RAMÉE | ||
おお、うるわしき愛する人 〜17世紀イタリアの女性作曲家たち カテリーナ・アレッサンドラ(1590頃-1618以降): モテット「主よ、私を満たしてください」/ グレゴリオ聖歌による3つの変奏曲/ おお、うるわしき最愛のイエス ヴィットリア・アレオーティ(1575頃-1620以降): 今や美しき夜明けが/ わが心、なぜにひたすら涙するのか/ この燃えさかる唇が フランチェスカ・カッチーニ(1586-1641以降): もっとも楽しげな、もっとも美しき人に/ ほっといて、一人にしておいて バルバラ・ストロッツィ(1618-64以降): 偽り多き恋人/ねむたげな愛神/ どうしてそんなに憂鬱そうなの/ 恋するヘラクレイトス イザベッラ・レオナルダ(1620-1704): 第12ソナタ/もうかねてから、主イエスよ |
ラ・ヴィラネッラ・バーゼル [ハイケ・ピヒラー=トローシッツ(S) クラウディア・ ナウハイム(リコーダー) イレーヌ・クライン(ガンバ) メヒティルト・ヴィンター (ヴァージナル/Org) ペトラ・ブルマン(キタローネ)] | |
静謐なアレオーティのマドリガーレからバロック的愉悦に満ちたストロッツィ、レオナルダまで、至高の音楽性を誇ったイタリア・バロックの才媛たち 近代も17世紀ともなると、コレッリを擁護したというスウェーデンの亡命女王クリスティーナや映画にもなった女性画家アルテミジア・ジェンティレスキのように、女性たちがヨーロッパの文化世界に「発信者」として華々しい活躍をみせるようになるわけで、そこで音楽の国イタリアでは作曲方面にも才能ある女性たちが才覚をあらわにしはじめてくる。有名なところでは「アマリリ」のカッチーニの娘フランチェスカ、古楽ファンにはすっかり名の通った天才バルバラ・ストロッツィ...最近ではOpus111/NAIVEにも同種のアルバムがあったが、ここで演奏にあたっているのはバーゼル・スコラ・カントゥルムに学んだドイツ語圏方面の女性奏者たちによるアンサンブル。 独特の香気を放ってたおやかに響くピヒラー=トローシッツの歌声の素晴らしさもさることながら、リコーダーを担当するナウハイムの絶妙な歌いまわしと美音、ストロッツィでの飛び跳ねるようなタッチがチャーミングなヴィンターのヴァージナル、適切なところで素晴らしい和声を響かせるブルマンのキタローネ、サポート役としての立場で見事な通奏低音を奏でるクラインのヴィオール...とき楽勢の腕前&アンサンブル力もなかなか。立てあいすぎず適度に主張しながらの合奏に、意見交換のうまいヨーロッパ女性たちらしさを見る人もいるかもしれない。 極端なフェミニズムに走らぬ、あくまで自然体の女性バロック。さりげないラインで素晴らしい音楽をさりげなく聴かせる姿勢に、このレーベル独特のセンスが感じられるのでは。 | ||
ヤーコプ・プレトリウス=シュルツ(1586-1651): オルガンのための作品集 第1旋法によるマニフィカト/プレアンブルム ニ短調/ 天上におはします我らが父/プレアンブルム ハ長調/ 第4旋法によるマニフィカト/ ドイツ語歌唱によるマニフィカト/ プレアンブルム ヘ長調/なべての人々より隔たりて |
レオン・ベルベン(Org) ブリッタ・シュヴァルツ(S) | |
使用楽器:タンゲルミュンデ(北独)、シュテファン教会のシェラー・オルガン 1624年製。 清廉なソプラノが、パイプの音色と教会堂にまざりあう。北ドイツ楽派の巨匠プレトリウス=シュルツの堂々たる傑作オルガン作品に、シュヴァルツの名唱が華を添える。 「テルプシコーレ舞曲集」のプレトリウスとはもちろん違う、17世紀前半にハンブルクで活躍していた北ドイツ・オルガン楽派の巨匠ヤーコプ・プレトリウス=シュルツの傑作を集めたアルバム。若い頃には20年ほど年長の巨匠スヴェーリンクに師事するためアムステルダムにも赴き、その後1651年に歿するまでハンブルクの聖ペテロ教会のオルガニストをつとめた。ここに収録された作品群には、スヴェーリンク流の簡素ながらに精緻な対位法を土台としつつ、華美にすぎない均整のとれたファンタジーを展開させてゆく彼の心地よい作風が如実に示されている。 オルガンを弾いているのは、ムジカ・アンティクヮ・ケルン、フライブルク・バロック・オーケストラ、アムステルダム・バロック・オーケストラなどで通奏低音を担当しているオランダの若き俊英レオン・ベルベン。レオンハルト、コープマン、ボブ・ファン・アスペレン...と、オランダ鍵盤界の王道をゆく師匠たちのもとで学んだだけあってか、慌てず騒がず、のたおやかな音運びのうちにじわじわと音楽の感動が滲んでくる感じに確固たる音楽性が感じられるのでは。またいくつかのトラックでは来日経験もある名花ブリッタ・シュヴァルツが、オルガンとよく合う芯の太い清らかな歌声でラテン語/ドイツ語の歌を添え、アルバムに変化をもたらしてくれているのも嬉しいところだ。 それにしてもこのアルバム、演奏者が的確に対置させながら組み合わせているオルガンのパイプそれぞれのサウンドを、それぞれの特徴そのままに非常にうまく録音していているのがまた実に心地よい。音楽自体が比較的簡素なつくりだけに、音そのものの美しさがはっきりと現れるし、音楽の微妙な変化もパイプ選択によってより鮮明に際立ってくる。こうしたあたりに、古楽奏者ライナー・アルントの深い音楽理解が反映されていると思うと、ますますRAMEEというレーベルが頼もしく思えてくるのではないだろうか。 | ||
ジャン=マリー・ルクレール(1697-1764): ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集 「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集 Op.9」より 「第10番 ヘ短調/第7番 ト長調/ 第5番 イ短調/第12番 ト長調] |
ルイス・ オタヴィオ・サントス(バロックVn) アレッサンドロ・サントーロ(Cemb) リカルド・ ロドリゲス・ミランダ(低音ヴィオール) | |
RAMÉEの素晴らしさを知るにはまずこの1作から。手練の名手サントスの鮮やかな演奏でいきなりDiapason d'Orを獲得した傑作ディスク。 まずは何といってもこの1枚を。美しすぎるアートワークもさることながら、冒頭トラックからいきなり期待感をあおるワン・ポイント録音のナチュラル・サウンド、そして音楽を聴きすすめるにつれてぐいぐいと聴き手をひきつけてゆく、ハイ・バロックの鮮やかな旋律美・和声の妙味、鮮烈なまでの弾き手の表現力、繊細な装飾音...どこをとっても、ユーザーを満足させずにはおかない充実度と完成度。耳の肥えたヨーロッパのファンたちはこのアルバムが登場したあたりからにわかにRAMEEに注目しはじめ、本盤そのものもDIAPASON金賞、Classicaのレビュー賞など批評家たちからも次々に目覚しい評価を勝ち得ている。RAMEEの素晴らしさを端的に知っていただくには、この一作はまさにうってつけだ。 プログラムはタルティーニやロカテッリの時代に活躍したフランスのヴァイオリニスト兼作曲家ルクレールの、もっとも充実したソナタ集ともいわれる作品9のヴァイオリン・ソナタ集から短調と長調の曲を2作ずつ。当時最新のイタリア音楽の旋律美に彩られた大胆な表現に、フランス・バロックの繊細さがブレンドされた堂々たる大作4編だ。 演奏は、長らくラ・プティット・バンドとリチェルカール・コンソートの主要メンバーを務めてきた“隠れ名バロック・ヴァイオリン奏者”ルイス・オタヴィオ・サントス。つい最近もAlphaのクープラン室内楽作品集(ALPHA-062)で、フランソワ・フェルナンデスらと絶妙のアンサンブルを聴かせてくれたばかりだが、今度は堂々、ソリストとして登場である。説得力あふれる楽譜の読み込みもさることながら、弱音の繊細さ、アレーグロの雄弁さ、カンタービレな楽節でのニュアンスの妙味…まさしくシギスヴァルト・クイケン門下らしい、技巧の追究に終わらぬ深い音楽洞察を感じさせる見事な弾きっぷり。ベルギー古楽界のあくなき奥の深さを印象づけられる。伴奏にあたっているサントーロの出所を踏まえたチェンバロ、ならびに時折はっとするほど美しい弦音を奏でるガンバのロドリゲス・ミランダらとのアンサンブルも実にうまい。 harmonia mundiやAlpha、PIERRE VERANYなどのハイ・クオリティ古楽アルバムに慣れたヘヴィ・ユーザーも納得まちがいなし、美麗ジャケットで一般ユーザーにもアピールしそうな、RAMEE最初の代表盤だ。 | ||
J.S.バッハ(1685-1750): フルートのためのソナタ全集 フルートと通奏低音のためのソナタ BWV1034/ フルートと通奏低音のためのソナタ BWV1035/ フルートとオブリガート鍵盤のための ソナタ BWV1032/ フルートとオブリガート鍵盤のための ソナタ BWV1030 |
ベネデク・チャログ(Fl−tr) ミクローシュ・シュパーニ (クラヴィコード/Fp) | |
鍵盤はチェンバロでなく「クラヴィコードとフォルテピアノ」。押しも押されぬハンガリーの2大名手が突如リリースした、きわめて内容の高いバッハ・ソナタ集。 Raumklangでミューテルらベルリン楽派のソナタを録音しているベネデク・チャログ&ミクローシュ・シュパーニのデュオ。トラヴェルソのチャログといえば、シュパーニやバラーシュ・マーテー、ペーテル・シュツらとともにハンガリー古楽の第2波を支える実力派奏者。HUNGAROTONに録音されたクヴァンツのソナタ集をはじめとする数々のアルバムでの名演をよくご記憶の古楽ファンも少なくないだろう。対するミクローシュ・シュパーニもハンガリー古楽の中心人物だが、クラシックCDの世界ではむしろBISに録音されたC.P.E.バッハの鍵盤作品全集などでよく知られた名前なのでは? 数少ない世界的なクラヴィコード奏者としても有名なシュパーニはここで、「作曲当時」よりも「作品伝播の過程」を重視するかのごとく、なんと鍵盤にクラヴィコードやフォルテピアノを使ってみせる。フォルテピアノには1740年代のジルバーマンを使用。トラヴェルソ愛好家としても知られたフリードリヒ大王が当の大バッハに試奏させたことで有名な最初期のピアノである。さながらバッハ一族の家庭音楽会か、あるいは18世紀中頃、巨匠の死を惜しむ追従者たちのあいだの演奏会か。そうした穏やかにして知的な空気を、自身音楽家でもあるレーベル主宰者アルントが絶妙のエンジニアリングで収めきっている(トラヴェルソとクラヴィコードのバランス感覚など、演奏の現場を知る人ならではのものではないか)。音符の上下、和声の変化にあわせて玄妙にも息を吹き分けるチャログの鮮やかな吹奏、楽器の扱いにくさを物ともしないシュパーニの繊細をきわめるタッチ。かつてSEON(現SONY)からブリュッヘン盤がリリースされた時の興奮をどこか想起させる、当代随一の名手ふたりによる入魂の1作。偽作系作品は抜きで、きちんと1CDに収まりきっているのも嬉しいところだ。 | ||
アントニオ・カルダーラ(1671-1736):独唱&器楽作品集 〜ダルシマー(プサルテリウム)の響きを添えて オラトリオ「セデチア」(1732) 〜アリア「ああ!民で溢れたかの都市も今や」 カンタータ「小さな嵐のすぐそばで」(1729) チェロ独奏(と通奏低音)のための シンフォニア(1700以降?) カンタータ「苦しむがいい、わが愛しきアルチーノ」(1715) チェロ独奏(と通奏低音)のためのソナタ(1700頃?) カンタータ「美しき顔をした星たち」(1710年代) オラトリオ「ジョゼッフォ、夢を解き明かす」(1726) 〜アリア「自由―いとしくも歓迎すべきものよ」 |
ユルゲン・バンホルツァー(CT) マルギット・ ユーベルラッカー(ダルシマー) ラ・ジョイア・アルモニカ (古楽アンサンブル) | |
露珠の転がるような、魔法の響き――ダルシマーの妙なる打音! 優美な旋律を描きあげる、枯葉の温もりを湛えたカウンターテナー。後期バロックの巨匠カルダーラが残した「意外なる傑作群」 独特のハンマーで弦を叩いて玄妙なる音を出す楽器ダルシマーが「古楽器」として使われ、心が洗われるような素晴らしいアルバムに仕上がった。昨今とみに録音数が増えている後期バロックの大作曲家カルダーラによる、初期から後期までのさまざまな作品を集めた一作。ダルシマーの美音、出どころを心得たバロック・チェロの縦横無尽なサウンド、そして「綺麗に乾いているのに艶がある」ニュアンスゆたかなカウンターテナー...いかんなき実力派たちが洗練された名作群と出会い、めくるめく世界が描き出されてゆく。 ダルシマー(サルテリオ、プサルテリウムとも)といえばリストの「ハンガリー狂詩曲」に使われているように、東欧の民俗音楽によく登場する楽器だが、もとは18世紀ドイツで、ジルバーマンのフォルテピアノにヒントを得て発案されたらしい。実際ダルシマーを使った18世紀の芸術音楽作品もあり録音もままあるのだが、現代楽器の合奏にフォルテピアノを組み込むような「珍品」扱いの従来録音とは違い、今回のアルバムはピリオド楽器アンサンブルでダルシマーと音楽がごく自然にマッチしている。それもそのはず、ダルシマー奏者は Alpha で大活躍中の撥弦楽器集団ラルペッジャータで長く活躍し、古楽シーンでの経験を十全に積んできたマルギット・ユーベルラッカーなのだ。自由闊達、他のパートを活かしつつ出所は鮮やかにキメる上手さには誰もがはっとするはず。 歌い手のバンホルツァーはバルタザール=ノイマンEns.やクレマンシック・コンソートなどで活躍してきた俊英で、独特の乾いた歌声はそれだけでもう「銘器」!ソロでみごとな音楽性を印象づけるチェロのゴリッツィ(これが滅法ウマい!)と共に、素晴らしい求心力で音楽をまとめあげてゆく。 昨今のヘンデル声楽名盤群が好きな方はもちろん、誰しも魅了されずにはおれない傑作アルバム。 | ||
