。
リスト(1811-1886):
 死の舞踏 S.126 /ピアノ協奏曲〔第1番 変ホ長調 S.124 /第2番 イ長調 S.125 〕
  ベアトリス・ベリュ(P) ジュリアン・マスモンデ指揮チェコ・ナショナルso.
 録音:2017年12月12日-15日、プラハ。 フランスの人気ピアニスト、ベアトリス・ベリュによるリスト3作品。いずれも、最初のスケッチから最終的な出版までに20年以上が経過した作品。注目なのが、ピアノ協奏曲で、出版後の楽譜に、リストの弟子ビューローが書き込んだリストの指示と思われる修正を適用して演奏していること。 第1番の初版は1834年に書かれたものの、第2番に着手する1839年まで寝かされており、1840年までには両方とも一度完成させていたが、人前で弾くことはなく、第1番はベルリオーズの指揮リスト自身のピアノで1855年に初演。第2番は1857年、リストの指揮そしてリストの弟子のブロンサルトのピアノで初演されている。いずれも出版されたが、リストの弟子ビューローの所有していたスコアには、リストの指示によるものと思われる修正がいくつか見られ、ここでベリュはこの手書きの修正を適用してこれらの作品を演奏している。そうしたことは抜きにしても、ベリュの超絶技巧とスケールの大きな演奏、そしてそれを支えるオーケストラとのアンサンブルが聴きごたえ十分であることは言うまでもない。
バラード・イン・レッド
 ルニエ:幻想的バラード / カプレ:幻想的な物語 / レオーネ:赤の五重奏
 ヒンデミット:ハープ・ソナタ / サルゼード:バラード / ドビュッシー:神聖な舞曲と世俗的な舞曲

 エマニュエル・セイソン(Hp) ヴォーチェSQ
 録音:2017年6月27?30日、リトル・トリベカ、パリ。 エマニュエル・セイソンのAparteレーベル第2弾はソロ+ ヴォーチェ弦楽四重奏団との共演3篇を収めている。全体のコンセプトは文学で、とりわけエドガー・アラン・ポーの「赤死病の仮面」に基づくカプレの「幻想的な物語」と、その続きとして2002年にグスターヴォ・レオーネが作曲した「赤の五重奏」をメインに据えている。ポーの「赤死病の仮面」は街中を赤死病という恐ろしい疫病が猛威をふるうなか、国王プロスペローは城内に籠り日夜臣下と饗宴に耽っていたところ、突然現れた死装束の魔物に殺されるという話。前半をカプレ、後半をレオーネが描いているが、オリジナル・ブックレットでセイソン自身が魔物に扮する凝りようだ。赤いステンドグラスの黒い部屋まで演出している。ルニエの「幻想的バラード」もポーの「告げ口心臓」からインスパイアされた作品で、またドビュッシーの「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」は直接ポーとは関連性はないが、ドビュッシーはポーの文学に関心が深く、「鐘楼の悪魔」と「アッシャー家の崩壊」のオペラ化を試みている。またヒンデミットのハープ・ソナタの第3楽章はドイツの詩人ヘルティの一節が掲げられている。20世紀前半に活躍したヴィルトゥオーソ、サルゼードの難曲「バラード」も物語性を秘めていて聴き応え満点。セイソンの語り口の巧さが光る。サルゼードはフランスに生まれ、メトロポリタン歌劇場の首席ハープ奏者を務めた所がセイソンと同じため、セイソンは「サルゼードの再来」と称されている。
オラトリオからのアリア集
 カルダーラ、ボノンチーニ、ガスパリーニ、ポルポラ、A.スカルラッティらの作品

  ブランディーヌ・スタスキエヴィチ(Ms)
  ティボー・ノアリ(Vn)指揮アンサンブル・レザクサン [Les Accents]
 録音:2017年10月。ヴァイオリン奏者ティボー・ノアリ率いるレザクサン(2014年結成)は、バロック時代、とりわけ17-18世紀イタリアの作品に注力した活動を展開している。今回彼らがとりあげたのは、未出版のオラトリオからのよりすぐり楽曲。カルダーラやアレッサンドロ・スカルラッティ、ポルポラらによる超絶技巧のアリアを、古楽シーンで活躍しているブランディーヌ・スタスキエヴィチが軽やかに変幻自在に歌い上げている。レザクサンの精緻な器楽アンサンブルも聴き物。
AP-177
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(2CD)
シャルル・グノー(1818-1893):弦楽四重奏曲全曲
 〔ト短調 CG.565 /ヘ長調 CG.563 /イ短調 CG.564 /「小四重奏曲」 ハ長調 CG.561 /イ長調 CG.562 〕

 カンビーニ=パリSQ
  [ジュリアン・ショヴァン、カリーヌ・クロケノワ(Vn)
   ピエール=エリック・ニミロヴィチ(Va) 酒井淳(Vc)]
 録音:2017年2月、10月|ピリオド楽器世界初録音全集。演奏するのは、酒井淳も参加のカンビーニ=パリ弦楽四重奏団。18世紀フランスのジャダンや19世紀フランスのフェリシアン・ダヴィッドなどの作品、また、モーツァルトを手がけてきている。「フランス近代歌曲の父」とも呼ばれるシャルル・グノーはなんといってもオペラ(声楽)で名を残しているが、少なくとも5曲の弦楽四重奏曲を完成させたと考えられている。といっても、その楽譜資料の残され方は残念な状況で、多くの弦楽四重奏のスケッチ譜がオークションで出回ったり、また生前に友人にプレゼントしたりと、楽譜資料は散逸していた。1993年、2作の完成した弦楽四重奏の楽譜がオークションにかけられた。その譜面は、第2番(イ長調)、第3番(ヘ長調)と記されていたが、作曲者の生前および死後に出版された楽譜には2種類の「第3番があるなど、まだまだ混乱がみられる状況。フランス・ロマン派音楽センター(パラツェット・ブル・ザーネ ' Palazzetto Bru Zane ')のサポートも得て、このグノーの弦楽四重奏曲5作品が、ピリオド楽器で世界初録音された。どの作品も美しい旋律に満ちており、どこかオペラの序曲や場面を思わせるような豊かな情景感。メンバーたちの奏でる楽器の音色もたいへん豊かで雄弁な語り口。優秀録音。大注目の2枚組。≪カンビーニ=パリ弦楽四重奏団≫2007年に結成された、シャンゼリゼ管、アンサンブル・バロック・ド・リモージュ、レ・タラン・リリクなど、世界の名だたる時代楽器団体でも演奏を重ねているメンバーが集った猛者集団。ヴァイオリン奏者・作曲家で、弦楽四重奏の発展に欠かせない存在のジュゼッペ・マリア・カンビーニ(1746-1825)の名を冠している。これまでにジャダンやフェリシアン・ダヴィドの作品などを手掛けてきている。
AP-176
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(2CD)
フォン・デア・ゴルツ〜J.S.バッハ:
 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ
BWV.1001-1006(全曲)
 ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(Vn
  使用楽器:パオロ・アントニオ・テストーレ(ミラノ)、1720年頃製
 録音:2017年8月28日-9月1日、2018年2月26日-3月1日、アンサンブル・ハウス、フライブルク。フライブルク・バロックo. でコンサートマスターを務めるゴルツによる、バッハの無伴奏全曲の登場!何よりピリオド楽器奏法を知り尽くし、さらにバッハをはじめとするバロック・レパートリーを骨の髄までしみこませたゴルツだからこそ到達できた地点といえるだろう。シャコンヌでは、細部のモチーフを活き活きと響かせており、バッハが旋律に埋め込んだ様々な要素が浮かび上がって来る。様々なことにあらためて気付かされるようだ。奏者に高度なテクニックを要求する作品であることを忘れさせるくらいに完璧な演奏と言える。ゴルツがひたすらに真摯につむぐバッハの音楽を、アパルテのみずみずしい美しさをたたえた優秀録音で体験できる、ぜいたくな2枚。
AP-175
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(2CD)
テレマン(1681-1767):9つの祝福された黙想による受難オラトリオ TWV.5: 2
 ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(Vn)指揮フライブルク・バロックo.
 アンナ・ルチア・リヒター(S;信心/信念/シオン〔教会〕)
 コリン・バルツァー(T;信心) ピーター・ハーヴィー(Br;イエス)
 ミヒャエル・フェイファー(T;ペトロ) ヘンク・ネーヴェン(Br;大司祭)
 録音:2017年12月1日、ライスハレ、ハンブルク、テレマン・フェスティヴァル、ライヴ。 テレマンの珍しい受難曲。キリストの最後の日々から復活するまでの物語が主軸となっているが、明確なストーリーはない。そのため、福音史家は存在せず、主な登場人物は、キリスト(6つのレチタティーヴォと6つのアリア)と、「信心」(8つのアリアと8つのレチタティーヴォ)、そしてキリストを激しく糾弾するアリアを一つ歌う大司祭など。この作品に関してはまだまだ知られていないことも多いが、1719年に着手され、1722年3月19日、聖金曜日に先立つ月曜日に初演されたという記録が残されている。その後も何度も再演されており、おそらくは18世紀でもっとも多く演奏された受難曲だったのではないかとされている。声楽とオーケストラによる明確なアンサンブルが、テレマンが、絶妙な器楽書法によって歌唱陣が歌うテキストを際だたせるように作ったこの作品の魅力を存分に引き出している。クラリネットの先祖の音色は木管セクションの音色の幅をふくらませ、作曲家のイマジネーションの豊かさを私たちに示している。テレマン、そして物語の人間性が見事にクローズアップされた、貴重な演奏となっている。
ガイヤール〜R.シュトラウス:チェロのための作品全集
 チェロ・ソナタ Op.6 ヘ長調/ロマンス ヘ長調 Op.13 /ドン・キホーテ Op.35 /
 4つの歌 Op.27 〜あした(作曲者によるチェロ、ピアノとソプラノのための編曲版)
  オフェリー・ガイヤール(Vc) アレクサンドラ・コヌノヴァ(Vn)
  ドヴ・シェインドリン(Va) ジュリアン・マスモンデ指揮チェコ国立so.
  ヴァシリス・バルブァレソス(P) ベアトリス・ウリア・モンゾン(Ms)
 録音:2017年7月12日-15日、チェコ国立so.スタジオ、プラハ/2018年1月22日-23日、31日、パリ。 フランスの人気チェロ奏者、オフェリー・ガイヤール。センシティヴで親しみやすい表情の演奏で、ファンを魅了し続けている。彼女の新譜は、R.シュトラウスによるチェロのための作品全集。古楽アンサンブルで通奏低音奏者として、さらにソロ・室内楽でも活躍しているガイヤールが奏でる、オーケストラとアンサンブルの魔術師R.シュトラウス作品集、期待大。ガイヤールは、実はR.シュトラウス(の作品)とは、長年恋におちることができなかったという。歴史(ナチとの関係)に関するものも原因だったという。自らの腕の中にR.シュトラウスの音楽を感じながら、常に何かひっかかるものがあったそうで、彼の作品に取り組むようになったのは20歳を過ぎてからだったという。「ばらの騎士」や「アラベラ」などによって、シュトラウスの音楽の催眠術的な力、魅惑的で抒情的な世界の魅力を知るようになっていく。「ドン・キホーテ」でチェロは、誇り高き遍歴騎士ドン・キホーテを、そしてヴァイオリンはドゥルシネア姫を、そしてヴィオラはドン・キホーテの従者サンチョ・パンサをあらわしている。姫君を演じるのは、第15回チャイコフスキー国際コンクールヴァイオリン部門で第3位に輝き、その演奏と美貌で話題となったアレクサンドラ・コヌノヴァ。サンチョ・パンサは、オルフェウス室内管のメンバーで、METでも活躍しているヴィオラのドヴ・シェインドリンによって演じられる。ドン・キホーテの人物像は、英雄の生涯の主人公よりも野心家に描かれており、最後の彼の死の描き方は、セルバンテスを超えている、とガイヤールは述べている。R.シュトラウスの管弦楽書法の巧みさと、独奏楽器の描き分けの見事さ、語り口の巧さがつまった名曲を、ガイヤールと他のメンバーが展開する親密な対話とともにお楽しみ頂ける。チェロ・ソナタはR.シュトラウスが19歳の時に書かれたもので、いきいきとした表情、そしてチェロとピアノがまるでオーケストラのような豊かな色彩でアンサンブルを繰り広げる。ロマンスは牧歌的な雰囲気だが、湧き上がってくる旋律を一気に書き上げたという。「あした」のチェロとピアノ、声楽版はいわば本作の初版。後にオーケストラ編曲され、ソロはヴァイオリンによって奏される。ここでは、チェロが奏でるメロディの繊細さと、ドイツ語の詩の韻律の美しさが見事に融け合っている。
ブラームス
 6つの小品 Op.118 /4つの小品 Op.119 /
 2つのラプソディ Op.79 /3つの間奏曲 Op.117
フランソワ・シャプラン(P)
フランスの名手フランソワ・シャプランによるブラームス。ドビュッシー演奏にも定評のあるシャプランだが、ここでブラームスの晩年の作品を中心にしたアルバムの登場。穏やかな哀愁に満ちた旋律が心に残る作品を、シャプランが稀有な詩性をもって演奏している。
円舞曲のエ [V FOR VALSE]
 リスト:メフィスト・ワルツ第1番/ウィーンの夜会(原曲:シューベルト「ワルツ・カプリス」)S.427
 シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化 Op.26 / チャイコフスキー:感傷的なワルツ(6つの小品 Op.51第6番)
 スクリャービン:ワルツ Op.38 / ローゼンタール:ウィーンの謝肉祭〜J.シュトラウスの主題によるフモレスケ
 ラヴェル:ラ・ヴァルス(作曲者自身によるピアノ独奏版)

 ヴァシリス・バルブァレソス(P)
 録音:2017年7月。題名はアメリカの SF 作家レイ・ブラッドベリの短編集「ウは宇宙船のウ [R Is for Rocket] 」あたりからの着想か。 1983年、ギリシャ生まれのピアニスト、バルブァレソスによる、ワルツ集。リストによるデモーニッシュなワルツ、シューマンの憂鬱さも漂うワルツ、チャイコフスキーの悲しきエレガンスなど、ワルツというジャンルの多彩さを魅せてくれる。そしてローゼンタール!リストの弟子にして、ブラームスやJ. シュトラウスと友人でもあったローゼンタールによる超絶技巧を尽くしたJ. シュトラウスの主題による自由闊達かつ華やかな作品は注目。バルブァレソスはジュリアード音楽院などで学び、2014年ジョルジュ・エネスコ国際コンクールで第3位に入賞している。イキのよいリズム感とスケール感が持ち味。
プロコフィエフ(1891-1953):
 ヴァイオリン・ソナタ集〔第1番 ヘ短調 Op.80 /第2番 ニ長調 Op.94a 〕
 アレクサンドラ・コヌノヴァ(Vn|使用楽器:サント=セラフィン、ヴェネツィア、1735年製
 ミヒャエル・リフィッツ(P)
 録音:2017年3月15日-18日、ブレーメン、ドイツ。『モルドバ出身の注目ヴァイオリン奏者、アレクサンドラ・コヌノヴァの登場。コヌノヴァは1988年生まれ、2012年、ヨーゼフ・ヨアヒム・ヴァイオリンコンクールで優勝、2015年のチャイコフスキー・コンクールで第3位となり、ヴィヴィッドな音色とドラマティックなヴィルトゥオジティで一躍世界の注目を集めた彼女が、プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタでCDデビューです。6歳でヴァイオリンを始める。ローザンヌ音楽院でルノー・カプソンに師事。ギトリス、I.オイストラフらの薫陶を受けています。これまでにクルレンツィス、ゲルギエフ、ラベック姉妹、C.テツラフ、メルニコフらと共演しています。2017年6月にシモノフ指揮、モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団と来日し、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏、熱き音色で聴衆を魅了しました。2018年のラ・フォル・ジュルネ・TOKYOでも来日が予定されており、注目されること間違いなし!の逸材です。プロコフィエフのソナタはいずれも難曲として知られていますが、コヌノヴァの集中と厚き音色、そしてヴィルトゥオーゾ性が遺憾なく発揮されたプログラム。第1番の第2楽章の激しさは圧巻。第2番第1楽章冒頭の旋律の繊細な音色にくぎ付けです。繊細な表情から激しい重音まで、コヌノヴァの表現の幅広さに驚かされる充実の内容となっています。ピアノのミハイル・リフィッツはウズベキスタン出身で既にデッカなどからリリース多数の名手。ヴィルデ・フラングとのデュオでも知られますが、ここでも見事な演奏です。』
ブランディーヌ・ヴェルレ〜F.クープラン(1668-1733):
 クラヴサン曲集第3巻より
  第13組曲〔ゆりの花ひらく/葦/胸飾りのリボン/フランス人気質、またはドミノ(仮面舞踏会の頭巾)純潔-はじらい
    -情熱-希望-誠実-忍耐-恋やつれ-媚-年老いた伊達男と時代後れの守銭奴-気のよいかっこう-無言の嫉妬-狂乱〕/
  第18組曲〔ヴェルヌイユの女/ヴェルヌイユの娘/修道女モニク/
       騒がしさ/感動/ティク=トク=ショク/片足の不自由な元気者〕/
 クラヴサン曲集第1巻 第3組曲 ハ短調〜第11曲「お気に入り」

 ブランディーヌ・ヴェルレ(Cemb
  使用楽器:アントニー・シデイ&フレデリク・バル、1985年製作〔モデル:リュッケルス、1636年製作〕
 録音:2017年5月。 フランスが生んだ根強い人気の名クラヴサン奏者ブランディーヌ・ヴェルレ、F. クープランの登場。ヴェルレのF. クープランといえば、1976-80年にかけて全曲録音されたアストレの名盤(廃盤)が有名だが、今回、リュッケルス・モデルの銘器コピーを奏でての新録音。1942年生まれという彼女、75歳での録音となった当盤は、全体として自然で力みのない音楽運び。「騒がしさ」や「ティク・トク・ショク」でも、浮足立つことのないテンポで聴かせる。F. クープランの音楽に込められた様々な表情をもらさず織り込んでいるようで、まさに巨匠の風格と言える。ヴェルレはライナーノートに「作曲家」と題した文章を寄せており(フランス語のみ)、こちらも興味深いものがある。
AP-169
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(4CD)
2CD価格
J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 全曲
 〔第1巻 BWV.846-869 (*) /第2巻 BWV.870-893 (#) 〕
 クリストフ・ルセ(Cemb
  使用楽器:リュッケルス(*/#)、1624年製(*)、1628年製〔ヴェルサイユ宮殿蔵〕(#) )
 録音:2015年4月20日-22日、王太子居室(*)、2013年6月、ドーファン宮(#)、ともにヴェルサイユ宮殿。既出録音のセット化。
 #2018年8月現在レーベル品切れ中、国内代理店へアナウンス以来 未入荷。
AP-168
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(2CD)
カリーヌ・デエ(Ms)
 「夢のあとに」(AP-106) + 「ロッシーニ」(AP-121)
  〔既出盤2点をセットにしたコンピレーション〕
AP-167
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(2CD)
シャヴィエ・サバタ(CT)
 「悪い奴ら〜ヘンデル:悪役アリア集」(AP-048) + 「カタルシス(浄化)」(AP-121)
  〔既出盤2点をセットにしたコンピレーション〕
F.クープラン(1668-1733):
 通奏低音をともなうヴィオール曲集(1728)より〔組曲第1番 ホ短調/組曲第2番 イ長調〕/
 趣味の和、または新コンセール(1724) 〜ヴィオールのための聖歌
フォルクレ:3つのヴィオールのための作品 MS 135 /ラ・ジルエット Vm7 6296
 酒井淳(ヴィオラ・ダ・ガンバ) クリストフ・ルセ(Cemb)
 マリオン・マルティノー、イザベル・サン=イヴ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
 録音:2017年7月4日-6日、ギャルリー・ドレ、バンク・ド・フランス、パリ。 注目のガンバ奏者・チェロ奏者・指揮者の酒井淳。2017年1月、「第15回「齋藤秀雄メモリアル基金賞」チェロ部門」を受賞し、あらためてその実力を世に知らしめた。アパルテよりリリースしたフォルクレ作品集 (AP-122) は、レコード芸術特選ほか、各紙で高く評価されたが、このたび、F. クープランを組み込んだプログラムの新譜が発売のはこびとなった。F. クープランの1730年の作品カタログには「通奏低音を伴うヴィオールのための作品集」という記載があったが、この曲集は出版されなかった。20世紀初頭、 'M. F. C.' とだけ記名があるヴィオール曲集の楽譜を音楽学者が見つけ、その装飾音の書き方やスタイル、タイトルの付け方から、これがカタログにも載っていた曲集で、1728年の作品であると特定した。曲集に「 F. C.」とイニシャルしか記さなかったこと、独特の演奏の難しさがあることから、クープランはこの楽器に親しんではいなかったのでは、という考えもある。しかし彼の父はヴィオール奏者であり、自身も楽器を所有していたこと、また、1728年のこの曲集(同年マラン・マレが亡くなっており、「葬儀」と題した楽曲も含まれることから、この曲集はマレに捧げられたとする説もあるが、だとすれば「トンボー」としたであろうということで、マレに捧げられたものではないとされている)の素晴らしさから、それは妥当ではないと考えられる。間に挟まれたフォルクレの作品は、散逸していた自筆譜資料からの作品(アントワーヌ、ジャン=バティストのどちらが書いたかは不明)。18世紀初期、イタリア趣味の要素が強い作品となっている。ディスクを通して、酒井が主旋律(あるいはプルミエ)を奏でている。まず何と言っても酒井が奏でるヴィオラ・ダ・ガンバの雄弁にして美しく、しっとりとした質感の音色が素晴らしい。霊感に満ちた即興的な装飾は、時に妖しさも感じさせる。録音が行われた場所は、F. クープランが住んでいた場所の近くということで、古の作曲家の息遣いが感じられるなか、録音が行われた。スケールの大きな音楽と、密度の濃い音色、そして酒井の音楽にピタリと沿ったルセら共演陣による通奏低音、すべてにくぎ付けの1枚。
ベレニーチェ、何をしているの?
 ハイドン:ベレニーチェのシェーナ Hob.XXIVa: 10 / J.C.バッハ:ウティカのカトーネ〜アリア「混乱し見失い」
 マリアナ・マルティネス:ベレニーチェのシェーナ
 アントニオ・マッツォーニ:アンティゴノ〜ベレニーチェのシェーナ / モーツァルト:ベレニーチェに K.70 (61c)
 ヨーハン・アドルフ・ハッセ:アンティゴノより〔シンフォニア/ベレニーチェのシェーナ〕

 レア・デザンドレ(Ms) ナタリー・ペレス、シャンタル・サントン=ジェフリー(S)
 ダヴィド・シュテルン指揮オペラ・フオーコ
 録音:2017年2月。 エジプトの女王、ベレニーチェ。威厳と美しさを兼ね備えたベレニーチェの物語には、様々な作曲家が音楽をつけた。それらを集めた興味深い1枚。ベレニーチェは威厳と美しいエジプトの女王で、国益のためにローマの男アンティゴノと結婚するように仕向けられる。最初はローマの男からの愛を拒み、愛する別の男性デメトリオを思うが、最後は他人の幸せのために身を引き、アンティゴノと結婚する、といった物語で、その中に裏切りや策略が盛り込まれている。オペラ・フオーコは、ピリオド楽器によるオーケストラで、オペラを演奏するために指揮者のダヴィド・シュテルンによって設立された。レア・デザンドレはクリスティの声楽アカデミーに選ばれ、来日公演にも参加していたメゾ・ソプラノ。他の2名のソプラノもダヴィド・シュテルン率いるオペラ・フオーコとの共演も多く、ベレニーチェの人物像のゆるぎない表現、オーケストラとのアンサンブル、すべてが見事に調和している。
AP-164
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(2CD)
リュリ(1632-1687):アルセスト(またはアルシードの勝利)(1674)
 [フィリップ・キノー(1635-1688)台本による音楽悲劇]
 ユディト・ファン・ヴァンロイ(S;アルセスト/栄光) エドウィン・クロスリー=メルセル(B−Br;アルシード)
 エミリアーノ・ゴンザレス・トロ(T;アドメート/第2のトリトン)
 アンブロワジーヌ・ブレ(Ms;セフィーズ/チュイルリーのニンフ/プロセルピーネ)
 ダグラス・ウィリアムズ(B−Br;リコメード/シャロン)
 エティエンヌ・バゾラ(Br;クレアント/ストラートン/プルトン/エオレ)
 ベネディクト・タウラン(S;マルヌのニンフ/テティス/ディアーヌ/セーヌのニンフ/ニンフ)
 ルシア・マルティン・カルトン(S;影/アレクトン/アポロン)
 エンゲランド・デ・ヒス(T;第1のトリトン/プルトーの使者)

 クリストフ・ルセ(Cemb)指揮レ・タラン・リリク、ナミュール室内cho.
 録音:2017年7月13日、15日-16日、サル・ガヴォー、パリ。 フランス・バロック界の大御所クリストフ・ルセ率いるレ・タラン・リリク。ラモー:「ツァイス」(2014年7月録音/AP-109)、リュリ:「アルミード」(2015年12月録音/AP-135)、ラモー:ピグマリオン(2017年1月録音/AP-155)につづくバロック・オペラ最新盤はリュリのアルセスト。リュリと作家キノーによる音楽悲劇「カドミュスとエルミオーヌ」に続く第二作目の音楽悲劇。1674年1月19日にパリの王立音楽アカデミーで初演され、国王と宮廷の人々は高く評価されたが、当時権力を持ち始めていたリュリに嫉妬して、音楽家たちはこの作品の評判を落とそうとした。にも関わらず1674年7月にも祝賀行事の一環としてこの作品が上演され、その後もフランス各都市で上演されるなど、成功をおさめた。コーラスの用いられ方が非常に効果的で、物語を見事に進行していく。様々なシーンを描写するオーケストラ音楽も、どれも簡潔にして充実している。【あらすじ】舞台はチュイルリー宮と庭園。アドメート王とアルセストの婚礼。アルセストに恋をしているアルシード以外は皆結婚を祝っている。そこへ隣国のリコメード王が登場し、戦いがおこり、アドメート王は瀕死の傷を負い、王のために自らの命をささげ出すものが現れれば、王の死は避けられるという。誰も死のうとしないのを見てアルセストは、自らを生贄に捧げる。アルシードが、アルセストと自分が結ばれてもよいのであれば、アルセストを取り戻すと約束し、黄泉の国へと向かう。黄泉の国でアルシードはプルトーを説得し、アルセストを取り戻し、現世に帰る。命を取り戻したアルセストはしかし、アドメート王を慕い続けるのを見て、アルシードは身を引き、アドメート王とアルセストはあらためて結婚をし、ミューズたちは結婚とアルシードの勝利をたたえて、幕となる。
クロード=ベニーニュ・バルバトル〔バルバストル〕(1724-1799):
 クラヴサン作品集第1巻(1759) /ソナタ形式の、ヴァイオリン伴奏つきクラヴサンのための作品、第1ソナタ

 クリストフ・ルセ(Cemb
  使用楽器:ジャン=クロード・グジョン&ジャック・ヨアヒム・シュヴァーネン、パリ、1749年以前製作)

 ジローヌ・ゴーベール=ジャック(Vn)
 録音:2017年9月25日-27日、シテ・ド・ラ・ミュジーク、パリ。 フランス、およびヨーロッパの古楽界を、鍵盤演奏および指揮の両方で牽引する鬼才、クリストフ・ルセが、18世紀後半にフランスで活躍したバルバトル作品を録音。ガイヤールのアンサンブル「プルチネッラ」などでも活躍するヴァイオリン奏者、ジローヌ・ゴーベール=ジャックとの共演も含まれる。バルバトルは1724年にディジョンに生まれ、父にオルガンを最初に習い、父亡きあと、ジャン・フィリップ・ラモーの兄弟にオルガンやチェンバロを学びながら教会のオルガニストを務めた。1750年にパリに定住し、コンセール・スピリチュエルのオルガン奏者として活躍、さらにサン=ロック教会、そしてノートル=ダム教会(ダカンらと分担しながら)のオルガン奏者も務めた。当時バルバトルは大成功を収めており、チャールズ・バーニーはサン・ロック教会でのバルバトルの演奏後に自宅に招かれたところ、自宅にはいつも30人弱の紳士淑女がつめかけており、ペダルつきオルガン、そしてリュッカースのチェンバロもあったというから、バルバトルが音楽家としても、そして経済的にも成功していたことがうかがわれる。ルセは、フランスのチェンバロ音楽は時期によって3つに分けられると述べている。第1期はルイ・クープラン、ダングルベール。第2期は、フランソワ・クープランやラモー。そして第3期が1730年以降、デュフリやロワイエ、そしてバルバトルらに代表されるとしている。第1期はルイ14世の影響で、宮廷舞曲に倣った典雅な作品が多く、第2期は少しイタリアの様式の影響も受けつつ親密な作品が多く、そして第3期はヘンデルや D.スカルラッティらの作品がパリでも出版されていたこともあり、テクニックの効果重視の作品が多くみられ、同時にフランソワ・ブーシェの絵画のような牧歌的世界の作品も多い、としている。バルバトルのクラヴサン作品集第1巻は1759年にパリで出版された。手の交差も要求されるテクニック、さらには古典派を思わせるアルベルティ・バスの伴奏形もみられる。チェンバロでオーケストラを再現するような多様な音色も求められる作品が並ぶ(第2集は出版されなかった)。クラヴサン独奏曲とカップリングに収録されたヴァイオリンとの作品は、3楽章構成で、第2楽章ではヴァイオリンがソリスト的活躍もみせる秀作。全篇を通して、フランス風序曲のように壮麗でオーケストラをも思わせる豪奢な響きと、独奏曲ならではの繊細な表情や集中を要する作品で、ルセの真骨頂ともいえる内容となっている。
AP-162
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(2CD)
フォーレ
 ピアノ三重奏曲 ニ短調 Op.120 P/Vn/Vc /アンダンテ 変ロ長調 Op.75 P/Vn /
 夜想曲第12番 ホ短調 Op.107 P /蝶々 イ長調 Op.77 P/Vc /
 ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調 Op.13 P/Vn /夜想曲第11番 嬰ヘ短調 Op.104 No.1 P /
 チェロ・ソナタ第2番 ト短調 Op.117 P/Vc /歌曲集「幻想の水平線」 Op.118 P/T /
 ロマンス イ長調 Op.69 P/Vc /子守歌 ニ長調 Op.16 P/Vn /
 ヴァイオリン・ソナタ〔第1番 ニ短調 Op.109 /第2番 ホ短調 Op.108 〕 P/Vn /
 ロマンス 変ロ長調 Op.28 P/Vn /夜想曲第13番 ロ短調 Op.119 P

 シモン・ザウイ(P P ) ピエール・フシュヌレ(Vn Vn
 ラファエル・メルラン(Vc Vc ) ダヴィド・ルフォー(T T
 フランスの若手奏者たちによる、フォーレの晩年の作品を中心に編まれた室内楽作品集。「幻想の水平線」はフォーレの最後の歌曲集で、第一次世界大戦で戦死した若者ミルモンの遺作詩集によるもので、全4曲を通して潮騒など海のイメージが見事に表現されている。ヴァイオリン・ソナタでのみずみずしい表現、夜想曲の密度の濃い世界など、フォーレの魅力を存分に味わえる。
モーツァルト:幻想曲 ハ短調 K.457 /ピアノ・ソナタ
 〔第14番 ハ短調 K.457 /第16 (15)番 ハ長調 K.545 /第18 (17)番 ニ長調 K.576 〕

 マクシム・エメリャニチェフ(Fp)
 録音:2017年3月8-10日、リトル・トリベカ、パリ|使用楽器:ポール・マクナルティ制作〔モデル:アントン・ヴァルター、1792年頃〕。 ロシアからまたまたとてつもない才能が現れた。1988年生まれのマクシム・エメリャニチェフ。実はこれまでもクルレンツィスのムジカエテルナのモーツァルトのダ・ポンテ・オペラ三部作(特に「フィガロの結婚」)録音で、通奏低音奏者として驚くべき才気煥発ぶりを発揮、注目されていた。彼はムジカエテルナの通奏低音のみならず、指揮者としてもロジェストヴェンスキーの愛弟子で、ムジカエテルナやイタリアのオルケストル・イル・ポモドーロやシンフォニア・ヴァルソヴィアなどを振り、2018年9月には東京so. とブラームスの交響曲第1番やベートーヴェンの「皇帝」(スティーヴン・ハフ独奏)で日本デビューが予定されている。このアルバムはエメリャニチェフのピアノ・ソロ・デビュー盤。得意のモーツァルトで、ソナタの中でも特に充実した3曲と、第14番と関連のある ハ短調の幻想曲を披露、一聴して尋常ならざる音楽性に釘付けとなる。演奏は楷書風で落ち着いているが、クルレンツィスのピアノ版というか、ムラヴィンスキーの指揮を思わす緊張感と説得力、リヒテルを思わす深い音楽性、繰返しの際の装飾音はシュタイアーばりの計算された即興性に天才を感じさせる。容姿も青い瞳が印象的な BL 風で、今後凄い人気になること間違いなしの逸材。
モーツァルト:ピアノ協奏曲集
 〔第23番 イ長調 K.488 /第24番 ハ短調 K.491
  (カデンツァ:フランソワ・シャプラン)〕
フランソワ・シャプラン(P)
ジャン=フランソワ・
 ヴェルディエ指揮
ヴィクトル=ユーゴーo.
 録音:2017年2月18日-19日。 フランソワ・シャプランはパリ音楽院でヤンコフ、ロバン、ペヌティエに師事。ショパンやドビュッシーのディスクをリリースし、来日公演も行っているので日本にもファンの多い個性派。2015年にリリースされたスクリャービンのマズルカ全集(EVCD-006)では、弱音主体で、幻のようにキラキラした不可思議な世界で高く評価された。今回の新譜は、モーツァルトの協奏曲2篇。今回もシャプランならではのピアノの美音に思わず引き込まれる。 ハ短調のカデンツァはシャプラン自身による物。端正なタッチと即興性に富んだ演奏が光る。
Besame Mucho
 ピアソラ:リベルタンゴ/オブリビオン/コントラステス/ミロンガ・アン・レ / ベラスケス:ベサメ・ムーチョ
 ヴァイル:ユーカリ / カルロス・ガルデル: Mi Buenos Aires querido / コンパイ・セグンド: Chan Chan
 セルジュ・レズヴァニ: La Peau Leon / カロル・ベッファ:マヨール広場
 コール・ポーター: My Heart belongs to Daddy / アンヘル・ビジョルド: El choclo

 ジョアン・ファルジョ指揮リエージュpo.、アンサンブル・コントラスト
 録音:2016年12月12日-16日、リエージュ・フィルハーモニー・ホール、ベルギー、ライヴ。 ヴァイオリン、ピアノ、声、クラリネット、サックス、ダブルベース、ドラムスからなるジャンルを超えたグループ「アンサンブル・コントラスト」がリエージュ・フィルと共演、オーケストラの壮大なサウンドで楽しむクロスオーバーの世界!ライヴ録音で曲ごとの拍手も収録、会場の熱気まで感じられる。ピアソラのタンゴが楽しめる人なら文句なくハマるだろう。
ヴォカリーズ
 サン=サーンス:「サムソンとデリラ」〜あなたの声に心は開く
 ヘンデル:「ジューリオ・チェーザレ」〜嵐で難破した船が / フランク:天使の糧
 パーセルへの導入的即興 / パーセル:「ディドとエネアス」〜ディドの嘆き
 グリエールへの導入的即興 / グリエール:コロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲 Op.82 〜第1楽章
 プッチーニ:「トゥーランドット」〜誰も寝てはならぬ / ラフマニノフ:ヴォカリーズ Op.34 No.14
 サティへの導入的即興 / サティ:ジュ・トゥ・ヴ / バーンスタイン:「ウェストサイド物語」〜どこかに
 ラウラへの導入的即興 / チャーリー・パーカー:ラウラ / エディット・ピアフ:群衆
 マイケル・ジャクソン:スリラー(電子:ロイ・ポンティウー)

