ピエルルイジ・ビローネ(1960-): OM ON (2015)
ヤロン・ドイチュ、トム・パウエルズ(電気G) | ||
録音:2018年。 | ||
The Clash of Icicles 〜ニルマリ・フェン(1979-):室内楽作品集
香港・新音楽アンサンブル | ||
スチュアート・サンダース・スミス(1948-): ニュー・イングランド |
ベルント・ターナー (ヴィブラフォン) | |
録音:2017年。 | ||
マウリツィオ・ピサティ(1959-): Set7
ルーベン・マッティア・サントルサ(G) マリー・デルプラート(ペッツォルト・リコーダー) ジョアン・カルロス・パチェコ(Perc) フーゴ・クエイロス(バスCl) セリーヌ・ヴァスマー(声) ケヴィン・ジュイエラ(テナーSax) リーノ・メンドーサ(Cb) アンネ=ラウレ・ドットレンス(Va) | ||
願望〜ロジャー・レイノルズ(1934-): 「 Shifting/Drifting 」(*) /「 imagE/violin imAge/violin 」/願望(2004) (#) /Kokoro(1991/92) アーヴィン・アルディッティ(Vn) ポール・ヘンブリー(エレクトロニクス;*) マーク・メンジーズ指揮 Inauthentica [アンサンブル] | ||
録音:2015年8月-10月。 | ||
オズヴァルド・コルッチーノ(1963-):エンブレマ 〔1(フルート又はバスフルート、バスクラリネット、ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのための)(2009-10) / 3(フルートとヴァイオリンのための)(2009-10) /4(ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのための)(2011) / 5(クラリネット、ヴァイオリン、チェロとピアノのための)(2011) / 6(バスフルート、バスクラリネットとチェロのための)(2012) / 7(フルート、クラリネット、ヴァイオリンとチェロのための)(2015) 〕 エクス・ノーヴォ・アンサンブル | ||
録音:2017年1月18日、30日、イタリア。大管弦楽のための作品だという「2」は未収録。 | ||
ラモン・ラスカーノ(1968-):ピアノ作品集
アルフォンソ・ゴメス、マルタ・サバレタ、ラモン・ラスカノ(P) エルネスト・マルティネス・イスキエルド指揮ビルバオso. | ||
ピエルルイージ・ビローネ(1960-): FACE
PHACE (アンサンブル) | ||
Engage and Share 〜ラーシュ・グラウゴー(1957-):シンフォニエッタのための作品集
ホアン・セルベロ指揮バレンシア器楽グループ | ||
録音:2017年。 | ||
ヨハネス・カリツケ(1959-): チェロと管弦楽のための「 Storry Teller 」(2015/16) / 独奏ヴァイオリンと6つの楽器のための「 Figuren am Harizont 」(2011) ヨハネス・モーザー(Vc) イヴァナ・プリスタショヴァー(Vn) ヨハネス・カリツケ指揮ベルリン・ドイツso.、新音楽オーストリア・アンサンブル | ||
録音:2017年1月18日、2012年5月9日。 | ||
ドミニク・シェーファー(1967-):作品集
マティアス・クーン指揮アンサンブル・プロトン・ベルン | ||
Kaleidoscope 〜チャン・ウノ(1983-): 弦楽四重奏曲第2番(2011) /6人の打楽器奏者のための「白い影」(2012) / 独奏フルートと5つの楽器のための「 Gohok 」(2012/13) / 7つの楽器のための「パノラマ」(2015) アルディッティSQ アンサンブルTaCTuS アンサンブル・コントルシャン ディヴェルティメント・アンサンブル | ||
録音:2012年-2013年、2015年。 | ||
ルーカ・ロンバルディ(1945-):独奏フルートのための音楽(11曲)
ロベルト・ファブリチアーニ(Fl) レオナルト・エルシェンブロイヒ(Vc) | ||
録音:2008年、2010年。 | ||
秦文琛〔 Wenchen Qin /チン・ウェンチャン〕(1966-):管弦楽作品集 箏と管弦楽のための「他の海岸からのこだま」(2015) /管弦楽とテープのための「自然の対話」(2010) / 琵琶と弦楽オーケストラのための「空を横切る」(2010) /42弦楽器のための「孤独な歌」(1990/2015) ジ・ウェイ(箏) ラン・ウェイウェイ(琵琶) ゴットフリード・ラプル指揮ウィーン放送so. | ||
録音:2016年3月7日-14日、Groser Sendesaal, ORF Funkhaus, Vienna, Austria 。 | ||
Noch sind wir ein Wort...〜エーファ・ライター(1976-): コントラバスリコーダー、コントラバス、 奏者たちの合唱とエレクトロニクスのための「 Noch sind wir ein Wort... 」(2016) / 声、フルート、ダン・バウ、ヴィオラと打楽器のための「 Masque de Fer 」(2017) / ヴァイオリンとペダル・ボードのための「 Allemande multiplee 」(2017) / フルート、トランペット、トロンボーン、打楽器、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、 コントラバスとエレクトロニクスのための「 Irrlicht 」(2012) / 弦楽四重奏とトランスデューサのための「 In groben Zugen 」(2014) / コントラバスフルートとエレクトロニクスのための「 Konter 」(2009) クラングフォルム・ウィーン | ||
録音:2012年、2016年-2017年。 | ||
ジョージ・クラム(1929-):マクロコスモス I-III
清水美子(P) ルパート・ストルーバー(Perc) | ||
録音:2016年-2017年。 | ||
フリードリヒ・チェルハ(1928-): Eine Art Chansons
HK Gruber chansonnier [ヨーゼフ・ピツェク(Cb) クルト・プシホダ(Perc) ライナー・コイシュニヒ(P)] | ||
録音:1988年。 | ||
ルチア・ロンケッティ(1963-): action music pieces
マティアス・ピンチャー指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン クリスティアン・ディールスタイン(Perc) ミケーレ・マルコ・ロッシ(Vc) ルカ・プファフ指揮オルケストラ・デッラ・トスカーナ | ||
録音:2013年-2017年。 | ||
ステファン・ヴェグホウスキ:コンテンポラリー・ジューイッシュ・ミュージック
デイヴィッド・クラカウアー(Cl) ツェザリー・コンラッド(Perc) アダム・コシュミエジャ(P) ミコワイ・トゥルザスカ(Sax) マチェイ・ヤーロン(Vn) ヴェロニカ・ディージック、マテウス・ワソウスキ、 ユスティナ・プタシンスカ、ダヴィド・スルミエジ(Vo) | ||
サミュエル・アンドレーエフ(1981-):作品集
オリヴィエ・モーレル指揮 大久保 彩子指揮 HANATSUmiroir [アンサンブル] | ||
録音:2015年、2018年。 | ||
ウリ・フッセネッガー(1966-): San Teodoro 8 (2014)
エルネスト・モリナーリ(コントラバスCl) マイク・スヴォボダ(Tb) マルティン・ジーヴェルト(電気G/デヴァイス) ウリ・フッセネッガー(Cb/プレイバック) | ||
録音:2014年5月9日、 Haus Witten, Witten, Germany 、ライヴ。 | ||
サミール・オデ=タミミ(1970-): ピアノ三重奏とテナー・バス・トロンボーン [tenor bass trombone] のための「 Lámed 」(2014) / 無伴奏チェロのための「 Uffukk 」(2010) / テナー・バス・トロンボーンと打楽器のための「 Li–Sabbrá 」(2005/15) / バリトン・サクソフォンのための「 Lámed II 」(2014/15) /アンサンブルのための「 Alif 」(2015) (#) / 無伴奏ヴァイオリンのための「ソロ」(2014/15) /バス・クラリネットのための「 Lámed III 」(2014/17) / フルート、ピアノと打楽器のための「 Li-Umm-Kámel 」(2004) ザフラーン・アンサンブル ザロメ・カンマー(Vo;#) マヌエル・ナウリ指揮(#) | ||
録音:2017年5月21日-24日、小ゼンデザール、 RBB 、ベルリン。 | ||
ルイジ・ノーノ(1924-1990): ソプラノ、ピアノ、管弦楽とテープのための「力と光の波のように」(1971-72) (*) / ピアノと磁気テープのための「苦悩に満ちながらも晴朗な波・・・」(1975-77) (#) パウロ・デ・アシス(1969-):広がる波・・・ルイジ・ノーノと共に(2012) (+) ヤン・ミヒールス(P) クラウディア・バラインスキー(S;*) アンドレ・リシャール(サウンド・プロジェクション;*) パウロ・デ・アシス(サウンド・プロジェクション;#) SWR エクスペリメンタルスタジオ(*) ラインホルト・ブレイク(サウンド・ディレクター・アシスタント;*) ペーター・ルンデル指揮(*/+) レオ・ヴァリンスキー指揮(+) WDRso.(*/+) | ||
録音:2012年11月10日-11日、フィルハーモニー(#以外)、2016年12月9日、フンクハウス(#)、全てケルン。 | ||
フランコ・ドナトーニ(1927-2000):室内楽作品集 ハープ独奏のための「 Marches 」(1979) /ピッコロ独奏のための「 Nidi 」(1979) / クラリネット独奏のための「 Clair 」(1980) /ピッコロ、クラリネットとハープのための「 Small 」(1981) / ピアノ独奏のための「 Estratto 」(1969) /ピアノ、チェンバロとハープのための「 Secondo Estratto 」(1970) / ピッコロ、フルート、ヴァイオリン、マンドリン、ハープ、 チェンバロ、ピアノとチェレスタのための「 Quarto Estratto 」(1974) アンサンブル・アダプター | ||
録音:2014年-2015年。 | ||
ピエルルイジ・ビローネ:作品集 | マルコ・フージ(Va/Vn) | |
The Cold Trip 〜ベルンハルト・ラング(1957-): The Cold Trip 〔第1部(12曲)(*) /第2部(14曲) (#) 〕 サラ・マリア・サン(Vo;*) アレフ・ギター四重奏団(*) ジュリエット・フレイザー(Vo;#) マーク・ヌープ(P&ラップトップ;#) | ||
録音:2017年2月25日-26日、アート・アンド・メディア・センター、カールスルーエ (ZKM) 、ドイツ(*) /2017年1月11日-12日、パフォーマンス・スペース・シティ、ロンドン大学| (P) (C) 2017 。 | ||
ピエルルイジ・ビローネ:Sgorgo Y . N . oO
ヤロン・ドイチュ(電気G) | ||
アルトゥロ・フエンテス(1975-): Broken mirrors (2008, rev.2014) / Liquid crystals (2011) / Ice reflection (2014) / Glass distortion (2015) ディオティマSQ | ||
録音:2015年3月4日-7日、音楽&音響研究所、アート・アンド・メディア・センター、カールスルーエ (ZKM) 、ドイツ。 メキシコ生まれで、1992年にフランコ・ドナトーニ(1925-2000)と出会って教えを受け、2017年現在インスブルック在住の作曲家による弦楽四重奏のための作品集。 | ||
ミン・ツァオ:プラス・マイナス(2012/13)
ヨハネス・カリツケ指揮アンサンブル・アスコルタ シュテファン・シュライバー指揮ベルリン新音楽室内楽アンサンブル | ||
クラウディオ・アンブロジーニ: ギター作品集 |
アルベルト・メシルカ(G) | |
オルガ・ノイヴィルト(1968-): 映画「グッドナイト・マミー」オリジナル・サウンドトラック ウィーン・グラス・ハーモニカ・デュオ ハインツ・ディッチ(ミュージカル・ソウ) オルガ・ノイヴィルト(電子音響/その他の多くの楽器) | ||
録音:2014年6月。いまや KAIROS が一押しの作曲家ノイヴィルトがヴェロニカ・フランツのサイコスリラー映画「グッドナイト・マミー」につけた音楽のオリジナル・サウンドトラック。美容整形の手術で別人のように冷たい人格になったママ。子供たちは次第に本当のママなのか疑い始め本性を暴くためある行動に出る。果たしてその正体とは? シッチェス・カタルーニャ国際映画祭グランプリ作品。2016年1月に日本でも公開、DVDも発売されサブカル、アングラ系の映画ファンにカルト的に支持された。ノイヴィルトはミュージカル・ソウ、グラス・ハーモニカを多用し美しく残酷な音響を作り出している。 | ||
冬の歌〜ハヤ・チェルノヴィン:作品集
カイ・ヴェッセル(CT) ジェフリー・ギャヴェット(Br) ウィリアム・シンメル(アコーディオン) スティーヴン・シック指揮インターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブル | ||
Substantie 〜ペーター・ヤコーバー(1977): アンサンブルとライヴ・エレクトロニクスのための「 Substantie 」(2015) (*) / チェロと8トラック・オーディオのための「 Puls 2 」(2005) (#) / 弦楽四重奏曲(2010) (+) / ヴァイオリンとライヴ・エレクトロニクスのための「 Nach Aussen 」(2008) (**) バス・ウィーヘルス指揮クラングフォルム・ウィーン(*) ペーター・ヤコーバー(ライヴ・エレクトロニクス;*/**) ミヒャエル・モーザー(Vc;#) アザゼッロSQ (+) アンネリー・ガール(Vn;**) | ||
録音:2015年11月13日、モーツァルト=ザール、コンツェルトハウス、ウィーン、ウィーン・モデルン〔音楽祭〕(*) /2017年、 minusgroundzero, ウィーン(#) /2010年9月23日、聖マルティン教会、チロル地方スタジオ、ORF 、Klangspuren Schwaz 〔音楽祭〕(+) /2008年、 Wels, Pavillon (**) 、すべてオーストリア| (P) (C) 2017 。(*)はオーストリアの「エルステ銀行作曲賞 [Erste Bank Composition Award] 」受賞作。ヤコーバーはゲオルク・フリードリヒ・ハースらに学んだオーストリアの作曲家。 | ||
フリードリヒ・チェルハ(1926-): 夜(2012/13) (*) /管弦楽のための3つの小品〔星の子守歌(2006) /間奏曲(2010-11) /墓(2011) 〕 エミリオ・ポマリコ指揮 SWR バーデン=バーデン・フライブルク南西ドイツ放送so.(*) ユッカ=ペッカ・サラステ指揮 WDR ケルン放送so.(*以外) | ||
録音:2014年10月17日、バール=シュポルトハレ,ドナウエッシンゲン(*) /2014年2月7日、フィルハーモニー、ケルン(*以外) 。既出:NEOS, NEOS-11522/24 (*) 。現代オーストリア作曲界の重鎮チェルハは2016年90歳。亡くなったブーレーズと同い年だが、こちらは健康も創作意欲もいまだ大健在。ここに収められた作品は全て大オーケストラによるもので「夜」は20分に及ぶ大作。作曲当時チェルハ87歳、そのエネルギーに舌を巻く。管弦楽のための3つの小品はタイトルそのものにベルクの影響を感じさせるが、内容もそのままで表現主義的なドラマ性の強い作品。大管弦楽が炸裂し聴きごたえ充分。このまま行くとチェルハはアメリカのエリオット・カーター並みの現役最長老作曲家となるであろう。 | ||
グレイス・ノート〔装飾音〕〜 イタロ・カルヴィーノ(1923-1985)著「新世紀のための6つの覚え書」による 制作&アンサンブル: PHASE〔Sax/Perc/Vc/Cb〕 アイデア、作曲&ライヴ・エレクトロニクス:アルトゥーロ・フエンテス 振付&舞台装置:クリス・ハリング / 台本&声:ギュンター・ブラス ダンス:ルーク・バイオ、ステファニー・カミング、イアン・ガーサイド 照明デザイン:トマス・イェリネク / 音響:アルフレート・ライター/他 | ||
収録:2012年10月31日、ウィーン・モデルン音楽祭、世界初演時ライヴ。音楽だけでは成立せず、照明やパフォーマーの振り付け、舞台装置、音響の方向性などの要素が不可分となって初めて作品として完成する前衛演劇もしくはパフォーマンス。そのため、通常では作曲者名がクレジットされるべき所、慣例に反して制作陣の名前がただ列挙されるのみ。作品はコンピュータ合成音とひたすら特殊奏法によるノイズ、パフォーマーの語り、吐息などで構成される。原作者イタロ・カルヴィーノはイタリアのSF作家、幻想文学、児童文学作家でイタリアの国民作家と言われるほど知られており、「マルコヴァールドさんの四季」「カナリア王子」「柔かい月」などの児童文学作品は日本でも多くの邦訳が出ている。しかしこの舞台作品にメルヘンチックなイメージは皆無で物語性は徹底的に解体され、シュールレアリスティックで乾ききったステージが延々と続く。 # この DVD は PAL 方式のため、日本の通常映像機器では再生出来ません。 | ||