ドイツ黎明期のチェンバロ音楽 〜J.ハスラー&H.L.ハスラー:作品集 ヤーコプ・ハスラー(1569-1621/22): 第4旋法によるトッカータ/リチェルカール/ 第1旋法によるリチェルカール/ 第9旋法によるファンタジア/ カンツォン/第7旋法によるフーガ ハンス・レオ・ハスラー(1564-1612): 「あるとき、私は散歩に出かけ」の旋律による31変奏 |
レオン・ベルベン(Cemb) | |
使用楽器:フランチェスコ・パタヴィーノ、1561年製。MAKの俊英ベルベン、玄妙なるサウンドを連綿と響かせる! 16世紀当時にフッガー家が所有していたオリジナル楽器の瑞々しい美音で蘇るは、貴重きわまる黎明期のチェンバロ音楽! たった1曲でベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲やドヴォルザークの第8交響曲と同じくらいの演奏時間になる後期ルネサンスのチェンバロ独奏曲をご存知だろうか。それは宗教改革の坩堝アウグスブルクで活躍した作曲家ハンス・レオ・ハスラーの「あるとき私は散歩に出かけ」による大変奏曲。「ルネサンスのハンマークラヴィーア・ソナタ」か「16世紀のハイドン変奏曲」か、といった堂々たる風情のこの異色作、かなり昔にMD+Gから手堅い演奏のものが1枚出ていたきり、活き活きとした新鮮さを感じさせる新録音など望むべくもなかったところ、ご覧のとおり気鋭レーベルRAMEEがすばらしい美麗アルバムのなかに収録してくれた。 収録曲目数からすれば一見、弟のヤーコプ・ハスラーの作品集のように見える本作、何しろ当該の変奏曲がたった1曲で40分以上にもわたる大作なため、実に総演奏時間の半分以上(!)がハンス・レオ・ハスラーの曲で占められているわけだ。鍵盤作品たった1曲で。 前作、“ミヒャエルではない”ヤーコプ・プレトリウスの素晴らしいオルガン作品集で古楽ファンを圧倒したベルベン(あのムジカ・アンティクヮ・ケルンの通奏低音を支える気鋭奏者だ)が、今度はチェンバロに向かって珍しいルネサンスのドイツ鍵盤作品を披露してくれる。英国でブルやギボンズらがヴァージナル作品を累々と書いていた頃、ドイツで活躍していたヤーコプ・ハスラーのチェンバロ曲は、トッカータやリチェルカールなど最新のイタリア音楽の形式を取り入れつつも、ベルベンのゆったりと古雅な演奏テンポと相俟ってどこかオルガン作品のような趣もある。そう、彼は決して弾き急がず、隅々まで味わうかのようにじっくりと美音を響かせてゆくのに、微妙なアゴーギグが効いているのか、なぜか非常に瑞々しく新しい音楽感性が迸るのだ。飽きないどころか、いつまでも浸っていたくなる。 鋭く煌びやかなこの美音、実はRAMEE随一の自然録音と、何より使用楽器に秘訣がある。なんと16世紀の貴重なオリジナル、しかも“ドイツのメディチ家”豪商フッガー家が当時所有していたという銘器なのだ。状態は非常によく、古い調律ならではの不協和音のねじれた味わいも文脈性を感じさせ説得力豊か。オリジナル楽器やチェンバロ製作に興味ある方はもちろん、全古楽ファン必聴の充実盤なのである。 | ||
ゲオルク・ムッファト(1653-1704): 「アルモニコ・トリブート」(和声の捧げ物) 〜合奏協奏曲風の室内ソナタ集(1682) |
ペーテル・ファン・ヘイヘン指揮 レ・ムファッティ | |
ピリオド楽器使用。オケの編成:[Vn;6/Va;2/Vc;2/Cb;1/Cemb;1/Org;1/G&テオルボ;1]。 アンサンブル415(HMV)やレッツボーア&AAA(Symphonia)の名盤で知られるムッファトの合奏曲集「アルモニコ・トリブート(和声の捧げ物)」の、あまりにもあざやかな秀演。この作品はザルツブルクで1682年に出版され、一説ではコレッリの合奏協奏曲の原型となったといわれる重要曲集で、均整のとれた構成のなか多彩なリズムの舞曲や長大な変奏曲が交錯する。 ギィ・ファン・ヴァースやフランク・テュンスらとともに新世代のベルギー古楽を牽引するファン・ヘイヘンが新世代奏者を集め結成したレ・ムファッティは、往年のECバロック管やベルリン古楽アカデミーの登場時を思わせる自発性あふれる鮮やかな音楽を聴かせてくれ、各パートの対比、鮮烈なアーティキュレーション、多彩な通奏低音・・・と魅力はつきない。エンジニアリングも秀逸、先行名盤群にも比肩する鮮烈な仕上がり。 | ||
アントン・エーベルル、 モーツァルトの後継者〜クラリネットを伴う室内楽作品集 アントン・エーベルル(1765-1807): クラリネット、チェロとピアノのための 三重奏曲 変ホ長調 Op.36/ クラリネットとピアノのためのソナタ 変ロ長調 Op.10-2/ ピアノ、クラリネット、2挺のヴィオラと チェロのための五重奏曲 ト短調Op.41(*) |
トリオ・ファン・ブリュッヘン= ファン・ヘンゲル=フェーンホフ [ニコル・ファン・ブリュッヘン(Cl) バス・ファン・ヘンゲル(Vc) アンネケ・フェーンホフ(Fp)] スティーヴン・フリーマン(Va;*) フラウケ・モーイ(Va;*) | |
ピリオド楽器使用。コンチェルト・ケルンの名盤で知られる夭逝の天才、エーベルルのひたすら豊かで大規模なソナタ系室内楽作品を3曲も収めた注目アルバム。19世紀初頭に人気作曲家として鳴らした晩期古典派の雄大な楽想を、瑞々しいピリオド楽器演奏で味わえる。 エーベルルは晩年のモーツァルトに師事した作曲家で、早くから熟達した作曲手腕をふるって当初は自作品が何作もモーツァルトの名で出版されたりしていたほど。そのまま芸術性をどんどん養いつづけ、1805年4月にベートーヴェンの「英雄」が初演されたコンサートでは、同時に演奏されたエーベルルの「変ホ長調交響曲」(「英雄」と同じ調性)を聴いた当時の愛好家・批評家諸氏が、こぞってエーベルルの方に軍配を上げたという。本盤に収録された3作もそれぞれに緻密な書法と19世紀初期ならではの雄大な構想にもとづく古典的形式感が実にすばらしく、ダンツィやクルーセルらにみられるような「モーツァルト妄執世代」特有の“切なさへの憧れ”が美しく滲み出た秀逸な仕上がり。最後に収録された短調と長調が不思議な入り混じりをみせる五重奏曲などは、モーツアルト流儀の悲哀と諧謔の混濁のなか、さながらグリンカの悲愴トリオをさえ予感させる瞬間もあったり、過渡期ならではの偶発的な面白み満載だ(クラリネットとヴィオラ2本という異例の中音域の厚さが何ともいえぬ滋味を醸し出している点も魅力)。 18世紀末ウィーン式のフォルテピアノの的確なスケール感と新鮮さ、ひなびすぎず、しっとりと温もりをたたえた古典式クラリネット、アクセント確かなチェロの響き…と、各ピリオド楽器奏者たちの楽音もRAMEE随一のエンジニアリングにより親密な距離感で古色蒼然とうつくしく収められ、一体感あるアンサンブルとともに曲の豊かさ・面白さがよく伝わってくる。完成されたウィーン古典派美学が、ありありと質感を帯びて蘇る・・・美麗デジパック・ジャケの装飾が連想させるような、極上のアンティーク家具のごとき名盤なのだ。 | ||
美の精華〜中世、十字軍時代のキプロス島のフランス語歌曲 美しく高貴なるバラは/高らかに、心愉しく歌うには/ 愛神よ、わたしは誰に心を尽くそう/ 薔薇という薔薇、みな花ざかり/ 不幸な結末の話なら、いやというほど聞いてきた/ よき船着場を見つけるために/ とこしえに、よき心とともに花を捧げたく/ 愛神が、わたしの心を袋に詰めて持ち去った/ 甘美な苦しみあればこそ/ いとやんごとなく、純潔にして細やかな百合の花/ あなたの僕たる生き物にどうか慈悲を垂れたもう/ あなたの高貴な魅力ゆえ、わたしはあなたの僕となろう/ 運にまかせて富を得ようと思う者は |
アンサンブル・ラ・モルラ [ソプラノ、リコーダー、 リュート、ドゥルツィアン、 フィドル] | |
ピリオド楽器使用。東地中海に、フランス語を話す国家があった。エキゾチックな中世に思いを馳せつつ耳を傾けたいアルス・ノヴァとデュファイをつなぐ異国音楽の美しさ。一作ごとに興味深い発見をもたらしてくれるドイツの美麗ジャケット・レーベルRAMEE、虚空に響くたおやかな中世楽器と歌声が美しいアルバム。 やや意外ながら?小アジア半島にほど近い地中海のキプロス島には中世後半、3世紀にわたってフランス人の君主が君臨していた。リチャード獅子心王が十字軍遠征の帰路、腹心のフランスにキプロスを領土として与えたのが始まりで、15世紀(音楽史で言えばデュファイの登場直前)まで何とかギィの子孫がため政者でありつづけたのだという。そんなキプロスで15世紀初頭に作成されたとおぼしき写本が、トリノ国立図書館に残されている。15世紀初頭にキプロスを訪れた、デュファイを育てたカンブレー大聖堂の音楽家2人が作成したものらしく、つまりド・マショーとデュファイの間をつなぐフランス音楽遺産ともみなしうる重要な写本なのだった。 今回のアルバムではこの曲集から13曲を選出、歌入りトラックと純粋に器楽だけによるトラックとがちょうど半分ずつくらいになるようバランスよいプログラムにしている。低音楽器が入ってこないせいか(ドゥルツィアンもバスではなく、オーボエに似た音のトレブル楽器を使用)、ナチュラルな録音とあいまって、時間を超越してたゆたうような中世音楽独特の美がきわだって感じられる。澄み切ったリコーダーやまっすぐなソプラノ、メッサディヴォーチェ?の美しいフィドルなど、古楽マニアならずとも食指の伸びる素晴しいサウンド。珍品に終わらぬ洗練された一作だ。 | ||
スペインから来たロココ時代の音楽家兄弟 〜オーボエのためのトリオ・ソナタ集 ジョアン・バティスタ・プラ(1720-1770)、 ジョゼプ・プラ(1728-1762): トリオ・ソナタ ヘ長調/トリオ・ソナタ ニ短調/ トリオ・ソナタ ト長調/トリオ・ソナタ 変ホ長調/ オーボエと通奏低音のためのソナタ ハ短調/ トリオ・ソナタ ハ長調 |
アンサンブル・ロッシ・ピチェーノ [エミリアーノ・ロドルフィ、 アンドレアス・ハイム(Ob) マリアン・ミンネン(Vc) ラウル・モンカダ(Cemb) 松永綾子(Vn) ヴィム・マーゼレ(テオルボ/G)] | |
ピリオド楽器使用。スペインを出て、広くヨーロッパへ…晩期バロックと古典派の様式が入り混じるプラ作品の面白みを、絶品バロック・オーボエで。 バロック後期〜初期古典派の流儀で、スペイン臭さのない流麗な音楽を紡ぎ続けたプラのファンは演奏家にも多いと見えて、古くから折に触れて録音にも供されている――かのJ-P.ランパルも晩年SONYでプラ・アルバムを制作していたし、スペインの老舗御国芸レーベルENSAYOにも協奏曲集があった。十八世紀当時も、兄のマヌエル(当盤には作品収録なし)意外の2人はシュトゥットガルトへ、パリへ、ロンドンへ…と諸外国へ出て大いに名声を馳せていた。今回はそんなプラ兄弟の魅力あふれる音楽世界を、ばっちり古楽器で、秀逸な演奏とともに味わいつくせるアルバムの登場だ。 演奏陣はカペッラ・デッラ・ピエタ・デ・トゥルキーニでオーボエを吹いているE.ロドルフィを中心に集まった、Ens.ゼフィーロ、エスペリオンXXI、コンチェルト・イタリアーノ、BCJやオーケストラ・シンポシオンといったアンサンブルで今まさに忙しく活躍中の実力派たち。しかもバロック・オーボエがダブルで協和するトリオ・ソナタが大半で、その美音の重なり具合といい、流麗な機能性といい、なかなか得がたい古楽サウンドがかもし出されているのが嬉しいところだ。ヴァイオリンの松永綾子も1曲参加、曲調にヴァラエティをもたらしているのも素敵。プラ兄弟じたいの名はそれなりに知られていても、古楽器による録音がこれまで意外となかっただけに、1枚まるまるプラ作品だけで作られた(しかも極上演奏による)このアルバムの登場は全く嬉しい限り。 | ||
深き淵より〜 ドイツ17世紀の独唱カンタータとソナタ マティアス・ヴェックマン(1619以前-1674): カンタータ「ものみな我のもとへ集まれ」 ハインリヒ・イグナーツ・フランツ・ ビーバー(1644-1704): ソナタ第1番〜「聖と俗との作品集」より ヨーハン・クリストフ・バッハ(1642-1703): 哀歌「おお主よ、なぜ烈火のごとくお怒りなのか」 ニコラス・ブルーンス(1665-1697): モテトゥス「深き淵よりわれ汝に呼ばわる」 ヨーハン・ハインリヒ・シュメルツァー(1623-1680): ソナタ「皇帝フェルディナント III 世の 崩御を悼む哀歌」 クリスティアン・ガイスト(1640頃-1711): カンタータ「そこで彼らはイエスの御体を 〜おお悲しみよ、おお心の苦しみよ」 ベネディクトゥス・ブーンス(1642頃-1716): モテット「神よ、怒りにまかせて 私を責めないで下さい」 |
ペーター・コーイ(B) ミーネケ・ ファン・デル・フェルデン (ヴィオラ・ダ・ガンバ) フランソワ・ フェルナンデス(Vn)他 アンサンブル・ ラルモニア・ソノーラ | |