 ロマン・ルルー(Tp) ティエリー・エスケシュ(Org)
 録音:2017年2月。使用オルガン:アリスティド・カヴァイユ=コル、1878年製作〔ヴィクトル・ゴンザレス修復、1977年&リヨン・オーディトリウムに移築)|編曲:マヌエル・ドゥトルラン、ティエリー・エスケシュ。 1983年生まれの天才トランペッター、ロマン・ルルー最新盤。エリック・オービエに師事しており、古きよきフランスを思わせる歌心あふれる音色が魅力。この盤では、室内楽などで共演を重ねるティエリー・エスケシュをオルガンに迎え、有名アリアを中心に収録した。エスケシュが編曲を手がけているのも注目。いくつかのアリアの前段として、アリアの要素を盛り込んだエスケシュのオルガン即興が聴けるのもうれしいかぎり。グリエールが書いたヴォカリーズ、コロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲も、雄大なスケールで圧巻。最後の「スリラー」はトランペット、オルガンと電子音であの世界が見事に再現されている。オルガンとトランペットの相性の良さに驚くとともに、ルルーの歌心、エスケシュの広い宇宙に感じ入る1枚。
ハイドン(1732-1809):交響曲第83番 ト短調 Hob.I: 83「めんどり」(*)
モーツァルト(1756-1791):ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K453
マリー=アレクサンドル・ゲナン(1744-1835):交響曲 ニ短調 Op.4 No.3
 ジャスティン・テイラー(Fp)
 ジュリアン・ショヴァン指揮ル・コンセール・ド・ラ・ローグ
 録音:2016年10月、ルーヴル・オーディトリウム(*) /2017年2月、ジャン=バティスト・リュリ音楽院、プトー(*以外) 。 フランスの気鋭ヴァイオリン奏者、ジュリアン・ショヴァンの指揮による、ハイドンのパリ交響曲(第82-87番)を録音するプロジェクトの第2弾。当時の演奏会習慣に則り、交響曲をメインに据え、様々な編成の楽曲でプログラムが構成されている。ハイドンの交響曲「めんどり」の品の良さは格別。モーツァルトでも、ひとつひとつのパッセージがきわめて細やかで活き活きと響いている。ソリストを務めるジャスティン・テイラーは、23歳の若さでブルージュ古楽国際コンクール(2015年)で優勝した逸材。オリヴィエ・ボーモンやブランディーヌ・ランヌに学び、さらにピアノをロジェ・ムラロにも学んだというから、古楽演奏も、モダーンピアノのテクニックも併せ持った注目の存在。ここでも前奏から素晴らしい演奏で参加している。マリー=アレクサンドル・ゲナンは、古典派からロマン派へと移行する時期のパリを代表する存在だった。1783年に設立された、コンセール・ド・ラ・ローグ・オランピック(ハイドンの「パリ交響曲」もこの団体のために書かれた)でも、第二ヴァイオリン奏者をつとめていた。1778年、モーツァルトのバレエが王立音楽アカデミーで、モーツァルトの名を伏せて上演された頃、ハイドンの交響曲の演奏機会が増えていたが、ゲナンは名声をほしいままにしていたし、他にカンビーニ、ゴセックといったフランスの作曲家たちの交響曲も頻繁に演奏されていた。オーストリア=ドイツ圏の交響曲と同じくらいに、フランスの交響曲も熱狂的に受け入れられており、とりわけゲナンはそのフランス陣の中でもトップクラスの作曲家だったといえるだろう。ル・コンセール・ド・ラ・ローグは2015年、ヴァイオリン奏者のジュリアン・ショヴァンによって設立された。この名称は、1783年に設立された当時最高のオーケストラ、コンセール・ド・ラ・ローグ・オランピックから名前をとっている。ハイドンの「パリ交響曲」もこの団体のために書かれ、マリー=アントワネット下のチュイルリー宮でレジデントo. を務めていた。メンバーはほぼ全員フリーメイソンによって構成され、名 称のLogeもフリーメイソンのLodgesに因んでいる。ショヴァンはOlympicという文言を団体名に使うことをオリンピック委員会から禁止されたため、2016年から名称をル・コンセール・ド・ラ・ローグとして活動を続けている。
SOAVE E VIRTUOSO 〔愛らしさとヴィルトゥオーゾ〕
 タルティーニ:フラント・トラヴェルソのための協奏曲〔ト長調 Gimo 294 /ニ長調 Gimo 291 /ト長調 Gimo 293 〕
 サンマルティーニ:ソプラノ・リコーダーのための協奏曲 ヘ長調
 ヴィヴァルディ:リコーダーのための協奏曲 ハ短調 RV.441 /ソプラノ・リコーダーのための協奏曲 ト長調 RV.443

 アレクシス・コセンコ(リコーダー) レザンバサデュール
 録音:2017年1月。 バロック時代のリコーダー作品集。レ・ザンバッサデュールのリーダーでフルート奏者でもあるアレクシス・コセンコが、タルティーニやヴィヴァルディによる、アクロバティックともいえる超絶技巧のリコーダーパートを披露。レザンバサデュールは2010年フルートおよびリコーダーの名手アレクシス・コセンコによって設立された器楽アンサンブル。ドレスデンの音楽を取り上げたシリーズなども発表しており、演奏・プログラミングの両面で意欲的に活動を展開している。
ジャン=フィリップ・ラモー(1683-1764):
 バレエつきオペラ「ピグマリオン」(1748) /オーケストラ組曲「ポリムニーの祭典」(1745)
 シリル・デュボワ(T;ピグマリオン) セリーヌ・シーン(S;彫像)
 マリ=クロード・シャピュイ(Ms;セフィーズ) ウジェニー・ワルニエ(S;愛)
 クリストフ・ルセ指揮レ・タラン・リリク
 ジョルディ・カザルス合唱指揮アルノルト・シェーンベルクcho.[エルヴィン・オルトナー(芸術監督)]
 録音:2017年1月20日、27日、アン・デア・ウィーン劇場。 クリストフ・ルセとレ・タラン・リリクによる、ラモーの代表作「ピグマリオン」。芸術家ピグマリオンが、自らが彫った彫像に恋をし、恋人セフィーズはこれに激怒し、ピグマリオンのもとを去るが、「愛」が現れ、彫像に命をあたえ、彫像は様々な舞曲を踊り、最後は大団円で幕となる、というバレエつきオペラ。ピグマリオンの描写や、色とりどりの舞曲など、ラモーの魅力満載の代表作。ピグマリオン役、モーツァルトの舞台を中心にヨーロッパで活躍のシリル・デュボワ(T)の芝居っけたっぷりの巧みな歌唱が光る。カップリングはオーケストラ組曲「ポリムニーの祭典」。夢幻的ともいえる美しい和声に彩られた序曲の冒頭は今なお斬新に響く。レ・タラン・リリクの面々の器楽の巧さ、そしてそれを引き締めるルセの通奏低音(Cemb)の音色もなんとも鮮烈で、手に汗にぎるようなオーケストラ組曲となっている。
チャイコフスキー
 弦楽四重奏曲第1番 ニ長調 Op.11 /弦楽六重奏曲 ニ短調 Op.70「フィレンツェの想い出」
 ノブースSQ
  [キム・ジェヨン、キム・ヨンウク(Vn) イ・スンウォン(Va) ムン・ウンフィ(Vc)]

 オフェリー・ガイヤール(Vc) リズ・ベルトー(Va)
 録音:2015年6月。 2016年に来日した俊英ノブース・クァルテット、第2弾の登場。今回とりあげたのはチャイコフスキー。第2楽章の「アンダンテ・カンタービレ」でも広く愛される弦楽四重奏曲第1番では、四人の間に漂う濃密な空気感がたまらない。弦楽六重奏曲「フィレンツェの想い出」ではリズ・ベルトーとオフェリー・ガイヤールの女性2名が参加、高貴さが増したアンサンブルで、無限に広がる音の世界をお楽しみ頂ける。
シューマン(1810-1856):
 小さな子供と大きな子供のための12の連弾作品集 Op.85 より〔第6曲「嘆き」/第12曲「夕べの歌」〕/
 3つのロマンス Op.94 /幻想小曲集 Op.73 /おとぎ話 Op.132 (*) /夜に Op.74 No.4

クララ・シューマン(1819-1896):3つのロマンス Op.22
 パトリック・メッシーナ(Cl|使用楽器:ビュッフェ・クランポン
 ファブリツィオ・チオヴェッタ(P) ピエール・ルネール(Va;*)
 録音:2016年6月。 2003年からフランス国立o. の首席クラリネット奏者を務めるパトリック・メッシーナ。メニューインから「The Magic Clarinet」と称された存在。ロイヤル・コンセルトヘボウo. やシカゴso. などからも首席客演指揮者として招かれている世界が認める実力者。そんなメッシーナがAparteレーベルから登場。収録されているローベルトの作品は、おとぎ話 Op.132 (1853年)を除いてすべて1849年に作曲された物。シューマンが創作意欲に満ちていた時期の作品で、いくつかはメッシーナ自身の編曲による物。そしてクララ・シューマンの作品(1853年作曲)のロマンスも収録。ローベルトの息 遣いを濃厚に感じるロマン的な美しい作品。ローベルトとクララ、二人の作品を通して、詩的な宇宙を旅することができる1枚。ヴィオラのピエール・ルネールも参加して、リリシズムの世界に彩りを添えている。
ベートーヴェン
 弦楽四重奏曲第11番 Op.95 ヘ短調「セリオーソ」(マーラー編曲弦楽合奏版)/
 弦楽四重奏曲第14番 嬰ハ短調 Op.131
 ロベルト・フォレス=ヴェセス指揮オーヴェルニュo.
 録音:2016年9月21日-24日。 フォレス=ヴェセス率いるオーヴェルニュ管の弦楽メンバーによるベートーヴェン。「セリオーソ」はマーラー編曲によるもので、コントラバスも加えられ、音楽の力強さが増している。ヴェセス率いるオーヴェルニュ管のメンバーが、心地よい緊張感の演奏を展開している。
シューベルト
 歌曲集「白鳥の歌」/
 3つのピアノ小品〜第2番 D.946 No.2
シュテファン・ゲンツ(Br)
ミシェル・ダルベルト
(P|使用楽器: Boesendorfer
 録音:2017年2月18日-21日、テイエ・ファン・ゲースト・スタジオ、ドイツ。 ドイツを代表するバリトン歌手シュテファン・ゲンツと、シューベルト弾きとしても名高いピアニスト、ミシェル・ダルベルトが、「白鳥の歌」を録音した。「冬の旅」 (Claves, 50-1606) に続くリリースで、ピアノ独奏曲もカップリングされている。このたびの「白鳥の歌」に至るまでに、ゲンツとダルベルトは既に20年以上にわたってシューベルトだけでなく、ヴォルフやシューマン、ブラームスらの歌曲で共演を重ねてきた。ゲンツの細かな表情にダルベルトも繊細にピアノを重ね合わせ、前に出るところと引くところの間合いも絶妙。ゲンツの美しいドイツ語も印象的。また、ダルベルトのピアノ独奏も実に雄弁で、様々な情景が浮かぶ名演となっている。
ダルベルト〜フォーレ:ピアノ作品集
 バラード 嬰ヘ長調 Op.19 /即興曲第3番 変ロ長調 Op.34 /主題と変奏 嬰ハ短調 Op.73 /
 夜想曲〔第6番 変ニ長調 Op.63 /第7番 嬰ハ短調 Op.74 /第9番 ロ短調 Op.97 /
     第11番 嬰ヘ短調 Op.104 No.1 /第13番 ロ短調 Op.119 〕
 ミシェル・ダルベルト(P|使用楽器:ベヒシュタイン
KKC-4100
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国内仕様盤
1.1CD価格
 録音:2017年1月7日、パリ国立高等演劇学校、ライヴ。 ミシェル・ダルベルトは、NHK「スーパー・ピアノレッスン」で講師を務め日本でもおなじみの、いわずとしれたフランスの名ピアニスト。2014年に来日30周年を迎え、直近では2016年3月にも来日、聴衆を魅了した。アパルテレーベル第2弾となる当盤は、ベヒシュタインのピアノを用いたフォーレの世界。洒脱な感性、作品と作曲家への深い考察、そしてそれらを音で表現するテクニックを併せ持つダルベルトが、美しい横の線(メロディ)と密度の濃い和声が織りなすフォーレ作品の世界を見事に解き明かする。フランスの大家による、フランス作曲界の大御所の真価を問う1枚の登場といえるだろう。ブックレットには、「ガブリエル・フォーレへの私的考察」と題し、自分とフォーレの音楽との出会い、どのようにしてフォーレの世界を発見していったか、そしてフォーレの音楽を理解するための鍵についてなどが、興味深くつづられている。
モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581
ウェーバー:クラリネット五重奏曲 変ロ長調 Op.34
 ピエール・ジェニソン(Cl|使用楽器:ビュッフェ・クランポン) カルテット212
 録音:2016年11月、ニューヨーク。 クラリネットのピエール・ジェニソンは1986年生まれ。2014年に東京で行われたジャック・ランスロ国際クラリネットコンクールで優勝している。マルセイユ音楽院、国立パリ高等音楽院などで学んでいる。2007年にブルターニュo. の首席奏者に任命、2010年からはネゼ=セガンの招きを 受けてロッテルダム・フィルともソリストとして演奏している。室内楽、ソリストとしても多忙をきわめる売れっ子奏者。デビューCD「メイド・イン・フランス」(AP.096)に続く第2弾は、モーツァルトとウェーバーの名曲クラリネット五重奏曲を収録。共演するのはメトロポリタン歌劇場o. のメンバーたちによって結成されたカルテット212。モーツァルトもウェーバーも偉大なオペラ作曲家であり、まさにこのカルテットの演奏もそうした素地があってこその歌心に満ちた物。ジェニソンの美しい音色が名歌手のアリアのように響き、オペラを聴いているような気分になる1枚。
フェルナンド・ド・ラ・トンベル(1854-1928):歌曲集
 Hier au soir 詩: V. ユゴー/ Les Larmes 詩:オーギュスト・ドルシャン/ Il me l 'a dit 詩:不詳/
 Ischia 詩:アルフォンス・ド・ラマルティーヌ/ Croyez-moi ! 詩:ピエール・バルビエ/
 La Croix de bois 詩:ポール・ハレル/蝶々 詩:テオフィル・ゴーティエ/
 Passez nuages roses 詩:ジョルジュ・ブテロー/ Cavalier mongol 詩:マルセル・ド・リウス/
 Souvenir 詩:不詳/ Promenade nocturne 詩:テオフィル・ゴーティエ/ Elle est loin 詩:ピエール・バルビエ/
 Sans toi... 詩:エリ・ブラシェ&ポール・ド・モンヴェルドゥン/ Sonnet 詩:エティエンヌ・ド・ラ・ボエティ/
 Veux-tu les chansons de la plaine ? 詩:不詳/Ha ! Les bœufs 詩:アンリ・ダルセー/
 Chant-priere pour les morts de France 詩:レオン・シャドゥルヌ/
 La Vieille chanson 詩:ギィ・ル・コート、ヴィコント・ド・ケルヴェグエン/ Si le roy m 'avait donne 詩:不詳/
 Couplets de Cherubin 詩:ピエール=オーギュスタン・カロン・ド・ボーマルシェ/
 La Pernette 詩:オラス・ド・カリアス/ Ballade 詩:アンドレ・テュイエ / Pourquoi 詩:ゴルジュ・ブテロー

 タシス・クリストヤンニス(Br) ジェフ・コーエン(P)
 録音:2017年1月。全曲世界初録音。 フランスのサロンで活躍した作曲家、フェルナンド・ド・ラ・トンベルの歌曲集。全曲世界初録音。トンベルは親戚や優れたアマチュア歌手たちのために歌曲を多く書いた。女性が主人公の愛の詩に多く付曲しており、フランスのロマン派の雰囲気たっぷりの作風をたのしむことが出来る。ギリシャ出身のバリトン、クリストヤンニスが甘やかに歌っている。現在では演奏会のプログラムに組み込まれることも多くなってきたトンベルの歌曲の、貴重な録音の登場といえるだろう。
私に一票を!
 Vincent Hyspa (1865-1938): Le Toast du President / Gustave Nadaud (1820-1893): Droite, Gauche, Centre
 Leon Xanrof (1867-1953): La Chambre et le Senat / Vincent Hyspa (1865-1938): Les Complots
 Jules Jouy (1855-1897): Un Bal chez le Ministre / Aristide Bruant (1851-1925): Plus d'patrons
 Nicolas Boileau (1636-1711): Quand on n 'a pas le sou / Frederic Boissiere (?-1889): Un Vrai Republicain
 L'Affiche electorale, sur un air de Andre-Ernest-Modeste Gretry (1741-1813)
 Charles Pourny (1839-1905): L'impot sur les celibataires / Adrien-Francis Rodel (?-1926): Le Galant Siffleur
 Le Metingue des femmes, sur un air de Maurice Mac-Nab (1856-1889)
 Joseph-Andre Vignix: La Priere de Jeanne d'Arc / A Jeanne d'Arc, sur un air d'Aime Maillart (1817-1871)
 Pierre-Jean de Beranger (1780-1857): Notre Coq / Vincent Hyspa (1865-1938): Le Prisonnier de l 'Elysee
 La Marseillaise des locataires par le Rouget du cinquieme,
  sur un air de Claude Joseph Rouget de Lisle (1760-1836)

 ラ・クリック・デ・リュネジアン アルノー・マルゾラティ(Br)
 ララ・ノイマン、イングリード・ペリューシュ(S)
 録音:2016年5月-6月。 フランスのシャンソンを探求しているフランスのバリトン、アルノー・マルゾラティ。今回はフランスの1780-1920年の音楽遺産を再発見する団体、パラツェット・ブリュー・ザーネの委嘱を受けて、政治を扱った内容のテキストを中心に選曲している。
Chamuyo
 Leonardo Teruggi: En si / Nada casi / Milonga en seis / Era de esperar /
           Cuentos graves / Milonga del eco / 777
 Juanjo Mosalini: Chamuyo / Candombe blanco / Mar y Sol / Desplumao / Code 18

 ジュアンジョ・モサリーニ(バンドネオン) セバスティアン・シュレル(Vn)
 ロマン・デシャルム(P) レオナール・テルージ(Cb)
 録音:2016年9月12日-15日。 ジュアンジョ・モサリーニはバンドネオンの名手で小松亮太との共演などで来日もしているファン・ホセ・モサリーニの息子。リシャール・ガリアーノのアルバムにも参加しているヴァイオリンのシュレル、クラシックの室内楽奏者としても篤い信頼を寄せられているデシャルム、そしてジャンルを越えた活躍のベーシスト、レオナール・テルージという4人によるカルテットの登場。Chamuyoとはおしゃべり、あるいは耳寄りな情報、を意味する言葉。このディスクからも、4人の俊英たちが、親しくしかし丁々発止にアンサンブルを愉しんでいることがよく感じられる。
もろびとこぞりて
 J. F. ジェイド:神の御子は / グルーバー:きよしこの夜 / corde natus ex parentis
 サセックスのキャロル(クリスマスの歌) / ホルスト:凍てつく真冬に / 天使がおとめのもとに
 神の御子が生まれた / プレトリウス:エサイの根より/甘き喜びのうちに / バッハ:主よ、人の望みの喜びよ
 Gaudette / J.S.バッハ:目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声/ アダン:オー・ホーリー・ナイト
 ムトン: Nesciens mater virgo virum / エマニュエルよ、きたれ
 James R.Murray: Away In a Manger / メンデルスゾーン:あめには栄え

 クレイグ・レオン指揮オーヴェルニュ室内o.
カタルシス(浄化)
 ジュゼッペ・マリア・オルランディーニ(1676-1760):「アデライーデ」より
  〔レチタティーヴォ「策略がゆるしたもの」/アリア「高慢な植物が」/
   レチタティーヴォ「私の愛する人はなんと甘く語ることか」/アリア「すでに私には見える」〕
 フランチェスコ・バルトロメオ・コンティ(1681-1732):「グリゼルダ」より
  〔レチタティーヴォ「お前のために、わが妻グリゼルダよ」/アリア「いとしい妻よ、私の魂は疲れている」〕
 ピエトロ・トッリ(1650-1737):「グリゼルダ」〜アリア「お前の涙によって」
 ヴィヴァルディ(1678-1741):「ファルナーチェ」〜アリア「血が血管を冷たく走り」
 ヘンデル(1685-1759):「テッサリアの王アドメート」より
  〔序曲/伴奏つきレチタティーヴォ「おそろしいファントムよ!」/アリオーソ「私の目をとじ」〕
 ハッセ(1699-1783):「聖アゴスティーノの改宗」より
  〔伴奏つきレチタティーヴォ「神よ、あなたのためだけに生きよう」/アリア「私は悔やむ、わが神よ」〕
 アッティリオ・アリオスティ(1666-1729):「カイオ・マルツィオ・コリオラーノ」より
  〔伴奏つきレチタティーヴォ「あきらめよ」/アリア「神よ」〕
 アントニオ・カルダーラ(1670-1736):「テミストクレ」〜アリア「あなたの甘い涙をかわかせ」
 ドメニコ・サッロ(1679-1744):「イル・ヴァルデマーロ」より
  〔伴奏つきレチタティーヴォ「むごい運命よ!」/アリア「名誉が心で話すとき」〕

 シャヴィエ・サバータ(CT) ジョルジュ・ペトルー指揮アルモニア・アテネア
 録音:2015年9月22日-26日、アテネ。 シャヴィエ・サバータ、アパルテ・レーベル第3弾。1976年生まれのサバータは、ビオンディ、ヤーコプス、サバールといった古楽界の重鎮たちとの共演も重ねており、まさにあぶらの乗ってきているカウンターテナー。1600年頃のオペラの草創期、知識人たちは、聴衆の魂が、オペラのもつ力 強いドラマによって揺り動かされ浄化されることをめざし、オペラというジャンルの確立を試みた。サバータは当アルバムを「カタルシス(浄化)」と題し、激情に満ちたアリアでプログラムを構成。心を揺り動かされる強さに満ちた1枚。アルモニア・アテニアはピリオドとモダーンの両方を演奏するオーケストラ。ギリシャの指揮者ペトルーが音楽監督を務めている。
AP-142
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(1CD)
亡命者たち [Exiles]
 ブロッホ:ヘブライ狂詩曲「シェロモ」(#) /ユダヤ人の生活から(全3曲)(*) /ウェディング・ダンス(伝統曲)(*)
 コルンゴルト:チェロ協奏曲 ハ長調 Op.37 (#) /死の都 Op.12 〜ピエロのひとり歌(#)
 プロコフィエフ:ヘブライの主題による序曲 Op.34 (*)
 ハヴァ・アルバースタイン(1947-):幼いイザークに歌うサラの子守歌(*)
 伝承曲: Freilechs / Sim Shalom / Azoy Tantzmen in Odessa

  オフェリー・ガイヤール(Vc)
  ジェイムズ・ジャッド指揮モンテ・カルロpo.(#) ジルバ・オクテット団員(*)
APLP-142
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[2LP]
2.5枚価格
 録音:2015年7月、2016年6月。 LP 仕様: 150g 。アルバースタインはポーランドに生まれイスラエルに移住した女性シンガーソングライター。 気品としなやかさを兼ね備えたフランスの女性チェロ奏者、オフェリー・ガイヤール。彼女の最新盤は、「亡命者たち」と題した1枚。前作「アルヴォラーダ」(AP.104)でスペイン色豊かな世界へと私たちをいざなったガイヤール。本作では、アメリカに亡命した作曲家ブロッホ、コルゴルト、プロコフィエフらの足跡をたどる旅路へと我々を誘う。祈り(「ユダヤ人の生活から」)、ヘブライの物語(シェロモ)、そして子守歌やウェディング・ダンス、宗教的な瞑想・・・。ユダヤの移民の文化や日常生活、様々な側面を反映した音楽を通して、アメリカの地から祖国に思いを馳せた作曲家たちの思いを代弁するかのような1枚。ガイヤールの親しみのある表情と、深く響く音色が心に沁みる。彼女の音色を堪能できるよう、アナログも発売されるとあって、注目盤。
AP-141
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(2CD)
1.5CD価格
初出音源付、オフェリー・ガイヤール〜C.P.E.バッハ(1714-1788):
 チェロ協奏曲 イ短調 Wq.170, H.432 (*) /シンフォニア第5番 ロ短調 Wq.182, H.661 (*) /
 チェロ協奏曲 イ長調 Wq.172, H.439 (*) /
 2つのヴァイオリンと通奏低音のためのトリオ・ソナタ ハ短調 Wq.161, H.579
  「多血質と憂鬱質 [Sanguineus & Melancholicus] 」(#)
 シンフォニア第3番 ハ長調 Wq.182 No.3, H.659 (+) /チェロ協奏曲第2番 変ロ長調 Wq.171, H.436 (+) /
 シンフォニア ホ短調 Wq.178, H.653 (+) /ソナタ ニ長調 Wq.137, H.559 (+) /
 ピッコロ・チェロとチェンバロのためのソナタ Wq.137, H.559 (+) /チェンバロ協奏曲 ニ短調 Wq.17, H.420 (+)

 オフェリー・ガイヤール(Vc
  使用楽器:フランチェスコ・ゴフリラー(1737)/通奏低音
/ピッコロVc;+)指揮
 フランチェスコ・コルティ(Fp|使用楽器:
  Johann Andreas Stein (1785) (*) / Franz Baumbach (Vienne, 1790) (#) /
  F.ブランシェ、1733年製 (+) /フランツ・バウムバッハ、1780年製(+)

 ティボー・ノアリ(Vn;#) プルチネッラo.
 録音:2013年9月17日-19日、12月19日、ボン・セクール教会(*/#) /2015年9月7日-10日(+)、すべてパリ。 (+)はおそらく初出音源(代理店はAP-140という品番で既出だとしているが、誤り)。 初出・旧品番:AP-080〔2014年「ディアパソン・ドール・オヴ・ザ・イヤー」受賞盤〕 (*/#) 。(+)の使用楽器、編成詳細は代理店アナウンスに未記載。 気品としなやかさを兼ね備えたフランスの女性チェロ奏者、オフェリー・ガイヤール。1998年ライプツィヒ国際バッハ・コンクール第3位、また自ら創設したアンサンブル・アマリリスを率いて国際コンクールで優勝しており、モダーンからバロックまで、幅広く活躍している。フルニエ、トルトゥリエら、 フランス・チェロ楽派の正当な継承者ともいえる存在。
 #当盤は限定盤の可能性がありますので、お早めに御注文下さい。
英国音楽散歩
 ヨーク・ボウエン(1884-1961):アラベスク(1932)
 ハーバート・ハウエルズ(1892-1983):ハープのための前奏曲(1915)
 グランヴィル・バントック(1868-1946):チェロとハープのための「 Hamabdil 」(1917)
 シリル・スコット(1879-1970):ハープのためのケルティック・ファンタジー(1926)
 ユージン・グーセンス(1893-1962):バラード第1番&第2番 Op.38 (1924)
 デイヴィッド・ワトキンズ:スカボロー・フェア(声とハープ版)
 グレース・ウィリアムズ(1906-1977): Heraith〔望郷〕(1951)
 レノックス・バークリー(1903-1989):
  テノールとハープのための5つのヘリックの詩 Op.89 (1974) /ハープのためのノクターン Op.67 No.2 (1967)
 エドムント・ラッブラ(1901-1986):チェロとハープのための会話
 ベンジャミン・ブリテン(1913-1976):ハープ組曲 Op.83 /カンティクル第5番「聖ナルキッソスの死」

 サンドリーヌ・シャトロン(Hp|使用楽器:ライオン&ヒーリー
 オフェリー・ガイヤール(Vc) マイケル・ベネット(T)
 録音:2016年5月。 20世紀半ば、イギリスで音楽教育を受けたイギリスの作曲家たちによる作品を集めた物。グレース・ウィリアムズのHeraithはウェールズの風景を思い起こさせる。ブリテンのハープ組曲は5楽章から成るが、終曲の聖歌はウェールズのバラードが基になっている。
チャイコフスキー:弦楽セレナード Op.48
シベリウス:弦楽四重奏曲 ニ短調「親愛なる声」 Op.56
  (弦楽オーケストラ版)
ロベルト・フォレス・ベレス指揮
オーヴェルニュo.
 録音:2016年5月3?6日、オーヴェルニュ・オーケストラ施設、クレルモン=フェラン。 2016年のフォルジュルネ音楽祭にも来日が予定されているベレスとオーヴェルニュo. の最新アルバム。チャイコフスキーの弦楽セレナードは2015年12月の来日公演でも披露され、その華やかな演奏が評判となった。スペイン人ながらヘルシンキのシベリウス・アカデミーでセーゲルスタムに指揮を学んだベレスにとり、シベリウスの弦楽四重奏曲は十八番の作品。弦楽オーケストラでの演奏により、つややかで深い響きがまさに北欧調。聴き惚れさせられる。
 #2022年7月現在 レーベル&代理店在庫切れ、当店在庫無し。今後入荷するかどうかは不明です。
マダムのために〜アデライードのための愉しみ
 ジャン=ジョセフ・ド・サン・ジェルマンの置き時計の鐘の音
 シモン・シモン(1735頃-1802頃):
  クラヴサンとヴァイオリンのためのコンセール第1番/
  ソナタ第4番 イ短調〜マエストーソ・マルカントワーヌ・ル・ヌプヴの音楽に基づく置時計のエア
 アントワーヌ・ドーヴェルニュ(1713-1797):ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ第12番 イ短調
 ラモー(1683-1764):「カストールとポリュックス」序曲およびバレのクラヴサン編曲版(ブノーによる)
 クロード・バルバストル(1724-1799):ソナタ第1番 ト長調〜アリア・グラティオーソ
 ジャン=フィリップ・ギニョン(1702-1774):ラモーの未開人に基づく2つのヴァイオリンのための変奏曲
 ジャン=バティスト・カルドンヌ:クラヴサンとヴァイオリンのためのソナタ第7番 ヘ長調

 オリヴィエ・ボーモン(Cemb) ジュリアン・ショヴァン(Vn)
 録音:2015年7月、ヴェルサイユ宮殿内。 タイトルのアデライードは、ルイ15世とマリー・レクザンスカの間に生まれた8人の娘のなかの1人、マダム・アデライード(1732-1800)のこと。ルイ15世の娘たちはヴェルサイユで音楽のレッスンに明け暮れ、その才能もなかなかだったという。様々な作曲家がレッスンをし、いくつかの作品を彼女たちに献呈している。CDのタイトルも、アデライードに献呈された作品が含まれていることに因んでいる。F. クープランの弟子としても名高いシモン・シモンの作品など、貴重な録音がならぶ。フランスの名手ボーモンと、ピリオド楽器のオーケストラ「ル・コンセール・ド・ラ・ローグ」の音楽監督も務める気鋭のショヴァンが、宮廷のサロンを彷彿とさせる典雅な演奏を展開している。
リスト
 ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」 S.161 No.7 /バラード〔第1番 変ニ長調 S.170 /第2番 ロ短調 S.171 〕/
 オーベルマンの谷 S.160 No.6 /6つのコンソレーション S.172

  ベアトリス・ベリュ(P)
 録音:2016年4月12日-13日、パリ。 女優のように美しい容姿のスイスのピアニスト、ベアトリス・ベリュのアパルテ・レーベル第2弾。ベリュは、1985年ローザンヌ生まれ。ガリーナ・イヴァンツォヴァ、ブリジット・エンゲラー、ジョン・オコーナーに師事し、クレーメルやパールマンに認められてアンサンブルに参加するなど活躍している。リスト作品を集めた本CDでは、大曲「ダンテを読んで」を始めとする超絶技巧作品も収録されているが、彼女の詩情豊かな表情に満ちた世界を堪能することが出来る。
カルロ・フランチェスコ・チェザリーニ(1665-1741):
 作品集〜ローマ・カサナテンセ図書館所蔵の室内カンタータ集
  ステファニー・ヴァルネラン(S) ジョルジョ・タバッコ(Cemb)指揮ラストレ
 録音:2016年5月。世界初録音を含む。 バロック後期ローマの最重要作曲家の一人、チェザリーニの作品集。1700-1717年頃に作曲されたカンタータで、レチタティーヴォとアリアが交互に演奏される18世紀初期のカンタータのスタイルで書かれている。どれも劇的な要素に満ちており、聴きごたえ十分。アカデミア・モンティス・レガリスの室内楽グループ、ラストレの颯爽とした伴奏も魅力。
AP-135
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(2CD)
ジャン=バティスト・リュリ(1632-1687):音楽悲劇「アルミード」(1686)
 マリー=アデリーヌ・アンリ(S;アルミード) アントニオ・フィゲロア(T;ルノー)
 ユディト・ファン・ワンロイ(S;栄光、フェニス、メリッス、ナイアーデ)
 マリー=クロード・シャピュイ(Ms;智、シドニー、リュサンド、羊飼い)
 マルク・ムイヨン(T;アロンテ、憎悪) ダグラス・ウィリアムズ(B−Br;イドラオ)
 シリル・オヴィティ(T;騎士ダノワ) エミリアーノ・ゴンザレス・トロ(T;アルテミドール)
 エティエンヌ・バゾラ(Br;ウバルド)

 クリストフ・ルセ(Cemb/音楽監督)指揮レ・タラン・リリク、ナミュール室内cho.
 録音:2015年12月10日、ピエール・ブーレーズ大ホール、フィルハーモニー・ド・パリ、ライヴ。 クリストフ・ルセ率いるレ・タラン・リリクのフランス・バロック・オペラ最新盤は、リュリの最高傑作「アルミード」。美しい魔女アルミードと、強敵ルノーの間に繰り広げられる謀略と恋愛の物語。美しい女性アルミードは、敵であるルノーを殺すことがどうしてもできず、ルノーを魔法にかけて快楽の時間を過ごする。やってきた昔の仲間たちによって魔法を解かれたルノーは我に帰り、アルミードのもとを去る、といった物語。リュリが音符に書き込んだ登場人物や場面の描写を、ルセ率いるレ・タラン・リリクが見事な鮮やかさで引き出している。歌唱陣もライヴながら最後まで集中しきっており、アルミードの最後のアリアなど圧巻。ルセが放つ、「アルミード」決定盤の登場といえるだろう。
フランチェスコ・ジェミニアーニ(1687-1762):
 ヴァイオリン奏法論 Op.9 (12曲)/ソナタ〔ニ短調 Op.4 No.8/ニ長調 Op.4 No.6 〕
 ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(Vn) アンネキャスリン・ベラー(Vc)
 トルステン・ヨハン(Cemb) トーマス・C.ボイセン(テオルボ)
 録音:2015年9月21日-24日。 フライブルク・バロックo. のコンサートマスターとしておなじみの名手ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツと同オーケストラのメンバーによる、ジェミニアーニの登場。ジェミニアーニは、自身ヴィルトゥオーゾのヴァイオリン奏者だった。「ヴァイオリン奏法論」には、自身で作った28のエクササイズと12の作品を掲載がされており、これらの作品は、装飾や、メサ・ディヴォーチェ(一定の音を長く引き伸ばしながら徐々にクレッシェンドし、つづいてデクレッシェンドして終わること)など、ジェミニアーニの奏法が反映されている。どの曲も舞曲のスタイルやオペラのアリアを思わせるものなど多様性に富んでおり、楽しめる。全12曲からなる Op.4のソナタからこのディスクで演奏されているソナタ第8番はイタリアの様式、第6番はフランスの様式で書かれた対照的な2曲。ゴルツとメンバーたちのセンスが光る。
シューベルト:ピアノ・ソナタ集
 〔第19番 ハ短調 D.958 /第16番 イ短調 D.845 〕
ルイ=シュヴィッツゲーベル・
 ワン(P)
 録音:2016年1月。 清潔感あふれるフレージング、強靭かつ繊細なピアニズムが炸裂したシューベルト。1987年生まれのルイ=シュヴィッツゲーベル・ワンは、16/17シーズンにはオスロ・フィル、ロイヤル・リヴァプール・フィルなどと初共演したほか、バーミンガム市 響にも再登場、さらにコンセルトヘボウ(ホール)でもデビュー。
サン=サーンス(1835-1921):歌曲集
 ペルシャの歌(全6曲)/赤い灰 Op.146(全 10曲)/
 ロンサールの5つの詩(全5曲)/古い歌(全3曲)
タシス・クリストヤンニス(Br)
ジェフ・コーエン(P)
 録音:2016年3月。サン=サーンスは、5歳半から死の年の5月(1921年12月没)に至るまで、150曲以上の歌曲を作曲したが、歌曲集として作られたのは4作で、すべてがここに収録されている。ギリシャ出身のバリトン、クリストヤンニスが明晰なフランス語で各曲を知的に歌い上げている。
アンリ=ジョゼフ・リジェル(1741-1799):交響曲第4番 ハ短調 Op.12
ジュゼッペ・サルティ(1729-1802):
 「捨てられたディドーネ」〜セレーナのアリア「 Lo d'amore, oh Dio! Mi moro 」(*)
J.C.バッハ(1735-1782):「エンディミオーネ」〜ディアーナのアリア「 Semplicetto, ancor non sai 」
ハイドン(1732-1809):交響曲第85番 変ロ長調 Hob I: 85 「王妃」

サンドリーヌ・ピオー(S) ジュリアン・ショヴァン指揮ル・コンセール・ド・ラ・ローグ
 録音:2016年3月。(*)は世界初録音。ハイドンのパリ交響曲(第82-87番)を録音するプロジェクトの第1弾。当時の演奏会習慣に則り、交響曲をメインに据え、様々な編成の楽曲で構成されるプログラム。1曲目のリジェルの交響曲は管楽器の活躍が印象に残るドラマティックな作品。2曲収録のソプラノ・アリアではピオーが客演。ハイドンの「王妃」は快活なテンポで、きざむ弦のリズムが小気味よい。ル・コンセール・ド・ラ・ローグは2015年、ヴァイオリン奏者のジュリアン・ショヴァンによって設立された。この名称は、1783年に設立され、 ハイドンの「パリ交響曲」もこの団体のために書かれたコンセール・ド・ラ・ローグ・オランピックにちなんでいる。この団体は、マリー=アントワネット下のチュイルリー宮でレジデントo. を務めた、フランス、そしておそらくヨーロッパ随一の楽団だった。メンバーはほぼ全員フリーメイソンによっ て構成され、名称の Loge もフリーメイソンの Lodges に因んでいる。ショヴァンは Olympic という文言を団体名に使うことをオリンピック委員会から 禁止されたため、2016年から名称をル・コンセール・ド・ラ・ローグとして活動を続けている。
含世界初録音 ルセ〜フランソワ・クープラン
 カンタータ「バッカスに慰められるアリアーヌ」(*) /
 リュリ讃/パルナッソス山、またはコレッリ讃
  クリストフ・ルセ(Cemb)指揮レ・タラン・リリク
  ステファヌ・ドゥグー(Br;*) クリストフ・コワン(ヴィオール;*)
  ローラ・モニカ・プスティルニウ(リュート;*)
 録音:2015年12月、2016年7月。(*)はルセが発見した物で、世界初録音。ルセとレ・タラン・リリクによる珠玉の名曲リュリ讃、コレッリ讃の登場。しかも新発見カンタータの世界初録音も収録。「バッカスに慰められるアリアーヌ」は、ルセがF.クープランの論文を準備しているときに発見したカンタータ。作品リスト(1716年出版)に載っているものの、未出版で楽譜が残されていない作品として研究者には知られた曲だと言う。この楽譜がクープランの作品であると結論づけた理由として、ルセは「F.クープランが音楽教師を務めたトゥールーズ伯ルイ・アレクサンドル(ルイ14世とモンテスパン侯爵夫人の子)の所蔵品の中にあったこと」「F.クープランは通奏低音の数字で9の代わりに2を用いることと、他の一連の作品で見受けられる様々な和声の特徴が共通していること」の2点を挙げている。他にもクラヴサン曲集の楽曲との主題の類似などが見られることから、この作品はF.クープランのものであると確信を持ったという。ルセは『長く眠っていた楽曲が名曲である という夢を抱きがちだが、この作品が出版されなかったのは、クープラン自身この曲の出版経費が回収出来ないと判断した」(抄訳)からだとライナーノートで述べているが、貴重な録音の登場は歓迎すべきといえるだろう。フランスでは「トンボー」というジャンルで、先人の肖像画的な音楽を作るという伝統があったが、「リュリ讃」「コレッリ讃」は、それぞれの作曲家のスタイルに厳密に従っているわけではなく、また、その規模などから、音楽史上でも特殊な作品として輝きを放っている。レ・タラン・リリクの精鋭たちによるアンサンブルを、ルセのどこか色気のあるチェンバロがしっとりとまとめあげている。
AP-129
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(3CD)
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 全集
 〔第4番 イ短調 Op.23 /第5番「春」 ヘ長調 Op.24 /第2番 イ長調 Op.12 No.2 /第3番 変ホ長調 Op.12 No.3 /
  第1番 ニ長調 Op.12 No.1 /第6番 イ長調 Op.30 No.1 /第7番 ハ短調 Op.30 No.2 /第8番 ト長調 Op.30 No.3 /
  第9番「クロイツェル」 Op.47 /第10番 ト長調 Op.96 〕