ミン・ツァオ(1966-): シェイクスピアとツムシュティークに基づく室内歌劇「霊の島」(2010-11) (*) / [タナーヤ・ラジ(Ms) クラウディオ・オテッリ(B) ダニエル・クリューゲ(T) ハンス・クレーメル、シュテファン・メルキ(語り) シュテファン・シュライバー指揮 シュトゥットガルト州立歌劇場o.、オルフェウス・ヴォーカル・アンサンブル/録音:2013年2月]/ メゾ・ソプラノと12人の音楽家のためのセレナード(2012) [セシリア・ヴァリンデル(Ms) 宗像礼 指揮アンサンブル・ギャギーゴー!/録音:2012年11月]/ ギター独奏のための「もし耳が必要な全てだったら・・・」(2007)[ゼート・ヨーゼル(G)/録音:2012年11月] | ||
ツァオはカリフォルニアのバークレー生まれ。イェーテボリ大学とカリフォルニア大学サンディエゴ校で作曲を、サンフランシスコ大学で数学を学んだほか個人的にブライアン・ファーニホーにも指導を受けている経歴からも想像できるように極めて理知的でヨーロッパの主知主義音楽の影響を受けた作品を作曲している。とはいえ、作品は頭でっかちの代物ではなく、一聴すると錯綜したに聴こえる音のタペストリーは極めて厳選された美しいと言ってもよい音で構成されており洗練されたシュールレアリスムと呼んでもよい。彼の作品はヨーロッパで高い評価を受けており、アルディッティ四重奏団、アンサンブル・ルシェルシュによってさかんに取り上げられている。 | ||
NOT I 〜アガタ・ズベル(1978-): 声と4楽器のための「ラビリンス」(2011) / 声とアンサンブルのための「ミロスの格言」(2011) / クラリネット、チェロとエレクトロニクスのための「氷の影」(2011) / 声、アンサンブルとエレクトロニクスのための「 NOT I 」(2010) アガタ・ズベル(Vo) クレメント・パワー指揮クラングフォルム・ウィーン | ||
録音:2011年-2012年、ポーランド放送。アガタ・ズベルはワルシャワ出身で一流のヴォーカリストとしても活動しており、このアルバムでもほとんどの作品で声楽パートを担当している。自らがプレイヤーであるためか、机上の書式に傾きがちな前衛派とは一線を画した、時に先鋭的なジャズを思わせる肉体性のある作風が特徴。近年はコンピュータを使った作品も手掛けており、「氷の影」と「NOT I」ではミステリアスな音空間を作り上げる事に成功している。シマノフスキpo. レジデンス・コンポーザー。 | ||
ベルント・リヒャルト・ドイチュ(1977-): アンサンブルのための「狂犬」(2011) /弦楽四重奏曲(2012) (#)/ アンサンブルのための「ドクター・フューチャリティ〔未来博士〕」(2012-13) エンノ・ポッペ指揮クラングフォルム・ウィーン(#以外) アルディッティSQ (#) | ||
録音:2013年-2014年。ベルント・リヒャルト・ドイチュはオーストリア出身。ウィーン芸術大学で作曲をエーリヒ・ウルバンナーに師事、その後いくつかのセミナーで研鑽を積み2011年には東京オペラシティ文化財団主催の武満徹作曲賞に第2位入賞し審査員のサルバトーレ・シャリーノから高く評価された。ここに収められた弦楽四重奏から大規模アンサンブル作品は21世紀型ストラヴィンスキー、バルトークともいうべき作風でいずれも複雑なリズムが生き生きと躍動する。弦楽四重奏曲では奏者が叫ぶなどパンク・ロックのような面白さがあり、アンサンブル作品「未来博士」ではその傾向がより鮮明となり、フランク・ザッパを思わせるに至る。 | ||
ヘルムート・ラッヘンマン(1935-): 書(2003)〜秋山和慶と東京so.に捧ぐ[シルヴァン・カンブルラン指揮 バーデン=バーデン・フライブルクSWRso. 、SWR エクスペリメンタル・スタジオ、 マイケル・アッカー(サウンド・プロジェクション)/録音:2006年3月25日、ベルリン]/ 弦楽のための「ドゥーブル(グリードに II )」(2004)[マティアス・ヘーレマン指揮 ルツェルン祝祭アカデミー・アンサンブル/録音:2005年9月5日、ルツェルン音楽祭、ライヴ] | ||
2015年80歳になるラッヘンマンの2000年代の代表作2曲を収録。「書」はサントリーホール国際作曲委嘱シリーズとして作曲、大反響を呼びこれまでCD化が望まれていた。曲は金管楽器の風奏で始まり、以後ラッヘンマンお得意の特殊奏法が緊張感のある時間を形作ってゆく。織りなす響きの綾はタイトル通り日本の「書」を思わせ、管弦楽とライヴ・エレクトロニクスが生み出す色彩と強度、密度、テクスチュアの予想不能の変化は聴き手を一時も退屈させない。弦楽オーケストラのため「ドゥーブル」は「書」よりも音色が限られているため逆に聴き手にイマジネーションの余地を与え、幾重にも重なる息の長い帯状の音響は時に倍音豊かな協和音へと導かれ恍惚とした瞬間を作り出す。 | ||
ベアト・フラー(1954-): ミュージック・シアター「砂漠の本」(2009) [トーラ・アウゲシュタット(S) エレーヌ・フォーシェル(S) セバスティアン・ブロイアー(Br) ベアト・フラー指揮クラングフォルム・ウィーン ソリステ XXI(声楽Ens.)/録音:2010年3月]/ バス・フルートとコントラバスのための「イラ=アルカ [ira-arca] 」(2012) [エヴァ・フラー(バスFl) ウリ・フッセネッガー(Cb)/録音:2012年12月]/ ヴァイオリンとピアノのための「リート [Lied] 」(1993) [ヴラディスラフ・ペシン(Vn) ミハイル・デュボフ(P)/録音:2013年6月]/ ピアノ、クラリネットとチェロのための「エール [Aer] 」(1991)[トリオ・キャッチ/録音:2013年6月] | ||
ベアト・フラーはラッヘンマン以後のヨーロッパ前衛音楽シーンを牽引する重要な存在で KAIROS から定期的に新作をリリースしているが、このディスクではCD1に最新作、CD2に1990年代の旧作を収め、その思索と創作の変遷をたどることが出来る。ミュージック・シアター「砂漠の本」はアンサンブルと語り、ヴォーカルの織り成す不条理劇。CD2のはフラーがラッヘンマンなどの先人の影響を脱し自己の様式を確立した頃の室内楽を集めた。 | ||
ice 〜藤倉大(1977-):作品集 ギターのための「スパークス」(2011) /アンサンブルのための「アイス」(2009-10) / アンサンブルとライヴ・エレクトロニクスのための「ファントム・スプリンター」(2009) / エレクトリック・ギター独奏とアンサンブルのための「廃棄された時間」(2004-06) / 予め録音されたエレクトロニクスのための「私は歌う花々の夢を見た」(2012) / エレクトリック・ギター独奏とライヴ・エレクトロニクスのための「スパーキング・オービット」(2013) ダニエル・リッペル(G) ジェイス・オグレン指揮 マシュー・ウォード指揮 インターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブル | ||
録音:2007年-2013年。ロンドンを拠点にヨーロッパで活躍する若手作曲家、藤倉大は以前 英 NMC から作品集「シークレット・フォレスト」(NMC-D172) が発売され、英ガーディアン紙「 Best classical albums of 2012 」の一枚に選ばれ、日本では坂本龍一も絶賛した。今回のアルバムでは独奏曲からライヴ・エレクトロニクスを伴った大規模アンサンブル作品まで、ヴァラエティに富んだ藤倉大の世界のを知ることが出来る。涼しげで遊び心(?)にあふれた音響と次々と繰り出されるアイデア、それにどこかポップなセンスを感じさせる音楽はヨーロッパの前衛音楽のエッセンスを吸収しながらヨーロッパの重苦しさから解放された新たな現代音楽として各方面から絶賛されている。晴れて名門レーベルKAIROSに初登場。 | ||
リスト・インスペクションズ〔リスト検証〕(全19曲) フェレンツ・リスト、ジョン・アダムズ、ルチアーノ・ベリオ、フリードリヒ・チェルハ、 モートン・フェルドマン、ジェルジ・クルターグ、ジェルジ・リゲティ、トリスタン・ミュライユ、 ジェラール・ペソン、ヴォルフガング・リーム、サルヴァトーレ・シャリーノ、 カールハインツ・シュトックハウゼン、ガリーナ・ウストヴォーリスカヤのピアノ作品 マリーノ・フォルメンティ(P) | ||
録音:2012年2月20日-26日、ドイッチェラント・ラジオ。現代作品を中心に世界的に活躍するピアニスト、マリーノ・フォルメンティが、現代の作曲家によるピアノ作品とリストの音楽中これまで見過ごされてきた音楽言語のある側面を比較対照させ、その時代を越えた先進性に光を当てる極めて特異なプログラム。フォルメンティはこの企画の推敲におよそ6年の歳月をかけたという。ディスクではリストと現代作曲家の作品が交互に配置され、百年以上の時を越えた両者の間に不思議な共振現象を聴き手は体験することになる。すなわちCDを聴き進むうちにリストがベリオ、シュトックハウゼン、アダムズやフェルドマン、ミュライユらと同時代の作曲家に感じられ、逆にシュトックハウゼン、リゲティ、チェルハがリストの作品のように聴こえてくる、という驚くべきプログラム。フェルメンティは極めて精緻、繊細なピアノを聴かせ、彼のこれまでの全仕事の中でも最上に位置するであろう仕上がりとなっている。全体に静かで瞑想的な曲が選ばれているのでイーノやハロルド・バッドのようにアンビエントとして楽しむことも出来る。 | ||
ゲラルト・レッシュ(1975-):作品集 コレクション・セルティ(2011) [クレメント・パワー指揮クラングフォルム・ウィーン]/ 統計(2009)[シュテファン・ノイバウアー(Cl)]/ 庭、山道、分かれ道(2000) [ゲルトルート・ロスバッハー(Va) ペーター・コイシュニヒ指揮アンサンブル・コントラプンクテ]/ カントゥス・フィルムス〔定旋律〕(2010)[アンドレス・オロスコ=エストラーダ指揮 ニーダーエスターライヒ・トーンキュンストラーo.、シネ・ノミネcho.] | ||
録音:2010年-2012年。ゲラルト・レッシュはリンツ出身のオーストリアの若手作曲家で、ミヒャエル・ジャレル、ベアト・フラーらに作曲を師事した。ヨーロッパ20世紀音楽史のよき伝統を受け継いだオーケストレーションと手堅い手法の中に後期ロマン派や表現主義とは異なる新しい抒情が感じられる秀作群。 | ||
ベルンハルト・ガンダー(1969-): ダーティ・エンジェル(2010) [クラシミール・ステレフ(アコーディオン) アンデシュ・ニクヴィスト(フリューゲルHr) スザンナ・マルッキ指揮ベルリン・ドイツso.]/ 弦楽四重奏のための「クフル」(2010)[アルディッティSQ ]/ 球体の声(2007)[シン=ウェイ・ファン(P) アーヴィン・アルディッティ(Vn) ラルフ・エーラース(Va) ルーカス・フェルス(Vc)]/ ヴェクダ!(2011)[ルート・ローゼンフェルト(S) ティトゥス・エンゲル指揮 オーストリア現代音楽アンサンブル]/ ホリッピーレ・ディクトゥ〔恐ろしい〕 (2007) [ティトゥス・エンゲル指揮ノイエ・ヴォーカル・ゾリステン・シュトゥットガルト、 アンサンブル・レゾナンツ、コンポーザー・スライド・クァルテット]/ ラヴリー・モンスター(2009) [ペーテル・エートヴェシュ指揮オーストリア放送so.] | ||
録音:2007年-2011年、ライヴ。ベルンハルト・ガンダーはオーストリア出身で、グラーツにてベアト・フラーに師事後、パリのUPICスタジオでフリオ・エストラーダ、カーティス・ローズに師事した。2006年にはチューリヒのコンピュータ・ミュージック・スイス・センターでその方面の研鑽を積んでいる。KAIROSではこれが2枚目のアルバムで、前回のCD (12682-KAI)におけるアメコミのヒーロー「スパイダーマン」の変身前の主人公の名前をタイトルにした「ピーター・パーカー」やゲーム・ミュージック風の音楽に様々な騒音、爆音が入りテレビ・ゲームの音響をそのまま室内アンサンブルに移し変えた感のある「バーニー・ゲーム」など、ポップ・カルチャーと現代音楽を融合した独自のハイパー・パンク路線はここでも健在。ストラヴィンスキーをチープにしたような音楽の上に終始ノイズの嵐が吹きまくる「ダーティ・エンジェル」、大作曲家・名指揮者エトヴェシュの熱演で巨大な音響が渦を巻く「ラヴリー・モンスター」は大都会のウォール・グラフィティをそのまま大管弦楽に移し替えたような怪作が聴き物。 | ||
ヤン・ロビン(1974-):作品集 29人の音楽家のための「火山」(*) / メタル・コントラバス・クラリネットと17人の音楽家のための「アート・オブ・メタルI」(#) / メタル・コントラバス・クラリネットと18人の音楽家のための「アート・オブ・メタル III 」(+) アラン・ビヤール(メタル・コントラバスCl;#/+) スザンナ・マルッキ指揮 アンサンブル・アンテルコンタンポラン IRCAMポンピドゥ・センター〔コンピュータ音響〕 | ||
録音:2010年(*)、2008年(#)、2009年(+)。ヤン・ロビンはフランスの若手作曲家で、当初ジャズを学んだ後、ミヒャエル・レヴィナス、ジョナサン・ハーヴィー、ブライアン・ファーニホーらに作曲を師事した。IRCAMでも研鑽を積み、ライヴ・エレクトロニクスを使った大規模アンサンブルのための作品を精力的に生み出している。ところで、このディスクで演奏されているメタル・コントラバス・クラリネットとは特製の金属製のコントラバス・クラリネットで、重低音はもちろんのこと、通常の木管クラリネットでは出せない倍音、特殊奏法などが演奏可能。どの作品も当初ジャズを学んだ作曲家らしく、厳密に管理、記譜されたフリー・ジャズとでもいうべき不規則なリズムの錯乱とノイズの嵐、大地を轟かさんばかりの重低音からきらめく高音までの幅広いダイナミック・レンジを持ち、オーディオ・ファンにも喜ばれる内容。春の祭典とフリー・ジャズを足して2で割った内容と言えば、当たらずとも遠からず。 | ||
エンノ・ポッペ(1969-)作品集 労働 I (2007) (*) /ソロ・ヴォイスのための「ヴェスペ〔すずめばち〕」(2005) (#) / 労働 II (2007) (*) /ピアノ三重奏のための「葡萄」(2004-05) (+) /労働 III (2006-07) (*) / 9人の音楽家のための「クローゼット」(1989-2009) (+) /アンサンブルのための「塩」(2005) (+) エルンスト・スルバーグ(ヴァーチャル・ハモンドOrg;*) ダニエル・グローガー(CT;#) エンノ・ポッペ指揮アンサンブル・モザイク(+) | ||
録音:2010年-2011年、ジーメンス・ヴィラ。「インター・ゾーン(12552-KAI)に続くエンノ・ポッペのKAIROSレーベル第2弾。ポッペは数学の理論を作曲に応用した作品や電子音楽で知られており、ここに収められた作品にもその姿勢が顕著に表れている。「労働」と題された3曲はヴァーチャル・ハモンド・オルガンの多彩な音色がコンピュータ音楽と見紛うほどの音響効果を生み出す。「ヴェスペ(すずめばち)」ではテキストの詩の韻を執拗に繰り返すなど、狂気に満ちた異様な音楽。「クローゼット」は20年がかりで書かれた11の小品からなる大作で、点描主義的な音楽からアイヴズばりのストリート・ミュージックまで様々な様式の音楽が万華鏡のように現われては消える。 | ||
フリードリヒ・チェルハ(1926-):打楽器協奏曲(2007/08) (*) /インパルス(1992/93) (#)
マルティン・グルービンガー(Perc;*) ペーテル・エートヴェシュ指揮(*) ピエール・ブーレーズ指揮(#) VPO (*/#) | ||
録音:2011年11月25日、コンツェルトハウス、ウィーン、ライヴ(*) /1996年8月15日、ザルツブルク音楽祭、ライヴ(#)。打楽器協奏曲はチェルハが81歳から82歳にかけて作曲した大作でソリストの乱れ打つ大小様々なドラムと大管弦楽が火花を散らしてぶつかりあう異常なテンションで始まる。中間部はヴィブラフォン、金属系打楽器のソロを背景に弦楽、木管が抒情的で恍惚とした楽想が続き、後半は再びドラムにゴングを加えた乱れ打ちの嵐とシロフォン、ウッド・ブロックなどによる打楽器奏者の名人芸を披露する部分が華やかに展開する。ソリストはDGからアルバムも出ており、N響との共演で話題となった超絶打楽器奏者グルービンガー。一方、盟友ブーレーズがタクトを執った「インパルス」は初演はプレヴィンだったそうで、新ウィーン楽派のこだまを感じさせながらリゲティを思わせるダイナミックな音群の波が次々と押し寄せる大迫力の作品。いずれも聴き手を圧倒的な大音響の渦と波で飲み込み、オーディオ・ファンにとっても魅力的な内容。ウィーン・フィルが演奏する同時代作品はこんなにも今日的で刺激的。 | ||
ルチア・ロンケッティ(1963-): 4人の声と弦楽四重奏のための「偉大な重力の男」(2002) (*) [録音:2008年]/ 4人の男声のための「ピノキオ、そのサイド・ストーリー」(2005)[録音:2007年]/ ソプラノ、バス、ヴィオラとチェロのための「ハムレットの工場」(2007) (#)[録音:2009年] / 6人の声のためのコメディア・ハルモニア「塩と鴨」(2000)[録音:2002年] アルディッティSQ (*) ノイエ・ヴォーカルゾリステン・シュトゥットガルト(#以外) ズザーネ・ライツ=ロレイ(S;#) アンドレアス・フィッシャー(B;#) ハンナ・ヴァイリッヒ(Va;#) エリク・ボルギア(Vc;#) | ||
ルチア・ロンケッティはローマ出身のイタリアの作曲家で聖チェチーリア音楽院で作曲とコンピュータ音楽を、ローマ大学で哲学を学んだ。その後、パリのIRCAMでジュラール・グリゼイの指導を受けた。前衛音楽の技法を使いつつ、古典文学を大胆に読み換えたテキストに作曲することが多く、ここに収められた作品もコメディの要素を多分に含んだシアター・ピース的な作品でルチアーノ・ベリオの後継者と言ってもあながちほめ過ぎではないだろう。 | ||
