トン・シュール・トン フランク・マルタン:無伴奏二重合唱のためのミサ曲〜キリエ / ペルト:マニフィカト モーテン・ローリゼン:おお大いなる神秘 / ルドルフ・マウエルスベルガー:街は何と荒廃してしまったか バーバー:アニュス・デイ / マールテン・ファン・インヘルヘム:ハムステッド・ヒース クルト・ビッケンベルフス:愛を伝える痛みはない ハーバート・ハウエルズ:大地よ、彼を連れ去り慈しめ / プーランク:雪の夕暮れ(全4曲) バルト・ファン・レイン指揮フランダース放送cho. | ||
録音:2019年6月17日-18日、20日-21日、ヘフェルレー・イエズス教会、ルーヴェン。ピリオド楽器オーケストラ界とオペラ界両者でも注目される、1979年生まれのベルギーの俊才指揮者バルト・ファン・レイン。前者では手兵ル・コンセール・ダーヴェルとのディスクが高い評価を受けている。レインはもともとシュトゥットガルト室内合唱団のメンバーで、アカペラ合唱は何よりも熟知した世界。名門フランダース放送cho. とさらなる才能を披露している。バーバーが名作「弦楽のためのアダージョ」をアカペラ合唱曲にしたてた「アニュス・デイ」やプーランクのセンス光る「雪の夕暮れ」、ペルトの「マニフィカト」の心洗われるような澄みきった世界も魅力だが、マルタンやマイエルスベルガーの20世紀作品では合唱の可能性を示唆してくれる。合唱でも卓抜な才能を見せるバルト・ファン・レイン、目が離せない。 | ||
フランシス・プーランク(1899-1963):スターバト・マーテル(*) アルフレッド・デザンクロ(1912-1971):レクイエム(オルガン版)(#) エルヴェ・ニケ指揮ブリュッセルpo.、フランダース放送cho. マリオン・タッスー(S;*) フランソワ・サン=ティヴ(Org;#) | ||
録音:2018年4月3日-5日(*) /2019年4月24日-26日(#) 。ニケとフランダース放送cho. によるレクイエム・シリーズの掉尾を飾るのはプーランクとデザンクロ、20世紀の作品。フランス的で、繊細でありながら壮大な作品を、知と感情のバランスのとれたニケの指揮がこの上なく優しく天国的な美しさで響かせる。プーランクの「スターバト・マーテル」は、1950年に作曲された。1949年に亡くなった友人クリスティアン・ベラール(画家・演出家)の死を悼んでのものだったが、スターバト・マーテルのかたちをとっている。ソプラノ独唱と混声5部合唱、三管編成の管弦楽によって演奏される大規模な作品。複雑な合唱が織りなす刻々と移ろう美しいハーモニー、そしてそれを包み込むような管弦楽が魅力。デザンクロはサックスの作品でとりわけその名が知られているが、宗教作品も残していた。もともとこの「レクイエム」(1953年頃完成、1963年初演)はオーケストラのために書かれたが、オルガン版が残されている。デザンクロの息子であるフレデリク・デザンクロが奏者を務めた録音もあるが、このたびのニケが鍛え上げたフランダース放送cho. の素晴らしい合唱による演奏は、貴重かつ決定盤の登場といえるだろう。 | ||
シューベルト&ブラームス:デュオ作品全集 Vol.5 〔完結編〕 ヴァイオリン・ソナタ〔第1番 ト長調 Op.78 /第3番 ニ短調 Op.108 〕/スケルツォ(F. A. E. ソナタより) シューベルト:アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D.821 /ソナタ(ソナチネ) Op.137 No.1 / D.384 ピーター・ウィスペルウェイ(Vc|使用楽器:ガダニーニ、1760年 ) パオロ・ジャコメッティ(P|使用楽器:スタインウェイ) | ||
録音:2018年5月23日-25日、11月27日-29日、ライデン。ウィスペルウェイ&ジャコメッティによる、シューベルトとブラームスのデュオ作品を録音するプロジェクト、ついに完結。ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番は原曲は ト長調だが、この作品をチェロで演奏する場合、パウル・クレンゲルによる編曲(ジムロック社からブラームスの生前に出版)の ニ長調に準拠することが多い。原調の ト長調による録音はきわめて珍しく、貴重。ウィスペルウェイ自身大好きだという第1楽章の冒頭から、ウィスペルウェイの愛 情のつまった音色に心 をわしづかみにされるようだ。ジャコメッティとのアンサンブルも素 晴らしいものがある。アルペジオーネ・ソナタも、ウィスペルウェイの美しい音色とリズムに酔う名演となっている。 | ||
Lignes Paralleles(平行の線) ハイドン:交響曲第49番 ヘ短調 ディヌ・リパッティ:古典様式によるピアノ・コンチェルティーノ Op.3 モーツァルト:ピアノ協奏曲 変ロ長調第27番 K.595 ジュリアン・リベール(P) ラファエル・ファイユ指揮レ・メタモルフォーゼス(o.) | ||
録音:2018年6月。ベルギーのピアノの神童ジュリアン・リベールによる、「18世紀」を象徴する作品集。モーツァルトのピアノ協奏曲第27番のほか、リパッティの古典スタイルによるピアノ・コンチェルティーノ、そしてハイドンの交響曲「受難」という興味深いプログラム。リパッティ(1917-1950)の古典様式によるピアノ・コンチェルティーノは、1936年、まだリパッティが10代で、コルトーの下で学んでいた頃の作品。1938年にシャルル・ミュンシュの指揮でリパッティ自身のピアノで初演されている。4楽章からなり、ピアノと管弦楽のからみが美しい古典派を思わせる作品。レ・メタモルフォーゼスは新設のアンサンブルで、彼らの実力を知らしめるハイドンの交響曲第49番も見事。リパッティ作品での繊細な管弦楽も聞き物。 | ||