 ピエール・フシュヌレ(Vn) ロマン・デシャルム(P)
 録音:2015年3月5日-9日、ル・トリデン、ライヴ。 ピエール・フシュヌレは1985年生まれ、ニースの音楽院出身、オリヴィエ・シャルリエに師事した若手。共演のピアノ、デシャルムは、パリ国立地方音楽院では、教授として後進の指導にあたる一方、ソリスト、そして室内楽奏者としてもエベーヌ弦楽四重奏団などと共演、活躍している。デシャルムの素晴らしいピアノに乗って、フシュヌレのヴァイオリンがのびやかに歌い上げる、非常にさわやかなベートーヴェンの全集の登場。
VENEZIA 1700
 トレッリ(1658-1709):ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 Gie T 60 (*)
 ボンポルティ(1672-1749):ヴァイオリンと通奏低音のためのインヴェンション Op.10 No.6 (1712)
 カルダーラ(1670-1736):2つのヴァイオリンと通奏低音のためのシャコンヌ 変ロ長調(1699) /
             2つのヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ハ短調 Op.2 No.7 (1699)
 ダッラバーコ(1675-1742):ヴァイオリン・ソナタ ト短調 Op.4 No.12 (1716)
 ヴィヴァルディ(1678-1741):ソナタ 変ロ長調 RV.759 / アルビノーニ(1671-1751):ソナタ ト短調
 ヴィヴァルディ:ソナタ ニ短調「ラ・フォリア」 Op.1 No.12 (1705)

 レ・ザクサン [Les Accents]
  [ティボー・ノアリ、クレール・ソットヴィア(Vn) エリサ・ジョグラー(Vc)
   マテュー・デュピュイ(Cemb) ロマン・ファリク(テオルボ/バロックG]
 録音:2015年9月-10月。(*)は世界初録音。ミンコフスキ率いるレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル=グルノーブルのソロ・ヴァイオリン奏者ティボー・ノアリ率いるアンサンブルによる、 ヴェネツィアから派生した17-18世紀のヴァイオリン音楽をたどる1枚。
J.S.バッハ
 フランス風序曲 ロ短調 BWV.831 /
 パルティータ第1番 変ロ長調.BWV 825 /
 イギリス組曲第4番 ヘ長調 BWV.809
ファブリツィオ・チオヴェッタ
(P|使用楽器: Steinway & Sons D
 録音:2015年3月25日-27日、サラ・マーラー、文化センター、ドッビアーコ。1976年ジュネーヴ生まれのファブリツィオ・チオヴェッタは、パウル・バドゥラ=スコダ、ジョン・ペリー、ドミニク・ウェーバーなど、世界の名だたる名教師・ピアニストに師事、ソロはもちろんのこと室内楽、声楽の伴奏、そして即興演奏など様々な演奏形態の作品を積極的に学んできた。師のバドゥラ=スコダは「繊細にして熱い感情が伝わる演奏」と絶賛している。透明度が高く、潤いあるピアノの音色、チオヴェッタの繊細なタッチが、バッハをピアノで弾くことの利点を感じさせる。バッハの音楽を構造的に捉えて、豊かなピアノの音色を活かし、バッハの音楽を立体的に構築している。
ノブース・クァルテット
 ヴェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章 (1905)
 ベートーヴェン:
  弦楽四重奏曲第11番 ヘ短調「セリオーソ」 Op.95
 ユン・イサン:弦楽四重奏曲第1番 (1955) (*)
 朝鮮民謡/アン・ソンミン編曲:アリラン
ノブースSQ
[キム・ジェヨン、
 キム・ヨンウク(Vn)
 イ・スンウォン(Va)
 ムン・ウンフィ(Vc)]
 (*)はおそらく世界初録音。2007年、韓国芸術総合学校の学生たちで創設されたノブース・クァルテット。クリストフ・ポッペン(イザベル・ファウストの師)に師事し、2012年にミュンヘン国際室内楽コンクール、2014年国際モーツァルト・コンクールで優勝し、現在ヨーロッパを中心に活躍している。日本にも「サントリーホール チェンバーミュージックガーデン2016 響感のアジア」シリーズで、6月13日に当アルバムにも収録されているユン・イサンの弦楽四重奏曲を 披露予定。K-pop のグループを思わすイケメン揃いで、日本でも人気が出そう。ユン・イサンの弦楽四重奏曲は彼最初期の作品で、破棄されたと伝えられてきた。現存していたとは驚愕。自己の作風を確立する以前のもが、東アジア的な素材をラヴェルやバルトーク風に処理した興味深い作品。ノブース・クァルテットの若々しい感性が光る。
AP-124
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(2CD)
バンジャマン・ゴダール(1849-1895):ヴァイオリン・ソナタ集
 〔第3番 ト短調 Op.9 /第1番 ハ短調 Op.1 /第4番 変イ長調 Op.12 /第2番 イ短調 Op.2 〕

  ニコラ・ドートリクール(Vn) ダナ・ショカリー(P)
 録音:2015年9月2日-4日。19世紀半ば、フランスの音楽界はオペラとドイツの作曲家たちによる室内楽によって占められ、フランスの作曲家による室内楽は取り上げられる機会も曲そのものも少ない状態だった。そのような中で、17歳という若さでゴダールが書いたヴァイオリン・ソナタ1番は、その後のフォーレ、サン=サーンス、フランクに先立つ先駆的な存在となる。ここに収録された4つのヴァイオリン・ソナタはどれも、ゴダールが17歳-23歳の若年期に作曲した物。古典的な様式やベートーベン、ブラームスを思わせる楽想は、一般に「フランス音楽」という言葉から連想するものとは異なるが、その後のフランス室内楽の基盤作りに貢献した。音楽史の転換点であるドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」が現れる約30年前に書かれたこれら4曲のソナタは、ドイツ音楽優勢だった当時のフランスで新しい変化を起こそうとした若い作曲家の熱意と意欲に溢れている。音楽史上ではなかなか光の当たらないこの時代のフランスで、次の時代に繋がる音楽が確かに模索されていたこと。そんなことを思いながらこれらのソナタに耳を傾けると、後のラヴェルやドビュッシーなどいわゆる「メジャーな」フランス音楽も今までと違った聴こえ方をして来る。
バンジャマン・ゴダール(1849-1895):歌曲集
 あなたは覚えているか? Op.19 No.6 /石のベンチ Op.19 No.7 /何もいらない Op.11 No.1 /
 微笑み与える神 Op.10 No.9 /ジャコットOp.10 No.5 /ラ・フォンテーヌによる6つの寓話詩 Op.17 /
 旅への誘い Op.114 /羊飼いの別れ Op.29 No.5 /彼女 Op.7 No.10 /羊飼いの歌Op.11 No.5 /
 昔の新しい歌 Op.24 /春 Op.113 /ギター Op.10 No.11 /歌 Op.7 No.4 /音楽家 Op.10 No.6 /メッセージOp.147 No.1

  タシス・クリストヤニス(Br) ジェフ・コーエン(P)
 録音:2015年11月8日-11日。世界初録音。当時の歌曲の多作家、グノーやマスネと並び、160曲を超える歌曲を残したゴダールは、歌曲というジャンルの地位が定まっていなかった19世紀フランスにおいて、歌曲の発展とレパートリーの充実のためになくてはならない作曲家だった。ピアノパートの芸術性の高さや形式の工夫により、それまでシャンソンやロマンスなど雑多なジャンルの寄せ集めであったフランス歌曲を室内楽と同じ重要度にまで高めたことは彼の大きな功績。このCDでは、彼の数々な歌曲に並び、全く性格が異なる2つの歌曲集「6つのラ・フォンテーヌの寓話詩Op.17」と「昔の新しい歌Op.24」がおさめられている。「6つのラ・フォンテーヌの寓話詩Op.17」はイソップ寓話を元に書かれた詩集から「アリとキリギリス」などよく知られた物語がテキストとされた6つの歌曲。形式にとらわれずにドラマチックに詩の世界が描かれ、1曲1曲が小さな音楽劇のようだ。「昔の新しい歌Op.24」は15-17世紀の詩が用いられた物。音楽そのものは当時「古いスタイル」として知られていた様式で、実際には18世紀的な性格が強いと言われている。懐古趣味的な形式美や旋法的な音の使い方がアンティークな薫りを伝える作品集。印象派以前のフランスの、歌心溢れる愛らしさ、明快な調性の中に匂やかに忍び込む繊細な和声感など、19世紀半ばのフランス音楽の魅力が凝縮されたゴダールの歌曲集。クリストヤニスとコーエンの温もりを感じさせる演奏がぴったりと音楽にマッチしている。
AP-122
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(3CD)
2CD価格
アントワーヌ・フォルクレヴィオールと通奏低音のための曲集
 第4組曲/第2組曲/第3組曲/第1組曲/第5組曲
  酒井淳、マリオン・マルティノ(ガンバ) クリストフ・ルセ(Cemb)
 録音:2015年7月、9月、パリ。フランス在住のガンバ奏者、酒井淳とクリストフ・ルセ、マリオン・マルティノによるアントワーヌ・フォルクレのヴィオールと通奏低音のための曲集。太陽王ルイ14世に認められヴェルサイユの宮廷音楽家となったアントワーヌ・フォルクレ。フォルクレは、17世紀後半から18世紀のフランス音楽界でヴィオラ・ダ・ガンバの名手として高い評価を受け、当時関心が高かったイタリア様式を取り入れた華麗な名人芸で斬新な作品を発表した。音楽性とは別に彼の激しい振幅の大きな性格や妻や息子(ジャン=バティスト)への暴力といった事実がフューチャーされ、同時代人であるマラン・マレの優雅さと対照的に語られることも多く、アンリ・ル・ブランの「ガンバを擁護する」(1740)にある「マレは天使の如く、(父)フォルクレは悪魔の如く奏く」という名高い言葉もフォルクレの印象を大きく左右している。酒井淳は、そのようなフォルクレ像にとらわれることない、自身が感じた音楽の感触を頼りに、安定した技巧やクリストフ・ルセの絶妙のサポートはもちろんのこと真摯に作品に向き合った演奏を聴かせてくれる。酒井 淳:名古屋生まれのガンバ奏者・チェロ奏者・指揮者。レ・タラン・リリクやル・コンセール・ダストレなどの古楽アンサンブルの通奏低音奏者として、数々の演奏会とCD録音を手掛ける。室内楽に力を注いでおり、シット・ファスト(ガンバ・コンソート)やカンビニ弦楽四重奏団の創立者として活躍している。またソロでは、フランス・ヴィオール音楽のスペシャリストとして高く評価される。近年フランスのディジョンやリールのオペラ座、オペラ・コミック座にて、シャルパンティエやモーツァルトなどの指揮し、成功を収めている。
ロッシーニ
 「湖上の美人」〜エーレナのアリア「胸の思いは満ち溢れ」/
 「オテロ」より デズデーモナのアリア〔柳の根元に腰を下ろして」/ああ神様、眠りのうちに〕/
 「チェネレントラ」より〔嵐の場面/チェネレントラのアリア「苦しみと涙のうちに生まれ」〕/
 歌曲「ニッツァ」/「セミラーミデ」〜セミラーミデのアリア「麗しく美しい光が」/
 歌曲「見捨てられた魂」/「ジョヴァンナ・ダルコ」(サルバトール・シアリーノ編曲)/
 「セビリャの理髪師」より〔ロジーナによる「嵐」の場面/ロジーナのアリア「今しがた一つの声が」/
              ロジーナのアリア「愛に燃える心に」〕/歌曲「スペインのカンツォネッタ」

 カリーヌ・デュシェー(Ms) ラファエル・マーリン指揮レ・フォース・マジュールo.
 録音:2015年6月22日-26日、ヴィルファヴァール農場ホール。ロッシーニ作品を得意とするメゾ・ソプラノ、カリーヌ・デュシェーと、ラファエル・マーリンが創設し2014年に初のコンサートを開催したレ・フォース・マジュールo.による、ロッシーニの有名オペラからのアリア、その他オーケストラのみの場面演奏(嵐の場面)、さらに歌曲と16分からなるカンタータ「ジョヴァンナ・ダルコ(ジャンヌ・ダルク)」を収録したアルバム。
AP-120
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(2CD)
ルセの平均律第1巻〜J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻
 クリストフ・ルセ(Cemb|使用楽器:リュッケルス、1624年製作
 録音:2015年4月20日-22日、王太子の居室、ヴェルサイユ宮殿。名手ひしめく歴史的鍵盤楽器奏者の中で、その実力と注目度の高さにおいて、筆頭格に挙げられるのが、クリストフ・ルセ。グスタフ・レオンハルトやボブ・ファン・アスペレンら第一世代の名チェンバリストの薫陶を受け、1983年にブリュージュ国際コンクールで優勝。1991年にはアンサンブル「レ・タラン・リリク」を結成し、埋もれたバロック・オペラの発掘演奏活動にも力を注いでいる。しかし、そんなルセの真骨頂といえば、やはりチェンバロ演奏と言えるだろう。2013年に録音された平均律第2巻に続き、ついに第1巻が発売される。ルセは『第2巻は「フーガの技法」のように複雑な和声進行や構造の複雑さを要した高い芸術性を掲げた作品で、第1巻は教育用としての側面が強いが、決してトレーニングだけのためではなく、そこに芸術性も兼ね備えた画期的な作品である』としている。さらに『多くのバッハ作品の中でもこれほど親しまれ、演奏され、深く研究されたものはない』と。その上でルセは今回の録音にあたって、これまでの学術的研究を一旦横に置き、あえて新しい解釈を入れようとはせず、高い集中力で研ぎ澄まされた音を繰り出していき、どの曲も奥行きのある音楽に仕上げ、聴く者に新たな発見を提示する。楽器は第2巻同様にヴェルサイユ宮殿所蔵のリュッケルス・オリジナルを使用している。
Delta y Mar
 ベーゲホルツ:エル・プジュジュイ/デルタと海/プエルトバラス
 フアンホ・モサリニ:タンゴ・インサイド/エル・ティグレ / ロドリゲス/モサリニ編曲:ラ・クンパルシータ
 バルチ:流れ/ラメント/力の戯れ / ブレーマー:3つの発見 / フアン・ホセ・モサリニ:大地のミロンガ

  ビセンテ・ベーゲホルツ(G) フアンホ・モサリニ(バンドネオン)
 録音:2015年9月、聖ピエール教会、パリ。アルゼンチンのバンドネオン奏者で作曲家のフアンホ・モサリニと、チリ出身のギタリスト、ビセンテ・ベーゲホルツによる両国の香りをブレンドしたアルバム。有名な「ラ・クンパルシータ」以外は創作で、南米の風物を描いている。「大地のミロンガ」の作曲者はフアンホ・モサリニの実父。
オフェリー・ガイヤール〜C.P.E.バッハ Vol.2
 シンフォニア第3番 ハ長調 Wq.182-3 (H.659) /チェロ協奏曲第2番 変ロ長調 Wq.171 (H.436) /
 シンフォニア ホ短調 Wq.178 (H.653) /ソナタ ニ長調 Wq.137 (H.559) /
 ピッコロ・チェロとチェンバロのためのソナタ Wq.137 (H.559) /チェンバロ協奏曲 ニ短調 Wq.17 (H.420)

  オフェリー・ガイヤール(ピッコロVc
   使用楽器:フランチェスコ・ゴフリラー、1737年製
)指揮プルチネッラo.
  フランチェスコ・コルティ(Fp
   使用楽器:F.ブランシェ、1733年製/フランツ・バウムバッハ、1780年製
 録音:2015年9月7日-10日、パリ。 2014年のディアパソン・ドール・オブ・ザ・イヤーを受賞した第1弾に続く、気品としなやかさを兼ね備えたフランスの女性チェロ奏者、オフェリー・ガイヤールによるC.P.E.バッハ第2弾。オフェリー・ガイヤールは、1998年ライプツィヒ国際バッハ・コンクール第3位、また自ら創設したアンサンブル・アマリリスを率いて国際コンクールで優勝しており、モダーンからバロックまで、幅広く活躍している。フルニエ、トルトゥリエら、フランス・チェロ楽派の正当な継承者ともいえる存在。バロックから古典への重要な橋渡し役であったC.P.Eバッハ。チェロ協奏曲第2番では、激しくも美しいガイヤールのチェロ、プルチネッラo.の柔軟なサポート、双方が一体となった多感様式にふさわしいまさに疾風怒濤の演奏を聴かせる。弦楽による6曲のシンフォニアは「ハンブルク交響曲」と呼ばれ、どの曲も3つの部分に分かれた単一楽章でハイドン、モーツァルトやベートーヴェンの古典派の作曲家へ続く交響曲の前身のような作品群。ここに収録された3番のシンフォニアも生き生きとした躍動感あふれる作品で、新しい時代を切り開く勢いが感じられる。プルチネッラo.の溌剌とした演奏も魅力的。チェンバロ協奏曲を弾くのは、バッハ国際コンクール優勝、ブルージュ国際コンクール最高位などの実力をもつイタリア出身のフランチェスコ・コルティ。
ファリネッリ〜 a portrait 、ライヴ・イン・ベルゲン
 ブロスキ(1698-1756):歌劇「アルタセルセ」〜私は揺れる船のように/歌劇「イダスペ」〜忠実な影よ、私も
 ジャコメッリ(1692頃-1740):歌劇「シリアのアドリアーノ」より
  〔すでに終わりをむかえようとしている/不安にさまよう旅人は〕
 ポルポラ(1686-1768):歌劇「認められたセミラーミデ」より〔おまえの唇は雄弁に語り/幾千もの怒りへのえじき〕/
            歌劇「ポリフェーモ」〜高貴なジュピターよ
 ハッセ(1699-1783):歌劇「クレオフィーデ」序曲
 レーオ(1694-1744):歌劇「ウティカのカトーネ」より〔なんと非力な/森のいたみ〕
 ヘンデル(1685-1759):歌劇「アルチーナ」〜イルカニアの洞穴に/歌劇「リナルド」〜私を泣かせて下さい

  アン・ハレンベリ(Ms) クリストフ・ルセ指揮レ・タラン・リリク
 録音:2011年5月26日、ベルゲン国際フェスティヴァル、ライヴ。歴史上あまりにも有名なカストラート歌手、ファリネッリ(本名:カルロ・ブロスキ)。1994年にはファリネッリを描いた映画「カストラート」も公開され、大きな話題となったことは、今なお記憶にある方も多いろう。あらためて、ファリネッリの超絶歌唱をしのぶべく、ハレンベリがファリネッリのレパートリーを歌ったライヴ録音の登場。ハレンベリはスウェーデン出身のメゾ・ソプラノで、膨大なレパートリーを持つが、とりわけバロック・オペラでの活躍にはめざましいものがある、実力派。指揮は、映画「カストラート」で音楽を担当したルセという、完璧な布陣。なお、ここに収録されているヘンデルのアリア2曲は、ファリネッリのレパートリーでは無かったが、演奏会を盛り上げるために演奏されたということ。
サティ:3つのジムノぺディ/冷たい小品/12の短いコラール/最後からの2番目の思想/
    夜想曲/7つのグノシエンヌ/官僚的なソナティナ
  ブリュノ・フォンテーヌ(P)
 録音:2015年6月17日-18日、studio 4'33 、イヴリー=シュル=セーヌ、フランス。使用楽器: YAMAHA, CFX No.6315200 。クラシック、ジャズ、そしてアレンジなどマルチな才能を発揮しているピアニスト、ブリュノ・フォンテーヌによるサティ。サティは、生誕150年/没後90年とアニバーサリー・イヤーが続き、展覧会や録音が次々とリリースされているが、自由な発想で独自の音楽観を模索していたサティと、型にとらわれない、ボーダレスな活動をしているフォンテーヌとは相通ずるものがある。洗練された感覚を持つブルーノ・フォンテーヌのピアノが、サティの不可解でユーモアに満ちた世界を見事に表現している。
モーツァルト
 フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299 〔カデンツァ:マリウス・フロトホイス〕/
 フルート協奏曲 ト長調 K.313〔カデンツァ:マクサンス・ラリュー(第1楽章)、
  フィリップ・ベルノルド(第2楽章)、ジャン=ピエール・ランパル(第3楽章)〕/
 アンダンテ ハ長調 K.315(285e)〔カデンツァ:フィリップ・ベルノルド〕

  フィリップ・ベルノルド〔ベルノール〕(Fl)指揮
  パリ室内o. エマニュエル・セイソン(Hp)
 録音:2015年7月7日、10日。フランスのフルートの名手、フィリップ・ベルノルドによるモーツァルトの協奏曲集の登場。フルートとハープの協奏曲では、同じくフランスの若手ハープ奏者で、現在はメトロポリタン歌劇場で首席ハープ奏者を務めるエマニュエル・セイソンが参加している。ベルノルドはもともとはリヨン国立歌劇場のフルート奏者としてキャリアをスタートさせた。モーツァルトのフルート協奏曲はオペラ・アリアを思わせるような部分もあり、ベルノルドのヴィルトゥオジティと音楽性が遺憾なく発揮されている。ハープのセイソンのヴィルトゥオジティが、名曲に花を添えている。カデンツァもベルノルド自身によるものも収録されており、こちらも注目。
インスピレーションズ
 ジョゼフ・コズマ:枯葉 / グリゴラシュ・ディニク:ホラ・スタッカート / アストル・ピアソラ:フーガと神秘
 エンニオ&アンドレア・モリコーネ:シネマ・パラディーゾ / フォーレ:夢のあとに
 ジョルジュ・ビゼー/ Manuel Doutrelant :カルメン幻想曲 / レイナルド・アーン:素敵な時
 ダカン:かっこう / アントニオ・カルロス・ジョビン:三月の雨/想いあふれて
 ヴィンセント・ペイラニ:ランダム・オブセッション / J.S.バッハ:G線上のアリア
 サラサーテ:サパテアド / クルト・ヴァイル:ユーカリ / ルイス・ボンファ:カーニバルの朝

  ロマン・ルルー(Tp) アンサンブル・コンヴェルジェンス[弦楽五重奏]
 録音:2015年4月29日-5月2日、リール、フランス。洒落たアレンジの弦楽伴奏を背景に、颯爽と駆け抜けるトランペット!シャンソン、ヴァイオリン作品、フランス歌曲、クラヴサン音楽、ボサノヴァなどなど、あらゆるスタイルの楽曲を華麗に吹きこなす。まばゆく煌めく超絶技巧、しっとりと柔らかなロングトーン。「ホラ・スタッカート」のスピード感に痺れ、「シネマ・パラディーゾ」や「G線上のアリア」の美しさに涙。色とりどりの魅力を放つアルバム。ロマン・ルルーは1983年生まれのトランペット奏者。15歳でパリ国立音楽院に入学、卒業後カールスルーエ音楽大学でラインホルト・フリードリヒに師事した。リヨン国際室内楽コンクール3位。2009年にはフランス最大の音楽賞「ヴィクトワール・ド・ラ・ミュジーク」クラシック音楽部門新人賞を受賞している。
吉野直子〜ハープ協奏曲集
 ロドリーゴ(1901-1999):
  アランフェス協奏曲(ハープ版)
 カステルヌオーヴォ=テデスコ(1895-1968):小協奏曲
 ドビュッシー(1862-1918):神聖な舞曲と世俗的な舞曲
 トゥーリナ(1882-1949):主題と変奏
吉野直子(Hp)
ロベルト・フォレス・ヴェセス指揮
オーヴェルニュ室内o.
 録音:2015年6月、クレルモン=フェラン、フランス。世界的ハープ奏者、吉野直子の待望のアルバム、ハープの名協奏曲を集めた注目プログラム。ソロでの素晴らしさはもちろん、クレーメル、パユ・・・様々な世界的アーティストと共演しても、一寸の隙もないアンサンブルで絶大な信頼を得ている吉野が、ヴェセス指揮オーヴェルニュ室内オーケストラには「赤い糸で結ばれたような出会いは、今まで経験したことのない本当に特別なもの」を感じたというほど、オーケストラとの素晴らしいアンサンブルにも注目。アランフェス協奏曲の有名な第2楽章などは曲の世界に深く引きずり込まれるようだ。もともとギター曲ではあるが、ハープのために書かれたのではと思うほど。他の作品でも管弦楽の繊細なアンサンブルと吉野のハープの絶妙なバランスと絡み合いは見事。吉野直子の世界がますます深まっていることに感じ入るとともに、スペイン出身の俊英指揮者ヴェセスの今後にも大いに期待できる新譜の登場となった。
 吉野直子:ロンドン生まれ。6歳よりロサンゼルスでスーザン・マクドナルド女史のもとでハープを学び始める。1981年に第1回ローマ国際ハープ・コンクール第2位入賞。1985年には第9回イスラエル国際ハープ・コンクールに参加者中最年少で優勝し、国際的キャリアの第一歩を踏み出した。これまでにBPO、イスラエルpo.、チューリヒ・トーンハレo.、フィルハーモニアo.、フィラデルフィアo.、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスなど、欧米の一流オーケストラおよび日本国内の主要なオーケストラと共演を重ねている。また、ザルツブルク、ロッケンハウス、ルツェルン、グシュタード、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン、サイトウ・キネン・フェスティヴァル松本、マールボロ、モーストリー・モーツァルト・フェスティヴァルなどの世界の主要音楽祭にも度々招かれ、常に好評を博している。1985年アリオン賞、1987年村松賞、1988年芸術祭賞、1989年モービル音楽賞奨励賞、1991年文化庁芸術選奨文部大臣新人賞、エイボン女性芸術賞をそれぞれ受賞している。国際基督教大学卒業。上野学園大学特任教授。
 ロベルト・フォレス・ヴェセス:2012年よりオーヴェルニュ室内オーケストラの首席指揮者兼芸術監督。バレンシア(スペイン)出身。オーケストラとの活動は、リヨン国立o.、ルクセンブルク・フィル、プラハ・フィルハーモニアなどと共演。2015年のラ・フォル・ジュルネ音楽祭でオーヴェルニュ室内o. と共に来日、バッハの協奏曲などを演奏、絶賛を博した。
 オーヴェルニュ室内オーケストラ [Orchestre d'Auvergne]: 1981年に創設された「ヨーロッパ屈指の室内o. 」(ラ・モンターニュ紙)。歴代の音楽監督にはジャン=ジャック・ カントロフ、アリ・ヴァン・ベークが、現在はスペイン出身のロベルト・フォレス・ヴェセスが首席指揮者兼芸術監督を務めている。今日ではそのレパートリーをバロック音楽から現代音楽の初演にまで広げ、多方面で活躍。E.クリヴィヌ、L.ハーガー、F.ビオンディ等の客演指揮者、J=P.ランパル、M.アンドレ、A.デュメイ、M.ダルベルト、Y.バシュメットら世界的ソリストたちと共演。ニューヨーク、フィラデルフィア、ボルティモア、ミュンヘン、ジュネーヴ、ミラノ、東京、大阪等の主要なホールでたびたび演奏し、プラド、ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ、オーヴェル・シュル・オワーズなど著名な音楽祭から招かれている。日本各地で開催されているラ・フォル・ジュルネでも常連で、人気オーケストラのひとつ。
サン=サーンス(1835-1921):ピアノ協奏曲集
 〔第2番 ト短調 Op.22 (*) /第5番「エジプト風」へ長調 Op.103 (#) 〕
 ルイ・シュヴィッツゲーベル=ワン(P)
 ファビアン・ガベル指揮(*) マーティン・ブラビンズ指揮(#) BBCso.
 録音:2014年2月18日、ライヴ(*)、2015年4月7日(#) 。ジュネーヴ国際音楽コンクール第2位(1位なし)、ヤング・コンサート・アーティスト国際オーディション第1位の若手気鋭ピアニストによるサン=サーンスのピアノ協奏曲集。時に軽く輝くような、そして時にどっしりと骨太な音色で堪能できる。
ドビュッシーピアノ作品集
 子供の領分/映像第2集/前奏曲集第2集
ミシェル・ダルベルト(P)
 録音:2015年5月30日、テアトロ・ビビエーナ、マントヴァ、イタリア。使用楽器:ファツィオリ、グランド・ピアノ F 278 。フランスの名ピアニスト、ミシェル・ダルベルトが APARTE レーベルに登場。磨きぬかれた音色で多彩な世界を描き出し、世界中の聴衆を魅了している。日本では、NHK「スーパー・ピアノレッスン」で講師を務め多くの愛好家に知られており、2014年には来日30周年の節目を迎え日本の聴衆にも絶大な人気を誇っている。また世界屈指のシューベルト弾きであり、シューベルトのピアノ作品全曲録音も高く評価されている。近年は、あえて避けてきたフランス音楽のレパートリーにも挑戦し新境地をひらいている。ダルベルトは、アルフレッド・コルトーのもとで学んだヴラド・ペルルミュテルに師事し、洒脱な感性に加え、深い知性をフランスものでも発揮している。本アルバムは、1997年RCAに録音した「ドビュッシー:前奏曲集第1巻、映像第1集」に続く、ドビュッシーのピアノ作品集。徹底的に吟味された音色、しかし音色だけにとらわれる事なく、一曲ごとの個性を見事に描き分け、音色の変化はもちろんのこと、テンポ、絶妙な間合いとフレージング、曲の構成、すべてが完璧にコントロールされている。そして録音に使われたのは、イタリアの銘器ファツィオリ。最近はコンサートでも演奏し、ダルベルト本人も大変気に入っている楽器。ファツィオリは音色が多彩で、深みと透明感のある音で多くのピアニストを魅了している。ダルベルトが隅々まで吟味した音色を、最良のかたちで収録することができている。
AP-110
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(2CD)
エドゥアール・ラロ(1823-1892):歌曲集
 神の影/砂漠への別れ/6つの通俗的な歌/ル・ノーヴィス/6つの歌/アルフレッド・オ・ミュッセの詩による3つの歌/
 オバド/3つの歌/5つの歌/ブルゴーニュの歌(*) /マリン/コマドリ

 タシス・クリストヤニス(Br) ジェフ・コーエン(P) ヨハネス・グロッソ(Ob;*)
 録音:2015年1月12日-14日、3月27日-29日。異国情緒に富む音使いが華やかな「スペイン交響曲」の作曲者として知られる19世紀フランスのスペイン系の作曲家、ラロの歌曲CD 。その多くはアルト歌手であった彼の妻の声域に合わせて書かれているが、このCDではバリトンで歌われている。市民革命や普仏戦争など激動の時代の中で、社会の矛盾をあぶりだすような詩につけられた曲 (「老放浪者」「貧しい女」)や、それらと打って変わった穏やかなで愛らしいもの(「もし私が小鳥だったら」)そしてオーボエと歌とピアノのトリオで奏でられる、のどかで物寂しい「ブルゴーニュの歌」など、その表情の幅は様々。フランス歌曲の中ではドビュッシーやフォーレの影に隠れがちなラロの歌曲の世界が、表情に富んだクリストヤニスのバリトンと、華があるコーエンのピアノで繰り広げられる。
AP-109
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(3CD)
ラモー:歌劇〔英雄的パストラーレ〕「ツァイス」(1748)
 ジュリアン・プレガルディエン(ツァイス) サンドリーヌ・ピオー(ツェリディー)
 エムリー・ルフェーヴル(オロマゼス) ブノワ・アルヌー(サンドール)
 アメル・ブライム=ジェルール(空気の精、愛の巫女)
 ハスナ・ベンナニ(アムール) ザカリー・ワイルダー(空気の精)
 クリストフ・ルセ(Cemb)指揮レ・タラン・リリク、ナミュール室内cho.
 録音:2014年7月、11月。鍵盤のソロに指揮に、ますます充実の活動をみせるクリストフ・ルセによるラモー「ツァイス」。「ツァイス」を書いた頃、ラモーは5年の間に10以上のオペラを生み出しており、非常に充実していた。初演は1748年2月29日、パリ。羊飼いの話であることもあり「パストラーレ」という記述があるが、実際にはバレエつきのオペラ。台本を手がけたのはルイ・ド・カユザック(1706-1759)、『ゾロアストル』や『レ・ボレアド』の台本を手がけた人物で、ラモーは信頼を寄せていた。聴衆の反応は物語自体については厳しいものだったが、喜びに満ちた音楽、そして充実のバレエなどは大絶賛され、このオペラは1761年に再演され、ラモーの死後の上演回数は100回をくだらないものだった。このオペラで特筆すべきはその序曲。カオスの中から四大元素(火・空気(風)・水・土)が作り出されるようすが見事に音楽化されている。ほか、表情豊かなアリア部分、典雅なバレエ部分など、もりだくさんの音楽で非常に楽しめる内容。管弦楽が織りなす愉悦の響きが素晴らしいのはもちろん、嵐の場面での様々な効果音も楽しく、ルセのチェンバロの効果も全体を通して抜群に光っている。歌唱陣も、若手ながら活躍めざましいジュリアン・プレガルディエン、そして吉田秀和氏も絶賛し、日本でもファンの多いピオーなど、豪華な顔ぶれ。ラモー充実期のオペラにうれしい新録音が誕生した。
 あらすじ:ツァイスは妖精(不死身)でありながら、羊飼いの娘ツェリディーに恋をし、自ら羊飼いに扮して彼女の愛を勝ち取る。結ばれた二人がキューピッドを讃える祭りをしていると、キューピッド自身が現れ、二人の愛が真実のものかどうかを試すという。サンドールが現れ、ツェリディーに、自分の王国を分け与えよう、あるいはもっと美しくしよう、などとあの手この手で誘惑するが、ツェリディーはなびかない。最後にツァイスが自らの正体をツェリディーに明かすとツェリディーは身を引こうとする。ツァイスは自分の永遠の命をなげうって、ツェリディーと一緒になろうとする。その真実の愛にうたれた神は、ツァイスとツェリディーの二人に永遠の命を与え、二人はツァイスの宮殿で再び結ばれる。愛を讃える大団円でオペラは幕となる。
Into the dark 〜カロル・ベッファ(1973-):作品集
 ヴィオラと弦楽オーケストラのための協奏曲/
 ハープと弦楽オーケストラのための協奏曲/
 ピアノと弦楽オーケストラのための「ダーク」/
 声と弦楽オーケストラのための「薄暗い夜」/
 弦楽オーケストラ(とハープ)のための「迷路」/
 ピアノと弦楽オーケストラのための「虹」
ヨハン・ファジョ指揮
アンサンブル・コントラスト
[アルノー・トロット(Vn/Va)
 アントワーヌ・ピエルロ(Vc)]

カロル・ベッファ(P)
カリーヌ・デエ(Ms)
エマニュエル・セイソン(Hp)
 録音:2013年2月。フランスの作曲家カロル・ベッファの作品集。非常に繊細な響きが魅力で、静かな映画音楽のような風合いもあわせもつ。フランスの魅惑のメゾ、デエやアンサンブル・コントラスト、さらにnaïveからのリリースも注目されている若手ハープ奏者エマニュエル・セイソンらという豪華布陣による演奏。ベッファは幼い頃は子役俳優として活躍、15ほどの映画への出演履歴を持つ。そのかたわら音楽をはじめ、ケンブリッジでは哲学を学ぶなど、幅広い人物。ピアニスト、即興家、そして作曲家として活躍している。トゥールーズ=キャピトル国立o. では2006-09年コンポーザー・イン・レジデンスを務め、その間に書いたヴァイオリン協奏曲をルノー・カピュソンが、そしてピアノ協奏曲をベレゾフスキーが初演している。2014年開催の国際音楽祭NIPPONでは諏訪内晶子がその作品を初演、注目度も高まっている作曲家。
ピアノ・アンコールズ
 ガーシュウィン:私の彼氏 / ブラームス:ハンガリー舞曲第1番 / シベリウス:悲しきワルツ
 ワーグナー:侯爵夫人のアルバムに / ファリャ:火祭りの踊り
 カバレフスキー:やさしい変奏曲 Op.51 〜第2番「ロシア民謡による舞曲風変奏曲」
 C.P.E.バッハ:ソナタ(カンタービレ) H.245 / アルベニス:タンゴ
 グリーグ:抒情小品集第3集〜第6曲「春に寄す」 / グノー:操り人形の葬送行進曲 / ドビュッシー:月の光
 スクリャービン:練習曲 Op.2 No.1 / プッチーニ:アルバムの一葉 / シューベルト:楽興の時 Op.94 No.3
 チャイコフスキー:感傷的なワルツ / ショパン:ノクターン Op.9 No.2 / プロコフィエフ:騎士たちのおどり
 J.S.バッハ:プレリュード BWV999 / モーツァルト:バターつきパン
 シューマン:詩人は語る(子供の情景終曲) / サティ:ジムノペディ第1番

  トリスタン・プァッフ(P)
 録音:2015年1月。演奏会で本編プログラムを堪能した後、アンコールを聴くのはまた一段と楽しい。フランスのピアニスト、トリスタン・プァッフが、自らがよくアンコールとして演奏する愛奏曲を集めた1枚をリリース。リラックスして楽しみたい。
夢のあとに [Après un rêve]
 マスネ:悲歌 / フォーレ:夢のあとに / グノー:夕べ / サン=サーンス:白鳥/夕暮れのヴァイオリン
 ショーソン:終わりなき歌 / フォーレ:チェロのためのロマンス / グノー:去りし人
 マスネ:タイスの瞑想曲 / ゴダール:子守歌 / フォーレ:子守歌(Vn)/アンダンテ(Vn)
 サン=サーンス:アレグロ・アッパッショナート / ベルリオーズ:囚われの女 Op.12