ジョルジュ・アペルギス(1945-): コントレ・タン(2005/06) (*) /シーソー(2008) (#) / コントラバス独奏のための「会話」(2007) (+) /ティーター・トッター〔シーソー〕(2008) (**) ドナティエンヌ・ミシェル=ダンサク(S;*) エミリオ・ポマリコ指揮(*) シルヴァン・カンブルラン指揮(#/**) クラングフォルム・ウィーン(*/#/**) ウリ・フッセネッガー(Cb;+) | ||
録音:2010年7月(*)、2010年2月(#)、2010年11月(+)、2009年11月(**)。アペルギスはギリシャ出身でクセナキスに師事しパリを本拠として活動している。演劇とのコラボレーションが多く、2005年に来日しレクチャーと演奏会を行った。KAIROSレーベルへはヴィオラとサクソフォンのための室内楽作品集が出ている(12942-KAI)。いらいら、せかせかとした音の身振り、矢継ぎ早に移り変わる変幻自在の音響事象、シュールレアリスティックな表現世界など、その独自の世界は今日の現代音楽の状況の中でも際立って個性的。 | ||
サルヴァトーレ・シャリーノ(1947-): 弦楽四重奏曲第7番(1999) / 弦楽四重奏曲第8番(2008) / 6つの短い四重奏曲(1967-1992) |
プロメテオSQ [ジュリオ・ロヴィギ アルド・カンパナーリ(Vn) カルメロ・ジャロムバルド(Va) フランチェスコ・ディロン(Vc)] | |
録音:2010年2月、ザールランド放送。KAIROS が特に紹介に力を入れているシャリーノは日本の現代音楽ファン、演奏家の間でも特に人気のある作曲家で、予想外の音響や奇を衒う傾向のある現代音楽の作曲家の中にあってもなお、独自の世界を持つ存在として知られている。静けさの中に想像力をかきたてる音響が断片的に立ち上がるシャリーノ・ワールドはここでも健在。この十年余りの間に書かれた二つの弦楽四重奏曲の他、1960年代から書き継がれた「6つの短い四重奏曲奏」はさながら夢の風景をスケッチしたような繊細な小品。 | ||
ヨアンナ・ヴォズニ(1973-): アンサンブルのための「鏡の中のように暗く」(2010)[エンノ・ポッペ指揮クラングフォルム・ウィーン]/ サクソフォンとアンサンブルのための「帰還」(2006)[ザッシャ・アルムブルスター(Sax) リュディガー・ボーン指揮ヨーロピアン・ワークショップ・フォー・コンテンポラリー・ミュージック]/ 声、フルート、ヴァイオリンとチェロのための「カーレス・アストヴェルク」(2007/08) [クラウディア・ヘール(S) ティトゥス・エンゲル指揮カーリッジ=ドレスデン現代音楽アンサンブル]/ 管弦楽のための「喪失」(2006)[マーティン・ブラビンズ指揮オーストリア放送so.]/ ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのための「風景から消える」(2010/11) [ゾフィー・シャフライトナー(Vn) ディミトリオス・ポリソイディス(Va) アンドレアス・リンデンバウム(Vc) ジャンナ・ポリゾイデス(P)] | ||
録音:2006年-2011年。ヨアンナ・ヴォズニはポーランド出身で地元の大学で哲学の学士号を取得した後、オーストリアのグラーツ大学でベアト・フラーらに作曲を師事した。細かな音形がすばやく運動し矢継ぎ早に展開する緊張感あふれる作風が特長で楽器の特殊奏法も多用され色彩的に豊かな時空間が広がる。ブックレットに一部掲載されたスコアはさながら中心を持たない抽象画のような美しさを持ち、それがそのまま作曲家の音楽上の意図と深く結び合っている。 | ||
フリードリヒ・チェルハ(1926-): そして君は...[Und du...] (1963) (*) /Kのために (1993) (+) [フリードリヒ・チェルハ指揮ORFウィーン放送so.(*/+)、アンサンブル・ディー・ライエ(*) E.マイスター、H.ヤナッチュ、G.ヴィーラント、G.アンダース、G.ツィンマー(語り;*)]/ 目録 [Verzeichnis] (1969) (#)[エルヴィン・オルトナー指揮ORF cho.] | ||
録音:1963年8月(*)/1983年11月(#)/1993年(+)。前出:ORF, ORFCD-180 [12CDs] (*/#), ORFCD-174 (+) 。組み物だった(*/#)は入手しやすくなった。2012年、86歳を迎える巨匠チェルハが40歳代に制作した実験的大作(*)は、語り手の「ヒロシマ、閃光、火災、苦痛、粉塵」という朗読で始まり、「...しかしヒヨシ氏と彼の家族は生き残った」と続くうちに電子音とオーケストラの音響が次第に層を重ね、核の恐怖と現代の黙示録的な世界が展開する。作曲当時の緊張した世界情勢も反映された野心的なシアター・ピース。音楽語法としては当時最先端であったコンピュータ音響合成、テープ操作、当時流行した音群作法などが総動員されている。(#)〔フェアツァイヒニス〕は不確定性を含む合唱曲で歌手が足を踏み鳴らすなど、後のラッヘンマンを予感させる作品。(+)は彫刻家カール・プラントルの70歳の誕生日を祝って作曲された曲。チェルハはプラントルの作品から度々霊感を受けているようで、この他にも「カール・プラントルのための記念碑」など彼の名を冠した作品を作曲している。同作品は、チェルハ自身その出来を気に入っているようで度々自らタクトを執っている代表作。 | ||
süden 〜ガストン・ソルニツキ、マウリシオ・カーゲル(1931-)を撮る 室内交響曲/「勝ちそこないのための10の行進曲」〜2つの行進曲/1934年12月24日に.../ Mare nostrum /クオドリベット/そよ風/ Unguis incarnatus est /影の響き/バベルの塔 アンサンブル・ジューデン、ディヴェルティメント・アンサンブル、 コンパニャ・オブリキュア アルトゥーロ・ディエメッケ指揮ブエノスアイレスpo./他 | ||
製作:2011年。DVD5|カラー|NTSC|ドルビー2.0 / 5.1|4:3|オール・リージョン|字幕:独・英、67:00。カーゲルは現代音楽にパフォーマンス、演劇的要素を持ち込んだ作品でケージとともに20世紀後半の現代音楽界に多大な影響を与えた。当DVDは同郷アルゼンチン出身の映像作家ガストン・ソルニツキによって制作された、カーゲルの貴重なドキュメンタリー映画。作品のリハーサル風景を中心にカーゲルの独白、演奏者と作曲家のやりとりなどで構成されている。映像作品としても優れており、この作曲家の世界を知るのに最適。 | ||
マティアス・ピンチャー(1971-):作品集 トランペット独奏、ホルン独奏とアンサンブルのための「ソニック・エクリプス」(2009-2010) (*) / E.E.カミングスの詩によるソプラノと7楽器のための「トワイライト・ソング」(1997) (#) [ギャレス・フラワーズ(Tp;*) デイヴィッド・バード=マロウ(Hr;*) マリソル・モンタルヴォ(S;#) マティアス・ピンチャー指揮 インターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブル(*/#)]/ H.ザロモスの詩による無伴奏混声合唱のための「私は如何に恋煩っているか (シル・ハ・シリム V)〔 she-cholat ahavah ani (shir ha-shirim V) 〕(2008) (+) [マーカス・クリード指揮SWRヴォーカル・アンサンブル・シュトゥットガルト] | ||
録音:2010年10月(*)、2010年11月(#)、2009年11月(+)。当KAIROSでは管弦楽曲集(12582-KAI)、他にもNEOS、アンサンブル・モデルン・レーベルから盛んに作品がリリースされ、1970年代生まれのヨーロッパ作曲界のホープとして活躍しているピンチャーの最新作「ソニック・エクリプス」をメインとした作品集。ピンチャーはファーニホウ、ラッヘンマンらの影響を受けた特殊奏法を多用した点描的な音の連なりに突然鋭く音を打ち込むような厳しい表現を持ち味とする。最後に収録された2008年の混声合唱曲では合唱ということもあって厳しいなかにこれまでになく、抒情的で柔らかな響きが現れ、新境地を開いている。 | ||
フリードリヒ・チェルハ(1926-): 断片的小品「夢」(2009)[シルヴァン・カンブルラン指揮クラングフォルム・ウィーン]/ 9つのバガテル(弦楽三重奏のための)(2008)[ゼブラ・トリオ〔弦楽三重奏〕]/ 瞬間(2006/07)[ペーター・ルンデル指揮WDRケルン放送so.] | ||
録音:2009年-2010年。2011年に85歳を迎えるチェルハの近作集。高齢にも関わらずいずれも密度の高い作品で、その創作力には驚かされる。断片的小品「夢」は弦楽の静謐な持続音が絡み合い、次第に旋律をためしてゆく美しい佳曲。「9つのバガテル」はベルクを思わせ、オーケストラのための「瞬間」は作曲当時80歳というのが信じられないほどのエネルギーを放射。これもまたベルクの「3つの管弦楽曲」を思わせる。チェルハ芸術の総決算がこの一曲に集約。 | ||
ユーグ・デュフール(1943-): ティエポロによるアフリカ(2005) 〜ピアノとアンサンブルのための ティエポロによるアジア(2009) 〜アンサンブルのための |
アンサンブル・ルシェルシュ | |
録音:2009年、ケルン。 グリゼイやミュライユとともにスペクトル楽派の元祖としても知られるフランスの作曲家デュフールは作曲と電子音楽をジャック・ギヨメに師事、後にIRCAMでも研鑽を積んだ。収録曲はそれぞれ、アフリカとアジアの音楽要素が極めて抽象化された音響で反映され、密度の濃い音響空間が構築されている。 | ||
ベアト・フラー(1954-):弦楽四重奏曲第3番(2004) | KNMベルリン(弦楽四重奏) | |
録音:2007年。 KAIROSレーベル初期から継続的に作品集が出ているベアト・フラー。これで9枚目となるフラーの作品集は51分からなる大作弦楽四重奏曲。ハーモニクス、高音域でのピチカート、スル・ポンティチェロの多用、キリキリとした響き、突如振り落とされるクラスターの音の楔など針金で引っ掻いたようなささくれだった音の隙間にバッハが時折引用される。荒涼とした空気の中の真摯な祈りの音楽。 KNMベルリンは1988年設立のアンサンブル。KNMとはKammerensemble Neue Musikの略でメンバーは12人だが、今回のような弦楽四重奏から客演奏者を加えた大掛かりな編成まで融通がきき、ベルリンの現代音楽シーンに欠かせないアンサンブルとなっている。 | ||
13122-KAI 廃盤 |
ヘスス・ルエダ(1961-):弦楽四重奏曲集 〔第1番(1990) /第2番「影から」(2002) /第3番「島々」(2002-04) 〕 KNMベルリン | |
アルベルト・ポサダス(1967-): アンサンブルのための「涙と優しさの暗い深淵」(2005)/ 五重奏のための「ネブマート」(2008)/アンサンブルのための「クリプシス」(2007)/ 3人のダンサー、4人の音楽家、ヴィデオと ライヴ・エレクトロニクスのための「グロッソポエイア」(2009)(*) フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮アンサンブル・コンテンポラン(*以外) | ||
録音:2007年-2009年、IRCAMポンピドゥ・センター。ポサダス(1967-)はスペインの作曲家。当KAIROSレーベルでは既に「フラクタルの典礼」(12932-KAI)がリリースされている。彼はフランシスコ・ゲレロに師事した後、パリのIRCAMで電子音響についての研究、創作に取り組む一方、クセナキスのように最新の数学理論にも関心を寄せ、感性と科学の両面から新しい音楽を開拓しようとしている。作品はコンピュータ音楽やスペクトル楽派からの影響を感じさせ、持続する音の帯の色彩とテクスチュアの変化で作品を構成している。「涙と優しさの暗い深淵」では雅楽の笙を思わせる響き、間の感覚、一音に込める気合いのような凄みが1970年代の武満(ウィンター、マージナリア、ジェモー第1部あたり)を思わせ、ライオン・ローアの悩ましい呻きが聴き手の生命力を喚起する。「クリプシス」の低音の凄みと高音域のきらめく美しさ、最新作「グロッソポエイア」のライヴ・エレクトロニクスとアンサンブルのコンビネーションも見事な物。現代音楽ファン必聴! | ||
セサル・カマレロ(1962-): 2人の打楽器奏者と管弦楽のための「ヴァニシング・ポイント」(2007)(*)/ ヴァイオリン、チェロ、ピアノと 2群の室内管弦楽のための「デュラシオン・インヴィジブル」(2009)(#)/ 雨の音を介して(2000-04)(+) ペーター・ヒルシュ指揮スペイン国立o.(*/#) ラファエル・ガルベス、ジュアンホ・ギジェム(Perc;*) トリオ・アルボス(#/+)[ミゲル・ボレゴ(Vn) ホセ・ミゲル・ゴメス(Vc) ジュアン・カルロス・ガルバーリョ(P)] | ||
録音:2008年-2009年。 カマレロはマドリッドに生まれたが、生まれて間もなく一家でニューヨークに移住。アメリカで音楽の教育を受けた。作風は限られた素材、点描的で鋭く刻み込まれる音のアタック、音色への神経質なまでの細かいこだわりなど、ブーレーズらポスト・セリエリズムの影響が強い。ヨーロッパでは既に広く知られ、アンサンブル・モデルン、クセナキス・アンサンブルなどから委嘱を受け、数々の現代音楽祭に招聘を受けている。 #当盤は「発売中止となった」旨、旧・国内代理店から連絡が届いていますが、2016年10月現在、海外の業者ではまだ取扱いがあります。当店ではお取扱いを続けていますが、今後入手出来なくなった場合はご容赦下さい。 | ||
ベルンハルト・ラング(1957-):作品集 飢餓の星(2007; クリスティーネ・ラヴァントのテキストによる)(*)/ モナドロジー VII (2009; アーノルドのために)(#) ザビーネ・ルッツェンベルガー(Ms;*) シルヴァン・カンブルラン指揮クラングフォルム・ウィーン | ||
録音:2009年。 ラングは現代音楽とともにジャズを学び、ドイツのジャズ・バンドのピアニストとしても活動する作曲家。(*)はメゾ・ソプラノによる一種のモノオペラで、声とアンサンブルのユーモラスで奇妙なやり取り。ジャズにも精通したラングの聞かせどころを押えた秀作。(#)はシェーンベルクの2つの室内交響曲から素材を取った5部からなるミニアチュール。 | ||
ペーター・アブリンガー(1959-): ピアノとラウド・スピーカーのための「声とピアノ」(1999年以来継続中) ベルトルート・ブレヒト/ゲルトルード・シュタイン/レフ・ワレサ/ モートン・フェルドマン/ハンナ・シグラ/毛沢東/G.アポリネール/B.バーネット/ J.P.サルトル/H.ハイデッガー/M.デュシャン/ハイミトー・フォン・ドーデラー/ オーソン・ウェルズ/マザー・テレサ/R.D.ブリンクマン/ハンス・アイスラー/ エズラ・パウンド/イリヤ・プリゴジン/ピエル・パオロ・パゾリーニ ニコラス・ホッジズ(P) | ||
録音:2005年。 テープに収録された人の声のイントネーションを音響的に解析して音楽作品に使用する手法はスティーヴ・ライヒのディファレント・トレインズやケイヴが有名だが、この作品ではテープ反復は行われず、語られている声にそのままピアノ伴奏をつけるという酔狂なアイデアで作られている。言わばピアノによる人真似。徹底しているのは、語り手の話し癖、咳払い、軽い笑いまでにもしっかり音が付けられていること。笑ってしまうのは「毛沢東」で、これによって中国語のイントネーションはヨーロッパ語属とは違う系統なのだと「音楽的に」改めて理解できる。作曲者のアプリンガーはオーストリア出身。保守的なお国柄でよくぞここまで、そのクレイジー加減に拍手。 | ||
ブライアン・ファーニホー(1943-): 室内アンサンブル作品集 地形(1992)(*)/ 時間がない(まったく)(2004)〜ギター・デュオ/ イカロスの墜落(消失の小さなセレナード)(1988)(#)/ 書き出し(1996)(*)/ ガブリエルの翼の擦れる音(2003)(*) |
フランク・オッル指揮(*) ジャン・ドロワイエ指揮(#) エリシオン・アンサンブル | |
録音:2003年-2007年。 ファーニホーと言えばラッヘンマン、フーバーと共に二代目前衛三羽烏(初代はブーレーズ、ノーノ、シュトックハウゼン)としてこの20年ほどヨーロッパの前衛音楽シーンとその音楽に心酔する若い世代を牽引してきた。新しい複雑性と呼ばれるその音楽は常にセカセカ、イライラした忙しない音形が幾重にも執拗に重ねられ、さながら神経症患者の描く絵のような奇怪な様相を呈している。室内アンサンブルの様々な組み合わせのために書かれたこれらの作品はどれもジジジジ!キリリリ!キキキキ!(?)とした音があふれている。盟友ラッヘンマンは近年、独自の枯淡の境地に至っているのに対し、ファーニホーは怒れる前衛の姿勢を全く崩していない。しかし近作の「時間がない/まったく」ではそのタイトルもさることながら調子の外れたギター・デュオの不思議なユーモアが面白い。 | ||
チン・ウンスク(1961-): ファンタジー・メカニーク(1994/1997)[パトリック・ダヴァン指揮]/ Xi (1997/1998)[デイヴィッド・ロバートソン指揮]/ アクロスティコン〜ボースピール(1991/1993)[ピーア・コムシ(S) 大野和士指揮]/ 二重協奏曲(2002)[サミュエル・ファヴレ(Perc) ディミトリー・ヴァシラキス(P) ステファン・アスバリー指揮] 以上、アンサンブル・コンテンポラン | ||