シューベルト:ロンド ロ短調 Op.70, D895(原曲:ヴァイオリンとピアノ) ブラームス:ソナタ ニ長調(原曲:ヴァイオリン・ソナタ ト長調 Op.78)/ ソナタ ヘ短調(原曲:クラリネット・ソナタ ヘ短調 Op.120 No.1) ピーター・ウィスペルウェイ(Vc) パオロ・ジャコメッティ(P) | ||
録音:2017年2月15日-17日、ライデン。 ウィスペルウェイとジャコメッティによる、シューベルトとブラームスのデュオ(ピアノとその他の楽器)の全曲録音プロジェクト、第4弾の登場。ウィスペルウェイとジャコメッティによるシューベルトは、どこか鬼気迫るような緊迫感。軽やかでリズミカルなはずの楽章もどこか狂気すら感じさせる演奏。終盤の超絶技巧も鮮やか。新しい「ロンド」の登場といえるだろう。ブラームスのヴァイオリン・ソナタはチェロで演奏するにあたり移調して演奏されているが、この作品が持つ世界がまた一段と深くなって響いてくるようだ。クラリネット・ソナタも息の長い歌い回しとウィスペルウェイの作品の本質を突くような音色にはっとさせられる瞬間の連続。ウィスペルウェイの音楽がますます深まり、研ぎ澄まされていることを感じる1枚。 | ||
ウィスペルウェイ、3度目の録音〜J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲) 〔第1番 ト長調 BWV.1007 /第2番 ニ短調 BWV.1008 /第3番 ハ長調 BWV.1009 / 第4番 変ホ長調 BWV.1010 /第5番 ハ短調 BWV.1011 /第6番 ニ長調 BWV.1012 (#) 〕 ピーター・ウィスペルウェイ(Vc) | ||
録音:2012年6月9日-14日、セレンデピトゥス・スタジオ、ベルギー 。使用楽器: Pieter Rombouts、1710年 (無印) /ピッコロ・チェロ(18世紀、製作者不明)(#)、ピッチ:392。 #当初 DVD 付でリリース(品番:EPRC-012)されましたが、2017年に廃盤となりました。現在のリリースはCDのみの上記ヴァージョンだけになります。 濃厚な感情、力強く魂に響く音色。ウィスペルウェイ、3度目のバッハが登場。2012年50歳(1962年9月25日生まれ)をむかえ、過去の2度の録音(1989、90年および1998年)から10年以上の時を経て、ますます充実著しいことを感じさせる。これまでに使用していた楽器とは違う新しい楽器、さらにピッチも392(バッハのケーテン時代、ケーテン宮廷のピッチ)、いわゆるカンマートーンに合わせたことにより、音の振幅は格段に広くなり、その音色はより雄弁なものとなっている。さらに、今回の演奏にあたり、バッハ研究家でヴィオール奏者でもあるローレンス・ドレイフュスとジョン・ブットからも様々なインスピレーションを得た。これまでに約1000回この作品を演奏会でとりあげたウィスペルウェイ自身、「かつて経験したことのないような領域に入ったように感じる」と語っている。バッハがチェロ1本のために書いたこの組曲の単旋律には、分解してみればいくつもの声部が内在しているが、それだけではなく、「過去と現在、弾き手と聴き手、そして何よりもバッハ本人との対話」といった複数の声が存在している、とウィスペルウェイは語る。舞曲に則って書かれたこの組曲だが、ウィスペルウェイの演奏は、舞曲を思わせるというよりも、深くたっぷりとした息遣いで、旋律、モティーフの一つ一つを実に生々しく響かせた物。濃厚な感情が込められた力演。深い洞察力と驚異的なテクニック、そしてピリオド楽器とモダーン楽器両方を弾き分けることができるウィスペルウェイだからこそ達することのできた領域だといえるだろう。深い洞察力と驚異的なテクニック、そしてピリオド楽器とモダーン楽器両方を弾き分けることができるウィスペルウェイだからこそ達することのできた高みにある演奏。 | ||
クラリネットと管弦楽のための作品集 ジェラルド・フィンジ:クラリネットと弦楽オーケストラのための協奏曲 Op.31 モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 ブルッフ:二重協奏曲(クラリネットとヴィオラのための) Op.77 ルーラント・ヘンドリックス(Cl) サンダー・ギエルツ(Va) マーティン・ブラビンズ指揮 LPO | ||
ベルギーの名クラリネット奏者、ルーラント・ヘンドリックスによる、クラリネット協奏曲の名曲集。ヘンドリックスはベルギー出身、これまでにベルギーでワルター・ブイケンスに師事、他にもイギリスのテア・キングらからマスタークラス等で薫陶を得ている。ベルギー国立o. で長きにわたり首席奏者を務めていたが、2017年にソリストとしてのキャリアを追求することを決意。現在はソロはもちろん、室内楽も積極的に行っている。名クラリネット奏者による名曲、というだけでも注目だが、特筆すべきはフィンジの協奏曲。ヘンドリックスが師事したテア・キングは、1949年にフィンジの協奏曲を初演したフレデリック・サーストンの配偶者。フィンジの直筆の書き込みなどに直接触れることができ、生きたアドヴァイスを得ての満を持しての録音となっている。ブラビンズ率いるロンドン・フィルの熱いサポートも聴き物。他にも、モーツァルトはシュタートラーのために、ブルッフは息子のために協奏曲を書いた。ヘンドリックスは、“クラリネット協奏曲 "というジャンルのために生まれた名曲、そしてその名曲が生まれるきっかけとなった素晴らしい奏者たちに敬意を表しつつ熱演している。 | ||
ベートーヴェンのピアノ用補聴装置を再創造〜ベートーヴェン:後期ピアノ・ソナタ集 〔第30番 ホ長調 Op.109 /第31番 イ長調 Op.110 /第32番 ハ短調 Op.111 〕 トム・ベギン(P|使用楽器:クリス・マーネ、2013年製 〔モデル:ジョン・ブロードウッド&サンズ、ロンドン、1817年製、シリアル No.7362〕) | ||