  カリーヌ・デエ(Ms) アンサンブル・コントラスト
  [アルノー・トロット(Vn) アントワーヌ・ピエルロ(Vc) ヨハン・ファルジョ(P)]
 録音:2014年3月、12月。フランスの歌曲集を、ヴァイオリンやチェロを加えたかたちにアレンジして演奏したオシャレな1枚。フランスの魅惑のメゾ・ソプラノ、カリーヌ・デエ。オペラ・シーンでもフランス内外の劇場でひっぱりだこの彼女だが、デセイやプティボンのディスクでも共演しているなど、その活躍の場は実に幅広いものとなっている。デエのしっとりと美しい声を堪能出来る。
ジョルジュ・オンスロウ(1784-1853):弦楽四重奏曲集 (Vol.2)
 〔ハ短調 Op.8 No.1 /変ロ長調 Op.10 No.3 /イ長調 Op.8 No.3 〕
 ルッジェーリSQ [ジローヌ・ゴベール=ジャック、シャルロット・グラタール(Vn)
          デルフィーヌ・グランベール(Va) エマニュエル・ジャック(Vc)]
 録音:2015年1月。 Vol.1: Agogigue, AGO-006 。「レ・タラン・リリク」や「アマリリス」といった名門の中核で活躍する名手たちが2007年に結成した室内楽アンサンブルによるジョルジュ・オンスロウの弦楽四重奏曲集第2弾。オンスロウはクレルモン=フェランで生没、音楽院で学ぶこともなく、作曲した3つのオペラもあたたかい評価を得られず、いわばメインストリームからは外れ、長い間忘れ去られた存在だったが、急速に評価が高まっている。オンスロウの弦楽四重奏曲12曲は1814年に完成され、どれも流麗さとエレガンスに満ちている。ルッジェーリ弦楽四重奏団のメンバーによる巧みなアーテキュレーションや強弱の表情づけにより、オンスロウの世界が生き生きと輝いている。
AP-104
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(2CD)
1.5CD価格
Alvorada
 ファリャ:7つのスペイン民謡 より〔ホタ/子守歌〕/グラナドス:ゴイェスカス〜間奏曲
 フアン・カルロス・コビアン(1896-1953):Nieblas del riachuelo /ノスタルジアス
 カルロス・カシャサ(1902-1999): Alvorada / イソリナ・カリジョ(1907-1996): Dos Gardenias
 モイセス・シモンズ(1889-1945): El Manisero / ホセ・ダメス(1907-1994):ナダ
 エグベルト・ジスモンチ(1947-):水とワイン / ピアソラ:鮫/オブリビオン/グラン・タンゴ
 フリアン・プラサ(1928-2003):パジャドラ / フェリクス・リペスケル(1913-1970):ロマンティカ
 アルフレド・ゴッビ(1912-1965): A Orlando Goñi / トッキーニョ(1946-):イタポアンの午後
 ヴィラ=ロボス(1887-1959):黒鳥の歌/ブラジル風バッハ第5番「カンティレーナ」/ El canto dels ocells
 トム・ジョビン(1927-1994):波 / ガスパール・カサド(1897-1966):無伴奏チェロ組曲

 オフェリー・ガイヤール(Vc|使用楽器:フランチェスコ・ゴフリラー、1737年製)
 サビーヌ・ドゥヴィエイル、トッキーニョ、サンドラ・ルモリーノ(声) シリル・ギャラ(Vn)
 ホアンホ・モサリーニ(バンドネオン) ロマン・ルキュイエ(Cb) ルイス・デ・アキノ、ルディ・フローレス、
 エマニュエル・ロスフェルダー(G) サンドリーヌ・シャトロン(Hp) ニコラ・ゲネス(Tp) ファビアン・
  シプリアン(Tb) ダヴィド・チュペテ、フロラン・ジョデレ、ルベンス・セルソ・ロペス、クリスティアン・
  パオリ(Perc) ゲラルト・ディ・ジュスト、ガブリエル・シヴァク、フェルナンド・マグナ(P)
 シマオ・アルコフォラード・バレイラ、アナ・カタリーナ・ブラガ、アンヌ=シャルロッテ・デュパ、クレメンス・
  イッサーテル、エステル・ルフェーブル、ヒューゴ・パイヴァ、ロール・ツァウグ(Vc)
 録音:2014年9月。#演奏者名カナ表記に関しては、当店ではチェックしておりません。オフェリー・ガイヤールの最新盤は、ファリャやグラナドスによる、民謡色濃厚な作品から、ヴィラ=ロボスやピアソラなど、南米の作品までを網羅した2枚組。どんな作品でも、ガイヤールの音色のエレガントさ、スタイリッシュさ、そしてあたたかさはぶれることなく存在していて、非常に楽しい内容となっている。カサド作品も、ともするとドライになりやすいものだが、ガイヤールは切れ味とやわらかさ、見事なバランス感覚で聴かせる。ボサノヴァの神様、トッキーニョも参加しているという超豪華なゲスト演奏家の顔ぶれにも注目。オフェリー・ガイヤールは、先にリリースされたC.P.E.バッハの協奏曲集(AP-080)が2014年のディアパソン・ドール・オブ・ザ・イヤーを受賞、ますます充実をみせているチェリスト。1998年ライプツィヒ国際バッハ・コンクール第3位、また、自ら創設したアンサンブル・アマリリスを率いて国際コンクールで優勝しており、モダーンからバロックまで、幅広く活躍している。フルニエ、トルトゥリエら、フランス・チェロ楽派の正当な継承者ともいえる存在。目を閉じてCDを聴いているとまるで自分一人のために弾いてくれているような気分になる親密な空気感は、他ではなかなか味わえない彼女ならではの魅力といえるのではないだろうか。そんなガイヤールの魅力は、この様々な編成による演奏のディスクでも遺憾なく発揮されている。
ロマン・ルルー〜トランペット協奏曲集
 ジョルジュ・ドルリュー(1925-1992):トランペット小協奏曲(1951)
 カロル・ベッファ(1973-):トランペットと弦楽のための協奏曲
 ジョリヴェ:トランペット、ピアノと弦楽のためのコンチェルティーノ
 ジャン=バティスト・ロバン(1976-):魂の歌 / マルタン・マタロン:トラム XII
  ロマン・ルルー(Tp) ロベルト・フォレス・ベレス指揮オーヴェルニュo.
 録音:2014年5月2日-6日、オーヴェルニュo. 施設、クレルモン=フェラン。人気のトランペット奏者ロマン・ルルー、今回は協奏曲集だが、思わず目を疑いたくなる名前が並んでいる。まずジョルジュ・ドルリュー。言わずと知れたトリュフォーの映画音楽作曲家。「突然炎のごとく」「恋のエチュード」「隣の女」のほか、アラン・レネの「二十四時間の情事」やベルトリッチの「暗殺の森II」などの音楽も担当している。ドルリューはパリ音楽院でビュセールとミヨーに学び、トランペット小協奏曲は初期作。かなり技巧的で、どこかショスタコーヴィチ風。ドルリューの知られざる一面を披露してくれる。ポーランド系フランス人のカロル・ベッファは、2014年諏訪内晶子がパーヴォ・ヤルヴィと委嘱協奏曲を演奏したことで記憶される若手。彼も映画音楽で知られる。オルガニストとして知られるジャン=バティスト・ロバンの「魂の歌」はルルーのために書かれた作品。オルガン的な響きが興味津々。いずれの作品もルルーは抜群の巧さ。若々しい音楽性ともに輝くような美しさ。
世紀末
 フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
 ショーソン:
  ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲/
  「愛と海の歌」〜間奏曲
レイチェル・
 コリー・ダルバ(Vn)
クリスティアン・シャモレル(P)
シカゴ・スペクトラムSQ
 録音:2014年5月30日-6月1日、ルール・ブルー、ラ・ショー=ド=フォン。2012年に初来日公演を行い話題となったスイスの女流ヴァイオリニスト、レイチェル・コリー・ダルバ。かつてワーナーからイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ集をはじめ3枚のアルバムをリリースしていたが、今回アパルテ・レーベルに初登場。「世紀末」と銘打ち、フランクとその弟子ショーソンの名作に挑戦しているが、どちらも彼女が敬愛してやまないイザイのために書かれた物。さらにフランクのソナタはプルーストの「失われし時を求めて」に登場する架空の「ヴァントゥイユのソナタ」として解釈しているのも興味津々。ダルバ本人書き下ろしの解説も読みごたえ満点。赤く染めた長髪と真っ赤なルージュ、シースルー衣裳に皮ジャンを羽織った姿はロック歌手のようなカッコ良さ。独特のフレージングで両作品を解釈し、ショーソンの痛切なまでの表現が感動的。ダルバの好パートナー、ピアノのクリスティアン・シャモレルも輝かしい技巧を披露している。
シューベルト
 4つの即興曲 D.899, Op.90 /4つの即興曲 D.935, Op.142 /連梼 D.343(リスト編曲)
  フランソワ・シャプラン(P)
 録音:2014年7月23日-26日、サン・ピエール教会、パリ。フランソワ・シャプランはパリ音楽院でヤンコフ、ロバン、ペヌティエに師事。ショパンやドビュッシーのディスクをリリースし、来日公演も行っているので日本にもファンの多い個性派。彼の演奏はまず何よりピアノの音色の美しさ、特殊さが特徴。透明で幻のようにキラキラした不可思議な世界に魅了される。このタッチで弾かれるシューベルトの即興曲はまさに理想の響き。清潔な歌い回しも独特で、要注目の個性派。
ルクス・エテルナ〜バッハの幻影
 J.S.バッハ/ケンプ編曲:フルート・ソナタ第2番 BWV 1031 〜シチリアーノ
 J.S.バッハ/ジロティ編曲:管弦楽組曲第3番 BWV 1068 〜アリア
 J.S.バッハ/ブゾーニ編曲:シャコンヌBWV 1004 /
  コラール前奏曲集〔来たれ、創り主にして聖霊なる神よ BWV 667 /目覚めよと呼ぶ声あり BWV 645 /
           いざ来たれ、異教徒の救い主よ BWV 659 /今ぞ喜べ、愛するキリスト者よ BWV 734 /
           主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ BWV 639 /主なる神よ、いざ天の扉を開いたまえ BWV 617 /
           アダムの罪によりすべては失われぬ BWV 637, BWV 705 /
           汝のうちに喜びあり BWV 615 /われらが救い主イエス・キリストBWV 665 〕
 ティエリー・エスケシュ:3つのバロック・エチュード/二重の遊び

 ベアトリス・ベリュ(P|使用楽器:ベーゼンドルファー・コンサート・グランド)
 録音:2014年7月24日-26日、フラジェ、ベルギー。女優のように美しい容姿のスイスのピアニスト、ベアトリス・ベリュ。これまでフーガ・リベラ・レーベル等から数枚のアルバムをリリースしていたが、アパルテ・レーベルに初登場。1985年ローザンヌ生まれ。ガリーナ・イヴァンツォヴァ、ブリジット・エンゲラー、ジョン・オコーナーに師事し、クレーメルやパールマンに認められてアンサンブルに参加するなど活躍している。当アルバムはバッハ作品をピアノ用に編曲したものを中心に構成。特に嬉しいのはブゾーニが編曲したコラール前奏曲が10曲すべて収められていること。ブゾーニの真摯な編曲は聴感以上にひどく難しいものだが、ベリュは余裕の技巧に快適なテンポで聴き惚れさせられる。ことにタルコフスキーが「惑星ソラリス」で使用した曲「主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ BWV639」に基づく編曲は涙なしには聴けない深さに満ちている。またジロティ編曲の「G線上のアリア」の歌いまわし、ブゾーニ編曲の「シャコンヌ」の技巧と集中力いずれも驚き。ベーゼンドルファー・コンサート・グランドが、「銀のタッチ」と称される彼女の響きをあますところなく発揮、ブゾーニやケンプがピアノでバッハを聴かせた意味を納得させる。フィル・アップは、以前ル・ゲと来日公演を行ったオルガニスト兼作曲家ティエリー・エスケシュのピアノ曲。バッハが現代に再現される。
ベートーヴェンピアノ協奏曲集〔第1番 ハ長調 Op.15 /第2番 変ロ長調 Op.19 〕
 ルイ・シュヴィッツゲーベル=ワン(P) ティエリー・フィッシャー指揮 LPO
 録音:2014年6月30日、7月1日。ガイヤールと共演したブラームスの室内楽作品集(AP-053)、2013年に録音したソロCD (AP-067)でも超絶技巧を効かせた中国の俊英、ルイ・シュヴィッツゲーベル=ワンの新譜は、名匠ティエリー・フィッシャー率いるロンドン・フィルとのベートーヴェンのピアノ協奏曲集。名匠フィッシャーの非常にくっきりとした音楽作りのオーケストラに乗って、シュヴィッツゲーベルのピアノも非常にくっきりと明度の高い音色。気持ちのよい勢いと、どっしりとした構成感が心地よい音楽が展開されている。
AP-097
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(2CD)
ドミニク・ヴェラール&アンサンブル・ジル・バンショワ 2012 〜
 失われたポリフォニー〜フランスのフォブルドン、16-19世紀

 [CD1] 16世紀-17世紀のポリフォニー音楽
  Ave consurgens aurora (versus) / Lumen ad revelationem (antienne) & Nunc dimittis (cantique de Siméon) /
  Credo in unum Deum / Mater regis angelorum (versus) / Nunc dimittis / Ayn apolis /
  Magnum nomen Domini (cantique de Siméon) / Litaniae B. Mariae Virginis (Litanies) / Miserere (詩篇50) /
  Creator omnium (versus) /クローダン・ド・セルミジ(1490-1562):マニフィカト(第6旋法)/
  Laudate pueri (詩篇112) /ジャン・ド・ブルノンヴィル(1585-1632): Ave regina cœlorum (antienne) /
  In exitu Israel (詩篇113) / Laudate Dominum du 3e ton (詩篇116) /
  シャルパンティエ(1643-1704):深き淵より(詩篇129)
 [CD2] 18-19世紀のポリフォニー
  Pange lingua (賛歌) / Dixit Dominus (詩篇109) / Ave maris stella (賛歌) / Alleluia, O filii et filiæ /
  Ave maris stella (賛歌) / Kyrie de la Messe des morts / Dies iræ (セクエンツィア) /
  Omne quod dat mihi (antienne) & マニフィカト(第7旋法)/
  フランソワ=ルイ・ペルヌ(1772-1832): Kyrie de la messe des solennels mineurs /
  アヴェ・ヴェルム・コルプス(セクエンツィア)/ Ut queant laxis (賛歌) / Inviolata (セクエンツィア) /
  アロイス・クンク(1832-1895):Adoremus in æternum (antienne)

 ドミニク・ヴェラール指揮アンサンブル・ジル・バンショワ、トゥールーズ聖歌隊
 録音:2012年4月。中世から19世紀にかけて、ヨーロッパでは多彩な多声音楽が存在していた。それらは何声からなるか、即興かどうか、さらには記譜法など実に様々なタイプの音楽が存在していた。そんな中、ヨーロッパの教会の歴史の中でもっとも長く存在していたのがフォブルドン。フォブルドンとは、3声部からなる曲を作曲する際、上声部(原則として聖歌の旋律にもとづく)と下声部(T)だけが記譜され、中間声部は上声部の完全4度下を演奏するもので、1960年代の第2バチカン公会議で決定された、ミサの中でラテン語を使用しないという決定がためされるまで、このフォブルドンで音楽は演奏されていた。このフォブルドンを研究しているドミニク・ヴェラール率いるアンサンブル・ジル・バンショワが、何千もの楽譜の中から選りすぐった作品をおさめたのがこの2枚組。ヨーロッパ中の教会で長きにわたって歌い継がれてきた多声の聖歌が鮮やかによみがえった。
メイド・イン・フランス
 サン=サーンス:クラリネット・ソナタ Op.167 / ショーソン:アンダンテとアレグロ / フランセ:主題と変奏曲
 ドビュッシー:狂詩曲第1番 / プーランク:クラリネット・ソナタ Op.184 / マスネ:タイスの瞑想曲

 ピエール・ジェニソン(Cl) ダヴィド・ビスミュート(P)
 録音:2013年7月15日-17日、ヴァンセンヌ公会堂。20世紀のフランス作曲家によるクラリネット作品集。マスネ以外はオリジナルで、フランスならではの洒脱でエレガントな魅力にあふれているが、サン=サーンスやプーランクは最晩年の枯淡の境地を示している。ショーソンとフランセ作品も貴重。ピエール・ジェニソンは1966年生まれ。マルセイユ音楽院で学び、2014年に東京で行われたジャック・ランスロ国際クラリネットコンクール優勝の逸材。ブルターニュo. の首席奏者も務めている。ピアノのダヴィド・ビスミュートは1975年コートダジュール生まれ。ニース音楽院でカトリーヌ・コラールに学び、さらにパリ音楽院でガブリエル・タッキーノとブリジット・エンゲラーに師事。マリア・ジョアン・ピリスに認められ、現在ポルトガルに住み、彼女の助手を務めている。
ストラヴィンスキー/ドゥシュキン編曲:ディヴェルティメント/イタリア組曲
シマノフスキ:神話 Op.30 /パガニーニの3つのカプリス Op.40
 ソレンヌ・パイダシ(Vn) フレデリック・ヴァイセ=クニッテル(P)
 録音:2014年7月18日-20日、サン・ピエール教会、パリ。ソレンヌ・パイダシはフランスの若手ヴァイオリニスト。2010年のロン=ティボー国際コンクールで成田達輝を抑え優勝した実力者。ニース、ジュネーヴの音楽院で学んだ後、アメリカのカーティス音楽学校でジョゼフ・シルヴァースタインに師事した。冴えた演奏のみならず、CDブックレット解説に知的な名文を書き下ろす才女でもある。これまで数枚をリリースしているが、アパルテ・レーベル第1弾はストラヴィンスキーとシマノフスキ作品集。作曲家はスラヴ系ながら、ストラヴィンスキーの「イタリア組曲」はペルゴレージの音楽に基づくバレエ「プルチネッラ」の編曲、シマノフスキの「パガニーニの3つのカプリス」もイタリアのパガニーニの名作に基づき、「神話」はギリシャ神話を題材としているため南欧的雰囲気が漂う。ストラヴィンスキーの「ディヴェルティメント」はチャイコフスキーの音楽に基づくバレエ「妖精の口づけ」をドゥシュキンが編曲したもので、チャイコフスキーの旋律美をたっぷり楽しめる。シマノフスキの「パガニーニの3つのカプリス」はパガニーニの「無伴奏ヴァイオリンのためのカプリス」第20、21、24番に基づ来るが、シマノフスキの付けたピアノ・パートは非常に凝ったもののうえ、音楽にも手を加えているため印象がかなり異なり興味津々。パイダシは透明で鋭い音色がシマノフスキにぴったり。ピアノのヴァイセ=クニッテルはポーランド系フランス人で、Integraleレーベルからシマノフスキのピアノ曲集をリリースしていた。ここでも「神話」のピアノ・パートが絶品。ギリシャ神話の倒錯した愛を妄想するシマノフスキの心情をあますところなく描いている。
AP-094
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(3CD)
リュリ:歌劇「アマディス」
 シリル・オヴィティ(T;アマディス) ユディト・ファン・ワンロアイ(S;オリアーヌ)
 イングリッド・ペリューシュ(S;アルカボンヌ) エドウィン・クロスリー=メルセル(Br;アルカラウス)
 ブノワ・アルヌ(B−Br;フロレスタン) ベネディクト・トラン(S;ユルガンド)
 ハスナー・ベンナニ(S;コリサンド) ピエリック・ボワソー(Br;アルキフ/アルダン・カニル/牢番/羊飼い)
 レイナウト・ファン・メヘレン(T;捕えられた者/羊飼い/勇者) カロリーヌ・ウェイナンツ
  (S;ユルガンドの侍女/捕えられた者/捕虜/羊飼い) ヴィルジニー・トマス(S;羊飼い/ユルガンドの侍女)

 クリストフ・ルセ(Cemb)指揮レ・タラン・リリク、ナミュール室内cho.
 録音:2013年7月4日-6日、王立オペラ劇場、ヴェルサイユ宮殿。リュリを振らせたら敵なしのクリストフ・ルセ、晩期の傑作「アマディス」は、リュリが亡くなる3年前の作品(完成したオペラでは後ろから三つめ)。1864年1月に初演され大成功を収めた。台本は長年の相方、フィリップ・キノー。題材はルイ14世自身が決めたと伝えられている。愛、魔法、嫉妬、急展開の逆転、試練、そして大団円と様々な要素に満ちた劇的変化に富んだ物語である一方、騎士道精神が色濃く反映された話には深みがあり、リュリとキノーのコンビの到達点を感じさせる。ちなみにこの台本はたいへんに人気が高く、ヘンデル(1715年、ロンドン)やJ.C.バッハ(1779年、パリ)をはじめ多くの翻案ものが作られている。晩年のリュリの音楽は、派手さや荘重さが控えられた代わりに深々としたじっくりした味わいが強く、それが物語と絡み合って他に類を見ない独自の高みに達している。ルセは「アマディス」を、2013年7月5日にヴェルサイユ王宮劇場で、13日にボーヌ音楽祭で演奏会形式で上演している。ヴェルサイユ公演の本番とその前後に収録が行われた。ルセの指揮するリュリからもちろん高水準、たとえば第3幕の捕らえられた者たちの合唱の静かに広がる感動は絶品。改めてリュリの卓越した筆に目を見開かせてくれる演奏。ルセは、高い評価を得た「ベレロフォン」で主役を歌った二人、フランスのテノール、シリル・オヴィティとフランスのソプラノ、イングリッド・ペリューシュをここでも起用、二人は「ファエトン」でも歌っており、ルセから絶大な信頼が寄せられていることが分かる。オリアーヌのユディト・ファン・ワンロアイはオランダのソプラノ。オランダやベルギーで、バロックからモーツァルトあたりを中心に活躍している。魔法使いアルカラウスのエドウィン・クロスリー=メルセルはフランスのまだ若いバリトンだが、広いレパートリーで既にヨーロッパ各地で活躍している。フロレスタンのブノワ・アルヌは「ファエトン」(AP-061)でも起用されていた。晩期のリュリの魅力はまた格別なもの、それをたっぷり堪能できる。リュリ「アマディス」簡単なあらすじ:プロローグ 魔法にかけられていたアルキフとユルガンドは魔法が解けて目を覚まし、アマディスの救出に向かう。第1幕 帰還したばかりのフロレスタンに、アマディスは、オリアーヌの愛を得たと思ったのに、彼女に冷たくされていると嘆く。フロレスタンが恋人のコリサンドとの再会を喜んでいると、悲しみに沈んだオリアーヌが現れ、アマディスが心変わりしたと嘆く。第2幕 森。ここは魔法を操るアルカラウスの牙城。その妹アルカボンヌは、自分を助けた勇者に恋をしてしまい思い悩んでいる。兄妹の兄アルダン・カニルはアマディスに倒され、兄妹はアマディスに復讐しようとしている。そうとは知らぬアマディスが森にやって来ると、コリサンドに出会い、フロレスタンが魔法にかかり捕らえられてしまったことを知る。友を助けに行こうとするアマディスだったが、彼もまた魔法にかかって捕らえられてしまう。第3幕 捕えられた者たちが嘆いている。処刑が始まろうとした時、墓の中から亡きアルダン・カニルが現れ、妹が裏切りを起そうとしてると告げる。アルカボンヌは捕らわれのアマディスこそが自分を助けた人だと気付き、全員を解放する。第4幕 喜びの島。アルカボンヌは兄アルカラウスに、アマディスを愛していることを明かす。オリアーヌが島に現れ、アルカボンヌは嫉妬に燃える。アルカラウスがアマディスの「亡骸」を見せると、オリアーヌは取り乱して嘆き、兄妹はその姿にほくそ笑む。そこに大蛇の船に乗ったユルガンドと侍女たちが現れ、魔法を解いてアマディスとオリアーヌを救出。さらに大気の精霊たちがアルカラウスが呼び出した地獄の悪霊たちを打ち破り、兄妹は破滅する。第5幕 宮殿。アマディスとオリアーヌは再会し、誤解を解く。ユルガンドはオリアーヌの父を説得することを請合う。フロレスタンとコリサンドも戻ってくる。アマディスとオリアーヌは大勢の人々から最も誠実な恋人と讃えられて幕となる。
I Dilettanti 〔愛好家たち〕
 ジャコモ・マッカーリ(1700-1744):もう二度と私に言わないでくれ
 エマヌエーレ・ダストルガ(1680-1757?):このいとしい木々の中で
 ヴィンチェンツォ・ベネデッティ(1683-?):ジェラシー
 ジョヴァンニ・マリア・ルッジェーリ(1665-1725):神よ、私に見せて下さい/私は自分の誓いの捕われの身
 ディオジェニオ・ビガーリア(1676-1745):愛する人のことを調べれば調べるほど
 ベネデット・マルチェッロ(1686-1739):(ルクレツィア)

 シャビエ・サバタ(CT)
 マルケロス・クリシコス(Cemb)指揮ラティニタス・ノストラ
 録音:2013年8月12日-15日。ヘンデルの悪役アリア集(AP-048)でも評価の高かったバルセロナ生まれのカウンターテナー、シャビエ・サバタによる、「愛好家たち」(優れたアマチュア)作曲家たちによる作品を、サバタ自ら選曲したプログラム。ジャコモ・マッカーリはヴェネツィアのサン=マルコ大聖堂のテノール歌手でもあった人物。「 Non mi si dica più 」は、レチタティーヴォを伴うダ・カーポ・アリアを2つもつカンタータで、表情豊かな作品。エマヌエーレ・ダストルガ(男爵)は破天荒な人生を送った人物とされる。幅広いジャンルの作品を残しているが、特に室内カンタータで人気を博していた。天性のメロディ・メーカーともいえる美しい旋律が魅力の作品。ヴィンチェンツォ・ベネデッティについてはあまり多く知られていない。アルトの歌手として活躍したという記録もあるが、カウンターテナーだったのか、それともカスラートだったのかも定かでない。カンタータ「ジェラシー」は急速なパッセージを伴うあたたかな作品。ルッジェーリをディレッタントとして分類してしまうのはいささか疑問、というくらいにこのディスクの作曲家の中では知られた存在。ただし、ここに収録された作品は、サバタが英国図書館で写譜を見つけた物。超絶技巧と高音域で展開されるメロディが印象的な優れた作品。ディオジェニオ・ビガーリアは、教会の院長も務めたディレッタント作曲家。ここに収録された作品も宗教作品。サバタは、ゆたかな表現力、変幻自在な音域を駆使して、知られざる作品の魅力を存分に知らせてくれる。クリシコスのチェンバロの妙技も聴き物。
モーツァルト:弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 KV.421
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第2番 イ短調 Op.13
 キアーロスクーロSQ [アリーナ・イブラギモワ(Vn1) パブロ・エルナン・ベネディ(Vn2)
             エミリー・ヘルンルンド(Va) クレア・ティリオン(Vc)]
 録音:2014年3月、10月、ポール=ロワイヤル・デ・シャン。イブラギモワ率いるキアーロスクーロ弦楽四重奏団の第3弾。第1弾、第2弾につづき、今回もモーツァルトを含んだかたちのプログラム。レコーディングの場所でもあるポール=ロワイヤル・デ・シャンでは、モーツァルトの弦楽四重奏のシリーズを展開している。ここに収録されているハイドン・セットの中で唯一の短調である15番は、素朴でエレガントな表情が印象的。一転メンデルスゾーンが18歳のときに書いた弦楽四重奏第2番では、切迫した緊張感に満ちている。二人の天才の作品を、2005年の結成から10年を迎え、4人の音楽づくりもますます息がそろってきたキアーロスクーロの自然で素直な感性で味わうことのできる1枚。
AP-087
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(2CD)
チャイコフスキー
 ピアノ・ソナタ ト長調「大ソナタ」 Op.37 /
 組曲「四季」 Op.37b
アレクサンドル・パレイ(P)
 録音:2012年1月、サンボネ劇場。チャイコフスキーのピアノ独奏曲のなかで最も知られているのは組曲「四季」であろうが、その作品番号である37は、本来「大ソナタ ト長調」に付けられた物。ここではその Op.37の2作品をまとめた。どちらも大作ゆえ2枚組だが、交響曲第4番や歌劇「エフゲニー・オネーギン」と同時期の充実した技法を堪能出来る。アレクサンドル・パレイは1956年モルダヴィア生まれのピアニスト。モスクワ音楽院でベラ・ダヴィドヴィチとゴルノスタエヴァに師事し、現在はアメリカを本拠に旺盛に活動、ことに多数のCD録音をしている。19世紀のヴィルトゥオーソを思わせる個性的演奏が特徴。
フェリシアン・ダヴィッド(1810-1876):歌曲集
 雲/幸福の花/夢想/サルタレッロ/さらばシャランス/戻って来て!/眠れ、マリー/ベドウィン/台湾/
 わが道を進め/彼を愛してしまったかしら/大洋/漁夫の歌/漁夫が船へ/忘れた。/チブク/老人と薔薇/友情

  タシス・クリストヤンニス(Br) ザナシス・アポストロプーロス(P)
 録音:2013年7月、ミトロプーロス・ザール、アテネ。フェリシアン・ダヴィッドは音楽に東方的要素を持ち込み、国民主義さらには今日のワールドミュージックの礎を作った作曲家。ダヴィッドのオーケストラ曲や室内楽曲は近年録音が出ているが、ついに歌曲も登場。ここでも中東的な音楽要素や詩に強い関心を示し、独特な世界を創り上げている。ギリシャ出身のバリトン、クリストヤンニスが絶妙な歌い回しで異国への憧れを表現している。
C.P.E.バッハ(1714-1788):
 チェロ協奏曲 イ短調 Wq.170, H.432 /シンフォニア第5番 ロ短調 Wq.182, H.661 /
 チェロ協奏曲 イ長調 Wq.172, H.439 /
 2つのヴァイオリンと通奏低音のためのトリオ・ソナタ ハ短調 Wq.161, H.579
  「多血質と憂鬱質 [Sanguineus & Melancholicus] 」(#)
 オフェリー・ガイヤール(Vc;フランチェスコ・ゴフリラー(1737)/通奏低音)指揮
 フランチェスコ・コルティ(Fp;
  Johann Andreas Stein (1785) (無印) / Franz Baumbach (Vienne, 1790);# )
 ティボー・ノアリ(Vn;#) プルチネッラo.
 録音:2013年9月17日-19日、12月19日、ボン・セクール教会、パリ。潤いを湛えたセンシティヴな音色と、親しい告白のような風合いが人気の女性チェロ奏者、オフェリー・ガイヤールによる、生誕300周年アニヴァーサリーのC.P.E.バッハ。 イ短調の協奏曲では、C.P.E.バッハ特有の起伏に富んだ旋律と疾風怒濤の強弱の変化が爆発しており、それでいてセンシティヴな音色と独白のような、思わずはっとさせられる表情はそのまま。オーケストラとの熱を帯びた、しかし非常に緊密な対話も聴きものの出来栄え。第1楽章のカデンツァの迫力と熱さはロマン派の名協奏曲をもしのぐかもしれない!他に収録されているシンフォニアの快活なリズムと通奏低音の刻みは愉悦の極み。チェロ協奏曲の明るい雰囲気も楽しく、最後のトリオ・ソナタはミンコフスキのオーケストラでコンサート・マスターを務めるティボー・ノアリがヴァイオリンを担当。ガイヤールの通低とともにセンスの光る演奏。聴き手の耳と心の襞にピタッと吸いつくような音色の録音も見事。
モーツァルト:ピアノ連弾作品集
 アンダンテと5つの変奏曲 ト長調 K.501 (1786) /
 4手のためのソナタ ハ長調 K.521 (1787) /
 4手のためのソナタ ヘ長調 K.497 (1786)
イスマエル・マルゲン、
ギヨーム・ベロン(P)
 イスマエル・マルゲン&ギヨーム・ベロンによるピアノ連弾作品集。シューベルト(AP-056)に続く第2弾はモーツァルト。1992年生まれのイスマエル・マルゲンは、ジャック・ルヴィエやロジェ・ムラロらに師事した若手で、2012年12月のロン=ティボー国際音楽コクールで第3位および聴衆賞を受賞している。一方、ギヨーム・ベロンも1992年生まれ、アンゲリッシュ、フランク・ブラレイ、レオン・フライシャー、ペヌティエらに師事している。2008年のブザンソンでの若き音楽家コンクールでピアノ部門賞を受賞。ジャン=フレデリック・ヌーブルジェのトリオを初演、室内楽の分野でも活躍が期待されている若手期待のピアニスト。
Paris 1884-1959
 フランク(1922-1890):前奏曲、コラールとフーガ(1884)
 ラヴェル(1875-1937):亡き王女のためのパヴァーヌ(1899)
 ドビュッシー(1862-1918):喜びの島(1904) / デュティユー(1916-2013):ピアノ・ソナタ(1946-48)
 プーランク(1899-1963):インプロヴィゼーション第15番「エディット・ピアフを讃えて」(1959)

  フロリアン・ビロ(P)
 録音:2013年10月7日-9日。19世紀終りのパリはドイツ音楽至上主義に対する反動ともいえるような、フランス音楽の新しい興隆をむかえていた。当時のパリを中心に活躍した、さらにプーランクを除いては音楽院にゆかりのある作曲家たちの作品をまとめた1枚。フランクはオルガンの教授だったし、ドビュッシーやラヴェル、デュティユーは音楽院で学び、のちに教授をつとめた。フランクとデュティユーの作品の間には約60年もの開きがあるが、洗練された和声や空気感は同じ。ベロフらに師事したフロリアン・ビロが、抜群の和声感覚と絶妙の語り口で、パリの空気をたっぷりと薫らせた演奏を展開している。
ストラヴァガンツァ〜コレッリ
 ジョバンニ・バッティスタ・レアリ(1681-1751):カプリッチョ・プリモ
 アルカンジェロ・コレッリ(1653-1713):トリオ・ソナタ集
  〔ハ長調 Op.3 No.8 /イ長調 Op.4 No.3 /ホ短調 Op.2 No.4 /
   ト長調 Op.4 No.10 /ニ長調 Op.3 No.2 /ト短調 Op.4 No.2 /ニ短調 Op.3 No.5 〕
 ジョバンニ・バッティスタ・レアリ:フォリア Op.1
  アンサンブル・ストラヴァガンツァ
 録音:2012年4月、フランス。新進気鋭の若手実力派団体アンサンブル・ストラヴァガンツァによる、17世紀ハプスブルク宮廷の室内楽曲アルバム(AP-041)に続く同レーベル第2弾、舞台は後期イタリア・バロック。この時代を語るに欠かせない大家コレッリを中心に、最初と最後に、18世紀初頭ヴェネツィアを中心に活躍し、コレッリの作風に影響され多くのソナタ作品を残したが、その後歴史の陰に埋もれてしまった不遇の作曲家レアリの作品を収録。最後の「フォリア」は、フォリアの音型が次々と変奏されていく中に、ヴィルトゥオジテあふれる華やかな旋律が随所に施され、特にコレッリへのオマージュを強く感じさせる。
AP-070
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(2CD)
1.5CD価格
ルセ〜J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻 BWV.870-893
 クリストフ・ルセ(Cemb)
 録音:2013年6月、ドーファン宮、ヴェルサイユ宮殿。使用楽器:リュッケルス、1628年製〔ヴェルサイユ宮殿蔵〕。ルセのバッハ平均律第2巻が登場、第1巻は録音していないので、これが初の「平均律」(AMBROISIE へ録音したW.F.バッハのための音楽帳には、平均律第1巻のいくつかのプレリュードの原型が収められている)。第2巻について、ルセ自身によるライナーノートの中で(仏・英語のみ)、長い作品も多く、和声の複雑な進行、時に無調かと思わせるような劇的な遠隔調への転調、構造の複雑さは第1巻よりも更に深まっている、と述べている。バッハのあらゆる鍵盤音楽を演奏してきた中で、第2巻は間違いなくバッハの鍵盤音楽の頂点である、とすら語る。第22番の 変ロ短調のフーガで、半音階で動く和声の絶妙な響かせ方、難曲第23番などでのほとばしる才気は圧巻。ヴェルサイユ宮殿所蔵のリュッケルスオリジナルを使用。楽器の音色、コンディションも抜群。ルセが満を持して臨んだ平均律、注目。第2巻のバッハの自筆譜は英国博物館に保存されているが、ルセは、いくつかの疑問点を含むとしながらも、バッハのオリジナル稿よりも、テクストや装飾、さらには曲の長さなど、いくつもの「改善点」がある、として、バッハの弟子(義理の息子)であるアルトニコルの写本に基づいて演奏している。
シューマン:おとぎの絵本 Op.113
シューベルト:アルペジオーネ・ソナタ D.821
ブラームス:ソナタ第2番 変ホ長調 Op.120 No.2
リズ・ベルトー(Va)
アダム・ラルーム(P)
 録音:2013年7月、サン=ピエール教会。フランスの若手二人による珠玉のヴィオラとピアノのデュオ。ヴィオラのリズ・ベルトーは1982年生まれ、ル・サージュのシューマンやフォーレ全曲録音プロジェクトにも参加するほか、世界の名だたるオーケストラとも共演を重ねている若手注目株ヴィオラ奏者。ピエール=アンリ・クスエレープやジェラール・コセらに師事したフランスの流れをくむ深みと熱を備えた音色が魅力。2005年にはジュネーヴ国際コンクールでヒンデミット賞を受賞している。ピアノのアダム・ラルームは1987年生まれ、ベロフらに師事し、2009年クララ・ハスキル国際ピアノコンクールで優勝し、ラ・フォル・ジュルネ音楽祭でもおなじみの存在。MIRAREからのリリースも評判の若手実力ピアニスト。ソロの活動のほか、室内楽にも注力している。シューマンから一気に二人の世界に引き込まれる語り口のうまさ。シューベルトのアルオペジオーネ・ソナタでは、二人のかけあいの妙が非常に楽しめる。ブラームスのソナタはもともとはクラリネットのためのソナタだが、作曲者自身によるヴィオラ編曲版もよく演奏される物。ベルトーの熱を帯びたヴィオラの音色にうっとり、ラルームが魅せるいぶし銀のような抑えの効いた音色のピアノの好サポートが光る。
ヴァイオリン・ソロ
 ヴィルスマイヤー:パルティータ第5番 ト短調 / テレマン:幻想曲 ニ長調 TWV40:23
 ヴェストホフ:組曲第5番 ニ長調 / テレマン:幻想曲 イ短調 TWV40:25
 バルツァー:前奏曲 ハ短調/アルマンド ト短調 / テレマン:幻想曲 ト長調 TWV40:15
 J.S.バッハ:パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004 / テレマン:幻想曲 ニ長調 TWV40:17
 ビーバー:「ローゼンクランツ・ソナタ」〜パッサカリア