ピリオド楽器使用。メンバーが、あまりにも豪華すぎる!教条くさくならない、泰然自若のドイツ・バロックはひたすらたおやか。俊英たちならではの超絶名演。 バッハ以前、17世紀初頭から後半までのドイツ語圏で書かれたさまざまな器楽合奏作品とバス独唱カンタータを集めたこのアルバム、一聴いただければその素晴しさに打たれぬはずはない!と断言できてしまうくらいの、まさに絶美のドイツ・バロック・アルバムなのだが、それもそのはず、メンバーがあまりにも豪華すぎるのだ! 独唱がブリュッヘン、ヘレヴェッヘ、コープマン、鈴木雅明らのバッハもの録音できわめて重要な役割を担ってきた名歌手ペーター・コーイなのはいわずもがな、ヴァイオリンはF.フェルナンデスと山縣さゆり、オルガンにレオ・ファン・ドゥセラール…とどこを見ても言い訳しようのない実力派ばかり! さらに総指揮はChannel Classicsの名盤群でおなじみのヴィオール奏者ファン・デル・フェルデン!彼女の音楽性なくしては、このたおやかなアンサンブルの統一感は出なかったかもしれない。 かなりゴツゴツした古風なヴェックマン作品も、独特の不均衡がえもいわれぬ味わいを醸し出すシュメルツァーのソナタ=ラメントも、誰をも魅了せずにはおかないたおやかさで“聴きやすく "仕上げてある、にもかかわらず、仕上がりは月並みさとは正反対!各作品の持ち味がまったく損なわれていないから不思議なものだ。古楽盤の登竜門・仏Diapason誌のみならず、英BBC MAGAZINEの絶賛も博しているのは伊達ではない…バッハ以前のドイツ音楽は初めて、という方にも、このジャンル最初の1枚として堂々とおすすめできる。 | ||
ヨーハン・マッテゾン(1678-1755): 「クラヴサンのための作品集」 (1714年ロンドン刊)より [組曲第1番 ニ短調/組曲第6番 変ホ長調/ 組曲第9番 ト短調/ 組曲第12番 〜アルマンド、クラント、 サラバンドとジグ/ 組曲第11番〜サラバンド/ 組曲第5番〜エールと2変奏/ 組曲第4番〜アルマンド、クラント、 フランス風クラント、 サラバンドとジグ] |
クリスチアノ・オルツ(Cemb) | |
使用楽器:ミートケ1704年頃のモデルに基づくブルース・ケネディ製作のドイツ・バロック式チェンバロ。ヘンデルとテレマンの好敵手たる超・天才作曲家、その芸風を端的に伝える若き日の鍵盤作品集。俊英奏者の名解釈で、バッハ好きにも大推薦! ハンブルクにいた頃の若きヘンデルと肩を並べ、テレマンとよく交友を保ち、作曲のみならずオペラ歌手としても才能を発揮、有能な外交官として活躍したうえ、なんと文筆センスも超一流。後半生は外交官職務があまりに多忙をきわめ作曲はほとんどできず、仕事の合間に次々と音楽著述を残すのがやっとだった天才マッテゾン、しかし現存作品のあまりの面白さはバロック好きなら当然ご存知のとおり。Alphaで全集録音されたトリオ・ソナタ集『誠実なるヴィルトゥオーゾ』(ALPHA-035)はそんな彼のペンが最も充実していた1710年代末の曲集だが、このたびそれとほぼ同時期に“ロンドンで "“フランス語のタイトルで "出版されたチェンバロ組曲集をRAMEEが世に問うた!いかにも、同じくロンドンで、フランス語の表題で出版されたヘンデルのチェンバロ組曲集(1722)を連想せずにはおれない作品集だが、各曲の響きに贅肉はなく優雅にして繊細、むしろバッハの「フランス組曲」あたりに近いかもしれない。 ブラジル出身でJ.オッホとレオンハルトに師事した俊英オルツの演奏がこれまた精妙、ミートケ(「ブランデンブルク協奏曲第5番」の成立を促したという名工)のモデルによるドイツ式チェンバロの特性をよく生かし、潔い音色でマッテゾン一流の半音階的展開や緻密な和声進行にみごとな説得力を付与してゆく。CD1枚の中にうまく抜粋曲も織り交ぜた豪華プログラム、バッハ好きに「とんでもないバロックの巨匠は、バッハだけじゃない!」ことを印象づけてあまりある注目盤なのだった! | ||
ロベルト・ヴァレンティーニ(1680-1750): リコーダーと通奏低音のための12のソナタ (パルマの写本SANV.D.145による) |
アンサンブル・メディオラヌム ザビーネ・アンボス(リコーダー) フェリックス・コッホ (バロック・Vc) ヴィープケ・ ヴァイダンツ(Cemb) | |
ピリオド楽器使用。ヘンデルよりも親しみやすく、ヴィヴァルディよりもスタイリッシュ!3分程度のミニマル・ソナタから大規模な4楽章ソナタまで、何と多様な味わい深さ。意外と見つからないリコーダー秘曲ソナタもの。見つかったのは、こんな傑作アルバム!! リコーダーのアルバムというのは意外と多くはないもので、あってもヘンデルやテレマンの作品集ばっかりだったりするものだが、「リコーダーでバロックものは同じ曲しか聴けない」とお悩みの方々にぜひおすすめしたい、演奏内容も曲のクオリティも格別の1枚。ジャケのウェッジウッドも伊達じゃない。 ロベルト・ヴァレンティーニとイタリア語の名前だが、本当は正真正銘イギリス人。18世紀初頭、最晩年のコレッリが活躍していたローマに渡り、そこでリコーダーをよくするパトロンを見つけ、擁護にすがろうと献呈したのがこの12のソナタで。1730年頃の作ということはまさにヴィヴァルディやヘンデルと同時代。手堅さと伸びやかさが同居する大小さまざまなソナタ群は、リコーダーの音色をあますところなく堪能させる絶妙の仕上がり!細かいものは3分程度、長い曲はヴィヴァルディのソナタくらいの規模をもち、かなりいろいろ楽しめる。仕事の合間などスキマ時間にじっくり聴くにも丁度良いつくり。 独奏者アンボスはミヒャエル・シュナイダーとメーメルスドルフ、つまり名手と奇才に学んだ腕前確かな若手で、緩急自在にしなやかに飛び回る歌心と技巧はすでに圧巻。伴奏陣のオツなサポートを受けて、悲喜大小さまざまなソナタそれぞれの面白さを鮮やかに吹き分け、隅々まで堪能させる。ちなみに通奏低音にもちょっとした注目ポイントがあり、いくつかの曲では、バッハがリュート作品を作曲する時に使ったといわれている「ガット弦チェンバロ」が使われている。 | ||
アントワーヌ・ダール、 ブルゴーニュから来たバソンの名手 〜バソンと通奏低音のためのソナタ集、他 アントワーヌ・ダール(1715-1784): 「6つのソナタ〜バソンまたはチェロと 通奏低音のための」 Op.2(1759?)(*) & 「音楽の新しい諸原則」(1765頃?)付録曲 (+) [ソナタ第1番 ハ長調(*)/ソナタ第2番 ト長調(*)/ フルート伴奏つきエール 「ラ・コケット(心そそる女)」(+)/ ソナタ第3番 ハ短調(*)/ フルート伴奏つきエール=ミュゼット・ アン・ロンドー「親愛なるティルシ」(+)/ ソナタ第4番 ヘ長調(*)/ソナタ第5番 ニ短調(*)/ アリエット「心そそる女」(1767)/ ソナタ第6番 イ短調(*) パロディ=アリエット「もいちど、おれを 愛しておくれ」(1766)] |
ヒカルド・ハポポルト (バロックFg;**) パスカル・デュブリュイユ (Cemb;##) フランソワ・ニコレ (Fr−tr) カラン・セラファン(S) | |
使用楽器:パリのプリュダン1760年頃製作楽器によるコピー(**)/リュッケルス1624年モデルによるコピー(##)。フランスならではの、バソン音楽のルーツここに。ドヴィエンヌ以前、ロココ時代の前古典派ならでは超絶技巧も柔らか短調も、ボッケリーニのバソン版? 「ヘッケル以前の1800年頃までは、フランスのバソンも事実上バロック(orクラシカル)・ファゴット」だと言われるが、国内代理店は「まあ雰囲気ということで『バソン』の呼称を適宜」としている。Antoine Dard なる人はラモーと同じブルゴーニュの出身で、1760年頃パリのオペラ座に入団したというから『レ・パラダン』の初演や『ボレアド』のリハーサルなど、ラモー最晩年の傑作群の上演にはばっちり関係していたわけで。その彼がパリに来てすぐ出版したのが本盤のソナタ集。18世紀中後半のバソン音楽といえば古典派末期のドヴィエンヌまで殆ど何も録音のないところ、本盤は ACCENT のボワモルティエ&コレット曲集への貴重な対抗盤となる、しかもその音楽はずっと古典派に近く、ルクレールのヴァイオリン・ソナタとボッケリーニのチェロ・ソナタの間をゆくような、典雅な歌心とスピード感が交錯する耳なじみのよい音作り(モーツァルトの協奏曲もかくや、というくらい高音域で暴れまわるのも、ボッケリーニのチェロの扱いに似ている)。さらに、大昔ブリュッヘンのオトテール作品集で片鱗が紹介されていたような「フルートだけで伴奏する歌曲」など歌曲ものが折々意趣を添える。18世紀中盤の(とくにフランス語)歌曲は録音が皆無に等しく、その点でも嬉しい計らいだ。 同時期の作曲家プラのオーボエ・ソナタ集(RAM-0603)が絶好調のRAMEEだけに、バソン奏者の見立ても完璧。ハポポルトはブラジル出身、もともとパリで「現代バソンの大家」モリス・アラールに師事したのち、ミンコフスキやニケのピリオド楽器オケに連なったという異色の経歴の持ち主。師匠アラールを思わせる繊細な歌わせ方はピリオド楽器と曲によく調和して、曲の面白さを何倍にも際立たせる、ちょっと聴き逃せないユニークな中低音の魅力、ぜひご注目を。 また、クラヴサンのデュブリュイユも、彼の先生に当るヤニック・ル・ガイヤールとヘンデルの「水上の音楽 2台ハープシコード版」(LA CHANT DU MONDE;廃盤)を録音していたりと、古楽マニアには懐かしい名前だろう。 | ||
パスカル・ド・レストカール 〜知られざるリヨンのユグノー作曲家 パスカル・ド・レストカール(1537頃〜1587以降): 「サクレ・カンシオーネス」(1582;全曲) |
ブリュノ・ボテルフ総指揮 アンサンブル・ ルドゥス・モダリス | |
中世旋法をもとに、純正律でぴしっと合うア・カペラ。鬼才歌手ボテルフのこだわりが隅々まで行き届いた超実力派集団、知られざるフランス音楽を発掘。 エール・ド・クールをはじめフランス・バロックの「リュリ以前」の闇がずいぶん解明され、17世紀前半ではブジニャック(HMFのクリスティ盤)やフォルメー(Alphaのシュネーベリ盤)など合唱曲の「ルネサンスからバロックへの推移」もだいぶ見えてきた昨今の録音シーン。しかし16世紀の音楽世界となるとアルバムはぐっと減ってくる。だが16世紀といえばフランスの国力が充実しはじめてきた頃。ネーデルラントやイタリアのような、ハイ・ルネサンスのア・カペラ対位法音楽がこの国で花開かなかったわけがない。 ルジュヌの録音はAlphaのそれも含め少しばかりあるが、レストカールは重要作曲家であるにもかかわらず、ヴィス&ジャヌカンEns.の世俗シャンソン集のほか単独録音は皆無だった。しかし本盤はその渇をいやして余りある、ポリフォニー教会音楽の精華をこれ以上ないほど見事に示してくれる名演の連続。 レストカールの生涯については未知の部分が多いが、ユグノー(新教徒)だったためカトリック色濃厚なフランス中央部では活躍しづらかったのか、ずっとドイツに近いリヨンを拠点に活躍した人。『サクレ・カンシオーネス』はラッススやバードの名作群と同時期、1582年に出版された曲集で、小さなフランス語宗教歌とラテン語ポリフォニー音楽の双方が収録されている大著―精緻にして晴朗な対位法の味わいに、彼の立身を阻んだのはただ信仰の相違だけだったことを思い知らされる傑作ぶり。 その美が際立つのも、平均律和声ではなく中世旋法を基準にしてハーモニーを作れる超実力派古楽歌手集団あってこそ。指揮者はルネサンス期のディクションや歌声のあり方など「意外な細部」までこだわる異才ボテルフ。そのこだわりが隅々まで徹底されると、ここまで結果に反映されるのか。と、ひたすら印象的な極上ア・カペラ古楽。3声から7声まで、多様な全28曲をご堪能あれ。 | ||
バードの鍵盤作品群を、オルガンで ウィリアム・バード(1542-1623): プレリュード(12)/ファンタジア(13)/ 父よ、わたしに光を(48)/父よ、わたしに光を(49)/ 女王陛下のアルメイン(10)/ファンタジア(25)/ ファンタジア(63)/グラウンド(86)/ イン・ノミネ(51)/涙のパヴァーン(54)/ ファンタジア(67)/ミゼレーレ(67)/ ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラの音列による変奏曲(64)/ 或るヴォランタリー(27)/グラウンド(42) |
レオン・ベルベン(Org) | |
()内の番号は作品整理番号。使用楽器:オーストハイゼン(オランダ北部)大教会、1521年頃建造。Diapason D 'or 受賞盤。ムジカ・アンティクヮ・ケルンの気鋭奏者ベルベンは、オルガンもチェンバロもイケる。一段しか鍵盤がないとは思えない、無辺に広がる幻想のゆたかさ...素朴にしてひたすら古雅、後期ゴシックの「古い木材の響き」がひたすら味わい深い... あまり録音されない作曲家に光をあて、「あたらしい聴覚体験」の喜びをもたらしてくれる、貴重なレーベルRAMEE。聞き覚えのある名前が出てきても意外なアプローチをみせ、かならず響きの新鮮さを打ち出してくる。今度の新譜もバードの鍵盤作品という、古楽ファンにはよく知られた作曲家の王道ジャンルながら、なんとチェンバロでもヴァージナルでも室内オルガンでもなく、教会の大オルガンを使ってみせる大胆さ。確かにバードは英国王室の聖歌隊長だったから、曲が教会のオルガンと相性がいいのも頷ける、みごと説得力あふれるトラックの連続。使用楽器がこれまたこだわりの逸品。オランダ東北部のドイツ国境付近にある教会のオルガンは推定1521年建造と、現存する教会オルガンとしてはほぼ最古の部類に属するユニークな存在。鍵盤は1段、音栓も少なく響きはごく簡素ながら、そこから縦横無尽のファンタジーが広がるのは奏者が名手ベルベンだから チェンバロもオルガンも絶妙にウマいこの名手、ムジカ・アンティクヮ・ケルン最後の鍵盤奏者のひとりとして活躍してきた達人で、その腕前はRAMEEでの2作の既存盤で実証済み。 | ||