録音:2016年7月19日-21日、 1817年製のブロードウッド・ピアノは、1818年から死去するまでベートーヴェンが所持していたもの。 この頃既に全聾となっていたと考えられる彼は1820年、ピアノ製作者のアンドレ・シュタインに(地元のブリキ職人の協力を得て)巨大な「 Gehoermaschine (聴くための機械、補聴装置)」を作らせた。この装置を再制作し、ベートーヴェンの晩年のソナタを録音するプロジェクトに乗り出したのが、18世紀のピアノ作品を演奏、研究し、書籍も発行しているトム・ベギン。ベートーヴェンの会話帳の記述などを元に、協力を得て、ジャケットにあるような装置を作り出した。時に倍音などの振動が、装置を通じて奏者の指にまで伝わることもあったという。ベートーヴェンの創造の軌跡を追う貴重な試み。 | ||
メンデルスゾーン(1809-1847):モテット&ピアノ三重奏曲 詩篇第2「なにゆえ、国々は騒ぎ立ち」 Op.78 No.1 /キリエ・エレイソンMWV B57 / いと高きところ神に栄光あれ/ピアノ三重奏曲第2番 ハ短調 Op.66 / 詩篇第43「神よ、あなたの裁きを望みる」 Op.78 No.2 / Heilig ist der Gott Zebaoth MWV B57 / 全地よ、主にむかって喜びの声をあげよ Op.69 No.2 /チェロ・ソナタ ニ長調 Op.58 〜第3楽章 アダージョ エルヴェ・ニケ指揮フランダース放送cho. ペッカ・クーシスト(Vn) ピーター・ウィスペルウェイ(Vc) アラスデール・ビートソン(P) | ||
録音:2016年-2017年。 エルヴェ・ニケとウィスペルウェイが紡ぐ、メンデルスゾーンの世界。ニケ指揮によるモテット集と、ウィスペルウェイ参加の室内楽、という組み合わせ。20歳でバッハの「マタイ受難曲」をバッハの死後初めて演奏したメンデルスゾーン。その生涯にわたって、バッハはメンデルスゾーンにとって重要な作曲家だった。当アルバムでは、バッハ、および先人たちの影響が様々に見られる宗教声楽作品と、同じくバッハも用いたコラールを作品に織り込んだ室内楽作品という組み合わせ。モテットはニケ率いる名門フランダース放送cho.、室内楽は、ウィスペルウェイの盟友、フィンランドのヴァイオリン奏者ペッカ・クーシストと、スコットランドのピアニスト、アラスデール・ビートソンを迎えた豪華布陣。ここに収録された宗教作品はすべて無伴奏合唱によるもので、美しい和声と見事な書法による透明感のある世界が魅力。 詩篇第2編「なにゆえ、国々は騒ぎ立ち」 Op.78 No.1は二重合唱のための作品で、一連のクリスマス礼拝の音楽として書かれた。バロック時代の語法である、喜びをあらわす付点のリズムなど、メンデルスゾーンの先人達の作品の研究の成果ともいえる、美しい作品。ピアノ三重奏曲第2番は、あのヴァイオリン協奏曲を完成させたのと同時期、そしてオラトリオ「エリア」にとりかかっていた充実した時期に書かれた物。終楽章ではバッハがカンタータ第130番(聖ミカエルの祝日のためのカンタータ)でも用いたコラール旋律が聴かれる傑作。ディスク最後に収録されているチェロ・ソナタ第2番のアダージョもバッハのヨハネ受難曲のアルトのアリア「成し遂げられた。」の和声進行で始まる美しい楽曲で、全体としてバッハへのオマージュ的アルバムともいえるだろう。 | ||
ボッケリーニ:コンサート・アリア集 Caro padre, a me non dei / Deh, respirar lasciatemi / Care luci, che regnate / Se non ti moro allato / Tu di saper procurac Marco Borggreve / Se d'un amor tiranno / Misera, dove son! - Ah! non son io che parlo アマリリス・ディールティエンス(S) バルト・ネッサンス指揮カプリオラ・ディ・ジョイア | ||
録音:2016年10月。 オペラや古楽シーンで活躍しているアマリリス・ディールティエンスと、彼女が設立したアンサンブル「カプリオラ・ディ・ジョイア」(17世紀およびバロックの音楽をレパートリーの中心に据えて活動)によるボッケリーニのコンサート・アリア集。ボッケリーニは自身チェロの大名人であったこと、また、器楽作品が好きな貴族に仕えていたため、その作品の大部分は器楽作品。声楽作品はまだまだ知られざるもので、このディスクは貴重な1枚といえるだろう。1786-97年の間に、ボッケリーニは12のコンサート・アリアをひとつの手稿譜にまとめている。これらが何の機会のために作曲されたかは明らかでないが、すべて当時大人気のリブレッティスト、メタスタージオのテキストに基づいていることなどから、ボッケリーニはこれらをひとまとまりとして考えていたとされている。複雑さや衒学的な部分はまったくない、美しい旋律を純粋に楽しめる作風で、声楽パートと器楽パートが同等に扱われている。アマリリス・ディールティエンスの少しコケティッシュなところもある声質が、ボッケリーニの音楽に実に適している。 | ||
ウィスペルウェイ&ジャコメッティ〜シューベルト&ブラームス:デュオ全集 Vol.3 ブラームス:ソナタ イ長調 Op.100(原曲:ヴァイオリン・ソナタ) シューベルト:ソナタ イ長調 D.574, Op.posth.162(原曲:ヴァイオリン・ソナタ) ブラームス:チェロ・ソナタ ヘ長調 Op.99 ピーター・ウィスペルウェイ(Vc) パオロ・ジャコメッティ(P) | ||
録音:2016年4月。 力強さと精巧さを兼ね備えたオランダの名チェロ奏者ウィスペルウェイ。シューベルトとブラームスのデュオ(室内楽)の全曲録音プロジェクト第3弾。イ長調 Op.100 はチェロで聴いてもたぐいまれなる名曲であることを実感。ヘ長調 Op.99 も、アーティキュレーションやハーモニーが際だたせられた、ウィルペルウェイならではの演奏。ジャコメッティの精巧かつ重厚なピアノがウィスペルウェイのブラームス観をより深いものにしている。シューベルト作品もウィスペルウェイのヴィルトゥオジティとふくよかながらも甘すぎない歌いまわしが絶妙にマッチした演奏。 | ||