  ティボー・ノアリ(Vn)
 録音:2013年6月、サン・レミ教会、ベルギー。使用楽器:ジェンナロ・ヴィナッチャ、1719年製作。ロンドンの王立音楽アカデミーでリディア・モルドコヴィチに師事、その後リモージュ・バロック・アンサンブルやコンチェルト・ケルンの奏者として研鑽を積み、2006年以来ミンコフスキのレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブルのコンサートマスターを務めるティボー・ノアリのソロ・デビュー盤。バルツァー(1631頃生まれ)からJ.S.バッハ(1685年生まれ)までの無伴奏ヴァイオリン曲を集めた意欲作。ミンコフスキゆずりの斬新な解釈で一気に聴かせてしまう。美しい音も魅力。マンゼやオノフリの後世代で最も期待できるバロック・ヴァイオリンの若手。バッハの有名な「シャコンヌ」が聴き物。
Poems - Louis Schwizgebel
 ラヴェル:夜のガスパール / リスト:オーベルマンの谷
 ハインツ・ホリガー(1939-): Elis、またはピアノのための3つの夜の小品
 シューベルト/リスト編曲:セレナーデ/水の上で歌う/君はわが憩い/魔王
  ルイ・シュヴィッツゲーベル=ワン(P)
 録音:2013年4月。ガイヤールのブラームス作品集(AP-053)でもパンチの効いたピアノを聴かせたシュヴィッツゲーベル(=ワン)のソロピアノCDが登場。「ポエム」と題し、詩にインスパイアされたピアノ作品を収録している。「夜のガスパール」はルイ・ベルトランの詩にインスパイアされたラヴェルが書いた作品で、冒頭の「オンディーヌ」のミステリアスなハーモニーの響かせ方からセンス抜群。「オーベルマンの谷」は厳密には小説に基づいているが、移ろう気分を繊細に表現している。ホリガーの作品は、象徴主義のトラークルの詩に着想を得て、1961年、ブーレーズの下で作曲を学んでいた頃にこの作品を書かれた物。Elisとは、詩にあらわれるミステリアスな少年。このホリガーの作品もミステリアスな雰囲気。そしてシューベルトの名リートの数々をリストが編曲したもので締めくくっている。
シューベルト
 ソナタ第18番 ト長調 D894 /さすらい人幻想曲 D760 /
 軍隊行進曲第1番 変ニ長調(タウジヒ編曲)
トリスタン・プァッフ(P)
 録音:2012年11月。プァッフは2007年のロン・ティボー国際音楽コンクールで6位入賞、ガラ・コンサートで来日経験もある注目株。ミシェル・ベロフやチッコリーニの薫陶を受け、清潔感のある音色が魅力。
ラヴェル
 マ・メール・ロワ/高雅にして感傷的なワルツ/
 夜のガスパール/亡き王女のためのパヴァーヌ
ヴァネッサ・ワーグナー(P)
 録音:2013年10月1日-3日。使用楽器: Yamaha CFX, n° 6.272.700 。1973年フランスの古都レンヌに生まれた美貌のピアニスト、ヴァネッサ・ワーグナーによるラヴェル。鋭い感性とセンス、そして確かなタッチが持ち味の彼女にぴったりの選曲。夜のガスパールのオンディーヌの繊細な表現、高雅にして感傷的なワルツでの各曲のキャラクターの描き分けも、シニカルなものから夢のようなものまで、実に鮮やか。
Memento mori 〔メメント・モリ〕
 モンテヴェルディ:「倫理的・宗教的な森」〜僕に恋の戯れをお望みなら
 ルイージ・ロッシ(1957-1653):彼の絶望は/おお、哀れな瀕死の男のおろかさ
 作曲者不詳:マッダレーナの嘆き(モンテヴェルディ「アリアンナの嘆き」に基づく)
  ジョフロワ・ジュルダン指揮レ・クリ・ドゥ・パリ
 録音:2012年7月-8月。「Memento mori」とはラテン語で「死を記憶せよ」、すなわち、自分はいつか死ぬ運命にあることを忘れるな、といった意味。ここに収録された音楽は、確証はないが、17世紀初頭、カトリックの祈祷室で祈りをささげる人々の厳粛な気持ちを高めるために演奏されたと考えられる室内カンタータ。祈祷室では、様々な集会などが、ラテン語ではなく、イタリア語の各地の方言で執り行われていた。聖職者たちは、当時流行し始めていたオペラなどの世俗的なジャンルの要素をもつ音楽で、しかもラテン語ではなくイタリア語の歌詞をもつものが、参加者たちにメッセージを伝えるのに有効な手段だと感じはじめていた。ここでは、イタリア初期バロックの大家、ルイージ・ロッシによる作品などを収録。舞曲風のリズムをもつ器楽作品や、劇的なレチタティーヴォ風の楽章など、歌詞は必ずしも聖書的なものばかりでなく、恋愛のことなども描かれているものもあるが、さながらバッハのカンタータのイタリア版、といった感もある、心震わす作品が並ぶ。
シューベルト1台4手のためのピアノ連弾作品集
 幻想曲 ヘ短調 D940 (1828) /アレグロ イ短調「人生の嵐」D947 /ソナタ ハ長調「グラン・デュオ」D812
  イスマエル・マルゲン、ギヨーム・ベロン(P)
 録音:2012年7月。シューベルトは1台4手のオリジナル・ピアノ作品を32曲書いたが、どれもが美しく、リートのような親密さに満ちた物。ここに収められているのはその中でも特に優れた3曲。幻想曲は傑作と名高い物。その何年か前にシューベルトが恋に落ちたカロリーヌ・エステルハージ嬢に献呈、1828年5月にシューベルティアーデで初演された。「人生の嵐」(出版社ディアベッリによるタイトル)は、冒頭の和音がピアノの音域ギリギリまで使った幕開けで、アレグロの部分は嵐のよう、続く部分はコラール風で、嵐とはまったく別世界のようになっている。1992年生まれのイスマエル・マルゲンは、ジャック・ルヴィエやロジェ・ムラロらに師事した若手で、2012年12月のロン=ティボー国際音楽コクールで第3位および聴衆賞を受賞している。ギヨーム・ベロンも1992年生まれ、アンゲリッシュ、フランク・ブラレイ、レオン・フライシャー、ペヌティエらに『支持している』(代理店記載ママ)。2008年のブザンソンでの若き音楽家コンクールでピアノ部門賞を受賞。ジャン=フレデリック・ヌーブルジェのトリオを初演、室内楽の分野でも活躍が期待されている新人。
アール・ヌーヴォーの歌曲集
 R.シュトラウス:おとめの花 Op.22(全4曲)/6つの歌 Op.67 〜第1部「オフィーリアの歌」(全3曲)
 ツェムリンスキー:トスカーナ地方の民謡によるワルツの歌 Op.6(全6曲) / レスピーギ:森の神々(全5曲)
 ラヴェル:5つのギリシャ民謡(全5曲)/愛に死せる女王のためのバラード/夢/花のマント/トリパトス

  テオドーラ・ゲオルギュー(S) ヨナタン・アネル(P)
 録音:2012年12月、スイス。ルーマニア生まれのソプラノ、テオドーラ・ゲオルギューによる APARTE レーベルへの第2弾。アール・ヌーヴォー(あるいはユーゲントシュティール)は世紀末頃のヨーロッパ全土に広まっていた現象で、ゲオルギューはヨーロッパ各国のアール・ヌーヴォーを彷彿とさせるような歌曲を集めたかったと語る。その中でも核となるのは、ゲオルギューが敬愛してやまないR.シュトラウスの作品。R.シュトラウスの「おとめの花」は、ユーゲントシュティール(ドイツにおけるアール・ヌーヴォー)のスタイルを予感させる詩人、F.ダーンの詩による物。ほかの作品も、ゲオルギューの美しい言葉の粒立ちを堪能できる出来栄え。世界的室内楽ピアニスト、ヨナタン・アネルの美しいピアノも光る。さらに、ミュシャの絵画を思わせるジャケットのアートワークも印象的な1枚。
オフェリー・ガイヤール〜ブラームス(1833-1897):
 チェロ・ソナタ
  〔第2番 ヘ長調 Op.99 /第1番 ホ短調 Op.38 〕/
 クラリネット三重奏曲 イ短調 Op.114
オフェリー・ガイヤール(Vc;*)
ルイ・シュヴィッツゲーベル=
 ワン(P)
ファビオ・ディ・カソラ(Cl)
 録音:2012年8月17日-20日、アルク・アン・シェーヌ、サル・ドゥ・ムジーク、ラ・ショー・ド・フォン、スイス。使用楽器:フランチェスコ・ゴフリラー、1737年(*)。バロックとロマン派を自在に往来している女性チェリスト、ガイヤールのブラームス。ピアニストに迎えた俊英、シュヴィッツゲーベル=ワンの、ガイヤールの繊細にうつろう表情にぴたりと合わせたピアノは見事。そしてクラリネット三重奏曲ではベテランのファビオ・ディ・カソラを迎え、ほとばしる情熱と気高い音色、そして魅惑のアンサンブルを展開している。ブラームスのチェロ・ソナタ第2番は、円熟期の1886-88年に作曲された。ほとばしるような冒頭から一気に引き込まれる。繊細にして、熱さも秘めたガイヤールの音色は絶品。第3楽章でのピアノのざわめく波と、それにのってガイヤールが奏でる激しい旋律の絡みあいは圧巻。第1番、第1楽章冒頭のほの暗い旋律も、ガイヤールの高貴な音色による演奏は非常にセンシティヴ。ピアノもガイヤールの表情にぴったりと寄り添っている。終楽章はバッハのフーガの技法をモチーフにしていて、対位法も凝りに凝ったつくりとなっているが、バロックも得意とするガイヤールの面目躍如的楽章といえるだろう。トリオでは、クラリネットのファビオ・ディ・カソラのやわらかく非常に安定した音色も聴きどころ。第2楽章の入りの天上から降り注ぐような美しい旋律は絶品。
 ルイ・シュヴィッツゲーベル=ワン(P):1987年、中国系スイス人の家庭に生まれる。リーズ国際音楽コンクール第2位受賞、同時に最年少のファイナリストとしてその名を聴衆に印象付けた。プレスラー、ツァハリアス、ゲルネルらの薫陶を受け、ジュリアード音楽院にて、E.アックス、ロバート・マクドナルドらの指導を受けた。世界の名だたるオーケストラ、そしてデュトワ、ルイージ、ヤノフスキら指揮者とも共演多数。
 ファビオ・ディ・カソラ(Cl):1990年、23歳という若さでジュネーヴ国際音楽コンクールでクラリネット奏者として初めて第1位を獲得(それまではクラリネット部門は第1位該当なしが続いていた)。翌年ヴィンタートゥール市立o.の首席に就任。アバド、ロストロポーヴィチ、クレーメル、ホリガー等が主催する音楽祭オーケストラの首席も務めている。1998年にはスイス音楽賞を受賞。ソニーからリリース多数。
オン・ザ・ロード [Sur la route]
 バルトーク:ルーマニア民族舞曲 / チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ
 ハチャトゥリャン:剣の舞 / ルグラン:5時から7時のクレオ〜サン・トワ
 プーランク:ワルツの調べ〜愛の小道 / アルバン:ベッリーニのノルマに基づくファンタジー
 チャップリン:スマイル(モダン・タイムス) / ピアソラ:オブリビオン/コントラスト/リベルタンゴ
 アーレン:オーバー・ザ・レインボウ / ロータ:道

  ロマン・ルルー(Tp/コルネット/ビューグル/ピッコロTp)
  アンサンブル・コンヴェルジェンス(弦楽五重奏)
 録音:2012年12月3日-6日、パリ。エリック・オービエのもとで学んだ実力派で、ラ・フォル・ジュルネ音楽祭でも何度か来日のある若手奏者、ロマン・ルルーによるクラシックや映画の名曲集。弦楽五重奏アンサンブルを率いて、バルトークの力強さ、アンダンテ・カンタービレでの甘い音色、「オーバー・ザ・レインボウ」での切々とした歌心、そして「道」のなんとも渋みの効いた音色は絶品。
AP-051
廃盤
キアロスクーロ・カルテット〜ベートーヴェン&モーツァルト
 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番 ヘ短調 Op.95「セリオーソ」(*)
 モーツァルト:アダージョとフーガ ハ短調 KV.546 /弦楽四重奏曲第16番 変ホ長調 KV.428
  キアロスクーロSQ
  [アリーナ・イブラギモワ(Vn1) パブロ・エルナン・ベネディ(Vn2)
   エミリー・ヘルンルンド(Va) クレア・ティリオン(Vc)]
ドビュッシー&マーラー〜若き日のメロディ
 マーラー:「若き日の歌」より〔春の朝/思い出/ハンスとグレーテ/ドン・ファンのセレナード/ドン・ファンの幻想〕
 ドビュッシー:夢想/祈願/リラ/セレナード/スペインの歌/ばら/華やかな宴
 マーラー:私は緑の森を楽しく歩いた/夏に小鳥はかわり/別離と忌避
 ドビュッシー:星月夜/弓/月の光/ピエロ/後悔/アリエルのロマンス/出現
 マーラー:「子供の魔法の角笛」〜この世の生活

  ジュリー・フュシュ(S) アルフォンス・スマン(P)
 録音:2012年8月27日-30日、サン・ピエール教会、パリ。フランス期待の新星ソプラノ、ジュリー・フュシュによるマーラー&ドビュッシー。二人の大家がまだうら若き学生であった頃、1880-1892年頃に作曲した歌曲の数々が収録されている。『若き日の歌』を中心に、ドビュッシーもまだパリ音楽院の学生だった1880年代に作曲されたものを中心に収録。「月の光」や「ばら」といった代表作に加え、近年自筆譜が発見されたばかりという「スペインの歌」も収録。初期作品集ではあるが、聴き応えは十分。2009年に本格的なデビューを果たしたばかりのフュシュだが、若さあふれる瑞々しい声色と共に、全体的に重心を据えた安定感のある歌唱で聴かせてくれる。高音の煌びやかさはもちろんのこと、中低音のふくよかな伸びも魅力的。歌曲に合わせて鮮やかに声色を変える表現力も聴きどころ。伴奏を担当するアルフォンス・スマンはパリのコンセルヴァトワール卒の若手実力派。すでに数々の音楽祭に引っ張りだこで、2012年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンで松山冴花と共演し、注目を集めた。フュシュとはすでに多く共演しており、2013年もリサイタルを共にする予定。息の合ったアンサンブルで、フュシュの歌声を支えている。
悪い奴ら〜ヘンデル:悪役アリア集
 「タメルラーノ」〜尊大な心に平安を与えたい/「アリオダンテ」〜あなたに望んでいる/
 「テゼオ」〜殺戮を望み死を望み,落ち着いておくれ、ああ、美しい眼よ/
 「ガリアのアマディージ」〜酷い苦しみを,心に激情を感じ/
 「アリオダンテ」〜義務、正義、愛が,策略が良い結果をもたらせば/
 「ジューリオ・チェーザレ」〜この心の麗しき女神たちよ,お前の誇り高さを屈服させよう/
 「オットーネ」〜天まで波を高め,魅惑的な美しい唇

  シャヴィエ・サバータ(CT) リッカルド・ミナージ指揮イル・ポモ・ドーロ
 ヘンデルのアリア集は多数あり、その中にはカウンターテナーが歌ったものもたくさんある。しかし今回のCDはちょっとヒネリが。歌われているのはすべてヘンデルのオペラの敵役、仇役、悪役のアリア。悪役というのは感情が激しくないと務まらないので、ヘンデルの悪役アリアは魅力的なものばかり。歌うは、シャヴィエ・サバータ、1976年、スペイン、カタルーニャ州バルセロナ生まれのカウンターテナー。ここ数年の活躍は目覚しく、スペイン国内はもちろん、ことにフランスや独墺のバロック声楽作品上演には頻繁に出演している。2011、2012年には、ウィリアム・クリスティの指揮で上演されたカヴァッリの「ディドーネ」のイアルバを歌っている。ジャケット写真はかなり強面に撮られているけれど、実際にはガタイ良さに反してどこか繊細な印象の青年。そして実にまろやかな美声の持ち主で、カウンターテナーならではの魅力を堪能出来る。リッカルド・ミナージは、1978年、ローマ生まれのヴァイオリニスト。数々の古楽オーケストラのヴァイオリニストを務めた名手で、また指揮活動も積極的に行っている。イル・ポモ・ドーロは2012年創立の本当に新しい古楽オーケストラ。ポモ・ドーロとは金のリンゴという意味で、オペラ史上に名高いチェスティの同名オペラに由来している。彼らがミナージのヴァイオリンと指揮で録音したヴィヴァルディの協奏曲集(naïve OP-30533)は極めて高い評価を得た。歌にもオーケストラにも、そして企画にも注目の1枚。
 #『Xavier Sabata の名前の読みについてご本人に問い合わせましたところ、カタルーニャ語では(イタリア語式にデフォルメした綴りで書くと)Sciavieee Sabaaaaata のように発音される、とのご回答をいただきました。たしかにカタルーニャ語では語頭の X はシゃの発音で、また Sabata は、イタリア語では Sa にアクセントが入るのに対し、カタルーニャ語では ba に入るのが普通です。これを踏まえて『シャヴィエ・サバータ』とカナ表記いたします。ちなみにフランスでの仕事が多いため、フランス人からはクサヴィエと呼ばれることも多いとのことです。』
J.S.バッハ:ピッコロ・チェロ伴奏によるアリア集
 カンタータ「かくのごとく神は世を愛したまえり」BWV68 /シュープラー・コラール集 BWV645 No.1 /
 カンタータ〔イエスよ、今ぞたたえられん BWV41 /わが心は血の海に漂う BWV199 /われは善き羊飼いなり BWV85 /
    われらと共に留まりたまえ BWV6 /われ希望をもちて歩み求めん BWV49 /彼は羊らの名を呼びたもう BWV175 〕/
 シュープラー・コラール集 BWV645 No.6 /われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ BWV639 /
 カンタータ〔わが心よ、汝備えをなせ BWV115 /彼らは汝らを追放せん BWV183 /見よ、われらイェルサレムに」BWV159/
       いざ、待ち望みたる時を告げよ」BWV53(ゲオルク・メルヒオール・ホフマン)〕

  サンドリーヌ・ピオー(S) クリストフ・デュモー(A)
  エミリアーノ・ゴンザレス=トロ(T)
  オフェリー・ガイヤール(ピッコロVc)指揮プルチネッラ
 録音:2012年7月1日-4日、サン・ジェルマン・デ・プレ、パリ。バッハのカンタータは多様性に満ちた作品で、特に楽器の使い方は巧みであり、音楽の懐の深さを味わうことが出来る。ピッコロ・チェロは18世紀初頭に一時的に登場した楽器で、通常のチェロより小さく、1本高音域の弦を張った5弦チェロ。速い動きや、軽やかさ、繊細さなどを出すことが出来る。バッハは自身のカンタータの中で9曲に表現力などを考慮した上で、ピッコロ・チェロの使用についてはっきりと言及している。ここではフランス・チェロ界の華オフェリー・ガイヤール率いるアンサンブル、プルチネッラとサンドリーヌ・ピオーをはじめとする豪華歌手陣による演奏で聴くことが出来る。ガイヤールはピッコロ・チェロを弾きこなし、優雅に繊細に奏でている。またピオーの透明感がある伸びやかな歌声、クリストフ・デュモーの硬質な切れの良い声、声色を自在に操るエミリアーノ・ゴンザレス=トロの骨太な歌唱など聴きどころ満載の1枚。
シューマン:ミサ・サクラOp.147 /4つの二重合唱曲 Op.141
 ジョフロワ・ジュルダン指揮レ・クリ・ドゥ・パリ(o.&cho.)
 マリアンヌ・クレバッサ(Ms) バティスト・ロペス(第1Vn)
 録音:2011月9月27日-28日、10月2日-3日、ロワイヨモン修道院。フランスの名門合唱団レ・クリ・ドゥ・パリによるシューマンの合唱曲。秘曲「ミサ・サクラ」は、合唱、独唱、管弦楽、オルガンの比較的大規模な作品。シューマンらしい抒情性に満ちた美しい曲を、心静まる穏やかな合唱の響きとマリアンヌ・クレバッサのソロが豊かな表現力で聴かせる。また無伴奏混声合唱のための「4つの二重合唱曲」はシューマンならではの色彩的な和声感覚が非常に美しい作品。
AP-043
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(2CD)
ジャック・デュフリ(1715-1789):クラヴサン曲集
 第1巻より〔アルマンド ハ短調/クーラント/ロンド ハ長調/ラ・ミレッティーナ/ロンド ニ短調/
       カザマジョール/アルマンド ニ短調/クーラント ニ短調/ヴァンロ/ロンド/トリボレ〕/
 第2巻より〔ダマンジー/フェリクス/ドゥ・ヴァートル/デリクール/ランツァ/鳩〕/
 第3巻より〔フォルクレ/シャコンヌ/メデ/三美神/ドゥ・ギヨン/ドゥ・シャムレイ〕/
 第4巻より〔ポチュイン(ロンド)/ヴィクトワール/デュ・ビュック/ドゥ・デュルモン〕

  クリストフ・ルセ(Cemb)
 録音:2011年10月18日、ラ・ギャラリー・ドレ、フランス。現代最高の鍵盤楽器奏者の一人であるクリストフ・ルセ。今回は18世紀フランスを生きた音楽家ジャック・デュフリの鍵盤楽曲集。デュフリはフランスのルーアンに生まれ、フランソワ・ダジャンクールに師事し、オルガニストとして活動するも、その後パリに移り住みクラヴサン奏者兼教師として高い名声を博した。デュフリの作品は、デュフリが最も傾倒した作曲家ラモーの音楽を規範としたとされている。ギリシャ神話の3人の女神たちが互いの美を競い合う話が元の「三美神」は、儚い響きが幻想的な世界を作り出している。また華やかな雰囲気を感じる「シャコンヌ」、名人芸が光る「フォルクレ」など、時代の流れを敏感に嗅ぎ取とり作品に反映させたロココ文化象徴ともいえるデュフリの作品を鮮やかに演奏し、ルセの真骨頂である18世紀フランスを見事に再現している。
AP-042
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(2CD)
アントワーヌ・ドヴェルニュ(1713-1797):音楽悲劇「瀕死のヘラクレス」(1761)
 アンドルー・フォスター=ウィリアムズ(B;ヘラクレス)
 ヴェロニク・ジャンス(S;デイアネイラ) エミリアノ・ゴンザレス=トロ(T;ヒルス)
 エドウィン・クロスリー=マーサー(Br;ピロクテテス)
 ジャエル・アッツァレッティ(ディルケ/テッサリアの娘/捕虜) ジェニファー・ボルギ(Ms;ユノ)
 アラン・ビュエ(嫉妬/ジュピター) ロマン・シャンピオン(ジュピターの大司祭/テッサリアの男)
 クリストフ・ルセ指揮レ・タラン・リリク、ヴェルサイユ・バロック音楽センターcho.
 録音:2011年11月19日、ヴェルサイユ宮殿オペラ劇場、フランス、ライヴ。見事な復活蘇演だとフランス・バロック・オペラの本場を大いに沸かせたライヴがリリース。2010年に行ったリュリの音楽悲劇『ベレロフォン』の復活演奏(AP-015)の話題も覚めやらぬルセ&レ・タラン・リリクだが、今回も歌手陣・演奏陣共に万全の布陣で挑んでいる。ドヴェルニュは仏ムーラン生まれの音楽家。宮廷音楽家として活躍していた彼にオペラ座の指揮者の話が舞い込んできたのは1757年のこと。当時のオペラ座はリュリに次ぐ新世代の活動促進に積極的で、数多の音楽家の中からドヴェルニュに白羽の矢が立ったのだった。今回収録された『瀕死のヘラクレス』は、彼がオペラ座公演のために手掛けたトラジェディ・リリック(抒情悲劇)のひとつ。若手作家ジャン=フランソワ・マルモンテルが台本を担当し、記念すべき初演はシーズンの最初を飾る1761年4月3日に華々しく行われた。リュリが作り上げたトラジェディ・リリックを踏襲し、このオペラの随所にも数多くのバレエシーンが挿入されている。『瀕死のヘラクレス』はギリシャ神話、ヘラクレスの最期を題材とした舞台。ヘラクレスは妻デイアネイラ(デジャニール)を差し置いて、捕虜の若き王女イオレに夢中になってしまった。しかし、息子ヒルスもまたイオレに恋していることを知ったヘラクレスは、友人ピロクテテスの忠告もあって、彼女を諦め、息子へ譲ることを決意する。しかし、夫が若い王女を囲おうとしたことを知ったデイアネイラは嫉妬の怒りに狂い、付ければ媚薬になると聞かされていたネッソスの血に浸した服を夫に送り、彼の愛を取り戻そうとする。しかし、ネッソスの言は大嘘で、その血は触った人を焼き殺すほどの猛毒なのだった。そのことを知ったデイアネイラは己の失態を悔やみ、自ら命を絶つ。死ぬ間際、ヘラクレスはデイアネイラを赦し、息子や友人に別れを告げ、天界へと上っていくところで幕は閉じる。初演の評価は真っ二つになったと伝えられる本作だが、ルセ&レ・タラン・リリクによる演奏は文句なしの素晴らしさ。デイアネイラを歌うのは、サル・プレイエルやヴェルサイユ宮オペラ劇場に引っ張りだこの名手、ヴェロニク・ジャンス。嫉妬に狂う第4幕はジャンスの独壇場といっても過言でない。気高くも狂気に満ちた迫真の歌声にぐっと惹き込まれる。ヘラクレスには古楽界屈指のバス、フォスター=ウィリアムズが登場。英雄の貫禄にふさわしい太く重厚な歌声で、テノールのゴンザレス=トロと絶妙の掛け合いを魅せてくれる。瑞々しい歌声が魅力のゴンザレス=トロは今後も注目必至の若手実力派。ルセ&レ・タラン・リリクの器楽演奏は今回も気品高く、洗練されてなお圧倒的な迫力。プログラムの希少性もさることながら、その内容も絶賛された注目の名演。
ハプスブルク宮のコンサート〜室内楽曲集
 ビーバー:ヴァイオリン・ソナタ〔第5番/第3番〕/ロザリオのソナタ第10番「磔刑」
 J.H.シュメルツァー:独奏ヴァイオリンのためのソナタ・テルティア
 フローベルガー:皇帝フェルディナント3世陛下の悲しい詩に寄せる哀悼歌
 J.J.ヴァルター:組曲第8番 ホ長調 / N.マッテイス:ギターのための3つの小品
  アンサンブル・ストラヴァガンツァ
 録音:2011年4月、2012年4月、オート・ド・サン・ミッシェル教会。新進気鋭の古楽団体が、APARTEレーベルよりリリースするデビュー・アルバム。タイトル通り、精華な音楽活動が行われていた17世紀ハプスブルク宮廷で愛された室内楽曲に焦点をあてたプログラム。一世を風靡するイタリア人音楽家に負けじと活躍した、現オーストリア・ドイツ圏出身の音楽家たちの作品を中心に収録されているのも本アルバムの特徴。深く内省的な響きが美しいビーバーの「ロザリオのソナタ」や、初期トンボー作品の傑作であるフローベルガーの哀悼歌、「バロック期のパガニーニ」とも称されるJ.J.ヴァルターの組曲をはじめ、宮廷音楽の典雅な響きを十分に含む珠玉の作品が収録されている。ドミティーユ・ジロンの軽妙洒脱なヴァイオリン・ソロも聴き所。アンサンブル・ストラヴァガンツァは、ヨーロッパを中心に活躍する若手演奏家たちによって結成された古楽アンサンブル。G.レオンハルトやJ.サバールといった巨匠たちから助言を受け、近年メキメキと実力を付けている若手団体。2011年にはイタリアのボンポルティ国際古楽コンクール(アンサンブル部門)、アムステルダム国際古楽アンサンブルコンクールで相次いで入賞を果たしたほか、フランスの文芸科学アカデミーからも銅メダルを授与されるなど、世界各国で早くも高い評価を受けているアンサンブル・ストラヴァガンツァ。今後の活躍にも期待必至。
シューマン(1810-1856):蝶々 Op.2 /子供の情景 Op.15
ショパン(1810-1849):マズルカ ホ短調 Op.41 No.2 /夜想曲 変ホ長調 Op.55 No.2
 カーチャ・ブロンスカ(P)
 カーチャ・ブロンスカは、ポーランドに生まれ、現在パリで活躍する女性ピアニスト。大規模なホールでのコンサートよりも親密な雰囲気のホールを好むこともあり、知る人ぞ知る的な存在ではあるが、その演奏を一度聴けば、きらびやかではないけれどもいぶし銀のような輝きを放ち、色彩感覚に優れた美しい音色、そして豊かな詩情に誰もが虜になってしまう。メニューインも、彼女の演奏を聴いて「私は打ちのめされた。彼女はショパン作品を、緻密で見事なルバートをもって、魅惑の時の旅へといざなうような絶妙なテンポで演奏する」と絶賛している。1987年にフランス財団のグランプリに輝いた。マルグリット・ロンに師事したクリスティナ・ヤストルゼフスカに師事、その後もイヴォンヌ・ルフェビュールや、ペルルミュテルにも師事した。今回取り上げたのは、奇しくも同じ年に生まれ、同じ時代を生きたシューマンとショパンのピアノ作品集。非常にゆったりとした「トロイメライ」で聴かせる自然なフレーズの緩急づけは感動的。また、ショパンのマズルカでは彼女のポーランドの血が実に自然にショパンの物悲しい世界を描く。ノクターンで聴かせる詩情はちょっと他では得られない物。絶妙なテンポ設定と、詩情豊かな音色によるショパンとシューマンを、心行くまでたっぷりと堪能できる1枚。y
AP-036
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(2CD)
ブランディーヌ・ヴェルレ新録音〜F.クープラン(1668-1733):クラヴサン曲集
 「クラヴサン曲集第2巻」より〔第7組曲(5曲)/第8組曲(9曲)〕/
 「クラヴサン曲集第4巻」より〔第25組曲(5曲)/第26組曲(5曲)/第27組曲(4曲)〕
  ブランディーヌ・ヴェルレ(Cemb)
 録音:2011年11月12日-16日、サン・レミ・ドゥ・フラン・ヴァレ教会(ベルギー)。使用楽器:アンリ・エムシュ、1751年製(フレデリク・アース・コレクション)。ジャケットのヴェルレの肖像:H.クレイグ・ハンナ。フランスが生んだ名クラヴサン奏者ヴェルレ(1942-)が、1976-1980年にかけて全曲録音されたアストレの名盤以来、実に約30年以上ぶりにF.クープランを再録音。現在もますます磨かれた知性と信念に満ちた演奏を展開している彼女ならではの絶妙なテンポ設定も、節度ある美しい装飾、絶妙なアーティキュレーションや間の取り方など、すべてが最上級に活きるためのものであることにすぐ気づかされる。フランス・バロック演奏のひとつの真の姿がここにある、といっても過言ではないだろう。録音は、アンブロワズィ・レーベルなどでも長年エンジニアを務めている名人ニコラス・バルトロメーが担当。楽器がフルに鳴り響いている様子、ヴェルレのニュアンスを楽器がもらさずキャッチしている様子がわかる優秀録音。ブックレットにはヴェルレ女史がF.クープランに宛てて書いたメッセージが収められており、こちらも興味津々。パリに生まれたヴェルレは、パリ国立高等音楽院にチェンバロ科を設立したマルセル・ド・ラクールに師事、1963年にミュンヘン国際コンクールのチェンバロ部門で満場一致の第1位と特別賞を受賞し、その後ユゲット・ドレフュスのもとでさらに研鑽を積むほか、ランドフスカの弟子ルッジェーロ・ジェルリン(1899-1983)や、D.スカルラッティ作品のK番号で知られるラルフ・カークパトリック(1911-1984)らの薫陶も受けていた。1970年代からフィリップスに、その後 VALOIS やアストレへレコーディングを行った。
忘れられた歌声〜スペインの伝承音楽集(全22曲)
 マルティン・コダス:カンティガス・デ・アミーゴ(全曲)
 アルフォンソ10世編纂:「聖母マリアのカンティガ集」より
 作曲者不詳:エストレマドゥラの伝承歌/アビラの伝承歌/他
ヴォクス・スアヴィス
[アナ・アルナズ(歌/Perc)
 ドミニク・ヴェラール(歌/ウード)
 バティスト・ロマン
 (ヴィエル/バグパイプ)]
 録音:2011年5月10日-13日、サン=フロラン教会、ティル=シャテル、フランス。スペイン伝統音楽の再発見と保存に尽力する演奏団体、ヴォクス・スアヴィスによる、スペインの地方やポルトガルに伝わる中世の世俗歌曲&器楽曲の数々。ウード、ヴィエール、バグパイプといったピリオド楽器の響きと、アルナズとヴェラールの艶やかな歌声のハーモニーも聴き所。
シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 Op.129 (*)
リスト(#):
 エレジー〔第1番/第2番〕/忘れられたロマンス/
 ノンネンヴェルトの僧房/悲しみのゴンドラ
オフェリー・ガイヤール(Vc;+)
ティベリウ・ソアレ指揮(*)
ルーマニア国立放送o.(*)
デルフィーヌ・バルダン(P;#)
 使用楽器:Francesco Goffriller (1737)〔CIC より貸与〕(+)。たまらなくセンシティヴな音色と、聴き手の感情にピタリと寄り添う音楽性で、作品の魅力を自然なタッチであたたかく引き出すガイヤール。名曲シューマンの登場。バッハの無伴奏チェロ組曲でも、どこまでも自然で、まるで目の前で自分だけのために弾いてくれているかのような錯覚をおぼえる親密さは、協奏曲や室内楽でも全く損なわれていない。むしろ、オーケストラやピアノと一緒にこちらを包み込むように問いかけてくるような不思議な慈愛に満ちている。シューマン協奏曲で、フォルテのところでも弓圧はどこまでも自然ながら、その音色の深みに思わず惹きこまれてしまう不思議な魅力に満ちたガイヤールの音楽はここでも遺憾なく発揮されている。第2楽章で聴かせるオーケストラとのあたたかな対話とメロディには、ただただ引き込まれてしまう。確かなテクニックが要求される第3楽章のフィナーレでも、聴き手の耳に吸い付いてくるような質感の音色で聴く華やかなパッセージは、彼女でしか奏でることのできない色に満ちている。ガイヤールの奏でる陰影と叙情性に富んだシューマンを、オペラものも多く手がける指揮者ソアレ率いるルーマニア国立放送o.が好サポートしている。旋律を奏でるオケのメンバー一人一人もガイヤールに寄り添うような雰囲気で、見事な一体感。続くリストの作品も、フォーレ作品などで好評価を博したデルフィーヌ・バルダンという好パートナーを得、ガイヤールの歌に満ちた魅惑の演奏が展開されている。特にエレジーでの深い慟哭のような低音には涙すら覚えるほどの美しさ。ガイヤールの魅惑の音色に包み込まれる至福の1枚。
AP-030
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(2CD)
テオドール・デュボワ(1837-1924)/オリヴィエ・シュミット編曲:
 ドラマ・オラトリオ「失楽園」(ピアノと複五重奏編成による器楽と声のための)
  〔第1部「反乱」/第2部「地獄」/第3部「楽園―誘惑」/第4部「審判」〕
 シャンタル・サンタン(S;イヴ) マティアス・ヴィダール(T;アダム) アラン・ビュエ(B;サタン)
 ジェニファー・ボルギ(Ms;大天使ガブリエル) シリル・デュボワ(T;ウリエル/息子)
 エリアス・ベニート(Br;悪魔モロク) ソリン・ドゥミトラスク(B−Br;悪魔ベリアル)
 ジェフリー・ジョルダン指揮レ・ソリスト・デ・シエクル、レ・クリ・ドゥ・パリ オレリアン・リシャール(P)
 録音:2011年9月5日-7日、サン・テスプリ教会、パリ。テオドール・デュボワ作のオラトリオ「失楽園」を、ピアノと複五重奏(金管五重奏+弦楽五重奏)編成で再現した版。器楽パートを担当するのは、ロト率いるピリオド楽器名人集団オーケストラ、レ・シエクルのメンバーたち。歌唱陣も2011年にモンプリエを始めとするフランス各地の音楽フェスティヴァルで演奏された際、ここ100年間で初めてのデュボワの世界的再現演奏として高い注目を集めた話題の演奏。今となっては殆どの作品が演奏されなくなり、専ら音楽理論家、教育者として今に名を残しているデュボワだが、生前は宗教曲を始め多彩なジャンルに多くの作品を残した作曲家でもある。この「失楽園」は彼が作曲した大作オラトリオの一つ。1878年にパリ市が企画したオラトリオのコンクールに出品(完成はこれより前)され、賞を取った作品。エドゥアール・ブロー(マスネの「ウェルテル」の台本作者)のテクストに付曲されている。大賞を受賞したものの、コンクール後は部分的に演奏されたことはあったが、作品全体が演奏されることは無かった。歴史に埋もれた貴重な作品の復活。もともとデュボワは、1861年にローマ大賞を受賞したこともある作曲家だったが、劇場などで作品をとりあげられる機会にはなかなか恵まれなかった。更に、この大賞を受賞したあとも、批評家たちは彼を完成された作曲家としてではなく、まだ駆け出し、あるいは、極めて優れた技術をもった学生(テクニシャン)としてかみなされなかった。このオラトリオの楽譜は出版の準備まではされたが、その後の歴史の混乱の中で、現在に残されているのは歌唱パートとピアノ・パートのリダクション版のみ。今回の復元編曲を手掛けたオリヴィエ・シュミットは、19世紀のスタイルを重視しながら、作品を見事によみがえらせた。フランスの次世代を担う若手演奏家たちによる瑞々しい演奏にも注目。悪魔(サタン)のドラマティックな場面や、アダムとイヴの二重唱が特に印象的に響く。ドラマティックな曲調とソリストたちによる重唱の連続は、オラトリオというよりまるで一つのオペラを聴いているようだ。イヴが禁断の木の実を食べてしまうシーンは聴き物。歴史の影に失われた「失楽園」が、今現代に蘇る。
Trombone All Styles
 ダリオ・カステッロ(1590-1630):ソナタ第1番 / コレア・デ・アラウホ(1584-1654):世界中みな
 ジョヴァンニ・バッティスタ・フォンターナ(1571-1630):ソナタ第1番
 ラヴェル/ミリシェ編曲:亡き王女のためのパヴァーヌ / ヘンデル:協奏曲 へ長調
 アルビノーニ(1671-1751):協奏曲 Op.11 No.9 / ウェーバー:ロマンス
 フリジェシュ・ヒダシュ(1928-2007):ムーヴメント / マシュー・ミリシェ(1979-):速く、そして怒って