ヨーハン・クリストフ・ペーツ(1664-1716): 作品集 序曲(管弦楽組曲) 変ロ長調 R.9 (編成:2ob,fg,2vn,va,bc) 協奏曲=ソナタ ヘ長調 R.15 (編成:3vn,va,fg,vc,bc) 合奏協奏曲またはシンフォニア ト短調 R.18 (編成:2ob,fg,2vn,va,vc,bc) ソナタまたは協奏曲=シンフォニア ト長調 R.11 (編成:2vn,va,vc,bc) 序曲(管弦楽組曲)、 または食卓で奏でる小品集 ニ短調 R.24/D.7 (編成:3ob,fg,2vn,va,bc) 協奏曲=パストラーレ ニ長調 R.16 (編成:vn solo,2vn,vc,bc) |
アンサンブル・レ・ムファッティ | |
ピリオド楽器使用。この名前をご存知だった方に朗報、心のスキマを埋めてあまりある名演奏の登場。テレマンも脱帽したという手際よさで絡み合い、戦いあう、さまざまな楽器たち。ベルギー気鋭勢はソロもうまい。バッハやテレマンが好きな方に、ぜひともおすすめの一枚。 1725年、テレマンは尊敬すべき音楽家の名前を6人あげてたが、そこにはカイザーやクーナウなどの先達、同世代のヘンデル、そのライヴァルで「乞食オペラ」の作者ペプーシュ、ピアノの前身たるダルシマーの改良楽器の名手ヘーベンシュトライトとならんで「ヨーハン・クリストフ・ペーツ」なる作曲家の名前がある。他にもさまざまな古楽系ドキュメントでペーツ( PEZ )という名前だけはご存知だった方は少なくないはず。テレマンも讃える巨匠とは、どんなものか。そんなモヤモヤを痛快に吹き飛ばしてくれるのが、ベルギーの若手勢が大活躍をみせるこの新譜。弦楽合奏にせいぜいオーボエ2とファゴット...といった月並みな編成ばかりが目につく1700年頃にあって、ヴァイオリンとファゴットがソロだったり、チェロが独立して動いたり、中音域オーボエを使ったりヴィオラ・ダ・ガンバが登場したり...とひたすら多種多様オリジナリティあふれる編成で、ヴィヴァルディ式とはまたちょっと違った協奏曲、フランス風味ゆたかな組曲、ソナタだか協奏曲だかわからない構成(タイトルも上述のとおりで)だがひたすら面白い楽曲等々、鮮烈至極のオーケストラ音楽が繰り広げられていく。レ・ムファッティの面々はベルギー最前線の一流古楽アンサンブルで活躍する若手たちが集まっているだけあって、ソロも闊達そのもの。オーボエにはヴェテラン・北里孝浩も参加、バッハやテレマンの傑作群の直前にあった、興奮必至のアンサンブル音楽を! | ||
ルネサンス・フルートの饗宴 ロバート・フィアファクス(1464-1521)、ヘンリー8世(1491-1547)、ジョスカン・デプレ(1440-1521)、 ルイス・デ・ナルバエス(?-1549)、ハインリヒ・イザーク(1440頃-1517)、アルノルト・シュリック(1460頃-1521)、 パウル・ホフハイマー(1459-1537)、ルートヴィヒ・ゼンフル(1486-1542)、ハンス・ユーデンキューニヒ(1460頃-1526)、 ゲオルク・フォスター(1510-88)、ヤーコプ・オブレヒト(1456-1505)、オルランドゥス・ラッスス(1530-94)、 トーマス・ルイス・デ・ビクトリア(1548-1611)、クローダン・セルミジ(1490-1562)、ニコラ・ゴンベール(1495-1560)、 ピエール・サンドラン(1538-1560)、ジャン=ポール・パラダン(?-1565)、ヤコブス・クレメンス・ノン・パパ(1510-55)、 ディエゴ・オルティス(1510-1570)、ジョヴァンニ・バッサーノ(1560-1617)、クレマン・ジャヌカン(1485-1558)、 アルフォンソ・フェラボスコ父(1543-88)、チプリアーノ・デ・ローレ(1510-65)、ジョン・ダウランド(1567-1626)、 ヤーコプ・ファン・エイク(1589-1643)、リッカルド・ロニョーニ(1550-1620) ケイト・クラーク(ft) アテニャン・コンソート ナイジェル・ノース(lute) マルタ・グラツィオリーノ(Hp) | ||
ピリオド楽器使用。リコーダーではない、トラヴェルソともだいぶ違う。ルネサンスの横吹型フルートでコンソート(合奏)を組んでしまった、異色の安らぎサウンドの心地よさ...詳細な解説つきで送る、RAMEEならではの「誰も知らなかった素敵な響き」を。 なんと「ルネサンス・フルート合奏」。古楽レーベルRAMEEのこと、もちろん現代フルートじゃない。さりとてリコーダー四重奏でもない。しかもフラウト・トラヴェルソというのともちょっと違う。ルネサンス時代の横吹式フルートの合奏。ジャヌカンやセルミジの世俗シャンソンを出版したことで知られる16世紀フランスの楽譜出版人ピエール・アテニャン(1494-1552)が、いくつかのシャンソンを「ドイツ式(=横吹)フルート合奏で」吹けると書き添えて出版しているのを論拠に、15世紀から16世紀末にかけてフランス、英国、ドイツ語圏などで作曲された、シャンソンやドイツ歌曲、英語のマドリガルといった声楽作品をルネサンス・フルートで合奏してしまった本盤、トラヴェルソともリコーダーとも違う、渋い“木材の響き "がえもいわれぬ安らぎをかもし出し、そこへ時折リュートやハープの弦音が涼しげな音色で興を添える、なんとも忘れがたい音響世界の連続。主宰者ケイト・クラークはオーストラリア出身、他のメンバー同様バルトルト・クイケン門下で腕を養ったヴェテラン。彼女の人脈か、巨匠ナイジェル・ノースがさらりとゲスト出演しているのも嬉しい驚きじわりとハマる、独特の納涼サウンド。 | ||
英国ルネサンスと、フランスのリュート音楽 ムザンジョー:組曲 ト短調 P.ゴーティエ:英国のパヴァーヌ メイス:リュート練習曲第1セット 作者不詳:チャゴーナ ムザンジョー、S.アイヴズ、作者不詳/1630頃: 組曲 ニ短調 作者不詳:老ゴーティエのナイチンゲール P.ゴーティエ:組曲 ハ長調 ムザンジョー:組曲 ト短調 ブヴィエ:フラパール修道士 |
アンスニー・ベイルズ (リュート) | |
ホグウッド、サバールらと同世代の「英国リュート界の重鎮」、長い沈黙をやぶって登場 本当に久しぶりの録音は、自家薬籠中のフランス初期バロック&祖国たる英国の知られざる作品群。冴えわたる技巧、ますます深まりゆく音楽性はまさに巨匠そのもの。 「筋金入りの古楽レーベル」なRAMEEの新譜は、なんとリュート界の重鎮ともいえる英国の巨匠アンスニー・ベイルズ御大が、ほんとうにひさびさに録音した充実しまくりのリュート独奏盤。ベイルズがどのくらいの重鎮かというと、今やすっかり年季の入った古楽大国たる英国に、まだリュートを学べる音楽院が存在しない頃、わざわざバーゼルまで留学して“神様 "オイゲン・ドンゴワに師事した世代…ジョルディ・サバールがクイケン門下でようやくディプロマを取得しようという頃、といえば伝わるだろうか。EMIに古楽部門があったLP時代、誰よりも早く(“リュリ以前 "の)ルイ13世時代のリュート音楽やエール・ド・クールなどに着目し、録音された2枚のLPはつい最近までフランス初期バロックの決定盤(というより、ほぼ唯一に近い入手可能録音)であり続けた。長年の沈黙を破って今回録音してくれたのは、彼がパイオニア的に知り尽くしたフランス17世紀初頭のリュート音楽と、ちょうどエリザベス朝ルネサンスのくびきから脱しつつあった、同時期の英国音楽との影響関係をさぐる、という充実プログラム。これまで全く知られてこなかったルネ・ムザンジョーなるフランスの巨匠の音響世界を二つの組曲でみごと伝えてくれるほか、メイス、アイヴズといった知られざる英国の作曲家たちも紹介。 キーワードは「17世紀の“新調弦 "」――リュートはただでさえ調弦に時間がかかるので、通常とは異なる“新調弦 "を採用していたムザンジョーの作品群は、現代のリサイタル奏者たちから敬遠され、17世紀当時にはゴーティエ一族にも比する名声を誇っていたのに、今ではまるで知られていない…とはベイルズ御大自身の執筆によるライナーノート(全訳つき)の言。いずれにせよ、12コースの晩期ルネサンス・フランス式リュートを、こともなげに典雅に弾きこなすそのタッチはまさに「ノーブル」の一言 フランス作品でみせる、絶妙の慎ましやかさでの弾き崩しなど、昨今の前衛的若手奏者たちには真似できない独特の境地。1音目から引きつけられること必至、風格あふれる本格盤。 | ||
バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバのための作品集 トリオ・ソナタ ト長調BWV1038/ カンタータ BWV76〜シンフォニア (ヴィオラ・ダ・ガンバとオブリガート・オルガン)/ ヴィオラ・ダ・ガンバとオブリガート・ チェンバロのためのソナタ ト短調BWV1029/ ファンタジア BWV917(チェンバロ独奏)/ ヴィオラ・ダ・ガンバとオブリガート・ オルガンのためのソナタ ニ長調BWV1028/ シンフォニア ニ長調BWV789(オルガン独奏)/ ヴィオラ・ダ・ガンバとオブリガート・ チェンバロのためのソナタ ト長調BWV1027 (ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音) |
ミーネケ・ファン・デル・ フェルデン (ヴィオラ・ダ・ガンバ) アンサンブル・ラルモニア・ ソノーラ(ピリオド楽器使用) フランソワ・ フェルナンデス(Vn) リカルド・ロドリゲス= ミランダ(Vg) ジーベ・ヘンストラ(Cemb) レオ・ファン・ ドゥセラール(Org) | |
名盤あまたの名手フェルデン、満を持してのバッハ録音、周囲を固めるアーティストときたら、なんて豪華なメンバー。 名手ファン・デル・フェルデンが、満を持してバッハを録音。そして共演陣をごらん頂きたい。通奏低音には寺神戸亮氏との共演者としても知られる名盤あまたのヘンストラ、日増しに仕事増加中の若手ロドリゲス=ミランダに、オルガンはフォルテピアノや現代ピアノでも名録音を連発する芸達者ドゥセラール、そして、2007年フォンス・ムジケのメンバーとして来日してくれたフランソワ・フェルナンデスのヴァイオリンしかし本盤、あの有名なソナタ3曲をフツーに弾いて終わりになどしていない。カンタータの序曲をアレンジしたり、チェンバロや室内オルガンのソロ・トラックを挟んでみたり。3曲のガンバ・ソナタが事実上「鍵盤の右手をソロのひとりに見立てたトリオ」であることを示すがごとく、冒頭はトリオ・ソナタで開始され、さらに当該の3曲のソナタでは 1)ガンバとチェンバロ、2)ガンバとオルガン、3)ヴァイオリンとガンバとオルガン編曲版、と多様な編成で聴き手をまったく飽きさせない腕達者ぞろいの阿吽の呼吸は絶妙そのもの、さりげなく上質・といった感じ。やっぱりバッハにはこういうオランダ・ベルギー古楽界ならではの “深い味わい "や“絶妙の呼吸テンポ "がぴたりとくる。弓の返し方、伸びる長い音、技巧を誇示せずさらりと弾き込まれた細かい音符…18世紀初頭のアンティーク懐中時計をあしらったジャケットの美しさまで、ため息ものの1枚。 | ||
15世紀ゴシック期のリュートと鍵盤音楽 「ローハム歌集」より3曲 「ブクスハイム・オルガン写本」より12曲 バーゼル大学図書館所蔵の写本より4曲 ウィーン、オーストリア 国立図書館所蔵の写本より4曲 他、計26曲収録 |
コリーナ・マルティ (クラヴィシテリウム) ミハル・ゴントコ (リュート/ギテルン) | |
中世末期、ゴシック時代。古雅なエキゾチズムもただよう「ほぼ最古の鍵盤音楽」の時代はリュート音楽さえも発展途上。典雅にして涼しげな音響世界を「中世キプロスの音楽」(RAM-0602)でヒットを飛ばしたユニットが、じっくり愉しませる。 考えてもみて頂きたい、チェンバロ音楽の歴史を遡ると、だいたい有名どころではバッハやスカルラッティ→クープラン→フローベルガー→フレスコバルディ→イギリスのヴァージナル音楽…と、せいぜい16世紀後半が「最古」あたりなわけだが、ここに収められた作品群ときたら、なんと15世紀のものが大半。まともなチェンバロはおろか、活版印刷術も鉄砲もない頃の鍵盤音楽とは。トン・コープマンが手がけたときも教会の大オルガンでしか録音していない15世紀の貴重な資料『ブクスハイム・オルガン写本』(この頃「オルガン」といえば「鍵盤楽器」くらいの意味)からの曲目をメインに、古風なおもむきの中世旋法がうつくしい佳品の数々を、現存最古のチェンバロと目されている、ロンドン王立音楽アカデミーのクラヴィシテリウムにもとづく銘器で、たおやかに聴かせてくれる。コピー制作は現代きっての名工E.ジョバン。ここでもチェンバロとはまた違う、リュート風ミュートのかかったような妙音が美しく。必聴モノで考えてみれば、15世紀までさかのぼってしまうと、チェンバロどころかリュートの音楽だってまだまだ未開発の発展途上なわけで。当時の音楽理論書によれば、鍵盤楽器はしばしばリュートとのデュオで弾かれることが多かったらしく、そんなわけで本盤ではリュートがクラヴィシテリウムの伴奏的に参加するだけでなく、こちらもきわめて貴重な15世紀末のタブラチュアなどをもとに「最古のリュート独奏曲」の世界までも復元してしまうという周到さ | ||