ウィスペルウェイ&ジャコメッティ〜シューベルト&ブラームス:デュオ全集 Vol.2 シューベルト:「しぼめる花」の主題による序奏と変奏曲 D.802, Op.160(原曲:フルートとピアノ) ブラームス:チェロ・ソナタ第1番 ホ短調 Op.38 シューベルト:ソナチネ イ短調 D.385, Op.137 No.2(原曲:ヴァイオリンとピアノ) ピーター・ウィスペルウェイ(Vc|使用楽器:J. B. Guadagnini, 1760, Parma) パオロ・ジャコメッティ(P|使用楽器: Steinway & Sons, grand model, D 598853) | ||
録音:2015年2月、8月。力強さと精巧さを兼ね備えたオランダの名チェロ奏者ウィスペルウェイ、新譜の登場。シューベルトとブラームスの、デュオ(室内楽)をすべて録音(全部で5枚のCDになる予定)するという注目プロジェクトの第2弾。「しぼめる花」はもともとフルート作品で、チェロでの録音は世界初。悲しくも美しい旋律はチェロで奏でても実にしっくり来る。シューベルトのソナチネも、さまようようなハーモニーと転調が印象的で、同時にリリシズム、そしてドラマに満ちた作品だが、ウィスペルウェイの雄弁な語り口と、ジャコメッティの精巧なピアノで聴くアンサンブルは実に見事。ブラームスのソナタは、冒頭からさすがの出来栄え。終楽章のバッハの「フーガの技法」に基づいたフーガはウィスペルウェイの真骨頂、迫力ある堅固な建造物が目の前に現れる。ウィスペルウェイの芸術がますます深まっていることに感じ入る1枚。 | ||
Lignes claires〔光の線〕 ラヴェル:高貴で感傷的なワルツ/クープランの墓 リパッティ(1917-1950):夜想曲/左手のためのソナチネ |
ジュリアン・リベール(P) | |
録音:2013年8月、2015年8月。ベルギーが生んだ俊英ピアニスト、ジュリアン・リベール。ピリスの秘蔵っ子でもある。「完璧な音楽家。いかなる音楽の瞬間にも、作品への真の理解、微細なものに対しての知的なアプローチと間違いない本能を統合することができる」とピリスが絶賛するリベールは1987年生まれ。リベールは6歳でピアノを始め、ピリスとの出会いをきっかけに、世界的に活躍の場を広げることとなった。このアルバムでは、ラヴェルとリパッティの作品を収録。二人の天才は完璧主義で非常に自己に対して厳しかったという共通点(光の線)で結ばれているとリベールは語っている。リベールの真摯な音楽性が光る1枚。 | ||
エルヴェ・ニケ〜ブラームス:ドイツ・レクイエム
ローレ・バイノン(S) タシス・クリストヤニス(Br) エルヴェ・ニケ指揮ブリュッセル・フィルハーモニック、フランダース放送cho. | ||
鬼才エルヴェ・ニケがフランダース放送cho.を率いてのレクイエム・シリーズ第2弾。研究熱心でありながら柔軟な発想を持つエルヴェ・ニケはこの作品でも親密な空気もあわせもった演奏を披露している。当シリーズでは既に発売されているフォーレ(EPRC-015)のほかに今後モーツァルト、デザンクロらの作品がリリースされる予定。 | ||
ヴィスペルウェイ〜 Schubert - Brahms: The complete Duos Vol.1 シューベルト:幻想曲 ハ長調 D 934 / レーガー:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 Op.131c No.1 〜アダージョ ブラームス/作曲者編曲:ソナタ 変ホ長調 Op.120 No.2(原曲:クラリネット・ソナタ第2番) レーガー:無伴奏チェロ組曲第2番 ニ短調 Op.131c No.2 〜ラルゴ シューベルト:ソナティナ第3番 ト短調 D 408(原曲:ヴァイオリンとピアノ) ピーター・ウィスペルウェイ(Vc| 使用楽器:ジョヴァンニ・バッティスタ・グァダニーニ、1760年|使用弓:ロンバウツ、1710年) パオロ・ジャコメッティ(P|使用楽器:モダーン・スタインウェイ) | ||
録音:2014年10月、2015年2月、セレンディピトゥス・スタジオ、メヘレン、ベルギー。ウィスペルウェイがシューベルトとブラームスの、デュオ(室内楽)をすべて録音する(全部で5枚のCDになる予定)という注目プロジェクトの第1弾。シューベルトのファンタジー ハ長調や、シューベルトのソナティナに至っては約20年ぶりの再録音となるが、名曲クラリネット・ソナタ第2番のヴィオラ版に基づくものなど、今回新たに収録するものも含む。ピアニストには長年共演を重ねている名手ジャコメッティを迎え、まさに万全の態勢。レーガーの無伴奏が挿入されているというのも興味深いところ。ブラームスとシューベルトへの愛とその作品への深い洞察に満ちており、感情が生々しく伝わってくるようだ。ウィスペルウェイの充実ぶりを実感する。 | ||
ROCOCO 〜ピーター・ウィスペルウェイ チャイコフスキー:ロココ主題による変奏曲 Op.33(オリジナル版) C.P.E.バッハ:チェロ協奏曲 イ長調 WQ 172 ストラヴィンスキー/B.ウォルフィッシュ編曲:イタリア組曲 (チェロと弦楽オーケストラのための版/1979) ピーター・ウィスペルウェイ(Vc) ジョナサン・モートン指揮 ヴィンタートゥール・ムジークコレギウム | ||