録音:2003年-2004年。チン・ウンスクはソウル国立大学で姜碩煕〔カン・ソキ/カン・スキ〕に学んだ後、ハンブルク音楽院でリゲティに師事。1985年に権威あるオランダのガウデアムス作曲コンクールに優勝して以来、シカゴ響、BPO、クロノスSQ、アルディッティSQなど名だたる団体から委嘱を受け、韓国を代表する作曲家となった。彼女の作品は韓国の伝統音楽の影響は直接感じさせないものの、激しい感情を思わせるエネルギッシュな音の身振りとヨーロッパ前衛音楽の技法が程よく融合され、ユン・イサンの後継者というに相応しい。 | ||
ホセ・M.サンチェス=ベルドゥ(1968-): 歌劇「オーラ」(2007-2009/カルロス・フエンテスの同名小説による) ヨアヒム・ハース(オーラフォン) デュオ・アルベルディ&アイツピオレア(アコーディオン) ホセ・M.サンチェス=ベルドゥ指揮ベルリン現代音楽室内アンサンブル、 ノイエ・ヴォーカル・ゾリステン・シュトゥットガルト、 SWR実験スタジオ(ライヴ・エレクトロニクス) | ||
録音:2010年。 KAIROSスペイン・シリーズ。サンチェス=ベルドゥのアルバム第2弾。第1作品集(12781-KAI)は室内楽と管弦楽作品集で、この作曲家のおよその作風を知るのに打ってつけだったが、今回は大作オペラ。彼はマドリッドで学んだ後、フランクフルトでドナトーニ、ツェンダーに学んだ。作品は師匠ツェンダーやブライアン・ファーニホーの影響を感じさせるヨーロッパ前衛音楽の典型的な様式を体現している現代不条理オペラ。コンピュータの音響とアンサンブルの特殊奏法、ヴォーカルの特殊唱法が神秘の儀式のように粛々と進行する。 | ||
エクトール・パーラ(1976-): 「ハイパー・ミュージック・プロローグ」(2008-2009) 〜7場からなるプロジェクティヴ・オペラ (台本:リサ・ランドール、 舞台:マシュー・リッチー) 作曲者パーラへの解説的インタビュー(英語) |
シャルロッテ・エレット(S) ジェイムズ・ボビー(Br) クレメント・パワー指揮 アンサンブル・ アンテルコンタンポラン IRCAMセンター・ポンピドゥ(音響) | |
録音:2009年、IRCAM。 KAIROSレーベル2タイトル目のパーラ。パーラはスペイン・バルセロナ生まれ。ブライアン・ファーニホー、ジョナサン・ハーヴィー、ミヒャエル・ジャレルに作曲を師事。その後IRCAMで研鑽を積んだ。 この作品は音楽と科学、プラスティック・アートのコラボによるユニークなもので、台本が著名な物理学者リサ・ランドール、舞台デザインが絵画・彫刻・ディジタルアートなどで活躍するマシュー・リッチーが担当している。音楽はファーニホー譲りの複雑で音響テクスチュアの上にさらにコンピューターの電子音響が加わり、錯綜した音楽が展開する。2枚目はパーラとランドールのインタビュー。 | ||
ピエール・ジョドロフスキ(1971-): 15楽器のための「ドローンズ」(*) /アンサンブルと電子音のための「粗野」(#) / フルートと電子音のための「対話/非対話」(+) スザンナ・マルッキ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン IRCAM 〔ポンピドゥー・センター〕(電子音響)(#/+) ソフィー・チェリエ(Fl;+) | ||
録音:2007年、2009年。なお、(#)は代理店翻訳者が『バーバーリズム』としているが、「床屋のリズム [Barberrism?] 」ではなく、一般的に想像できそうな "Barbarism" なので上記が正しい。ジョドロフスキはフランスのトゥールーズ地方出身でリヨン音楽院に学んだ。IRCAMで研修員として電子音楽の研究を積み、電子音響とアコースティック楽器を組み合わせた様々な作品を多数発表している。矢継ぎ早に繰り出される様々な音響と不規則なリズムは高等なパンク・ロックか新手のジャズを思わせ、その疾走感あふれる多彩な音響イヴェントに飽きることがない。一聴、ぐちゃぐちゃに聴こえる展開の中にふと抒情的なパッセージが聴こえたりしてなかなか魅力的。ストラヴィンスキー、エリオット・シャープ、マイルス・デイヴィスをミックスしたような音楽。 | ||
ジョゼ・マヌエル・ロペス=ロペス(1956-): ピアノ協奏曲(2005)(*)/ ヴァイオリン協奏曲(1995)(#)/ 2台のピアノと管弦楽のための 「モヴィミエントス」(1998)(+) |
アルベルト・ロサド(P;*/+) エルンスト・ コヴァチッチ(Vn;#) ジュアン・カルロス・ ガルバヨ(P;+) ヨハネス・カリツケ指揮 ベルリン・ドイツso. | |
録音:2009年11月。 ロペス=ロペスはマドリッド出身。地元でルイス・デ・パブロに作曲を師事した後、パリでコンピュータ音楽を研鑽、IRCAMではトリスタン・ミュライユの指導を受けた。こうした経験が色彩的で新奇で詩的な音響を生み出しているのであろう。ピアノ協奏曲ではピアノ独奏は内部奏法も取り入れ、オーケストラは伝統的なサウンドと共に非器楽的、特殊奏法も適宜使いながら、どこまでも詩的、音楽的にファンタジーを繰り広げてゆく。倍音に基づいた音響は調性的、モード的に響き、そのきらびやかな音楽は時を忘れさせる。ヴァイオリン協奏曲の汲めども尽きぬアイディアとファンタジーも圧巻。武満徹が聴いたら絶賛するに違いない。ピアノと管弦楽のためのムーヴメンツはストラヴィンスキーとメシアン、スペクトル楽派、武満がミックスしたような、これまた秀逸な作品。 | ||
ヘスス・トーレス(1965-):室内アンサンブル作品集 光の春(2007)/ポエティカ(詩)(2007)/ トリオ(2001)/プレセンシアス(2002)/デセム(2006) |
トリオ・アルボス(ピアノ三重奏) セシル・ダルー(Fl) ホセ・ルイス・ エステリェス(Cl) パウル・コルテセ(Va) フアンホ・ギリェム(Perc) | |
録音:2008年-2009年。 このアンダルシア生まれの作曲家は現代の様々な潮流、スタイルを学んだ後、スペインの民族性、生命力溢れるリズム、歌の官能性といった音楽本来の持っている喜び、エロティシズムを自らの音楽で復活させようとしている。無調や旋法、調性が分け隔てなく折衷され独自のロマンティシズムを臆することなく展開している。「光の春」でのブライヤーズばりのミニマリズム、終盤にむけての抽象化されたピアソラ、結尾のエキゾチックなゴングの一撃など、聴き所に事欠かない。「ポエティカ」の妖艶なクラリネットのメロディ、沈黙のなかでの繊細な音運動は武満顔負け。 | ||
フリードリヒ・チェルハ(1926-): シュピーゲル〔鏡〕I-VII(1959-1972; 全曲)(*) [シルヴァン・カンブルラン指揮バーデン・バーデン=フライブルクSWRso.]/ モニュメントゥム(#)/モメンテ(+) [デニス・ラッセル=デイヴィス指揮(#) フリードリヒ・チェルハ指揮(+) ウィーン放送so.(#/+)] | ||
録音:2006年7月20日、ブレゲンツ(*)/2001年5月、ウィーン(#)、2007年10月6日/グラーツ(+)。 シュピーゲルの連作は、作曲年代を反映してリゲティ、シュトックハウゼンらの影響が感じられる。つまりクラスター音響の持続、電子音楽をあえてオーケストラに移し変えよう、という発想で、様々な音響が色彩豊かに推移してゆくプロセスを聴く音楽となっている。音響事象のパレットの豊かさはむしろリゲティのアトモスフェールやロンターノの上を行き、チェルハの代表作と言ってよい。作曲はグラフを使って構想し後から五線譜に変換する方法をとっており、この辺りの発想は日本の湯浅譲二に似ている。コンピュータ音響ではないかと思えるほど、オーケストラから思いがけない多彩な音響を作り出している。モニュメントゥムは大管弦楽とオルガンによる大音響と迸るエネルギーにただただ圧倒される。広いダイナミック・レンジを持つ音楽のためオーディオ・マニアにもお薦め。 | ||
ラモン・ラスカーノ [Lamon Lazkano; 1968-]: 管弦楽作品集 ハウスコル(2006)(*)/ オルトゥジ・イシラク (ゾロアスターの呪文)(2005)(#)/ イルンコル(2000-01) (+) |
ヨハネス・カリツケ指揮 バスク国立o. アムステルダム・チェロ八重奏団(*) エルネスト・モリナーリ(Cl;#) | |
録音:2009年9月。 ラスカーノはバスク地方サン・セバスティアン生まれ。パリ国立音楽院でジュラール・グリゼーに師事し、1990年には同音楽院で作曲でプルミエ・プリを受賞。その後カナダのジル・トランブレーにも教えを受けている。スペクトル楽派の作曲家とメシアンの高弟に師事しているだけあって、彼の音楽は色彩的で美しくも不思議な音響で溢れており、一時も飽きさせずぐいぐいと聴かせる。鳥の鳴き声のような音響の集積、息の長い旋律、生命力溢れるドラムの一撃など、そこにはスペインの自然と思わせずにはいられない。現代の語法を使いながらも詩的なセンスを持った美しい音楽。(+)は大オーケストラの機能を駆使したダイナミックな大作で現代音楽ファンでなくてもその音響的快感を存分に楽しめる。 | ||
マヌエル・イダルゴ(1956-):作品集 ベートーヴェン/イダルゴ編曲: 管弦楽のための「大フーガ」Op.133 (1825/1992)(*)/ イダルゴ: 弦楽四重奏曲第2番(1993/1994)(#)/ 弦楽四重奏曲第1番「〜の方へ」(1980)(#)/ 単純な音楽〜弦楽合奏のための(1989)(#) ベートーヴェン/イダルゴ編曲: 管弦楽のための6つのバガテルOp.126〜 (1823-24/2009)(#) |
ローター・ツァグロセク指揮(*) WDRケルン放送so.(*) アンサンブル・レゾナンツ(#) | |
録音:2006年3月10日、ケルン・フィルハーモニー(*)/2009年、WDRケルン放送局(#)。 イダルゴはアンダルシア生まれのスペインの作曲家でヘルムート・ラッヘンマンに師事したが、かきむしるような音楽とは無縁。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲「大フーガ」の管弦楽版はシューベルト/ツェンダーの「冬の旅」と同じく一種の創造的編曲で後期ロマン派風の大管弦楽となっている。厚いブラス群、ティンパニー、ハープなども加わり、色彩豊かに変貌している。彼のオリジナル作品はヴェーベルンの影響を感じさせ、点描的で静かな緊張感の中にほのかに漂う調性の香りが美しい。 | ||
ゲーシュタ・ノイヴィルト(1937-):作品集 弦楽四重奏曲(1976)(*)/ 弦楽四重奏のための7つの小品(エルンスト・シュタインケルナーのために)(2008)(#)/ 忘却の沸騰(ルーブリ・ブーイリ)(2008)(+) G.ヤッハ=ミッコ(Vn、Va;*/#) D.ポリソイディス(Va;*/#) A.リンデンバウム(Vc;*/#) A.ビク(Vn;*) S.シャフライトナー(Vn;#) D.ミシェル=ダンサク(声;+) エティエンヌ・シーベンス指揮クラングフォルム・ウィーン(+) | ||
録音:1997年(*)/2009年(#)/2008年(+)。 ゲーシュタ・ノイヴィルトはウィーン出身の作曲家(女性作曲家のオルガ・ノイヴィルトとは別人)。10代のころ、ストラヴィンスキーの火の鳥や春の祭典を聴いて作曲家を志し、その後シェーンベルク、ヴァレーズ、ケージから影響を受けた。現在はベルリン自由大学で教鞭を取り、理論家、著述家としてフランツ・シュレーカーについての著作がある。作風はポスト・セリー主義から音群作法など、戦後の前衛技法をバランスよく取り入れた緊張感溢れる音空間を作り出している。 | ||
ヴォルフガング・リーム(1952-): 弦楽四重奏と管弦楽のための協奏曲「ディテュランベ[酒神礼賛]」(2000)(*) [アルディッティSQ ジョナサン・ノット指揮ルツェルンso.]/ ソット・ヴォーチェ「夜想曲」(1999)(#)/ ソット・ヴォーチェ2「カプリッチョ」(2007)(#) [ニコラス・ホッジズ(P) ジョン・アクセルロッド指揮ルツェルンso.] | ||
録音:2007年(*)/2008年(#)、以上、ルツェルン。 リームの最新作を含む近年のオーケストラ作品集。なかでもN響への客演やバンベルク響との来日で話題のジョナサン・ノットが指揮した(*)が最大の聴き物。弦楽四重奏の協奏曲というのも凄い発想だが、終始息もつかせぬほどのハイ・スピードでザクザクとリズムを刻みまくる弦楽四重奏にオーケストラの合いの手、挑発が入り、両者が火花を散らす。オーケストラ作品の聴かせどころのつぼを押さえた見事な作品。もう一人期待の若手アクセルロッドが指揮する(#)は「柔らかな声で」のタイトル通り前作とは打って変わった静謐な作品で、常にエネルギッシュで表出力の強い作品を生み出してきたリームの作品には珍しい、ゆっくりと穏やかで抒情的な音楽。18世紀から19世紀の語法がリーム流にリミックスされ、その後期ロマン派的な音の流れにはうっとりとさせられてしまう。 | ||
ジョルジュ・アペルギス(1945-):室内楽作品集 クロス・ウィンド(1997) 〜ヴィオラとサクソフォンのための(*)/ 自我(2001)〜サクソフォンのための(#)/ ラッシュ(2006) 〜ヴィオラとサクソフォンのための(+)/ ヴォルト・フェイス(1997)〜ヴィオラのための(**)/ 信号(1978)〜12のサクソフォンのための(##) |
ジュヌヴィエーヴ・ ストロッサー(Va;*/+/**) XASAX(サックス四重奏;*/##) マルクス・ヴァイス (テナーSax;#) ピエール=ステファーヌ・ムージュ (ソプラノSax;+) | |
録音:2006年。 ギリシャ生まれで現在はパリを拠点に活動するアペルギスのサクソフォンを中心とした作品が収められている。彼は前衛劇団の座付き作曲家として活動を始め、以来一貫して前衛的な姿勢を崩さない作曲家。激しい音塊、スピード感などアグレシヴな作品揃い。 | ||
アルベルト・ポサダス(1967-): 5つの弦楽四重奏のサイクル 「フラクタルの典礼」(2003-2007) [音の波の時間/変調方式/軌道/ アボレセンシアス/分岐] |
ディオティマSQ | |
録音:2009年。 ポサダスは作曲をフランシスコ・ゲレーロに師事した。彼は数学の諸理論とフラクタル理論に強い関心を寄せ、それを音楽的に翻案させるところに彼の個性とスタンスを見出している。微分音、常に振動するトレモロの運動体、音群的書法にリゲティのエコーを聴くことができる。ハーモニクスの静かな響きには中世の聖歌を思わせるものがあり、聴き手に様々なイマジネーションを喚起する作品。 | ||
フィリップ・マヌリ(1952-): 自画像のための断章(1998) 〜30人の音楽家のための7つの小品/ パルティータI(2006) 〜ヴィオラ独奏とエレクトロニクスのための |
クリストフ・デジャルダン(Va) スザンナ・マルッキ指揮 アンサンブル・ アンテルコンタンポラン IRCAM | |
録音:2008年。 マヌリはIRCAMを中心にアコースティックな楽器と電子音響を融合した作品を多く発表している。「自画像のための断章」はざくざくと切いこむ先の尖ったの音響が心地よい。またライヴ・エレクトロニクスが絡む「パルティータI」のヴィオラの超絶技巧に圧倒される。 | ||
ミシェル・ジャレル(1958-):「カッサンドル」(1994) 〜アンサンブルと女優のための朗読オペラ |
スザンナ・マルッキ指揮 アンサンブル・ アンテルコンタンポラン IRCAM アストリッド・バス(女優) | |
録音:2008年。 アンサンブルと語り手のための、ギリシャ悲劇に基づくモノオペラ。表現主義的でかなりドラマティックな音楽で、女優の朗読にアンサンブルが絡む。ジャレルはスイス生まれで、パリを中心に活躍する現在注目の中堅作曲家。 | ||
クルタークのゴースト〜 クルタークと他の作曲家の小品集(全70曲) クルターク:ピアノ小品集(全40曲) 他、バッハ、バルトーク、ベートーヴェン、 ブーレーズ、ショパン、ハイドン、 ヤナーチェク、リゲティ、リスト、マショー、 メシアン、ムソルグスキー、パーセル、 D.スカルラッティ、シューベルト、 シューマン、シュトックハウゼンの作品 |
マリーノ・フォルメンティ(P) | |
録音:2008年。 このCDはディスクそのものが作品といえるような独創的なプログラミング。クルタークのピアノ曲を中心に間に挟みつつ西洋音楽の名曲を全体に散りばめ、一見ランダムに見えて、その実、意味深な選曲と配列で構成されている(例えばメシアンの「火の鳥第一」のあとにクルタークの「メシアンへの控え目な眼差し」が続いたり、クルタークの「ブーレーズへのオマージュ」のあとにブーレーズの「ノタシオン10」がきたり)。ありとあらゆる時代と様式の曲(マショーは声楽曲をピアノで弾いている)が混在した、これらの作品を一手に弾いているのがイタリアの俊英フォルメンティ。通して聴いていると不思議と一つの流れのなかで違和感無く聴こえてくる。それぞれの曲の様式を踏まえつつ、まるで全曲が巨大なひとつの作品に思わせてしまうフォルメンティの音楽性には驚嘆。現代音楽を肩肘張らずBGMっぽく聴きたい人にも最適。 | ||
ヴォルフガング・リーム:三重奏曲集 1969-1994 符帳IV/地平線で(*)/歪み−習作/嘆き/ 弦楽三重奏曲第2番/パラフレーズ(#)/イン・ヌーチェ |
アンサンブル・ルシュルシュ テオドロ・アンツェロッティ (アコーディオン;*) 菅原幸子(P;#) | |
録音:1995年-1996年。旧品番:12092-KAIの再発売。 リームの若書きからおよそ30年間に渡る、思索的な停滞系の三重奏曲ばかりを収録。初期作品の点描的で一見スタティックな作風のなかにも後の量感あるドラマティックな要素が感じられる。ラッヘンマン夫人の菅原幸子も出演。 | ||