フリードリヒ大王と、ロココの響き 〜古典派前夜のヴィオラ・ダ・ガンバ〜 ルートヴィヒ・クリスティアン・ヘッセ(1716-72): パンクラス・ロワイエの歌劇 「グラナダの女王ザイード」〜序曲とエール フィリドール&モンシニーの歌劇「王様と庭師」 〜 エール「ああ、おばさま」/アンダンテ・アレグロ ラモーの歌劇「カストールとポリュクス」〜 ユピテルの降臨 ラモーの歌劇「エベの饗宴」〜 エール「さあ、笑う若さよ」/ロンド風タンブラン ゲオルク・アントン・ベンダ(1722-95): 鍵盤のための6つのソナチネ(第1〜6番) クリストフ・シャフラート(1709-63): 二つのガンバのための二重奏曲 ニ短調 ヨーハン・ゴットリープ・グラウン(1702-71): 協奏的トリオ ニ長調 作者不詳(18世紀中盤):スケルツァンド ヘ長調/ ロンド ハ長調 |
イレーネ・クライン、 ヤーネ・アハトマン(Vg) レベッカ・ルソー(Vc) バールバラ・マリア・ヴィッリ (Fp/Cemb) | |
「モーツァルト前夜」になおドイツで人気のあったヴィオラ・ダ・ガンバの音楽。ぽってり素直で叙情的なロココ風あり、荘厳なバロック風あり、フランス歌劇の編曲まで。演奏はもう文句なしに極上、録音もみごと。チェロとの対比やピツィカート奏法も絶妙。 18世紀音楽が好きな方々であれば、フリードリヒ大王の音楽趣味の古めかしさはよくご存知だろう。啓蒙主義にかぶれたこの君主、“前衛思想家 "ルソーを宮廷に招くなどフランス贔屓にもひとかどのものがあったようだが、ここでもラモーのような「往年の巨匠」の、あるいはフィリドールやモンシニーといった当時最先端をゆく流行作曲家のフランス・オペラから編曲された作品などが興を添えているのだが、基本は「ヴィオラ・ダ・ガンバ(二重奏)で綴る前古典派作品」。ロココふうの小品はフランスのクラヴサン小品のように多種多様、対するソナタの数々は、歌心たっぷり&きれいな叙情の香るメロディアスなガンバが美しく、リズミカルな伴奏進行はまさに古典派の到来を予言するかのよう――なんといっても、新世代のドイツの名手イレーネ・クラインらが奏でるガンバがきわめてウマく、絶妙の間合いで重なりあい、うたいかわす「ガット弦の中低音」の渋ーいカッコよさ、えもいわれぬ美音は、ピリオド楽器ファンすべて、いやあらゆる人を魅了せずにはおかないだろう。 | ||
J.S.バッハ(1685-1750): クラヴィーア練習曲集第1巻(全6曲) (=パルティータ(組曲) BWV825〜830) |
パスカル・デュブリュイユ (Cemb) | |
使用楽器:ティテュス・クレイネン製作(リュッケルス2世 1624年モデルによる)。ケネス・ギルバートの秘蔵っ子がつむぎ出す、ひたすらに格調高いバッハ解釈。ルネサンス音楽修辞学の研究書もあるくらいの知性派だけに、音符ひとつひとつがなんと意味深長に響く。 バッハの鍵盤楽曲でもとりわけ重要な『フランス組曲』『イギリス組曲』『六つのパルティータ』の3シリーズは、古い名盤こそ数あれど、21世紀以降の新録音がなぜか殆ど出ていない。ただ三つのなかでも趣きがちょっと違うのがこの『パルティータ』で、どうしたものかピアノでの録音はちょこちょこと出る。そんな渇を癒すようにいきなり現れたのが本盤。デュブリュイユはケネス・ギルバートとヤニック・ル・ガイヤールの門下から出てきた注目の若手(カデンツァ注:この人はル・ガイヤールと1990年前後にヘンデルの「水上の音楽 2台ハープシコード版」[LA CHANT DU MONDE;廃盤]を録音しているので、意外と年齢は高い可能性がある)で、すでにRAMEEでは『A.ダール ブルゴーニュから来たバソンの名人』(RAM-0702)であざやかな伴奏を聴かせる人だがこれがすばらしく風格のある、一点のくもりもない解釈となっている。テンポをすこし遅めにとり、じっくりと弾いてゆく感じだが(第6番などアルマンド1曲だけで10分以上)なにぶん曲がバッハ晩年の充実作だけあって、こうした弾き方がすごくハマって、一音一音含蓄深く響く。溌剌鋭角系の古楽演奏が次から次へとリリースされるなか、若い頃のレオンハルトかといったような格調高さを早くから打ち出してくるとは、なかなか先が楽しみな逸材。プロフィールをよく見てみると、なんでも1606年刊行の重要文献、ブルマイスターの『詩的音楽』の仏訳を担当していたり、音楽院では音楽修辞学のクラスを受け持っていたりと、バッハに限らず古楽のイロハを周到に身につけた筋金入りの知性派だったと知り、なるほどと納得。 | ||
ヴェネツィアに、バロックの芽生えるころ 〜モンテヴェルディの先駆者たち、追従者たち ジョヴァンニ・バッティスタ・リッチオ(1570頃-1630頃): 4声のソナタ/ カンツォーナ4編[ラ・フィネッタ/ ラ・サヴォルディ/ラ・ピッキ/ラ・グリレッタ] カルロ・フィラーゴ(1589-1644): 神よ、わが声をお聞き頂きたい(4声)/ 天よ、讃えられよ(2声と通奏低音)/ あなたの慈悲の庇護のもとへ(協奏様式)/ 我は我なり(協奏様式)/ 神よ、あなたを愛する(協奏様式)/ 神に感謝し、その名を思え(協奏様式)/ おお、汝ら、わが最愛の友(3声)/ あなたはなんと麗しく(高音2声) クラウディオ・メールロ(1533-1604): トッカータ(スピネッタ(小チェンバロ)独奏) ジョヴァンニ・バッサーノ(1558頃-1617): 別れにさいして、なお ビアージョ・マリーニ(1597-1665): 3声のソナタ「フォスカリの娘」 ジョヴァンニ・ピッキ(1571頃-1643): カンツォーネ第15番 |
Ens.インスルメンタ・ムジカ (ピリオド楽器使用) | |
ジョヴァンニ・バッティスタ・ボノンチーニ(1670-1747): オラトリオ「バーリの聖ニコラオス」(全2部) アンサンブル・レ・ムファッティ(ピリオド楽器使用) ラヴィニア・ベルトッティ、エレーナ・チェッキ・フェーディ(S) ガブリエッラ・マルテッラッチ(A) フリオ・ザナシ(B) | ||
洗練されまくりのピリオド楽器演奏で、影の名匠ボノンチーニの充実しまくった初期大作を。器楽曲の世界でコレッリがヒーローだった頃、「イタリア様式の理想」とまで呼ばれ、後年ヘンデルの対抗馬としてロンドンに呼ばれたこの男、とんでもない天才だった。 ボノンチーニ。音楽史、なかんずくヘンデルの伝記を少し読まれた方なら、ロンドンに来た“ドイツの野蛮人 "ヘンデルの人気ぶりをやっかんだ音楽業界人たちが、イタリアから連れてきて対抗馬に据えた“本場の大御所 "たるオペラ作曲家として、その名を知っている方も多々おられることだろう。しかし・・・かつて今村泰典氏のフォンス・ムジケがオランダのEt 'Ceteraに録音したカンタータ集をご存知の方なら、この名匠の真骨頂はむしろ、天才的な若者として飛ぶ鳥を落とす勢いでのし上がっていった初期〜中期の作品群にこそ発揮されている、ということもおわかりでは・・・“一枚上手の "古楽レーベルRAMEEが放ったこの新譜はなんと、そんなボノンチーニ芸術の粋が詰まった、いちばんいい時期の大作オラトリオをまるまる1編、うまいことCD1枚に収めきった注目盤なのである。 お題は、初期キリスト教世界の聖人ニコラオスの物語。と聞いて、お気づきの方はなかなか鋭い。そう、聖ニコラオスは貧者や子供にこっそり施し物をしたことで知られる、現代のサンタクロースのモデルになった聖人。もっとも音楽内容はとりたててクリスマス的なところはなくて、初演時の経緯にもそうした季節感は関係なく。ボノンチーニも後にその一員となるローマの芸術家サークル「アルカディアのアカデミー」(コレッリやA.スカルラッティを輩出した集団)の後援者がナポリ宮廷関係者で、ナポリ王国の守護聖人が聖ニコラオスだったから、という次第。弦楽&通奏低音だけの伴奏をまるで単調と思わせない、バロック・ベルカント的な、あまりにもうつくしいメロディラインの妙、聴き手の心をつかんで離さないキャッチーかつ繊細な和声推移の妙は、さすが、1690年代のヨーロッパ全域で「イタリア様式の理想的体現者」と目されていたボノンチーニの面目躍如、といったところだろう。もっとも、演奏は古楽大国ベルギーきっての気鋭集団のひとつレ・ムファッティだし、独唱勢はいまのイタリア古楽界を代表する気鋭陣たちだし(バスにいたっては名盤あまたの鬼才ザナシ!!)、曲の美が何倍にも引き立たないはずはないわけだが。バロック音楽は「声楽あっての芸術」。バロック好きを自認されるなら、これは本当に聴き逃せない名演。 | ||
ジョゼフ・トゥーシュムラン(1727-1801): 交響曲・協奏曲集 交響曲 ヘ長調Op.1-5/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調/ チェンバロ協奏曲 ハ長調/フルート協奏曲 イ長調/ 交響曲 ト長調Op.1-2 |
パトリック・エアトン (Cemb/指揮) Ens.レザンヴァンシオン (ピリオド楽器使用) ダニエル・セペッチュ(Vn) アレクシス・コセンコ (トラヴェルソ) | |
レデスマ:ヴァイオリンとバスのためのソナタ集 ボッケリーニやスカルラッティと同時代のスペイン音楽 フアン・デ・レデスマ(1713頃-1781): ヴァイオリンとバスのためのソナタ集(1760頃) [ソナタ第1番 イ長調/ソナタ第2番 ヘ長調/ ソナタ第3番 ニ長調/ソナタ第4番 変ホ長調/ ソナタ第5番 イ長調] |
ブライ・ジュスト (バロック・Vn) エルザ・ホグラル (バロックVc) ベルナルト・ゾンデルマン (バロックギター他) | |
なんて艶やか、なんて軽やか。バロック最晩期からロココへと移る頃、スペインで大流行していたヴァイオリン音楽は、まさに「タルティーニ+ボッケリーニ」!チェロ&ギターというボッケリーニ低音編成に乗せて、マヨルカ生まれの実力派が飛翔する。 | ||
J.S.バッハ:さまざまなトッカータ〜チェンバロとオルガンのための作品より ・チェンバロのための作品 トッカータ[ト短調 BWV915/ハ短調 BWV911/ニ短調 BWV913/ニ長調 BWV912/ 嬰ヘ短調 BWV910/ト長調 BWV916/ホ短調 BWV914/イ長調 BWV Anh.III-178] ・オルガンのための作品 トッカータとフーガ ニ短調 BWV565/前奏曲とフーガ ニ長調 BWV532/ 前奏曲とフーガ ニ短調 BWV538/トッカータとフーガ ヘ長調 BWV540/ トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV564/前奏曲とフーガ ホ長調 BWV566 レオン・ベルベン(Cemb/Org) | ||
使用チェンバロ:ハンブルクのクリスティアン・ツェル1728年モデルによる(キース・ヒル製作)/使用オルガン:ハルテュス・ファン・ハーヘルベール建造(1646)/フランス・カスパー・シュニットガー改築(1725)。ムジカ・アンティクヮ・ケルンの通奏低音を支えた異才は、本当に良いアルバムしか作らない。あの素朴な美しさにあふれたバード作品集(RA-M0704)の次は、満を持してのバッハ録音。「トッカータ」という鍵盤芸術のエッセンスを、チェンバロとオルガン双方で、じっくり堪能! | ||
雄弁なるアポロン エヌモン・ゴーティエ(1680-1742):4つの組曲 [ト長調/イ短調/ヘ長調/ロ短調] ドニ・ゴーティエ(1603-1672):2つのシャコンヌ [ハ長調/ヘ長調] |
アンスニー・ベイルズ(リュート) | |
フランス・リュート楽派最大の作曲家ゴーティエ、その味わい深い芸術世界の真骨頂をこの種の音楽のパイオニア、巨匠ベイルズのいかんなき演奏で聴ける喜び。しかも、使用楽器は18世紀のオリジナル。使用弦にもこだわり抜いた、至高のリュート盤。 | ||
J.S.バッハ(1685-1750):モテット集 [来たれイエス、来たれBWV229/イエス、わが友BWV227/主に向かって新しき歌を歌えBWV225/ 恐れるな、われ汝の傍にありBWV228/われ汝を離さんBWV.anh.159/ 聖霊は我らの弱きを助け給うBWV226/なべての民よ、主を賛美せよBWV230] ロビン・ブレイズ、ダミアン・ギヨン(CT) ペーター・コーイ指揮セッテ・ヴォーチ | ||
ピリオド楽器使用。なんと豪奢なメンバー、BCJ公演など日本でも熱烈な支持をあつめる古楽ソロ・ヴォーカリストたちが勢ぞろい、各パート1人のソロ編成でバッハ対位法の綾を解きほぐす。総指揮はなんと、巨匠コーイ。 | ||
J.S.バッハ(1685-1750): イタリア協奏曲 BWV971(鍵盤練習曲集第2巻)/ フランス序曲 BWV831(鍵盤練習曲集第2巻)/ 前奏曲、フーガとアレグロBWV998/ 半音階幻想曲 BWV903 |
パスカル・ デュブリュイユ(Cemb) | |
バロック奏法における“修辞法 "のプロ、気鋭デュブリュイユの『パルティータ』に続くバッハ。バッハ鍵盤芸術の肝、2段鍵盤チェンバロのあり方を最も端的に示す2傑作のほか、それぞれに重要な二つの傑作も収録――自然にして雄弁、飛びぬけた名録音。 | ||
モーツァルト(1756-91): クラリネット、ヴィオラとピアノのための三重奏曲 変ホ長調 KV498「ケーゲルシュタット」/ 幻想曲 ハ短調 KV475(フォルテピアノ独奏)/ 大ソナタ イ長調(*)〜1809年出版 二重奏ソナタ版 (原曲:クラリネット五重奏曲 KV581) |
トリオ・ファン・ヘンゲル [ニコル・ファン・ブリュッヘン (Cl/バセットCl;*) ジェイン・ロジャーズ(Va) アンネク・フェーンホフ(Fp)] | |