録音:2013年1月15日-18日、ヴィンタートゥール・シュタットハウス、スイス。使用チェロ:ジョヴァンニ・バッティスタ・グァダニーニ、1760年。独創的な音楽と完璧なテクニックで世界を魅了するオランダのチェリスト、ピーター・ウィスペルウェイ、バッハの無伴奏チェロ組曲に続くEVIL PENGUIN からの第2弾。C.P.E.バッハのロココ風スタイル、チャイコフスキーの「ロココ」主題、そしてバロック〜ロココ時代の作品に影響を受けて書かれた「プルチネッラ」に基づくストラヴィンスキーのイタリア組曲、という、 「ロココ」という言葉を軸に編まれたプログラム。チャイコフスキーのオリジナル版を採用した「ロココ変奏曲」は典雅な部分はエレガントに、テンポの速い変奏は非常にアグレッシヴにと、変幻自在に聴かせる。C.P.E.バッハは、生き生きとしたオーケストラにのって、ウィスペルウェイもパワー全開で演奏している。ストラヴィンスキーの「イタリア組曲」はチェロ独奏と弦楽アンサンブル伴奏のための編曲で、この作品のバロック性が強調された物。ウィスペルウェイ独特の力強さが際立つ民俗舞曲風の第3楽章や、超絶技巧のタランテラ、そして終曲の盛り上がりなど、期待を裏切らない出来栄え。ジョナサン・モートンは、スコティッシュ・アンサンブルのリーダーで、ロンドン・シンフォニエッタの第1ヴァイオリン奏者。音楽監督、そしてアンサンブルのリーダーとして、英国を中心にヨーロッパで活躍している存在。ヴィンタートゥール・ムジークコレギウムは1629年に設立された伝統あるアンサンブル。総勢約50名で結成されている。近年の首席指揮者には、メスト(1987-1990)、フュルスト・ヤーノシュ(1990-1994)、ハインリヒ・シフ(1995-2001)、ジャック・ファン・ステーン(2002-2008)らがおり、2009年からはダグラス・ボイドが首席指揮者を務めている。ジャニーヌ・ヤンセンやアンドラーシュ・シフといったソリストをゲストに迎えての演奏会も行っている、格式あるアンサンブル。 | ||
エルヴェ・ニケ〜フォーレ&グノー フォーレ(1845-1924):レクイエム(1893年稿) (*) グノー(1818-1893):アヴェ・ヴェルム(#) /十字架上のキリストの最後の7つの言葉(#) エルヴェ・ニケ指揮ブリュッセルpo.団員、フランダース放送cho. | ||
録音:2014年4月10日-12日(*)、2013年6月18日-21日(#)。鬼才エルヴェ・ニケが、フランダース放送cho. を率いてのレクイエム・シリーズを始動。第1弾に選んだのは、フォーレ。今後、ブラームス、モーツァルト、また、デザンクロらの作品が予定されている。管弦楽パートは、名門ブリュッセル・フィルのメンバーで構成。フォーレが書いた音楽自体の美しさが最大限に発揮されているが、大仰になることもなく、耽美主義にはしることもなく、非常に親密な空気もあわせもった演奏の登場。フォーレのレクイエムは、1888年から1900年の間に3つの稿で演奏された。まず、オリジナルの「マドレーヌ稿」は、1888年実際の儀式で演奏されたもので[入祭唱とキリエ、サンクトゥス、ピエ・イエス、アニュス・デイ、イン・パラディスムの5曲構成/ソプラノ独唱、合唱、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ハープ、オルガン]という構成。2つ目が、「1893年稿」は、1888年版の楽曲に、リベラ・メと奉献唱が追加、バリトン・ソロと管楽器が加わる(この稿は、ヘレヴェッヘによる録音でも広く知られている(HMG-501292))。そして3つ目が、1900年に演奏されたのが現在一般的に演奏されるのと同じオーケストラ編成の稿。エルヴェ・ニケは、1893年の稿を足がかりに演奏を行っている。研究熱心でありながら柔軟な発想を持つエルヴェ・ニケ。「ピエ・イエス」を、ソプラノ・ソロではなく、合唱のソプラノのユニゾンで演奏している。このことついて、ニケは、実際の葬儀での演奏のように非常に個人的な雰囲気を出したかったから、と語る。「実際のレクイエムは、亡くなった人(あるいはその家族)の資金で演奏される。すべての人が、器楽奏者、合唱に加えてソプラノ・ソロを一人雇うことができたとは考えられない」こと、また、「オランダ放送cho. が非常に素晴しいクオリティである」ことも理由として挙げている。この1893年稿で追加されたリベラ・メは、稿の通り、バリトン・ソロで演奏している。カップリングは、グノーの宗教作品。グノーというと、アヴェ・マリアと、オペラ「ファウスト」「ロメオとジュリエット」ばかりが有名だが、彼の本領は宗教作品に発揮されている。その頂点が、「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」。1858年に無伴奏合唱のために書かれ、1866年に改訂された。パレストリーナのように複雑な対位法に則っており、「厳格な様式を貫いても、美しい音楽を書くことは可能だし、人間の情熱の制御不能な激しさを描くこともできる」とグノーは述べている。エルヴェ・ニケ:フランス生まれ。ピアノ、オルガン、合唱指揮を学び、16歳から古楽を研究。17歳で指揮法をピエール・カオに師事、1980年パリ・オペラ座の合唱指揮者に就任。1985年にはモンテカルロ・バレエの開幕に際し、モナコ王女からバレエ作品を委嘱される等、作曲家としても活躍。1987年ルイ王朝時代の有名な演奏協会にちなんだオーケストラ「ル・コンセール・スピリテュエル」を創設。当時のレパートリーを現代に蘇らせた彼らは、世界の主要ホール、音楽祭に招聘されて高い評価を獲得し、日本公演でも大きな話題となった。チェンバロ、オルガンの名手でもあり、多種多彩な録音を発表、世界中で、指揮者、器楽奏者として演奏会を開催している。2009年、フランスのロマン派音楽センター(ヴェネチアのパラッツェット・ブル・ザーネ)設立に携わり、これがきっかけでフランダース放送cho. およびブリュッセル・フィルとの関係が始まった。2011年よりフランダース放送cho. の首席指揮者を務めている。このフォーレを皮切りに、EVIL PENGUIN RECORDS から、ブラームスやデザンクロらのレクイエムやミ佐曲など、5枚が発売される予定となっている。 | ||