エレナ・メンドーサ(1973-):作品集 2つの「衝立画」(2004)〜Cl,Sax,Vc,Pf,Percのための[アンサンブル・ルシェルシェ] 「蜃気楼の聖務日課」〜レフェレンシア・アル・カプリッチョ第6番(2005) [ユルゲン・ルック(G)] 署名活動(2005)〜電気増幅を伴うBr,Cb,Cl,トランペット,Trb,Vn,Vc,Pf [G.アンソレーナ(Br) エンノ・ポッペ指揮アンサンブル・モザイク] コントラ・ディクシオン(反対語) [コンラート・フォン・ケルン(Va) クリストフ・ラベルス(Va)] 誰とは聞いていない [Lo que nunca dijo nadie] (2004) [デュオ10(ヴァイオリン&ギター)] ネベル・スプリッター(2008)〜Pf,Vn,Va,Vc[アペルト・ピアノ四重奏団] | ||
録音:2008年。 メンドーサはセビリャ生まれ。ハンスペーター・キーブルツに作曲を師事した。切り詰められた書法のなかにスペイン的な情緒が抽象化された形で反映されている。「蜃気楼の聖務日課」はゴヤの絵画にインスパイアされた曲でグリサンドを多様するギターの響きが時に電子音楽を思わせる。「署名活動」ではバリトンと楽器が言葉とも音とも言えない原初的な呻きを奏でる。そして「コントラ・ディクシオン」の各曲のタイトルはノーノの代表作「進むべき道はない、だが進まなければならない」から採られている。繊細なアイデアと音響に溢れ、その感性の鋭さは特筆に価する。前衛音楽における詩的作曲家と言えよう。 | ||
ガラス越しに見る〜フランシスコ・ロペス(1964-): 現象論的音響素材のリアリティとバーチャリティ・環境音の録音とその変容 ジャングル(1997)/ベルの混乱 969 (1996)/ビルディング「ニューヨーク」(2001)/ ガラアト・アブダル・サラム(1993)/O Parladoiro Desamortuxado(1995)/無題(2008) フランシスコ・ロペス(音響技術/編集) | ||
制作:1993年-2008年。 一聴して「なんだこりゃ?」と思うこと間違いなし。CD5枚とも、どれを聴いても環境音が延々と続くのみ。例えばCD1の「ジャングル」では『キュワキュワ、ゲコゲコ、シャンワシャンワ』と南方の蛙や虫の声が聴こえたりササーと雨の音、さわさわと小川のせせらぎが聴こえる。CD3)ではニューヨークのビルの谷間の音の情景らしいのだが、雨がアスファルトにあたっている(?) のか、かすかな音が聴こえ、風がビルの谷間を吹き抜けるような不気味な唸りが聴こえ、工事機械のモーター音らしきものまで聴こえてくる。聴いてすぐそれと分かる音、何なのかちょっと首をかしげるような音を自然や街角で拾い集め、編集し次第に変調させてゆく。結果として環境音はもっと抽象的なミュージック・コンクレートへと変容してゆく。虫の声はホワイト・ノイズに、地下鉄の音は特殊奏法のオーケストラのように。CD5ではついに最初から抽象的な音響オブジェとなっている。ロペスは環境音を使ったサウンド・アート、サウンド・インスタレーション、実験音楽を制作し続けており、フィールド・ワークは世界60ヶ国に及ぶ。 | ||
クラウス・ラング(1971-):作品集 三頭の金色の虎/太った羊飼いと白うさぎ/ 静寂の本(*)/金色の生き物 |
クラングフォルム・ウィーン ヨハネス・カリツケ指揮(*) | |
録音:2006年-2008年。 オーストリア若手の代表的作曲家ラングの近作集。いずれも静寂の中に独自の緊張感を湛えた音楽。「太った羊飼いと白うさぎ」は時々打たれる太鼓、延々と吹き続けられる笛が日本の能舞台を想起させる。 | ||
ベアト・フラー(1954-):作品集 ピアノ協奏曲(2007) [ニコラス・ホッジズ(P) ペーター・ルンデル指揮ケルン放送so.]/ ソプラノとバス・フルートのための「インヴォケーション VI」(2003) [ペトラ・ホフマン(S) エヴァ・フラー(バスFl)/ ピアノと弦楽四重奏のための「スプール」(1998)/ピアノ三重奏のための「先頭へ」(1984) [ベルリン現代音楽室内アンサンブル]/ 声とコントラバスフルートのための「ファマ VI」(2005) [イザベル・メンケ(Vo) エヴァ・フラー(バスFl)]/ ソプラノとコントラバスのための「ロトーファゴス I」(2006) [トーラ・アウゲシュタット(S) ウリ・フッセネッガー(Cb)] | ||
録音:2007年-2008年。 KAIROS常連の作曲家フラーは当レーベルの他ORFからも多くの作品がリリースされている。作曲家は度々来日し作品は近年わが国でも頻繁に取り上げられるようになってきており、関心が高まっている。最新作のピアノ協奏曲は打楽器的なピアノに管弦楽のメタリックで鮮やかな響きが絡んでくる緊張感あふれる秀作。ロトファゴスIではソプラノがお経を唱えるようなけったいな発声をしたかと思えば、コントラバスのハーモニクスと絶妙なハーモニーを奏でる。 | ||
マウリシオ・ソテロ(1961-):作品集 打楽器とアンサンブルのための 「チャラン」(2003)(*)/ フラメンコ・ギターのための 「彼は水のように泣く」(2008)(#)/ サクソフォンとアンサンブルのための 「明るい黒の壁」 (ショーン・スカリーのための)(2005-2006)(+)/ 打楽器とアンサンブルのための「夜」(2007)(**) |
トリロク・グルトゥ (タブラ/Perc;*) ステファン・アスバリー指揮(*) フアン・マヌエル・カニサレス (フラメンコG;#) マルクス・ヴァイス(Sax;+) ブラッド・ラブマン指揮(+) ミケル・ベルナット (Perc;**) マウリシオ・ソテロ指揮(**) ムジーク・ファブリク(*/+/**) | |
録音:2008年。 ソテロはルイジ・ノーノの影響を受け電子音響の技術を学び、アコースティックな楽器にそのフィーリングが生かされている。彼も21世紀現在のテクノロジーと思想のなかで己の出自である民族性をどう反映させるか工夫しているが、その反映のさせ方も一昔前のものとは異なり、コラージュ的、夢幻的、フュージョン的で面白い。例えば「チャラン」にはフラメンコと思しきリズム、民族的な旋律(セファルディ?と思われる)が現れる。「彼は水のように泣く」はまさにフラメンコ・ギターのために書かれていて、情熱的なフラメンコが見事に現代音楽として新たに生まれ変わっている。「夜」はもはや21世紀のレブエルタスと言えよう。極めて興味深く才能のある作曲家。 | ||
エクトール・パーラ(1976-):作品集 ピアノ三重奏曲第2番「もつれた平原」(2007)/ ピアノのための即興曲(2005)/ ピアノ三重奏曲第1番「言葉の影」(2004)/ チェロとエレクトロニクスのための 「悩ましい夜明け」(2005)/ 弦楽三重奏曲(2006) |
アンサンブル・ルシェルシェ | |
録音:2008年。 パーラはバルセロナの生まれ。ファーニホー、ジョナサン・ハーヴィー、マイケル・ジャレルに作曲を師事、その後パリのIRCAMでも研鑽を積んだ。密林のような楽譜の風景、演奏困難で複雑なテクスチュア、いらいらとした音の身振りに新複雑主義のファーニホーの影響が感じられる。 | ||
サルバトーレ・シャリーノ(1947-): 独奏者と管弦楽のための 「同心円の詩の上で」 I・II・III (1987) [I:チェロと管弦楽のための/ II:フルート、クラリネット、チェロと管弦楽のための/ III:フルート、ヴァイオリン、 ヴィオラ・ダ・モーレと管弦楽のための] |
アンサンブル・ルシェルシュ [ルーカス・フェルス(Vc) マーティン・ファーレンボック(Fl) 岡静代(Cl) メリーゼ・メリンガー(Vn) バーバラ・マウラー(Vaダモーレ)] ペーター・ルンデル指揮 ベルリン放送so. | |
録音:2004年1月13日-16日。 セット物現代音楽としては異例のヒットとなったという「管弦楽作品集」(12802-KAI,3CDs)に続く、同レーベル2組目のシャリーノBOX。驚異の音響の魔術師と称えられ、ノーノからは「鋭い音響の亡霊」と称えられるシャリーノの第二期にあたる全3部作からなる大作オーケストラ作品は、彼のそれまで作風と同じく、フォルテは極力抑えられ、オーケストラのトゥッティもなく、終始、最弱音の持続のなかで音響の霧が舞い、うごめき、神秘の時空間が延々と広がる。それぞれ独奏楽器は異なるものの全体の雰囲気は同様で、薄明のなかに広がってゆく霧のような美しい弦楽パートを背景に、各独奏楽器の特殊奏法を多用したモノローグが重なる。現代という孤独な森に彷徨いこんだような不思議な感覚。作曲者の本意ではないかもしれないが、一種のアンビエント・ミュージックとしても楽しめ、おそらく現代音楽としては異例の癒し系音楽としても聞ける美しさである。ただし、ペルトや佐藤聡明らの音楽を想像すると大間違い。 | ||
サルヴァトーレ・シャリーノ(1947-):管弦楽作品集 チェロと管弦楽ための変奏曲(1974)(*)/ ヴァイオリンと管弦楽ための 「アレゴリーの夜」(1985)(#)/ フルートと管弦楽のための 「断章とアダージョ」(1991)(+)/ 管弦楽と語り手のための 「ボロミーニの死」(1988)(**)/ 管弦楽のための「論理を越えた炎」(1997)/ ピアノと管弦楽のための「暗い叙述」(1999)(##)/ 管弦楽のための「音と沈黙」(2004)/ 管弦楽のための「音の影」(2005)(++) |
フランチェスコ・ ディロン(Vc;*) マルコ・ロリアーノ(Vn;#) マリオ・カローリ(Fl;+)(Fl) モニ・オヴァディア(語り;**) ダニエーレ・ポリーニ(P;##) ティート・チェッケリーニ指揮 RAI国立so. | |
録音:2006年。 ラッヘンマンにも勝るとも劣らないほど特殊奏法や特異な音色好きで、常に静寂のなかに広がる神秘の響きを作曲するイタリアの現代作曲家シャリーノの主要な管弦楽曲を3枚組のBOX CDで一度にリリース。(++)は2005年サントリーホール国際作曲委嘱シリーズの委嘱作で、このCDの指揮者チェッケリーニと東京フィルで初演された。2011年には武満徹作曲賞の審査員として来日が予定され、まさに今が旬のシャリーノ。これだけまとまって管弦楽のための作品が発売されるのはおそらく初めてだろう。 | ||
ベアト・フラー(1954-):ムジーク・シアター「願望」(2002/03)
ペトラ・ホフマン(S) ヨハン・ロイトゲープ(語り) ベアト・フラー音楽監督アンサンブル・ルシェルシュ、ヴォーカル・アンサンブル・ノヴァ | ||
すでにCD(12432-KAI)が発売されているフラーの大規模なシアター・ピース。テキストはほとんど語りのみで、特殊奏法多用の室内アンサンブルとコーラスがそれに付随する。前衛的なダンスあり、東京都庁舎みたいな現代建築ばりの舞台装置あり、映像で見ると退屈しない。 当商品はPAL方式収録で、再生可能な機器が限定(基本的にパソコンのみ。テレビなどの映像機器を使用する場合はPAL対応のものが必要)されますのでご注意下さい。 | ||
ホセ・M.サンチェス=ベルドゥ(1968-):作品集 アルクィブラ [Alqibla] (1998) (*)/ ソプラノ、バリトン、3つのヴィオラ・ダ・ガンバと 管弦楽のための「バラとナイチンゲール」(2005)(#)/ クラリネットと管弦楽のための 「地平線称賛」(2005-2007)(+)/ アフマル=アスワド[赤・黒](2000-2001)(**)/ 喜びと罪の風景(2003)(##) |
ローター・ツァグロゼク指揮(*) ユンゲ・ドイチェpo.(*) マレク・ヤノフスキ指揮(#) スイス・ロマンドo.(#) クラウディア・ バラインスキー(S;#) ガブリエル・ スオヴァネン(Br;#) バンチェット・ムジカーレ (ガンバ三重奏;#) ミゲル・アルト=ベドヤ指揮(+) スペイン国立o.(+) パスカル・ロフェ指揮(**) ペーター・ルンデル指揮(##) HRフランクフルト放送so.(**/##) | |
録音:2000年-2007年。 サンチェス=ベルドゥはスペイン、アンダルシア地方の生まれで、ドナトーニ、ツェンダーに作曲を学んだ。現代語法、特殊な音響のなかにもスペイン的な要素を織り込んでいるのが特色。狭義の調性音楽ではないが調性的音響、抽象化された民族的要素を寛容に取り込んでいる点が他の前衛作曲家とは違い、表現に幅を生み出している。 | ||
オルガ・ノイヴィルト(1968-):フィルムのための音楽集 長い雨(2000)(映像:ミヒャエル・クライフスル) [ペーター・ルンデル指揮クラングフォルム・ウィーン]/ ファニー・フェイスのカノン(1992) (by Flora Neuwirth & Olga Neuwirth / Music and Idea: Olga Neuwirth )/ 大気と海に(2007)(映像:オルガ・ノイヴェルト)/ 交響的対話(2006)(映像:ヘルムート・ヴィッキング・エッゲリング/ Postproduction and Cut: Stefan Lux)/ カリグラファー(1991)(アニメーション:ブラザーズ・クエイ[クエイ兄弟])/ ミラモンド・ムルティプロ(2006/07)/ 幻滅した時間(2005)(Music and Idea: Olga Neuwirth)/ もう秘密はたくさんだ、嘘はたくさんだ(2005) (Music and Idea: Olga Neuwirth / Georgette Dee, Ensemble Modern, Franck Ollu)/ ・特典映像:危険なバー(2006) | ||
今ヨーロッパの新世代を代表する作曲家オルガ・ノイヴィルトが映像につけた映画音楽集。凝ったカメラ・ワーク、斬新な編集手法、あってないようなもののシュールで不条理なストーリーとノイヴィルトの音楽が不可分に結びつき絶妙な効果を生み出す。「長い雨」のタルコフスキーっぽい映像はなかなか。「大気と海に」ではノイヴルト自身が映像を担当している。 当商品はPAL方式収録で、再生可能な機器が限定(基本的にパソコンのみ。テレビなどの映像機器を使用する場合はPAL対応のものが必要)されますのでご注意下さい。 | ||
レベッカ・ソーンダーズ(1967-):作品集 不機嫌(2004)〜2台のピアノのための/ 深紅(クリムゾン)(2004-2005)〜ピアノのための/ ミニアータ(2004)〜 アコーディオン、ピアノ、合唱、管弦楽のための |
ニコラス・ホッジス、 ロルフ・ハインド(P) テオドロ・アンツェロッティ (アコーディオン) ハンス・ツェンダー指揮 SWRシュトゥットガルト・ ヴォーカル・アンサンブル SWRバーデン=バーデン・ フライブルクso. | |
録音:2004年-2006年。 ソーンダーズはロンドン生まれの中堅作曲家で、ヴォルフガング・リーム、ナイジェル・オズボーンらに作曲を学んでいる。彼女はクラスターを好み、煽情的で緊張にみちた音空間を持ち味としているようだ。ささくれ立った新表現主義ともいえる音楽。 | ||
ジェラール・グリゼイ(1946-1998):作品集 時間と泡(1988-1989)〜4つの打楽器、2台の シンセサイザー、室内オーケストラのための(*)/ 愛の歌(1982-1984)〜12人の声とテープのための(#) |
アンサンブルS(*) ヴァルター・ヌスバウム指揮(#) スコラ・ハイデルベルク(#) | |
録音:2007年。没後10年を迎えたスペクトル楽派の巨匠、グリゼイの大規模作品集。いずれもCDとしては世界初録音。 「時間と泡」は膜質打楽器の表面を擦る、うねる様な音から次第にオーケストラ、シンセサイザーと音が拡大してゆく変幻自在の音色変化が聴き所。「愛の歌」はグリゼイとしては珍しい声楽作品。コンピューター変調された声はゲーム音響とも宇宙人の声ともつかぬ奇妙な音で、それとともにうねる12人の声が官能的。リゲティの「アバンチュール」、「ヌーベル・アバンチュール」をさらに発展したような作品だ。 | ||
メッツマッハー&VPOのメシアン オリヴィエ・メシアン(1908-1992): 彼方の閃光(1992) |
インゴ・メッツマッハー指揮 VPO | |
録音:2008年1月20日、ウィーン楽友協会大ホール、ライヴ。 NYP創立150年記念に委嘱されたメシアン最後の管弦楽曲。メシアンは曲の初演を待たずに世を去った。チョン・ミュン・フン、ラトル、カンブルラン盤と、既に何種類ものCDが出ていることからもオーケストラの人気レパートリーになっていることがわかるが、ここではウィーン・フィルが演奏していることが何よりうれしい驚き。メシアン独特の神秘的な和音はウィーン・フィルのしなやかな音色にピッタリでメシアンがドビュッシーよりもワーグナー、ブルックナーの末裔であったことがあらためてわかる。 | ||
マルク・アンドレ(1964-):作品集 サックス・打楽器・ピアノのための 「〜を通って」 [duruch] (2004-2005) / 弦楽三重奏のための 「・・・に・・・」 [...zu...] (2004) / バス・クラリネットのための 「・・・の・・・」 [...in...] (2002) / ライヴ・エレクトロニクスを伴う バス・クラリネット、チェロ、ピアノのための 「・・・時に・・・」 [...als...] (2001) |
トリオ・アッカント アンサンブル・ルシュルシュ 岡 静代(バスCl) SWRエクスペリメンタル・スタジオ | |
録音:2003年-2007年。 マルク・アンドレはパリに生まれ、かの地で音楽を学んだが、やがてシュトゥットガルトでラッヘンマンに師事、その後ダルムシュタット夏期現代音楽講習会に参加し、ヨーロッパ前衛作曲家のエリート・コースを歩んで来た。楽譜は精緻に書き込まれているが、沈黙のなかに突然闇を切り裂くサックスの叫び、ヴァイオリンの呻くような軋む音など、ラッヘンマン譲りの不条理(?)音楽。 | ||
ブルーノ・マントヴァーニ(1974-): 7つの教会(2002)/ストリート(2007)/月の閃光 |
スザンナ・マルッキ指揮 IRCM アンサンブル・ アンテルコンタンポラン | |
録音:2007年。 マントヴァーニはパリ・コンセルヴァトワールで学んだのち、IRCAMで電子音楽を研究。その成果は生楽器のアンサンブルに生かされている。メタリックで鮮やかな色彩、パワフルな音運動エドガー・ヴァレーズを思わせる。圧倒的なトゥッティからソロ奏者の妙技を堪能する部分まで、聴き手の生理を考えたエンターテイメント性を兼ね備えた現代曲。 | ||