  ファブリス・ミリシェ(Tb/サックバット) 加藤麻衣子(Org/Cemb) ナタナエル・グィン(P)
 録音:2011年9月、サン=ピエール教会。1985年音楽一家に生まれたミリシェは、トロンボーンをパリ・トロンボーン四重奏団のアラン・マンフラン、サックバットをレ・サックブーティエのダニエル・ラサルに師事、2007年、ミュンヘン国際音楽コンクールで初めてトロンボーン部門が開催された時、第1位を獲得した。他に幼い頃から始めたピアノにも才能を発揮、さらにチェロも本格的に学んでおり、フィリップ・ミュラーやトリオ・ヴァンダラーのチェリスト、ラファエル・ピドゥーらにも師事している。サックバットではサバールと共演、トロンボーン奏者としてシュトゥットガルト放送so.などと共演、バロックから現代ものまで、どんなものもその甘さとのびやかさをあわせもった音色で吹きこなしてしまう実力派で、今後のさらなる活躍が期待される。このプログラムでも、ヘンデルやアルビノーニで聴かせるカッチリかつ華やかなパッセージ、ラヴェルで聴かせる抑えの効いた表現、さらに彼の兄の作品である最後の曲で魅せる超絶技巧は圧巻。
ヘンリー・パーセル(1659-1695):ハルモニア・サクラ より
 憐れみ深い天使よ、私に言っておくれ/暗く侘しい絶望の地下牢で/
 かの方に向かって歌おう、その知恵でこの耳を形作った方に/エア ト短調/
 偉大な、そして正義の神よ/われ主の憐れみを永遠に歌わん/私の歌が常に/
 グラウンド ニ短調/主よ、人とは何か/夜よ去れ(ヨブの呪い)/シャコンヌ ト短調/
 夜が来た/病み、疲れた目で/どうやって私は迷ったのか/組曲 ト短調/
 私の開いた目は清められ/偉大な神よ、どれほど長く/グラウンド ハ短調/眠れ、アダムよ/
 眠れぬ羊飼いであるあなたよ/大地が震え/今や太陽の光も薄れ
  ローズマリー・ジョシュア(S) クリストフ・ルセ指揮レ・タラン・リリク
 録音:2010年11月28日-12月1日、パリ。17世紀後半の英国で短い生涯に優れた作品を多数書き残したパーセル。その多くは筆写譜として今日伝えられているが、いくつかはパーセルの生前に出版された。その代表的なものが、英国の音楽出版業者、ヘンリー・プレイフォードによって出版された「ハルモニア・サクラ(聖なる調和)」。著名な作曲家の様々な種類の聖歌、讃歌を集めた曲集で、1688年に出版、好評を博したため1693年に続編も出版された。
 このCD には、「ハルモニア・サクラ」から、パーセルが高声独唱用に作曲したものが選ばれている。ローズマリー・ジョシュアは、ウェールズのカーディフ出身のソプラノ。今日の英国を代表するバロック音楽のソプラノで、ことにヘンデルのヒロインとして絶大な人気を誇っている。清潔感のある美声と、品の良さを保ちつつ情熱の篭った表現にも優れた歌は、パーセルには打ってつけ。しかもバックはクリストフ・ルセ率いるレ・タラン・リリク!これは豪華。ところどころに挟まれているルセのチェンバロ独奏がまた絶品で、こちらのマニアも要注目。
フォーレ:主題と変奏 嬰ハ短調/
     舟歌(全曲)〔第1番−第13番〕
ジュリオ・ビダウ(P)
 録音:2011年10月3日-5日、サン・ボネ劇場、ブールジュ(フランス)。1985年イタリア生まれで、2010年にカサグランデ国際コンクールで第3位に輝いた他、数々のコンクールに入賞経験を持つ実力派ピアニスト、ジュリオ・ビダウのデビュー盤。20世紀半ば以降の作品を得意とし、フランスを中心にヨーロッパ各地で活動している。NHKの「スーパーピアノレッスン」で生徒役として来日出演したこともあり、日本でも今後ますます注目されるアーティストの1人と言えるだろう。本CDには、ビダウがかねてより得意のレパートリーとしてきたフォーレの「主題と変奏」と共に、1880年頃より晩年にかけて作曲された「舟歌」を全て収録。リブレット内に掲載(仏・英・伊語)されているインタビューでは、「舟歌」の収録を通じて「フォーレの様式の変化、他の音楽家たちからの影響、次世代の音楽家への影響など、多くを発見することが出来た」と語り、本人が確かな手応えを感じるのも納得の1枚。
AP-025
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(2CD)
Romain Leleu
 フンメル:トランペット協奏曲 変ホ長調 / ネルダ(1706-1780)トランペット協奏曲 変ホ長調
 ハイドン:トランペット協奏曲 変ホ長調(カデンツァ3種: R.ルルー/ K.ペンデレツキ版/K.シュトックハウゼン版)
 グルック:歌劇「オルフェーオとエウリディーチェ」〜メロディ(精霊の踊り

  ロマン・ルルー(Tp) エマニュエル・ルデュク=バローム指揮バルチック室内o.
 録音:2010年11月5日-7日、サンクトペテルブルク。ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2012での再来日を前に、日本でも更なる注目を集めているトランペット界の新星ロマン・ルルーによるトランペット協奏曲尽くしのアルバム。古典派時代に残された数少ないトランペット協奏曲の中でも代表的なハイドン、フンメル、ネルダの作品が一挙に収録されている。ルルーが奏でるトランペットの響きは相変わらず気品あふれる美しさ。安定感抜群の演奏から繰り出される超絶技巧の数々には圧倒される。特に注目されるのは、ハイドンの協奏曲のカデンツァ!世界初録音となるペンデレツキによるカデンツァのほか、シュトックハウゼンが息子のために書いたカデンツァ、そしてルルー自身が作曲したカデンツァの3種類の演奏が収録されている。シュトックハウゼンのものは、自身による指揮、そして息子マルクス・シュトックハウゼンのソロによる演奏が録音で残っているが、ルルーの演奏も見事。ペンデレツキのカデンツァは、ペンデレツキが1999年にサン・ノゼso.を指揮した時、首席トランペット奏者のジェイムズ・ドーリーのために書いたが、その後ノルウェーの名手アントンセンのリクエストにより2002年に改訂された。トランペットが高音域で活躍する名カデンツァ。第3楽章のカデンツァでは、人をくったような表現に思わず吹き出しそうになる部分も。ルルーの超絶技巧が冴え渡る。第3楽章の演奏時間は、ルルー自身によるカデンツァのものは4分半なのに対し、シュトックハウゼンとペンデレツキのは6分半前後。華麗なカデンツァでの見せ場が続く。ロマン・ルルーは今最も注目される若手トランペット奏者の一人。ソリストとして著名なオーケストラ、フェスティヴァルに出演しているほか、フランスを中心に指揮者としても活動している。 バルチック室内o.は、サンクトペテルブルクpo.の精鋭奏者たちによって構成されるアンサンブル。ヤンソンスのもとで研鑽を積んだルデュク=バロームが2000年から音楽監督を務めている。
フランセ:クラリネット協奏曲
プロコフィエフ/ケント・ケナン編曲:
 クラリネット協奏曲(原曲:フルートソナタ)
フランセ:主題と変奏
シャーリー・ブリル(Cl)
アドリアン・モラール指揮
ルーマニア国立放送o.
 1982年イスラエル生まれの女流クラリネット奏者シャーリー・ブリル。リューベック音楽院でザビーネ・マイヤーに、ボストンのニューイングランド音楽院でリチャード・ストルツマンに師事し、2007年にはジュネーヴ国際コンクール最高位を受賞した実力派。ドイツ・クラリネットならではの魅力を存分に聴かせてくれる彼女は、若手最注目株。音色の美しさもさることながら、人間業とは思えぬテクニックに唖然とさせられる。難曲として名高いフランセの協奏曲を、ここまで鮮やかに弾ききれるかという超人技。さらなる注目はプロコフィエフのクラリネット協奏曲。オリジナル作品ではなく、名作フルートソナタ(後にヴァイオリン・ソナタ第2番にも改作)を、アメリカの作曲家ケント・ケナン(1913-2003)がクラリネットとオーケストラ用に編曲したが、まるでオリジナルのように自然で惹きつけられる。原曲のフルートソナタ自体が難曲中の難曲だが、移調楽器のクラリネットだとさらに難度が増すため、身の毛のよだつ技術が要求されるが、ブリルはたっぷり旋律を歌い、曲の牧歌的な雰囲気も保っている。加えて、ケナンのオーケストレーションがプロコフィエフそのもので色彩的。プロコフィエフ・ファンをしびれさせる響きに満ちている。21世紀のクラリネット界を背負ってたつ逸材シャーリー・ブリル、要注目。
AP-023
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(CD+
DVD[PAL])
2CD価格
ベートーヴェン(1770-1827):交響曲第5番 Op.67 /プロメテウスの創造物 Op.43
 ・ボーナス映像DVD (PAL):全曲の演奏風景
 ダヴィド・グリマル(Vn)指揮レ・ディソナンス(アンサンブル)
 録音:2010年12月9日、ディジョン歌劇場オーディトリウム、ライヴ。革新的なスピリッツに溢れるベートーヴェンの交響曲第5番に、レ・ディソナンス率いるグリマルが挑戦。アンサンブルの中で他のパートとコミュニケーションを深めながら、究極の音楽を目指す。分散した社会を一つにまとめ、経済、環境など様々な問題に直面する市民を鼓舞し、その絆を深めていくことこそが、音楽の使命であると考えるレ・ディソナンス。彼らの音楽活動は、路上生活者や社会的に疎外された人々の社会復帰を支援する非営利団体「Les Margéniaux」に捧げられている。また、作曲家、ソリスト、オーケストラおよび室内o.の団員など、異なる分野で活躍する音楽家たちの相互交流、若手のホープの支援も行い、レパートリーはいわゆるメジャーであるところのバッハやベートーヴェンだけでなく、ブリース・ポーセットなどの現代作曲家による作品まで及んでいる。ナイーヴから出ているリヒャルト・シュトラウスの「メタモルフォーゼン23の独奏弦楽器のための習作」、シェーンベルクの「浄められた夜」に捧ぐCDは熱狂を持って迎えられ、多くの音楽評論家から絶大なる評価を受けた。また、ベートーヴェンの交響曲第7番とヴァイオリン協奏曲を収録したCDが2007年10月にリリースされた際には、テレラマ紙が最高の評価を与えたほか、2010年のル・モンド賞のベスト・レコーディングス部門に選ばれた。社会に働きかけていこうとする彼らの真摯な姿勢に打たれ、フランス政府もバックアップしている。
 ダヴィド・グリマルはフランス第一線で活躍するヴァイオリニスト。パリ国立音楽院を卒業後、アイザック・スターンやシュロモ・ミンツに学び、パリ政治学院でも勉学に励みた。高潔な演奏姿勢、ピュアな音楽的感性を称えられ、世界有数のオーケストラと共演を重ねてきた。また、ダルバヴィー、ティエリー・エスケシュ、オスカー・ビアンキ、フィリップ・エルサン、アレクサンドル・ガスパロフなど、フランス国内外の著名な作曲家が彼のために作品を書いており、作品初演も数多く行っている。さらに、近年リリースされたバッハのヴァイオリン・ソナタ全曲集(AM-181)は非常に高い評価を受け、ベストランキングに入り、注目された。ソリストとしてのキャリアのみに甘んじることなく、様々な音楽家とのコラボレーションによる活動を発展させていくため、レ・ディソナンスを結成した。パリ中心部でコンサートを行い、収益は全て路上生活者などの支援に充てている。

 #DVDはPAL方式のため、再生保証はございません。
AP-022
廃盤
モーツァルト:弦楽四重奏曲第19番 ハ長調 K.465「不協和音」
シューベルト:弦楽四重奏曲第13番 イ短調 D.804 Op.29「ロザムンデ」
 キアロスクーロSQ[アリーナ・イブラギモワ(1Vn) パブロ・エルナン・ベネディ(2Vn)
          エミリー・ヘルンルンド(Va) クレア・ティリオン(Vc)]
アンナ・デ・アミチスのためのアリア集
 ヨンメッリ:「棄てられたアルミーダ」〜哀れなアルミーダ
 モーツァルト:「ルーチョ・シッラ」より
  〔ああ、いとしい人の恐ろしい危険を思うと/私は行く、急いで/不吉な死の思いの中で/暗い岸から]
 グルック:「オルフェオとエウリディーチェ」〜何と過酷な瞬間
 ジョヴァンニ・バッティスタ・ボルギ(1738 -1796):「クレリアの勝利」〜災いに多大な力を
 ミスリヴェチェク:「ロモロとエルシーリャ」より〔あなたは私を驚かせたいのか/あなたが勝利すれば〕
 J.C.バッハ:「ザナイダ」〜棄てられたキジバト
 パスクァーレ・カファーロ(1715 -1787):「アンティゴノ」〜もし稲光が/他

  テオドーラ・ゲオルギュー(S) クリストフ・ルセ指揮レ・タラン・リリク
 ルーマニア生まれ、注目の新星テオドーラ・ゲオルギューによる初めてのアリア集。様々なコンクールを受賞した後、2003年にウィーン国立歌劇場にデビュー、2007年から2010年まで同歌劇場のメンバーとして多数の公演に出演し人気を高めた。レパートリーは比較的広く、中でもモーツァルトのソプラノとして評価されている。上り坂にある若い歌手ならではの魅力がたっぷり。
 アルバム題名にあるアンナ・デ・アミチス(1733頃-1816)は、18世紀後半にヨーロッパ各都市で広く活躍したプリマドンナ。1772年、ミラノでのモーツァルト「ルーチョ・シッラ」初演でジューニャを歌った。ここにはその「ルーチョ・シッラ」を始め、彼女の得意としたオペラのアリアが集められている。ボルギやカファーロの作品は特に珍しい。バックは、なんとクリストフ・ルセが指揮するレ・タラン・リリク。こちらも要注目。
リスト:ピアノ作品集
 ハンガリー狂詩曲第15番(ホロヴィッツ編曲)/愛の夢(ノクターン第3番)/
 ラ・ダンツァ(ロッシーニ:音楽の夜会より/リスト編曲)/愛の夢(ノクターン第2番)/
 即興ワルツ/おお、お前、夕星の歌(ワーグナー/リスト編曲)/
 イゾルデの愛の死(ワーグナー/リスト編曲)/コンソレーション第3番/
 巡礼の年第2年補遺「ヴェネツィアとナポリ」
  トリスタン・プァッフ(P)
 録音:2011年2月。2011年現在26歳だというプァッフ [ Tristan Pfaff ] によるリスト作品集。ミシェル・ベロフやチッコリーニの薫陶を受け、2007年のロン・ティボー国際音楽コンクールで6位入賞、ガラ・コンサートで来日経験もある注目株。
AP-017
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(2CD)
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)
 〔第1番 ト長調 BWV.1007/第2番 ニ短調 BWV.1008/第3番 ハ長調 BWV.1009/
  第4番 変ホ長調 BWV.1010/第5番 ハ短調 BWV.1011/第6番 ニ長調 BWV.1012(*)〕
  オフェリー・ガイヤール(Vc)
 録音:2010年5月。使用楽器:フランチェスコ・ゴフリラー、1737年(*以外)/ピッコロ・チェロ(*)。録音技師:ニコラ・バルトロメー。ガイヤール、11年ぶりのバッハ無伴奏組曲の再録音の登場。背伸びをせず、チェロを弾く喜びにあふれたバッハ。バッハが連ねた音楽史上もっとも美しい音型のひとつひとつを丁寧に丁寧に紡いでいる。慈愛に満ち、そして舞曲の生き生きとした躍動感にも満ちており、ページをめくるたびに思わず顔が輝いてしまいそうな美しい絵本のようだ。目を閉じると、木造りの部屋でガイヤールと差し向かいにくつろいだチェアに深くゆったりと座り、彼女が自分のためにだけ弾いてくれているような気分になる、親密な空気に満ちた、実に贅沢なバッハ。
 ・ガイヤール自身の言葉(ライナーノーツより抄訳)『再びこの組曲を録音したのは、11年前の時と同じく、インスピレーションが湧いたからです。この組曲を録音するということは、大きな賭けでありますが、今回の録音という偉大なる冒険に際して私は幸運にも力強いパートナーを得ました。それは楽器です。このような素晴らしいチェロを弾けるだけでもすでに十分に幸福なのですが、じっくりと楽器との関係を築きながらこれらの組曲と向き合うことで、ことができるだけで、まったく新しい展望が拓けたのです。「人が旅を作るのではなく、旅が人を形成する。人は自身を飾るために旅をするのではない。旅が人から無駄なものを一切洗い落とし、すすぎ、乾かしてくれるのである」という言葉がありますが、まさに自分が今回この組曲を再録音する中での道のりもこうした旅のようでした。』
AP-015
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(2CD)
ジャン=バティスト・リュリ(1632-1687):歌劇「ベレロフォン」(1679)
 シリル・オヴィティ(T;ベレロフォン) セリーヌ・シェーン(S;フィロノエ)
 イングリッド・ペリューシュ(S;ステノベ) ジェニファー・ボルギ(Ms;アルジ/パラス)
 ジャン・テジャン(B;アミソダル) エフゲニー・アレクシエフ(Br;ジョバト)他

 クリストフ・ルセ指揮レ・タラン・リリク
 録音:2010年12月、シテ・ドゥ・ラ・ミュージック、パリ、ライヴ。リュリは、1670-1680年代におよそ14のオペラ(トラジェディ・リリク、抒情悲劇)を書いている。その中でも特に初演当時大成功を収めたものが、この「ベレロフォン」。1679年1月31日に初演されるや爆発的人気となり、実に9ヶ月もの間上演が続いたという。さらにリュリ自身や第三者の改編を受けながら何度もリバイバルされ、最後の上演は、フランス革命も遠くない1773年というから驚く。ところが、1987年の「アティス」に端を発するリュリ再評価の潮流でも「ベレロフォン」は長いこと放置され、ようやく2010年になって演奏会形式上演で取り上げたのがクリストフ・ルセだった。ルセは、まず7月にボーヌで演奏、さらに12月にパリとヴェルサイユ、年が明けた2011年1月にウィーンと「ベレロフォン」を上演、いずれも大絶賛された。ベレロフォンとは、ギリシャ神話に登場するベレロポン(ベレロポンテス)のこと。彼はペガサスを駆って怪物キマイラ(キメラ)を退治した人物として知られている。それよりも前、彼は誤って兄弟を殺してしまったことから故郷コリントスを去り、ティリンスのプロイテス王の元に身を寄せていた。ところがその王妃ステネボイアがベレロポンに言い寄って来る。彼が彼女を拒絶すると、怒り狂ったステネボイアは、ベレロポンに誘惑されたと虚偽の告発をし、ベレロポンを彼女の父リュキア王イオバテスの王宮へと向かわせる。しかしベレロポンはここでキマイラ退治を成功、イオバテスの娘ピロノエと結婚する。なおベレロポンはポセイドンの息子であるとされている。
 「ベレロフォン」の大成功は、リュリの優れた音楽はもちろんだが、台本がたいへん優れていたことも大きな理由。トマ・コルネイユはピエール・コルネイユの弟で、彼自身劇作家として大家だった。「ベレロフォン」は、嫉妬深い王女の横恋慕と挫折が軸になっており、この2年前に初演され熱狂を巻き起こした、ジャン・ラシーヌの「フェードル」を受け継いでいる。真の主役はステノベと言ってよいだろう。
 記念すべき復活蘇演は素晴らしい出来栄え。中でも鍵を握る嫉妬の王女ステノベを歌うイングリッド・ペリューシュの集中力ある歌は強烈、遂げられない愛に苦しむ女の悲しさを見事に描き切っている。ベレロフォンのシリル・オヴィティは、2000年にデビューしたばかりの若いフランスのテノール。ほのかな翳りのある声は常に不幸に晒されるベレロフォンにピタリ。フィロノエのセリーヌ・シェーンは、ラ・フォル・ジュルネに度々出演していたことで日本でもよく知られている美声ソプラノ。その他の歌手も実力派が揃えられている。もちろんルセの指揮は高貴にして力強く、圧倒的。発売されるや、各誌、新聞評で絶賛された名盤、フランス・バロック音楽ファンならお聞き逃しのないように! 170ページ超のブック仕立ての豪華な装丁。
ピエール・バルトロメー(1937-):
 オレイゾン[オフェリー・ガイヤール(Vc)]/
 ハープのための2つのエチュード[フランセット・バルトロメー(Hp)]/
 面とむかって[ドミニカ・エックマン(Va)]/
 オルガン教本[ジャン=フィリップ・マッケール(Org)]
 ピエール・バルトロメーは作曲に演奏に世界で活躍する音楽家。ガイヤールのソロで聴く1曲目は、砂漠の真ん中で激しい気候に耐えながら瞑想している僧を思わせる、力強くも深い曲。ガイヤールのソロが我々を瞑想の世界へといざなう。
夜の庭〜フランス歌曲集
 プーランク:ふたりは闇をつくる/4月の月 / フェルナン・アルファン:センチメンタルな対話/死んだ一日
 マスネ:スペインの夜 / ショーソン:時の女神/退屈な温室 / ヴィクトル・ユーゴー:夜
 フォーレ:夜想曲/夜の庭/月の光 / アーン:ふたたび石畳に僕の夜の足音が響く/夜想曲/夜に
 クテ:ブドウ圧搾機に / ベルリオーズ:夏の夜 / ボードレール:月の悲しみ

  イサベル・ドゥルエ(Ms) ジョアンヌ・ラランボンドレイニ(P)
  クリスティアン・パジョー(語り)
 録音:2010年10月。詩の朗読もところどころにはさみながら、夜について歌ったフランス歌曲作品を中心に収録されている。しっとりして、ミステリアスで、そしてロマンティックで神秘的で・・・幸せに満ちた恋人たちをつつむ夜、失恋した人の足音を呑み込む夜。夜の様々な表情をおたのしみ頂きたい。イザベル・ドゥルエは、フランスで活躍するメゾ・ソプラノ。ヘンデルからR.シュトラウスまで幅広いレパートリーをもつ実力派。ピアノのラランボンドレイニは1979年生まれの気鋭のピアニスト。パーカッションも演奏する彼女の抜群の運動能力が音楽に独特の推進力を与えている。
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲集
 〔第8番 ハ短調 Op.110 /第9番 変ホ長調 Op.117〕/
 弦楽四重奏のための2つの小品〔エレジー/ポルカ〕
バイロンSQ
[ウェンディ・ギセル、
 フランソワ・ジェイムズ(Vn)
 ロビン・ルメル(Va)
 コラリー・デュヴァース(Vc)]
 録音:2010年10月。バイロン弦楽四重奏楽団は、ヨーロッパ各地から集まった若手音楽家によって結成されたカルテット。ここに収録されたショスタコーヴィチは、ドライでスタイリッシュなセンス抜群。エレジーでの繊細な歌、ポルカでのコミカルな表情など、様々な表情をみせており、カルテットとしての底力を感じさせる1枚となっている。
ヴィヴァルディ:「四季」
ピアソラ:ブエノスアイレスの夏、秋、冬、春
ダヴィド・グリマル(Vn)指揮
レ・ディソナンス
 録音:2010年5月ディジョン歌劇場、ライヴ。グリマル率いるレ・ディソナンスは2004年から、貧困などで困難な生活をする人々に音楽と文化を届けようという活動を行っている。この活動の一環として行われたコンサートのライヴで、ヴィヴァルディの四季と、ピアソラのブエノスアイレスの〜を季節ごとに交互に演奏している。ヴィヴァルディの四季が素晴らしいことはいうまでもない。ピアソラ作品でも、アドリブでヴィヴァルディを思わせる音型がちりばめられているが、ピアソラ独特の熱い緊張感の中にヴィヴァルディの風味が絶妙にマッチ。偉大な芸術は時代を越えて融合することを実感する。
クリストフ・ルセ〜J.S.バッハ:幻想曲集
 幻想曲 イ短調 BWV.922/幻想曲とフーガ イ短調 BWV.904/前奏曲とフーガ ヘ長調 BWV.901/
 最愛の兄の旅立ちに寄せるカプリッチョBWV.992/
 前奏曲、フーガとアレグロ 変ホ長調 BWV.968/
 ヴァイオリン・ソナタ ハ長調 BWV.968より〜アダージョ/
 前奏曲と小フーガ ト長調 BWV.902/前奏曲とフーガ イ短調 BWV.894/
 イタリア風アリアと変奏 イ短調 BWV.989
  クリストフ・ルセ(Cemb)
 録音:2009年7月。冒頭の幻想曲 イ短調から、怒濤のようなパッセージに圧倒。「最愛の兄の〜」での沁みる表情、イタリア風アリアと変奏で聴かせる厳格な佇まいなど、変幻自在、縦横無尽にバッハの世界を魅せる。ルセのバッハにはいつも何かハッとさせられるものがあるが、この1枚は、2011年50歳となったルセが円熟の極みにあり、充実したエネルギーと多様な表情に満ちていることを強く感じさせる。
AP-009
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(1CD +
 1 DUAL DISC)
1.5CD価格
ダヴィド・グリマル〜ベートーヴェン
 ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61(*)/交響曲第7番 イ長調 Op.92(#)
 ・ボーナス DVD Video [PAL](すべて抜粋)
   交響曲第1番〜第4楽章(*)/交響曲第7番 〜第1楽章(#)/ヴァイオリン協奏曲〜第3楽章(*)
 ダヴィド・グリマル(Vn)指揮レ・ディソナンス
 録音:2010年3月15日(*)/2010年5月27日(#)、共にライヴ。2枚組のうち、1枚はDUAL DISC 仕様(1枚のディスク両面にCDとDVD2枚分のディスクを接着)。
 ヴァイオリンの名手グリマルが、ヴァイオリンと指揮の両方の才能を思う存分発揮したセット。レ・ディソナンス(=不協和音)と名付けられたアンサンブル団体は、グリマルの呼びかけに応じて集まった若き音楽家たち。様々な古典の名曲に違った光の当て方をすることをモットーにしている団体だけあって、ここに収められたベートーヴェンの名曲も新たな光に満ちている。グリマルのヴァイオリンの音色の美しさと力強さに魅力されつつ、オケの音色も非常に充実した魅力的なベートーヴェン。

 #DVD面はPAL方式での収録となっており、国内の通常映像機器では視聴できません。あらかじめご了承下さい。
シューベルト
 4つの即興曲 D.899 Op.90/
 ピアノ・ソナタ第13番 イ長調 D.664/
 ピアノ・ソナタ第14番 イ短調 D.784
ヴァネッサ・ワーグナー(P)
 録音:2010年6月。個人的な思いに満ちた、シューベルトに宛てたヴァネッサ・ワーグナーの恋文のような1枚。即興曲での一音一音、一つ一つのフレーズを抱きしめているような演奏に心が打たれる。
デュティユー(1916-):
 同じ和音の上に
  (ヴァイオリンと管弦楽のためのノクターン)/
 夢の樹(ヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲)
ラファエル・ダエーヌ(1943-):ヴァイオリン協奏曲
ヨッシフ・イヴァノフ(Vn;*)
大野和士指揮
リヨン国立歌劇場o.
 録音:2009年7月。使用楽器:1699年製ストラディヴァリウス 'Lady Tennant '(*)。大野和士が指揮するデュティユーの登場。デュティユー独特の、空間に点描を描くような音世界、静寂と嵐のよう暴力的な部分の対比、すべてを見事に明晰にまとめあげている大野の棒は見事。エネルギーが爆発する部分でも、大野の熱い音楽性がオーケストラ全体を興奮の渦へと巻き込む。ベルギー生まれのイヴァノフは18歳でエリザベート王妃国際コンクールに優勝した実力派で、知性と技巧を絶妙なバランスで併せ持つ逸材。デュティユーの世界を息もつかせぬ技巧と抒情で聴かせる。ブリュッセルで学んだ作曲家ダエーヌの作品もオケが底鳴りするような迫力に満ちた作品。
AP-006
(2CD)
廃盤
L.クープラン(c.1626-1661):作品集 クリストフ・ルセ(Cemb)
AP-005
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(3CD)
2CD価格
ヘンデル:歌劇「シピオーネ」(1726)
 デレク・リー・レイギン(CT;シピオーネ) サンドリーヌ・ピオー(S;ベレニーチェ)
 オリヴィエ・ラルエット(Br;エルナンド) ヴァンダ・タベリ(S;アミーラ)
 ギー・フレッチェ(T;レリオ) ドリス・ランプレヒト(Ms;ルチェヨ)
 クリストフ・ルセ指揮レ・タラン・リリク
 録音:1993年7月25日-31日。前出: 仏 FNAC 592245(当店未案内/廃盤)。当曲の初CDだった演奏で、17年が経過した2010年現在でも、他のCDは発売されていない稀少曲。そのため前出盤は、中古であっても\16,500(税抜\15,000)といった高値で取り引きされることがあるようだ。
 ヘンデル・ファン待望の名盤が復活、クリストフ・ルセにとって初のヘンデルのオペラ全曲録音であった「シピオーネ」。
 「シピオーネ」は「ジューリオ・チェーザレ」、「タメルラーノ」、「ロデリンダ」という傑作群が生み出された直後の作品。シピオーネとはローマ史に高名な大スキピオのことで、ローマとカルタゴが争うヒスパニアが舞台。拠点カルタゴ・ノワを攻略したシピオーネは、囚われたバレアス(スペインの同盟国)の王女ベレニーチェに恋をするが、彼女はスペインの王子ルチェヨと恋仲。そのルチェヨはベレニーチェを救うためローマ兵として潜り込んでいる。しかしベレニーチェに嫉妬したあまり、シピオーネに正体を明かして決闘を申し込むが、捕らえられてしまう。シピオーネはベレニーチェの父エルナンドに、和平としてベレニーチェと結婚したいと申し込むが、義理堅いエルナンドは、娘はルチェヨに与えると約束したとこれを拒絶。これに感心したシピオーネはベレニーチェとルチェヨの結婚を許し、ルチェヨはローマに忠誠を誓う。
 これだけヘンデルのオペラがブームになっているというのに、「シピオーネ」は不遇で上演の機会は極めて乏しく、原語での録音はいまだこのルセのものだけ(他に同じくFNACが、1979年の英語上演をLPで発売したことがあるらしい)。しかもレーベルが1990年代中頃に消滅した後、10年以上も廃盤のままだった。この録音は、直前のボーヌ音楽祭での同じメンバーによる上演に基づいたもので、演奏の質も極めて高水準。ことにベレニーチェを歌うピオーは、その後バロックのソプラノとして大ブレイクした。
 軽装紙箱ながら解説(仏英)、台本(伊仏英)を収録した120ページ超の冊子が付録している。
スラヴ魂
 アルチュニアン:演奏会用スケルツォ
 チャイコフスキー:
  メロディ Op.42-1/感傷的なワルツOp.51-6
 グラズノフ:アルバムブラット
 グリンカ:ひばり
 ゲディケ:演奏会用練習曲 Op.49
 オスカル・ベーム:トランペット協奏曲 ヘ短調 Op.18
 ラフマノニフ:エレジー Op.3-1/道化役者 Op.3-4/
        ヴォカリーズOp.34-14
 ヘーネ:スラヴ幻想曲
 ブラント:演奏会用小品 Op.11-1
 リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行
ロマン・ルルー(Tp;*)
ジュリアン・ルパプ(P)
 録音:2009年10月。使用楽器:YAMAHA (*)。
 ロシアの地で生まれたトランペットのオリジナル曲および有名曲の編曲集。グラズノフのオリジネル曲「アルバムブラット」は彼の作中最美のひとつで、美しいメロディと瑞々しい情感に酔わされる。またロシア・トランペット界の父オスカル・ベームの協奏曲や人気作曲家アルチュニアンなど重要作も目白押し。ロマン・ルルーは15歳でパリ国立音楽院に入学、卒業後にカールスルーエ音楽大学でラインホルト・フリードリヒに師事。リヨン国際室内楽コンクール3位。2009年にはフランス最大の音楽賞「ヴィクトワール・ド・ラ・ミュジーク」クラシック音楽部門で見事新人賞を受賞した期待の逸材。朗々とした響きが魅力。
ショパン:作品集
 チェロ・ソナタ ト短調 Op.65 /前奏曲 イ短調 Op.28-2 (+) /
 ノクターン ト長調 Op.37-2 /プレリュード ホ短調 Op.28-4 (+) /
 ノクターン ト短調 Op.37-1 /序奏と華麗なるポロネーズ ハ短調 Op.3 /
 ノクターン ホ短調 Op.72-1 (+) /ワルツ イ短調 KK IVb No.11 (+)
  オフェリー・ガイヤール(Vc;*) エドナ・スターン(P;#)
 録音:2009年9月。使用楽器: Francesto Goffriller, 1737年(弓:Etienne Pageot, 1840)(*)/プレイエル、1843年(#)。(+)はガイヤールとスターンによるVc&P編曲版による。
 気品溢れる音色とセンシティヴな演奏で私たちを魅了しつづけるチェリスト、オフェリー・ガイヤールのショパン。ピアニストにバッハの録音でも高い評価を得ているエドナ・スターンを迎え、極めて薫り高い演奏を展開している。まず冒頭のソナタでは、プレイエルのピアノで奏でられる独白のような短い前奏に、まるでショパンの友人でチェリストであったフランショームとショパン自身が目の前で演奏している部屋へと引き込まれたような錯覚に陥る。ショパン自身、サンドと別れの時期を迎えていた際にこのソナタを書いたこともあり、特別な思い入れがあった。死の床についていた際にもフランショームにこのソナタを演奏してもらったという。ショパンのエッセンスが濃縮された作品を、ガイヤールとスターンが、色彩と詩情豊かに奏でる。何度も聴いたことのある作品のはずだが、息を呑んで聴き入ってしまう世界が広がる。続いてピアノ曲のチェロ&ピアノ編曲を含む小曲が並ぶ。作品37の二つのノクターンはオリジナルの通りピアノ独奏で演奏されているが、祈りのような旋律と舟歌のリズムの煙るような世界がプレイエルで奏でられると、これこそショパンの色彩の世界なのか、と耳が改めて拓かれる思い。
Till Solveig...
 グリーグ:ばらの季節に/きみを愛す/夢/白鳥/茶色のふたつの目/ソルヴェイグの歌/子山羊のダンス/水連に寄せて
 ラングストレーム:牧羊神 / ドビュッシー:ビリティスの3つの歌/顕現/美しき夕べ
 シベリウス:もはや私は尋ねなかった/3月の雪/でもあたしの鳥は帰ってこない/黒いバラ/トンボ/デートから戻った娘

  カレン・ヴルチ(S) スーザン・マノフ(P)
 録音:2009年11月。幼い時をノルウェーの北部で過ごし、その後夏のバカンスの旅にオスロの南にある島でゆったりとした時の流れに身を任せるという生活をしているフランスのソプラノ、カレン・ヴルチによる魅力的なアルバム。ゲーテやフォン・ボーデンシュテットによるドイツ語の詩を北欧の言語に訳した詩に作曲された歌曲(「ばらの季節に」、「夢」)はドイツ語で歌われることが多いが、ヴルチは北欧語で歌っているなど、言葉に対する慎重な選択の姿勢が印象的。グリーグ歌曲の高貴でメランコリックな性格、シベリウスの歌曲の情熱的な愛など、それぞれの作品の性格を繊細に歌い分けている。カップリングに選んだ終曲の「美しき夕べ」は、「熟考する自然と水と人間の生活の自然なサイクルを想起させる」とヴルチが語っているが。ディスクの冒頭から最後まで、時に激しく時に穏やかに私たちを包み込む自然を感じさせる秀逸な1枚。
Dreams
 ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
 ドヴォルザーク:月に寄せる歌(歌劇「ルサルカ」より)
 グリーグ:ソルヴェーグの歌(「ペール・ギュント」より)
 ベッリーニ:ああ、私がどんなにあなたをお慕いしているか
       (歌劇「夢遊病の女」より)
 ドニゼッティ:人知れぬ涙(歌劇「愛の妙薬」より)
 プッチーニ:私のお父さん(歌劇「ジャンニ・スキッキ」より)
 サティ:ジムノペディ第1番/グノシエンヌ第1番
 フォーレ:パヴァーヌ Op.50/夢のあとに
 ショパン:マズルカ Op.67-4/ノクターン Op.9-2
 ラフマニノフ:ヴォカリーズ(Op.34-14)
 チャイコフスキー:感傷的なワルツ
オフェリー・ガイヤール(Vc;*)
ティモシー・レドモンド指揮
ロイヤルpo.
 使用楽器:フランチェスコ・ゴフリラー、1737年。
 チェロ界のミューズ、ガイヤールがクラシックの名曲を優雅に繊細に奏でる。オペラのアリアでは朗々としたガイヤール節が冴える。ショパンのマズルカは、溜息のような繊細さと低音での思いがけない力強さで、ピアノとはまた全く違う魅力に溢れている。しっとりとした陶器を思わせる名録音とあいまって、ガイヤールのチェロにノックアウトの1枚。編曲を手がけたのは、クレイグ・レオン。レオンは、ジョシュア・ベルの「ロマンス・オブ・ザ・ヴァイオリン」プロジェクトを手がけ、このアルバムはクラシックの空前の大ヒットとして今なお記憶に新しいところ。ほかにもパヴァロッティのアルバムから、ポップスのアーティストのプロジェクトなど、幅広く活躍している。
EVIDENCE
FIVE FOR FIVE 〜マイケル・ファイン木管と弦楽四重奏のための五重奏曲集
 ファゴットと弦楽四重奏のための五重奏曲(2017) / Elegy for... (2016) /
 クラリネットと弦楽四重奏のための五重奏曲(2015) /オーボエと弦楽四重奏のための五重奏曲(2015) /
 フルートと弦楽四重奏のための五重奏曲(2018)