ヘンシェル&ヘレヴェッヘ〜ヴォルフ:歌曲集 (オーケストラ編曲:ストラヴィンスキー〔全曲?〕) CD メーリケ詩集 より〔聖受難週間/古い絵に/時は春/新しい恋/春に/眠れる幼子イエス/ためいき/ なぐさめはどこに?/祈り/ヴァイラの歌/思え、おお魂よ/眠りに寄す〕/ スペイン歌曲集 より〔主よ、この地に何が実るのだろうか/愛する者よ、あなたは傷を負った〕 DVD:「 Irrsal - Forbidden Prayers 〔狂気の − 禁じられた祈祷者たち〕」 ディートリヒ・ヘンシェル(Br) フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮ロイヤル・フランダースpo. | ||
録音:2013年6月29日、30、7月1日、AMUX 、アントワープ、セッション。編曲詳細・DVD 内容等については、アナウンスに一切記載されておらず、詳細不明。 DVD仕様: NTSC|Region ALL| Dolby digital 2.0 & 5.1 | 16:9 。詩人にして聖職者のメーリケの強烈で深遠な詩の世界は、ヴォルフの心を強くひきつけた。ヴォルフの重要歌曲のほとんどはメーリケの詩によるものといえるだろう。ヘンシェルは、このヴォルフの作品がメーリケの詩の世界を究極のかたちで音楽化しているとし、メーリケ詩集からの作品を中心に選曲、ヘレヴェッヘの指揮のもと真摯に歌っている。メーリケの詩を、ヴォルフがさらに深いものにした、濃密な音楽の世界が展開されている。同時に、このヴォルフの歌曲の世界をより深く聴き手に体験してほしいと、気鋭のディレクター、クララ・ポンスと組み、「Irrsal-Forbidden Prayers (狂気の-禁じられた祈祷者たち)」というタイトルで、官能的、あるいは神秘的な愛、さまざまなかたちの愛の世界をさすらうメーリケの詩の世界を映像で描いている。 | ||
ヘンシェル&ベレゾフスキー〜マーラー:「子供の不思議な角笛」による歌曲 全曲 死んだ鼓手/ラインの伝説/たくましい想像力/緑の中を楽しく歩いた/別離と忌避/番兵の夜の歌/外へ、外へ!/ シュトラスブルクの砦に/塔の中の囚人の歌/むだな骨折り/うぬぼれ/不幸なときの慰め/少年鼓手/夏に小鳥はかわり/ この世の生活/魚に説教するパドゥヴァの聖アントニウス/いたずらな子をしつけるために/もう会えない/ だれがこの歌を作ったのだろう/美しいトランペットが鳴り響く所/高い知性への賛美/原光/3人の天使がうたう ディートリヒ・ヘンシェル(Br) ボリス・ベレゾフスキー(P) | ||
録音:2012年5月22日-27日、ロッテルダム。「子供の不思議な角笛」は、ブレンターノらが収集したドイツの民衆歌謡。マーラーは、この歌詞に基づいた歌曲を多数作曲(歌曲全体の約半数)しており、これらは歌曲集「若き日の歌」、「子供の魔法の角笛」、「最後の7つの歌」にばらばらに収められている。ヘンシェルは「マーラーが、自作の「子供の不思議な角笛」による歌曲に統一性をもたせていたかどうかはわからなけれど、これらの底に横たわる共通のドラマトゥルギーのようなものを発見できるのでは」と考え、「子供の不思議な角笛」の歌曲だけを集めて録音を行った。「子供の不思議な角笛」の歌詞自体は一見すると平易だが、その背後には不気味な闇が広がっている(マーラーの音楽はまさにこの闇に焦点を当てている)。詩の内容が戦いであれ、おとぎばなしであれ、愛についてであれ、これらの詩は、すべての幸せは不幸と表裏一体、禍福は糾える縄のごとし、的要素がある。ベレゾフスキーの懐が深く情景感たっぷりのピアノが、さながらオーケストラのように大きなうねりとなって、ヘンシェルが歌う詩の世界を見事に増幅させている。 | ||
バッハと息子たち ヨハン・クリストフ・フリードリヒ・バッハ(1732-1795): チェンバロ・オブリガートとフルートのための6つソナタ〜ハ長調(1777) カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ(1714-1788):チェンバロのための幻想曲 ハ長調 H291 ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685-1750)(C.P.E.バッハ作?): チェンバロ・オブリガートとフルートのためのソナタ ト短調 BWV1020 ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ(1710-1784):チェンバロのためのソナタ イ短調 カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ:チェンバロ・オブリガートとフルートのためのソナタ ハ長調 WQ87 ヨハン・セバスティアン・バッハ:前奏曲、フーガとアレグロBWV998 ヨハン・セバスティアン・バッハ(C.P.E.バッハ作?): オブリガート・チェンバロとフルートのためのソナタ 変ホ長調 BWV1031 ベンヤミン=ヨーゼフ・シュテーンス(クラヴィコード) ジャック=アントワーヌ・ブレッシュ(Fl) | ||
大バッハとその息子達による豪作品の共演。バッハ一族の中で、どのように音楽の流れが受け継がれていったのかを網羅している一枚。繊細ながらも表情とダイナミックさに富んだ楽器、クラヴィコードは、特に18世紀のドイツを中心に人々に愛され、特にバッハが熱烈に支持していたクラヴィコードとバロック・フルートによる演奏。クラヴィコードは楽器自体の構造が単純なため、奏者の意志がダイレクトに音となってあらわれる上、ヴィブラートなどの効果も得ることが出来る。当時の文献(クヴァンツやC.P.E.バッハらが残している)でいう「鍵盤楽器」は、第一にはチェンバロを指すが、しかし、チェンバロはもちろん、当時の最先端だったフォルテピアノといった楽器は、まだまだ市民の手には届かない高嶺の花だった。当時の人々に最も広く愛されていたクラヴィコードで、これらのフルートと鍵盤楽器のための演奏したこのディスクは、実は当時の人々が耳にしていた音楽の姿なのかもしれない。ベルギー生まれのシュテーンスは、ランスのサン=レミ旧大聖堂などでオルガニストを務める実力派。テクニックの上でも解釈の上でも、これ以上ない演奏を聴かせてくれる。ブレッシュは、フランスの国立地方音楽院時代にすでにレコーディングで賞を受けており、主にバロック時代の作品を中心に取り組んでいる。数々の著名な音楽祭に招かれるとともに、日本のアンサンブルとも共演を重ね、好評を博している。 | ||