ピリオド楽器使用。「誰も知らなかった素敵な音」を見つけてくるセンスは、超一流。Raméeレーベルはメジャー作曲家の有名作品でも、こうやって意外な「版」を見つけてきた。古楽大国ベルギー最前線の名手たちが、モーツァルトの「当時の息吹き」を典雅に甦らせる。 | ||
J.S.バッハ(1685-1750):無伴奏チェロ組曲(全6曲)
ドミトリー・バディアロフ(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ) | ||
チェロを縦にかまえるようになったのは、実は意外と最近のこと?“肩からかけるチェロ "ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラの再発見に大きく寄与した楽器製作者=プレイヤー、日本でも旺盛な活動を続けてきたバディアロフ氏が、ついに録音した本命大作。 | ||
ヘンデル(1685-1759): 組曲第8番 ヘ短調 HWV433/エア 変ロ長調 HWV471/組曲第3番 ニ短調 HWV428/メヌエット ト短調 HWV434/ 組曲第5番 ホ短調 HWV438/ソナチネ ト長調 HWV582/組曲第7番 ト短調 HWV432 クリスチャーノ・オウツ(Cemb) | ||
使用楽器:18世紀ドイツ北部モデル(M.クラーマー、2004年製作)。ロンドンのドイツ人ヘンデル。オペラや協奏曲の名声に埋もれがちな彼のチェンバロ作品に真正面から取り組んだ名演。16フィート弦を備えたヒストリカル・モデルの音色も魅力的。 | ||
クロード・ルジュヌ(1530頃-1600):フランス語によるダヴィデ詩編 〔第96編「神に向かって新しい歌を歌え」/第102編「主よ、耳を傾けてください、わたしの願いに」/ 第135編「歌え、神について、その素晴しさについて」/第88編「おお永遠の神、わが救い主」/ 第57編「わたしを憐れんでください」/第98編「歌え、神に、新たなる歌を」/ 第149編「神に向かって新しい歌を歌え II 」/第95編「主を喜び迎えよう」/ 第97編「永遠なるかたがお統べくださる」/第81編「歌え、喜びをもって、主に向かって」〕 ブリュノ・ボテルフ(T)総指揮 Ens.ルドゥス・モダリス〔古楽声楽集団〕 | ||
(P) (C) 2011 。#レーベル在庫限り。ラッススやパレストリーナと同じ16世紀、美の国フランス。多声とホモフォニー、古楽ア・カペラ随一の響きの妙。 | ||
ジョヴァンニ・ボノンチーニ(1670-1747): シンフォニアOp.4 No.9(2vn・bc)/カンタータ「きみが話すとき、きみが笑うとき」(T.bc)/ カンタータ「バルバラ、不実な妖精」(T.2vn・bc)/シンフォニアOp.4 No.12(2vn・bc)/ カンタータ「苦しみに取り巻かれて」(T.vn・bc)/カンタータ「そう、ドリンダは昼の太陽」(T.2vn・bc) シリル・オヴィティ(T) アンサンブル・リリアード レオノール・ド・レコンド(Vn)他 | ||
ピリオド楽器使用。コレッリやA.スカルラッティの時代――それは、バロックのメロディが極限の美に達した頃。その艶やかな魅力を堪能するなら、「歌声」と「ピリオド楽器のニュアンス」が最大限に映える室内編成が一番。時代は1700年前後、貴人たちを魅了した傑作群を、極上演奏で。 | ||
ルイ・シュポア(1784-1859):大九重奏曲 ヘ長調 Op.31 (1813) ジョルジュ・オンスロウ(1784-1853):九重奏曲 イ短調 Op.77 (1849) アンサンブル・オスモーシス [ケイト・クラーク(Fl) オーファー・フレンケル(Ob) ベニー・アガシ(Fg) ニコール・ファン・ブリュッヘン(Cl) ヘレン・マクドゥガール(Hr) フランク・ポルマン(Vn) エリーザベト・スマルト(Va) ヤン・インシンゲル(Vc) ピーテル・スミットハイゼン(Cb)] | ||
ピリオド楽器使用。ベートーヴェン前後の同時代人のなかでも、古くからor昨今ひそかに注目を集めてきた超・実力派の隠れ名匠ふたり――コントラバスも管楽器群も、もちろん弦楽器も、19世紀そのままのサウンドと解釈で聴けることの刺激と喜び。じっくり楽しめる。 | ||
ジュゼッペ・サンマルティーニ(1695-1750): 合奏協奏曲〔イ長調 Op.2 No.1/ト長調 Op.5 No.4/ホ短調 Op.11 No.5〕/ オーボエ協奏曲〔ハ長調 S-Skma Xe-R166:30/ト短調 Op.8 No.5〕/ 序曲〔ヘ長調 Op.10 No.7/ニ長調 Op.10 No.4/ト長調 Op.7 No.6〕 ブノワ・ロラン(バロックOb) ピーテル・ファン・ヘイヘン指揮Ens.レ・ムファッティ | ||
ピリオド楽器使用。ロンドンっ子が愛したのは、巨匠ヘンデル、コレッリ、鬼才ジェミニアーニ、そしてミラノ生まれのサンマルティーニ。「知られざる4人目」の素晴らしさをとびきりの演奏で。 | ||
エーベルル、才能あふれるモーツァルトの門弟〜大六重奏曲、ピアノ三重奏曲、三重奏によるポプリ アントン・エーベルル(1765-1807): ピアノ三重奏曲 変ロ長調 Op.8 No.2 (1798) / ピアノとクラリネットおよびチェロのための三重奏によるポプリOp.44 (1803) / ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、クラリネットとホルンのための六重奏曲 変ホ長調 Op.47 (1800) トリオ・ファン・ヘンゲル [ニコール・ファン・ブリュッヘン(Cl) トーマス・ピット(Vc) アンネケ・フェーンホフ(Fp)] アリダ・スハット(Vn) ヴァップ・ヘラスヴオ(Va) バルト・アールベイト(Hr) | ||
ピリオド楽器使用。モーツァルトが認めた数少ない才人は、すでにロマン派の作法を見据えていた――!ベートーヴェンの七重奏曲とほぼ同時代。管・弦・鍵盤の軽やかな交錯が新時代の響きを描き出す...ピリオド楽器演奏だからこそ生きる、埋もれていたこの才能。 | ||
ジャック・ド・ガロ(1625頃-1690頃):組曲〔イ短調/ヘ短調/ハ長調〕/プシュケの嘆き ピエール・ガロ(1660頃-1715以降):組曲 ト短調 シャルル・ムトン(1617-1699頃):組曲〔ハ長調/イ長調〕 アンスニー・ベイルズ(リュート) | ||
使用楽器:G.F.ヴェンガー、1722年製オリジナル。リュートが「最も高貴な楽器」でありつづけ、かつリュリが新しい「ルイ14世様式」を確立した頃。フランス・バロックの最も美しく繊細な芸術が、このほんの一時にだけ結実した――リュート界の巨匠ベイルズが、羊腸弦と貴重なピリオド楽器で描き出す、かそけき小宇宙。 | ||
Hommages 〜ヴィオラ・ダ・ガンバとクラヴサンのためのフランス音楽 ジャン=アンリ・ダングルベール(1635-1691):クラヴサンのためのプレリュード〜自筆譜より マラン・マレ(1656-1728):第3曲集(1711)〜組曲 ハ長調 シャルル・ドレ(1710-1755):マラン・マレ1世のトンボー ジャン=アンリ・ダングルベール:「クラヴサン曲集」(1689)〜プレリュード ト長調 アントワーヌ・フォルクレ(1671-745):「ヴィオールのための作品集」(1747)より 第2組曲 ト長調〜〔デュブリュイユ/ルクレール/ビュイソン〕 マラン・マレ:第2曲集(1701)より〔リュリ氏のトンボー/組曲 ホ長調〕 作曲者不詳:プレリュード ト長調 / アントワーヌ・フォルクレ:第5組曲 ハ長調 ミーネケ・ファン・デル・フェルデン(ヴィオール) グレン・ウィルソン(Cemb) | ||
進化しつづける古楽大国オランダの“いま "を代表する大物ガンバ奏者ファン・デル・フェルデン、満を持してのフランス・アルバム! パートナーはNAXOSに名盤続々のグレン・ウィルソン。みずみずしさと深さ――フランス・バロックからロココへの、ほんとうにうつくしい古楽芸術。 | ||
J.S.バッハ(1685-1750): フーガの技法 BWV1080(全曲/バッハ自身の未完成稿) |
レオン・ベルベン(Org) | |
使用楽器:ヨアヒム・ヴァークナー1742-44年建造のピリオド楽器、アンガーミュンデ(ドイツ東北部ブランデンブルク)、聖母教会。ムジカ・アンティクヮ・ケルンの俊才奏者ベルベン、傑作『トッカータ集』に続く、驚きの企画。たおやかに、気負わず、隅々まで丁寧に。ありのままの作品そのものと向き合う名手の伴侶はバッハがこの大作を綴っていたのと同じ頃に建造された、ドイツ屈指の歴史的銘器。 | ||
Amour, viens animer ma voix! 〜バスのための18世紀フランス語カンタータ集 アンドレ・カンプラ(1660-1744):カンタータ「嫉妬深い男」(1728) ルイ=ニコラ・クレランボー(1676-1749):カンタータ「ピグマリオン」(1714) フィリップ・クルボワ(活躍期:1705-1730):カンタータ「オルフェ」(1711) ルイ=アントワーヌ・ドルネル(1685-1765):トリオによるコンセール集(1723) より 〔第5コンセール/第6コンセール/第2コンセール〕 ウーゴ・オリヴェイラ(B) フェルナンド・ミゲル・ジャロト(Cemb)指揮ルドヴィス・アンサンブル | ||
(P) (C) 2012? 。ピリオド楽器使用。#レーベル在庫限り。スタイリッシュなフランス・バロックと、変幻自在 のバス。古楽好きに強くお勧め、エスプリ溢れる器楽と声楽。 | ||
中世のチェンバロと、笛の調べ ある日、美の女神は(ドナート・ダ・フィレンツェPit) / 誇り高き鷹(Fa) 仲よくできないのは、欲望と、希望(Fa) / 喜ばないようにするために(ギラルデッロ・ダ・フィレンツェSq) 無題の小品(Fa第93-94葉表面) / ガエッタ(L) / ディアナはもう恋人に(ヤーコポ・ダ・ボローニャFa) サルタレッロ(L) / 優美なる鹿、気高きけもの(バルトリーノ・ダ・パドヴァFa) 素敵な花ひとつ(アントニオ・ザカラ・ダ・テナーモFa) / 楽しいことの始まり(L) ロゼッタの調べ(アントニオ・ザカラ・ダ・テナーモFa) / めでたし海の星(グレゴリオ聖歌 Fa) 無題の小品(Fa第49葉 裏面) / わたしが家路をたどるとき(ギヨーム・ド・マショーMA) 皇帝は座し(バルトリーノ・ダ・パドヴァFa) / なぜなら、わたしの悲しみは(ギヨーム・ド・マショーMA) なんという痛み(フランチェスコ・ランディーニFa) / サルタレッロ(L) 【楽譜出典】 FA; ファエンツァ区立図書館 MS117(通称「ファエンツァ写本」) L; 英国国立図書館 Ms Add.29987 / PiT; パリ、フランス国立図書館 イタリア叢書568 SQ; フィレンツェ、メディチ=ラウレンツィアーナ図書館Platino87(通称「スクヮルチャルーピ写本」) MA; パリ、フランス国立図書館 フランス叢書1514(マショーA 写本) コリーナ・マルティ(中世Cemb/各種中世リコーダー) | ||
時代は飛んで、ルネサンスよりもさらに昔の中世へ――理屈抜きに音の美にも浸りたい、ダ・ヴィンチらルネサンス絵画の三大巨匠さえまだ活躍していなかった頃、すでにチェンバロがこんなに美しい音楽を奏でていた。リコーダー無伴奏曲も素朴で快い、いとおしきピリオド楽器盤。 | ||
ロンドンのための協奏曲と序曲〜ヨハン・クリストフ・ペープシュ(1667-1752): 歌劇「乞食オペラ」序曲/オーボエ弦楽合奏と通奏低音のための5声の協奏曲 ト短調/ ヴァイオリン協奏曲 イ長調/トランペット、弦楽合奏と通奏低音のための6声の合奏協奏曲 ニ長調/ ヴァイオリン協奏曲 イ短調/ヴァイオリン、弦楽合奏と通奏低音のための合奏協奏曲 変ロ長調/ チェロ、ファゴット、弦楽合奏と通奏低音のための6声の合奏協奏曲 ヘ長調/歌劇「ヴィーナスとアドニス」序曲 ロバート・ローソン指揮ティクル=フィドル・ジェントルメン音楽協会 [タッシロ・エーアハルト(Vn) キンガ・ガーボルヤーニ(Vc) マーク・ベイジェント(Ob) サリー・ホルマン(Fg) クリスピアン・スティール・パーキンズ(Tp)] | ||
(P) (C) 2012 。ピリオド楽器使用。#レーベル在庫限り。音楽史に横槍を刺すかのごとく、驚くほど早い作例。協奏曲は英国でまず花開いた? 痛快演奏 | ||
ルネサンスの横笛、バロックの横笛〜リュートの響きを添えて クローダン・ド・セルミジ(1490-1562):すてきな森で ディエゴ・オルティス(1510頃-1570頃):アルカデルトの「わたしの幸せな両眼」によるレセルカーダ フランチェスコ・ダ・ミラノ(1497-1543):ファンタジア3様(*) / セルミジ:花さく時を生きるとも ティールマン・スザート(1510/15-1570):わたしもすぐに / ダ・ミラノ:リチェルカーレ(*) フランチェスコ・ロニョーニ(?-1626頃):パレストリーナの「清らかなるは、わが心」 フィリップ・ファン・ヴィルデル(1500頃-1554):ダンプ(*) ジョヴァンニ・バッサーノ(1558-1617):第3リチェルカータ ジューリオ・カッチーニ(1551-1618):星々を見てはため息をつき ジローラモ・フレスコバルディ(1583-1642):高音部と低音部のための第4カンツォーナ ジョアキン・ティボー・ド・クルヴィル(1535頃-1581):人知れず傷ついて悩んでいるとき、わたしは ピエール・ゲドロン(1563-1621):この傷ついた心が、もしただのひとときも コンスタンテイン・ハイヘンス(1596-1687):さあお互いどうしよう ロベール・ド・ヴィゼー(1655-1732):プレリュード(*) ジャック=マルタン・オトテール、通称ル・ロマン(1674-1763):岩場よ、おまえの返すこだまさえあれば ド・ヴィゼー:リュリ氏の「スペイン人たちのアントレ」(*) / オトテール:ある日、わたしのクロリスは ド・ヴィゼー:リュリ氏の「妖精ロジスティルのエール」(*) オトテール:あなたは貞淑なキジバトを手本にして/横吹式フルートと通奏低音のための第1組曲(+) ケイト・クラーク(ルネサンス&バロック型フルート3種;*以外) ナイジェル・ノース(リュート/テオルボ) | ||