 フェイ・シー(Fg) ロバート・ワルターズ(イングリッシュHr)
 アントン・リスト(Cl) シャオディ・リュー(Ob)
 アリス・K.デイド(Fl) スコット・ヨー、エリク・アルヴィンダー(Vn)
 モーリシー・バナセク(Va) キム・ヨナ(Vc)
 録音:2019年8月。マイケル・ファインはアメリカ出身のクラリネット奏者、作曲家、プロデューサー。ドイツ・グラモフォンでA&R 副社長を務めた経歴を持つ。プロデューサーとしても優れた録音を多数世に出した彼は、2013年より作曲を開始。それぞれの楽器、さらには奏者のキャラクターまでをも熟知したプロデューサーとしての手腕も発揮された、近未来的なサウンドの魅力的な作品がならぶ。
CONTEMPORARY
 クセナキス(1922-2001): Rebonds A / Rebonds B / Psappha 〔プサッファ〕
 マントヴァーニ(1974-): Moi, jeu... / フィリップ・ユレル(1955-): Loops 〔 II / IV 〕
 フランコ・ドナトーニ(1927-2000): Movement1、Movement2
 リチャード・ロドニー・ベネット(1936-2012): After SyrinxII〜マリンバ・ソロのための

 アデライーデ・フェリエール(Perc)
 録音:2018年10月、2019年5月。意欲的なプログラムによるパーカッションのアルバムの登場。奏者のアデライーデ・フェリエールは2017年、フランスのヴィクトワール・ドゥ・ラ・ミュジークで打楽器奏者として初めてInstrumental Solo Revelation(新人の器楽独奏者)を受賞した、今世界が注目する打楽器奏者。パリ国立高等音楽院を卒業後、英国の王立音楽院で学んでいる。世界の名だたるコンクールで入賞を重ね、室内楽、ソロで活躍している。2017年にはパリ・オペラ座のバレエ公演でパーカッション奏者として舞台上で演奏、音楽シーンにとどまらない活躍を見せている。ヤマハ・アーティスト。腹の底から湧きあがるエネルギーと迫力に圧倒されどおしの1枚。
ローベルト・シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ短調 Op.105
クララ・シューマン:3つのロマンス Op.22
ディートリヒ:F.A.E.ソナタ〜アレグロ
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 Op.100
 ファニー・ロビヤール(Vn) パロマ・クイデル(P)
 録音:2019年3月14日-18日、エリック&シルヴィ・ボワソナ講堂、アラシュ=ラ=フラス。トリオ・カレーニヌのメンバーとして「フォルジュルネ音楽祭」で来日もしたファニー・ロビヤールとパロマ・クイデルが、クララ・シューマンの人生を軸にドイツのヴァイオリン曲を披露。夫ローベルト、ディートリヒ、ブラームスという三人の男性の間にクララの作品を挟むという意味深なプログラミングも注目。
EVCD-064
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(2CD)
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バロックの花束
 作曲者不詳:グリーンスリーヴス(*) / パーセル:グラウンド(*)
 *以下、既出盤からのコンピレーション
 ヴィヴァルディ:フルート協奏曲〔ハ長調 RV.444 〜第1楽章&第2楽章/ト短調 RV.439「夜」〜第5楽章〕/
         フランティーノのための協奏曲 ニ長調 RV.428 〜第2楽章
 アンドレア・ファルコニエーリ: La suage Melodia y su Corrente /パッサカーユ
 ジョヴァンニ・アントニオ・ジャネッティーニ:アテネのメデア
 A. スカルラッティ:錯乱したディドーネ より /フルート、2つのヴァイオリンと通奏低音のための協奏曲第10番
 フランチェスコ・マンチーニ: Quanto dolce e quell'ardore
 パーセル:ディドの嘆き/新しいグラウンド/トランペットを鳴らせ
 J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲第6番 ヘ長調 BWV.1057 〜第1楽章/
         オーボエ、ヴァイオリン、通奏低音のための協奏曲 ハ短調 BWV.1060a
 テレマン:リコーダーとフルートのための協奏曲 ホ短調 TWV.52: E1 〜第4楽章/
      トリオ・ソナタ〔ニ短調 TWV.42: d10 〜第1楽章/変ロ長調 TWV.42: B4 〜第3楽章/
              イ短調 TWV.42: a4 〜第4楽章〕
 ピエール・ゴーティエ:組曲 ハ短調〜第1曲 / シャルパンティエ:花の王冠より/組曲 ニ短調〜第1曲
 リュリ:テゼより / クレランボー:メデ第1巻より / バリエール:トリオ・ソナタ第2番 ニ短調〜第1楽章
 ド・ラ・バール:組曲 ホ短調〜パッサカイユ/組曲第9番 ト短調〜シャコンヌ / ラモー:オルフェより
 フィリドール:組曲第5番 ニ短調〜第4曲 / オトテール:組曲第2番 ハ短調より第1曲、第7曲
 ヘンデル:合奏協奏曲 Op.3 No.3 ト長調 HWV.314 /メヌエット HWV.434 No.4 /ソナタ ト短調 HWV.360 〜第4楽章

 エロイーズ・ガイヤール(音楽監督/Ob/リコーダー)アンサンブル・アマリリス
 ヴィオレーヌ・コシャール(Cemb) ダヴィド・プランティエ(リコーダー)
 ステファニー・ドゥストゥラック(Ms) パトリシア・プティボン(S) マティアス・ヴィダル(T)
 録音:2019年4月(*) | (*)のみ初出| (*)以外:他レーベル(AMBRONAY 、naive)を含む音源からの抜粋。類まれなる技巧と音楽性、そして美貌を兼ね備えたリコーダー/オーボエ奏者のエロイーズ・ガイヤール率いるアンサンブル・アマリリスの名演を集めた。プティボン参加のトラックでは極上の歌声を楽しめ、器楽作品では極上のアンサンブルを味わえる、楽しい2枚組となっている。
マトリョーシカ〜ロシアのハープ音楽
 エルデリ:前奏曲 / バラキレフ/ルイチャヌ編曲:ひばり / グリンカ/ルイチャヌ編曲:ノクターン「別れ」
 ワルター=キューネ:チャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」による幻想曲
 プロコフィエフ:前奏曲 Op.12 No.7 / リスト/ルニエ編曲:ナイチンゲール
 ムソルグスキー/ルイチャヌ編曲:涙 / ラフマニノフ/ルイチャヌ編曲:エレジー Op.3 No.1
 イッポリトフ=イヴァノフ:ノクターン
 ツァーベル:糸を紡ぐマルグリート Op.26 No.2 /グノー「ファウスト」による幻想曲 Op.12

 アレクサンドラ・ルイチャヌ(Hp)
 録音:2018年9月、リトル・トリベカ、フランス。ロシアのハープ曲を集めた好企画。「コーカサスの風景」で知られるイッポリトフ=イヴァノフのロマンティックなオリジナル曲や、プロコフィエフのメルヘンチックな小品はもとより、ハープ奏者だったクセニヤ・エルデリとワルター=キューネの華麗な世界も聴き物。エルデリのロシア的情感、ワルター=キューネがチャイコフスキーの歌劇「エフゲニー・オネーギン」の華やかなワルツをはじめ名旋律をポプリにしたものどちらも魅力的。アルベルト・ツァーベル(1834-1910)はドイツ人ながら、マリインスキー劇場のハープ奏者として活躍した。チャイコフスキーは彼が弾くことを想定して「眠りの森の美女」や「くるみ割り人形」のハープ・パートを作ったとされる。このほかバラキレフ(グリンカの歌曲の編曲)、ムソルグスキー、グリンカ、ラフマニノフのたっぷり歌い込む叙情的作品を演奏者アレクサンドラ・ルイチャヌ自身がハープ用に編曲しているのも聴き物。アレクサンドラ・ルイチャヌはノールマン門下のフランスの若手ハープ奏者。コントラバスとデュオを組むほか、師と3台のハープ合奏などさまざまな試みに意欲的。ロシア音楽に特別な愛を示し、美しさの極み、歌ごころ豊かで極上のエレガントな世界に聴き手を酔わせてくれる。
14世紀の宗教声楽作品集
 バルセロナのミサ/アプトのミサ曲
ドミニク・ヴェラール指揮
アンサンブル・ジル・バンショワ
 録音:2018年9月。結成40年を迎えたアンサンブル・ジル・バンショワによる最新録音は、14-15世紀にかけての地中海沿岸で生まれた宗教音楽。ビウエラと中世のマンドリンの音色にも酔いしれる1枚。
ショパン
 バラード全曲〔第1番 ト短調 Op.23 /第2番 ヘ長調 Op.38 /第3番 変イ長調 Op.47 /第4番 ヘ短調 Op.52 〕/
 ノクターン ハ短調 Op.48 No.1 /ワルツ ホ短調 遺作/華麗なるワルツ ヘ長調 Op.34 No.3 /
 ノクターン 変ニ長調 Op.27 No.2 /英雄ポロネーズ 変イ長調 Op.53 /幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61

 ジャン=ポール・ガスパリアン(P)
 録音:2018年11月。ジャン=ポール・ガスパリアンは1995年パリ生まれ。アルメニアとセルビアの血を引き、パリ音楽院ではジャック・ルヴィエやミシェル・ベロフに師事、さらにクレール・デゼールやチッコリーニ、ダルベルトの薫陶を受けた期待の若手。ロシアの難曲(EVCD-048)を集めたデビュー盤につづく待望のリリースはショパン。清潔感のあるタッチと無駄のないテクニックで、ショパンの詩情の世界を豊かに響かせている。
BACH LISZT WIDOR - Jae-Hyuck Cho
 J.S.バッハ(1685-1750):トッカータとフーガ ニ短調 BWV.565
 ヴィドール(1844-1937):「バッハの思い出」〜第5曲 シチリアーノ/
             交響曲第5番 ヘ短調 Op.42 No.1 〜第5楽章 トッカータ
 リスト(1811-1886):バッハの名による幻想曲とフーガ / キム・テジュ(1980-):「 Pahdo 」[委嘱作品]
 リスト:コラール「アド・ノス、アド・サルタレム・ウンダム」による幻想曲とフーガ

  チョ・ジェ=ヒョク(Org|使用楽器:大オルガン、カヴァイエ・コル、1849年製作
 録音:2018年8月27日-30日、マドレーヌ寺院、パリ。韓国のピアニスト、チョ・ジェ=ヒョクがパイプオルガン演奏の録音をリリースする。ジェ=ヒョクは中学生の頃には韓国で開かれたピアノ・コンクールで優勝するなど若くしてその才能を開花させた逸材。その後ジュリアード音楽院で学士、修士号を、またマンハッタン音楽院で博士号を取得した。ピアニストとしてのキャリアを着実に積むジェ=ヒョクはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第21番「ヴァルトシュタイン」、シューマンのピアノ・ソナタ第2番などをおさめたアルバムをリリースしているが、オルガンを演奏し、多才な鍵盤奏者としての顔を見せたアルバムを完成させた。バッハ、リスト、ヴィドールの名曲に委嘱作品であるキム・テジュ作曲の「Pahdo」も収録。マドレーヌ寺院に据え付けられたカヴァイエ・コル1849年製作の大オルガンを使用。
アンサンブル・エデス、ブレル&バルバラを歌う
 バルバラ:ゴーギャン(アーレリアン・デュモン編曲)/死(ペスキン編曲)/いつ帰ってくるの(ペスキン編曲)/
      歓びが戻ってくるのを待って(ジャコブ編曲)/オップラ(ジュベール編曲)/
      黒いワシ(ローソン編曲)/:美しい九月(マナシュ編曲)
 ブレル:葬送のタンゴ(マヌエル・ペスキン編曲)/窓(ヴァンサン・マナシュ編曲):/
     華麗なる千拍子(ジュリアン・ジュベール編曲)/泣く泣く友人を見る(フィリップ・ローソン編曲)/
     愚鈍なアリア(ヴィクトル・ジャコブ編曲)/愛の死(ファビアン・トゥシャール編曲)/
     行かないで(クリストフ・ローテン編曲)/ガス(ペスキン編曲)/
     おばあさん(フランソワ・サン・イヴ編曲)/見果てぬ夢(トゥシャール編曲)

 マテュー・ロマーノ指揮アンサンブル・エデス
 録音:2016年7月29日-31日、サル・コロンヌ、パリ。ロトとレ・シエクルの合唱団としても知られるアンサンブル・エデス。古楽をレパートリーの中心とする彼らは、ノンヴィブラートの清冽な響きと無垢な歌唱が魅力だが、フランスの団体ならではのオシャレな感覚も兼ね備えている。彼らの最新録音はなんと20世紀後半フランス・シャンソン界を代表する大物歌手バルバラとジャック・ブレルの名歌を17曲も集めている。すべて現在活躍中の作曲家によるアカペラ合唱用編曲だが、グレゴリオ聖歌を思わす静謐なものから声によるリズム表現を含んだものまで工夫に富んでいる。とはいっても現代的なところはなく、まるでクレマン・ジャヌカンの作品を聴いているような気分にさせられる。心洗われる透明な美しさが超オススメ。
アリアンヌの糸
 アレックス・ナント(1992-):アリアンナ(8曲)
 ピエトロ・ロカテッリ(1695-1764):
  劇場風序曲 Op.4 No.2 /合奏協奏曲 ハ短調 Op.1 No.11 /
  合奏協奏曲 ニ長調 Op.4 No.7 /葬送シンフォニア/アリアンアの嘆き
 マリアンヌ・ピケッティ、ル・コンセール・イデアル
 録音:2018年6月。アリアンヌ(アリアドネのフランス語読み)は、麻の赤い糸と短剣をテセウスに与え、テセウスが迷宮にいる怪物を退治し無事戻ってくることができるようにした。ロカテッリは、このアリアンヌを題材にした作品を多数書いている。演奏者ピケッティは、ここで、ロカテッリと現代を結ぶための糸を探すプログラムを企画。アレックス・ナントに作品を依頼し、ナントの作品によってロカテッリと現代を結ぼうと試みている。ピケッティはフランスのヴァイオリン奏者。パールマンやメニューインに師事した。カーネギー・ホールでのデビュー公演を皮切りに世界で活躍している。2013年にル・コンセール・イデアルを結成し、ピアソラからヴィヴァルディ、さらには新作委嘱まで、積極的な演奏活動を展開している。
ラモー(1683-1764):王太子妃/新しいクラヴサンのための組曲 イ調
F. クープラン(1668-1733):クラヴサン曲集第3巻および第4巻より
 クレマン・ルフェーブル(P)
 録音:2017年10月、パリ。 1990年生まれのフランスの逸材、クレマン・ルフェーブルのデビュー盤。2016年のジェイムズ・モットラム国際ピアノ・コンクールで優勝、聴衆賞も受賞している。アベッグ四重奏団の創立メンバーであるなど室内楽にも意欲的なほか、2008年にはリールの音楽院で打楽器も修学している。パリ国立高等音楽院にてロジェ・ムラロらに師事。その抜群のリズム感と音色に対するセンスで、ラモーやクープランを繊細きわまりなく、しかも鮮烈に響かせる。
ラス・ウエルガスの写本
 13世紀の宗教音楽より
ドミニク・ヴェラール指揮
アンサンブル・ジル・バンショワ
 録音:2017年12月18-23日。スペインのサンタ・マリア・デ・ラス・ウエルガス修道院()に伝わる写本を読み解き、中世の典礼音楽の世界がよみがえらせた1枚。修道院の資料室に残されている資料の中には、パリのノートル=ダム寺院から伝わるものもあり、中世にすでに音楽の往来があったことを物語っている。これらの美しい聖歌集が、静かな祈りの瞑想の世界へと聴き手を誘う。
ハープ・トリオ〜ロマンティック・ピース&トランスクリプションズ
 シューベルト:バルカローレ(原曲:歌曲「水の上で歌う」D.774)/
        セレナーデ(原曲:歌曲集「冬の旅」D.957 〜セレナーデ)/
        ます(原曲:歌曲「ます」D.550)/ Marguerite(原曲:歌曲「糸を紡ぐグレートヒェン D.118)
 メンデルスゾーン:プレリュード Op.35 (*) /無言歌「アンダンテ・エスプレッシーヴォ」 Op.30 No.7 (*)
 ジョン・トマス:北の思い出(アリャビエフ「うぐいす」による)(#) /2台のハープのためのグラン・デュオ(#)
 アルベール・ザベル:糸を紡ぐグレートヒェン Op.19 [Marguerite au rouet]
 ラフマニノフ:6手のための2つの小品〔ワルツ/ロマンス〕 / グラズノフ:・ワルツ Op.43 No.7

 マリエル・ノールマン(Hp;#以外)
 アレクサンドラ・リュイソー、クララ・イザンベール(Hp;*以外)
 録音:2017年9月。なんとも豪華なアルバムの登場。ハープ3台によるアンサンブル。世界的名手マリエル・ノールマンを中心に、一番弟子のアレクサンドラ・リュイソーとクララ・イザンベールという3名の名手による演奏で、シューベルトの有名歌曲のハープ3台用編曲から、ノールマンのソロ、あるいはリュイソーとイザンベールのデュオも収録されている。
ヘンデル:メロディーズ・イン・マインド〜組曲&ソナタ集
 トリオ・ソナタ ニ短調 Op.2 No.1, HWV.386 /空想の組曲第1番
  〔コンチェルト HWV.487 /ラルゲット HWV.580 /アレグロ(ヴァイオリン・ソナタ HWV.358 〜第1楽章)/
   インパーティネンス HWV.494 /メヌエット HWV.434 No.4 /
   アダージョ&アレグロ(ヴァイオリン・ソナタ HWV.358 〜第2楽章&第3楽章〕/
 チェンバロ組曲 ヘ長調(1720) 〜アダージョ&アレグロ/トリオ・ソナタ ヘ長調 Op.2 No.4, HWV.389 /
 空想の組曲第2番〔アルマンド(組曲第3番より)/アレグロ&アダージョ(リコーダー・ソナタ HWV.377 より))/
          アレグロ(組曲第7番 ト短調より)/デュオ HWV.470-サラバンド(組曲 HWV.440 より)/
          ジーグ(リコーダー・ソナタ HWV.377より)/アリア HWV.449 〕

 アンサンブル・アマリリス
  [エロイーズ・ガイヤール(Fl/リコーダー) ヴィオレーヌ・コシャール(Cemb)]
  エロイーズ・ガイヤール率いるアンサンブル・アマリリスは、ヘンデル作品集。ヘンデルの、もっとも「イタリア的」な楽章を集めて、ヴァイオリン・ソナタはフルートで演奏するなどしながら、想像上の組曲にしたてた。アンサンブル・アマリリスの変幻自在な編成が活かされ、多様性に富んだプログラムとなっている。
ジャン=ポール・ガスパリアン
 ラフマニノフ:音の絵 Op.39(全9曲)
 スクリャービン:ピアノ・ソナタ第2番 嬰ト短調 Op.19 /3つの練習曲 Op.65
 プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第2番 ニ短調 Op.14
  ジャン=ポール・ガスパリアン(P)
 録音:2017年7月17日-20日、オテル・ド・アンデュストリ、パリ。 ジャン=ポール・ガスパリアンは1995年パリ生まれ。アルメニアとセルビアの血を引き、パリ音楽院ではジャック・ルヴィエやミシェル・ベロフに師事、さらにクレール・デゼールやチッコリーニ、ダルベルトの薫陶を受けた期待の若手。ガスパリアンのデビュー盤はロシアの難曲を集めたアルバム。テクニックも正確で、若々しくナイーヴな音楽性を味わえ要注目。
エリザベト・ジャケ・ド・ラ・ゲール(1665-1729):クラヴサン曲集
 クラヴサン曲集第2巻(ヴァイオリンでも演奏可能なクラヴサン曲集)(1707) 〜ラ・フラマンド(フラマン人の女)/
 クラヴサン曲集第1巻(1687年頃)より 組曲〔ヘ調/ニ調/イ調〕/
マリー・ファン・ライン:ラ・フラマンドのドゥーブル

 マリー・ファン・ライン(Cemb)
17世紀のクラヴサン音楽で、シャンボニエールやクープランと並び称されるべき存在、ジャケ・ド・ラ・ゲールの作品集。今日あまり演奏される機会のないジャケ・ド・ラ・ゲールだが、彼女が生きた当時、賞賛をほしいままにしていた。彼女の霊感に満ちた作品は、楽器の音域をくまなく使うもの。1990年生まれのクラヴサン奏者、マリー・ファン・ラインは、アルバム第1弾(EVCD-019)のマレのオペラのチェンバロ編曲版で高評を得たが、ここでもジャケ・ド・ラ・ゲールに光を当てた秀 逸のプログラム。ライン自身がジャケ・ド・ラ・ゲールのスタイルを模して書いたドゥーブル(変奏)を自身演奏しているなど、研究にも裏打ちされた説得力抜群の演奏を披露している。
シューベルト:ピアノ五重奏曲 イ長調 Op.114, D.667 「ます」(*) /
       幻想曲 ハ長調 Op.159, D.934
 ギヨーム・シレム(Vn) ナタナエル・グーアン(P|使用楽器:ベヒシュタイン)
 マリー・シレム(Va;*) アストリジ・シラノシアン(Vc;*) エミリー・ルグラン(Cb;*)
 録音:2017年3月14日-18日。 2011年のラ・フォル・ジュルネ音楽祭で来日もしているギヨーム・シレムと、リスト作品集(MIR-354)で圧倒的な超絶技巧を披露したナタナエル・グーアンとのデュオの登場。二人はスウェーデン国際デュオ・コンクールで第1位を獲得している。「幻想曲」で聴かせるヴァイオリンの息の長い歌と、ピアノの軽やかな響きに引き込まれる。「ます」では実にみずみずしい感性が光り、ふたりの多様性に感じ入る1枚。
Opus 102
 リスト:ソナタ ロ短調 S.178 / シューベルト/リスト編曲:影法師/アトラス/セレナード
 ドビュッシー:雪の上の足跡/沈める寺/霧 / スクリャービン:詩曲/夜想曲 Op.61 /炎に向かって Op.72

 シリル・ユヴェ(P|使用楽器:ステファン・パウレッロ [Stephen Paulello] 製作、102鍵
 録音:2017年7月。 『「フランスの伯爵の音楽との出会い」と称される、フランスの名手シリル・ユヴェによる超絶技巧作品集。102鍵をもつステファン・ポレロ製のピアノを用いての録音です。鍵盤が多いということは弦も多いということで、倍音のスケール、特に低音の鳴りが通常の88鍵ピアノとは異なってきます。さらにシリル・ユヴェはオーケストラを思わせるスケールの大きな演奏スタイルなので、ここに収録されたヴィルトゥオーゾで音の多い作品ではピアノが真価を発揮。ピアノの迫力を満喫できる1枚です。』(『内』代理店記載ママ)
ピエール・バルトロメー(1937-):作品集 1970-85
 グラウンドとしてのファンシー(*) /絡み合った3つの極(*) /アルモニーク(#) /リチェルカール(+)

 ジョルジュ=エリ・オクトール指揮アンサンブル・ミュジーク・ヌーベル(*)
 ミヒャエル・ギーレン指揮フランクフルト放送so.〔現・ hr so.〕(#)
 クーン・マース(ソプラノSax;+) ピエテル・ペレンス(アルトSax;+)
 ピエト・ルベル(テナーSax;+) ラフ・ミンタン(バリトンSax;+)
 録音:1986年11月1日-3日、王立リエージュ音楽院ホール(*) /1973年2月3日、フランクフルト放送(#) /2017年8月31日、サン・レミ教会、ベルギー(+) 。 ピエール・バルトロメー(1937-)はリェージュ・フィルの首席指揮者を1977年から99年までつとめ、ベルギーの作曲家作品のCD録音でも知られている。彼の作品4篇が収められているが、オーケストラ曲を何とギーレンが指揮。ファン狂喜のお宝音源。
旅するヴィルトゥオーゾ〜テレマン(1681-1767):ソナタ集
 〔「音楽の練習帳」より(*) |「忠実な音楽の師」より(#) 〕
 トリオ・ソナタ〔ニ短調 TWV.42: d10 /ト短調 TWV.42: g5 (*) /変ロ長調 TWV.42: B4 (*) /
         変ホ長調 TWV.42: Es3 (*) /イ短調 TWV.42: a4 (*) 〕/
 ソナタ ニ長調 TWV.41: D.6 (#)

 エロイーズ・ガイヤール(音楽監督/リコーダー/Ob) アンサンブル・アマリリス
  [ヴィオレーヌ・コシャール(Cemb) ダヴィド・プランティエ(Vn)
   エマニュエル・ジャック(Vc) ローラ・モニカ・プスティルニク(アーチリュート)]
 録音:2006年3月13日-17日。初出・前出: Ambroisie (Naïve), AM-112〔廃盤、入手不能〕。 テレマンは様々な地に旅をし、様々な音楽を貪欲に吸収した。ここに収録されている「音楽の練習帳」は、1740年にテレマン自身が出版した作品集。12のソロ・ソナタと12のトリオ・ソナタ(6つの異なる楽器〔リコーダー、ヴァイオリン、オーボエ、Fl−tr、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロ〕を想定して書かれている)が収められている。当盤ではオーボエのための2作とリコーダーのための2作が収録されている。
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
シマノフスキ:神話 Op.30
レイナルド・アーン:夜想曲
ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ
ファニー・ロビヤール(Vn)
パロマ・クイデル(P)
 録音:2017年3月、フレーヌ、フランス。 トリオ・カレーニヌのメンバーとして「フォルジュルネ音楽祭」で来日もしたファニー・ロビヤールとパロマ・クイデルが近代フランス系のヴァイオリン曲に挑戦。インゴルフ・トゥルバン門下のロビヤールはソリストのかたわら、室内楽やオーケストラのメンバーとしても活躍している。ドビュッシーとラヴェルの名ソナタの演奏も清潔かつ正確な味わいに富んでいる。シマノフスキ独特の美学による「神話」もキラキラ感に満ちた世界を見事に再現。またアーンの絶美な「夜想曲」はまるで歌曲のように表情豊かな歌を聴かせてくれる。相方のクイデルの華やかなピアノも聴き物。
愛の影〜ヘンデル:イタリア・カンタータ集
 ルクレツィアHWV.145 /もしあなたの誠実さが HWV.158a /
 クローリ、わたしのクローリ HWV.92 /聞える HWV.161b /むごい暴君の愛 HWV.97
  アンナ・カシアン(S) ホルヘ・イメネス、アナスタシア・シャポヴァル(Vn)
  ミシェル・ルナール(Va) オフェリー・ガイヤール(Vc) ジョリー・ヴィニクール(Cemb)
 録音:2016年12月2日-5日、ボン・セクール教会、パリ。 ヘンデルのソロ女声のためのカンタータは、キアロスクーロ、すなわち光と影を音楽で表現したとも称され、振幅の大きな感情が歌われる。女性の主人公は愛から憎しみまで、様々な感情を時に超絶技巧の音符にのせて歌うが、アンナ・カシアンはその広い音域とゆるぎないテクニックで、ヘンデルが音に織り込んだ様々な感情を見事に歌い上げている。アンナ・カシアンは1981年生まれの、ジョージア出身のアルメニア人ソプラノ歌手。トビリシの音楽院でヴァイオリンと声楽を学び、2008年エリザベートコンクール声楽部門で第4位となった。クルレンツィス指揮の「コジ・ファン・トゥッテ」でデスピーナを演奏、オペラのほか様々に活躍している。現在フランス在住。
EVCD-037
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(3CD)
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パパヴラミ&ギイ〜ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
 〔第1番 ニ長調 Op.12 No.1 /第2番 イ長調 Op.12 No.2 /第3番 変ホ長調 Op.12 No.3 /第4番 イ短調 Op.23 /
  第5番 ヘ長調 Op.24「春」/第6番 イ長調 Op.30 No.1 /第7番 ハ短調 Op.30 No.2 /
  第8番 ト長調 Op.30 No.3 /第9番 イ長調 Op.47「クロイツェル」/第10番 ト長調 Op.96 〕

 テディ・パパヴラミ(Vn|使用楽器:ストラディヴァリウス「La Reynier」1727年製
                〔 LVMH ファウンデーションより貸与〕

 フランソワ=フレデリック・ギィ(P|使用楽器:スタインウェイ D-274 No.584407
 録音:2016年11月22日-26日、2017年3月1日-5日。 生粋のベートーヴェン弾き、フランソワ=フレデリック・ギィが鬼才ヴァイオリニスト、パパヴラミとヴァイオリン・ソナタ全曲を録音!ベートーヴェンのスペシャリストとして名を馳せるギィの、音楽に寄り添った精妙な語り口が実に聴き物。パパヴラミとのアンサンブルも申し分なく、2人のバランス感覚の見事さに唸らされる。初期作品では軽やかな走句が明快にきらめきながら歌われ、中期以降は段々とダイナミックな静と動との対立が現れて来る。単に美しいだけと思われがちな「春」第1楽章でも展開部から再現部にかけてのいびつさ、激烈さがしっかりと表現されており、かといってやり過ぎにならず絶妙なセンスを感じる。力強い協奏が圧巻の「クロイツェル」もやはり必聴だが、一番の名演は最後の第10番。ヴァイオリンとピアノが完全に一体となっている。ふわりと幻想的なトリルが虚空に舞い、繊細な予感にあふれた転調は水彩画のごとし。それでいて確固たる音楽を感じる演奏で、ベートーヴェン後期のピアノ・ソナタや弦楽四重奏曲と同じ地平がはっきりと想起される。これはぜひ聴いて頂きたい素晴らしい全集。
プルーストのヴァイオリン
 フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
 レイナルド・アーン:ヴァイオリン・ソナタ ハ長調
 サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ短調 Op.75
  ガブリエル・チャリク((Vn) ダーニャ・チャリク(P)
 録音:2017年2月10日-11日、サル・コロンヌ、パリ。 プルーストの長編小説「失われた時を求めて」には架空の作曲家ヴァントゥイユのヴァイオリン・ソナタが登場するが、このモデルは何であるか長く議論されてきた。プルースト自身サン=サーンスのヴァイオリン・ソナタ第1番だと示唆したともいわれ、また譜例として示されたものがフランクのソナタだという説もある。またプルーストの相方レイナルド・アーンが登場人物スワンのモデルとも言われており、そのヴァイオリン・ソナタである可能性もある。ことに第3楽章はプルーストの描写するヴァントゥイユのソナタのイメージにぴったり。ここではその3篇のソナタを、ロシアの血を引くフランスの音楽家兄弟ガブリエル&ダーニャ・チャリクが新鮮な感性で再現。「失われた時を求めて」の場面を彷彿させるソフトフォーカスによる美青年ふたりの写真が満載で、雰囲気たっぷり。
レスピーギ:作曲者ピアノ4手編曲版による管弦楽作品集
 ローマの噴水/ローマの松/リュートのための古風な舞曲とアリア〔第1組曲/第2組曲〕
  ジュリオ・ビッダウ、ノルベルト・レスピーギ(Pデュオ)
 録音:2017年1月9日-11日、リトル・トリベカ、パリ。 レスピーギの「ローマの噴水」と「ローマの松」は近代オーケストレーションの極限を示した名作で、後者にはスコアに鳥の鳴き声のレコードまで指定されている。その2篇をレスピーギ自身が4手連弾用に編曲、効果的なピアノ曲に仕立てている。これまで少し録音もあったが、ついに決定盤の登場。もともと印象派風で水を扱った「ローマの噴水」はピアノでも想像出来るが、ピアノ向きとは思えない「ローマの松」も冒頭から輝かしいピアノの音の美しさに引き込まれる。全体にピアニスティックで華麗、非常に魅力的な作品として再発見出来る。ローマの2作に加え、「リュートのための古い歌と舞曲」の第1、第2組曲の4手連弾版も収録しているのも嬉しい限り。演奏はイタリアの若手ジュリオ・ビッダウとノルベルト・レスピーギ。後者は作曲者の子孫で、ピアニストのかたわら、フランスの金融グループ BNP パリバ・グループで財務管理をしているという異色。両者とも切れ味の良い技巧とイタリア風の明快な音色で一気に聴かせる。
ダウランド=ベンジャミン
 ジョン・ダウランド(1563-1626):ラクリメ、または7つの涙
 ジョージ・ベンジャミン(1960-):メゾ・ソプラノと5つのヴィオールのための Upon Silence

 シット・ファスト[酒井敦、イザベル・サン=イヴ、マリオン・マルティノー、
            ニコラ・ミルヌ、ジョシュア・チートハム(ヴィオール)]

 サラ・ブルトン(Ms) カール・ニーリン(リュート)
 録音:2016年12月。 酒井敦が2001年に結成したヴィオール・コンソート「シット・ファスト」。今回のアルバムは、アンサンブル結成時からのレパートリーであるダウランドの「ラクリメ、または7つの涙」と、現代の作曲家でメシアンの愛弟子としても知られる英国の作曲家ジョージ・ベンジャミンというプログラム。ダウランドの作品が、線の絡み合いが織りなす美しいハーモニーが主眼とするならば、メゾ・ソプラノが加わるベンジャミンの作品は「間」や「無」を連想させるもので、ピッツィカートやチェロの奏法も多用されている難曲。このディスクでは指揮者なしで演奏されており、アンサンブルの緊張感が伝わって来る。
マーク・メリッツ(1966-):弦楽四重奏曲集
 〔第3番「タパス」/第4番「プロメテウス」(2011) /
  第5番「 Waniyetu 」(2015) 〕
ドビュッシーSQ
 世界初録音。アメリカの作曲家マーク・メリッツの弦楽四重奏作品集。 ミニマル・ミュージックの作風で知られるメリッツだが、ここでもそうした作品が聴かれる。第5番の終楽章は、どこかライヒのディファレント・トレインズをほうふつとさせ、弦が刻む和声が刻々と変化していくさまがかっこよい演奏。
心躍るコンチェルト集
 J.S.バッハ:ヴァイオリン、オーボエ、弦楽と通奏低音のための協奏曲 ハ短調 BWV.1060a /
         チェンバロ、2つのFl−tr、弦楽と通奏低音のための協奏曲 ヘ長調 BWV.1057
 テレマン:オーボエ、ヴァイオリン、2つのリコーダーと通奏低音のための協奏曲 変ロ長調 TWV.54: B1 /
      リコーダー、Fl−tr、弦楽と通奏低音のための協奏曲 ホ短調 TWV.52: e1

 アンサンブル・アマリリス
 録音:2016年9月。 リコーダーおよびバロック・オーボエのエロイーズ・ガイヤール率いるアンサンブル・アマリリス最新盤。バッハとテレマンの協奏曲の名曲が収録された、極上のバロックのたのしみに満ちた1枚。バッハとテレマンは同時代に活躍し、どちらも奏者間の対話を重視した協奏曲をのこしている。とりわけ、リコーダーとFl−tr、つまり縦笛と横笛が登場するテレマンの協奏曲では、両者の音色が見事に融け合っており、テレマンがこれらの楽器の優れた奏者であったことを思い出させる。タイトルのとおり、心躍るような演奏が展開された1枚。
ハイドン(1732-1809):ピアノ・ソナタ集
 幻想曲 ハ長調 Hob.XVII: 4 /ソナタ
  〔ロ短調 Hob.XVI: 32 /ニ長調 Hob.XVI: 37 /変イ長調 Hob.XVI: 46 /ホ長調 Hob.XVI: 31 /イ長調 Hob.XVI: 26 〕

 フランチェスコ・コルティ(Cemb
   |使用楽器: David Ley 製作〔モデル:J.H.グレープナー、1739年〕
 録音:2015年9月。 1984年イタリア生まれのチェンバロ奏者、コルティの登場。ミンコフスキ率いるレ・ミュジシャン・ドゥ・ルーヴルのメンバーでもあるコルティは、ミンコフスキの指揮でハイドンを演奏した経験ももっており、ここでも、非常に生き生きと豊かな表情が魅力の演奏を展開している。最後の「8人のへぼ仕立て屋に違いない」ではミンコフスキ流のびっくりするようなユーモラスないたずらも聴かれる。
EVCD-030
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(2CD)
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マウリシオ・カーゲル:サロン管弦楽のための
 「ウインドローズについての8つの小品」(1988-94)
アンサンブル・アレフ
 録音:2015年-2016年/ (P) (C) 2016 /発売:2017年。世界初録音。 「ウインドローズ」は風向きと風速を図で表した「風配図」を意味し、8つの小品はそれぞれ「東」「南」「東北」「北西」「南東」「南西」「西」「北」と名付けられている。編成は弦楽、クラリネット、ピアノ、パーカッション、ハーモニウム、パンフルート、ジューズハープなど。前半は完全に調性を持った何とも場末感漂うサウンドで、過激な前衛音楽で知られるカーゲルにしてはちょっぴり毛色の違う音楽。しかし音楽が進むにつれて各楽器は自由度を増し、調性は崩壊し、殺伐とした無秩序の響きが吹き荒れる。
 #当タイトルは国内発売後2ヶ月半ほどで、国内代理店より『レーベル元で廃盤となりました。入荷の見込みはございません。』とのアナウンスがありました。2020年5月現在、当店では流通在庫のお取り寄せを継続していますが、高額になります。また最終的には在庫が尽きますので、入手出来ない場合はご容赦下さい。
金と光〜18世紀から21世紀、バロック時代のユダヤ音楽
 作曲者不詳、マルチェッロ、リダルティ、マリーニ、他の作品
 ル・バロック・ノマド
 録音:2016年7月。ユダヤの音楽と、ユダヤの祭などに接し音楽を聞いたバロック作曲家の作品などを集めた1枚。非常に独特のオリエンタル色濃厚な1枚。
東洋と西洋の間に
 コミタス(1869-1935):鶴 / ショーソン(1855-1899):詩曲 / ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ 変イ長調
 アンドレ・ホセイン(1905-1983)/タラ・カマンガル編曲:キャラヴァン
 フィリップ・エルサン(1948-):南の歌/無伴奏ヴァイオリンのための6つの小品
 バルトーク(1881-1945):ルーマニア民俗舞曲 / ドビュッシー(1862-1918):ヴァイオリン・ソナタ ト長調