ルカ・フランチェスコーニ(1956b): エティモ(1994)(*)/ダ・カーポ(1985-86)/ 炎に、スタジオの思い出第4番 [A fuoco 4° studio sulla memoria] (1995)(#)/ アニムス(1995)(+) |
スザンナ・マルッキ指揮 IRCM アンサンブル・ アンテルコンタンポラン バーバラ・ハンニガン(S;*) パブロ・マルケス(G;#) べニー・スルチン(Tb;+) | |
録音:2006年-2007年。 フランチェスコーニはミラノ音楽院で学び、後にローマでシュトックハウゼンにも指導を受けている。「エティモ」はせかせかした音の中にソプラノのシュールな歌唱が幻想的な効果を生んでいる。「アムニス」はトロンボーンとエレクトロニクスのための作品で、トロンボーンの音をリアルタイムに加工して電子音と組み合わせる手法は見事。彼の代表作と言えるだろう。 | ||
ヨハネス・カリツケ(1959-):作品集 4つの死の島〜2人のソリストと オーケストラのための(2002/03)(*)/ 6つのカヴァード・セッティング〜 弦楽四重奏のための(1999/2000)(#) |
ヨハネス・カリツケ指揮(*) ベルリン・ドイツso.(*) トーマス・E.バウアー(Br;*) トーマス・ラルヒャー(P;*) シュタードラーSQ(#) | |
録音:2004年(*)、2006年(#)。 「4つの死者の島」はバリトンとピアノとオーケストラのための大作でベルク的なドラマティックな流れのなかに独自のロマンティシズムが感じられる秀作。6つのカヴァード・セッティングもドラマティックな音楽で時にバルトーク、ハード・ロックを思わせる激しい表出力が魅力。 | ||
マティアス・シュパーリンガー(1944-):作品集 フリオーソ(激怒して)〜 アンサンブルのための(1991/92)(*)/ 無限に対して〜バス・クラリネットとトロンボーン、 チェロとピアノのための(1995)(#)/ 美しき逃亡者〜オーボエ、アルト・フルート、 ヴァイオリン、バス・クラリネット、 ヴィオラとチェロのための(2006)(#)/ アポ・ドゥ〜弦楽四重奏のための(1982)(+) |
ハンス・ツェンダー指揮(*) アンサンブル・モデルン(*) アンサンブル・ルシェルシュ(#) アルディッティSQ(+) | |
録音:1993年、1994年、2006年。 シュパーリンガーの古くは40代から近作までの室内楽を収録。彼はジャズにも関心があると語っているが、ヨーロッパ前衛音楽の伝統を受け継ぐかのような彼の音楽にそれは感じられない。 | ||
ベルンハルト・ガンダー(1969-):作品集 バニー・ゲームズ(2006)(*) / フルック「n」フレックス(2007)(#)/ ö(オー・ウムラウト)(2005)(+)/ ピーター・パーカー(2004)(**)/ 祭・駅(2002)(##) |
クラシイミール・シテレフ (アコーディオン;#) ファン・シンウェイ(P;**) エミリオ・ポマリコ指揮(*) ヨハネス・カリツケ指揮(+) シルヴァン・ カンブルラン指揮(##) クラングフォルム・ ウィーン(*/+/##) | |
録音:2002年-2007年。 ガンダーはベアト・フラーに師事、後にコンピューター音楽を学んだ。「バニー・ゲーム」はポップなシュニトケ、アイヴスという感じでバロック風のパッセージがチープに引用。ゲーム・ミュージック風の音楽に様々な騒音、爆音が入りテレビ・ゲームの音響をそのまま室内アンサンブルに移し変えた感じ。「ピーター・パーカー」は有名なコミック・映画「スパイダーマン」に霊感を受けて作曲。映画のサントラをイメージすると当然期待外れとなるが、(スパイダーマンの)敏捷な動きや変身シーンを作曲方法の手がかりにしたという。 | ||
ヨハネス・マリア・シュタウト(1974-):作品集 アペイロン(2004/05)〜大管弦楽のための(*)/ インキピットIII(ここに始まる)(2005)(#)/ 明るい色に向かって(2004)(+)/ 激しい出来事(ブルース・ナウマンへのオマージュ) (2005/06)(**)/ ペラス(2005)(##) |
サイモン・ラトル指揮(*) BPO(*) ローター・ ツァグロセク指揮(#) WDRケルン放送so.(#) ウーヴェ・ ディールクセン(Tb;#) エルンスト・ コヴァチッチ(Vn;+) マルカス・ワイス(Sax;**) カスパー・デ・ロー指揮(**) ウィントクラフト・チロル (吹奏楽団;**) マリノ・ フォルメンティ(P;##) | |
録音:2005年6月15日、世界初演ライヴ(*)/2006年3月10日、世界初演(#)/2007年2月3日(+)、2007年2月(**)/2007年6月(##)。 レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画と思想にインスパイアされたという大管弦楽のための「アペイロン」はラトル&BPOが演奏することを意識したのか、管弦楽の可能性を極限まで駆使した劇的変化に富む大作で、ウェーベルンからヴァレーズ、ブーレーズ、リゲティあたりまでを思わせるきらびやかな響きに20世紀を総括しようとする意志が聴き取れる。他に室内アンサンブル、ソロ作品を含む本CDは現代ヨーロッパ前衛音楽の優等生ともいえるシュタウトを知る上で恰好の一枚。 | ||
ヘルムート・ラッヘンマン(1935-): 弦楽四重奏のための作品集 グリド(弦楽四重奏曲第3番)(2001/02)/ 聖霊の踊り(弦楽四重奏曲第2番)(1988/89)/ グラン・トルソ 〜弦楽四重奏のための音楽(1971-72/78) |
アルディッティSQ | |
録音:2006年6月、11月、ボン・ベートーヴェン・ハウス。 ラッヘンマンの初期から近作の弦楽四重奏をアルディッティの演奏でたどる画期的なアルバム。もっとも初期の作品「グラン・トルソ」は徹底した非・弦楽四重奏的な音楽で、伝統に果敢な抵抗を試みている。その姿勢は近作「グリド」でも変わらないが、軋むような音塊のなかにほのかな叙情が漂うのはさすがに円熟のせいか? | ||
ヘルムート・ラッヘンマン(1935-):作品集 2人のギタリストのための「コードウェルのための祝砲」(1977)(*) [ヴィルヘルム・ブルック、テオドール・ロス(G;*)]/ 16人の声と管弦楽のための「慰め」(1967-68/1977-78)(#)/ アンサンブルのための「コンチェルティーノ」(2005)(+) [ヴァルター・ヌスバウム&スコラ・ハイデルベルク(#) ヨハネス・カリツケ指揮(#/+) WDRケルン放送so.(#)、クラングフォルム・ウィーン(+)] | ||
録音:2005年(*/#)、2006年(+)。ブックレットにはラッヘンマン自身によるテキスト付き。なお、国内代理店翻訳者は(#)の原題現代にある "Stimmen" を「投票人」と訳しているが、おそらく上記のとおり「声」の誤り(原題は "Les Consolations" für 16 Stimmen und Orchester )。 (*)は既に日本でも度々演奏される有名曲。終始、特殊奏法で構成され、プリプリ、ピリピリとさながらコンピューター音楽のような音響が続く。(#)は同名の連作シリーズのひとつで、ヴォーカル・アンサンブルの「アウイアウイ・・・」といった奇妙な歌声にパリッ!キリリ!ヒュ〜ン!パシャン!といった管弦楽のこれまた奇天烈な音響が絡んでゆく。最近作の(+)は禁欲的なラッヘンマンの音楽には珍しく激しい音の運動がドラマティックな緊張感を生み出す。 | ||
イザベル・ムンドリー(1963-): デュファイ・加工された [I - VII](2003-04)/ 瞬間の痕跡(1999-2000)〜弦楽三重奏、 クラリネットとアコーディオンのための/ 砂の輪(2003/06)〜弦楽三重奏、 ドラムとピアノのための |
アンサンブル・ルシュルシュ | |
録音:2006年10月2日-4日。 「デュファイ・加工された」はデュファイの音楽を素材としているが意外にも現代風にデフォルメされることはなく癒し系の典雅な室内楽曲になっている。「瞬間の痕跡」と「砂の輪」は硬派のいかにも硬派の「ゲンダイオンガク」。 | ||
ゲルト・キュール(1952-): 楽器とエレクトロニクスの探究(2004/05) [導入/トランス/カット/インター/ タイム・アウト/終曲(擬似ダンス)] |
IEM グラーツ エミリオ・ポマリコ指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
録音:2005年。 タイトルの通り、楽器とライヴ・エレクトロニクスの様々な関係と可能性の探究が作品のテーマとなっている。キュールはヘンツェに作曲を、チェリビダッケに指揮を学んでいる中堅作曲家。 | ||
ハンス・ツェンダー(1936-): シル・ハシリム(Shir Hashirim) (ソリスト、合唱、ライヴ・ エレクトロニクスと大管弦楽の ための歌の中の歌)(1992-1996) |
ジュリー・モファット(S) マティアス・クリンク(T) クリストフ・シュルテ (ライヴ・ エレクトロニクス)他 シルヴァン・カンブルラン指揮 バーデン=バーデン・ フライブルク SWRso.、 SWRシュトゥットガルト・ ヴォーカル・アンサンブル | |
録音:2001年。 旧約聖書のなかにある有名なソロモンの聖歌をテキストとしたカンタータで男女の恋歌。カンタータとはいえ極めてオペラに近い全4部からなる大作。意外と伝統的なロマンティシズムもあり楽しめる。作曲者60歳頃の作品だが、劇的緊張力にあふれており、そのパワーには驚かされる。 | ||
ピエルルイジ・ビローネ(1960-): 1 + 1 = 1 (2つのバス・ クラリネットのための)(2006) |
ペトラ・シュトゥンプ、 ハインツ=ペーター・ リンシュハルム (バスCl) | |
録音:2006年。 ビローネはシャリーノ、ラッヘンマンに師事した経歴の持ち主から特殊奏法多用を好むようだ。この 1 + 1 = 1 は、その名の通り、2つのバス・クラリネットが互いに補完しあいながら一つの音楽を作ってゆく。全体にスタティックな静謐の音楽。 | ||
ヴォルフガング・ミッテラー(1958-): 彩られたノイズ(23人の音楽家と エレクトロニクスのための 残忍な交響曲)(2005) |
ヴォルフガング・ ミッテラー(Org) ペーター・ルンデル指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
録音:2005年、ウィーン・モデルン、ライヴ。 急激に変わる音響とスピード感、電子音響とコラージュはもはや実験的ロック、ジャズと言い切ってよいが、といってそこまでなかなかハジケきれないのがヨーロッパの伝統の重さというところだろうか。肩に力入りまくりの「残忍な交響曲」という副題が「オレはワルだぜぇ」と言っているみたいでおかしい。 | ||
マティアス・ピンチャー(1971-):管弦楽作品集 アン・ソルディーヌ(弱音器付きで)〜 ヴァイオリンと管弦楽のための(2002)(*)/ テネブレ〜ヴィオラとライヴ・エレクトロニクスを 伴う室内アンサンブルのための(2000/01)(#)/ ナルキッソスについての熟考〜 チェロと管弦楽のための(2004/05)(+) |
マティアス・ピンチャー指揮 ハンブルク NDR so.(*/+) アンサンブル・ アンテルコンタンポラン(#) フランク・ペーター・ ツィンマーマン(Vn;*) クリストフ・ デジャルダン(Va;#) トゥルルス・モルク(Vc;+) | |
録音:2006年。 ピンチャーはドイツ生まれの作曲家で、これまでにオペラを含む数多くの作品を発表してきた。2008年にはピエール・ブーレーズ指揮シカゴso.により新作「オシリス」が初演される。作風はブーレーズを思わせるクリスタルのような色彩が特徴で、全体に静かな音の持続のなかに緊張した空間が時に武満を想起させる。フランク・ペーター・ツィンマーマン、トゥルルス・モルクら名だたるソリストの妙技も聴きどころ。 | ||
ベアト・フラー(1954-): ファマ/評判(大アンサンブル、 8人の声と語り手のためのシアターピース;2004/2005) |
ベアト・フラー(音楽監督) クラングフォルム・ウィーン ノイエ・ヴォーカル・ ゾリステン・シュトゥットガルト イザベレ・メンケ(語り) エヴァ・フラー (コントラバスフルート) 他 | |
録音:2005年。 フラーはスイスに生まれ、ウィーンでハーベンシュトック=ラマティに作曲を、オトマール・スイトナーに指揮を学んだ。この作品は2005年10月にドナウエッシンゲン音楽祭で初演された、8つのシーンからなる大作。フラー独自の鮮やかな音色の変化が楽しめる。 | ||
エンノ・ポッペ(1969-): インター・ゾーン(2003/04) |
ジョナサン・ ストックハンマー指揮 ノイエ・ヴォーカル・ ゾリステン、 アンサンブル・モザイク オマール・エブラヒム(声) | |
録音:2004年。 ヴィデオとヴォーカル・アンサンブル、室内アンサンブルのための作品。ピーポポ、ピピピ!といった昔懐かしい(?)いわゆる電子音楽的音響あり、ロック的なビートも入るほか、ホーミーもどきの発声あり、何でもありのチープな世界が面白い。 | ||
オルガ・ノイヴィルト(1968-): ムジーク・テアター 「ロスト・ハイウェイ」(2002/03) |
ヨハネス・カリツケ指揮 クラングフォルム・ウィーン IEM(ライヴ・ エレクトロニクス) コンスタンス・ハウマン、 デイヴィッド・モス、 ゲオルグ・ニグル、 アンドルー・ ワッツ(Vo)他 | |
録音:2003年、バーセル劇場、グラーツ。 デイヴィッド・リンチの映画「ロスト・ハイウェイ」を先ごろ Col legno からリリースされたノイヴィルトの「死と乙女II」でリブレットを書いたエルフリート・イェリネクが舞台用に翻案し書き下ろした不条理音楽劇。「死と乙女」と同様、語りとシュプレッヒ・シュティンメ、電子音響とアンサンブルによる。映画の翻案だけあって様々な様式の音楽(主人公はジャズ・ミュージシャン)が現れる。ノイヴィルトは近年ヨーロッパで高く評価されており、多くの作品を発表している。 | ||
ベルンハルト・ラング(1957-):反復の劇場(2000-2002) | ヨハネス・カリツケ指揮 クラングフォルム・ウィーン レ・ジュヌ・ソリステ (声楽アンサンブル) | |
録音:2003年。 アカデミックな音楽教育のほか、哲学、ジャズを学んだ経歴が、ベルンハルト・ラングの作風に大きな影響を与えていると思われる。「反復の劇場」のテキストはJ.K.ユイスマンス、ウィリアム・S.バロウズの詩、ニュルンベルグ裁判の議事録などから採られ、ドイツ語、フランス語、英語がパッチワークのように扱われている。「反復の劇場」のタイトル通り、言葉のある部分の発音が繰り返されて複雑な音のテクスチュアを作ってゆく。この辺はミニマル的でもあり、耳にした印象は全く異なるものの、ライヒの声楽の諸作品を想起させる。アンサンブルはチープな響きが意図的に仕掛けられていて、マイケル・ナイマン、クルト・ワイルを無調にしたような響き。ハイナー・ゲッベルスと同じくジャーマン・ロックの延長上にある政治的シアター・ピースである。 | ||
12522-KAI 廃盤 |
ハンス・ツェンダー(1936-): キャバレー・ヴォルテール(フーゴー・バルのテキストによる、 声と8つの楽器のための;2001/2002) ムネモシネ−ヘルダーリンを読んで IV (女声、弦楽四重奏とパス・バンドのための;2000) |
ハンス・ツェンダー指揮 クラングフォルム・ウィーン サロメ・カンマー(声) |
ルイジ・ノーノ(1924-1990): サイクル・カミナンテス 進みべき道はない、だが進まねばならない・・・ アンドレイ・タルコフスキー(1987)/ 「進まねばならない」と夢見つつ(1989)/ 進み行くものよ・・・アヤクチョ(1986-1987) |
アーヴィン・ アルディッティ(Vn) ロベルト・ ファブリチアーニ(fl) グレイム・ジェニングス(Vn) ズザンネ・オットー(Ms) エミリコ・ポマリオ指揮 WDRケルン放送so. フライブルク・ ゾリステンcho. 音響芸術 実験スタジオ | |
録音:2004年。 サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ(企画構成:武満徹)のために書かれた「進むべき道はない、だが進まなければならない・・・」は図らずもノーノ最後の管弦楽曲となり彼の代表作となった。これはシリーズ3部作を集めた大変意義のあるCD。2つのVnのための「進まなければならないと夢見つつ」ではアルディッティがクレーメルに匹敵する鬼気迫る演奏を聴かせ、「進み行くものよ・・・アヤクチョ」はメゾ・ソプラノ、フルート、大小の合唱、オルガン、ライヴ・エレクトロニクス、3群の管弦楽を動員する大作。 | ||
ジェラール・グリゼイ(1946-1998): 2声のための独奏(1981) 〜クラリネットとトロンボーンのための/ アヌビ=ヌー(Anubis-Nout) (わが友クロード・ヴィヴィエの追憶に)(1983) 〜クラリネットとコントラバスのための2つの小品/ 石柱(Stèle)(1995)〜2人の打楽器奏者のための(*)/ 魅力(Charme)(1969)〜クラリネットのための/ 機械的時間(Tempus ex machine)(1979) 〜6人の打楽器奏者のための(*) |
エルネスト・モリナーリ(Cl) ウーヴェ・ディアクセン(Tb) アンサンブルS | |
録音:2003年-2004年。(*)は世界初録音。 スペクトル楽派の中心的存在グリゼイの初期と晩年の作品を収録。低音の豊かな倍音にささえられた2声のためのソロ、友人の作曲家ヴィヴィエの追憶に捧げられた「アヌビ=ヌー」、初期の点描的な「魅力」、倍音の作曲家がいかに音律のない打楽器を使って作曲するかが興味深い「石柱」と「機械的時間」といった注目作ぞろい。 | ||