この素朴な響きをソロで味わい尽くせるのは、なんという喜び!フルート独奏の最も古いルーツを3種のルネサンス&バロック型トラヴェルソでうつくしく味あわせてくれるのは、古楽先進国オランダで活躍する超・名手ケイト・クラーク、しかも伴奏はナイジェル・ノース。 | ||
ジャン=マリー・ルクレール(1697-1764):6つの協奏曲 Op.7 (1733) より(5曲) 〔第5番 イ短調/第2番 ニ長調/第4番 ヘ長調/第1番 ニ短調/第6番 イ長調〕 ルイス・オタビオ・サントス(Vn) ペーテル・ファン・ヘイヘン指揮アンサンブル・レ・ムファッティ [ドミトリー・バディアロフ、マリー・ハーフ、カトリーヌ・メーユス(Vn1) マルサン・ラシア、ラウレント・ヒュルスボス、中丸まどか(Vn2) ヴェンディ・ライメン、 ユリー・フェルミューレン(Va) マリアン・ミンネン、コランタン・デリクール(Vc) ブノワ・ファンデン・ベムデン(Cb) クリス・フェルヘルスト(Cemb/Org)] | ||
ピリオド楽器使用。フランス・ヴァイオリン楽派の祖ルクレール、あまりにもセンスのよい協奏曲群、Ramee 初期の盤でも独奏をつとめたラ・プティット・バンド出身の俊才による独奏&古楽大国ベルギーの最前線をひた走るレ・ムファッティによる演奏。 | ||
暁の星〜大航海時代、スペインの歌と器楽曲 ダルツァ:スペインのカラタ(通称「テルツェッティ」)/スペインのカラタ / 作曲者不詳:あなたは魅力的で J.ポンセ:心を失くしてしまった / バダホス:ああ、不幸なわたし / レオンのJ:ああ、自分をどう慰めれば デュ・ブリュケ:理由なき心の疼き / 作曲者不詳:アルブルケルケ、アルブルケルケ! ペーザロのユダヤ人グリエルモ:礼節ある過ち / デ・ラ・トレ:アルタ / ジスラン〔ヒスリン〕:ラ・スパニャ エスコバル:母さん、俺の悲しみは / 作曲者不詳:騎士さま、何の御用?/ディンドリン/夜明けにおいで フェルナンデス:結婚の失敗 / エンシナ:どうした、そんなに沈んで、グラナダの王よ 作曲者不詳:レダよ飲むがいい / リベラ:ある高い山の暗い小路を / 作曲者不詳:人生はかくも重い アンチエタ:乙女よ、神の母よ / エンシナ:喜びを苦しみと換えた方がましだ/この世の良いものは皆すぐに アリアンナ・サバール(歌/Hp) コリーナ・マルティ(リコーダー/Cemb) ミハウ・ゴントコ(ビウエラ/他)指揮 Ens.ラ・モルラ | ||
ピリオド楽器使用。イベリア半島にイスラム教徒の国があったころの記憶が、まだありありと鮮明だった頃。躍進めざましい「ジョルディ・サバールの娘」多芸なる歌手アリアンナが俊才集団とうたう、ルネサンス初期の憂愁、他者へのまなざし。スペイン古楽演奏史、いとも豊かに塗り替わる。 | ||
ふたつのヴァイオル〜英国音楽の分岐点 ジョン・ジェンキンズ(1592-1678):リラ・ヴァイオルのためのコンソート ニ長調 ウィリアム・ロウズ(1602-1645):二つのディヴィジョン・ヴァイオルとオルガンのための組曲 ト短調 クリストファー・シンプスン(1605頃-1669):二つのヴァイオルのためのディヴィジョン第7番 ト長調 トーマス・バルツァー(1631頃-1663):プレリュード ソロモン・エックルズ(1649-1710):ジョン・エックルズ氏のグラウンドによるディヴィジョン クリストファー・シンプスン:二つのヴァイオルのためのディヴィジョン第1番 ハ長調 ジョン・ジェンキンズ:リラ・ヴァイオルのためのコンソート ニ短調 クリストファー・シンプスン:二つのヴァイオルのためのディヴィジョン第5番 ヘ長調 ジョン・バニスター(1624-1679):バニスター氏のグラウンドによるディヴィジョン ジョン・ジェンキンズ:リラ・ヴァイオルのためのコンソート ニ短調 Ens.ミュージック・アンド・マース [イレーネ・クライン、ヤーネ・アハトマン(Vg) アマンディーヌ・ベイエール(Vn)他] | ||
ピリオド楽器使用。「ピューリタン革命で、英国音楽は枯渇した」...?いやいやいや、17世紀こそは英国音楽が最もエキサイティングだった時代のひとつ。「知られざる古い響き」を伝えるRaméeの新録音は艶やかさとダイナミズムが交錯する、ルネサンスからバロックへの極上ヴィオラ・ダ・ガンバ音楽。 | ||
マラン・マレ(1656-1728): 組曲〔ニ短調(第2曲集/1701)/ト短調(第5曲集/1725)/ ホ短調(第5曲集/1725年)/ヘ長調(第3曲集/1711)〕/ミュゼット ハ短調(第4曲集/1717) エティエンヌ・ル・モワーヌ(1640頃-1716):プレリュード ト短調 ロベール・ド・ヴィゼー(1660頃-1732頃):プレリュード ホ短調/プレリュード ハ短調 ミーネケ・ファン・デル・フェルデン(ヴィオラ・ダ・ガンバ) フレッド・ヤーコプス(フランス式テオルボ) | ||
押しも押されぬ大ヴェテランのファン・デル・フェルデン、満を持してのマラン・マレ録音はなんと「鍵盤ぬき」。通奏低音にはフランスで愛されていたテオルボ(大型リュート)、俊才フレッド・ヤーコプスの妙技とともに、繊細さの極致ともいうべきフランス・バロックの粋を。 | ||
J.S.バッハ(1685-1750):6つの組曲〔通称「イギリス組曲」〕 〔第1番 イ長調 BWV.806 /第2番 イ短調 BWV.807 /第3番 ト短調 BWV.808 / 第4番 ヘ長調 BWV.809 /第5番 ホ短調 BWV.810 /第6番 ニ短調 BWV.811 〕 パスカル・デュブリュイユ(Cemb) | ||
使用楽器:アムステルダムのティテュス・クライネン、1996年製作(リュッケルス1624年製作モデルを元とする復元楽器)。バッハの肝は「音楽のことばづかい」、いわゆる音楽修辞学。この道を究めるフランスの名手が世に送り出した充実録音。バッハの組曲語法の粋が凝縮された音楽、1音1音の含蓄はとてつもなく深く、RAMEEならではの自然派録音で。 | ||
16世紀、北ドイツ・バルト海沿岸の音楽〜シュトラールズント写本(1585)より オイハリウス・ホフマン(?-1588):主を信じなさい ジョスカン・デ・プレ(1450/55-1521):おお、いとも思慮深きおとめ(器楽) 作曲者不詳:あなたは傷をつけた / ジャック・アルカデルト(1507頃-1568):婚礼が、ガリラヤのカナで ヤーコプ・ マイラント(1542-1577):おお、女性たちのなかで最も美しく ルートヴィヒ・ゼンフル(1486頃-1542/43頃):アレルヤ、主とともにあれ アントニオ・スカンデッロ(1517-1580):救世主は死の縄につながれても/あなただけが、主よ グレゴール・ランゲ(1540-1587):わたしは神の怒りに従う トーマス・シュトルツァー(1480頃-1526):祝福あれ、主を畏れる全ての者に ハインリヒ・イザーク(1450頃-1517):救世主、神の子であらせられるかた スコラ・ストラルスンデンシス[独唱5/ヴィオラ・ダ・ガンバ5/ リコーダー5/ドゥルツィアン/ルネサンス・フルート3/オルガネット] | ||
(P) (C) 2013 。ピリオド楽器使用。#レーベル在庫限り。ルネサンスの「意外な美」、さすが RAMEE の 視点。古楽器+声楽、16世紀の「北の美」に息を飲む。 | ||
ラインハルト・カイザー(1674-1739): 受難オラトリオ「イエス、世界の罪ゆえに苦しみ死す」(通称「ブロッケス受難曲」) ジュジ・トート(S) ペーター・コーイ(B) ヤン・ファン・エルサッケル(T) ペーテル・ファン・ヘイヘン指揮 Ens. レ・ムファッティ、ヴォクス・ルミニス(cho.) | ||
ピリオド楽器使用。テレマンと人気を二分した、後期バロックの「北の巨匠」カイザー。あざやかな作曲手腕を強く印象づける傑作『ブロッケス受難曲』は、バッハの受難曲群より10年以上も前に書かれヘンデルやテレマンの同題作の手本ともなった傑作。欧州屈指の俊英陣、意欲的名演。 | ||
皇帝のトロンボーンと、歌 ヨハン・ヨーゼフ・フックス(1660頃-1741): オラトリオ「庭園のイエス・キリスト」〜アリア「彼らはあなたを呼んでいる」/ 3声と通奏低音のための3つのソナタ〔 K.68 / K.365 / K.379 〕 マルカントニオ・ズィアーニ(1653頃-1715):モテット「贖い主の愛しき母君」 アントニオ・カルダーラ(1670-1736): オラトリオ「ヨアス」〜アリア「このとおり、かたく凍てついた川を前に」/ オラトリオ「キリストの死と埋葬」〜レチタティーヴォとアリア「やつれ、死ぬとは」 イグナツィオ・マーリア・コンティ(1699-1759): オラトリオ「イスラム巡礼の崩壊」〜アリア「この心のうちに、神のみわざを感じる」() フランティシェク・イグナーツ・トゥーマ(1704-1774): 2つのヴァイオリン、2つのトロンボーンと通奏低音のためのソナタ ジュゼッペ・ポルシーレ(1680-1750):オラトリオ「勝利のユディタ」〜レチタティーヴォとアリア「永遠の女王は」 ピエトロ・カザーティ(1684-1745):サルヴェ・レジーナ(ごきげんよう、皇后さま)〜モテット フランチェスコ・バルトローメオ・コンティ(1681頃-1732): オラトリオ「サウルに付け狙われるダヴィデ」〜アリア「わたしは逃げる、別の森へと」 アレックス・ポッター(CT) キャスリーン・モートゥズ、 シメン・ファン・メヘレン(バロックTb) Ens.ラ・フォンテーヌ・ヴィンタートゥル | ||
バロック末期、異色だった神聖ローマ皇室の宮廷楽団では、トロンボーンのソロが大活躍。モーツァルト「レクィエム」でのユニークなソロ・パートにも通じる、この独特な伝統の来し方を欧州古楽の中心地・スイスに集う俊才たちが、しなやかな技芸で「いま」に伝えてくれる充実企画。 | ||
J.S.バッハ(1685-1750):鍵盤練習曲集第3巻〜 オルガンのためのさまざまな前奏曲 全曲 BWV552, 669-689, 802-805 レオン・ベルベン(Org) | ||
録音:聖ゲオルク教会、グラウホーフ=ゴスラール、ドイツ中部。使用楽器:トロイトマン、1737年建造。何よりもまず鍵盤奏者=つまり「オルガニスト」だったバッハが、鍵盤芸術の全てを注ぎ込んだ傑作曲集。待望の録音を、異能集団ムジカ・アンティクヮ・ケルンで最後まで通奏低音をつとめた鬼才ベルベンが。曲集の出版とほぼ同時期に作られた、ドイツ中部の歴史的銘器の響きも美しい、物語性ある絶美の名演。 | ||
ミケランジェロ・ガリレイ(1575-1631):リュート作品集 ソナタ〔ヘ短調/変ロ長調/ハ短調/ハ長調/ト長調/イ短調〕/トッカータ〔ニ短調/ヘ長調〕 ヴィンチェンツォ・ガリレイ(1520頃-1591): わたしは誰も知り得ない/第3ファンタジア/カリオペ/ポリュムニア/ウラニア アントニー・ベイルズ(リュート) | ||
天文学者に止まらない天才ガリレオ・ガリレイの弟の一人と父は音楽家。これはその弟ミケランジェロにスポットを当て、父ヴィンチェンツォの作品も収録したアルバム。ミケランジェロ・ガリレイは巨匠ラッスス亡き後のミュンヘン宮廷で、イタリア・ルネサンス&バロック様式にとどまらない多元的な音楽作法をリュートで追求した名匠。大御所ベイルズ、満を持しての名演。 | ||
獅子の耳〜レオ10世とと音楽 マントヴァのロッシーノ(1510年頃活躍):リルム・ビリリルム ドメニコ・ダ・ピアチェンツァ(1400-1476頃):ロスティボッリ・ジョイオーゾ アントワーヌ・ブリュイエ(?-1521以降):幸せにお生きなさい フランチェスコ・ダ・ミラノ(1497-1543):リチェルカーレ第4番/わたしの悲しき絶望について/ 「わたしの悲しき絶望について」によるファンタジア/リチェルカーレ第10番 ミケーレ・ぺゼンティ(1470頃-1528):彼女はどうするだろうか、何というだろう ベルナルド・ピサーノ(1490-1548):道ゆく者たちよ、みな聞きたまえ ニコラウス〔ニコラース〕・クラーン(1449/50頃-1507):そこでわたしは見た、天が裂け カルパントラ〔エルゼアル・ジュネ/エリジアーリ・ジェネティ〕(1470頃-1548):イェルサレムよ、思いなおしなさい マルコ・アントニオ・カヴァッツォーニ(1490頃-1560頃):レチェルカーダ/ある日、その朝/おお、海の導き星よ ハインリヒ・イザーク(1450/55-1517):望みなきこの運気/聖ペトロが/どのように報いれば、獅子なるかたよ ジャン・ムトン(1459以前-1522):あらゆる苦難と絶望を越えて ジョスカン・デ・プレ(1455-1521):サルヴェ・レジナ 作曲者不詳:わたしは、いかなる希望もあなたにかけたことはない(伝・レオ10世)/ 驚きとともに天を仰いだことがないなら/望みなきこの運気 レオ10世(1475-1521):それは、何はなくとも/教皇レオ10世のカノン Ens.ラ・モルラ [コリーナ・マルティ(Fl−tr/Cemb/音楽監督) ミハウ・ゴントコ(リュート/ヴィオラ・ダ・マノ/音楽監督) デイヴィッド・ハッチャー(ヴィオラ・ダ・ガンバ/リコーダー)他〔5Vo/他〕] | ||