  ヴィルジル・ブテリ=タフト(Vn|使用楽器:モンタニアーナ「 ex Regis Pasquier 」ヴェネチア、1742年製
  ギヨーム・ヴァンサン(P)
 録音:2016年6月。 繊細かつ熱い音色のヴァイオリン奏者、ヴィルジル・ブテリ=タフトのデビューCD。パリに学んだ後、ハンガリー、そしてイギリスで研鑽を積んだ彼は、2015年から、イレーヌ・デュヴァルとデュオ「La Rose and Reseda」を組んで活動している。今後、カーネギー・ホールやウィグモア・ホールでの演奏会も予定されている注目株。「熱い感情」と評された彼の音色は熱さをたたえながらも端正な物。このディスクでは「、東洋と西洋の間に」と題し、様々な地域の音楽に影響を受けた作品をミステリアスに奏でている。
EVCD-027
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(2CD)
マーラー:交響曲第2番「復活」
 Olena Tokar (S) Hermine Haselböck (Ms)
 ジャン=クロード・カサドシュ指揮リール国立o.
 録音:2015年11月。 ジャン=クロード・カサドシュ(1935-) と彼のオーケストラ、リール国立o. によるマーラーの復活の登場。カサドシュはピアニストのロベール・カサドシュの甥にあたり、ピエール・デルヴォー、ブーレーズらに指揮を師事した巨匠。この録音は、2015年11月13日のパリで起こったテロ事件の 直後に行われたとあって、非常に重々しい空気が漂う第1楽章に始まり、終楽章での救済はまさに「復活」を思わせる。痛切な祈りのこもった力演。
ゴドフスキによる編曲集
 「ショパンによる練習曲」より
  〔第5番(「別れの曲」Op.10 No.3 による左手のための)/第13番( Op.10 No.6 による左手のための)/
   第34番( Op.25 No.5 をマズルカ形式に)/第45番(「3つの新練習曲」第2番による)〕/
 J.S.バッハ「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト短調 BWV.1001」/
 シューベルト原曲集
  〔野ばら/子守歌/「楽興の時」第3番/朝の挨拶/「ロザムンデ」〜バレエ音楽/「冬の旅」〜おやすみ〕/
 シューマン「君は花のごとく」/ヨハン・シュトラウス「酒・歌・女」による交響的メタモルフォーゼ/
 アルベニス「タンゴ」 Op.165 No.2 /サン=サーンス「白鳥」/スミス「星条旗よ永遠なれ(アメリカ国歌)」

 ローラン・ワグシャル(P)
 録音:2015年7月10日-11、13日、ヴァンセンヌ市講堂。フランク、サン=サーンス、シマノフスキらの難曲を易々と弾きこなし、不当に閑却された作品を次々と録音するピアニスト、ローラン・ワグシャル。超絶技巧だけでなく、パリジャンらしい洒脱さも魅力で日本にも根強いファンを持っている。そのワグシャルがついにゴドフスキに挑戦。ゴドフスキは多数の編曲を行っているが、ワグシャルは誰もが原曲を知る19曲を選び、その魅力をたっぷり楽しませてくれる。ワグシャルは余裕の技巧でショパンの練習曲編曲やヨハン・シュトラウスの「酒・歌・女」を征服。シューベルトやシューマンの歌心、サン=サーンスの「白鳥」やアルベニスの「タンゴ」も恐るべき難しさを超越してメロディに聴き惚れさせるところなど流石としか言いようがない。アメリカ国歌「星条旗よ永遠なれ」の音の渦もピアノ音楽の醍醐味。ピアノ好き興奮の一枚。
パッチワーク
 エネスク:カンタービレとプレスト / シュルホフ:フルート・ソナタ
 プロコフィエフ:フルート・ソナタ Op.94 / ムチンスキ:フルート・ソナタ Op.14

  ラケル・マガリィヤンス(Fl) サーニャ・ビジャーク(P)
 録音:時期未判明、クセナキス公会堂、ヴィル・ド・スタン。ブラジル出身、フランスを拠点に活躍するアラン・マリオン門下の女流フルート奏者ラケル・マガリィヤンス。アルバム・タイトルは「パッチワーク」。独奏者マガリィヤンスによれば、20世紀東欧作曲家によるフルートとピアノのためのソナタを集め、その温かく色彩豊かな生地の模様のモデルを示しているとのこと。ムチンスキはポーランド系ながらアメリカ人ではあるが、フルート奏者必修の名作ソナタをはじめ、難曲4篇を余裕のテクニックと明るい音楽性で再現。フォル・ジュルネ音楽祭でもおなじみのビジャーク姉妹の妹サーニャがピアノ・パートを担当。プロコフィエフのソナタはピアノ・パートが単なる伴奏でなくフルートと対等に渡り合う作品だけに、彼女の演奏が光る。
ヨーロッパ 1920
 レスピーギ:ヴァイオリン・ソナタ ロ短調 (1917)
 ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ(1914-22)
 リャトシンスキー:ヴァイオリン・ソナタ Op.19 (1926)
 ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 (1923-27)
  ガブリエル・チャリク(Vn) ダーニャ・チャリク(P)
 録音:2016年1月2日-3日、サル・コロンヌ、パリ。 1920年代のヨーロッパは、まさに芸術の転換期だった。ベル・エポックのパリ、ワイマール文化のドイツ、革命のロシアなど爛熟した19世紀文化が先鋭的な20世紀文化へ移る狭間のヴァイオリン・ソナタを4篇収録。珍品はウクライナの作曲家リャトシンスキー。スクリャービンの影響濃いアヴァンギャルドな作風が興味津々。またバルトークを先取りしたような民謡処理のヤナーチャク、簡潔でブルースの手法も用いたラヴェルまで多種多彩。ロシアの血を引くフランスの音楽家兄弟ガブリエル&ダーニャ・チャリクが新鮮な感性を示している。ノリはいいけど超難曲揃い。マガリィヤンスの明るい音色が光るアルバム。
ハインリヒ・イザーク(1450頃-1517):
 6声のミサ曲「おお、いと聡明なる乙女」/めでたし、聖なる産みの母(入祭唱 定旋律)/
 祝福され、尊ばれし聖母マリア(昇階唱 定旋律)/ハレルヤ、御身が生まれてより(定旋律)/
 エサイの枝は芽を出し(アレルヤ賛歌)/セクエンツィア(定旋律)/アヴェ・マリア(奉献唱 定旋律)/
 序誦(定旋律)/祝せられたる御胎(聖体拝領唱 定旋律と4声のポリフォニー)

  ドミニク・ヴェラール(T)指揮アンサンブル・ジル・バンショワ
 録音:2015年9月6日-10日。ハインリヒ・イザークはルネサンス盛期のフランドル楽派の作曲家で、ジョスカン・デ・プレと同世代。バッハの「マタイ受難曲」や「ヨハネ受難曲」のコラールにも使われている「インスブルックよ、さようなら」。今ではこの一曲だけがイザークの最も有名な旋律として知られているが、当時はジョスカン・デ・プレと同様に重要な作曲家の一人としてみなされていた。1484年頃インスブルックの宮廷作曲家として仕え、その後すぐにロレンツォ・デ・メディチの招きによりメディチ家の宮廷音楽家となり、オルガン奏者、宮廷楽長ならびにロレンツォの子供たちの家庭教師を務めた。メディチ家がフィレンツェから追放されたあとは、神聖ローマ帝国皇帝マクシミリアン1世に仕官し、ヨーロッパ諸国、ドイツ各地を歴訪。当時のドイツ作曲界に多大な影響を及ぼしたと言われている。ここに収録されている楽曲は、メディチ家出身の教皇レオ10世のフィレンツェ訪問に合わせて書かれたものと考えられている。「6声のミサ曲」は循環ミサ曲の基本的構成、模倣の手法、巧妙な処方で書かれている。また「聖母祭のため定旋律」は、聖母マリアの交唱の一つを定旋律としているが、熟達した作曲技法の数々が凝縮されている。演奏は、アンサンブル・ジル・バンショワ。1978年にスイスのバーゼル音楽院の古楽専門の研究所「スコラ・カントルム・バジリエンシス」でドミニク・ヴェラールにより設立された。日本人の古楽ソプラノ佐藤裕希恵もメンバーとして参加している。
EVCD-022
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(2CD)
F=F.ギィ〜ブラームス:ピアノ・ソナタ全集
 〔第2番 嬰ヘ短調 Op.2 /第1番 ハ長調 Op.1 /第3番 ヘ短調 Op.5 〕
 フランソワ=フレデリク・ギィ(P)
 録音 :2016年1月、アルセナル(文化センター)、メス、フランス。使用楽器:ヤマハ、コンサート・グランド CFX 。年々音楽的深みが増しているフランスのピアニスト、フランソワ=フレデリック・ギィ。ギィは近年ベートーヴェンのピアノ・ソナタ、ピアノ協奏曲とこれまで積極的に録音に取り組んでおり、年月を経るたび深まっていく音楽性、表現力、そして圧倒的な集中力を備えている。ブラームスは彼にとって思い入れのある作曲家のひとり。20年ほど前にギィはブラームスのソナタを録音しており、今まさに円熟の時期を迎えたギィが聴かせるブラームスに期待。
NOTTURNO
 クリストファロ・カレザーナ(1640頃-1709):エレミア哀歌 聖金曜日の第1朗読
 ガエターノ・ヴェネツィアーノ(1665-1716):エレミア哀歌 聖金曜日第一夜の第3朗読
 アレッサンドロ・スカルラッティ(1660-1725):
  オラトリオ「追放されたハガルとイシマエル」シンフォニア/シンフォニア・ア・クワトロ・センツァ・チェンバロ/
  オラトリオ「聖フィリッポ・ネーリ」シンフォニア/エレミア哀歌 主の聖餐の木曜日の第1朗読

 レスカドロン・ヴォラン・ドゥ・ラ・レーヌ
 録音:2015年7月。17-18世紀にかけてのナポリは、音楽の急進的な首都だった。ヨーロッパ大陸内で最多の人口を誇る都市の1つであったナポリは、音楽や音楽家が集まる場所として発展し、劇場や教会、宮殿や道にも音楽が溢れていたという。また信仰に篤い都市であったナポリでは数多くの宗教典礼が行われ、そこには当然多くの宗教音楽が生まれた。このCDにはそんな当時のナポリで活躍した作曲家カレザーナ、ヴェネツィアーノ、A/スカルラッティの、復活祭に先立つ3日間に演奏される「エレミア哀歌」と、A.スカルラッティの器楽曲が収録されている。当時のナポリでは、本来は懺悔の精神のもと荘厳な雰囲気の中で行われる宗教儀式も一種の豪華絢爛なショー、エンターテーメントとしての面を持ち、華やかに行われていたとのこと。このCDにおさめられている曲の数々も、宗教的なテキストを歌いながらもどこか世俗的なきらびやかさを感じさせる。演奏を手掛ける「レスカドロン・ヴォラン・ドゥ・ラ・レーヌ」のグループ名は、フランス語で「女王の飛行隊」という意味。カトリーヌ・ド・メディチの元で、各国の宮廷との人間関係を円滑にする役割を負った女官を指すという。
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(2CD)
明暗〜シリル・ギヨタン〔全曲、2種の楽器による2種の演奏を収録〕
 モーツァルト:きらきら星変奏曲 ハ長調 K.265 (*/#) /幻想曲 ハ短調 K.475 (*/#)
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調「月光」 Op.27 No.2 (*/+)
 シューマン:幻想曲 ハ長調 Op.17 (*/+) / ショパン:夜想曲第20番 嬰ハ短調(*/**)
  シリル・ギヨタン(P)
 録音:2015年10月16日-19日、バイロイト(*) /2015年7月12日-19日、ジュリナック、フランス(*以外) 。 使用楽器:シュタイングレーバー&ゼーネ E272 (*) /カルロ・デ・メリオ(#) /エラール(+) /プレイエル(**) 。 1980年フランス出身のピアニスト、シリル・ギヨタン。「 HELLDUNKEL / CLAIR OBSCUR (明暗)」と題された当アルバムは、同一曲を異なるピアノで演奏した2枚組。1枚目は、1852年バイロイトで創業されたピアノ・メーカー、「シュタイングレーバー&ゼーネ」のコンサート・グランドE272 を使って収録。ワーグナーやリスト、そして最近ではバレンボイムも愛用しているピアノ・メーカーで、重厚な音色が魅力と言われている。2枚目は、カルロ・デ・メリオ、エラール、プレイエルの3つの楽器を使用。カルロ・デ・メリオは、19世紀のイタリア、ナポリで最も技術とデザイン性のあるピアノ・メーカーとして、当時は楽器メーカーに贈られる賞も何度か受賞している。機能はフランスのエラールやプレイエルをモデルに製造されていた。そして、その積極的な改良により音量の増幅や表現の幅を広げベートーヴェンの音楽をも満足させたエラールとショパンに愛された繊細なタッチと伸びやかな音を持つプレイエル。時代とともに改良され、作曲家や奏者の音楽の幅を拡大していったピアノの変遷を感じることができる。
エウリュトスの庭で〜マラン・マレ
 歌劇「アルシード」(クラヴサンのための編曲)(1693) /
 第2曲集 (1701) 組曲 ロ短調〔プレリュード/小幻想曲/アルマンド/クーラント/
                サラバンド/ジーグ/リュリ氏のためのトンボー〕
  マリー・ファン・ライン(Cemb)
 録音:2015年8月16日-18日、ノール=パ・ド・カレー、フランス。使用楽器:作者不祥、1679年製。1990年生まれのクラヴサン奏者マリー・ファン・ライン初のソロ・アルバムは、太陽王ルイ14世の宮廷ヴィオール奏者として仕えたマラン・マレの1693年に発表された最初のオペラ「アルシード」のクラヴサン編曲版。マレのオペラはいずれも悲劇で、このオペラ「アルシード」もギリシャ神話の英雄アルシード(ヘラクレス)を題材としたギリシャ悲劇。リュリの息子ルイが台本を書き、音楽も共作している。ルイ14世期の宮廷オーケストラの華やかな音楽をクラヴサンで色彩豊かに演奏。アルバムの最後には、リュリ氏のためのトンボーなどが収録された第2曲 集が収録されている。
ドビュッシー弦楽四重奏団〜ショスタコーヴィチ
 エレジー/弦楽四重奏曲〔第11番 ヘ短調 Op.122 /第8番 ハ短調 Op.110 /第5番 変ロ長調 Op.92 〕
 ドビュッシーSQ
 録音:2015年9月。1990年に結成されたドビュッシー弦楽四重奏団は、ショスタコーヴィチの演奏のスペシャリストとして活動を続けている。 Arion レーベルからショスタコーヴィチの全集をリリースしているが、2015年録音の登場。エネルギーと高い集中力、そして明晰な演奏で聴かせる。
Novö Piano II - Maxence Cyrin
 Clubbed to Death (Rob D) / Le courage des oiseaux (Dominique A) / Jump (Van Halen) /
 If Only Tonight We Could Sleep (The Cure) / Walking in the Rain feat. Miss Kittin (Grace Jones) /
 Lovely Head (Goldfrapp) / Black Hole Sun (Soundgarden) / Hyperballad (Björk) /
 Jesus Blood Never Failed Me Yet (Gavin Bryars) / Eyes Without a Face feat. Frantic (Billy Idol)

 マクサンス・シラン(P)
 フランスの若手ピアニスト、マクサンス・シラン。幼少期はクラシック音楽をベースとした教育を受け、20代の頃にダンス・ミュージックと出会い傾倒。現在はダンス・ミュージックとクラシック音楽を融合した新しいジャンルを確立。ロックやエレクトロ・シーンのヒット曲を新アプローチできかせた「Novö Piano」を発表、本作は第2弾となる。ヴァン・ヘイレン、ビリー・アイドル、ビョーク、ザ・キュアー、グレイス・ジョーンズ、ゴールドフラップらの音楽を取り上げている。
Marie Ythier - Le Geste Augmenté For Cello & Electronics
 アリレザ・ファルハング:ザミャート(2015) / アントニオ・フアン・マルコス:エル・アフィラドール(2013)
 オレリアン・マエストラッチ: Je t'attendrai la ou je sais que tu ne seras pas
                 (et m'effondrai de ne pas te voir venir)(2012)
 ヴィットリオ・モンタルティ:マッキーナ・クルデーレ(2012)  / ヌリア・ヒメネス= コマス:言葉の誕生 (2015)
 ジャン=フランソワ・デュッシェ:ナラダ(2013)

 マリー・イティエ(Vc/エレクトロニクス)
 録音:2015年4月、パリ。現代の作曲家6人によるチェロとエレクトロニクスのための作品集。フランスの若手チェロ奏者マリー・イティエが、新たなる音響世界を探求。マリー・イティエ:同時代の作曲家の作品を積極的に初演している注目の若手チェリスト。パリとリヨンの音楽院で学び、メシアン音楽祭、ルツェルン音楽祭、クフモ音楽祭など権威ある音楽祭にゲストとして出演。フランス国内はもちろん、イギリス、ドイツ、イタリアのアンサンブルと共演ピエール・ブーレーズ、ペーテル・チャバなど著名な指揮者のもとでソリストとして演奏。2015年にはフランシス&ミカ・サラベール財団賞を受賞している。
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(2CD)
ベートーヴェンチェロとピアノのための作品全集
 ヘンデル「ユダ・マカベア」の「見よ勇者は帰る」の主題による12の変奏曲 ト長調 WoO.45 /
 モーツァルト「魔笛」の「恋を知る男たちは」の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 WoO.46 /
 モーツァルト「魔笛」の「娘か女か」の主題による12の変奏曲 ヘ長調 Op.66 /
 チェロ・ソナタ〔第1番 ヘ長調 Op.5 No.1 /第2番 ト短調 Op.5 No.2 /第3番 イ長調 Op.69 /
         第4番 ハ長調 Op.102 No.1 /第5番 ニ長調 Op.102 No.2 〕

 グザヴィエ・フィリップス(Vc|使用楽器:マッテオ・ゴフリラー、1710年製)
 フランソワ・フレデリック・ギィ(P)
 録音:2015年1月、アルセナル、メス。1971年パリ出身のチェロ奏者グザヴィエ・フィリップスと卓越した技巧と力強いタッチをもつピアニスト、フランソワ・フレデリック・ギィによるベートーヴェンのチェロとピアノのための作品全集。ギィはnaïveレーベルで、アンヌ・ガスティネルとチェロ・ソナタを録音。さらにピアノ・ソナタ、ピアノ協奏曲とこれまで積極的にベートーヴェンの作品の録音に取り組んでおり、年月を経るたび深まっていく音楽性、表現力、そして圧倒的な集中力をみせている。グザヴィエ・フィリップスは、中堅実力派チェロ奏者としてフランスを中心に活躍し、往年の名手のような端正で艶やかな美音が魅力。フィリップスが使用する銘器1710年製のマッテオ・ゴフリラーの美しい響きと豊かなニュアンスが、一段上の音楽を表現する一助となっている。ギィの情感豊かな演奏と見事な構築力、フィリップスの瞑想的なチェロがベートーヴェンの孤高音楽を一層充実させている。
エチオピアのメロディー
 Wollo /アビシニアのフォリア/ Ambasale /オラツィオ・ミキ・デッラルパ: Non Chinate /
 Goragué/ Derbabba /タランテラ/ Gonder(アルファベット表記のタイトルはエチオピアの伝統音楽)

  ジャン=クリストフ・フリッシュ指揮 XVIII-21・ル・バロック・ノマド
 録音:2013年2月、ライヴ。オルガンがリスボンを出てアビシニア(現エチオピア)の中心地に船とラクダによって運ばれたこと、あるいはナイルの源近くにはカトリックの教会が今なお建っていること、あるいは17世紀のアムハラ音楽(エチオピアの言語)が17世紀の論文で扱われていることなどを想像することができるだろうか? これらはすべて事実。エチオピアに古より根付くキリスト文化と、エチオピアの聖なる儀式に欠かせないダンスを融合させたのがこの1枚。20年以上前に結成されたグループ、XVIII-21・ル・バロック・ノマドは、ヨーロッパの伝統と他の国々の音楽の共通点を見つけ、聴衆に提示する音楽活動を展開している。キリスト文化とエチオピアの意外なつながりに驚く1枚。
ボリス・ティシチェンコ(1939-2010):ヴァイオリン作品全集
 幻想曲 Op.118 (1994) /無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 Op.5 (1957) /
 ロンド Op.2 (1957) /カプリッチョ Op.31 (1965) /
 古風な様式による2つの舞曲 Op.62b (1975) /
 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 Op.63 (1975)
  ガブリエル・チャリク(Vn) ダーニャ・チャリク(P)
 録音:2015年4月、サル・コロンヌ、パリ。近年、ショスタコーヴィチの愛弟子たちの作品が、ロシア以外の地域から再評価されている。ティシチェンコもリリースが急増するひとり。彼の協奏曲を除くヴァイオリン作品を集めた待望のアルバムが世界初登場。「ロンド」と無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番は彼が18歳、まだショスタコーヴィチと出会う前の作品。どちらもプロコフィエフの影響が濃厚。「カプリッチョ」は1966年の第3回チャイコフスキー国際コンクール、ヴァイオリン部門の課題曲として作曲された。これもプロコフィエフ調アレグロによるヴィルトゥオーゾ的作品。「古風な様式による2つの舞曲」はジャン・アヌイ原作の劇「ひばり」のために作ったものの編曲。ジャンヌ・ダルク裁判をテーマとしているが、第2曲ではタンバリンの音がにぎやかに鳴る。ソ連崩壊後の1994年に、アメリカで活躍する出身の女流ヴァイオリニスト、ニーナ・ベイリーナの委嘱で作曲された「幻想曲も充実作。ロシア民謡やロシア・ジャズの引用もみられ、典型的な旧ソ連音楽に嬉しくなる。演奏はガブリエル&ダーニャ・チャリク兄弟。ロシアの血をひくフランスの演奏家で、クールかつていねいな演奏で作品を蘇らせている。
ブラームス&シューマン:チェロとピアノのための作品集
 ブラームス:チェロ・ソナタ〔第1番 ホ短調 Op.38 /第2番 ヘ長調 Op.99 〕
 シューマン:幻想小曲集 Op.73
  ブリュノ・フィリップ(Vc) タンギ・ド・ヴィリアンクール(P)
 録音:2014年9月26日-28日。チェロのブリュノ・フィリップは1993年フランス南部のペルピニャン生まれ。パリでラファエル・ピドゥに師事、その後ゲリンガス、イッサーリス、ゲイリー・ホフマン、ウィスペルウェイやハーゲンらに師事して研鑽を積んだ逸材。2011年にアンドレ・ナヴァラ国際コンクールでグラン・プリとベスト・リサイタル賞を受賞。2014年にはミュンヘン国際コンクールで第3番に入賞した。ピアノのタンギ・ド・ヴィリアンクールはパリ音楽院でロジェ・ムラロ、ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ、クレール・デゼールらに師事した。若き逸材によるみずみずしいブラームスとシューマン。
ピエール・バルトロメー(1937-):歌劇「旅路のエディプス王」(4幕)(2003)
 ジョゼ・ヴァン・ダム(エディプス王) ヴァレンティナ・ヴァレント(アンティゴネ)他
 ダニエーレ・カッレガーリ指揮モネ劇場o. & cho.
 録音:2003年3月。台本:アンリ・ボショ。ピエール・バルトロメーはブリュッセル生まれ。ヴィルヘルム・ケンプのベートーヴェン・トレーニング・プログラムで学び、ピアニストとしても活躍した。1977年から99年までリエージュpo.の芸術監督を務め、ヨーロッパ、アメリカ、日本で数多くの初演およびツアーを行った。バルトロメーの宗教作品はサバールによって初演され、その折にこの「 Œdipe sur la route 」のプロジェクトが生まれたという。劇場がバルトロメーに委嘱したのが1999年、そして2003年3月にモネ劇場で初演された。シンフォニーo.、合唱、12人の独唱者、2名の黙役(訳者)、そして何名かのエキストラを要する大規模な作品。ソナタ形式を思わせる第1幕、ドラマティックなスケルツォのような第2幕、緩徐楽章の第3幕、そして終幕の第4幕となる。エディプス王の悲劇をもとにしたボショの台本に、全体的に不安感をあおるような雰囲気の音づくりがなされている。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ〔第13番 変ホ長調 Op.27 No.1 /第31番 変イ長調 Op.110〕
J.S.バッハ:幻想曲とフーガ イ短調 BWV904 /幻想曲とフーガ ハ短調 BWV906
 オドレイ・ヴィグルー(P)
 録音:2014年2月17日-19日、アンセルメ・スタジオ、ジュネーヴ。オドレイ・ヴィグルーは1981年エクサンプロヴァンス出身の女流ピアニスト。生地とニースの音楽院で学んだ後、ジュネーヴ音楽院、パリ音楽院でジャック・ルヴィエ、クリスティアン・イヴァルディ、イタマル・ゴランに師事、最優秀で卒業した。清潔なタッチ、端正な演奏スタイルでフランス・ピアニズムの魅力を満喫させる。デビュー・アルバムは、選曲と配置も考え抜かれている。バッハの未完のフーガBWV906の最後の音とベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番の最初の音が同じ 変イ長調主和音であることから、精神的に音楽が受け継がれたかのように進み、感心させられる。テクニックも高度で、バッハのフーガも極めつけの美しさ。要注目の若手。
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(2CD)
ドミニク・ヴェラール:聖歌集
 レクイエム(2008-12) /嘆き(聖木曜日のルソン・ド・テネブル)(2006) /ミゼレーレ(詩篇 50)(2013)/
 至福(2010) /テノールとバス・ヴィオールのための雅歌I (2005-6) /3つのヴィオールのための幻想曲(2013) /
 ソプラノと3つのヴィオールのための雅歌 II (2004-12) /マニフィカト(2012)

 ドミニク・ヴェラール指揮アンサンブル・ジル・バンショワ
 録音:2012年9月、モン・サンジャン教会、2013年10月、バシリク・ド・ヴェズレー。中世・ルネサンス声楽音楽の名団体アンサンブル・ジル・バンショワ。彼らの新譜は何と21世紀に書かれた作品集。とは言ってもリーダーのドミニク・ヴェラールの手による宗教曲集。ヴェラール自身、12-3世紀のノートルダム楽派ないしグルジアのポリフォニーをモデルにしていると述べているが、ほとんどアカペラの少人数ヴォーカル・アンサンブルで大胆な不協和音響を作り出している。人間の声の技巧と可能性にびっくりさせられ、録音の良さもオーディオ・チェックに最適。気持ち悪くなる程に人間の声を堪能出来る。
マクサンス・シラン〜 nocturnes
 A tale from the past / Arc de triomphe / Dream over the bridge / Velours poussière / China club /
 La Bellevilloise / In the grey of the sky / The frozen palace / Paris spleen / It was a very good night

 マクサンス・シラン(作曲/P)
 マクサンス・シランはクラシック・ピアノを学んだあと、テクノの名曲をピアノのみでカヴァー、さらに、シャネルなどのブランドのイヴェントでもピアノやチェンバロを演奏、マルチに活躍するピアニスト=コンポーザー。このnocturnesは、シラン自らが作曲した作品集。ショパンやサティを思わせる瞬間もある、非常に聴きやすい1枚。
スクリャービン:マズルカ全集&練習曲集
 マズルカ全曲〔10のマズルカ Op.3 /9つのマズルカ Op.25 /2つのマズルカ Op.40 〕/
 練習曲〔変ロ短調 Op.8 No.11 /嬰ニ短調 Op.8 No.12 〕(#)
  フランソワ・シャプラン(P〔使用楽器: Yamaha CF III S 〕)
 録音:1997年9月、ボン・セクール教会、パリ(#以外?) 。原盤・前出: MANDALA, MAN-4919 (#以外) 〔当店未案内、廃盤〕。フランソワ・シャプランはパリ音楽院でヤンコフ、ロバン、ペヌティエに師事。ショパンやドビュッシーのディスクをリリースし、来日公演も行っているので日本にもファンの多い個性派。彼の演奏はまず何よりピアノの音色の美しさ、特殊さが特徴。弱音主体で、幻のようにキラキラした不可思議な世界に魅了される。今回は響きが重要なスクリャービンなのでまさにピッタリ。それも前奏曲やソナタでなく、マズルカ全集というのも独特。スクリャービンは初期から中期にかけて21曲のマズルカを作曲しているが、いずれも宝石のような小品。ひそやかに奏でる詩情は比類なく、晩秋の宵のBGMに最適。最後に2篇の練習曲が収録されているが、ホロヴィッツやベルマンの愛奏した劇的な 嬰ニ短調練習曲でさえ、決して大きな音を出さず、それでいてすさまじい効果をあげている。要注目の個性派。
Balnéaire 〔海水浴場〕〜ローラン・ルフランソワ(1974-):室内楽曲集
 フルート、クラリネット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとピアノのための六重奏曲(*) /
 マリンバとクラリネットのためのパドゥク・ファンタスティクス (#) /
 弦楽四重奏のためのトッカータ・セスタ〜フレスコバルディ作品の編曲(+) /
 オーボエ、クラリネットとファゴットのための「 Approaching a City 」(**) /
 弦楽四重奏のための Erinnerung (##) /4手ピアノのための「新海水浴場」(++)

  ポール・メイエ(Cl) パリジイSQ マガリ・モニエ(Fl)
  フランソワ・メイエ(Ob) ジルベール・オーダン(Fg) 出田りあ(マリンバ)
  シリル・ギュロットン、ニマ・サルケシク(P)
 録音:2014年1月、4月-6月、スタジオ106、ラジオ・フランス。エコール・ノルマル音楽院を卒業した、ルフランソワ作品集。ポール・メイエら豪華演奏陣も魅力の1枚。(*)はルフランソワの Op.1 にあたる。単一楽章で、リズムのくっきりとしたABA(急緩急)形式の作品。(#)は出田りあとポール・メイエのために書かれ、バロック作品を思わせるスタイルながらも、非常にヴィルトゥオーゾ的な作品。(+)はフレスコバルディのオルガン作品を弦楽四重奏版に編曲した物。2006年ブローニュ市若手作曲家コンクールで聴衆賞を受賞した(**)は、20世紀アメリカの画家、ホッパーの絵画を思わせる。モーツァルトの交響曲第40番第1楽章のモティーフが亡霊のように聴こえる(##)はモディリアーニ弦楽四重奏団らによっても演奏されたことがある。(++)はモネの絵画を思わせる印象派的作品。ルフランソワの多彩な作品と、メイエら豪華演奏陣の力演も魅力の1枚。
フォーレ:ピアノ四重奏曲第1番 Op.15
メル・ボニ(1858-1937):ピアノ四重奏曲第1番 Op.69
 ジャルディーニ四重奏団[ダヴィド・ヴィオリ(P) パスカル・モンロン(Vn)
               カロリーヌ・ドナン(Va) ポリーヌ・ブエ(Vc)]
 録音:2013年12月。 フランスのジャルディーニ四重奏団による、フォーレと女性作曲家メル・ボニの代表作の一つであるピアノ四重奏曲第1番をおさめた1枚。勢いのあるさわやかなアンサンブル。
シューベルト
 ピアノ五重奏曲 イ長調 Op.114, D 667「ます」/
 シルヴィアに(チェロとピアノ版)D 891 /
 糸を紡ぐグレートヒェンD118(ヴィオラとピアノ版)/
 リュートに寄せて D 905 /
 ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ長調 D 384
  (ヤーノシュ・シュタルケル編曲/チェロ版)
ヨッシフ・イヴァノフ(Vn)
ベアトリス・ムトレ(Va)
オフェリー・ガイヤール(Vc)
ステファヌ・ロジェロ(Cb)
デルフィヌ・バルダン(P)
 録音:2011年9月16日-19日。人気女性チェロ奏者、ガイヤールも参加しての「ます」の登場。ヴァイオリンはエリザベート国際コンクールで第2位受賞のイヴァノフ。ヴィオラは、ズッカーマンにヴィオラを師事し、その後マーラー・チェンバーオーケストラでソロ・ヴィオラ奏者も務めたムトレが素晴らしい内声を響かせる。コントラバスは、エベーヌ弦楽四重奏団、モディリアーニ四重奏団、また、クインシー・ジョーンズやファジル・サイ、ミシェル・ルグランなどジャンルを問わない共演歴を持つロジェロ、と、非常に一人ひとりの質の高い奏者が集った、稀有なアンサンブル。全体に非常にらくらくとした演奏で、ちょっとしたアクセントのつけかたも、演奏者たちが楽しんでいることがうかがわれるような幸せな演奏。ヴァイオリン・ソナタ第1番をシュタルケルがチェロとピアノ版に編曲した作品でも、ガイヤールの親しみやすく気品あふれる奏法が光る。ピアノのデルフィヌ・バルダンは、エマールにも師事し、受賞歴多数、室内楽の分野でひっぱりだこの存在で、フォーレのバルカローレ集(アルファ・レーベル)でも高い評価を得たピアニスト。
ピエトロ・アントニオ・ロカテッリ(1695-1764):24のカプリス(カプリッチョ)
 〔第1番 ニ長調/第2番 ニ長調/第3番 ハ短調/第4番 ハ短調/第5番 へ長調/第6番 ヘ長調/第7番 ホ長調/第8番 ホ長調/
 第9番 ハ長調/第10番 ハ長調/第11番 ト短調/第12番 ト短調/第13番 変ロ長調/第14番 変ロ長調/第15番 ホ短調/第16番 ホ短調/
 第17番 ト長調/第18番 ト長調/第19番 ヘ長調/第20番 ヘ長調/第21番 イ長調/第22番 イ長調/第23番 ニ長調/第24番 ニ長調〕

 ガブリエル・チャリク(Vn)
 録音:2013年3月-5月、フランス。全曲一切カットなしの録音は世界初。使用楽器: Philippe Miteran、2007年製作、モダーン仕様/弓: Konstantin Cheptitski、 2011年製作。「18世紀のパガニーニ」、ロカテッリによる難物「24のカプリス」。バロック後期の作曲家ロカテッリは、なによりもヴァイオリンのヴィルトゥオーゾであった。その腕前はコレッリらを凌いだと言われており、「18世紀のパガニーニ」とも呼ばれる。人々がロカテッリをそう呼ぶきっかけとなった作品のひとつが「ヴァイオリン技法」と題された協奏曲集。これは正確には「ヴァイオリン協奏曲12曲、およびその独奏カデンツァとしての無伴奏のヴァイオリンのためのカプリッチョ24曲」と題された曲集。12の協奏曲に対して24曲のカデンツァ(カプリッチョ)が存在するのは、それぞれの協奏曲が3楽章(急‐緩‐急)から成り、その第1、3楽章に対してカデンツァ(カプリッチョ)が書かれたから。このカプリッチョ24曲は、「謎のカプリッチョ(カプリース)」とも呼ばれてきた難物。現代でも演奏不可能に近い超絶技巧が含まれている上、当時の楽器の指板の長さでは不可能と思われる音域が含まれているなど、いくつかの疑問点があるのも事実。1733年当時に出版された楽譜を、アルバート・ダニングが監修した校訂版がショット社より2002年に出版されている。これまでにいくつか録音も存在しているが、今回のチャリクの録音は、忠実に楽譜を再現、これまで行われてきたカットなどを一切せずに全曲録音した、という意味で世界初録音と言える。曲集をしめくくる最後のカデンツァも、ロカテッリの指示どおり、演奏者自身(チャリク)の創造による物。パガニーニも舌を巻きそうな超絶技巧をたっぷりと堪能できる注目の1枚。ガブリエル・チャリクは1989年にフランス=ロシア系の家系に生まれた。5歳でピアノ、9歳でヴァイオリンを始め、フランス・ヴェルサイユ地方音楽院でアレクサンドル・ブルシロフスキに学んだ。各地のコンクールで優勝をかざっている気鋭のヴァイオリン奏者。鮮烈な音と研ぎ澄まされた音程感覚が魅力の注目株。
シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 ニ短調 D810「死と乙女」
ヤナーチェク:弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」
 ドビュッシーSQ [クリストフ・コレット、マーク・ヴィエイユフォン(Vn)
          ヴァンサン・デュレック(Va) ファブリス・ビアン(Vc)]
 録音:2012年9月。ドビュッシー弦楽四重奏団は、1990年、リヨン音楽院の学生たちによって結成された。エヴィアン国際弦楽四重奏コンクールで優勝以来、世界各地で公演を行っており、これまでに来日もしている。名を冠しているドビュッシーやラヴェル、フォーレ作品の演奏はもちろん、ルクー、ラロ、ミヨー、ジョゼフ=エルマン・ボナルの作品にも力を入れている。録音も多く、モーツァルトのレクイエムの弦楽四重奏版の録音でも話題となった。そんな彼らによるシューベルトの「死と乙女」は、非常にやわらかな仕上がり。ヤナーチェクの「クロイツェル・ソナタ」も激情におぼれず品格ある演奏。やわらかみのあるアンサンブルが魅力。


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