Lunarcy - Songs of Madness and the Moon ハーバート・ハウエルズ:フル・ムーン / パーセル: FROM LOSY BOW 'RS トーマス・キャンピオン: THE CYPRESS CURTAIN OF THE NIGHT / カプスベルガー:第1トッカータ ジェフリー・バーゴン(1924-):この月の美/通りで泣いている娘よ/オルフェウス/ララバイ/ Xに/夜通しの愛撫 ダウランド:プレリューディウム/暗闇で考えらせて/天文学者のなんと哀れなことか ロリー・ボイル(1951-):二つの愛の抒情詩 / パーセル: I 'll sail upon the dog star シューマン:月夜 / モーツァルト:ラウラに寄せる夕べの想い ローレンス・ザゾ(CT) 野入志津子(リュート) | ||
代理店の案内には『フェフリー・ブルゴン』という作曲家が記載されているが、誤り。声楽には特に厳しいルネ・ヤーコプスから「同世代でもっとも多才なカウンターテナー」と認められた実力の持ち主で、オペラなどでも活躍目覚ましいカウンターテナー、ザゾのソロ・アルバム。ダウランド、パーセルのほか彼らの同世代による、狂気、そして真夜中をテーマとした作品をあつめており、リュートと声のみによる演奏で、人の心の光と闇を静かに照らす月夜のような、静謐でどこか妖しげな世界を展開、繊細な表情を聴かせる。リュートは、古楽アンサンブル、レ・プレジール・ドゥ・パルナッスのメンバーでもある野入志津子。野入もまたヤーコプス指揮のオペラでの経験も豊富の名人。二人が展開する月夜の世界にじっくりと耳を傾けたい1枚。 | ||
Climate Changes プーランク:チェロ・ソナタ / ドビュッシー:チェロ・ソナタ メシアン:「世の終わりのための四重奏曲」〜イエスの永遠性への讃歌 ジャクリーヌ・フォンテイン:6つの気候 特典映像DVD(PAL):ドビュッシー:チェロ・ソナタの演奏風景(約40分)/リハーサル風景 ヤン・パス(Vc) ステファノ・ヴィスマラ(P) | ||
録音:2008年9月。18歳という若さでモネ王立歌劇場のソロ・チェリストに任命され、その後シュトゥットガルトやバイエルン歌劇場でも実力を発揮しているベルギー生まれのチェリスト、ヤン・パスによるプーランク、ドビュッシー、そして同郷でキャサリン・ヘプバーンの出演した映画「招かれざる客」の音楽を担当したジャクリーヌ・フォンテインの作品。「6つの気候」は、ドビュッシーへのオマージュ的作品でありながら、メシアンの緻密さをも想起させる雰囲気の作品で、このアルバムを締めくくるにふさわしい。 #DVDはPAL方式収録のため、日本国内での再生保証はございません。 | ||
インマゼール&アニマ・エテルナの「運命」映像 ベートーヴェン:交響曲第5番 ドキュメンタリー 「ベートーヴェンの第5交響曲〜再発見」 |
ヨス・ファン・インマゼール指揮 アニマ・エテルナ | |
録音・収録:2009年9月22日(火)、ブリュッセル/コンサート・ノーブル・ダンスルーム。NTSC|字幕:英、蘭。 貴重!インマゼール&アニマ・エテルナの映像の登場。ベートーヴェンが生きていた当時、ロプコヴィッツ伯邸のホールでのプライヴェート・コンサートを再現する試み。観客はワイングラスを片手にゆったりとテーブルに着き、くつろいだ雰囲気の中、インマゼールとアニマ・エテルナがエッジの効いた演奏を展開している。 いつも私たちに新鮮な驚きを与えてくれるインマゼールの指揮姿がバッチリ収められているうえ、様々なピリオド楽器を演奏する名手たちがアップで映されるという極めて興味深い映像。ナチュラルホルンもまったく乱れのない気持ちの良い音で、アニマ・エテルナのメンバーのクオリティの高さを実感。ダンスホールということもあって、響きが大変豊か。管楽器の咆哮、ティンパニの轟き、弦楽器の響きもダイレクトに美しく響いている。 ドキュメンタリーもまた興味深い物。リハーサル風景では、奇妙な声を発して、団員を笑わせるおちゃめなインマゼールも収められている。弦楽器奏者たちがヴィブラートの有無でいかに音質が変わるか実演し、管楽器奏者たちも自分の楽器の特質などについてわかりやすく話している。インマゼールが団体の歴史について語り、また、団員がインマゼールについて語るのも興味津々。赤いマフラーをまとったインマゼールが、ウィーンのベートーヴェンゆかりの地を訪ね、様々な解説をしながら歩来る。また、冒頭の「運命が戸をたたく」というモティーフは、もともとはベートーヴェンの庭の鳥のさえずりだったというチェルニーの言葉を紹介しているなど、興味深い内容。映像の最後で、インマゼールが、ピリオド楽器を演奏する意義についても語っており、演奏もドキュメンタリーも充実の内容となっている。 #なお、品番はレーベルのサイトでは "005" となっていますが、これは PAL 仕様盤ではないかと思われます。 | ||
バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV.988 | ベンヤミン=ヨーゼフ・ シュテーンス(クラヴィコード) | |