録音:2015年2月。ピリオド楽器使用。15世紀が熱い!古楽集団ラ・モルラならではの企画性あふれる録音は、絵画鑑賞にもピッタリの内容。 | ||
J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV.988 (クラヴィーア練習曲集第4巻) |
パスカル・ デュブリュイユ(Cemb) | |
使用楽器:ティテュス・クライネン製作〔モデル:I.クーシェ(アントヴェルペン)、1679年製作〕。 | ||
銀の糸、金の糸〜2本のFl−trのための組曲とブリュネット(恋歌) ピエール・ダニカン・フィリドール(1681-1731): 2本の横吹式フルートのための組曲(1717)〔第1番−第3番/第7番/第8番/第11番〕 ミシェル・ピニョレ・ド・モンドンヴィル(1667-1737): 「古今ブリュネットさまざま、フルート編曲作品集」(1695) 〔優しい目の小さなブリュネット/草原と森/あなたと会わずに過ごした二日/リゼットはその羊飼いを愛してる/ 草の上に座って/セーヌの川縁に咲くアイリス/恋人がなんであれ/羊飼いのアネット/恋人/あなたは酷い人〕 マリー=セリーヌ・ラッベ、マリオン・トロイペル=フランク(Fl−tr) | ||
使用楽器:ルドルフ・トゥツ〔インスブルック〕複製(モデル:J.H.ロッテンブルフ〔ブリュッセル〕、1730年頃製作)。2本で2倍、2人で2倍―ロココを見据えて、18世紀美しきフルート・デュオの、魅惑2倍なフランス古楽。 | ||
ポーランドとルネサンス・リュート音楽〜1600年前後の独奏曲さまざま M.ヴァイセル編「リュート奏法譜集」(1591年フランクフルト・アン・デア・オーダー刊) A.デンス編「音楽の精華」(1594年ケルン刊) ジョヴァンニ・アントーニオ・テルツィ「リュート奏法譜集第2巻」(1599年ヴェネツィア刊) J−B.ブサール編「音楽の宝物庫」(1603年ケルン刊) T.ヒューム「第一楽曲集」(1605年ロンドン刊) N.ヴァレ「ムーサの秘術」(1615年アムステルダム刊) E.メルテル「新たなる音楽作品集」(1615年シュトラスブルク〔ストラスブール〕刊) J−B.ブサール編「新作曲集」(1617年アウクスブルク刊)他、欧州各地の図書館・個人蔵の手稿譜より ミハウ・ゴントコ(リュート) | ||
使用楽器:ポール・トムスン、1996年製作〔7コース、イタリア・ルネサンス型〕。「コペルニクスの国」は、ルネサンス期の超・大国!ポーランドの絶品リュート芸術、同国の異才が深々と。 | ||
SOLAL 古楽レーベル RAMEE の主宰者ライナー・アルント(S.クイケン門下の現役バロック・ヴァイオリン奏者でもある)が、エンジニア=プロデューサーとして新たに手がけるドイツの新レーベル。「RAMEE は古楽レーベルとしてレーベル・イメージを定着させたいが、自分としては古楽だけに限らず、幅広い音楽を手がけていきたい」とアルント氏は語っており、新たにスタートさせたこのレーベルでは、一貫してモダーン楽器の演奏を提供してゆく形となるようだ。 | ||
ヘンデルのソプラノ、クッツォーニのためのアリア集〜ヘンデル: 「シピオーネ」より〔序曲/行進曲/シンフォニア/ Scoglio d’immota fronde 〕/ 「オットーネ」〜コンチェルト/「ジューリオ・チェーザレ」より/「ロデリンダ」より/ 「シオレ」より/「タメルラーノ」より/「トロメーオ」より〔序曲/ Torni omai la pace all’alma 〕/ 「アドメート 」〜シンフォニア/「アレッサンドロ」〜 No più soffrir non voglio ハスナー・ベンナーニ(S) ペーテル・ファン・ヘイヘン指揮レ・ムファッティ | ||
フランチェスカ・クッツォーニ(1691-1772)はヘンデルのオペラで初演を多数務めたソプラノ歌手。 | ||
ヨハン・クリストフ・ペプーシュ(1667-1752): 2幕のマスク(仮面劇)「ヴィーナスとアドニス」(1715) フィリッパ・ハイド(アドニス) リチャード・エドガー=ウィルソン(マルス) ロバート・ローソン指揮ティクル=フィドル・ジェントルメン音楽協会 | ||
(P) (C) 2016 。ピリオド楽器使用。 | ||
ピアノ連弾のためのアメリカ近代作品集 レナード・バーンスタイン(1918-90)/ジョン・マストウ編: 「ウェストサイド・ストーリー」〜シンフォニック・ダンス サミュエル・バーバー(1910-81):スーヴェニアズ(追憶) ジョージ・ガーシュウィン(1898-1937): ラプソディ・イン・ブルー(2台のピアノのためのオリジナル版) |
イレーヌ&イヴォンヌ・ビュゴ(P) | |
イヴォンヌ・ルフェビュールの系譜を継ぎ、デームスの音楽性をひく手際確かな姉妹デュオの自在に伸縮する、普遍性をもったアメリカ音楽解釈! 往年のローラ・ボベスコ同様ルーマニアから出てベルギーを拠点に据え、1990年代頃から旺盛な演奏活動を行っているビュゴ姉妹のデュオ。ブリュッセル王立音楽院を卒業後、キャリア形成に先立って名教師ノエル・リーや伝説的名手イヴォンヌ・ルフェビュールといったフランス系の奏者、さらにイェルク・デームスにも師事して研鑚に磨きをかけてきた。そしてここにリリースされるSOLAL第一弾録音では、ダイナミズムと構築感がなければ空中分解してしまうようなアメリカのクラシック大曲群を堂々、独特のセンスで弾きこなす。 基本的に、タッチは軽い。しかしジャズ的に軽いのではなく、フランス系のピアニストやウィーン三羽烏初期のそれのような、クラシック的な安定感の上での軽やかさ。それゆえ、ともすれば誤った厚化粧でうっとうしくなりかねないバーンスタインやガーシュウィンも、むしろ「西欧クラシックの語法のなかに、アメリカの民俗要素を取り込んだ」といった感じの、いわば普遍的な美質をもって響く。独特というか、はっきりと自己の音楽があるからできる芸当だろう。オトナの安定感のなかで、くどくならずにさらっと聴かせる絶品の「ラプソディ・イン・ブルー」など、まさに真骨頂!それでいてアクセント感や大きな伸縮の幅、深みある低音の味わいなどにもすぐれている。いやいや、クセになる1枚。 | ||
J.S.バッハ(1685-1750): 無伴奏チェロ組曲(全6曲) 「低音伴奏なしチェロのための6つの組曲」 |
ヴィヴィアーヌ・スパノゲ(Vc) 使用楽器:クレモナのフランチェスコ・ ルジェーリ、1670年作(モダーン楽器) | |
シュタルケル門下から出たベルギーの名手、薫り高く柔軟・たおやかな弓使いをバッハの傑作で印象づける。古楽派が認めた名演をお聴きあれ! モダーン楽器にピリオド楽器、名手の再録音に若手の新録音、異種楽器に肩掛けヴィオラ…名録音居並ぶ超名作「無伴奏チェロ組曲」に、確固とした存在感を誇る新作が登場!SOLALの主宰者たるバロック・ヴァイオリン奏者R.アルントが確かな信頼とともに世に問うた、ベルギーの実力派ヴィヴィアーヌ・スパノゲの録音だ。 スパノゲはベルギーとアメリカでシュタルケルに師事した人で、F-J.ティオリエ(P)やL.チリンギリアン(Vn)ら様々な名手との室内楽に精を出す一方、独奏者としても幅広く活躍。日本の愛好家には、Talentでの忘れがたいフランス近代ソナタ集やエネスコのソナタ集でご存知の方も多いのでは。ベルギー人らしい絶妙の音色美と、シュタルケル譲りの筋の通った解釈姿勢が魅力の実力派だ。 今回のバッハ録音で使われているのは、モダーン楽器とはいえ元々は17世紀クレモナで作られた楽器。ゴリゴリと芯の太い低音部、しなやかに歌う高音部、いずれも聴く者の心を落ち着かせる、触感確かな美音に満ちている。スパーノは静かに落ち着いた心で、一音一音大切に、しかし何ら押し付けがましさのない自然さでこの銘器を、この名曲を奏でてゆく。ヴィブラートは本当に必要な箇所にだけ、ほんの少しかけている。結果的にあらわれるのは、あくまで素直に受け入れられる、しかしありそうでない「中庸の心地よさ」。曲を知る人ほどまた帰ってきたくなる、そしてこれを“最初の無伴奏チェロ組曲全曲集 "として買う人は幸せ…といった感のある秀逸な一作として、ぜひお薦めしたい。 | ||
バッハによる編曲/編曲されるバッハ J.S.バッハ(1685-1750): プレリュード イ短調 BWV931 (+)/ トリオ・ソナタ イ短調 BWV528b (原曲:オルガン)(*/#/+)/ プレリュード ニ短調 BWV899 (+)/ ソナタ ニ短調 BWV1029 (原曲:ヴィオラ・ダ・ガンバと オブリガート・チェンバロ)(*/#/+)/ プレリュード ハ長調 BWV924 (+)/ トリオ・ソナタ イ短調 BWV528b (原曲:オルガン)(*/#/**)/ ファンタジアまたはプレリュード ハ短調 BWV921(+)/ ソナタ へ長調 BWV1028 (原曲:ヴィオラ・ダ・ガンバと オブリガート・チェンバロ)(*/#/+)/ 練習曲 ト短調 BWV598 (原曲:オルガン・ペダル鍵盤)(#)/ コラール「神よ、ただ汝こそ尊けれ」BWV676 (原曲:オルガン)(*/#/**) |
アンサンブル・ ラテルナ・マジカ [ナターリエ・ハウトマン、 ラウラ・ポク (リコーダー;*) ベルナール・ ヴォルテーシュ (バロックVc;#) ラファエル・コリニョン (Cemb;+/Org;**)] | |
ナイーヴなリコーダーかと思ったら、とんでもない!トリオ・ソナタはもちろんの、最後にはコラールまで対位法の綾を抑揚豊かに解きほぐす笛の音の美。 バッハはしばしば、すでに書き上げている楽曲を、別の編成のために編曲、それらがたんなる再利用以上の演奏効果を上げる場合もしばしば…というのはご存知の通り。しかしここではリコーダー2本とチェロ、鍵盤という4人編成のため、最初はユルめのトリオ・ソナタ編曲(わりと試みる人は多いが、リコーダーへの編曲…というのは(例の無伴奏チェロ編曲を除けば)CDでは“ありそうでない ")にはじまり、やがてオルガン曲から無伴奏チェロへの編曲、そしてシメはオルガン曲からトリオ編成への編曲…と、そのひとつひとつが絶妙の説得力をもって、まるで最初からそんな編成だったかのように響く。曲者だ。合間ごとには「W.F.バッハのための音楽帳」からのチェンバロ作品がさしはさまれ、音楽家一家の家庭音楽といった親しみやすさがある…しかし手抜きはいっさいなし!リコーダーは精妙なブレスコントロールで、キュートなサウンドも聴けば聴くほど本格派。いや、曲者だ。ハーグ王立音楽院、パリ国立高等音楽院、ブリュッセル王立音楽院の三名門から出た若き古楽奏者たちが集い結成されたアンサンブル・ラテルナ・マジカ、なんとも侮れない面子。結成間もない団体なのに、聞けばインドや東南アジアにはかなり足繁くツアーをしているというから、もう一歩足を伸ばして日本まで来れば良いのに…と、実際に耳にすれば思うこと必至、好感度120%な1枚。 | ||
ブクステフーデ、バッハの偉大な先達 ディートリヒ・ブクステフーデ(1637-1707): カンタータ集 イェス、わが生命の命 BuxWV62 / 天使に、彼が来るよう 命じて下さい BuxWV10 / いかにも、 彼は我らが苦しみを取り除き BuxWV31 / 主よ、 わたしたちを救って頂きたい BuxWV34 / 主はわたしとともにある BuxWV15 / 主よ、わたしはあなたを 心から慕って来た BuxWV41 |
ヒュープ・エーレン指揮 コレギウム・アド・モサム | |
ピリオド楽器使用。チェロ抜き弦編成、豊饒な“うた "の表現力。どこをとっても本格的、こんな実力派が隠れていた。堂に入った名録音1枚で、300周年を一気に堪能! 2007年歿後300周年を迎えるブクステフーデは、いわずと知れた北ドイツ17世紀の巨匠。大バッハが若い頃「ちょっと聴いて勉強して来る」と1ヶ月休暇をもらいブクステフーデのいるリューベックまで出かけ、そのまま4ヶ月も帰ってこなかったのは有名な話。オルガン音楽がこの北ドイツの巨匠を最も有名にしたジャンルだが、トン・コープマン他の積極的な紹介もあり、20世紀末にはその声楽作品もどんどん再認識されてきている。大バッハの豊饒なカンタータ芸術の源でもあるその音楽世界を、たった1枚のアルバムで心ゆくまで堪能させるのが本盤だ。 コレギウム・アド・モサムというアンサンブルも、南オランダのリンブルフに生まれたヒュープ・エーレンという古楽指揮者も、日本では馴染みがないかもしれない。しかしこの集団、実は1994年から活動を続けているようで、バッハの大作からモンテヴェルディの「晩課」、ルネサンス・ドイツの声楽作品まで幅広いジャンルをこなしてきたようで、実際その演奏たるや最前線のオランダ=ベルギー系古楽アンサンブルに比するインテンスな表現力があふれんばかり!ディジリドゥーまで吹く多芸派トランペッターやMAKのリュート奏者ミヒャエル・デュッカーといった隠れ芸達者の存在もあって器楽陣の充実度もかなりのもの(チェロを抜いてコントラバスのみ、たまにガンバの入る低音陣というのがまた渋くてドイツ・バロックぽい!)コアなファンに自信を持って勧められるのはもちろん、ブクステフーデの声楽って?という方に「まず1枚」と差し出せる、ぬかりない内容と演奏の質だ。 |