ヴォルフラム・シューリヒ(1967-):作品集 アンサンブルのための 「ウルティマ・トゥーレ」(2003-2004)(*)/ 室内オーケストラのための「視力による推定」(2000)(#)/ ヴァイオリンと室内オーケストラのための 「ホケトゥス」(1997-1998)(+)/ バス・クラリネットと6楽器のための 「ゲスピンスト」(1990)(**) |
アネッテ・ビク(Vn;+) エルネスト・モリナーリ(バスCl;**) シルヴァン・カンブルラン指揮(*/#) エミーリオ・ポマーリコ指揮(+) ベアト・フラー指揮(**) クラングフォルム・ウィーン | |
録音:1993年-2005年。 シューリヒはラッヘンマンに作曲を師事。群的な書法をとる緊張感のある音楽を書く。1993年にはダルムシュタット夏期現代音楽講習会で講師を勤めたこともあり、ドイツ作曲界のホープ的存在。 | ||
サルヴァトーレ・シャリーノ(1947-): バリトンと器楽のための12の歌と諺「道のノート」(2003) [そうでなかったら時間、いつか?/・・・損失/ スマリータの測定/詩人は言った/ 知られていることを望めば/ 石大工が夕方行ったところ/410年/ つま先で触れられる遠い薔薇/ピオーヴ/ 寄付されたクレティは書いた/ヴァイオリンの弦に/ フィオール・ディ・ケンキュール/世界への提言(諺)] |
オットー・カッツァマイアー(Br) シルヴァン・カンブルラン指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
録音:2005年2月。 微細な光の色彩、地中海の景観のゆらゆらするイメージを喚起するシャリーノ・マジックを堪能出来る。初演者カッツァメイヤーとクラングフォルム・ウィーンに捧げられている。 | ||
12472-KAI 廃盤 |
クロード・ヴィヴィエ(1948-1983): オリオン〜管弦楽のための(1979)(*)/ シッダールタ〜8群に分かれた管弦楽のための(1976)(*)/ 打楽器のための5つの歌(1980)(#) |
クリスティアン・ ディアーシュタイン(Perc;#) ペーター・ルンデル指揮 ケルン放送so. |
オルガ・ノイヴィルト:室内楽作品集 アクロアテ・ハダル(Akroate Hadal)(1995) 〜弦楽四重奏のための/ 「クアサレ/プルサレ」(Quasare/Pulsare)(1995-96) 〜ヴァイオリンとピアノのための/ ...?リゾナンツェ!...(…?risonanze!…)(1996-97) 〜ヴィオラ・ダ・モーレのための/ ...アド・アウラス...イン・メモリアムH (…ad auras…in memoriam H.)(1999) 〜2つのヴァイオリンとホルツトロンメルのための/ 「インシデンド/フルイド」(incidendo/fluido)(2000) 〜ピアノとCD音源のための/ セットリ(settori)(1999)〜弦楽四重奏のための |
ニコラウス・ホッジス(P) アルヴィン・アルディッティ(Vn) ガース・ノックス(Vaダ・モーレ) アルディッティSQ | |
現代物はおまかせ! アルディッティ・カルテット。いまや大家の風格さえ感じられるオーストリアが誇るオルガ・ノイヴィルトの弦楽器を中心とした作品集。彼女は来年のISCM WMD音楽祭の審査委員でもある。このアルバムでは名手アルディッティを始めとするヴィルトゥオーゾたちの超絶的な大運動会、特殊奏法のオンパレード、壮絶な百鬼夜行! | ||
コミック・センス クレメンス・ガーデンシュテッター (1966-) : Staffel I(協奏的大スケルツォ) Staffel II(細密画の間隔) Staffel III Dance mimetique(人真似ダンス) |
フロリアン・ミュラー(P) マーク・フォステル指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
ガーデンシュテッターはエーリヒ・ウルバンナー、ヘルムート・ラッヘンマンに作曲を師事した。彼はムジーク・ビエンナーレ・ベルリンやオーストリア放送協会、クラングフォルム・ウィーン、アンサンブル・ルシェルシェ、ザルツブルク音楽祭等から多くの作曲委嘱を受けている。 このアルバムに収められた作品は全て独奏ピアノと室内オーケストラという体裁をとっているが、ピアノ協奏曲というよりもピアノが全体の主軸となってオーケストラの様々な音事象(電子音響も含まれる)を引き出し、その音事象の多彩な変化(時にお祭騒ぎ)が音楽を形成してゆくというもの。アルバム・タイトル「コミック・センス」の通り、上方漫才のしゃべくりの如く(まさか作曲者は意識していないだろうが)一時も落ち着くことなくマシンガンのように次々と繰り出されるアイデア(ネタ?)とユーモラスな音の身振りに溢れているが、音そのものはまさにヨーロッパ前衛。とは言え、ラヴェルのピアノ協奏曲の21世紀版とはこんなものではなかろうかと思わせる未来派ディヴェルティメントというに相応しい。 | ||
イン・ノミネ〜解体された「イン・ノミネ」による 機知に富んだコンソート・ブック J.タヴァナー、B.ファニホー、K.フーバー、 G.クロール、細川俊夫、W.Schurig、M.Pintscher、 S.Gervasoni、J.Schollhorn、Robert HP.プラッツ、 H.パーセル、G.クルターク、C.Schwehr、S.MacRAE、 F.M.オルブリッヒ、R.ペータース、 Picforth/J.Schollhorn、B.Pauset、S.Claren、 W.ツィンマーマン、H.ツェンダー、B.ハリソン、 R.Riehm、Y.Shaked、X.Shuya、J.Birkenkotter、 M.アンドレ、B.Pauset、C.J.ワルター、A.Digby、 E.Pomarico、G.Pesson、C-S.Mahnkopf、G.H.ハース、 G.ノイヴィルト、G.Steinke,T.タリス、I.Mundry、 I.Vine、S.シャリーノ、W.リームの作品 |
アンサンブル・ルシェルシュ | |
「イン・ノミネ」とは17世紀イギリスの器楽曲でよく使われた標題でジョン・タヴァナー(1490-1545)が作曲したミサ曲「汝、三位一体に栄光あれ」のベネディクトゥスの中で「In nomine」と歌われる部分が非常に美しかったため、この部分が特に独立して「イン・ノミネ」と呼ばれるようになり、その後、この部分の旋律が多くの作曲家が器楽曲を作曲するにあたり定旋律として用いるようになったという歴史がある。 このアルバムでは、その「伝統」に従い、アンサンブル・ルシェルシェの呼びかけに応じ、現代の名だたる前衛作曲家達が、これを題材にした同名の作品を連作している。もちろん「イン・ノミネ」を定旋律にした伝統的な作曲法を採る作曲家がいるわけがなく、一つの素材もしくは題材にそれぞれの作曲家がどうアプローチしているかが、作風の違いとともに、このアルバムの聴き所となっている。 作品は最短が24秒、最長10分、平均2分から3分のミニアチュールばかりで、図らずもKAIROSが推す現代作曲家・名鑑といった観がある。冒頭に本家ジョン・タヴァナーのオリジナル「イン・ノミネ」の器楽編曲版が演奏された後(アンサンブル・ルシェルシェによる古楽はモダンで、クロノス・カルテットの「アーリー・ミュージック」を思い出させる。)現代作品が続くが、合間にはヘンリー・パーセル、トマス・タリスらの「イン・ノミネ」が差し挟まれ、時を越えた祈り(時に叫び?呪詛?)がこだまする。 | ||
ベアト・フラー(1954-): ムジーク・シアター「願望」(2002/03) |
ペトラ・ホフマン(S) ヨハン・ロイトゲプ(語り) ヴォーカル・ アンサンブル・ノヴァ アンサンブル・ルシェルシュ ベアト・フラー(音楽監督) | |
録音:2003年。 すでにKAIROSではお馴染みの作曲家フラーの大規模なシアター・ピース。テキストはほとんど語りのみで特殊奏法多用の室内アンサンブルとコーラスがそれに付随する。 | ||
ジェラール・グリゼイ(1946-1998):音響空間 プロローグ(ヴィオラ独奏のための;1976)(*)/ ペリオド(7人の奏者のための;1974)(+)/ パルティエル(18人の奏者のための;1975)(+)/ モデュラシオン(33人の奏者のための;1976-1977)(#)/ トランジトワール(大管弦楽のための;1980-1981)(#)/ エピローグ(44つのホルンと大管弦楽のための)(#) |
ガース・ノックス(Va;*) アスコ・アンサンブル(+) ステファン・アスバリー 指揮WDRケルン放送so.(#) | |
グリゼイは盟友ミュライユと共にいわゆるスペクトル楽派と呼ばれる音楽を創始した作曲家である。彼は音楽を純粋に音響の運動体として捉え、その音色や運動の変化を音楽の主たる推進力とした。そこでは音響を科学的に解析(倍音のスペクトル成分を分析)し、それに基づいたシステマティックな作曲を行った。倍音に基づいた音楽であるため、それは調性的、旋法的に響くことがあり、それが時に清らかな抒情性を感じさせるのであるが、いわゆる新ロマン主義とは全く異なる。とは言え、音色への飽くなき探求と美意識は明かにフランスの伝統に属しており、彼の音楽は常に彼の師メシアン、そしてドビュッシーのオーラがかかっている。 この「音響空間」という連作はヴィオラ・ソロによるプロローグに始まり、室内アンサンブル、そして大管弦楽に及ぶ中で音響スペクトルの様々な変化が追求・表現された、グリゼイ作品の前期の集大成であり、まとまった形で世に出るのは、これが初めて。ドビュッシー、メシアン、リゲティ、シェルシと続いて来た、当然の帰結がグリゼイかも知れない。そのせいか、彼の影響を受けた作曲家は多く、特に日本の若い世代の作曲家で彼に師事した者が少なくない。惜しくも52歳の若さで亡くなったが、セリー以後、もっとも普及した音楽語法の作曲家は未だ、その影響力を失っていない。1曲目でヴィオラを弾いているノックスはアルディッティ・カルテット団員であった。 | ||
12412-KAI 廃盤 |
カイヤ・サーリアホ(1952-):室内楽作品集 アルト・フルート、チェロとピアノのための「火山灰」(1998)/ フルートとエレクトロニクスのための「ノア・ノア」(1992)/ フルートとチェロのための「鏡」(オリジナル版 ; 1997)/ 独奏チェロのための「スピン&スペル」(1996)/ ピアノのための 「モンキー・フィンガーズ、ベルベット・ハンド」(1991)/ チェロとエレクトロニクスのための「花弁」(1988)/ フルートとチェロのための「鏡」(レスリー・オルソン版 ; 1998)/ フルートとオプショナル・エレクトロニクスのための 「Laconisme de l’aile」(1982)/ 打楽器とエレクトロニクスのための 「6つの日本の庭 −武満徹の思い出に− 」(1993/95) |
ウォルペ・トリオ レスリー・オルソン(Fl) スコット・ローラー(Vc) スザンヌ・アキーユ(P) トマス・ノイハウス (ライヴ・エレクトロニクス) アンドレアス・ボートガー (打楽器/ライヴ・エレクトロニクス) |
シ・ブル、シ・カルム〜望月京(1969-):作品集 シ・ブル、シ・カルム〜アンサンブルのための(1997)/ 私を含む全ての存在 〜バス・フルート、クラリネット、 ヴァイオリンのための(1996)/ キメーラ〜アンサンブルのための(2000)/ インテルメッツイ〜フルートとピアノのための(1998)/ 明るい部屋〜アンサンブルのための(1998) |
ヨハネス・カリツケ指揮 クラング・フォルム・ウィーン | |
録音:2001年8月/2002年2月。若手世代のホープ、望月京初の本格的作品集! 望月京(もちづき・みさと)は東京出身。東京芸大を卒業後、パリ国立高等音楽院でポール・メファノとエマニュエル・ヌネスに学び、その後IRCAMの研究員としてトリスタン・ミュライユのもとで研鑚を積んだ。 彼女の音楽の魅力は時に対して激しく打ち込まれる音の楔と静寂との対比、静けさのなかで微細に変化してゆく音色とテクスチュアにある。収められた作品は何れも海外で高い評価を得ており、 二重奏から大規模アンサンブルまで、彼女の音楽の多様な側面を聴くことが出来るアルバムとなっている。 | ||
ヨハネス・マリア・シュタウト(1974-): 地図はテリトリーではない 〜大アンサンブルのための(2001)(*)/ ベヴェーグンゲン(運動)(1996)(#)/ ポリゴン〜ピアノとオーケストラのための(2002)(+)/ 黒い月〜バス・クラリネット独奏のための(1998)(**)/ ベレニーチェ(Berenice) 〜ソプラノ、小アンサンブルと テープのための(2003)(##) |
シルヴァイン・カンブルラン指揮 クラングフォルム・ウィーン(*) マリーノ・フォルメンティ(P;#) トーマス・ラルヒャー(P;+) ベルトラン・ド・ビリー指揮 ウィーン放送so.(+) エルネスト・モリナーリ(B−Cl;**) ペトラ・ホフマン(S;##) エミリオ・ポマリコ指揮 クラングフォルム・ウィーン(##) | |
ヨハネス・マリア・シュタウトはオーストリアのインスブルック生まれ。戦後第二世代の前衛たちから影響を受けており、音楽の諸要素である音響、リズム、強度、色彩、 音の方向性などを意識的に再構成した、精緻なエクリチュールが特徴。点描的な激しい音から導かれて登場する幾筋もの澄みきった持続音のオーラ、 ノン・ヴィブラートで奏される高音や金属打楽器の清冽な響きを好むところは巨匠ブーレーズを思わせ、極北の空に舞うオーロラのごとく冷たく澄んだ音の饗宴を楽しめる。 | ||
ベアト・フラー(1954-):ピアノ作品集 3つのピアノ小品(2003/04)/ 「ヴォイスレスネス/雪は声を持っていない」(1986)/ ファスマ(Phasma)(2002) |
ニコラス・ホッジス(P) | |
録音:2004年12月。 2005年夏のサントリーサマーフェスティヴァルで自作やシャリーノ作品等を指揮するため来日するベアト・フラー作品を、同じく同フェスティヴァルに登場するホッジスが弾いた作品集。同レーベルからは既にフラーの室内楽作品集が出ている。同音もしくは同和音を執拗に不規則なリズムで叩き続けたり、モーダルな響きで抒情的なパッセージが現れたり、フェルドマンかメシアンか、はたまたカウエルかと思わせる。 | ||
ヴォルフガング・リーム(1952-): ピアノ作品第7番(1980)/ ピアノ作品第5番「墓」(1975)/ ピアノ作品第4番(1974)/ ピアノ作品第2番Op.8b(1971)/ ピアノ作品第1番Op.8a(1970) |
ベルンハルト・ヴァンバッハ(P) | |
録音:2001年11月26日〜28日、北ドイツ放送局。 ヴァンバッハ(1948-)は1973年から1977年までグルダに指示、シュトックハウゼン、ブーレーズ、ノーノ、クセナキス、カーゲル、ラッヘンマン等、多くの作曲家たちと交流もある現代音楽のスペシャリスト。 | ||
12362-KAI 廃盤 |
モートン・フェルドマン(1926-1987):ピアノ作品集 廃墟の静寂〜フランチェスコ・クレメンテのために(Palais de Mari)(1986) / ネイチャー・ピース(Nature Pieces)(1951/52) /3つのダンス(マニュスクリプト)/ インターミッションズIーIV(1950/53) ジークフリート・マウザー(P) | |
12352-KAI 廃盤 |
ゲオルグ・フリードリヒ・ハース(1953-): 私が叫んだ時それを聞いたのは・・・ (打楽器とアンサンブルのための;1999)(*)/ 自由な性質のユニゾン・・・ (10の楽器のための;1994/1995、1996改訂)/ 夜陰〜アンサンブルのための(1991)/ 「・・・・・・」(アコーディオン、ヴィオラ、 室内アンサンブルのための二重協奏曲;1994)(+) |
ルーカス・ シスケ(Perc;*) ディミトリオス・ ポリソイディス(Va;+) ゲオルク・シュルツ (アコーディオン;+) シルヴァン・ カンブルラン指揮 クラングフォルム・ウィーン |
ハースはグラーツ生まれでウィーン在住の中堅。 | ||
オルガ・ノイヴィルト(1968-): 音楽劇「子羊の祭り」(1999) |
トレンケル=ブルクハルト、 ヴァルター・ラファイナー、 イゾルデ・ジーベルト/他 ヨハネス・カリツケ指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
録音:1999年6月19日、ゾフェインザール、ウィーン。初演時ライヴ。 既に抜粋が出ている(12232-KAI/指揮はカンブルラン)大作の全曲盤。オルガ・ノイヴィルトはオーストリア生まれの作曲家。だからというわけでもないだろうが、 ベルク、チェルハの影響が明らかなドラマティックかつシュールレアリスティックな作品。しかも音楽劇だけあって無調を基本としながらもスペクトル楽派(彼女はパリでトリスタン・ミュライユに学んでいる) を思わせる響き、オルゴールやベルといった具体的かつ多様な素材が駆使され、20世紀と今日の音楽語法を総括するかのような意欲的、野心的な音楽である。 眩惑的な音色が特徴の電子楽器テルミンが使われている様に、全体にくねくねとした音のモーションが支配的で大変エロティックなイメージを喚起する危険な美しさを持った音楽である。 彼女は現在デヴィッド・リンチの不条理恐怖映画「ロスト・ハイウェイ」のオペラ化に取り組んでいる。やはり彼女はベルクのルルを母に、リンチのエレファント・マンを父に生まれたシュール・レアル・エロティストなのだ! | ||
ゲオルグ・フリードリヒ・ハース(1953-): 24楽器のための「In Vain」(無駄に)(2000) |
シルヴァイン・カンブルラン指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