録音:2009年。 バッハは、自宅ではクラヴィコードを好んで弾いていたという記録がのこっている。クラヴィコードは楽器自体の構造が単純なため、奏者の意志がダイレクトに音となってあらわれる上、ヴィブラートなどの効果も思いのままに操ることが出来る。クラヴィコードによるゴルトベルク録音、作品の構築性と親密さ、衝撃性、すべてが新鮮に響く! なお当盤発売後、音量について代理店から以下のコメントが来ています。 『こちらは、クラヴィコードで演奏されています。クラヴィコードは極めて小さく繊細な音色が持ち味です。演奏者・プロデューサーサイドは、収録音のレヴェルを上げることによって、この楽器の音色の魅力が損なわれることを避けるため、収録音量のレヴェルを上げずにCD 化しています。このため、再生装置を最大音量に設定しても、音が小さい、と感じられる場合がありますが、これは不良ではありません。クラヴィコードの繊細かつ色彩豊かな音色をお楽しみいただけましたら幸いです。なお、通常ゴルトベルク変奏曲は32トラックですが、この商品には音量調節用の33トラックがあります。この33トラック目で再生装置の音量を設定してから聴いていただくことも可能です。』(以上『内』代理店記載ママ)。 | ||
ヘンデル:フルートと通奏低音のためのソナタ集 ソナタ ロ短調 HWV.376/ プレリュード ホ短調(原曲 嬰ヘ短調)HWV.570/ ソナタ ホ短調 HWV.375/ プレリュード イ短調(原曲 ト短調)HWV.573/ ソナタ イ短調 HWV.374/ ソナタ ホ短調 Op.1-1b HWV.359b/ プレリュードとアレグロ ト短調 HWV.574/ ソナタ ト長調 Op.1-5 HWV.363b/ プレリュード ロ短調(原曲 ニ短調)HWV.561/ ソナタ ロ短調 Op.1-9 HWV.367b |
ヤン・デ・ヴィンネ (バロック・Fl) マルコ・テストーリ (バロック・Vc) ロレンツォ・ギエルミ(Cemb) | |
録音:2009年。 ヘンデルは、オーボエやリコーダーのためには数多くの作品を書いているが、フルートのための作品はごくわずか。繊細かつドラマティックな、豊かな表情が魅力の充実した作品が並ぶ。ヴィンネはベルギー出身のフルート奏者。ギエルミとテストーリというイタリアの名手二人を通奏低音奏者に迎え、緊密なアンサンブルで貴重なヘンデル作品を見事に再現している。 ヴァルテル・ブイケンス:1938年にアントワープ近郊ボルネムに生まれたベルギーを代表する名クラリネット奏者。ブリュッセル王立音楽院に学んだ後、1964年以来ベルギー放送so.(BRT)のソリストとなって活躍した(85年まで)ほか、1968年にはブーレーズの「ドメーヌ」のクラリネット版の初演を行うなど、現代作曲家の多くの作品を紹介し、その第一人者としての名声を確立している。1982年に初来日、伝説の名クラリネット奏者の一人となっている。 | ||
メンデルスゾーン: コンチェルトシュトゥック ヘ短調 Op.113 カール・ベールマン:デュオ・コンチェルトOp.33 アミルカーレ・ポンキエッリ:イル・コンヴェーニョ |
ヴァルテル・ブイケンス(Cl) アンヌ・ブイケンス(Cl) マリータ・コロセク(Vn) エリック・ベーテン(Vn) テレーゼ=マリー・ギリッセン (Va) ルイス・アンドラーデ(Vc) マルク・ローゼンダンス(Cb) | |
録音:2008年。 19世紀に書かれた、2つのクラリネットのための珠玉の室内楽作品集。メンデルスゾーンは、当時のクラリネットのヴィルトゥオーゾであったベールマン親子(父ハインリヒ、息子カール)のためのコンチェルトシュトゥックを作曲した。カールは、父と共演するためにデュオ・コンチェルトを作曲した。 このディスクでヴァルテルと共演しているアンヌ・ブイケンスは、ヴァルテル・ブイケンスの娘。まさに理想のかたちでの演奏といえるだろう。 | ||
ブクステフーデ: トッカータ ヘ長調 BuxWV.157(*)/ 天にまするわれらの父よ BuxWV.219(*)/ アリアBuxWV.247(*)/ シャコンヌ ホ短調 BuxWV.160(*)/ 今、我ら聖霊に願い奉る BuxWV.208(*) バッハ:トッカータ、アダージョとフーガBWV.564(*) ブクステフーデ: いざ来れ、異邦人の救い主よ BuxWV.211(#)/ プレリュード ト短調 BuxWV.148(#) バッハ:いざ来れ、異邦人の救い主よ BWV.659(#)/ パッサカリア ハ短調 BWV.582(#) |
ベンヤミン=ヨーゼフ・ シュテーンス(Org) | |
ルーアンの大聖堂のオルガン(*)、ヴェルチュの教会のオルガン(#)。 ベルギー生まれのシュテーンスは、ランスのサン=レミ旧大聖堂などでオルガニストを務める実力派。テクニックの上でも解釈の上でも、これ以上ない演奏を聴かせてくれる。 #ボーナスDVD(内容不詳)はPAL方式のため、再生保証・不具合保証は無しとなります。御了承下さい。 | ||
ジャン・フランセ(1912-1997):クラリネット協奏曲(*) オーギュスト・ヴェルベッセル(1919-): クラリネット協奏曲(#) マルセル・ポート(1901-1988):クラリネット協奏曲(+) |
ヴァルテル・ブイケンス(Cl) | |
録音:1974年(*)、1984年(#)、1979年(+)。 フランセの協奏曲は、2009年の日本音楽コンクールの課題曲に指定されるなど、今なおクラリネット奏者にとって重要なレパートリー。ブイケンスの壮年期の録音が甦った。ポートはデュカにも師事したことのあるベルギーの作曲家。ブリュッセル音楽院で教授をつとめた。 | ||
ブラームス:クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op.115 | ヴァルテル・ブイケンス(Cl) マリータ・コロセク(Vn) エリック・ベーテン(Vn) テレーゼ=マリー・ ギリッセン(Va) リュック・デヴェズ(Vc) ヴァルテル・ブイケンス・ アンサンブル | |
録音:2006年10月。 クラリネットの巨匠、ブイケンスの新録音。付属DVD(PAL)には、ブイケンスの録音風景のほか、ブーレーズの「ドメーヌ」を初演する時の様子が収められている。 #ボーナスDVDはPAL方式のため、再生保証・不具合保証は無しとなります。御了承下さい。 |