録音:2002年2月2日-4日。世界初録音。 ハースは1953年グラーツ生まれの作曲家でKAIROSには既に作品集があるが、この新譜では演奏に60分以上かかる(しかもこのCDにはトラックがひとつしかない) 室内オーケストラのための大作が一曲のみ収録されている。木管楽器群の細やかな運動に始まり、およそ一時間、穏やかに移り行く色彩とテクスチュアの変化、聴覚上の焦点の立体的な配置に構成の主眼が置かれている。 一聴してリゲティを思わせるが(特にミクロポリフォニー時代の諸作品、またアトモスフェールを思わせる部分もある)、60分間の持続は聴き手の時間感覚を麻痺、次第に音そのものに没入させてゆく。 結果としてその表面的な違いにも関わらず、フェルドマンやライヒの音楽への親近性を持つことになる。作曲者はヴィシネグラツキ、ジェームズ・テニー、ハリー・パーチ、シェルシ、 スペクトル楽派に共感すると言い、その色彩には陶酔させられる。 | ||
ベアト・フラー(1954-): ソプラノとアンサンブルのためのアリア (1998-1999)(*)/ チェロのためのソロ(2000)(+)/ アンサンブルのためのガスプラ(1998)(#) |
ペトラ・ホフマン(S;*) ルカス・フェルス(Vc;+) アンサンブル・ルシュルシュ(*/#) | |
KAIROSレーベルからは3枚目のフラー作品集。フラーはスイスに生まれ、1975年からウィーン在住の作曲家。ハウベンシュトック=ラマティに作曲を、オトマール・スイトナーに指揮を学んだ。 現代音楽専門のアンサンブル、クラングフォルム・ウィーンを設立し指揮者としても活動し、現在グラーツ音楽院で教授を務めている。彼の作品はウィーン国立歌劇場、グラーツ・シュティリアルテ音楽祭、 ザルツブルグ音楽祭、などで初演され好評を得ている。 | ||
ジャチント・シェルシ(1905-1988): アクション・ミュージック第1番(1995)/ 組曲第8番(1952) (BOT-BA チベット山中の僧院による儀式、 祈願および踊りに喚起された作品) |
ベルンハルト・ヴァンバッハ(P) | |
録音:2001年4月17日-20日、ブレーメン放送局。 鬼才ジャチント・シェルシのピアノ作品集。当レーベル2枚目のシェルシ作品集。「アクション・ミュージック」は1〜2分の小さな楽章が9つもある作品。 | ||
オルガ・ノイヴィルト(1968-): クリナメン(斜傾運動)−ノドゥス(もつれ) (管弦楽のための;1999)(*)/ 空間の構築−ブーレーズ生誕75年のために(2000) |
ピエール・ブーレーズ指揮 LSO(*) エヴァ・フラー(B-Fl;+) エルネスト・モリナーリ (B-Cl/Cb-Cl;+) リコ・グブラー(Sax;+) ハンネス・ハイダー(Tu;+) ペーター・ベーム (ライヴ・エレクトロニクス;+) エミリオ・ポマリコ指揮(*) クラングフォルム・ウィーン(*) | |
録音:2000年1月27日、バービカン・ホール、ロンドン(*)/2001年9月12日、インスブルック(#)。ソース提供:BBC(*)/ORF(#)。 ノイヴィルトはオーストリアでもっとも期待されている作曲家。彼女ならではのポスト・モダンな「何でもあり」傾向がさらに強化されている。ブーレーズが演奏しているものとブーレーズ75歳記念の作品が収めれている。 | ||
サムシング・ワイルド 〜モートン・フェルドマン(1926-1987):映画音楽集 I サムシング・ワイルド・イン・ザンシティ(1960)/ ジャクソン・ポロック(1950-51)/サモア(1968)(*)/ コープランドのために(1981)(*)/ イエスの罪(1960-61)(*)/無題(1960)(*)/ デ・クーニング(1963) |
アンサンブル・ルシュルシュ | |
録音:2001年6月25日-27日、ハンス・ロスバウト・スタジオ、バーデン=バーデン。(*)は当盤が初CDとなる曲目。 モートン・フェルドマンが映画のために書いた作品集。これまで出版されていなかった珍しい作品も含んでいる。フェルドマンならではのミニマルの語法を踏襲しながらもウェットな抒情味あふれる「サムシング・ワイルド・イン・ザンシティ」、その絵画を思わせる「ジャクソン・ポロック」、フェルドマンとは到底思えない「トロピカルな」「サモア」など、これまでの彼の作品世界からはみだしてしまうようなエンタメ系小品を多数収録。 | ||
ヘルムート・ラッヘンマン:歌劇「マッチ売りの少女」 | ローター・ツァグロセク指揮 シュトゥガルト歌劇場o.&cho. | |
ハンブルク、東京(演奏会形式)、パリ、シュトゥットガルトで上演され、2002年のザルツブルク音楽祭にも登場する同時代オペラのスタンダードになりつつある作品。 本来は舞台と一体化することで説得力が増す作品なのだが、CDではラッヘンマンならではの特殊奏法の嵐が二時間たっぷり味わえる。それはじつに官能的な音楽体験になるだろう。 | ||
ベアト・フラー: 調律/熱の様相/四重奏曲/そこは海である |
シュランクQ シュトゥットガルト・ ヴォーカル・アンサンブル ベアト・フラー指揮 ウィーン放送so. | |
得体の知れないものが暗闇で蠢いているような、弱音を重視した音楽が続く。 | ||
ハンス・ツェンダー(1936-): 耳で感じるための音楽 〜ソプラノ、ソロ・フルート、エコー・ フルートとアンサンブルのための(1998)(*)/ 連祷〜3つのチェロのための(1976)(#)/ 無字の経〜声、フルート、ヴァイオリン、 電子ピアノと楽器群のための(1975)(+) 風輪の経〜ソプラノ、クラリネットと アンサンブルのための(1988/89)(**) |
ジュリー・モファット(S;*/**) エヴァ・フラー(Fl;*/+) カトリナ・エムタージュ(Fl;*) アンドレアス・ リンデンバウム(Vc;#) ベネディクト・ ライトナー(Vc;#) ロナルド・シェレル(Vc;#) ヨハン・ロイトゲプ(Vo;+) アンネッテ・ビク(Vn;+) フロリアン・ミュラー(P;+) ドンナ・ワーグナー・ モリナーリ(Cl;**) ハンス・ツェンダー指揮 クラングフォルム・ ウィーン(*/+/**) | |
録音:2000年5月19日〜23日。 ツェンダーの仏教的思想が色濃く現れた作品集。 | ||
ジェラール・グリゼイ(1946-1998): 限界を超えるための4つの歌 〜ソプラノとアンサンブルのための(1997-98) |
キャスリーヌ・デュボスク(S) シルヴァン・カンブルラン指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
録音:2000年10月30日&31日、WDR放送。 1998年に急逝したグリゼイは熟練した音楽を聴かせる作曲家。彼の色彩的な管弦楽を最良な状態で表現できる指揮者はカンブルラン以外にはいないだろう。 | ||
オルガ・ノイヴィルト: 歌劇「子羊の祭り」〜インストルメンタル・インサルI?III/ ヴァンピルテオーネ/ホーローモーロー |
シルヴァン・カンブルラン指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
器楽とライヴ・エレクトロニクスがひじょうに心地よくブレンドされている。ノイヴェルトは1968年生まれ、オーストリアでもっとも期待されている作曲家。 | ||
12232-KAI 廃盤 |
ヘルムート・ラッヘンマン(1935-): コントラ・カデンツ〜管弦楽のための(1970/71)(*)/ 響影〜48の弦と3台のピアノのための(1972)(#)/ ファザード〜管弦楽のための(1973 rev.1987)(+) |
ペテル・ロッゲンカンプ(P;#) ジグモンド・サットマリー(P;#) ゲルハルト・グレゴール(P;+) ミヒャエル・ギーレン指揮 南西ドイツ放送so.(*/+)、 北ドイツ放送so.(#) |
サルヴァトーレ・シャリーノ(1947-):歌劇「私の裏切りの瞳」 | アンネッテ・シュトリッカー(S) カイ・ヴェッセル(C−T) オットー・ カッツァマイアー(B) サイモン・ヤウニン(Br) ベアト・フラー指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
録音:2000年11月14日&15日、ローゼンヒューゲル・フィルム・スタジオ第4ホール、ウィーン。 カウンター・テノール独唱による美しいプロローグから始まる、はかなく淫靡なオペラ。そのカロリーの低さが繊細で美しい。 | ||
12212-KAI 廃盤 |
ヘルムート・ラッヘンマン: アレグロ・ソステヌート/シレナーデ |
菅原幸子(P) ルーカス・フェルス(Vc) 岡 静代(Cl) |
ヘルムート・ラッヘンマン: 運動−硬直の前の/…2つの感情…/慰めI/慰めII |
ハンス・ツェンダー指揮 クラングフォルム・ウィーン ヴァルター・ヌースバウム指揮 スコラ・ハイデルベルク | |
「運動」は死後数時間あまり経過してから起こる筋肉の収縮運動をオーケストラで描いた異色作。そういった意味では、 ベートーヴェンやR.シュトウラスの後を継ぐ管弦楽作品なのかもしれない。もちろん、そこには微塵の物語性もないのだけれど。 | ||
ペーター・アプリンガー: 雨、ガラス、笑い/無題/求績法(ベルリンでの自画像) |
シルヴァン・カンブルラン指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
オーストリアの中堅作曲家。一定のトーンで持続される無秩序さがたまらない。 | ||
レベッカ・サンダース: アコーディオン、クラリネット、コントラバスと ピアノのための四重奏曲/ イン・トゥー・ザ・ブルー/ モーリーの3つの歌−ほのかな深紅/ダイクロイック17 |
ステファン・アシュブリー指揮 ムジーク・ファブリック | |
シャープで刺激的な作品を書き続けるサンダースは1968年ロンドン生まれ。 | ||
細川俊夫:琴−唄/旅I/サクソフォン協奏曲/遠景II | 川村京子(琴) 漆原朝子(Vn) ペーター・ルンデル指揮 ムジーク・ファブリック、 ヨハネス・エルンスト(Sax) 高関健指揮 ベルリン・ドイツso. | |
近年多くのCDがリリースされ、名実共に日本を代表する作曲家の一人だが、このディスクは最初の一枚としても最適。透明感ある重層的な音の響きが陶酔的だ。高関健を始め、 作曲者夫人の漆原などが演奏に参加している。 | ||
12162-KAI 廃盤 |
ジャチント・シェルシ: 弦楽四重奏曲第4番/エロヒム(神)/ ヴァイオリンとチェロのための二重奏/ アナガミン(不還)/マクノンガン/自然の再生 |
クラングフォルム・ウィーンQ アネッテ・ビク(Vn) リンデンバウム(Vc) フッセネッガー(Cb) ハンス・ツェンダー指揮 クラングフォルム・ウィーン |
ハンスペーター・キーブルツ: 混乱/ヴォイニッチ手稿/パーツ |
ハンス・ツェンダー指揮 南西ドイツ放送so. ルペルト・フーバー、 P.ルンデル指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
錯綜する「混乱」、解読されていない暗号譜をテキストに用いた「ヴォイニッチ手稿」など、ひたすらカオスに埋没したい向きに。 | ||
ヘルムート・ラッヘンマン(1935-): ヌン(*)/ノットルノ(#) |
ギャビー・ パ=ヴァン・リエ(Fl;*) ミヒャエル・スウォボダ(Tp;*) ジョナサン・ノット指揮 ケルン放送so.(*) ノイエ・ヴォーカルゾリステン・ シュトゥットガルト(*) アンドレアス・ リンデンバウム(Vc;#) ハンス・ツェンダー指揮 クラングフォルム・ウィーン(#) | |
録音:1999年10月15日〜20日、フィルハーモニー、ケルン(*)/1995年1月12日、15日&11月11日、。。「ヌン」(=現在)は作曲者が大のお気に入りである西田幾多郎のテキストを声楽に用いるなど、東洋的なものへの傾斜が強い作品(ラッヘンマンらしく雄弁なスタイルではあるが)。 | ||
12132-KAI 廃盤 |
サルヴァトーレ・シャリーノ(1947-): 反対の空間〜フルート、クラリネット、チェレスタ、ヴァイオリンとチェロのための(1985)(#)/ 地平線の壁〜アルト・フルート、イングリッシュ・ホルンとバス・クラリネットのための(1996)/ ブッリへのオマージュ〜アルト・フルート、バス・クラリネットとヴァイオリンのための(1995)/ プルプレウス写本〜弦楽三重奏のための(1983)/ 暗闇への序奏〜フルート、オーボエ、クラリネット、 ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーンと弦楽五重奏のための(1981)(*) クワメ・ライアン指揮(*) アンサンブル・ルシュルシュ | |
ヴォルフガング・リーム(1952-): ピアノ曲第6番/追加の習作/ 対談/もう一枚の紙の上で |
ジークフリート・ マウザー(P) | |
録音:2000年4月28日&6月13日、バイエルン放送局第3スタジオ。 ポツリポツリと弾かれる、シンプルで繊細なピアノ独奏作品集。 | ||
ベルンハルト・ランク(1957-):「差延/反復2」
サロメ・カンマー、リスガー・コシュナウ(歌) トッド(ラップ歌手) ディミトリオス・ポリソイディス(エレクトリックVn) ロベルト・レペニク(エレクトリックG) ウォルフガング・ムジル(音響担当) シルヴァン・カンブルラン指揮クラングフォルム・ウィーン | ||
録音:2000年4月7日&8日、コンツェルトハウス、ウィーン。 エレキ・ギターやラップ歌手が活躍、その上にミニマル的音形や中近東風の歌唱が乗せられたりするポップで退廃的で、妙に弾けてる音楽。 | ||
ルイジ・ノーノ: 未来のユートピア的ノスタルジー的遠方 |
メリーゼ・メルリンガー(Vn) サルヴァトーレ・ シャリーノ (音響技術) | |
ヴァイオリン独奏とライヴ・エレクトロニクスのための作品。シャリーノが音響技術を担当しており、具体音を交えたそれがなかなかに雄弁なのがユニークな演奏。 | ||
12092-KAI(ヴォルフガング・リーム:三重奏曲集 1969-1994)→12892-KAIで再発売 | ||
12082-KAI 廃盤 |
ペーター・エトヴェシュ: チャイニーズ・オペラ/シャドウズ/石 |
フラー(Fl) B.ツァッハフーバー(Cl) K.フィッシャー(Perc) エトヴェシュ指揮 クラングフォルム・ウィーン |
ヴォルフガング・リーム: 狩られた形式/隠された諸形式/ 符帳I/打たれた沈黙(符帳II) |
シルヴァン・ カンブルラン指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
リームの室内管弦楽のための作品集。揺動するリズムが特徴的なこれらの作品をすがすがしく演奏してるのがじつに心地よい。 | ||
ベアト・フラー: ヌーン/コン・フォッコ/スティル/ポエマス |
フォルメッティ、 F.ミュラー(P) ペーター・エトヴェシュ、 シルヴァン・ カンブルラン指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
カオスティックにはじけてるフラーの近作を収録。 | ||
12052-KAI 廃盤 |
マティアス・ピンチャー: 5つの管弦楽小品/ トマス・チャタートンからの音楽/チョク |
マティアス・ピンチャー指揮 ベルリン放送so. シルヴァン・カンブルラン指揮 クラングフォルム・ウィーン ウルバン・マルムベリ(Br) |
ヴォルフガング・リーム(1952-): 3人の弦楽奏者のための3つの音楽 |
トリオ・ルシュルシュ | |
録音:1996年2月13日〜16日、カールスーエ。 ドイツ音楽界の重鎮リームによる、バルトークと新ウィーン楽派を掛け合わせたような室内楽作品。アンサンブル・ルシュルシュのメンバーによる演奏もなかなか引き締まっている。 | ||
ジャチント・シェルシ: ヤマオン/アナヒット/祈り/3つの小品/オカタゴン |
ハンス・ツェンダー指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
シェルシの音楽は異教徒の典礼を思わせる怪しげなものばかり。それをツェンダーが至極几帳面&明晰に演奏しているのが新鮮。 | ||
サルヴァトーレ・シャリーノ(1947-): ガラスを通して聞こえる声/無限の闇(*) |
ソニア・テュルチェッタ(Ms) カルロ・シニ(朗読) アンサンブル・ルシュルシュ | |
録音:1999年2月&6月/1998年12月(*)。 「ガラスを通して聞こえる声」は、ジェズアルドのマドリガーレに摩訶不思議な編曲をほどこしたシャリーノの異色作。曲間に16世紀イタリアの大詩人、トルクヴァート・タッソーの詩の朗読が挿入されている。 「無限の闇」は静寂な空間に鋭く言葉が挿入されるという、完全なシャリーノ独自の世界。 #レーベルでは廃盤となっており、流通在庫限りです。 | ||
モートン・フェルドマン: サミュエル・ベケットのために |
シルヴァン・カンブルラン指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
フェルドマンならではの超マッタリ系音楽も、カンブルランの演奏だとちょっと艶めかしい流れになる。 | ||
ハンス・ツェンダー(1936-): シューベルトの「冬の旅」(1993) |
クリストフ・ プレガルディエン(T) シルヴァン・ カンブルラン指揮 クラングフォルム・ウィーン | |
録音:1999年2月20日-22日、モーツァルトザール、ウィーン。 シューベルトの有名歌曲集をツェンダーが現代風(かなり病的に)に編曲した作品。現代屈指のリート歌手プレガルディエンの繊細な歌唱がいい。カンブルランの指揮も情感にあふれており、 ひたすら厳しいBMGの編曲者自演盤とは別の音楽のように聴こえるほどだ。 |